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特開2025-91573粉体塗料及びその製造方法、塗装金属材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025091573
(43)【公開日】2025-06-19
(54)【発明の名称】粉体塗料及びその製造方法、塗装金属材
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20250612BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20250612BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20250612BHJP
   C09D 167/02 20060101ALI20250612BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20250612BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20250612BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20250612BHJP
   C09D 127/12 20060101ALI20250612BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20250612BHJP
【FI】
C08J3/12 A
C08J3/20 Z
C09D5/03
C09D167/02
C09D201/00
C09D133/00
C09D163/00
C09D127/12
C09D167/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023206874
(22)【出願日】2023-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】浜原 京子
(72)【発明者】
【氏名】三室 勝一
(72)【発明者】
【氏名】奥山 城太
(72)【発明者】
【氏名】丸島 茜
【テーマコード(参考)】
4F070
4J038
【Fターム(参考)】
4F070AA29
4F070AA46
4F070AA47
4F070AB11
4F070AB26
4F070AE04
4F070AE08
4F070DA41
4F070DC13
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC05
4J038CD101
4J038CJ001
4J038DB001
4J038DD001
4J038DD071
4J038KA20
4J038MA02
4J038NA27
4J038PA02
4J038PB05
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】熱可塑性ポリエチレンテレフタレート樹脂と熱硬化性樹脂の両樹脂の優れた特性を十分に兼ね備えた粉体塗料を提供すること。廃ポリエチレンテレフタレート樹脂を有効活用すること。
【解決手段】再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を準備する工程と、液体窒素により冷凍させた再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を粉砕して再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を得る工程と、熱硬化性樹脂塗料原料を準備する工程と、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と熱硬化性樹脂塗料原料とを加熱しながら混合して粉体塗料を得る工程と、を有する粉体塗料の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を準備する工程と、
液体窒素により冷凍させた再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を粉砕して再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を得る工程と、
熱硬化性樹脂塗料原料を準備する工程と、
前記再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と前記熱硬化性樹脂塗料原料とを加熱しながら混合して粉体塗料を得る工程と、
を有する粉体塗料の製造方法。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂塗料原料を構成する熱硬化性樹脂は、ポリエステル樹脂、変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂である、請求項1に記載の粉体塗料の製造方法。
【請求項3】
前記粉体塗料は、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂と熱硬化性樹脂の複合樹脂を含む、請求項1または2に記載の粉体塗料の製造方法。
【請求項4】
前記再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を得る工程と、前記粉体塗料を得る工程との間に、
メッシュを用いて前記再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を分級する工程を有する、請求項1または2に記載の粉体塗料の製造方法。
【請求項5】
平均粒径が100μm以下の再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と、
熱硬化性樹脂塗料と、
を含む粉体塗料。
【請求項6】
