(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009133
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】工作機械、及び方法
(51)【国際特許分類】
B30B 15/00 20060101AFI20250110BHJP
【FI】
B30B15/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111925
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000107147
【氏名又は名称】ニデックドライブテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】田中 康宏
(72)【発明者】
【氏名】八杉 洋司
【テーマコード(参考)】
4E088
【Fターム(参考)】
4E088FA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】流路で余分な圧力又は流量が発生することを抑制可能な工作機械及び方法を提供する。
【解決手段】本開示の工作機械は、加工部と、加工部に供給される潤滑油の流路と、流路に潤滑油を圧送するポンプと、流路を流れる潤滑油の圧力を検出するセンサと、加工部で必要な潤滑油の所定圧力と、センサでの検出結果とに基づいてポンプを制御する制御部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工部と、
前記加工部に供給される潤滑油の流路と、
前記流路に前記潤滑油を圧送するポンプと、
前記流路を流れる前記潤滑油の圧力を検出するセンサと、
前記加工部で必要な前記潤滑油の所定圧力と、前記センサでの検出結果とに基づいて前記ポンプを制御する制御部と
を備える、工作機械。
【請求項2】
前記所定圧力は、前記加工部で必要な前記潤滑油の最低の圧力である、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定圧力に基づき定められる範囲内に前記検出結果が入るように前記ポンプを制御する、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記ポンプの回転速度の初期値は、単位時間あたりの前記加工部の加工回数に基づく、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項5】
加工部と、
前記加工部に供給される潤滑油の流路と、
前記流路に前記潤滑油を圧送するポンプと、
前記流路を流れる前記潤滑油の流量を検出するセンサと、
前記加工部で必要な前記潤滑油の所定流量と、前記センサでの検出結果とに基づいて前記ポンプを制御する制御部と
を備える、工作機械。
【請求項6】
前記所定流量は、前記加工部で必要な前記潤滑油の最低の流量である、請求項5に記載の工作機械。
【請求項7】
前記制御部は、前記所定流量に基づき定められる範囲内に前記検出結果が入るように前記ポンプを制御する、請求項5又は請求項6に記載の工作機械。
【請求項8】
前記ポンプの回転速度の初期値は、単位時間あたりの前記加工部の加工回数に基づく、請求項5又は請求項6に記載の工作機械。
【請求項9】
工作機械の加工部に通じる流路に潤滑油をポンプにより圧送し、
前記流路を流れる前記潤滑油の圧力又は流量を検出し、
前記加工部で必要な前記潤滑油の所定圧力と、センサで検出された前記圧力とに基づいて、又は前記加工部で必要な前記潤滑油の所定流量と、前記センサで検出された前記流量とに基づいて前記ポンプを制御する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術に係る工作機械として、下記特許文献1には熱プレス装置がある。熱プレス装置は、油圧ポンプにより油圧シリンダを駆動することで、熱盤の上昇、加圧、保圧そして下降までの一連の動作サイクルを繰り返し行う。これにより、熱プレス装置は、プレス加工による成型品を作製する。
【0003】
