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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025091460
(43)【公開日】2025-06-19
(54)【発明の名称】無人搬送台車における片線誘導システム
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20250612BHJP
   G05D 1/69 20240101ALI20250612BHJP
   G05D 1/244 20240101ALI20250612BHJP
   B61B 10/04 20060101ALI20250612BHJP
   G05D 1/43 20240101ALN20250612BHJP
【FI】
B61B13/00 V
G05D1/69
G05D1/244
B61B10/04 F
G05D1/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023206620
(22)【出願日】2023-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 佑一
(72)【発明者】
【氏名】森中 裕紀
【テーマコード(参考)】
3D101
5H301
【Fターム(参考)】
3D101BA02
3D101BB02
3D101BB03
3D101BB29
3D101BB31
3D101BB52
3D101BB54
3D101BB55
5H301AA02
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301EE06
5H301FF04
5H301HH10
5H301QQ01
(57)【要約】
【課題】複数の無人搬送台車における片線誘導システムを提供すること。
【解決手段】車輪に対する回転および走行角度について駆動制御が可能な走行装置、台車本体に対して左右端が前後に揺動する載置台40、載置台40の回転角度を検出する回転角度検出手段および、走行装置に対する駆動制御を行う駆動制御装置を有する無人搬送台車1と、長尺搬送対象物3を長手方向の複数箇所で搭載する複数の無人搬送台車1A,1Bについて無線通信制御を行うための無線通信機構と、横行搬送する搬送ルートに敷設された1本の誘導ライン6と、を有し、横行搬送時には、1台の前記無人搬送台車1Aに設けられた誘導ライン6の検出を行う走行検出手段57の検出信号に基づく走行ルート制御と、回転角度検出手段58の検出信号に基づく複数の無人搬送台車1A,1Bにおける相対的位置制御とが実行される片線誘導システム。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に対する回転および走行角度について駆動制御が可能な走行装置、前記走行装置によって支持された台車本体、前記台車本体に対する縦軸を中心とした回転により左右端が前後に揺動する載置台、前記載置台の回転角度を検出する回転角度検出手段および、前記走行装置に対する駆動制御を行う駆動制御装置を有する無人搬送台車と、
長尺搬送対象物を長手方向の複数箇所で搭載する複数の前記無人搬送台車について無線通信制御を行うための無線通信機構と、
前記長尺搬送対象物を短手方向に横行搬送する搬送ルートに敷設された1本の誘導ラインと、
を有し、
横行搬送時には、1台の前記無人搬送台車に設けられた前記誘導ラインの検出を行う走行検出手段の検出信号に基づく走行ルート制御と、前記回転角度検出手段の検出信号に基づく複数の前記無人搬送台車における相対的位置制御とが実行される無人搬送台車における片線誘導システム。
【請求項2】
長尺搬送対象物が長手方向の2箇所においてそれぞれマスタ側とスレーブ側となる2台の前記無人搬送台車に搭載され、
前記走行ルート制御は、マスタ側の前記無人搬送台車によって実行され、
前記相対的位置制御は、マスタ側およびスレーブ側の前記無人搬送台車の一方または双方によって実行されるものである
請求項1に記載の無人搬送台車における片線誘導システム。
【請求項3】
前記相対的位置制御は、前記回転角度検出手段の検出信号に基づき、前記載置台について設定された基準角度からの回転角度をズレ量として算出し、前記駆動制御装置は、前記載置台を前記所定の角度に戻すための前記走行装置に対する駆動制御を行うものである
請求項1に記載の無人搬送台車における片線誘導システム。
【請求項4】
前記駆動制御装置は、前記回転角度検出手段の検出信号から得られる前記基準角度に対するズレ方向とズレ量とを基に、前記載置台を前記基準角度に戻すための前記走行装置に対する駆動制御を行うものである