前記熱硬化性樹脂塗料を構成する熱硬化性樹脂は、ポリエステル樹脂、変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂である、請求項5に記載の粉体塗料。
【請求項7】
再生ポリエチレンテレフタレート樹脂と熱硬化性樹脂の複合樹脂を含む、請求項5または6に記載の粉体塗料。
【請求項8】
金属材と、
再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と熱硬化性樹脂とを含む粉体塗料を含有する塗膜層と
を有する塗装金属材。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂は、ポリエステル樹脂、変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂である、請求項8に記載の塗装金属材。
【請求項10】
前記再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体の平均粒径は、前記塗膜層の平均膜厚以下である、請求項8または9に記載の塗装金属材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体塗料及びその製造方法、塗装金属材に関する。
【背景技術】
【0002】
資源の再生利用は、石油製品の高騰や有効利用への注目、廃棄による海洋汚染の観点、カーボンニュートラルの観点からも注目されている。特に、近年はプラスチックの海洋汚染等が世界的に問題視されており、再生プラスチックの利用が注目視されている。使用済みのプラスチックの中でも、ポリエチレンテレフタレート樹脂は大量に発生することから、飲料容器以外での再利用が検討されている。そこで、従来から粉体塗料として、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いることが検討されてきた。ポリエチレンテレフタレート樹脂の粉体塗料を用いた塗装法としては、流動浸漬法および静電粉体法が考えられる。ポリエチレンテレフタレート樹脂は融点が250℃と高く熱可塑性樹脂であるため、これらの塗装法の中でも、ポリエチレンテレフタレート樹脂の粉体塗料を浮遊させた流動槽内に加熱した被塗物を入れて塗装する、流動浸漬法による塗装が好ましい。また、静電粉体法により塗装を行った場合、ポリエチレンテレフタレート樹脂の融点との関係上、加熱温度を高くしなくてはならず、改質剤を添加してポリエチレンテレフタレート樹脂の溶融温度を下げる検討が行われている。
【0003】
また、個々の塗装製品によって必要とされる塗膜層の性能が異なるため、塗装製品に応じた塗料設計の必要があった。ポリエチレンテレフタレート樹脂の粉体塗料では、塗装製品に応じた様々な塗装性能の要望に応じることができず、実用化が進まなかった。そこで、ポリエチレンテレフタレート樹脂の粉体塗料に、該ポリエチレンテレフタレート樹脂とは異なる特性を有する熱硬化性樹脂を混合することにより、ポリエチレンテレフタレート樹脂および熱硬化性樹脂の優れた特性を兼ね備えた粉体塗料の使用が検討されている。特許文献1(特開2000-53892号公報)は、ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット又はポリエチレンテレフタレート樹脂成型品の回収物から得た細片100質量部とポリエステル樹脂又は変性ポリエステル樹脂5~40質量部が溶融混合されて金属密着性を付与された粉体塗料用組成物を開示する。特許文献2(特開平10-287844号公報)は、ポリエチレンテレフタレート樹脂ペレット又はポリエチレンテレフタレート樹脂成型品の回収物から得た細片100質量部と変性ポリエステル樹脂5~40質量部が溶融混合されて粉末化されてなる粉体塗料を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-53892号公報
【特許文献2】特開平10-287844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来から検討されていた、再生したポリエチレンテレフタレート樹脂粉体および熱硬化性樹脂塗料を含む粉体塗料は、熱硬化性樹脂の粉体塗料と比べて、塗膜層の特性が低下することとなっていた。より具体的には、熱可塑性であるポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と熱硬化性樹脂の融点が大きく異なることから同一塗装条件(塗装設備ならびに加熱温度条件)で塗膜層を形成させることが困難であった。熱可塑性であるポリエチレンテレフタレート樹脂の溶融温度を下げるため改質剤の使用の検討も行われたが、改質剤による品質の低下などの問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、液体窒素により冷凍させた再生ポリエチレンテレフタレート樹脂の粉砕を行うことによって粒径の小さい再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を作製する。これにより、本発明では、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂の融点以下の焼き付け温度で熱硬化性樹脂塗料原料に再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を混合しても品質性能を損なうことなく塗膜層を形成することができるものである。すなわち、本発明は、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂と熱硬化性樹脂の両樹脂の優れた特性を十分に兼ね備えた粉体塗料を提供することを目的とする。また、本発明では、廃ポリエチレンテレフタレート樹脂を有効活用することもでき、循環型社会に寄与することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため本発明の各実施態様は、以下の通りである。
[1]再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を準備する工程と、
