(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009158
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】電極体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20250110BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20250110BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111970
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】志村 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】召田 智也
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA08
5H050BA17
5H050GA02
5H050GA22
5H050GA27
5H050GA29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エネルギー効率よく電極体を製造できる電極体の製造方法を提供する。
【解決手段】第1方向に長手方向を有する集電シート1に電極材料が塗工された塗工シート10を上記第1方向に搬送しながら、レーザ光を照射するレーザ装置20及び熱風を送風する一対の熱風装置30を用いて、上記塗工シートを乾燥させる乾燥工程と、を有し、上記レーザ装置は、上記レーザ光を照射するレーザヘッド、及び上記塗工シートから反射された上記レーザ光を上記塗工シートに再反射するスカート部を有する反射板22を備え、上記乾燥工程において、上記一対の熱風装置として、上記レーザ装置よりも上流に設けられた第1熱風装置30A、及び上記レーザ装置よりも下流に設けられた第2熱風装置30Bを用い、かつ、上記第1熱風装置および上記第2熱風装置は、上記第1方向において上記レーザ装置側に上記熱風を送風する、電極体の製造方法とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に長手方向を有する集電シートの第1面上に、電極材料が塗工された塗工部を有する塗工シートを準備する、準備工程と、
前記塗工シートを前記第1方向に搬送しながら、レーザ光を前記塗工シートに照射するレーザ装置および熱風を前記塗工シートに送風する一対の熱風装置を用いて、前記塗工シートを乾燥させる乾燥工程と、を有し、
前記レーザ装置は、前記レーザ光を照射するレーザヘッド、および、前記塗工シートから反射された前記レーザ光を前記塗工シートに再反射するスカート部を有する反射板を備え、
前記乾燥工程において、
前記一対の熱風装置として、前記レーザ装置よりも上流に設けられた第1熱風装置、および、前記レーザ装置よりも下流に設けられた第2熱風装置を用い、かつ、
前記第1熱風装置および前記第2熱風装置は、それぞれ、前記第1方向において前記レーザ装置側に前記熱風を送風する、電極体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池の製造に用いられる電極体(電極シート)の製造方法に関する技術として、搬送される集電体シートに対し、電極材料を塗布して塗工部を形成し、塗工部を乾燥して電極層を得る方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、搬送される長尺金属箔に対して活物質合剤を塗布し、活物質合剤の塗工部を形成する塗布工程と、塗布工程よりも前に実行され、長尺金属箔の短手方向に沿った合剤塗布場所の両端部よりも長尺金属箔の搬送方向上流側に位置する上記長尺金属箔の照射位置に対してレーザを照射する第1照射工程と、第1照射工程の後に実行され、塗布工程によって形成された塗工部において短手方向の両縁部にレーザを照射する第2照射工程と、を備える電極の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排出されるCO2低減および節電の観点から、エネルギー効率を良好にしつつ、電極体を製造することが求められている。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、エネルギー効率よく電極体を製造できる電極体の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]
第1方向に長手方向を有する集電シートの第1面上に、電極材料が塗工された塗工部を有する塗工シートを準備する、準備工程と、上記塗工シートを上記第1方向に搬送しながら、レーザ光を上記塗工シートに照射するレーザ装置および熱風を上記塗工シートに送風する一対の熱風装置を用いて、上記塗工シートを乾燥させる乾燥工程と、を有し、上記レーザ装置は、上記レーザ光を照射するレーザヘッド、および、上記塗工シートから反射された上記レーザ光を上記塗工シートに再反射するスカート部を有する反射板を備え、上記乾燥工程において、上記一対の熱風装置として、上記レーザ装置よりも上流に設けられた第1熱風装置、および、上記レーザ装置よりも下流に設けられた第2熱風装置を用い、かつ、上記第1熱風装置および上記第2熱風装置は、それぞれ、上記第1方向において上記レーザ装置側に上記熱風を送風する、電極体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示においては、エネルギー効率よく電極体を製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示における準備工程を例示する概略平面図および概略断面図である。
