(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009149
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】燃料電池セルの性能判定方法、およびこの性能判定方法を備える燃料電池車両
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04537 20160101AFI20250110BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20250110BHJP
H01M 8/04664 20160101ALI20250110BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20250110BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20250110BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20250110BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20250110BHJP
B60L 50/70 20190101ALI20250110BHJP
B60L 58/30 20190101ALI20250110BHJP
【FI】
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/04664
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/00 Z
H01M8/00 A
B60L50/60
B60L50/70
B60L58/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111952
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】水下 佳紀
(72)【発明者】
【氏名】竹井 力
(72)【発明者】
【氏名】山浦 潔
(72)【発明者】
【氏名】内田 誠
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 克良
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD01
5H125EE32
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB22
5H127BB37
5H127BB39
5H127DA01
5H127DB49
5H127DB52
5H127DC42
5H127FF03
(57)【要約】
【課題】n型半導体としての性質を有するセラミックスを電極の担体として用いた燃料電池セルの性能を判定する方法、および、この判定方法を搭載した燃料電池車両を提供する。
【解決手段】 n型半導体としての性質を有するセラミックスを電極担体として用いる燃料電池セルの性能判定方法であって、前記燃料電池セルの出力を変化させる第1ステップと、前記第1ステップにおいて前記出力が変化した際の前記燃料電池セルの電気抵抗を取得する第2ステップと、前記電気抵抗の変化に応じて、前記燃料電池セルの性能を判定する第3ステップと、を備える燃料電池セルの性能判定方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型半導体としての性質を有するセラミックスを電極担体として用いる燃料電池セルの性能判定方法であって、
前記燃料電池セルの出力を変化させる第1ステップと、
前記第1ステップにおいて前記出力が変化した際の前記燃料電池セルの電気抵抗を取得する第2ステップと、
前記電気抵抗の変化に応じて、前記燃料電池セルの性能を判定する第3ステップと、
を備える燃料電池セルの性能判定方法。
【請求項2】
前記第1ステップにおいて、前記燃料電池セルの出力を無負荷状態から所定出力まで上昇させ、
前記第2ステップにおいて、前記無負荷状態における第1抵抗値と、前記所定出力まで上昇させた状態における第2抵抗値と、を取得し、
前記第3ステップにおいて、前記第1抵抗値と、前記第2抵抗値と、の差を演算し、
前記差が大きいほど、前記電極担体に担持される貴金属担持密度が低いと推定し、
推定した前記貴金属担持密度が低いほど、前記燃料電池セルの性能が低いと判定する、
請求項1に記載の燃料電池セルの性能判定方法。
【請求項3】
前記燃料電池セルの性能が低下するほど、前記所定出力を増加する、
請求項2に記載の燃料電池セルの性能判定方法。
【請求項4】