液体窒素により冷凍させた再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を粉砕して再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を得る工程と、
熱硬化性樹脂塗料原料を準備する工程と、
前記再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と前記熱硬化性樹脂塗料原料とを加熱しながら混合して粉体塗料を得る工程と、
を有する粉体塗料の製造方法。
[2]前記熱硬化性樹脂塗料原料を構成する熱硬化性樹脂は、ポリエステル樹脂、変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂である、上記[1]に記載の粉体塗料の製造方法。
[3]前記粉体塗料は、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂と熱硬化性樹脂の複合樹脂を含む、上記[1]または[2]に記載の粉体塗料の製造方法。
[4]前記再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を得る工程と、前記粉体塗料を得る工程との間に、
メッシュを用いて前記再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を分級する工程を有する、上記[1]または[2]に記載の粉体塗料の製造方法。
[5]平均粒径が100μm以下の再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と、
熱硬化性樹脂塗料と、
を含む粉体塗料。
[6]前記熱硬化性樹脂塗料を構成する熱硬化性樹脂は、ポリエステル樹脂、変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂である、上記[5]に記載の粉体塗料。
[7]再生ポリエチレンテレフタレート樹脂と熱硬化性樹脂の複合樹脂を含む、上記[5]または[6]に記載の粉体塗料。
[8]金属材と、
再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と熱硬化性樹脂とを含む粉体塗料を含有する塗膜層と
を有する塗装金属材。
[9]前記熱硬化性樹脂は、ポリエステル樹脂、変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂である、上記[8]に記載の塗装金属材。
[10]前記再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体の平均粒径は、前記塗膜層の平均膜厚以下である、上記[8]または[9]に記載の塗装金属材。
[11]他の態様では上記[1]~[10]において、「再生ポリエチレンテレフタレート樹脂」の代わりに「再生プラスチック」とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と熱硬化性樹脂の両樹脂の優れた特性を十分に兼ね備えた粉体塗料を提供することができる。また、廃ポリエチレンテレフタレート樹脂を有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の粉体塗料の製造方法の一例を表すフローチャートである。
図2図2は、冷凍粉砕機の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(粉体塗料)
本発明の粉体塗料は、平均粒径が100μm以下の再生ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂粉体と、熱硬化性樹脂塗料とを含む。この再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体は、液体窒素により冷凍させた再生ポリエチレンテレフタレート樹脂の粉砕を行うことにより得られたものである。このため、粉体塗料の塗膜層に要求される目的の性能を損なうことなく、粉体塗料の塗膜層の強度を高くすることができる。本発明の粉体塗料はこのような性質を有する再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体および熱硬化性樹脂が均一に分散したものである。このため、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体および熱硬化性樹脂の両樹脂の優れた特性を十分に兼ね備えることができる。また、冷凍した再生ポリエチレンテレフタレート樹脂の粉砕により得られた再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体は塗膜層の平均膜厚以下の小さい平均粒径を有する。このため、粉体塗料を用いて塗装した後に得られた再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を含有する塗膜層は均一かつ平滑な膜厚を有すると共に、膜厚を薄くすることができる。さらに、廃ポリエチレンテレフタレート樹脂を再生ポリエチレンテレフタレート樹脂として有効活用することができるため、循環型社会に寄与することができる。なお、他の態様では、再生プラスチックと、熱硬化性樹脂塗料とを含む粉体塗料とすることもできる。
【0011】
なお、「熱硬化性樹脂塗料原料」とは、熱硬化性樹脂、熱硬化性樹脂の硬化剤、顔料、および、任意に添加剤(表面調整剤、発泡防止剤、帯電調整剤、紫外線吸収剤、難燃剤、流動性付与剤など)を含み、加熱することによって樹脂と硬化剤が反応し樹脂ネットワークを形成することができる熱硬化性樹脂塗料を製造するための原料を表す。
「熱硬化性樹脂塗料」とは、上記の熱硬化性樹脂と硬化剤の反応によりネットワークが形成され、その中に着色顔料その他必要な機能(添加剤)が付与された塗膜層を形成させるのに必要な原料を適正に配合した塗料を表す。
【0012】
