(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009157
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】樹脂成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20250110BHJP
B29C 45/78 20060101ALI20250110BHJP
B29C 33/14 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/78
B29C33/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111968
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】杉原 敦史
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 修一
(72)【発明者】
【氏名】神園 大樹
(72)【発明者】
【氏名】丹生谷 良広
(72)【発明者】
【氏名】岸本 俊
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AA03
4F202AD03
4F202AD15
4F202AE03
4F202AH42
4F202AJ13
4F202AM32
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CN05
4F202CN12
4F202CN27
4F202CQ01
4F206AA03
4F206AD03
4F206AD15
4F206AE03
4F206AG03
4F206AH42
4F206AM32
4F206JA07
4F206JB12
4F206JL02
4F206JM05
4F206JN25
4F206JN43
4F206JQ81
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本開示は、ボイドの発生が抑制された樹脂成形体の製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本開示においては、肉厚部および薄肉部を有する樹脂成形体の製造方法であって、基部11および凸部12を有するインサート部材100を準備する、準備工程と、上記インサート部材100を金型200に挿入して固定し、射出成形装置を用いて、溶融した熱可塑性樹脂Rを、上記金型の内部空間Sに充填する充填工程と、上記内部空間に充填された上記熱可塑性樹脂に保持圧力を印加する保圧工程と、を有し、上記保圧工程において、上記内部空間における上記肉厚部となる第1部分の冷却を促進し、上記内部空間における上記薄肉部となる第2部分の冷却を抑制する、樹脂成形体の製造方法を提供することにより上記課題を解決する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肉厚部および薄肉部を有する樹脂成形体の製造方法であって、
基部および凸部を有するインサート部材を準備する、準備工程と、
前記インサート部材を金型に挿入して固定し、射出成形装置を用いて、溶融した熱可塑性樹脂を、前記金型の内部空間に充填する充填工程と、
前記内部空間に充填された前記熱可塑性樹脂に保持圧力を印加する保圧工程と、を有し、
前記保圧工程において、前記内部空間における前記肉厚部となる第1部分の冷却を促進し、前記内部空間における前記薄肉部となる第2部分の冷却を抑制する、樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
冷却ガスまたは冷却液を用いて前記第1部分の冷却を促進する、請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
前記金型は断熱材を有し、
前記断熱材により、前記第2部分の冷却を抑制する、請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
前記インサート部材は、
厚さ方向に積層された複数の電極を有する積層部および前記積層部の外縁を覆うシール部を有する積層体と、前記厚さ方向と直交する第1方向において前記積層体の内部から外部に突出する複数の電圧端子と、を有する積層構造体と、
前記突出した複数の電圧端子の先端部分を収容するハウジングと、を有し、かつ、
前記第1方向において、前記積層体および前記ハウジングとの間に隙間を有する、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形により樹脂成形体を製造することが知られている。射出成形においては、通常、金型内の空間(キャビティ)に、溶融樹脂を充填する充填工程と、上記空間に充填された樹脂に保持圧力を印加する保圧工程と、が行われる。例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂を金型内のキャビティ部に射出成形して継手本体を得る電気融着式管継手の製造方法において、継手本体に内封される空気等のガスにより成形体内に生じるボイドに隣接するキャビティ部の外部に加圧手段を設け、射出成形後から冷却固化までに加圧手段を用いて継手本体を部分的に加圧してボイドを解消する過程を含む電気融着式管継手の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、肉厚部および薄肉部を有する樹脂成形体を射出成形により製造する場合、樹脂成形体の薄肉部となる側に導入口を設けた金型を用い、金型の内部空間において導入口から厚肉部となる側に向けて導入した樹脂を流すことが想定される。また、金型の内部空間において肉厚部となる部分は、薄肉部となる部分に比べて、樹脂の温度が低下しにくいことが想定される。その場合、薄肉部となる部分の樹脂が先に固化してしまい、保圧工程において、圧力が肉厚部となる部分の樹脂に印加されず、ボイドが発生する恐れがある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ボイドの発生が抑制された樹脂成形体の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]