請求項3に記載の無人搬送台車における片線誘導システム。
【請求項5】
前記無人搬送台車は、前記走行装置が、平行に配置された前記一対の車輪と、前記一対の車輪を前後から挟むように配置された各々の駆動モータとが、装置本体に対して一体に構成されたものであり、前記台車本体の前後左右の位置に、前記装置本体が前記台車本体に対して鉛直方向の装置回転軸によって回転可能に組み付けられたものである
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の無人搬送台車における片線誘導システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺搬送対象物を横行搬送させる、複数の無人搬送台車における片線誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造工場あるいは建設現場など多くの場所において無人搬送台車を使用した搬送対象物の自動搬送が行われている。搭載する対象搬送物が長尺なものである場合、その長尺搬送対象物は複数の無人搬送台車に搭載され、各無人搬送台車の走行制御を連動させた協調搬送が行われる。下記特許文献1には、複数の2輪独立駆動式移動ロボットにより搬送対象物を協調搬送する、移動ロボットの協調搬送方式が開示されている。
【0003】
移動ロボットは、各々が2車輪の中点から車輪の進行方向に所定距離を隔てた位置で、その垂直軸の周りに回転自在に搬送対象物を支持する。そして、例えば2台の移動ロボットによる搬送対象物の搬送では、それぞれの制御装置によって搬送対象物の動作指令を受け、所定の演算が独立して実行される。移動ロボットがどのような角度で搬送対象物を把持していたとしても、移動ロボット自身の姿勢およびハンドの角度を計測することで所定の動作を実現でき、互いの移動ロボットの情報を一切必要とせず、搬送対象物の動作指令のみを受けるだけで協調搬送が可能となる。
【0004】
ところで、長尺搬送物の中でも、鉄道車両のように重心の高い製品の搬送を実現するには、搬送ルートに限りなく近い走行制御が必要である。下記特許文献2には、第1走行車および第2走行車が同一の経路を走行する走行車システムが開示されている。この従来例は、無人搬送車としてのマスタAGVおよびスレーブAGVによる長尺搬送物の同期並列搬送であって、スレーブAGVに設けられた距離センサによりマスタAGVをセンシングしながら走行が行われる。マスタAGVでは、LRFによって取得したスキャンデータに基づいてその位置および姿勢が検出され、スレーブAGVでは、無線通信によって得られるマスタAGVの制御信号に基づいてスレーブAGVの制御指令値が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-042958号公報
【特許文献2】特開2009-242063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来例で示すように、長尺搬送物を前後2台の無人搬送台車に搭載し、所定の移動ルートを搬送する技術は様々存在する。ただし、そのほとんどは長尺搬送物の長手方向に移動する点について記載はあるものの、横行搬送させた場合について示されていない。長尺搬送部は、その大きさによって敷地内を前後方向にだけ移動することが困難なこともあり、そうした場合には、長手方向に対して直交する横方向や一定角度の斜め方向へ移動することが求められることもある。しかし、こうした横行搬送や斜行搬送(以下、まとめて「横行搬送」という)を行う複数台の無人搬送台車に相対的な位置関係のズレが生じてしまうと、搭載している長尺搬送物が不安定になるほか、その長尺搬送物にひずみが生じてしまうなどの問題が生じ得る。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、複数の無人搬送台車における片線誘導システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無人搬送台車における片線誘導システムは、車輪に対する回転および走行角度について駆動制御が可能な走行装置、前記走行装置によって支持された台車本体、前記台車本体に対する縦軸を中心とした回転により左右端が前後に揺動する載置台、前記載置台の回転角度を検出する回転角度検出手段および、前記走行装置に対する駆動制御を行う駆動制御装置を有する無人搬送台車と、長尺搬送対象物を長手方向の複数箇所で搭載する複数の前記無人搬送台車について無線通信制御を行うための無線通信機構と、前記長尺搬送対象物を短手方向に横行搬送する搬送ルートに敷設された1本の誘導ラインと、を有し、横行搬送時には、1台の前記無人搬送台車に設けられた前記誘導ラインの検出を行う走行検出手段の検出信号に基づく走行ルート制御と、前記回転角度検出手段の検出信号に基づく複数の前記無人搬送台車における相対的位置制御とが実行される。