熱硬化性樹脂塗料を構成する熱硬化性樹脂の種類は特に限定されないが、ポリエステル樹脂、変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂であることが好ましい。
【0013】
ポリエステル樹脂としては特に限定されないが、一般的には末端に水酸基を有するポリエステル樹脂であり硬化剤であるブロックイソシアネートで硬化させるためのウレタン硬化型ポリエステル樹脂や、末端にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂でありβ-ヒドロキシルアルキルアミドを硬化剤として使用するものが多く使用される。なお、このポリエステル樹脂には、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂は含まれない。変性アクリル樹脂としては特に限定されないが、グリシジル基を有するアクリル樹脂であり脂肪族二塩基酸のカルボキシル基を硬化剤として使用するタイプのものが好適に使用される。エポキシ樹脂としては特に限定されないが、ビスフェノールAのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が主として好適に使用され、これに硬化剤を配合する。硬化剤としては、ジシアンジアミド、イミダゾール、イミダゾリン系化合物、その他酸無水物、二塩基酸ジヒドラジドなどが挙げられる。フッ素樹脂としては特に限定されないが、水酸基などの架橋性反応基を有するフルオロオレフィンビニルエーテルを主体としたフッ素樹脂であり、硬化剤としてブロックイソシアネートを用いるものが好適に用いられる。
【0014】
好ましくは、粉体塗料は、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂と熱硬化性樹脂を互いに融着させた、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂と熱硬化性樹脂の複合樹脂とするのが良い。「再生ポリエチレンテレフタレート樹脂と熱硬化性樹脂の複合樹脂」とは、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂と熱硬化性樹脂が互いに融着して、各々の粉体粒子が再生ポリエチレンテレフタレート樹脂と硬化した熱硬化性樹脂とから構成されたものを表す。このように粉体塗料が再生ポリエチレンテレフタレート樹脂と熱硬化性樹脂の複合樹脂を含むことにより、粉体塗料から得られた塗膜層を、より平滑で均一な膜とすることができる。再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体の平均粒径は特に限定されないが、均一で平滑な塗膜層の形成を行う観点から、10~100μmであることが好ましく、15~70μmであることがより好ましく、15~50μmであることがさらに好ましい。粉体塗料の平均粒径は特に限定されないが、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体および熱硬化性樹脂の優れた特性を十分に兼ね備えるために、また静電塗装用として平滑な塗装面を得るために平均粒径として10~60μmであることが好ましく、15~50μmであることがより好ましく、15~45μmであることがさらに好ましい。なお、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体および粉体塗料の平均粒径は、レーザー回折・散乱法の方法によって測定することができる。塗膜層の平均膜厚は、電磁式膜厚計を用いて測定することができる。
【0015】
粉体塗料中の再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体の配合量は特に限定されないが、粉体塗料を含有する塗膜層に優れた堅牢性を付与するために、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体は0.01~10質量%であることが好ましく、0.05~5質量%であることがより好ましく、0.05~4質量%であることがさらに好ましい。再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体の配合量が10質量%以下であることにより、熱硬化性樹脂塗料との粘着が起こらず、塗料作成時の溶融混錬の負担が減り作業性を向上させることができる。また、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体の配合量が5質量%以下であることにより光沢度保持率が70%以上の優れた光沢を維持することができ、4質量%以下であることにより更に優れた光沢を維持することができる。なお、「光沢度保持率」については実施例で後述する。再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体の配合量が、0.01質量%以上または0.05質量以上であることにより、所定量の再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体をリサイクルすることができ、リサイクル性に優れたものとすることができる。熱硬化性樹脂塗料は元々目的とする塗装用途に合わせた品質性能で設計されており、本発明の粉体塗料ではそこに再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体が加わる形となるため、本来の目的性能とする観点からも再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体の配合量は10質量%以下とするのが好ましい。
【0016】
(粉体塗料の製造方法)