前記燃料電池セルの起動回数が所定回数増加する毎に、前記第1ステップから前記第3ステップを実行する、
請求項1項に記載の燃料電池セルの性能判定方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料電池セルの性能判定方法を含む制御装置を備える、
燃料電池車両。
【請求項6】
前記燃料電池セルで発電した電力を蓄電可能な駆動用電池と、
前記駆動用電池から供給される電力によって車輪を駆動するモータと、
をさらに備える、
請求項5項に記載の燃料電池車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池セルの性能判定方法、およびこの性能判定方法を備える燃料電池車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池セルを有する燃料電池車両が知られている。このような燃料電池セルは、電極を有する。電極は、カーボンなどの担体に貴金属が担持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カーボンを用いた担体は、腐食が発生しやすい。近年は、このような腐食のないセラミックスに貴金属を担持した電極が開発されている。セラミックスに担持した貴金属の脱落や溶融は、燃料電池セルの性能低下の原因となり得る。
【0005】
本開示の課題は、n型半導体としての性質を有するセラミックスを電極の担体として用いた燃料電池セルの性能を判定する方法、および、この判定方法を搭載した燃料電池車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る燃料電池セルの性能判定方法は、n型半導体としての性質を有するセラミックスを電極担体として用いる燃料電池セルの性能判定方法であって、前記燃料電池セルの出力を変化させる第1ステップと、前記第1ステップにおいて前記出力が変化した際の前記燃料電池セルの電気抵抗を取得する第2ステップと、前記電気抵抗の変化に応じて、前記燃料電池セルの性能を判定する第3ステップと、を備える。
【0007】
この燃料電池セルの性能判定方法によれば、n型半導体としての性質を有するセラミックスを電極として用いる燃料電池セルの性能を、例えば燃料電池を分解することなく判定することができる。
【0008】
また、本開示に係る燃料電池車両は、このような燃料電池セルの性能判定方法を含む制御装置を備える。
【0009】
この燃料電池車両では、燃料電池セルを搭載した状態で燃料電池の性能を判定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、n型半導体としての性質を有するセラミックスを電極の担体として用いた燃料電池セルの性能を判定する方法、および、この判定方法を搭載した燃料電池車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態による燃料電池車両のシステム図。
【
図2】本開示の一実施形態による貴金属担持密度と負荷電流と電気抵抗との関係を示すグラフ。
【
図3】本開示の一実施形態による変化量と貴金属担持密度の相関を示すマップ。
【
図4】本開示の一実施形態による制御装置が実行する制御手順のフローチャート。
【
図5】本開示の一実施形態による燃料電池システムの起動停止回数と抵抗と負荷電流との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように燃料電池車両1は、発電装置としての燃料電池システム2と、制御装置4と、モータジェネレータ(M)8と、駆動用電池(BT)10と、を備える。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池車両1は、外部充電又は外部給電が可能なレンジエクステンダー型プラグイン燃料電池自動車(PFCV)である。燃料電池システム2は、主として駆動用電池10を充電する必要がある場合に起動される。燃料電池車両1は、燃料電池システム2によって発電した電力をDC-DCコンバータ(図示無し)で電圧変換したのちに駆動用電池10に供給する。また、燃料電池車両1は、駆動用電池10からモータジェネレータ8への出力が不足する場合は、一時的に燃料電池システム2で発電した電力をモータジェネレータ8へ供給する。
【0014】
モータジェネレータ8は、減速機(図示せず)および駆動軸8aを介して駆動輪8bを駆動する。モータジェネレータ8は、インバータ8cを介して、駆動用電池10と接続される。また、インバータ8cは、制御装置4と電気的に接続される。本実施形態では、モータジェネレータ8は、三相交流モータであり、制御装置4からの指示に基づき、インバータ8cを介して力行と回生とに制御される。インバータ8cは、制御装置4から力行を指示されると、駆動用電池10から電力を受け取り、モータジェネレータ8に電力を供給して力行させる。一方、インバータ8cは、制御装置4から回生を指示されると、モータジェネレータ8で発電した電力を受け取り、駆動用電池10に電力を供給する。