熱プレス装置では、軸受、歯車、油圧及び摺動面等の金属が擦れ合う摩擦部分がある。摩擦部分に潤滑油を供給するため、熱プレス装置は、モータと、ポンプとを備える。モータは、商用電源電圧により動力を発生する。ポンプは、モータで発生した動力により、潤滑油を流路に圧送する。潤滑油は、流路を通じて熱プレス装置に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱プレス装置において、モータは、商用電源周波数により常に一定速で回転するため、流路において潤滑油により余分な圧力又は流量が発生することがある。
【0006】
本開示は、流路で余分な圧力又は流量が発生することを抑制可能な工作機械及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の例示的な工作機械は、加工部と、前記加工部に供給される潤滑油の流路と、前記流路に前記潤滑油を圧送するポンプと、前記流路を流れる前記潤滑油の圧力を検出するセンサと、前記加工部で必要な前記潤滑油の所定圧力と、前記センサでの検出結果とに基づいて前記ポンプを制御する制御部とを備える。
【0008】
本開示の例示的な他の工作機械は、加工部と、前記加工部に供給される潤滑油の流路と、前記流路に前記潤滑油を圧送するポンプと、前記流路を流れる前記潤滑油の流量を検出するセンサと、前記加工部で必要な前記潤滑油の所定流量と、前記センサでの検出結果とに基づいて前記ポンプを制御する制御部とを備える。
【0009】
本発明の例示的な方法は、工作機械の加工部に通じる流路に潤滑油をポンプにより圧送し、前記流路を流れる前記潤滑油の圧力又は流量を検出し、前記加工部で必要な前記潤滑油の所定圧力と、前記センサで検出された前記圧力とに基づいて、又は前記加工部で必要な前記潤滑油の所定流量と、前記センサで検出された前記流量とに基づいて前記ポンプを制御する。
【発明の効果】
【0010】
例示的な本開示によれば、流路で余分な圧力又は流量が発生することを抑制可能な工作機械を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る工作機械を示す図である。
【
図2】
図2は、加工回数ごとに、第二モータの回転数[RPM]に対する潤滑油の圧力を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0013】
図1は、一実施形態に係る工作機械100を示す図である。
図1に示されるように、工作機械100は、プレス機である。プレス機は、加工対象物であるワーク(例えば、薄い金属板)を、プレス機が備える固定金型11と可動金型12との間に配置する。その後、プレス機は、可動金型12を上下動させる。ワークの配置及び可動金型12の上下動を含む一連の動作を繰り返すことで、工作機械100は、固定金型11及び可動金型12で定まる形状にワークを繰り返しプレス成型する。
【0014】
なお、工作機械100は、プレス機に限らず、ワークを切削及び研削の少なくとも一方により所望の形状に作り上げる機械であってもよい。
【0015】
詳細には、工作機械100は、固定金型11及び可動金型12に加え、筐体13と、金型保持部14と、第一モータ15と、動力伝達機構16とを、本開示の「加工部」の一例として備える。
【0016】
筐体13は、少なくともフレームを含む。筐体13は、外装体を更に含んでいてもよい。筐体13には、固定金型11と、可動金型12と、金型保持部14と、第一モータ15と、動力伝達機構16と、制御部17と、インバータ28とが取り付けられる。
【0017】
筐体13は、ベッド131と、クラウン132と、及び一対のコラム133とを有する。ベッド131は、工作機械100が使用可能に設置された状態(以下、「設置状態」と記載する。)で設置面S01と接触する。クラウン132は、設置状態では、ベッド131よりも上方に位置する。クラウン132には、クランクシャフト164及びコネクティングロッド165が取り付けられる。一対のコラム133は、ベッド131とクラウン132との間に介在し、設置状態では工作機械100の前面に向かって左右両側に位置する。
【0018】
金型保持部14は、ボルスタ141と、スライド142とを含む。ボルスタ141は、定盤であって、ベッド131に固定される。スライド142は、ボルスタ141の上方に位置する。スライド142は、一対のプランジャ166とともに上下方向に移動可能である。プレス成型時、ボルスタ141には、固定金型11が取り付けられ、スライド142に可動金型12が取り付けられる。