本発明の粉体塗料の製造方法は、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を準備する工程と、液体窒素により冷凍させた再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を粉砕して再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を得る工程と、熱硬化性樹脂塗料原料を準備する工程と、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と熱硬化性樹脂塗料原料とを加熱しながら混合して粉体塗料を得る工程と、を有する。以下では、本発明の粉体塗料の製造方法の各工程を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は一つの例示であり、本発明の範囲において種々の形態をとりうる。
【0017】
図1は、本発明の粉体塗料の製造方法の一例を表すフローチャートである。図1に示されるようにまず、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を準備する(S1)。なお、「再生ポリエチレンテレフタレート樹脂」とは、使用済のポリエチレンテレフタレート樹脂を再度、利用したポリエチレンテレフタレート樹脂を表す。再生ポリエチレンテレフタレート樹脂としては、市販の再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いても良いし、公知の方法により合成したポリエチレンテレフタレート樹脂の廃ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いても良い。
【0018】
次いで、液体窒素により冷凍させた再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を粉砕して再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を得る(S2)。液体窒素は、大気圧下において-196℃で液化する物質であり、-196℃以下の固化しない温度を有する。液体窒素により再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を冷凍させる処理は、液体窒素と再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を接触させることにより行うことができる。液体窒素と再生ポリエチレンテレフタレート樹脂とを接触させて再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を冷凍させる処理は、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂の粉砕前に行っても良いし、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂の粉砕中に行っても良いし、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂の粉砕前および粉砕中に行っても良い。また、(i)容器内に液体窒素および再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を供給することにより、液体窒素と再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を接触させても良いし、(ii)液体窒素と再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を並流で供給しながら接触させても良いし、(iii)液体窒素と再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を向流で供給しながら接触させても良い。図2は、工程S2で用いる冷凍粉砕機の一例を表す図である。図2に示されるように冷凍粉砕機1は、液体窒素タンク2、フリーザー5、フリーザー5の底部に接続されたスクリューフィーダー9、および粉砕機6から構成される。液体窒素タンク2からは液体窒素3がフリーザー5および粉砕機6に供給される。フリーザー5の頂部からは再生ポリエチレンテレフタレート樹脂8が供給される。フリーザー5内では液体窒素3と再生ポリエチレンテレフタレート樹脂8が混合されることにより冷凍された状態の冷凍再生ポリエチレンテレフタレート樹脂4となる。該冷凍再生ポリエチレンテレフタレート樹脂4はフリーザー5の底部からスクリューフィーダー9により冷凍再生ポリエチレンテレフタレート樹脂4として粉砕機6に供給される。粉砕機6内で冷凍再生ポリエチレンテレフタレート樹脂4の粉砕を行うことにより、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体7を得る。ここで、冷凍再生ポリエチレンテレフタレート樹脂4は冷凍されたことにより脆くなり、破砕され易くなっている。このため、粉砕機6内では低負荷で均一かつ小さな粒径の再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体7を得ることができる。また、冷凍再生ポリエチレンテレフタレート樹脂4は極低温であり、粉砕中も粉砕機6に液体窒素を供給することにより、粉砕時の熱により再生ポリエチレンテレフタレート樹脂が高温となり、粉塵爆発が起こったり、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂の特性が劣化することを防止できる。
【0019】