【発明の効果】
【0009】
前記構成によれば、長尺搬送対象物を例えば前後の無人搬送台車の載置台に搭載して搬送する際、回転角度検出手段によって載置台の角度を検出することにより、無人搬送台車同士の相対的な位置ズレを確認することができ、それを基に制御装置が走行装置に対して駆動制御することにより車輪に対する回転および走行角度の調整により位置ズレの修正が行えるため、横行搬送時には、1台の前記無人搬送台車に設けられた誘導ラインの検出を行う走行検出手段の検出信号に基づく走行ルート制御の走行とともに、回転角度検出手段の検出信号に基づく複数の前記無人搬送台車における相対的位置制御によって、1本の誘導ラインだけで搬送ルートに従った横行搬送が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】鉄道車体を長手方向の2箇所で無人搬送台車に搭載した状態を示した斜視図である。
図2】無人搬送台車を上方から示した斜視図である。
図3】無人搬送台車を下方から示した斜視図である。
図4】無人搬送台車を示した平面図である。
図5】無人搬送台車における片線誘導システムの無線通信機構を示したブロック図である。
図6】鉄道車体の横行搬送時の制御説明図である。
図7】鉄道車体の横行搬送に2台の無人搬送台車の相対的な位置関係にズレが生じた状況を示した図である。
図8】2台の無人搬送台車の相対的な位置関係にズレが生じた場合のテーブルの回転を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る無人搬送台車における片線誘導システムの一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態の無人搬送台車は、鉄道車両の車体部(以下、鉄道車体と記す)に対する検査及び修理などの検修を行う鉄道車両検修工場において、その鉄道車体を搬送するものである。図1は、その鉄道車体を長手方向の2箇所で無人搬送台車に搭載した状態を示した斜視図である。
【0012】
鉄道車体3は、鉄道車両検修工場において定期的に検査などが行われるが、その鉄道車両検修工場には鉄道レールが敷かれており、トラバーサなどの設備が備えられている。ここで言うトラバーサは、横行用の専用レールが敷設されたものを指している。これまで鉄道車両検修工場内を移動する鉄道車体3は、いわゆる本台車に替えて仮台車が使用され、そこに搭載されることにより鉄道レールに従った移動が行われていた。従って、これまでの鉄道車両検修工場では、鉄道車体3は鉄道レールに沿った長手方向の前後搬送と、トラバーサを使用した短手方向(Y軸方向)の横行搬送によって行われていた。
【0013】
本実施形態では、図1に示すように鉄道車体3を搭載した無人搬送台車1によって、鉄道レールなどに従わない自由な無人搬送を可能にする。図2乃至図4は、その無人搬送台車1を示した図である。特に、図2は上方から示した斜視図であり、図3は下方から示した斜視図、そして図4は平面図である。なお、本実施形態では、鉄道車体3が車体長手方向に移動する方向をX軸方向とし、鉄道車体3が車体長手方向と直交する方向に移動する方向をY軸方向として説明する。
【0014】
無人搬送台車1は、鋼管や板材を接合した台車本体11に構成され、その台車本体11は、前後左右に組み付けられた4台の走行装置12に支持されている。4台の走行装置12は同じ構造であり、台車本体11に対して下側から組み付けられている。走行装置12は、走行装置フレーム20に対して独立して回転する一対の車輪21,22と駆動モータ23,24とが一体になって構成されている。車輪21,22は、各々の車軸が同軸上に位置することで平行に配置され、その車輪21,22を前後に挟んで配置された駆動モータ23,24から、減速機を介して対応する車軸に回転が伝達されるよう構成されている。
【0015】
走行装置12は、鉛直な姿勢の装置回転軸を介して台車本体11に組みつけられ、その軸を中心に図3の矢印A方向に回転するよう構成されている。このため走行装置12は、駆動モータ23,24が単に走行用として機能するだけではなく、操舵用としても機能するようになっている。すなわち、駆動モータ23,24の駆動制御によって車輪21,22の角度(走行角度)が変えられ、例えば車輪21,22が同じ方向に回転すれば直進走行が行われ、それぞれが逆方向に回転すれば操舵が行われる。従って、無人搬送台車1は、4つの走行装置12に対する制御によって、搭載した鉄道車体3の進行方向を、図1のX軸で示すように車体前後方向に直進走行させるだけではなく、X軸に直交する車体幅方向(Y軸方向)の横行、Y軸に対して一定の角度をつけた斜め方向の斜行による走行が可能となる。
