(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009134
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】メタルマスクおよび印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41N 1/24 20060101AFI20250110BHJP
B41M 1/12 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B41N1/24
B41M1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111928
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】柴谷 健伍
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 元信
(72)【発明者】
【氏名】今西 豊
(72)【発明者】
【氏名】菊地 真史
【テーマコード(参考)】
2H113
2H114
【Fターム(参考)】
2H113BA10
2H113BB22
2H113BC12
2H114AB11
2H114AB15
2H114EA02
(57)【要約】
【課題】印刷版の版強度の低下を抑制した上で、にじみを抑制した良好な印刷を行う。
【解決手段】メタルマスクは、一対の主面と、一対の主面を貫通する複数の開口とを有する第1マスク層と、複数の開口が形成され、第1マスク層の一方の主面に積層される第2マスク層と、を備え、第1マスク層と第2マスク層の積層方向からみたときに、第2マスク層に形成された複数の開口は、第1マスク層に形成された開口と少なくとも一部が重なる第1開口と、第1マスク層に形成された開口と重ならず、第1マスク層の一方の主面のうち開口が形成されていない領域と重なる第2開口と、を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタルマスクであって、
一対の主面と、前記一対の主面を貫通する複数の開口とを有する第1マスク層と、
複数の開口が形成され、前記第1マスク層の一方の主面に積層される第2マスク層と、
を備え、
前記第1マスク層と前記第2マスク層の積層方向からみたときに、前記第2マスク層に形成された前記複数の開口は、
前記第1マスク層に形成された開口と少なくとも一部が重なる第1開口と、
前記第1マスク層に形成された開口と重ならず、前記第1マスク層の前記一方の主面のうち開口が形成されていない領域と重なる第2開口と、
を含んでいる、
ことを特徴とするメタルマスク。
【請求項2】
請求項1に記載のメタルマスクであって、
前記第1マスク層は、前記複数の開口が所定のパターン状に形成されたパターン形成領域を有しており、
前記積層方向からみたときに、
前記第2マスク層の前記第1開口は、前記第1マスク層の前記パターン形成領域に重なる位置に形成され、
前記第2マスク層の前記第2開口は、前記第1マスク層の前記パターン形成領域の外側を囲むように形成されている、
ことを特徴とするメタルマスク。
【請求項3】
請求項1に記載のメタルマスクであって、
前記第1マスク層は、
前記複数の開口が所定のパターン状に形成された第1パターン形成領域と、
前記複数の開口が所定のパターン状に形成された前記第1パターン形成領域とは異なる第2パターン形成領域と、
前記第1パターン形成領域と前記第2パターン形成領域の間に形成された線状の領域であって、開口が形成されていない線状の領域と、
を有しており、
前記積層方向からみたときに、前記第2マスク層の前記第2開口は、前記第1マスク層の前記線状の領域と重なり、前記線状の領域の中心線を含むように前記中心線に沿って形成されている、
ことを特徴とするメタルマスク。
【請求項4】
請求項3に記載のメタルマスクであって、
前記積層方向からみたとき、前記線状の領域は、自身の幅方向において90%以上が前記第2開口と重なっている、
ことを特徴とするメタルマスク。
【請求項5】
請求項1に記載のメタルマスクであって、
前記第1マスク層において開口が形成されていない領域を、印刷時のスキージ方向に沿って上流側領域と下流側領域に均等に分けた場合、前記積層方向からみたときに、前記上流側領域において前記第2マスク層の前記第2開口が重なる領域の面積の合計は、前記下流側領域において前記第2マスク層の前記第2開口が重なる領域の面積の合計よりも大きい、
ことを特徴とするメタルマスク。
【請求項6】
印刷方法であって、
一対の主面と、前記一対の主面を貫通する複数の開口とを有する第1マスク層と、複数の開口が形成され、前記第1マスク層の一方の主面に積層される第2マスク層と、を備えるメタルマスクを準備する工程と、
前記第2マスク層の一対の主面のうち、前記第1マスク層が積層されていない一方の主面に基板を配置する工程と、
前記第1マスク層の他方の主面からインクをスキージ方向に沿って押し出す工程と、
を備え、
前記第1マスク層と前記第2マスク層の積層方向からみたときに、前記第2マスク層に形成された前記複数の開口は、
前記第1マスク層に形成された開口と少なくとも一部が重なる第1開口と、
前記第1マスク層に形成された開口と重ならず、前記第1マスク層の前記一方の主面のうち開口が形成されていない領域と重なる第2開口と、
を含み、
前記第1マスク層において開口が形成されていない領域を、前記スキージ方向に沿って上流側領域と下流側領域に均等に分けた場合、前記積層方向からみたときに、前記上流側領域において前記第2マスク層の前記第2開口が重なる領域の面積の合計は、前記下流側領域において前記第2マスク層の前記第2開口が重なる領域の面積の合計よりも大きい、
ことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルマスクおよび印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷版を用いてペースト吐出によりパターンを形成するスクリーン印刷のうち、メタルマスクを用いた印刷方法が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。特許文献1には、平面上の複数のポストが全面にわたって配置されているメタルマスクが記載されている。特許文献2には、片面に複数のリブが配置されたメタルマスクが記載されている。特許文献3には、エッチング加工が施されたメタルマスクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-230223号公報
【特許文献2】特開平9-300573号公報
【特許文献3】特開平11-321146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メタルマスクを用いた印刷では、印刷スキージの進行方向に位置するパターン部分において、印刷版離れが悪く、パターンににじみが発生しやすいおそれがある。特許文献1,2に記載されたメタルマスクを用いることにより、にじみの発生を抑制できる。しかしながら、特許文献1,2に記載されたメタルマスクでは、複数のポストまたは複数のリブが全面に配置されているため、版強度が弱くなってしまう。特許文献3に記載されたメタルマスクはエッチング加工されているため、メタルマスクに対する微細加工のような自由な設計が困難である。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、印刷版の版強度の低下を抑制した上で、にじみを抑制した良好な印刷を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、メタルマスクが提供される。このメタルマスクは、一対の主面と、前記一対の主面を貫通する複数の開口とを有する第1マスク層と、複数の開口が形成され、前記第1マスク層の一方の主面に積層される第2マスク層と、を備え、前記第1マスク層と前記第2マスク層の積層方向からみたときに、前記第2マスク層に形成された前記複数の開口は、前記第1マスク層に形成された開口と少なくとも一部が重なる第1開口と、前記第1マスク層に形成された開口と重ならず、前記第1マスク層の前記一方の主面のうち開口が形成されていない領域と重なる第2開口と、を含んでいる。
【0008】
この構成によれば、開口が形成される形状や位置が異なる第1マスク層と第2マスク層とが積層されてメタルマスクが形成されている。印刷時に、第2マスク層に形成された複数の開口のうち、第1マスク層に形成された開口に少なくとも一部が重なる第1開口に対応したパターンが、印刷対象に形成される。一方で、第2マスク層に形成された複数の開口のうち、第1マスク層に形成された開口の領域と重ならない第2開口では、ペーストが印刷対象に吐出されないため、パターンが形成されない。本構成と異なり、第2開口が存在しない第2マスク層は、印刷時に、第2開口が存在しない部分で印刷対象に密着する。それに対し、本構成では、印刷時に、第2開口の領域で印刷対象に密着しないため、印刷版離れが良くなり、印刷対象に形成されるパターンに発生するにじみが抑制される。第2開口は、パターンににじみが発生しやすい領域に対応する第2マスク層に形成されればよく、その他の場所に必要以上に形成されなくてもよい。この結果、本構成では、印刷版の版強度の低下を抑制した上で、印刷対象に対するにじみの発生を抑制した良好な印刷を行うことができる。
【0009】
(2)上記形態のメタルマスクにおいて、前記第1マスク層は、前記複数の開口が所定のパターン状に形成されたパターン形成領域を有しており、前記積層方向からみたときに、前記第2マスク層の前記第1開口は、前記第1マスク層の前記パターン形成領域に重なる位置に形成され、前記第2マスク層の前記第2開口は、前記第1マスク層の前記パターン形成領域の外側を囲むように形成されていてもよい。
この構成によれば、パターン形成領域と重なる位置に形成された第1開口により、印刷対象に対して所定のパターンを形成できる。印刷対象でにじみが発生する領域は、ペーストが吐出された近傍である。そのため、第2開口がパターン形成領域の外側を囲むように形成されることにより、パターン形成領域に吐出されたペーストが、その他の領域へとにじむことが抑制される。
【0010】
(3)上記形態のメタルマスクにおいて、前記第1マスク層は、前記複数の開口が所定のパターン状に形成された第1パターン形成領域と、前記複数の開口が所定のパターン状に形成された前記第1パターン形成領域とは異なる第2パターン形成領域と、前記第1パターン形成領域と前記第2パターン形成領域の間に形成された線状の領域であって、開口が形成されていない線状の領域と、を有しており、前記積層方向からみたときに、前記第2マスク層の前記第2開口は、前記第1マスク層の前記線状の領域と重なり、前記線状の領域の中心線を含むように前記中心線に沿って形成されていてもよい。
この構成によれば、積層方向からみたときに、第1パターン形成領域と第2パターン形成領域との間に、印刷対象にパターンが形成されない線状の領域が存在する。第2開口は、線状の領域の中心線を含むように形成される。すなわち、第2開口は、線状の領域において、中心線に沿って中央部分に形成されている。そのため、印刷時に、第1パターン形成領域と第2パターン形成領域との一方に近い位置に偏って形成されていないため、印刷版離れが良くなり、印刷対象に発生するにじみが抑制される。
【0011】