【0015】
駆動用電池10は、モータジェネレータ8に電力を供給する。本実施形態では、駆動用電池10は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成され、複数の電池セルをまとめて構成された図示しない電池モジュールを有する。駆動用電池10は、モータジェネレータ8の電源として機能する。さらに駆動用電池10は、電池モジュールの電圧などから充電率(State Of Charge、以下、SOC)を算出する電池制御装置10aに接続される。駆動用電池10は、電池制御装置10aを介して制御装置4と電気的に接続される。
【0016】
燃料電池システム2は、燃料電池セル12を纏めて構成した燃料電池スタックと、空気供給経路14と、過給機16と、燃料ガス循環経路18と、燃料ガス供給経路20と、燃料ガス排出経路24と、空気排出経路26と、カソード出口弁26aと、圧力センサ28と、電流センサ30と、電圧センサ32と、を有する。なお、
図1は、燃料電池スタックのうちひとつの燃料電池セル12を簡略化して示している。
【0017】
燃料電池セル12は、燃料ガスと空気とが供給され、供給された燃料ガスと空気とによって化学反応を行い発電する。本実施形態では、燃料ガスは水素(H2)である。燃料電池セル12は、発電した電力を駆動用電池10に供給する。
【0018】
燃料電池セル12は、アノード12aとカソード12bを含む。アノード12aは、アノード側電極触媒層(図示せず)を含む。本実施形態ではアノード側電極触媒層は、電極担体に、白金(Pt)系材料などの貴金属を含む触媒を担持した電極触媒で構成される。電極担体は特に限定はなく、例えばカーボンを主成分とした担体や導電性セラミックスなどを主成分とした担体が挙げられる。
【0019】
アノード12aの上流には燃料ガス供給経路20が接続され、水素タンク(図示せず)から燃料ガス供給経路20を通過して水素が供給される。アノード12aに供給された水素は、アノード側電極触媒層の電極触媒によって水素イオンと電子に分解される。水素イオンは、カソード側電極触媒層に移動する。電子は、電流となってカソード12bへ移動する。アノード12aの下流には、燃料ガスを排出する燃料ガス排出経路24が接続され、アノード12aで分解されなかった水素が燃料ガス排出経路24を介して排出される。
【0020】
燃料ガス循環経路18は、燃料ガス排出経路24と燃料ガス供給経路20とを接続し、アノード12aに供給される燃料ガスの一部を循環し、再びアノード12aに供給する。燃料ガス循環経路18は、燃料ガス供給経路20と接続される。
【0021】
カソード12bは、アノード12aと電解質膜12cを挟んで反対側に設けられる。カソード12bは、カソード側電極触媒層(図示せず)を含む。本実施形態では、カソード側電極触媒層は、酸化スズまたは酸化タンタルなどのn型半導体としての性質を有するセラミックス系材料を含む電極担体に、白金(Pt)系材料などの貴金属を含む触媒を担持した電極触媒で構成される。
【0022】
カソード12bの上流には、空気供給経路14が接続される。空気供給経路14は、カソード12bの上流側で大気と接続し、大気中の空気を、フィルター14bを介してカソード12bに供給する。また、空気供給経路14上は、大気吸気弁14aと、過給機16と、インタークーラ14cが設けられる。大気吸気弁14aは、空気供給経路14に吸入する場合、弁を開いて上流と下流を連通させ、大気とカソード12bを連通させる。過給機16は、大気から空気を吸入するとともにカソード12bに圧送する。インタークーラ14cは、圧送する空気を冷却する。本実施形態では過給機16は電動ポンプであり、制御装置4と電気的に接続される。
【0023】
カソード12bの下流には、空気排出経路26が接続される。空気排出経路26は、カソード12bの下流側で大気と接続し、カソード12bで反応できなかった空気が大気中に排出される。
【0024】
圧力センサ28は、アノード12aおよびカソード12b内の圧力を検知する。電流センサ30は、カソード12b内の電流を検知する。電圧センサ32は、カソード内の電圧を検知する。これらセンサは、制御装置4と電気的に接続される。
【0025】
制御装置4は、燃料電池セル12の出力を変化させ、燃料電池セル12の出力が変化した際の燃料電池システム2の電気抵抗Ωを取得する。本実施形態では燃料電池システム2は、電流センサ30および電圧センサ32から電流Aおよび電圧Vを取得する。制御装置4は、取得した電流Aの値とおよび電圧Vの値から燃料電池セル12の電気抵抗Ωを取得する。