【0019】
第一モータ15は、スライド142を上下動させるための動力を発生する。詳細には、第一モータ15は、制御部17の制御下で、第一モータ15から突出する出力軸151を回転させる。出力軸151にはプーリ152が取り付けられている。以下、出力軸151が延びる方向を、「出力軸方向」と記載する。
【0020】
動力伝達機構16は、第一モータ15で発生した動力を、上下方向に沿って往復する直線運動に変換する。その結果、動力伝達機構16は、上下方向の力を発生する。これにより、スライド142は、上下方向に往復運動する。
【0021】
動力伝達機構16は、無端ベルト161と、フライホイル162と、摩擦板163と、クランクシャフト164と、一対のコネクティングロッド165と、一対のプランジャ166とを有する。
【0022】
フライホイル162は、プーリ152の下方に位置し、出力軸方向と略平行な回転軸周りに回転可能にコラム133に支持される。フライホイル162は、プーリ152よりも大径である。
【0023】
無端ベルト161は、プーリ152と、フライホイル162とに巻き掛けられている。従って、第一モータ15を駆動させると、出力軸151及びプーリ152が回転する。プーリ152の回転が、無端ベルト161を介してフライホイル162へ伝達される。これにより、フライホイル162は、フライホイル162の回転軸を中心として回転する。
【0024】
筐体13のクラウン132には、一対の軸受け134が設けられている。詳細には、一対の軸受け134は、出力軸方向において互いに対向する。
【0025】
クランクシャフト164は、一対の軸受け134に架け渡される。クランクシャフト164は、出力軸方向に沿う回転軸を中心として回転可能に一対の軸受け134により支持される。
【0026】
クランクシャフト164は、屈曲した棒状の部材であり、出力軸方向に延びるように配置される。クランクシャフト164において出力軸方向の一方端には、摩擦板163が取り付けられる。摩擦板163は、フライホイル162とは、クラッチ機構の一部である。摩擦板163と、フライホイル162とは、互いに切断された状態(以下、「切断状態」と記載する。)と、互いに接続された状態(以下、「接続状態」と記載する。)とに切り換えられる。接続状態では、第一モータ15の動力は、フライホイル162及び摩擦板163を介してクランクシャフト164へ伝達される。これにより、クランクシャフト164は、フライホイル162とともに回転する。切断状態では、第一モータ15の動力は、フライホイル162及びクランクシャフト164には伝達されない。
【0027】
クランクシャフト164は、複数の偏心部1641を有する。各偏心部1641は、クランクシャフト164の回転軸よりも、同回転軸の径方向に離れて位置で、同回転軸と略平行に延びる。一対のコネクティングロッド165の各々の上端部は、偏心部1641に回転自在に接続されている。また、一対のコネクティングロッド165の各々の下端部は、一対のプランジャ166の上端部に回転自在に接続されている。各プランジャ166は、図示しないガイドに沿って、上下方向に往復移動する。また、一対のプランジャ166の各々の下端部は、スライド142に接続されている。
【0028】
クランクシャフト164が回転すると、クランクシャフト164に接続された一対のコネクティングロッド165が、水平成分を含む横方向に揺動する。また、コネクティングロッド165の揺動に伴い、一対のプランジャ166が、上下方向に往復移動する。これにより、可動金型12を保持するスライド142が、上死点と下死点との間で上下方向に往復移動する。スライド142が下死点まで下降すると、可動金型12が固定金型11に接近して、両金型の間に挟まれたワークが加工される。
【0029】
制御部17は、マイコン及びメモリ等を有する。制御部17において、マイコンは、メモリに記憶されたプログラムに従って動作する。これにより、制御部17は、工作機械100を構成する各部を制御する。
【0030】
工作機械100において加工部は、機械要素が擦れ合う摩擦部分を含む。実施形態では、摩擦部分としては、筐体13における一対の軸受け134と、動力伝達機構16におけるクランクシャフト164、各コネクティングロッド165、及び各プランジャ166とが例示される。