(4)上記形態のメタルマスクにおいて、前記積層方向からみたとき、前記線状の領域は、自身の幅方向において90%以上が前記第2開口と重なっていてもよい。
この構成によれば、線状の領域の幅方向における90%以上は、第2開口と重なっている。線状の領域のうち、より多くの領域が第2開口と重なることにより、印刷版離れがさらに良くなり、印刷対象に発生するにじみがさらに抑制される。
【0012】
(5)上記形態のメタルマスクにおいて、前記第1マスク層において開口が形成されていない領域を、印刷時のスキージ方向に沿って上流側領域と下流側領域に均等に分けた場合、前記積層方向からみたときに、前記上流側領域において前記第2マスク層の前記第2開口が重なる領域の面積の合計は、前記下流側領域において前記第2マスク層の前記第2開口が重なる領域の面積の合計よりも大きくてもよい。
この構成によれば、積層方向からみたときに、印刷対象にパターンが形成されない領域において、スキージ方向に沿った上流側領域と第2開口とが重なる領域の面積の合計が、下流側領域と第2開口とが重なる領域の面積の合計より大きい。すなわち、第2開口は、パターンが形成されない領域のうち、スキージ方向に沿った上流側に偏って形成される。パターンが形成される領域では、版離れが遅れることで、パターンの元となるペーストのにじみが進行してしまう。特に、にじみが発生しやすい場所は、スキージ進行方向に対して、第1開口から開口されていない領域へとスキージングされる場所、すなわち、パターンが形成されない領域における上流側の境界である。本構成では、パターンが形成されない領域のうち、スキージ方向に沿った上流側に第2開口が偏って形成される。これにより、第2開口の形成領域を少なくして版強度の低下が抑制された上で、印刷版離れが良好になる。
【0013】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、メタルマスク、印刷版、およびこれらを備えるシステム等、印刷方法およびこれらを備えるシステム等の形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態としてのメタルマスクを用いた基板へのパターン形成の説明図である。
【
図2】積層方向からみた場合のメタルマスクの概略上面図である。
【
図4】メタルマスクを用いた印刷方法のフローチャートである。
【
図5】第1実施形態の第1変形例のメタルマスクの概略上面図である。
【
図6】第1実施形態の第2変形例のメタルマスクの概略上面図である。
【
図7】第2実施形態のメタルマスクの一部の概略上面図である。
【
図8】第2実施形態の第1変形例のメタルマスクの一部の概略上面図である。
【
図9】第2実施形態の第2変形例のメタルマスクの一部の概略上面図である。
【
図10】第2実施形態の第3変形例のメタルマスクの一部の概略上面図である。
【
図11】第3実施形態のメタルマスクの概略上面図である。
【
図12】第3実施形態のメタルマスクの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としてのメタルマスク1を用いた基板BDへのパターン形成の説明図である。
図1に示されるメタルマスク1は、電子部品、ICパッケージ、センサーデバイス、および半導体製造装置等の回路形成に用いられる。
図1には、パターン形成時のメタルマスク1および基板BDの概略断面図が示されている。パターン形成時に、基板BD上に配置されたメタルマスク1の上面である主面11から、スキージSQによりスキージ方向に沿ってハンダペーストPSが流し込まれる。メタルマスク1の開口13,23Aに吐出されたハンダペーストが基板BD上のパターンとして形成される。
【0016】
図1に示されるメタルマスク1は、平板状の第1マスク層10と、第1マスク層10の一方の主面12に積層された平板状の第2マスク層20とを備えている。第1マスク層10は、一対の主面11,12と、一対の主面11,12を貫通する複数の開口13とを有している。第2マスク層20は、一対の主面21,22と、一対の主面21,22を貫通する複数の開口23とを有している。複数の開口23は、第1開口23Aと、第2開口23Bとから構成されている。第1開口23Aは、第1マスク層10と第2マスク層20の積層方向(Z軸方向)からみたときに、第1マスク層10に形成された開口13と少なくとも一部が重なっている。一方で、第2開口23Bは、積層方向からみたときに、第1マスク層10に形成された開口13と重ならず、第1マスク層10の一方の主面12のうち開口13が形成されていない領域と重なっている。そのため、
図2に示されるパターン形成時には、積層方向からみたときに、第2マスク層20の第1開口23Aの領域に対応する基板BD上にスキージSQによるハンダペーストPSが流し込まれたパターンが形成される。一方で、第2マスク層20の第2開口23Bの領域に対応する基板BD上にはパターンが形成されない。なお、
図1に示される直交座標系CSは、スキージ方向に平行なY軸と、積層方向に平行なZ軸と、Y軸およびZ軸に直交するX軸とによって構成されている。
図1に示される直交座標系CSと、
図2以降に示される直交座標系CSとは対応している。
【0017】
図2は、積層方向からみた場合のメタルマスク1の概略上面図である。
図2には、基板BD上に形成されるパターンの領域にハッチングが施されている。換言すると、ハッチングが施された領域は、第2マスク層20の第1開口23Aが形成された領域である。一方で、ハッチングが施されていない領域は、第1開口23Aが形成されていない領域であり、第2開口23Bが形成された領域RG1,RG2を含んでいる。
図2では、第2マスク層20の第2開口23Bの領域RG1,RG2が、破線で囲まれて示されている。なお、
図1に示される概略断面は、
図2におけるA-A断面に対応している。
【0018】