肉厚部および薄肉部を有する樹脂成形体の製造方法であって、基部および凸部を有するインサート部材を準備する、準備工程と、上記インサート部材を金型に挿入して固定し、射出成形装置を用いて、溶融した熱可塑性樹脂を、上記金型の内部空間に充填する充填工程と、上記内部空間に充填された上記熱可塑性樹脂に保持圧力を印加する保圧工程と、を有し、上記保圧工程において、上記内部空間における上記肉厚部となる第1部分の冷却を促進し、上記内部空間における上記薄肉部となる第2部分の冷却を抑制する、樹脂成形体の製造方法。
【0007】
[2]
冷却ガスまたは冷却液を用いて上記第1部分の冷却を促進する、[1]に記載の樹脂成形体の製造方法。
【0008】
[3]
上記金型は断熱材を有し、上記断熱材により、上記第2部分の冷却を抑制する、[1]または[2]に記載の樹脂成形体の製造方法。
【0009】
[4]
上記インサート部材は、厚さ方向に積層された複数の電極を有する積層部および上記積層部の外縁を覆うシール部を有する積層体と、上記厚さ方向と直交する第1方向において上記積層体の内部から外部に突出する複数の電圧端子と、を有する積層構造体と、上記突出した複数の電圧端子の先端部分を収容するハウジングと、を有し、かつ、上記第1方向において、上記積層体および上記ハウジングとの間に隙間を有する、[1]から[3]までのいずれかに記載の樹脂成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示においては、ボイドの発生が抑制された樹脂成形体を製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示における準備工程で準備するインサート部材を例示する概略図である。
【
図2】本開示における充填工程および保圧工程を説明する図である。
【
図3】本開示における積層構造体を例示する断面図である。
【
図4】本開示における電圧端子を例示する概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示における樹脂成形体の製造方法について、詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。ここで、本開示において「肉厚部」とは、後述する第1方向における長さが肉薄部よりも長い部分をいう。言い換えると、「肉薄部」とは、後述する第1方向における長さが肉厚部よりも短い部分をいう。
【0013】
図1は、本開示におけるインサート部材を例示する概略図である。具体的には、
図1(a)は、インサート部材の一例を示す分解図であり、
図1(b)は、インサート部材の一例を示す概略平面図であり、
図1(c)は、インサート部材の一例を示す部分断面図である。また、
図2は、本開示における充填工程および保圧工程を説明する図であり、
図2(a)、(b)は充填工程を示す概略断面図であり、
図2(c)は保圧工程を示す概略断面図である。なお、
図1(c)および
図2(b)は、具体的には、インサート部材がハウジングを有する場合において、ハウジングの貫通孔部分を断面視した図である。
【0014】
本開示における樹脂成形体の製造方法においては、まず、
図1(a)、(b)に示すように、基部100aおよび凸部100bを有するインサート部材100を準備する(準備工程)。次に、
図2(a)、(b)に示すように、インサート部材100を金型200に挿入して固定し、射出成形装置(不図示)を用いて、溶融した熱可塑性樹脂Rを、金型200の内部空間Sに充填する(充填工程)。そして、
図2(c)に示すように、内部空間Sに充填された熱可塑性樹脂Rに保持圧力を印加する(保圧工程)。さらに、本開示においては、上記保圧工程において、内部空間Sにおける肉厚部となる第1部分の冷却を促進し、内部空間Sにおける薄肉部となる第2部分の冷却を抑制する。ここで、
図2(b)に示すように、肉厚部となる第1部分とは、金型200の内部空間のうち、インサート部材100の基部(積層体11)と凸部(電圧端子12およびハウジング20)が、第1方向において重複する部分をいう。一方、肉薄部となる第2部分とは、金型200の内部空間のうち、インサート部材の基部が第1方向において凸部と重複しない部分をいう。
【0015】
本開示では、保圧工程において、内部空間Sにおける肉厚部となる第1部分の冷却を促進し、内部空間における薄肉部となる第2部分の冷却を抑制する。そのため、温度が低下しにくい肉厚部となる部分(第1部分)における熱可塑性樹脂の固化を促進でき、温度が低下しやすい薄肉部となる部分(第2部分)における熱可塑性樹脂の固化を抑制できる。ここで、
図2(a)に示すように、第2部分は、導入口Hから導入した熱可塑性樹脂が第1部分に流れる流路を含む。また、上記流路を介して、保圧工程において圧力が印加される。そのため、第2部分の固化を抑制することで、第1部分が固化する前に上記流路が閉塞されることを抑制でき、保圧工程において第1部分に十分に圧力を印加することができる。このため、本開示における樹脂成形体の製造方法においては、特に、肉厚部分においてボイドの発生が抑制された樹脂成形体を製造することができる。
【0016】