【0031】
摩擦部分に潤滑油を供給するために、
図1に示されるように、工作機械100は、潤滑油供給装置200を更に備える。潤滑油供給装置200は、潤滑油の貯留部21と、温調部22と、共通流路231と、個別流路232,233と、ポンプ24と、第二モータ25と、リリーフバルブ26と、センサ27と、インバータ28とを有する。
【0032】
貯留部21は、タンクであり、潤滑油を貯留する。
【0033】
温調部22は、オイルヒータクーラであり、貯留部21内の潤滑油の温度を設定温度付近に調節する。
【0034】
共通流路231は、貯留部21と、個別流路232,233の各上流端とを、潤滑油が流通可能に接続する。即ち、共通流路231は、貯留部21から、個別流路232,233の各上流端に至る。個別流路232は、共通流路231の下流端と、クランクシャフト164、各コネクティングロッド165、及び各プランジャ166とを、潤滑油が流通可能に接続する。即ち、個別流路232は、共通流路231の下流端から、コネクティングロッド165に至る。個別流路233は、共通流路231の下流端と、各軸受け134とを、潤滑油が流通可能に接続する。即ち、個別流路233は、共通流路231の下流端から、各軸受け134に至る。共通流路231と、個別流路232,233とは、本開示の「流路」の一例である。
【0035】
ポンプ24は、共通流路231上に配置される。ポンプ24は、共通流路231に潤滑油を圧送する。詳細には、ポンプ24は、ポンプロータを有する。ポンプロータは、第二モータ25で発生した動力により回転する。その結果、ポンプ24は、共通流路231においてポンプ24よりも上流部から潤滑油を吸い込み、吸い込んだ潤滑油を下流部に吐出する。これにより、潤滑油は、共通流路231と、個別流路232,233とを通じて、摩擦部分に供給される。
【0036】
各摩擦部分に供給された潤滑油は、筐体13内の流路1331を通って、ベッド131内の貯留部1311に落下する。これにより、貯留部1311には、潤滑油が回収される。貯留部1311内の潤滑油は、帰還流路1312を通って貯留部21に再供給される。
【0037】
第二モータ25は、三相モータであり、インバータ28から印加される交流電圧により回転する。その結果、第二モータ25は、ポンプ24が動作するための動力を発生する。インバータ28は、インバータ28に供給された直流電圧を、制御部17の制御下で、パルス幅変調された交流電圧に変換する。その結果得られる交流電圧を、インバータ28は、第二モータ25に供給する。これにより、ポンプ24、より詳細にはポンプロータの回転速度がインバータ制御により可変とされる。
【0038】
リリーフバルブ26は、共通流路231においてポンプ24より下流側に位置する。リリーフバルブ26は、共通流路231内で余分な圧力又は流量が発生した場合に、余分な圧力又は流量を開放する弁である。
【0039】
センサ27は、実施形態では、共通流路231を流れる潤滑油の圧力を検出する。センサ27は、検出した圧力に相関する信号を制御部17に送信する。センサ27は、実施形態の変形例では、共通流路231で流れる潤滑油の流量を検出する。センサ27は、検出した流量に相関する信号を制御部17に送信する。
【0040】
ところで、工作機械100では、第一操作が可能である。第一操作は、オペレータのマニュアル操作等であって、単位時間あたりの加工部の加工回数を指定するための操作である。例えば、予め定められた複数の加工回数のいずれかが指定可能である。プレス機の場合、加工回数は、SPM(Shots Per Minute)の単位で示され、第一モータ15の駆動により、単位時間あたりでワークを何回打抜くことができるのかを示す値である。実施形態では、オペレータは、工作機械100に対してX1~X5[SPM]のいずれかを指定することが可能であるとする。
【0041】
また、工作機械100の加工部で必要とされる潤滑油の圧力(以下、「所定圧力」と記載する。)Pnは、加工回数によらず概ね一定値以上である。但し、所定圧力Pnは、潤滑油の温度により変わる。
【0042】
制御部17は、第一操作と、プレス加工を開始させるための第二操作とが工作機械100に対してオペレータによりなされたことに応じて、ポンプ24の動作を開始させる。
【0043】