図3は、
図2における領域RG1の拡大図である。
図3に示されるように、積層方向からみたときに、第2マスク層20の第2開口23Bの領域RG1は、基板BD上にパターンが形成されない領域のうち、スキージ方向の上流側に偏って配置されている。換言すると、第2マスク層20において第1開口23Aが形成されていない領域を、スキージ方向に沿って中間線OLrにより上流側領域RG1uと下流側領域RG1dに均等に分けた場合に、領域RG1のうち、第2開口23Bが重なる上流側領域RG1uの面積の合計は、第2開口23Bが重なる下流側領域RG1dの面積の合計よりも大きい。なお、
図3では、
図2と異なり、パターンが形成されない領域のうち、上流側領域RG1uと、下流側領域RG1dとを区別するために、ハッチングが施されている。
【0019】
図2に示される第2開口23Bの領域RG2は、領域RG1と同じように、基板BD上にパターンが形成されない領域のうち、スキージ方向の上流側に偏って配置されている。すなわち、第2マスク層20において第1開口23Aが形成されていない領域を、スキージ方向に沿って上流側領域と下流側領域に均等に分けた場合に、上流側領域において第2開口23Bが重なる領域の面積の合計は、下流側領域において第2開口23Bが重なる領域の面積の合計よりも大きい。
【0020】
図4は、メタルマスク1を用いた印刷方法のフローチャートである。
図4に示される印刷フローでは、初めに、メタルマスク1を準備する(ステップS1)。次に、メタルマスク1における第2マスク層20の一対の主面21,22(
図1)のうち、第1マスク層10が積層されていない一方の主面22に基板BDを配置する(ステップS2)。第1マスク層10の一対の主面11,12のうち、第2マスク層20に対向していない主面11からハンダペーストPSをスキージ方向にそって吐出されるスキージングを行い(ステップS3)、印刷フローが終了する。
【0021】
以上のように、本実施形態のメタルマスク1は、第1マスク層10と、第1マスク層10に積層された第2マスク層20とを備えている。第1マスク層10は、一対の主面11,12と、一対の主面11,12を貫通する複数の開口13とを有している。第2マスク層20は、一対の主面21,22を貫通する複数の開口23を有している。複数の開口23は、第1開口23Aと、第2開口23Bとから構成されている。第1開口23Aは、第1マスク層10と第2マスク層20の積層方向からみたときに、第1マスク層10に形成された開口13と少なくとも一部が重なっている。一方で、第2開口23Bは、積層方向からみたときに、第1マスク層10に形成された開口13と重ならず、第1マスク層10の一方の主面12のうち開口13が形成されていない領域と重なっている。本実施形態では、開口が形成される形状や位置が異なる第1マスク層10と第2マスク層20とが積層されてメタルマスク1が形成されている。パターン形成時に、第2マスク層20に形成された複数の開口23のうち、第1マスク層10に形成された開口13に少なくとも一部が重なる第1開口23Aに対応したパターンが基板BDに形成される。一方で、第2マスク層20に形成された複数の開口23のうち、第1マスク層10に形成された開口13の領域と重ならない第2開口23Bでは、ペーストが吐出されないため、基板BDにパターンが形成されない。本実施形態と異なり、第2開口23Bが存在しない第2マスク層は、パターン形成時に、第2開口23Bが存在しない部分で基板BDに密着する。それに対し、本実施形態では、第2開口23Bの領域で基板BDに密着しないため、印刷版離れが良くなり、基板BDに形成されるパターンに発生するにじみが抑制される。本実施形態の第2開口23Bは、パターンににじみが発生しやすい領域に対応する第2マスク層20に形成されればよく、その他の場所に必要以上に形成されなくてもよい。この結果、本実施形態では、メタルマスク1の版強度の低下が抑制された上で、基板BDに対するにじみの発生が抑制された良好な印刷が行われる。
【0022】
また、本実施形態では、第2マスク層20において第1開口23Aが形成されていない領域を、スキージ方向に沿って上流側領域RG1uと下流側領域RG1dに均等に分けた場合に、第2開口23Bが重なる上流側領域RG1uの面積の合計は、第2開口23Bが重なる下流側領域RG1dの面積の合計よりも大きい。本実施形態では、第2マスク層20に形成された第2開口23Bは、積層方向からみたときに、基板BDにパターンが形成されない領域のうち、スキージ方向に沿った上流側に偏って形成される。基板BDにパターンが形成される領域では、版離れが遅れることで、ハンダペーストPSのにじみが進行してしまう。特に、にじみが発生しやすい場所は、スキージの進行方向に対して、第1開口23Aから開口されていない領域へとスキージングされる場所、すなわち、パターンが形成されない領域における上流側の境界である。本実施形態では、パターンが形成されない領域のうち、スキージ方向に沿った上流側に第2開口23Bが偏って形成される。これにより、第2開口23Bの形成領域を少なくして版強度の低下が抑制された上で、印刷版離れが良好になる。
【0023】
<第1実施形態の第1変形例>
図5は、第1実施形態の第1変形例のメタルマスク1aの概略上面図である。
図5に示されるメタルマスク1aが基板BDに形成するパターンは、
図1,2に示されるメタルマスク1が基板BDに形成するパターンと異なる。すなわち、メタルマスク1aが備える第1マスク層と第2マスク層とのそれぞれには、メタルマスク1が備える第1マスク層10と第2マスク層20に形成された開口13,23とは異なる開口が形成されている。
【0024】
図5では、
図2と同じように、積層方向からみたときに、第2マスク層に形成された第1開口23Aaに対応して、基板BD上に形成されるパターンにハッチングが施されている。