【
図2】本開示における乾燥工程を例示する概略断面図および概略平面図である。
【
図3】塗工部におけるレーザ光の反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示における電極体の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0011】
図1は、本開示における準備工程を例示する概略平面図および概略断面図である。具体的には、
図1(a)は、準備工程で準備する塗工シートを厚さ方向から見た概略平面図であり、
図1(b)は
図1(a)のA-A断面図である。また、
図2は、本開示における乾燥工程を例示する概略断面図および概略平面図である。具体的には、
図2(a)、(b)は、乾燥工程を例示する概略断面図であり、
図2(c)は、乾燥工程におけるレーザ装置を塗工シート側から見た概略平面図である。なお、
図2(c)に示すように、通常、反射板はレーザ照射口21aの外縁を囲うように配置されるため、厳密には、
図2(a)、(b)の紙面奥側(レーザLの背景)にも反射板が存在しているが、理解を容易にするため図示していない。また、
図2(b)においては、理解を容易にするため、塗工シートにおける塗工部は省略している。
【0012】
図1に示すように、本開示における電極体の製造方法では、まず、第1方向D1に長手方向を有する集電シート1の第1面S1上に、電極材料が塗工された塗工部2を有する塗工シート10を準備する(準備工程)。次いで、
図2(a)、(b)に示すように、塗工シート10を第1方向D1に搬送しながら、レーザ光を塗工シート10に照射するレーザ装置20および熱風を塗工シート10に送風する一対の熱風装置30(30Aおよび30B)を用いて、塗工シート10を乾燥させる(乾燥工程)。
図2(a)~(c)に示すように、レーザ装置20は、レーザ光を照射するレーザヘッド21、および、塗工シート10から反射されたレーザ光を塗工シート10に再反射するスカート部22aを有する反射板22を備える。また、
図2(a)に示すように、乾燥工程において、一対の熱風装置30として、レーザ装置20よりも上流に設けられた第1熱風装置30A、および、レーザ装置20よりも下流に設けられた第2熱風装置30Bを用い、かつ、第1熱風装置30Aおよび第2熱風装置30Bは、それぞれ、第1方向D1においてレーザ装置20側に上記熱風を送風する。
【0013】
本開示によれば、レーザ装置がスカート部を有する反射板を備えているため、照射したレーザを効率的に乾燥に用いることができレーザ正味率を向上させることができる。また、一対の熱風装置が、それぞれ、レーザ装置側に熱風送風するため、反射板(スカート部)で囲われた空間に熱風を滞留させることができ、熱風を効率的に乾燥に用いることができる。これらの効果により、本開示における電極体の製造方法であれば、エネルギー効率よく電極体を製造できる。
【0014】
図3に示すように、塗工部に照射されたレーザ光の一部は反射されてしまう。また、特に図示しないが、塗工シートの集電シートは一般的に金属であるため、集電シートに照射されたレーザ光の反射率は塗工部に比べて大きくなる。反射されたレーザ光は乾燥に寄与できないため、エネルギーの損失となる。これに対して、本開示によれば、塗工部および集電シートから反射されたレーザ光を再度塗工シート(塗工部)に再反射するため、レーザ装置から照射されたレーザ光を効率的に乾燥に利用することができる。
【0015】
1.準備工程
図1(a)、(b)に示すように、本開示における準備工程は、第1方向D1に長手方向を有する集電シートの第1面S1上に、電極材料が塗工された塗工部2を有する塗工シート10を準備する工程である。
【0016】
集電シートは、第1方向に長手方向を有する。集電シートは、厚み方向における一方の面である第1面S1と、第1面S1の裏面である第2面S2とを有している。集電シートは、負極集電体、正極集電体、バイポーラ集電体等の集電体として用いられる材料であれば特に限定されない。
【0017】
電極材料は、負極材料(負極活物質層の材料)であってもよい。負極材料は、例えば、負極活物質、導電材、バインダおよび溶媒を含む。また、電極材料は、正極材料(正極活物質層の材料)であってもよい。正極材料は、例えば、正極活物質、導電材、バインダ、および溶媒を含む。これらの材料としては、特に限定されず、公知の材料が用いられる。
【0018】
塗工部は、集電シートの第1面のみに配置されていてもよく、集電シートの第1面および第2面の両方に配置されていてもよい。塗工部の厚さは特に限定されない。
【0019】
塗工シートの準備方法は特に限定されないが、例えば、搬送機により第1方向に集電シートを搬送しつつ、塗工機により集電シートの少なくとも第1面に電極材料を塗工して塗工部を形成することで作製することができる。この際、電極材料は連続塗工してもよいし、間欠塗工してもよい。