【0026】
このほか、制御装置4は、各センサおよび各種装置からの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、燃料電池車両1が、所望の運転状態となるように燃料電池システム2を制御する。また、制御装置4は、駆動用電池10の充電率(SOC)を取得し、車両の走行状態などに応じて目標充電率Btを算出する。制御装置4は、算出した目標充電率Btと充電率(SOC)とに応じて、燃料電池システム2を起動して発電させる。制御装置4は、DC-DCコンバータ(図示無し)を制御して目標充電率Btまで駆動用電池10を充電する。さらに、制御装置4は、車両に要求される出力を演算し、インバータ8cを介してモータジェネレータ8を制御する。
【0027】
制御装置4は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。なお、各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)により処理することも可能である。
【0028】
このようにn型半導体としての性質を有するセラミックス系材料を用いた電極担体は、表面に酸素が吸着されると、酸素によって表層の電子が吸引され、電子空乏層と呼ばれる一種の絶縁層が発生する。電子空乏層が発生すると、電子移動が阻害され、電気抵抗Ωが増加する。
【0029】
電子空乏層は、電極担体に電子が供給されることによって減少する。電極担体は、電極担体に担持された貴金属の担持密度が高いほど、より多くの電子の供給を受ける。このため
図3に示すように、燃料電池セル12の出力(負荷電流)をゼロから所定出力まで増加させた場合、貴金属の担持密度が低いほど電気抵抗Ωの低下が大きくなる。
【0030】
より具体的には、
図2の貴金属担持密度高のグラフに示すように、電極担体に担持させた貴金属の担持密度が高い場合、燃料電池セル12の出力(負荷電流)をゼロ(無負荷状態)から所定出力まで増加させた際に、燃料電池セル12の電気抵抗Ωの変化量であるΔΩが小さくなる。ここで、所定出力は、電気抵抗Ωの低下が収束した際の出力であればよい。本実施形態では、金属担持密度高のグラフでは変化量ΔΩは、ほぼゼロである。一方、
図2の貴金属担持密度低のグラフに示すように、電極担体に担持させた貴金属の担持密度が低い場合、燃料電池セル12の出力(負荷電流)をゼロから所定出力まで増加させた際の変化量ΔΩが大きくなる(
図2のΔΩa参照)。また、
図2の貴金属担持密度中のグラフに示すように、電極担体に担持させた貴金属の担持密度が高い場合と低い場合の間にある中の場合、燃料電池セル12の出力(負荷電流)をゼロから所定出力まで増加させた際の変化量ΔΩは、ゼロとΔΩaの間の値であるΔΩbとなる。
【0031】
制御装置4は、上記の特性を利用して燃料電池システム2の性能を判定することが可能である。本実施形態では、制御装置4は、
図3に示すような電気抵抗Ωの変化量ΔΩと、貴金属担持密度の関係を記録したマップ、または、これらマップから取得可能な変化量ΔΩと金属担持密度の相関式を記憶している。
図3に示すように、マップまたは相関式は、電極担体が担持する貴金属の担持密度が低いほど、変化量ΔΩが大きくなるマップまたは相関式であればよい。このようなマップまたは相関式は、予め実験などによって取得してもよい。例えば、
図3に示すマップは、
図2における燃料電池セル12の貴金属担持密度低から貴金属担持密度高までの変化量ΔΩを予め実験によって取得し、貴金属担持密度低における変化量ΔΩであるΔΩaと、貴金属担持密度中における変化量ΔΩであるΔΩbと、貴金属担持密度高における変化量ΔΩがゼロであることをマップに記録した例である。相関式は、このようなマップから予め決定してもよい。
【0032】
制御装置4は、燃料電池セル12の出力をゼロから所定出力まで変化させた際の燃料電池セル12の電気抵抗の変化量ΔΩを取得し、記憶したマップまたは相関式と照合することによって貴金属担持密度を推定する。より具体的には、制御装置4は燃料電池セル12の出力を無負荷状態から所定出力まで上昇させ、無負荷状態における電気抵抗Ωである第1抵抗値と、所定出力まで上昇させた状態における電気抵抗Ωである第2抵抗値と、を取得する。制御装置4は、第1抵抗値と、第2抵抗値と、の差分を演算し、電気抵抗の変化量ΔΩを取得する。制御装置4は、
図3に示すマップまたは相関式に変化量ΔΩを当てはめ、貴金属担持密度を推定する。制御装置4は、変化量ΔΩが大きいほど、電極担体に担持される貴金属担持密度が低いと推定する。制御装置4は、推定した貴金属担持密度が低いほど、燃料電池システム2の性能が低いと判定する。
【0033】