図5に示されるように、第1開口23Aaは、第2マスク層の積層方向に直交する面方向において、中心Oから半径R1の円の内側と、中心Oから半径R2(>R1)の円の外側とに形成されている。一方で、
図5において破線で示される第2開口23Baは、第2マスク層の面方向において、中心Oから半径R3(R1<R3<R2)の円弧の外側と、中心Oから半径R4(R3<R4<R2)の円弧の内側と、中間線OLraとによって囲まれる領域RG1a内に形成されている。中間線OLraは、第2マスク層において第1開口23Aaが形成されていない領域を、スキージ方向に沿って上流側領域と下流側領域とに均等に分けた場合の境界線である。すなわち、第2マスク層において第1開口23Aaが形成されていない領域を、スキージ方向に沿って中間線OLraを基準として上流側領域と下流側領域に均等に分けた場合に、第2開口23Baが形成された上流側の領域RG1aの面積の合計は、第2開口23Baが形成されていない下流側の面積の合計よりも大きい。
【0025】
以上のように、
図5に示される第1実施形態の第1変形例のメタルマスク1aでは、第2マスク層に形成された第2開口23Baが、積層方向からみたときに、基板BDにパターンが形成されない領域のうち、スキージ方向に沿った上流側に偏って形成される。基板BDにおいて、にじみが発生しやすい場所は、スキージの進行方向に対して、第1開口23Aaから開口されていない領域へとスキージングされる場所、すなわち、
図5における半径R2のY軸負方向側の円弧近傍である。この第1変形例では、パターンが形成されない領域のうち、第2開口23Baが形成された領域RG1aがスキージ方向に沿った上流側に偏って形成される。これにより、第2開口23Baの形成領域を少なくして版強度の低下が抑制された上で、印刷版離れが良好になる。
【0026】
<第1実施形態の第2変形例>
図6は、第1実施形態の第2変形例のメタルマスク1bの概略上面図である。
図6に示されるメタルマスク1bでは、
図5に示されるメタルマスク1aに対して、第2マスク層に形成される第2開口23Bbが異なる。そのため、第2変形例では、第2開口23Bbについて説明し、第1変形例と形状が同じ第1開口23Aa等の説明を省略する。
【0027】
図6に示されるように、積層方向からみたときに、第2開口23Bbは、第2マスク層において、中心Oから半径R3の外側と、中心Oから半径R4の内側とで囲まれる領域RGbに形成されている。第2開口23Bbが形成されている領域RGbは、第2マスク層において第1開口23Aaが形成されていない領域のうち、中間線OLraを基準として、スキージ方向に沿った上流側領域の面積の合計と、下流側領域の面積との合計は同じである。このように、第2開口23Bbが形成される領域RGbは、スキージ方向に沿って上流側に偏って配置されていなくてもよい。
【0028】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態のメタルマスク1cの一部の概略上面図である。第2実施形態のメタルマスク1cが基板BDに形成するパターンは、第1実施形態と異なり、
図7でハッチングが施されたパターン形成領域RPTである。なお、
図7には、メタルマスク1cの一部が示されており、第2実施形態のメタルマスク1cの全体では、
図7に示される複数のパターン形成領域RPTが形成されている。複数のパターン形成領域RPTは、積層方向からみたときに、第2実施形態の第2マスク層に形成される第1開口23Acと同じ領域である。
図7に示される1つのパターン形成領域RPTは、重心がGであり、XY軸に平行な長さLx0と、X軸に平行な長さLy0とを有する長方形状の内側の領域である。また、第2実施形態では、積層方向からみたときに、第1マスク層において開口13cが形成された領域は、第2マスク層において第1開口23Acが形成されたパターン形成領域RPTに重なる位置、すなわち同じ領域である。
【0029】
第2実施形態の第2マスク層に形成された第2開口23Bcは、積層方向からみたときに、互いに重ならない大きさの異なる2つの矩形BX1,BX2のうち、一方の小さい方の矩形BX1の外側、かつ、他方の矩形BX2の内側の領域RGcである。
図7に示されるように、領域RGcを形成する一方の矩形BX1の形状は、重心がGであり、X軸に平行な長さLx1(>Lx0)と、Y軸に平行な長さLy1(>Ly0)とを有する長方形である。他方の矩形BX2の形状は、矩形BX1よりも大きく、重心がGであり、X軸に平行な長さLx2(>Lx1)と、Y軸に平行な長さLy2(>Ly1)とを有する長方形である。そのため、第2実施形態では、第2マスク層に形成された第2開口23Bcは、積層方向からみたときに、第1マスク層の開口13cの領域であるパターン形成領域RPT、および、第2マスク層の第1開口23Acの領域であるパターン形成領域RPTの外側を囲むように形成されている。
【0030】
以上のように、第2実施形態の第1マスク層には、開口13cとして、複数のパターン形成領域RPTが形成されている。積層方向からみたときに、第2マスク層に形成された第1開口23Acは、第1マスク層の開口13cと重なる同じ位置に形成されている。一方で、第2マスク層に形成された第2開口23Bcは、パターン形成領域RPTを囲むように形成されている。そのため、第2実施形態では、パターン形成領域RPTと重なる位置に形成された第1開口23Acにより、基板BDに対してパターンを形成できる。基板BD上でにじみが発生する領域は、ハンダペーストが吐出された近傍である。そのため、第2開口23Bcがパターン形成領域RPTの外側を囲むように形成されることにより、パターン形成領域RPTに吐出されたハンダペーストが、その他の領域へとにじむことが抑制される。
【0031】