【0016】
走行装置12は、詳しく図示しないが、台車本体11に対する装置回転軸に支持ブロックが一体になり、その支持ブロッには車輪21,22および駆動モータ23,24などを保持した走行装置フレーム20が前後方向に揺動可能に軸支されている。従って、無人搬送台車1を構成する4台の走行装置12は、それぞれ車輪21,22が図3に示す矢印A方向に回転するほか、車輪21,22の車軸が、同図の矢印Bで示す方向の回転によって傾くようになっている。
【0017】
また、無人搬送台車1は、台車本体11に対して不図示の揺動梁が設けられ、4台ある走行装置12のうち前側の2台または後側の2台がその揺動梁に組み付けられている。その揺動梁は、台車本体11の幅方向の中心位置において前後軸によって軸支されている。そのため、前後軸を挟んで組み付けられた左右の走行装置12は、揺動梁が図2の矢印Cで示すように揺動することで上下方向に変位可能になっている。こうした構造により、無人搬送台車1は、凹凸があって平坦ではない鉄道車両検修工場内であっても、安定して走行することができるようになっている。
【0018】
無人搬送台車1は、台車本体11の上に、長尺搬送対象物である鉄道車体3を搭載する為の載置台40が設けられている。その載置台40は、それぞれ異なる回転軸を持つ3層のテーブル構造であって、無人搬送台車1を前後方向に見た中間位置に配置されている。載置台40は、鉄道車体3が搭載されるヨーイングテーブルの下にローリングテーブルが配置され、更にその下にピッチングテーブルが配置され、それぞれ上下に重なるようにして一体に構成されている。
【0019】
一番下のピッチングテーブルは、そのY軸端部が支持部材に軸支され、前後の両端が上下に揺動するピッチング動作(図3のD方向)が可能になっている。そのピッチングテーブルには前後軸によってローリングテーブルが軸支され、その左右両端が上下に揺動(図3のF方向)可能になっている。そして、ローリングテーブルに対してヨーイングテーブル41が縦回転軸55(X軸及びY軸に直交する台車本体11の上下方向軸であって略鉛直な軸)を介して組付けられ、ヨーイング動作(図4の矢印E方向)が可能になっている。
【0020】
載置台40は、左右端が前後に揺動するヨーイングテーブル41に、揺動時の角度を検出するためのポテンショメータなど、回転角度センサ58(図5参照)が縦回転軸55と軸受け部47に跨って設けられている。ヨーイングテーブル41の長手方向が台車本体11の幅方向(K軸)と平行になる状態が、回転角度センサ58による検出角度がゼロとなるように設定されている。
【0021】
次に、図5は、無人搬送台車における片線誘導システムの無線通信機構を示したブロック図である。この無人搬送台車における片線誘導システムでは、コンピュータを用いて構成された搬送管理装置8と、無人搬送台車1(1A,1B)に搭載された駆動制御装置7との間で、走行指令などの情報が無線による通信が行われ、搬送ルートに従った鉄道車体3の搬送を実行する無線通信機構が構成されている。
【0022】
2台の無人搬送台車1A,1Bは、一方がマスタとなり他方がスレーブとなって協調搬送が行われる。駆動制御装置7は、搬送管理装置5および無人搬送台車1A,1B同士で走行情報を送受信する為の走行情報通信部71を有し、鉄道車体3を搬送する為の搬送情報を受けるほか互いの走行状態について確認が行われるようになっている。また、駆動制御装置7は、各々の無人搬送台車1A,1Bについて進行速度や移動方向、現在の位置座標などの走行情報を算出する走行情報算出部72を有し、マスタ側であれば自らの位置座標が算出され、スレーブ側であればマスタ側との相対的な位置関係が算出される。
【0023】
更に、駆動制御装置7は、走行装置12に対する走行指令を作成する駆動指令部73を有している。その駆動指令部73では、搬送管理装置5から鉄道車両検修工場における搬送ルートなどを含む搬送情報、走行情報算出部72において算出される走行情報、そして走行情報通信部71を介して取得した他方の無人搬送台車1に関する走行情報などに基づき、所定の搬送ルートに従った走行制御が行われる。その際、駆動指令部73では、回転角度センサ58のほか、図6に示す磁気テープ6を検出する磁気センサ57からの検出信号に基づき、2台の無人搬送台車1A,1Bについて搬送ルートを正しく走行するための走行ルート制御が行われる。
【0024】
ここで、図6は、鉄道車体3の横行搬送時の制御説明図である。無人搬送台車1A,1Bの搬送ルートは、例えば鉄道車両検修工場の床面に誘導ラインである磁気テープ6が敷設され、その磁気テープ6を検出する磁気センサ57が、図2及び図3に示すように、無人搬送台車1A,1Bの台車本体11に各々取り付けられている。2台の無人搬送台車1A,1Bは、こうした搬送ルート検索手段を基に、各々の走行装置12について走行制御が行われる。
