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  • 特開-再液化装置 図1
  • 特開-再液化装置 図2
  • 特開-再液化装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009141
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】再液化装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20250110BHJP
【FI】
F17C13/00 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111938
(22)【出願日】2023-07-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「グリーンイノベーション基金事業/次世代船舶の開発/水素燃料船の開発」委託研究の研究成果に係る産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲尾 進士
(72)【発明者】
【氏名】水谷 好生
(72)【発明者】
【氏名】三好 崇公
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA06
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD01
3E172DA04
3E172HA04
3E172HA13
(57)【要約】
【課題】タンクの上下方向の高さがそれほど大きくない場合でもボイルオフガスを十分に再液化することができる再液化装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る、液化ガスを貯留するタンク1用の再液化装置2Aは、タンク1内の気層の圧力における飽和温度未満の液化ガスを循環させる、ポンプ4が設けられた循環路3と、ポンプ4よりも下流側で循環路3に設けられた撹拌装置5を含む。さらに、再液化装置2Aは、タンク1内で発生したボイルオフガスを撹拌装置5へ導くボイルオフガス処理路6と、ボイルオフガス処理路6に設けられた、撹拌装置5内へのボイルオフガスの送り込みを可能とする圧縮機7を含む。撹拌装置5は、ボイルオフガスと液化ガスとを撹拌することでボイルオフガスを凝縮させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯留するタンク用の再液化装置であって、
前記タンク内の気層の圧力における飽和温度未満の液化ガスを循環させる、ポンプが設けられた循環路と、
前記ポンプよりも下流側で前記循環路に設けられた撹拌装置と、
前記タンク内で発生したボイルオフガスを前記撹拌装置へ導くボイルオフガス処理路と、
前記ボイルオフガス処理路に設けられた、前記撹拌装置内への前記ボイルオフガスの送り込みを可能とする圧縮機と、を備え、
前記撹拌装置は、前記ボイルオフガスと前記液化ガスとを撹拌することで前記ボイルオフガスを凝縮させる、再液化装置。
【請求項2】
前記ポンプ、前記撹拌装置および前記圧縮機は前記タンク外に配置される、請求項1に記載の再液化装置。
【請求項3】
前記撹拌装置は前記タンク内に配置され、前記ポンプおよび前記圧縮機は前記タンク外に配置される、請求項1に記載の再液化装置。
【請求項4】
前記ポンプおよび前記撹拌装置は前記タンク内に配置され、前記圧縮機は前記タンク外に配置される、請求項1に記載の再液化装置。
【請求項5】
前記液化ガスは液化水素である、請求項1乃至4の何れか一項に記載の再液化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化ガスを貯留するタンク用の再液化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液化ガスを貯留するタンク内で発生するボイルオフガスを再液化する再液化装置が知られている。例えば、特許文献1には、ボイルオフガスをタンク内で液化ガス中に気泡として噴出することで、ボイルオフガスを再液化する再液化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-46295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の再液化装置では気泡が液化ガス中を上昇する途中で再液化するため、タンクの上下方向の高さがそれほど大きくない場合にはボイルオフガスの再液化が不十分となるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、タンクの上下方向の高さがそれほど大きくない場合でもボイルオフガスを十分に再液化することができる再液化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、液化ガスを貯留するタンク用の再液化装置であって、前記タンク内の気層の圧力における飽和温度未満の液化ガスを循環させる、ポンプが設けられた循環路と、前記ポンプよりも下流側で前記循環路に設けられた撹拌装置と、前記タンク内で発生したボイルオフガスを前記撹拌装置へ導くボイルオフガス処理路と、前記ボイルオフガス処理路に設けられた、前記撹拌装置内への前記ボイルオフガスの送り込みを可能とする圧縮機と、を備え、前記撹拌装置は、前記ボイルオフガスと前記液化ガスとを撹拌することで前記ボイルオフガスを凝縮させる、再液化装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、タンクの上下方向の高さがそれほど大きくない場合でもボイルオフガスを十分に再液化することができる再液化装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る再液化装置の概略構成図である。
図2】変形例の再液化装置の概略構成図である。
図3】別の変形例の再液化装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に、一実施形態に係る、液化ガスを貯留するタンク1用の再液化装置2Aを示す。本実施形態では、タンク1および再液化装置2Aが、液化ガスを燃料とする船舶に搭載される。たたし、タンク1および再液化装置2Aは陸上に設置されてもよい。また、本実施形態では、液化ガスが液化水素である。ただし、液化ガスはLNG(Liquefied Natural Gas)やLPG(Liquefied Petroleum Gas)などであってもよい。
【0010】
本実施形態では、タンク1が、内槽11と外槽12を含む二重殻タンクである。内槽11と外槽12の間には真空層が形成される。ただし、タンク1は、断熱材で覆われた一重殻タンクであってもよい。また、本実施形態では、タンク1が横向き円筒状である。ただし、タンク1は縦向き円筒状であってもよい。あるいは、タンク1は、球状であってもよいし、略直方体状であってもよい。
【0011】
タンク1内では液化ガスの蒸発によってボイルオフガス(BOG)が発生する。つまり、タンク1内では、液化ガスによって液層が形成されるとともに、ボイルオフガスによって気層が形成される。
【0012】
タンク1内に液化ガスが投入される際には、液化ガスが十分に冷却されている。このため、タンク1内に液化ガスが投入されてから、液化ガスの液面が高位に保たれるしばらくの間、例えば数週間の間は、タンク1内の液化ガスに温度層が形成され、液化ガスの上層の液面近傍ではタンク1内の気層の圧力における飽和温度となって平衡状態に保たれるが、液化ガスの下層においては液化ガスの温度を、タンク1内の気層の圧力における飽和温度未満に保つことが可能である。例えば、タンク1内の気層の圧力は大気圧以上であり、タンク1内の液化ガスである液化水素の温度は20K以上である。
【0013】
再液化装置2Aは、タンク1内の気層の圧力における飽和温度未満の液化ガスを循環させる循環路3を含む。循環路3には、ポンプ4が設けられているとともに、ポンプ4よりも下流側に撹拌装置5が設けられている。
【0014】
本実施形態では、ポンプ4が循環路3の上流端よりも下流側で循環路3に設けられ、ポンプ4および撹拌装置5がタンク1外に配置されている。このため、循環路3の上流端はタンク1の内槽11に接続されており、循環路3の下流部はタンク1を外部から内部へ貫通している。図例では、循環路3の下流端がタンク1の内槽11の底近くで開口しているが、循環路3の下流端はタンク1内の気層中で液化ガスをスプレイ噴射可能に構成されてもよい。
【0015】
さらに、本実施形態では、ポンプ4および撹拌装置5が真空断熱ポッド8内に配置されている。真空断熱ポッド8は、内壁と外壁の間に真空層が形成されたものである。タンク1の内槽11とポンプ4とは導出路31によって接続されている。真空断熱ポッド8の内部は、タンク1に貯留される液化ガスと同じ液化水素または水素ガスで満たされる。導出路31におけるタンク1の外槽12内に位置する部分は一重管で構成され、外槽12と真空断熱ポッド8の内壁または外壁の間の部分は真空断熱二重管で構成され、真空断熱ポッド8の内壁または外壁内に位置する部分は一重管で構成される。
【0016】
ただし、タンク1の内槽11と真空断熱ポッド8とが導出路31によって接続され、真空断熱ポッド8の内部が導出路31を通じてタンク1の内槽11から導出される液化ガスで満たされ、ポンプ4が真空断熱ポッド8内の液化ガスを吸入してもよい。この場合、導出路31および真空断熱ポッド8の内部が循環路3の上流部を構成する。
【0017】
ポンプ4は、導出路31を通じてタンク1内の液化ガスを吸入する。ポンプ4から吐出される液化ガスは吐出路32を通じて撹拌装置5に流入し、撹拌装置5から流出する液化ガスは返送路33を通じてタンク1内へ戻される。
【0018】
吐出路32は真空断熱ポッド8の内壁内に位置するため一重管で構成される。返送路33における真空断熱ポッド8の内壁または外壁内に位置する部分は一重管で構成され、真空断熱ポッド8の内壁または外壁とタンク1の外槽12との間の部分は真空断熱二重管で構成され、タンク1の外槽12内に位置する部分は一重管で構成される。
【0019】