【0020】
2.乾燥工程
図2(a)に示すように、本開示における乾燥工程は、塗工シート10を第1方向D1に搬送しながら、レーザ光を塗工シート10に照射するレーザ装置20および熱風を塗工シート10に送風する一対の熱風装置30(30A、30B)を用いて、上記塗工シートを乾燥させる工程である。なお、特に図示していないが、乾燥工程は、通常、乾燥炉内で行われる。
【0021】
また、
図2(a)~(c)に示すように、レーザ装置20は、レーザ光を照射するレーザヘッド21、および、塗工シート10から反射されたレーザ光を塗工シート10に再反射するスカート部22aを有する反射板22を備える。また、
図2(c)に示すよう、レーザヘッド21は、レーザ照射口21aを有し、反射板22は、レーザ照射口の外縁の外側に配置され、レーザヘッドの外縁の全周を囲うように配置されている。
【0022】
ここで、
図2(a)に示すように、スカート部22aは、レーザ装置20を断面視した場合、レーザヘッド21から遠ざかる方向において、集電シートとの距離が近くなるように傾斜した反射板22の部分をいう。
図2(b)に示すように、反射板22はスカート部22aのみを有し、スカート部22aがレーザヘッド21と接続されていてもよい。なお、特に図示しないが、反射板は、スカート部とレーザーヘッドとを接続する胴部を有していてもよい。このようなスカート部を有することで、乾燥炉などの乾燥設備における余剰空間を削減することができる。
【0023】
また、
図2(b)に示すように、最外周のレーザ入射角度をθ1とし、反射板角度(スカート部の角度)をθ2とした場合、θ1<θ2であることが好ましい。θ2は、例えばθ1+5度以上であってもよく、θ1+10度以上であってもよく、θ1+15度以上であってもよい。一方、θ2は、例えば、θ1+60度以下である。θ1とθ2との関係を上記のようにすることで、より効率的にレーザを反射板が反射することができる。
【0024】
反射板(スカート部)はレーザ反射率が高いことが好ましい。レーザ反射率は、例えば50%以上であり、70%以上であり、90%以上であってもよい。一方、レーザ反射率は100%であってもよく、100%未満であってもよい。
【0025】
反射板の材料(スカート部の材料)は例えば、Al、Ag、CuおよびSUSなどの金属であることが好ましい。レーザ反射率を高くすることができるからである。また、スカート部のレーザ光反射面は鏡面仕上げがされていることが好ましい。よりレーザ反射率を高くすることができる。
【0026】
レーザ装置におけるレーザヘッドは、特に限定されず従来公知の部材とすることができる。
【0027】
レーザ光の波長は特に限定されないが、例えば、900nm以上、1060nm以下である。また、レーザ光のエネルギー密度およびレーザ光の照射時間は、塗工部のサイズなどの状況に応じて適宜調整することができる。レーザ光のエネルギー密度は、例えば、0.1W/cm2以上、1.0W/cm2以下である。レーザ光の照射時間は、例えば、10秒以上、3分以下である。
【0028】
また、
図2(a)に示すように、一対の熱風装置30として、レーザ装置20よりも上流に設けられた第1熱風装置30A、および、レーザ装置20よりも下流に設けられた第2熱風装置30Bを用いる。また、第1熱風装置30Aおよび第2熱風装置30Bは、それぞれ、第1方向D1においてレーザ装置20側に熱風を送風する。これにより、上記スカート部の内部に熱風を滞留させることができ、より効率的に電極シートを乾燥させることができる。
【0029】
熱風装置は、特に限定されず、従来公知の装置を用いることができる。また、熱風の温度は、特に限定されず、例えば、100℃以上、120℃以下である。また、熱風の風速は、特に限定されず、例えば、5m/s以上、30m/s以下である。
【0030】
3.電極体
本開示において製造される電極体は、集電シートと、集電シートの第1面上に形成された電極層と、を有する。電極層は、集電シート上に間欠的に複数形成されていてもよい。また、電極体において、電極層は、集電シートの第1面上および第1面と対向する第2面上にそれぞれ形成されていてもよい。
【0031】
電極体は、電池の製造に用いられ、正極側の部材(電極シート)であってもよく、負極側の部材(電極シート)であってもよい。つまり、集電シートおよび電極層は、正極集電体および正極活物質層であってもよく、負極集電体および負極活物質層であってもよい。本開示における電極体が正極側の電極シートの場合、負極側の電極シートおよびセパレータと組み合わされて、単位電池を形成する。同様に、本開示における電極体が負極側の電極シートの場合、正極側の電極シートおよびセパレータと組み合わされて、単位電池を形成する。
【0032】
電極体が用いられる電池の種類は特に限定されないが、例えば、リチウムイオン二次電池が挙げられる。電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0033】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0034】
1 …集電シート
2 …塗工部
10 …塗工シート
20 …レーザ装置
21 …レーザヘッド
21a …レーザ照射口
22 …反射板
22a …スカート部
30 …熱風装置
30A …第1熱風装置
30B …第2熱風装置