次に制御装置4が実行する制御手順について、
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0034】
ステップS1では制御装置4は、燃料電池システム2の起動と停止を繰り返した回数である起動・停止回数(起動回数の一例)が所定回数以上に到達したか否か判断する。制御装置4は、起動・停止回数が所定回数以上の場合(ステップS1 YES)、ステップS2に処理を進める。
【0035】
ステップS2では制御装置4は、性能判定制御を開始し、ステップS3に処理を進める。
【0036】
ステップS3では制御装置4は、燃料電池セル12の出力を所定出力まで上昇させる。所定出力は、上記のとおり電気抵抗Ωの低下が収束した際の出力であればよい。制御装置4は、燃料電池システム2を所定出力まで上昇させるとステップS4に処理を進める。
【0037】
ステップS4では制御装置4は、燃料電池システム2の性能判定を実行する。本実施形態では、制御装置4は、上記のとおり変化量ΔΩから貴金属担持密度を推定する。制御装置4は、燃料電池システム2の性能判定を実行すると、ステップS5に処理を進める。
【0038】
ステップS5では制御装置4は、性能が許容値未満か否か判定する。本実施形態では、推定した貴金属担持密度が所定値以下であると制御装置4が判断した場合、制御装置4は性能が許容値未満と判断する。制御装置4は、性能が許容値未満であると判断した場合(ステップS5 YES)、ステップS6に処理を進める。
【0039】
ステップS6では制御装置4は、警告を表示する。警告は、例えば燃料電池車両1のインパネ等に設けられたディスプレイに表示すればよい。制御装置4は、警告を表示すると、処理を終了する。
【0040】
ステップS1において起動・停止回数が所定回数未満であると制御装置4が判断した場合(ステップS1 NO)、制御装置4は、起動・停止回数が所定回数以上となるまで、ステップS1の処理を繰り返す。
【0041】
ステップS5において性能が許容値以上であると制御装置4が判断した場合(ステップS5 NO)、制御装置4は、ステップS7に処理を進める。
【0042】
ステップS7では制御装置4は、次回判定を行う起動・停止回数を決定する。制御装置4は、起動・停止回数を決定する際に、次回判定を行う際の所定出力を決定してもよい。
図5に示すように、制御装置4は、起動・停止回数が増加するほど、所定出力を増加させてもよい。起動・停止回数が増加すると、例えば貴金属が溶融し貴金属担持密度が低下する。すなわち、燃料電池セル12の劣化が進む。このため、無負荷状態における電子空乏層による電気抵抗Ωが大きくなる。
【0043】
無負荷状態における電気抵抗Ωが大きい場合、変化量ΔΩが大きくなるため、電気抵抗Ωの低下が収束するまでの出力が、より大きくなる。すなわち、より大きな所定出力が必要となる。このため、制御装置4が、起動・停止回数が増加するほど所定出力を増加させることによって、変化量ΔΩをより早く取得することができる。これによって、性能判定制御の時間が短くなる。
【0044】
以上説明した通り、本開示によれば、n型半導体としての性質を有するセラミックスを電極の担体として用いた燃料電池セルの性能を判定する方法、および、この判定方法を搭載した燃料電池車両1を提供できる。
【0045】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、シリーズ型の燃料電池車両1の制御装置4が性能判定を実行する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、本開示の性能判定方法を、燃料電池システム2の製造時に用いてもよい。燃料電池システム2の性能は、起動・停止の繰り返しのみならず、例えば、貴金属を担体に担持する工程における脱落などによっても低下する。本開示の性能判定方法は、このような性能の低下も判定できる。これによって、燃料電池システム2の製造時の品質が向上する。
【0047】
また、上記実施形態では、無負荷時と所定出力時の電気抵抗Ωの差分を用いて変化量ΔΩを演算したが、本開示はこれに限定されない。変化量ΔΩは、例えばゼロ(無負荷状態)における電気抵抗Ωと、所定出力における電気抵抗Ωの割合であってもよい。この場合制御装置4は、無負荷状態における電気抵抗Ωである第1抵抗値と、所定出力まで上昇させた状態における電気抵抗Ωである第2抵抗値と、の割合を演算し、割合が小さいほど第1抵抗値と第2抵抗値の差が大きい、すなわち変化量ΔΩが大きいとして、貴金属担持密度を推定してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 :燃料電池車両
2 :燃料電池システム
4 :制御装置
10 :駆動用電池
12 :燃料電池セル