図1に示すように、熱硬化性樹脂塗料原料として、熱硬化性樹脂、硬化剤、顔料、添加剤等の熱硬化性樹脂塗料の塗装を行うのに必要な熱硬化性樹脂塗料原料を準備する(S3)。次に、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体7と熱硬化性樹脂塗料原料とを加熱しながら混合して粉体塗料を得る(S4)。より具体的には、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂は優れた特性を有する熱可塑性樹脂である。また、熱硬化性樹脂は、粉体塗料の塗膜層の強度を高くすることができる。本発明の粉体塗料はこのような性質を有する再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体7が熱硬化性樹脂塗料に均一に分散したものであるため、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体7および熱硬化性樹脂の両樹脂の優れた特性を十分に兼ね備えることができる。また、廃ポリエチレンテレフタレート樹脂を再生ポリエチレンテレフタレート樹脂として有効活用することができるため、循環型社会に寄与することができる。特に、以前は廃プラスチックの多くを輸出していたが、2021年に施行されたバーゼル条約により輸出が困難となり10年前の半分以下となっている。このため、自国内で廃プラスチックを循環していくことが重要になっている。本発明の方法によれば、基本的に粉体塗料を用いた塗装全てに廃プラスチックである再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を適用することが可能であり、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂の循環に大きく貢献することが可能である。
【0020】
なお、工程S4において、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体7と熱硬化性樹脂塗料原料とを加熱しながら混合して粉体塗料を得るための具体的な方法は特に限定されず例えば、以下の方法を挙げることができる。
(i)ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と熱硬化性樹脂塗料原料とを、加熱した押出成形機内に投入し、該押出成形機のダイから、ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と熱硬化性樹脂塗料原料の押出成形体を押し出す。押出成形機内の加熱温度は60~140℃が好ましく、80~120℃がより好ましい。
(ii)押出成形体を圧延ロールで圧延することによりシートとし、該シートをコンベア上で冷却する。
(iii)シートを粗粉砕して第1の粉体とする。
(iv)第1の粉体を微粉砕して第2の粉体とする。
(v)第2の粉体を分級して粉体塗料を得る。
【0021】
熱硬化性樹脂塗料原料を構成する熱硬化性樹脂の種類は特に限定されないが、ポリエステル樹脂、変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂であることが好ましい。
【0022】
好ましくは、工程S4において、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂と熱硬化性樹脂が互いに融着して、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂と熱硬化性樹脂の複合樹脂となるのが良い。このように粉体塗料が再生ポリエチレンテレフタレート樹脂と熱硬化性樹脂の複合樹脂を含むことにより、粉体塗料から得られた塗膜層を、より平滑で均一な膜とすることができる。
【0023】
好ましくは、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を得る工程と粉体塗料を得る工程との間に、メッシュを用いて再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を分級する工程を有するのが良い。再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を分級する工程を有することにより、所望の粒度分布を有する粉体塗料を得ることができる。メッシュの目開きは特に限定されないが、平均粒径の小さな再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を得るために、75μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体の平均粒径は特に限定されないが、塗装後に滑らかな表面を得る観点から、10~100μmであることが好ましく、15~70μmであることがより好ましく、15~50μmであることがさらに好ましい。粉体塗料の平均粒径は特に限定されないが、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体および熱硬化性樹脂の両樹脂の優れた特性を十分に兼ね備えるために、また静電塗装用として平滑な塗装面を得るために平均粒径として10~60μmであることが好ましく、15~50μmであることがより好ましく、15~45μmであることがさらに好ましい。粉体塗料中の熱硬化性樹脂塗料原料と再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体の質量比は特に限定されないが、粉体塗料を含有する塗膜層に優れた堅牢性を付与するために、熱硬化性樹脂塗料原料100質量部に対して再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体は0.01~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましく、0.05~4質量部であることがさらに好ましい。
【0024】
(塗装金属材)
本発明の塗装金属材は、金属材と、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と熱硬化性樹脂とを含む粉体塗料を含有する塗膜層とを有する。金属材としては特に限定されず、鋼材、めっき鋼材、アルミ材等の金属からなる材料を挙げることができる。また、金属材上に塗膜層を形成する方法は特に限定されないが例えば、静電粉体塗装法により金属材上に本発明の粉体塗料を吹き付けた後に、山型炉、平型炉、バッチ炉などの乾燥炉内で該粉体塗料を加熱して焼付乾燥して塗膜層とする方法を挙げることができる。静電粉体塗装法を用いることにより、薄く均一な膜厚の塗膜層を形成することができる。焼付乾燥の条件は、粉体塗料の組成や塗膜層の厚さ等によって適宜、変更することができるが例えば、170~200℃で60分間以内の時間、好ましくは10~40分間の時間とすることができる。塗膜層を構成する再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体は融点が高いため、上記焼付乾燥工程でも形状が変化しないが冷凍粉砕により粒子系を塗膜層の膜厚と同程度まで小さくしているため、塗膜層の膜厚を薄くすることができる。