詳細には、制御部17は、所定圧力Pnと、センサ27による検出結果とに基づいてポンプ24を制御する。これにより、余分な圧力が共通流路231と個別流路232,233とで発生することが抑制される。その結果、工作機械100の省電力化が可能となる。また、リリーフバルブ26を通じて貯留部21に戻る潤滑油の量が低減されるため、電源電圧が効率的に利用される。
【0044】
更に詳細には、制御部17は、ポンプ24の制御において、センサ27から、潤滑油の現在の圧力を示す検出結果を周期的に取得する。制御部17は、検出結果を取得するたびに、取得した検出結果が示す圧力と、プログラムに予め記述される所定圧力Pnとの偏差(圧力差)に基づくフィードバック制御により、偏差を補償するためのデューティ比を決定する。フィードバック制御は、典型的には、比例積分微分制御である。インバータ28は、制御部17が決定したデューティ比でIGBT等のパワートランジスタをスイッチングして、同デューティ比でパルス幅が変調されたパルス信号を生成する。インバータ28は、生成したパルス信号を第二モータ25に出力する。第二モータ25は、入力されたパルス信号に従って回転し、ポンプ24の動力を発生する。その結果、ポンプ24は、所定圧力Pnを目標値として、潤滑油を圧送する。
【0045】
所定圧力Pnは、工作機械100の加工部で必要とされる潤滑油の圧力のうち最低の圧力であることが好ましい。これにより、所定圧力Pnを最低圧力超にする場合との比較で、余分な圧力が共通流路231と個別流路232,233とで発生することが更に抑制される。その結果、工作機械100の更なる省電力化が可能となる。
【0046】
また、制御部17は、所定圧力Pnに基づき定められる範囲Rn内に、センサ27の検出結果が入るようにポンプ24を制御することが好ましい。これにより、余分な圧力が共通流路231と個別流路232,233とで発生することが更に抑制されるとともに、流路における圧力の過度な低下が抑制される。なお、範囲Rnは、例えば所定圧力Pnを超える圧力を上限値Pn1とする。範囲Rnは、例えば所定圧力Pn未満の圧力を下限値Pn2とする。
【0047】
次に、本実施形態の第一変形例について説明する。
【0048】
本件発明者は、加工回数X1~X5[SPM]ごとに、第二モータ25の回転数[RPM]に対する潤滑油の圧力を測定した。X1,X2,X3,X4,X5は互いに異なる。
図2は、測定結果を示すグラフである。
図2に示されるように、第二モータ25の回転数が多くなると、潤滑油の圧力は増大する傾向にある。但し、第二モータ25の回転数に対する潤滑油圧力は、加工回数で異なる。また、第二モータ25の回転数の増分に対する潤滑油圧力の変化量は、加工回数で変わる。
【0049】
更に、測定結果から、所定圧力Pnが得られる第二モータ25の回転数は、加工回数によっては異なることが判明した。例えば、加工回数がX1,X2,X3,X4,X5である場合、回転数は、R1,R2,R3,R4,R5である。なお、
図2には、回転数R1,R5だけが示されている。R1,R2,R3,R4,R5は、例えば互いに異なる。しかし、これに限らず、R1,R2,R3,R4,R5のうち少なくとも二つが同じである場合もある。
【0050】
従って、制御部17は、ポンプ24の制御において、まず、第二モータ25の回転数の初期値を、単位時間あたりの加工部の加工回数に基づいて決定する。従って、潤滑油の圧力が所定圧力Pnに素早く近づくようにポンプ24の回転数が制御される。第二モータ25の回転数が初期値に到達すると、制御部17は、前述のフィードバック制御を実行する。
【0051】
具体的には、加工回数がX1,X2,X3,X4,X5である場合、回転数の初期値は、R1,R2,R3,R4,R5と決定される。制御部17は、第二モータ25に搭載される回転センサ(図示せず)を検出結果が回転数の初期値に到達するように、第二モータ25の回転数を制御する。なお、この種の制御を実現するためには、制御部17のメモリに、各加工回数に対応する回転数の初期値を記載したテーブルが工作機械100の製造時に格納しておけばよい。他にも、メモリに記録されるプログラムに、各加工回数に対応する回転数の初期値を記述しておいてもよい。
【0052】