ここで、射出成形においては、成形品の生産能率を示す指標として、1つの成形品を製造するのに要する単位時間である成形サイクル(サイクルタイム)が使用されている。なお、成形サイクルとは、金型を開ける時間、樹脂を充填する時間、保圧する時間、充填した樹脂を冷却する時間、金型を開ける時間、成形品を取り出す時間の合計時間である。この点、本開示における樹脂成形体の製造方法では、樹脂の温度が低下しにくい厚肉部となる部分の冷却を促進するため、上記冷却時間を短縮化することができ、成形サイクルを短くすることができるという利点もある。
【0017】
1.準備工程
本開示における準備工程は、基部および凸部を有するインサート部材を準備する工程である。
【0018】
インサート部材の一例について、
図1、3および4を用いて説明する。
図1は上述のとおりである。
図3および
図4は、
図1に示されたインサート部材を構成する部材を例示する図である。具体的には、
図3は、
図1に示されたインサート部材における積層構造体を例示する概略断面図であり、
図4は、
図1に示されたインサート部材における電圧端子を例示する概略斜視図である。
【0019】
図1(a)、(b)に示されるインサート部材100は、積層体11と、厚さ方向zと直交する第1方向xにおいて積層体11の内部から外部に突出する複数の電圧端子12と、を有する積層構造体10と、突出した複数の電圧端子12の先端部分を収容するハウジング20と、を有する。また、
図1(b)に示されるように、第1方向xにおいて、ハウジング20と積層体11との間には隙間がある。
図1(b)に示すように、積層体11がインサート部材100における基部100aであり、積層体11から突出した電圧端子12およびハウジング20が、インサート部材100における凸部100bである。
【0020】
図3に示すように、積層構造体10は、厚さ方向zに積層された複数の電極Eを有する積層部11aおよび積層部11aの外縁を覆うシール部11bを有する積層体11を有する。また、積層構造体10は、厚さ方向zと直交する第1方向xにおいて積層体11の内部から外部に突出する電圧端子12を有する。シール部11bは、通常、積層部11aの外縁全周に沿って配置される。
【0021】
図3に示す積層構造体10の積層部11aは、電極Eとして、バイポーラ電極BPと、正極側端部電極CAと、負極側端部電極ANと、を有する。電極Eは、集電体1と、活物質層(正極活物質層2および負極活物質層3の少なくとも一方)と、を有する。また、
図2に示すように、バイポーラ電極BPは、集電体1と、集電体1の一方の主面上に配置された正極活物質層2と、集電体1の他方の主面上に配置された負極活物質層3と、を有する。また、正極側端部電極CAは、集電体1と、集電体1の一方の主面上に配置された正極活物質層2と、を有する。また、負極側端部電極ANは、集電体1と、集電体1の一方の主面上に配置された負極活物質層3と、を有する。
【0022】
図3に示すように、積層部11aは、厚さ方向zに積層された、複数の発電単位U(U
1、U
2、U
3)を有していてもよい。発電単位は、通常、正極活物質層、セパレータおよび負極活物質層を有する単位である。発電単位に電解液が供給されることで、積層体は電池として機能する。
図3に示すように、複数の発電単位U(U
1、U
2、U
3)は、互いに、直列接続されていてもよい。また、特に図示しないが、複数の発電単位は、互いに、並列接続されていてもよい。
【0023】
図4に示すように、電圧端子12は、接続部12a、中間部12bおよび挿入部12cを有している。なお、通常、上述した積層体における1つの発電単位に対して、1つの電圧端子が設けられる。接続部12aは、上述した積層体の内部に位置する部分であり、
図3に示すように、発電単位Uにおける集電体1と接続される。また、挿入部12cは、積層体の外部に位置する部分であり、積層体から突出した電圧端子の先端部分を構成する部分である。後述するように、挿入部12cの少なくとも一部はハウジングに収容される。また、中間部12bは接続部12aと挿入部12cとを接続する部分である。通常、第1方向において中間部の一部が積層体の外部に位置する。つまり、第1方向における中間部の一端(接続部との接点)が積層体の内部に位置し、他端(挿入部との接点)が積層体の外部に位置していてもよい。ここで、
図4に示すように、通常、電圧端子12における接続部12aの幅(第1方向xと直交する第2方向yにおける長さ)は、中間部12bおよび挿入部12cの幅よりも広い。
【0024】
図1(c)に示すように、第1方向xにおいて、挿入部12cの全部がハウジング20(貫通孔)に挿入されていてもよい。一方、図示しないが、挿入部の一部がハウジングに挿入されていてもよい。また、第1方向において、中間部の一部がハウジングに挿入されていてもよい。一方、中間部は貫通孔に挿入されていなくてもよい。中間部の一部を貫通孔に挿入すること、または、中間部を貫通孔に挿入しないことにより、第1方向において積層体とハウジングとの間に隙間を設けることができる。
【0025】
図1(a)に示すように、ハウジング20は、複数の貫通孔21を有している。貫通孔の数は、上述した電圧端子の数と一致する。また、
図1(c)に示すように、貫通孔21は、積層体11側に位置する第1開口21aと、第1方向xにおいて第1開口21aとは反対側に位置する第2開口21bとを有している。
図1(c)に示すように、貫通孔は、第1開口21aおよび第2開口21bよりも幅が狭い、中間領域21cを有している。中間領域21cにより、後述する充填工程において充填される熱可塑性樹脂が、第2開口21bから漏れることを抑制することができる。
【0026】
2.充填工程