【0025】
塗膜層の膜厚は好ましくは、20~300μmであることが好ましく、20~250μmであることがより好ましく、20~120μmであることがさらに好ましい。また、本発明の塗装金属材は例えば、優れた耐湿性、塩水噴霧耐食性、サンシャイン耐候性、耐酸性、および耐衝撃性を有することができる。さらに、本発明の塗装金属材では塗膜層中に顔料を含有することにより、優れた光沢性を有することができる。熱硬化性樹脂の種類は特に限定されないが、ポリエステル樹脂、変性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの樹脂であることが好ましい。より均一で薄い膜厚の塗膜層とできるため、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体の平均粒径は、塗膜層の平均膜厚以下であるのが良い。なお、塗膜層の平均膜厚は、電磁式膜厚計を用いて測定することができる。粉体塗料中の熱硬化性樹脂と再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体の質量比は特に限定されないが、粉体塗料を含有する塗膜層に優れた堅牢性を付与するために、熱硬化性樹脂100質量部に対して再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体は0.01~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましく、0.05~4質量部であることがさらに好ましい。
【0026】
塗装金属材の具体例としては特に限定されないが、粉体塗料により塗装したフェンス(メッシュフェンス、目隠しフェンス)および防護柵(ガードレール、ガードパイプ)などを挙げることができる。
【実施例0027】
(実施例1~8)
液体窒素を用いた冷凍粉砕機により、下記表1に示す平均粒径を有し、且つ冷凍させた再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を粉砕して、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を得た(図1の工程S1およびS2)。この再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と、下記表1に示す熱硬化性樹脂、硬化剤、顔料および添加剤等からなる熱硬化性樹脂塗料原料とを、混合機により混合後、加熱しながら溶融混錬後、冷却し粉砕する、いわゆる乾式法によって粉体塗料を得た(図1の工程S3およびS4)。なお、粉体塗料製造機は複数の機械から構成されており、該混合機では以下の操作を行った。
(i)再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と熱硬化性樹脂、硬化剤、顔料および添加剤等とを、約100℃に加熱した押出成形機内に投入し、該押出成形機のダイから、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と熱硬化性樹脂塗料原料の押出成形体を押し出した。
(ii)押出成形体を圧延ロールで圧延することによりシートとし、該シートをコンベア上で冷却した。
(iii)シートを粗粉砕して第1の粉体とした。
(iv)第1の粉体を微粉砕して第2の粉体とした。
次いで、上記のようにして得た粉体塗料を、パーカーエンジニアリング社製の静電粉体塗装装置(商品名)により、JIS G3302 Z27亜鉛めっき鋼板の金属からなる縦150mm、横70mm、板厚2.3mmの板状の金属材上に吹き付けた。この後、粉体塗料を吹き付けた金属材を焼付炉内で170~190℃で30分間、焼付を行うことによって塗膜層を形成することにより、塗装金属材を得た。
【0028】
(比較例1~5)
再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と熱硬化性樹脂とを含む粉体塗料の代わりに、下記表1に示す熱硬化性樹脂塗料原料のみを用いた以外は、実施例1~8と同様にして、塗装金属材を得た。
【0029】
(比較例6、7)
熱硬化性樹脂塗料は全く含まず、下記表1に示す再生ポリエチレンテレフタレート樹脂のみを用いて塗装金属材を得た。なお、比較例6では、実施例1~8と同様に液体窒素を用いた冷凍粉砕機により再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を得た。比較例7では、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂に常温機械粉砕を行って再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体を得た。比較例6、7では共に金属材(JIS G3302 Z27亜鉛めっき鋼板)への塗装は、表面温度300℃に加熱した後、流動浸漬法により、金属材を3秒間浸漬し水冷して塗膜層を形成させた。
【0030】
【表1】
表1で使用した各材料を以下に示す。
熱硬化性樹脂および硬化剤a;ポリエステル熱硬化性樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤
熱硬化性樹脂および硬化剤b;ポリエステル熱硬化性樹脂およびヒドロキシルアルキルアミド硬化剤
熱硬化性樹脂および硬化剤c;ポリエステル熱硬化性樹脂およびトリグリシジルイソシアネート硬化剤
熱硬化性樹脂および硬化剤d;アクリル熱硬化性樹脂およびドデカン二酸硬化剤