さらに、再液化装置2Aは、タンク1内で発生したボイルオフガスを撹拌装置5へ導くボイルオフガス処理路6を含む。ボイルオフガス処理路6には、撹拌装置5内へのボイルオフガスの送り込みを可能とする圧縮機7が設けられている。つまり、圧縮機7は、ボイルオフガスを、ポンプ4の出口圧力よりも高い圧力まで昇圧する。
【0020】
撹拌装置5は、ボイルオフガスと液化ガスとを撹拌することで、ボイルオフガスを凝縮させる。撹拌装置5の構成は特に限定されるものではなく、種々のものが採用可能である。ボイルオフガスの凝縮液を含む液化ガスは、返送路33を通じてタンク1内へ戻される。なお、撹拌装置5を真空断熱ポッド8内に配置する代わりに、撹拌装置5の表面を真空断熱構造で覆ってもよい。
【0021】
圧縮機7はタンク1外に配置されている。ボイルオフガス処理路6におけるタンク1の内槽11と外槽12の間の部分は一重管で構成され、タンク1の外槽12と真空断熱ポッド8の内壁または外壁との間の部分は真空断熱二重管で構成され、真空断熱ポッド8の内壁または外壁内に位置する部分は一重管で構成される。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の再液化装置2Aでは、ボイルオフガスが撹拌装置5で液化ガスと撹拌されることで凝縮するので、タンク1の上下方向の高さがそれほど大きくない場合でもボイルオフガスを十分に再液化することができる。しかも、タンク1内の気層の圧力における飽和温度未満の液化ガスの冷熱を利用してボイルオフガスを凝縮するので、凝縮した液化ガス、つまり再液化されたボイルオフガスがタンク1へ戻された後に再び気化することが抑制される。
【0023】
また、本実施形態では、ポンプ4、撹拌装置5および圧縮機7がタンク1外に配置されているので、ポンプ4、撹拌装置5および圧縮機7を容易にメンテナンスすることができる。
【0024】
<変形例>
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0025】
例えば、図2に示す変形例の再液化装置2Bのように、撹拌装置5がタンク1内に配置され、ポンプ4および圧縮機7がタンク1外に配置されてもよい。この構成によれば、タンク1と再液化装置2Bのアッセンブリをコンパクト化することができる。
【0026】
また、図3に示す別の変形例の再液化装置2Cのように、ポンプ4および撹拌装置5がタンク1内に配置され、圧縮機7がタンク1外に配置されてもよい。なお、本変形例では、導出路31および真空断熱ポッド8が省略され、ポンプ4が循環路3の上流端で循環路3に設けられている。この構成によれば、タンク1と再液化装置2Cのアッセンブリを顕著にコンパクト化することができる。図3では、循環路3がタンク1の内部から外部へ貫通した後に外部から内部へ貫通しているが、循環路3の全体がタンク1内に配置されてもよい。
【0027】
<まとめ>
第1の態様として、本開示は、液化ガスを貯留するタンク用の再液化装置であって、前記タンク内の気層の圧力における飽和温度未満の液化ガスを循環させる、ポンプが設けられた循環路と、前記ポンプよりも下流側で前記循環路に設けられた撹拌装置と、前記タンク内で発生したボイルオフガスを前記撹拌装置へ導くボイルオフガス処理路と、前記ボイルオフガス処理路に設けられた、前記撹拌装置内への前記ボイルオフガスの送り込みを可能とする圧縮機と、を備え、前記撹拌装置は、前記ボイルオフガスと前記液化ガスとを撹拌することで前記ボイルオフガスを凝縮させる、再液化装置を提供する。
【0028】
上記の構成によれば、ボイルオフガスが撹拌装置で液化ガスと撹拌されることで凝縮するので、タンクの上下方向の高さがそれほど大きくない場合でもボイルオフガスを十分に再液化することができる。しかも、タンク内の気層の圧力における飽和温度未満の液化ガスの冷熱を利用してボイルオフガスを凝縮するので、凝縮した液化ガス、つまり再液化されたボイルオフガスがタンクへ戻された後に再び気化することが抑制される。
【0029】
第2の態様として、第1の態様において、前記ポンプ、前記撹拌装置および前記圧縮機は前記タンク外に配置されてもよい。この構成によれば、ポンプ、撹拌装置および圧縮機を容易にメンテナンスすることができる。
【0030】
第3の態様として、第1の態様において、前記撹拌装置は前記タンク内に配置され、前記ポンプおよび前記圧縮機は前記タンク外に配置されてもよい。この構成によれば、タンクと再液化装置のアッセンブリをコンパクト化することができる。
【0031】
第4の態様として、第1の態様において、前記ポンプおよび前記撹拌装置は前記タンク内に配置され、前記圧縮機は前記タンク外に配置されてもよい。この構成によれば、タンクと再液化装置のアッセンブリを顕著にコンパクト化することができる。
【0032】
第5の態様として、第1乃至第4の態様の何れかにおいて、例えば、前記液化ガスは液化水素であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 タンク
2A,2B,2C 再液化装置
3 循環路
4 ポンプ
5 撹拌装置
6 ボイルオフガス処理路
7 圧縮機
図1
図2
図3