【0025】
鉄道車体3が図1に示す前後(X軸方向)に搬送される場合、無人搬送台車1A,1Bは、進行方向に対して同じ位置を移動することになるため、各々の磁気センサ57が1本の磁気テープ6を検出しながら直進することになる。一方で、図6に示すように、鉄道車体3を横行搬送する場合、2台の無人搬送台車1A,1Bは、進行方向に対して異なる位置を移動することになる。そのため、本来であれば2本の磁気テープ6が必要になる。
【0026】
しかし、搬送対象である鉄道車体3は、車種によって車体長さが異なるため、各々の鉄道車体3に対応するには、マスタ側の磁気テープ6を1本にしたとしても、スレーブ側には複数本の磁気テープ6を鉄道車両検修工場の床面に敷設しなければならなくなる。そこで、本実施形態の無人搬送台車における片線誘導システムは、横行搬送時に1本の磁気テープ6だけで、2台の無人搬送台車1A,1Bを搬送ルートに従った走行を可能にする構成がとられている。
【0027】
鉄道車体3の横行搬送は、車輪21,22の回転を制御することによって装置本体20が図3の矢印Aで示す方向に90度回転し、鉄道車体3は車体長手方向に直交する短手方向に横移動することになる。このとき片線誘導システムでは、マスタ側の無人搬送台車1Aが磁気テープ6を磁気センサ57で検出することによる走行ルート制御が行われる。そして、スレーブ側の無人搬送台車1Bでは、走行方向の位置関係がマスタ側と相対的に一定になるようにし、磁気テープ6が存在しない搬送ルートを正しく移動するようにした相対的位置制御が行われる。
【0028】
横行搬送では、図7に示すように、両台車に走行方向における相対的な位置関係にズレが生じてしまうことがある。その原因としては、鉄道車体3の前後の重量バランスによって無人搬送台車1A,1Bに速度差が生じるほか、走行面の凹凸などを原因として一方の走行速度に変化が生じることなどが考えられる。従って、無人搬送台車1A,1Bによる走行方向の位置ズレは、どちらが先行するか否かは搭載する鉄道車体3や走行面の状況などによって様々に変化する。
【0029】
図7では、マスタ側の無人搬送台車1Aがスレーブ側の無人搬送台車1Bより先行してしまっている状況が示されている。このとき鉄道車体3は、長手方向の姿勢がY軸に対して傾いてしまう。しかし、本実施形態の無人搬送台車1A,1Bは、載置台40のヨーイングテーブル41が鉄道車体3の傾きに応じて揺動することになる。そのため、無人搬送台車1A,1Bに搭載されている鉄道車体3は、載置台40に対する位置関係が長手方向の傾きに影響されることなく一定であり、バランスを崩してしまうことや、台車に接触する部分に荷重がかかって歪んでしまうことなどが回避できる。
【0030】
一方で、無人搬送台車1A,1Bのズレ量Sが所定量を超えて大きくなると、安定した搬送が損なわれてしまう。本来であれば、この状況を回復させるため、スレーブ側の無人搬送台車1B側に磁気テープ6が敷設され、それを磁気センサ57で検出することにより走行制御が行われる。しかし、それでは前述したように磁気テープ6の本数が多くなり、特に新しい車種に既存のものが対応できない場合には、その都度、鉄道車両検修工場に磁気テープ6を敷設しなければならなくなる。
【0031】
そこで本実施形態では、無人搬送台車1A,1Bに設けられた載置台40の回転角度センサ58により、ヨーイングテーブル41の回転角度θが検出され、それに基づいた長尺搬送対象物(鉄道車体3)の姿勢を一定にする制御が行われる。つまり、2台の無人搬送台車1A,1Bについて、走行方向の相対的な位置関係が一定になるようにした相対的位置制御によって、スレーブ側の無人搬送台車1Bが、磁気テープ6を検出することなく正しい位置を走行できるようになっている。
【0032】
載置台40は、図2に示すように、その長手方向が台車本体11の幅方向(Y軸方向)を向いた状態が鉄道車体3を搬送する際の基本姿勢であり、この状態が基準角度K(θ=0°)として検出される。ところが、鉄道車体3の搭載によって連結状態になった無人搬送台車1A,1Bは、走行方向に対して相対的な位置関係にズレが生じた場合、鉄道車体3の長手方向軸が台車本体11の前後方向軸(X軸方向)に対して傾き、載置台40が回転する。従って、回転角度センサ58によって回転角度θが検出され、鉄道車体3の姿勢が変化したことが確認できる。
【0033】