熱硬化性樹脂および硬化剤e;エポキシ熱硬化性樹脂およびアミン硬化剤
【0031】
上記のようにして得られた実施例1~8および比較例1~7の塗装金属材について、塗膜層の膜厚を測定すると共に、光沢度保持率または光沢度、耐湿性、塩水噴霧耐食性、サンシャイン耐候性、耐酸性、耐衝撃性、およびリサイクル性を評価した。塗膜層の膜厚の測定方法、および上記の各評価方法を以下に示す。
【0032】
(塗膜層の膜厚の測定方法)
ケット科学研究所社製の装置LZ-373(商品名)を用いて、電磁式により塗膜層の膜厚(μm)を測定した。
【0033】
(光沢度保持率または光沢度)
光沢度(%)は、日本電色社製の装置PG-2M(商品名)により、塗膜層表面の光沢度を測定した。
光沢度保持率は、下記式により算出し、下記基準にて評価した。
(光沢度保持率)(-)=(実施例1~8の塗膜層表面の光沢度)/(熱硬化性樹脂塗料原料から得た塗膜層表面の光沢度)
○:光沢度保持率が0.8以上である
△:光沢度保持率が0.3以上、0.8未満である
×:光沢度保持率が0.3未満である
【0034】
(耐湿性)
塗装金属材における、塗膜層と対向する反対側の裏面と端面をシール処理して試料を得た。次いで、JIS K5600 7-2に従い、相対湿度95%以上、温度50℃の耐湿試験装置内に試料を500時間、暴露させた。試験時間終了後、試料を耐湿試験装置から取出し、室温にて2時間放置した。この後、試料の塗膜層に対して碁盤目テープ付着性試験を行った。碁盤目テープ付着性試験は、JIS K 5600-5-6試験条件に従って行い、以下の通りに評価した。
碁盤目テープ付着性試験の結果の判定は、JIS K 5600-5-6表1に従って0~5の6段階で評価した。上記判定基準によれば、「5」は最も劣り、「0」が最も優れる。
【0035】
(塩水噴霧耐食性)
塗装金属材における、塗膜層と対向する反対側の裏面と端面をシール処理して試料を得た。塗膜層に対して80mm長さのクロスカットを入れ、JIS K 5600 7.1に従い、35℃の槽内で塗膜層に対して5質量%の濃度のNaCl水溶液をスプレー噴霧した。240時間経過後に槽内から試料を取り出し、2時間後に評価試験を行った。クロスカット部に対してセロハンテープにより剥離試験を行い、カット部からの片側最大膨れ幅(mm)と片側最大剥離幅(mm)を測定し、大きい方の値を評価値として採用し、評価値が3mm以下を合格とした。
【0036】
(サンシャイン耐候性)
塗装金属材に対してJIS D0205 5.4によるサンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験を行った。下記式で表される光沢度保持率を測定した。
(光沢度保持率)(%)=(500時間試験後における光沢度)/(初期光沢度)×100
得られた光沢度保持率について、下記基準に従って評価した。
○:光沢度保持率が70%以上である
×:光沢度保持率が70%未満である
【0037】
(耐酸性)
塗装金属材における、塗膜層と対向する反対側の裏面と端面をシール処理して試料を得た。23℃、5質量%濃度の塩酸中に試料を120時間浸漬させた後に、塩酸中から試料を取り出した。この後、試料の塗膜層について塗膜膨れ、および剥がれが無いか、を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
○:塗膜層の塗膜膨れ、剥がれが無い
△:塗膜層の浸漬面積の20%未満の部分において塗膜膨れおよび剥がれのいずれか1つ以上が発生した
×:塗膜層の浸漬面積の20%以上の部分において塗膜膨れおよび剥がれのいずれか1つ以上が発生した
【0038】
(耐衝撃性)
塗装金属材に対してJIS K5600 5-3.6によるデュポン式衝撃性試験を行った。より具体的には、うち型Φ1/2を用いて、塗膜層側に500gのおもりを50cmの高さから落下させ、以下の基準に従って評価した。
○:塗膜層の剥がれが無かった
△:塗膜層の浸漬面積の20%未満の部分において塗膜膨れおよび剥がれのいずれか1つ以上が発生した
×:塗膜層の浸漬面積の20%以上の部分において塗膜膨れおよび剥がれのいずれか1つ以上が発生した
【0039】
(リサイクル性)
再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を使用している例をリサイクル性に優れるものとして「〇」と評価し、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を使用していない例をリサイクル性に劣るものとして「×」と評価した。
【0040】
塗膜層の膜厚の測定結果、ならびに、光沢度保持率または光沢度、耐湿性、塩水噴霧耐食性、サンシャイン耐候性、耐酸性、耐衝撃性、およびリサイクル性の評価結果を下記表2に示す。
【0041】
【表2】
上記表2に示すように、実施例1~8では外観、耐湿性、塩水噴霧耐食性、サンシャイン耐候性、耐酸性および耐衝撃性について、比較例1~5と同程度の優れた特性を有することを確認できた。また、実施例1~8では再生ポリエチレンテレフタレート樹脂を使用していることから、比較例1~5と比べてリサイクル性に優れていることも確認できた。一方、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂のみを用いた比較例6、7では、リサイクル性に優れているものの、実施例1~8と比べて耐湿性、サンシャイン耐候性および耐衝撃性が劣る結果となった。以上より、本発明では、再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体と熱硬化性樹脂の両樹脂の優れた特性を十分に兼ね備えること、および、廃ポリエチレンテレフタレート樹脂を有効活用することができることを確認できた。
【符号の説明】
【0042】
1 冷凍粉砕機
2 液体窒素タンク
3 液体窒素
4 冷凍再生ポリエチレンテレフタレート樹脂
5 フリーザー
6 粉砕機
7 再生ポリエチレンテレフタレート樹脂粉体
8 再生ポリエチレンテレフタレート樹脂
9 スクリューフィーダー
図1
図2