図2(a)に示すように、本開示における充填工程は、インサート部材100を金型200に挿入して固定し、射出成形装置(不図示)を用いて、溶融した熱可塑性樹脂を、金型200の内部空間Sに充填する。
図2(a)に示すように、インサート部材の凸部(電圧端子およびハウジング)側を金型に挿入して、固定する。
【0027】
また、通常、金型には熱可塑性樹脂を内部空間へ導入する導入口が形成されている。
図2(a)に示すように、通常貫通孔Hは、第2方向yにおいてインサート部材の凸部(電圧端子およびハウジング)と重複しない位置に形成されている。なお、
図2(a)においては、厚さ方向zにおいて、紙面手前側に導入口Hが形成され、導入口Hから導入された熱可塑性樹脂が第2方向yに広がることで、内部空間Sが充填される。ここで、内部空間とは、連続した空間であり、
図2(b)に示すように、ハウジング20の貫通孔21も金型200の内部空間と捉えることができる。そのため、
図2(b)に示すように熱可塑性樹脂Rは、ハウジング20の貫通孔21にも充填される。
【0028】
充填される熱可塑性樹脂の一例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィンが挙げられる。ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。高密度ポリエチレンの密度は、例えば、0.94g/cm3以上、0.973g/cm3以下である。一方、熱可塑性樹脂の他の例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリロ二トリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリル-スチレン(AS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)が挙げられる。
【0029】
射出成形装置は特に限定されず、例えば、ノズルと、ノズルに接続されたシリンダと、シリンダの内部空間を移動可能なスクリュと、シリンダに原料を供給するホッパとを有する、従来公知の装置を用いることができる。スクリュは、本体部と、ヘッド部と、本体部および先端部の間に配置された逆止リングと、を有していてもよい。ホッパに投入された熱可塑性樹脂は、加熱されたシリンダに落下し、スクリュの回転により、圧縮混錬されながらノズル側に送られ、金型の導入口に接続されたノズルから、金型の内部空間に熱可塑性樹脂が導入される。
【0030】
充填工程においては、熱可塑性樹脂の目的とする充填量に対して、例えば0.85以上0.95以下の充填量となるまで充填を行うことが好ましい。
【0031】
3.保圧工程
本開示における保圧工程は、内部空間に充填された熱可塑性樹脂に保持圧力を印加する工程である。また、保圧工程において、内部空間における肉厚部となる第1部分の冷却を促進し、内部空間における薄肉部となる第2部分の冷却を抑制する。
【0032】
保持圧力を印加することで、熱可塑性樹脂の残りの充填を行うことができ、かつ、熱可塑性樹脂の逆流を抑制することができる。保持圧力は特に限定されず、例えば、0.5MPa以上、2.5MPa以下である。
【0033】
第1部分の冷却を促進する方法としては、例えば、冷却ガスまたは冷却液を用いて、第1部分を冷却する方法を挙げることができる。
図2(c)に示すように、冷却液(または冷却ガス)をハウジングに供給し、ハウジングを直接冷却することで、第1部分の冷却を促進することができる。第1部分については、上記のとおりである。
【0034】
冷却ガスとしては、例えば冷風および冷媒ガスを挙げることができる。冷媒ガスとしては、例えばクロロフルオロカーボン(CFC)が挙げられる。冷却液としては、例えば冷水および冷媒液を挙げることができる。冷媒液としては、例えばエチレングリコールを挙げることができる。
【0035】
冷却条件については、用いる熱可塑性樹脂の凝固点を考慮して適宜調整することができる。
【0036】
第2部分の冷却を抑制する方法としては、例えば断熱材を用いた方法を挙げることができる。
図2(c)に示すように、断熱材201を有する金型200を用いることにより、第1部分の冷却の効果が第2部分に及ばないようにすることができる。第2部分については、上記のとおりである
【0037】
図2(c)に示すように、断熱材201のサイズは、第1方向xにおいてハウジングよりも大きいことが好ましい。なお、断熱材201のサイズは、厚さ方向zにおいてもハウジングよりも大きいことが好ましい。断熱材の材料は特に限定されないが、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)およびポリイミドなどの高耐熱性を有する樹脂を挙げることができる。
【0038】
4.樹脂成形体
本開示における樹脂成形体は、典型的には、電池モジュールの側面を構成する部材として機能する。より具体的には、電池モジュールにおいて、電圧測定装置のコネクタなどの外部装置と接続する側面を構成する部材として機能する。
【0039】
電池モジュールは、典型的にはリチウムイオン二次電池である。電池モジュールの用途としては、用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、蓄電モジュールは、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0040】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0041】
1 …集電体
2 …正極活物質層
3 …負極活物質層
4 …セパレータ
10 積層構造体
11 …積層体
11a …積層部
11b …シール部
12 …電圧端子
20 …ハウジング
100 …インサート部材
200 …金型
201 …断熱材