無人搬送台車1A,1Bの相対的な位置関係のズレに伴うヨーイングテーブル41の揺動は、鉄道車体3の前後走行、横行および斜行のどのような方向の走行であっても生じ得る。従って、いずれの場合であっても回転角度θを基準角度Kに戻すことにより、無人搬送台車1A,1Bにおける各々の走行位置を正しくし、鉄道車体3の長手方向の姿勢をX軸に合わせることができる。そして、このような処理が横行時に誘導ラインが存在しない無人搬送台車1Bであっても、設定した搬送ルートに従った走行を実現させる。
【0034】
無人搬送台車1A,1Bにおける走行方向の相対的な位置関係のズレは、鉄道車体3のY軸方向の横行を例に挙げれば、図7に示す場合と、その逆であってスレーブ側の無人搬送台車1Bがマスタ側の無人搬送台車1Aより先行する場合とがある。ヨーイングテーブル41の回転方向は、図8に示すように、基準角度Kに対して右側の回転角度Rθと左側の回転角度Lθとがあり、それによって無人搬送台車1A,1Bの走行方向における相対的な位置ズレ状態が判断できる。図8は、無人搬送台車1A,1Bの相対的な位置関係にズレが生じた場合における載置台40のヨーイングテーブル41の回転を示した図である。
【0035】
鉄道車体3の横行搬送は、回転角度Lθであれば図7に示す状況、つまりマスタ側の無人搬送台車1Aがスレーブ側の無人搬送台車1Bより先行してしまっていることが分かる。一方、ヨーイングテーブル41の回転が回転角度Rθの場合であればその逆である。そして、回転角度Rθ,Lθの数値によって、走行方向における無人搬送台車1A,1Bの正しい相対的位置関係からのズレ量Sが算出できる。
【0036】
駆動指令部73では、磁気センサ57および回転角度センサ58からの検出信号を基に、無人搬送台車1Aでは磁気テープ6に沿った搬送ルート制御が、無人搬送台車1Bでは搭載した鉄道車体3の相対的位置制御がそれぞれ行われる。特に、無人搬送台車1Bにおける鉄道車体3の相対的位置制御は、予め設定した閾値をズレ量Sの判定基準として回転角度Rθ,Lθの情報を基に位置ズレを判断し、ヨーイングテーブル41が基準角度Kに戻るように、予め設定された走行装置12の駆動モータ23,24に対する走行制御が行われる。
【0037】
従って、図7の例であれば、先行する無人搬送台車1Aでは誘導ライン(磁気テープ6)上の走行が維持されるとともに、無人搬送台車1Bでは鉄道車体3の姿勢を正しくするため増速させた走行が行われる。こうして鉄道車体3の搬送中は、常に磁気センサ57や回転角度センサ58からの検出信号を基に、無人搬送台車1Aにおける誘導ライン上の走行や、走行方向に対する2台の無人搬送台車1A,1Bの走行位置について調整が繰り返されている。
【0038】
ところで、無人搬送台車1A,1Bに走行方向のズレが生じた場合は、前述したスレーブ側の無人搬送台車1B側ではなく、マスタ側の無人搬送台車1Aを鉄道車体3の姿勢が戻るように調整してもよい。例えば、図7に示す状態であれば、無人搬送台車1Aが磁気テープ6に従った走行ルート制御のほか、無人搬送台車1Bに走行位置を揃えるように減速させる相対的位置制御を行うようにしてもよい。また、無人搬送台車1A,1Bにおける走行位置の調整は相対的位置関係の調整であるため、両台車の相対的な位置が一定であればよく、それは無人搬送台車1A,1Bの両方を互いに調整するようにした相対的位置制御であってもよい。
【0039】
本実施形態の片線誘導システムによれば、載置台40に設けた回転角度センサ58により、搬送中に生じる無人搬送台車1A,1Bの相対的な位置ズレが検出され、相対的位置制御によって位置ズレの修正が可能になる。これにより横行搬送を行う場合であってもスレーブ側の無人搬送台車1Bについて誘導ラインを設ける必要がなく、特に、鉄道車体3の長さに関係なく1本の磁気テープ6だけで搬送ルートに従った横行搬送が可能になる。そして、無人搬送台車1A,1Bは、搬送中に両台車における相対的な位置にズレが生じたとしても、載置台40によって鉄道車体3が捻じれなどによる破損を回避できる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
前記実施形態では、回転角度センサ58の一例としてポテンショメータを例示したが、VRレゾルバ、有底型のエンコーダ、あるいは軸受け部47とリング型エンコーダが一体化された無底型のものなどであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1(1A,1B)…無人搬送台車 3…鉄道車体 6…磁気テープ 7…駆動制御装置 8…搬送管理装置 11…台車本体 12…走行装置 20…装置本体 21,22…車輪 23,24…駆動モータ 40…載置台 41…ヨーイングテーブル 57…磁気センサ 58…回転角度センサ 71…走行情報通信部 72…走行情報算出部 73…駆動指令部 K…基準角度 θ(Rθ,Lθ)…回転角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8