<第2実施形態の第1変形例>
図8は、第2実施形態の第1変形例のメタルマスク1dの一部の概略上面図である。
図8に示されるメタルマスク1dでは、
図7に示される第2実施形態のメタルマスク1cに対して、第2マスク層に形成された第2開口23Bdが異なる。具体的には、第1変形例の第2開口23Bdは、積層方向からみたときに、
図7の領域RGc内において、互いに離間した複数の矩形ΔBXにより構成されている。複数の矩形ΔBXは、
図8に示されるように、パターン形成領域RPTを取り囲むように、X軸とY軸とのそれぞれに沿って並んで配置されている。そのため、第1変形例のメタルマスク1dに形成された第2開口23Bdは、第2実施形態のメタルマスク1cの領域RGcから、隣接する矩形ΔBXを離間させている開口が形成されていない領域を差し引いた領域である。
図7に示されるように、矩形ΔBXの各形状は、X軸に平行な長さΔLx(=(Lx2-Lx1)/2)と、Y軸に平行な長さΔLy(=(Ly2-Ly1)/2)とを有する長方形である。このように、パターン形成領域RPTを取り囲む第2開口23Bdの形状については変形可能である。
【0032】
<第2実施形態の第2変形例>
図9は、第2実施形態の第2変形例のメタルマスク1eの一部の概略上面図である。
図9に示されるメタルマスク1eでは、積層方向からみたときに、
図8に示される第1変形例の第2マスク層において、複数の矩形ΔBXに相当する領域に開口が形成されていない。その代わりに、メタルマスク1eの第2マスク層では、積層方向からみたときに、矩形BX3よりも外側であるとともに矩形BX4よりも内側である領域から、複数の矩形ΔBXを差し引いた領域に、第2開口23Beが形成された領域RGeが形成されている。なお、
図9では、開口が形成されない複数の矩形ΔBX内に、パターン形成領域RPTに施されたハッチングよりも細かいハッチングが施されて表されている。
【0033】
図9に示されるように、矩形BX3の形状は、重心がGであり、X軸に平行な長さLx3(Lx0<Lx3<Lx1)と、Y軸に平行な長さLy3(Ly0<Ly3<Ly1)とを有する長方形である。矩形BX3は、
図7に示される矩形BX1よりも小さい。
図9に示されるように、矩形BX3よりも大きい矩形BX4の形状は、重心がGであり、X軸に平行な長さLx4(>Lx2)と、Y軸に平行な長さLy4(>Ly2)とを有する長方形である。矩形BX4は、
図7に示される矩形BX2よりも大きい。このように、パターン形成領域RPTを取り囲む第2開口23Beの形状については変形可能である。
【0034】
<第2実施形態の第3変形例>
図10は、第2実施形態の第3変形例のメタルマスク1fの一部の概略上面図である。
図9に示されるメタルマスク1fでは、積層方向からみたときに、
図9に示される第2変形例の矩形BX4がより大きな矩形BX4fに変化している。さらに、
図10の第3変形例のメタルマスク1fでは、矩形BX4fが大きくなることにより、矩形BX3の外側かつ矩形BX4fの内側に開口として形成されていない矩形ΔBXの配置数が増加している。
図10では、
図9と同じように、開口が形成されない複数の矩形ΔBX内に、パターン形成領域RPTに施されたハッチングよりも細かいハッチングが施されて表されている。
【0035】
図10に示されるように、矩形BX4fの形状は、積層方向からみたときに、重心がGであり、X軸に平行な長さLx4f(>Lx4)と、Y軸に平行な長さLy4f(>Ly4)とを有する長方形である。矩形BX3の外側かつ矩形BX4fの内側に配置された複数の矩形ΔBXは、
図9に示されるよりも多く、X軸とY軸とのそれぞれに沿って並んで配置されている。そのため、メタルマスク1fの第2マスク層では、積層方向からみたときに、矩形BX3よりも外側であるとともに矩形BX4fよりも内側である領域から、複数の矩形ΔBXを差し引いた領域に、第2開口23Bfが形成された領域RGfが形成されている。このように、パターン形成領域RPTを取り囲む第2開口23Bfの形状については変形可能である。
【0036】
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態のメタルマスク1gの概略上面図である。
図12は、第3実施形態のメタルマスク1gの概略断面図である。第3実施形態のメタルマスク1gでは、
図12に示されるように、パターン形成を形成する第1マスク層10gの開口13gは、第2マスク層20gの第1開口23Agと一部が重なっている。そのため、
図11でハッチングにより示されているように、積層方向からみたときに、第1パターン形成領域RPT1と、第1パターン形成領域RPT1とは異なる第2パターン形成領域RPT2とに重なる基板BD状にパターンが形成される。
図11に示されるように、第1パターン形成領域RPT1と第2パターン形成領域RPT2との間には、積層方向からみたときに、折れ線の中心線OLgに沿って、基板BDにパターンが形成されない領域が形成されている。このパターンが形成されない領域に重複する第2マスク層20gの一部に、第2開口23Bgが形成されている。
【0037】
図12には、
図11における領域ARが拡大された断面図が示されている。
図12に示されるように、積層方向からみたときに、第2マスク層20gにおいて、基板BDに第1パターン形成領域RPT1と第2パターン形成領域RPT2が形成される領域には、第1開口23Agが形成されている。
【0038】
第2マスク層20gにおいて、