以上、図面を参照しながら本開示の実施形態を説明した。ただし、上記実施形態は、本開示の例示にすぎず、本開示は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質や形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本開示の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。実施形態の構成は、本開示の技術的思想を超えない範囲で適宜変更されてもよい。また、実施形態は、可能な範囲で組み合わせて実施されてもよい。
【0053】
実施形態では、センサ27は、潤滑油の圧力を検出し、制御部17は、加工部で必要な潤滑油の所定圧力Pnと、センサ27での検出結果とに基づいてポンプ24を制御していた。しかし、流路における潤滑油の圧力及び流量の間には相関関係がある。従って、実施形態における用語「圧力」を、「流量」に読み替えてもよい。例えば、センサ27は、潤滑油の流量を検出し、制御部17は、加工部で必要な潤滑油の所定流量と、センサ27での検出結果とに基づいてポンプ24を制御してもよい。これによって、余分な流量が共通流路231と、個別流路232,233とで発生することが抑制され、工作機械100の省電力化が可能となる。また、リリーフバルブ26を通じて貯留部21に戻る潤滑油の量が低減されるため、電源電圧が効率的に利用される。
【0054】
なお、本開示は、以下のような構成を採用することも可能である。
【0055】
(1)加工部と、
前記加工部に供給される潤滑油の流路と、
前記流路に前記潤滑油を圧送するポンプと、
前記流路を流れる前記潤滑油の圧力を検出するセンサと、
前記加工部で必要な前記潤滑油の所定圧力と、前記センサでの検出結果とに基づいて前記ポンプを制御する制御部と
を備える、工作機械。
【0056】
(2)前記所定圧力は、前記加工部で必要な前記潤滑油の最低の圧力である、請求項1に記載の工作機械。
【0057】
(3)前記制御部は、前記所定圧力に基づき定められる範囲内に前記検出結果が入るように前記ポンプを制御する、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【0058】
(4)前記加工部は、ワークを加工し、
前記ポンプは、回転することで、前記流路に前記潤滑油を圧送するポンプロータを有し、
前記ポンプロータの回転速度の初期値は、単位時間あたりの前記加工部の加工回数に基づく、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【0059】
(5)加工部と、
前記加工部に供給される潤滑油の流路と、
前記流路に前記潤滑油を圧送するポンプと、
前記流路を流れる前記潤滑油の流量を検出するセンサと、
前記加工部で必要な前記潤滑油の所定流量と、前記センサでの検出結果とに基づいて前記ポンプを制御する制御部と
を備える、工作機械。
【0060】
(6)前記所定流量は、前記加工部で必要な前記潤滑油の最低の流量である、請求項5に記載の工作機械。
【0061】
(7)前記制御部は、前記所定流量に基づき定められる範囲内に前記検出結果が入るように前記ポンプを制御する、請求項5又は請求項6に記載の工作機械。
【0062】
(8)前記加工部は、ワークを加工し、
前記ポンプは、回転することで、前記流路に前記潤滑油を圧送するポンプロータを有し、
前記ポンプロータの回転速度の初期値は、単位時間あたりの前記加工部の加工回数に基づく、請求項5又は請求項6に記載の工作機械。
【0063】
(9)工作機械の加工部に通じる流路に潤滑油をポンプにより圧送し、
前記流路を流れる前記潤滑油の圧力又は流量を検出し、
前記加工部で必要な前記潤滑油の所定圧力又は所定流量と、前記センサでの検出結果とに基づいて前記ポンプを制御する、方法。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示に係る潤滑油供給装置は、工作機械等に利用でき、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0065】
100 :工作機械
15 :第一モータ
16 :動力伝達機構
17 :制御部
200 :潤滑油供給装置
24 :ポンプ
25 :第二モータ
26 :リリーフバルブ
27 :センサ
28 :インバータ
231 :共通流路
232 :個別流路
233 :個別流路