図11,12に示されるように、第1パターン形成領域RPT1に重なる第1開口23Agと、第2パターン形成領域RPT2に重なる第1開口23Agとの間には、中心線OLgを中心として長さLnPTの幅を有するパターンが形成されない折れ線状の領域RBLが形成されている。積層方向からみたときに、第2マスク層20gの第2開口23Bgは、折れ線状の領域RBLの一部と重なり、折れ線状の領域RBLの中心線OLgを含むように、中心線OLgに沿って形成されている。第2開口23Bgは、中心線OLgに沿って長さL23Bの幅で形成されている。なお、第2開口23Bgの中心線は、折れ線状の領域RBLの中心線OLgと重複している。第2開口23Bgにおける中心線OLgを中心とする幅の長さL23Bは、折れ線状の領域RBLの幅の長さLnPTの90%である。換言すると、折れ線状の領域RBLは、積層方向からみたときに、自身の幅方向において90%が第2開口23Bgと重なっている。
【0039】
以上のように、第3実施形態では、第1パターン形成領域RPT1と、第2パターン形成領域RPT2との間には、中心線OLgを中心として長さLnPTの幅を有するパターンが形成されない折れ線状の領域RBLが形成されている。第2マスク層20gの第2開口23Bgは、積層方向からみたときに、折れ線状の領域RBLと重なり、折れ線状の領域RBLの中心線OLgを含むように、中心線OLgに沿って形成されている。第3実施形態では、第2開口23Bgは、折れ線状の領域RBLにおいて、中心線OLgに沿って中央部分に形成されている。そのため、基板BDへのパターン形成時に、第1パターン形成領域RPT1と第2パターン形成領域RPT2との一方に近い位置に偏って形成されていないため、基板BDからメタルマスク1gの印刷版離れが良くなり、基板BDに発生するにじみが抑制される。
【0040】
また、第3実施形態の折れ線状の領域RBLは、
図12に示されるように、積層方向からみたときに、自身の幅方向において90%が第2開口23Bgと重なっている。すなわち、折れ線状の領域RBLの幅方向における90%は、第2開口23Bgと重なっている。折れ線状の領域RBLのうち、より多くの領域が第2開口23Bgと重なることにより、基板BDからメタルマスク1gの印刷版離れがさらに良くなり、基板BDに発生するにじみがさらに抑制される。
【0041】
<実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0042】
上記第1実施形態ないし第3実施形態のメタルマスクは、一例であって、第1マスク層10に形成された開口13と一部が重なる第1開口23Aと、第1マスク層10の開口13に重ならない第2開口23Bとを備える範囲で変形可能である。上記第1実施形態のメタルマスク1では、
図3に示されるように、第2マスク層20において、積層方向からみたときに、第1開口23Aが形成されていない領域を、上流側領域RG1uと下流側領域RG1dに均等に分けた場合に、上流側領域RG1uの面積の合計は、下流側領域RG1dの面積の合計よりも大きい。しかし、上流側領域RG1uの面積の合計は、下流側領域RG1dの面積の合計以下であってもよい。
【0043】
上記第2実施形態のメタルマスク1cは、
図7に示されるように、積層方向からみたときに、第2マスク層では、基板BDにパターンが形成されるパターン形成領域RPTの外側を囲むように第2開口23Bcが形成された。しかし、第2開口23Bcは、パターン形成領域RPTの外側を囲むように、第2マスク層に形成されなくてもよい。例えば、第2開口23Bcは、パターン形成領域RPTの外側のうち、積層方向からみて、スキージ方向に沿った上流側の一部の第2マスク層に形成されてもよい。第2実施形態では、積層方向からみたときに、第1マスク層に形成された開口13cと、第2マスク層に形成された第1開口23Acとが同じ領域であったが、異なっていてもよい。例えば、
図1に示される第1実施形態のように、第2マスク層20の第1開口23Aは、積層方向からみたときに、第1マスク層10の第1開口23Aよりも広い面積を有していてもよい。一方で、他の実施形態では、第2マスク層に形成された第1マスク層の開口と一部が重なる第1開口は、積層方向からみたときに、第1マスク層の第1開口よりも狭い面積を有していてもよい。積層方向に沿った第1マスク層の厚さと第2マスク層の厚さとについても変形可能である。
図1に示される第1実施形態のように、第2マスク層20の厚さが、第1マスク層10の厚さよりも大きくてもよい。第2マスク層の厚さは、第1マスク層の厚さ以下であってもよい。
【0044】
上記第3実施形態のメタルマスク1gは、
図12に示されるように、第1パターン形成領域RPT1と、第2パターン形成領域RPT2との間に形成された折れ線状の領域RBLは、積層方向からみたときに、自身の幅方向において90%が第2開口23Bgと重なっていた。しかし、折れ線状の領域RBLは、積層方向からみたときに、自身の幅方向において90%を超える範囲で第2開口23Bgと重なっていてもよいし、90%未満の範囲で第2開口23Bgと重なっていてもよい。特に、折れ線状の領域RBLが、自身の幅方向において90%以上の範囲で第2開口23Bgと重なっていることが好ましい。第2マスク層20gの第2開口23Bgは、積層方向からみたときに、折れ線状の領域RBLの中心線OLgを含むように、中心線OLgに沿って形成されていた。しかし、第2開口23Bgは、中心線OLgを含まないように形成されていてもよい。例えば、第2開口23Bgは、中心線OLgがX軸に平行に延びる領域において、積層方向からみたときに、中心線OLgに重ならずに、スキージ方向に沿って中心線OLgよりも上流側の第2マスク層20gに形成されてもよい。第3実施形態では、パターンが形成されない線状の領域が折れ線状の領域RBLであったが、線状の領域として、曲線状の領域であってもよい。また、線状の中心線に沿って形成される領域は、中心線に沿った位置によって幅方向の長さが異なっていてもよい。
【0045】
上記第1実施形態ないし第3実施形態では、例えば、
図2に示されるように、メタルマスク1に対してスキージ方向が合わせて図示されたが、メタルマスク1からペースト形成時のスキージ方向を推定できる。パターン形成時に、版離れの遅れによってハンダペーストPSのにじみが発生しやすい場所は、スキージの進行方向に対して、第1開口23Aから開口されていない領域へとスキージングされる場所である。そのため、メタルマスク1をみたときに、第2マスク層20においてパターンが形成されない第1開口23Aが形成されていない領域において、第2開口23Bの位置によってスキージ方向を推定できる。具体的には、第1開口23Aが形成されていない領域において、第2開口23Bが特定の方向(
図2では、Y軸負方向)に偏っている場合に、偏っている方向と反対の方向をスキージ方向として推定できる。
【0046】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0047】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
メタルマスクであって、
一対の主面と、前記一対の主面を貫通する複数の開口とを有する第1マスク層と、
複数の開口が形成され、前記第1マスク層の一方の主面に積層される第2マスク層と、
を備え、
前記第1マスク層と前記第2マスク層の積層方向からみたときに、前記第2マスク層に形成された前記複数の開口は、
前記第1マスク層に形成された開口と少なくとも一部が重なる第1開口と、
前記第1マスク層に形成された開口と重ならず、前記第1マスク層の前記一方の主面のうち開口が形成されていない領域と重なる第2開口と、
を含んでいる、
ことを特徴とするメタルマスク。
[適用例2]
適用例1に記載のメタルマスクであって、
前記第1マスク層は、前記複数の開口が所定のパターン状に形成されたパターン形成領域を有しており、
前記積層方向からみたときに、
前記第2マスク層の前記第1開口は、前記第1マスク層の前記パターン形成領域に重なる位置に形成され、
前記第2マスク層の前記第2開口は、前記第1マスク層の前記パターン形成領域の外側を囲むように形成されている、
ことを特徴とするメタルマスク。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載のメタルマスクであって、
前記第1マスク層は、
前記複数の開口が所定のパターン状に形成された第1パターン形成領域と、
前記複数の開口が所定のパターン状に形成された前記第1パターン形成領域とは異なる第2パターン形成領域と、
前記第1パターン形成領域と前記第2パターン形成領域の間に形成された線状の領域であって、開口が形成されていない線状の領域と、
を有しており、
前記積層方向からみたときに、前記第2マスク層の前記第2開口は、前記第1マスク層の前記線状の領域と重なり、前記線状の領域の中心線を含むように前記中心線に沿って形成されている、
ことを特徴とするメタルマスク。
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれか一項に記載のメタルマスクであって、
前記積層方向からみたとき、前記線状の領域は、自身の幅方向において90%以上が前記第2開口と重なっている、
ことを特徴とするメタルマスク。
[適用例5]
適用例1から適用例4までのいずれか一項に記載のメタルマスクであって、
前記第1マスク層において開口が形成されていない領域を、印刷時のスキージ方向に沿って上流側領域と下流側領域に均等に分けた場合、前記積層方向からみたときに、前記上流側領域において前記第2マスク層の前記第2開口が重なる領域の面積の合計は、前記下流側領域において前記第2マスク層の前記第2開口が重なる領域の面積の合計よりも大きい、
ことを特徴とするメタルマスク。
[適用例6]
印刷方法であって、
一対の主面と、前記一対の主面を貫通する複数の開口とを有する第1マスク層と、複数の開口が形成され、前記第1マスク層の一方の主面に積層される第2マスク層と、を備えるメタルマスクを準備する工程と、
前記第2マスク層の一対の主面のうち、前記第1マスク層が積層されていない一方の主面に基板を配置する工程と、
前記第1マスク層の他方の主面からインクをスキージ方向に沿って押し出す工程と、
を備え、
前記第1マスク層と前記第2マスク層の積層方向からみたときに、前記第2マスク層に形成された前記複数の開口は、
前記第1マスク層に形成された開口と少なくとも一部が重なる第1開口と、
前記第1マスク層に形成された開口と重ならず、前記第1マスク層の前記一方の主面のうち開口が形成されていない領域と重なる第2開口と、
を含み、
前記第1マスク層において開口が形成されていない領域を、前記スキージ方向に沿って上流側領域と下流側領域に均等に分けた場合、前記積層方向からみたときに、前記上流側領域において前記第2マスク層の前記第2開口が重なる領域の面積の合計は、前記下流側領域において前記第2マスク層の前記第2開口が重なる領域の面積の合計よりも大きい、
ことを特徴とする印刷方法。
【符号の説明】
【0048】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g…メタルマスク
10…第1マスク層
11,12…第1マスク層の主面
13,13c…第1マスク層の開口
20,20g…第2マスク層
21,22…第2マスク層の主面
23A,23Aa,23Ac,23Ag…第1開口
23B,23Ba,23Bb,23Bc,23Bd,23Be,23Bf,23Bg…第2開口
BD…基板
O…中心
OLg…中心線
OLr,OLra…中間線
PS…ハンダペースト
RBL…折れ線状の領域
RG1,RG2,RG1a,RGb,RGc,RGe,RGf…領域
RG1d…下流側領域
RG1u…上流側領域
RPT…パターン形成領域
RPT1…第1パターン形成領域
RPT2…第2パターン形成領域