(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025091636
(43)【公開日】2025-06-19
(54)【発明の名称】タブレット組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 17/06 20060101AFI20250612BHJP
【FI】
C11D17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207000
(22)【出願日】2023-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大亮
(72)【発明者】
【氏名】石田 和裕
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB04
4H003BA02
4H003BA17
4H003EA15
4H003EA21
4H003EB04
4H003EB07
4H003EB09
4H003FA38
(57)【要約】
【課題】高温で保存しても徐溶性に優れ、耐熱性が良好であり、割れにくいタブレット組成物の提供。
【解決手段】(A)成分と、(B-1)成分及び(B-2)成分からなる(B)成分とを含有するタブレット組成物10であって、前記(A)成分は、乳酸カルシウム及び水酸化カルシウムの少なくとも一方であり、前記(B-1)成分は、融点が100℃未満の滑沢剤であり、前記(B-2)成分は、融点が100℃以上の滑沢剤である、タブレット組成物10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分と、(B-1)成分及び(B-2)成分からなる(B)成分とを含有するタブレット組成物であって、
前記(A)成分は、乳酸カルシウム及び水酸化カルシウムの少なくとも一方であり、
前記(B-1)成分は、融点が100℃未満の滑沢剤であり、
前記(B-2)成分は、融点が100℃以上の滑沢剤である、タブレット組成物。
【請求項2】
前記(B-1)成分は、融点が100℃未満の油性滑沢剤であり、
前記(B-2)成分は、融点が100℃以上の無機金属塩系滑沢剤である、請求項1に記載のタブレット組成物。
【請求項3】
前記(B-1)成分は、カルナウバロウ、ライスワックス、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル及びヒマワリワックスから選ばれる1種以上であり、
前記(B-2)成分は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム及び軽質無水ケイ酸から選ばれる1種以上である、請求項2に記載のタブレット組成物。
【請求項4】
(C)成分をさらに含有し、
前記(C)成分は、マグネシウム及びアルミニウムのうち少なくとも一方を含む無機金属塩である、請求項1~3のいずれか一項に記載のタブレット組成物。
【請求項5】
前記(C)成分は、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム及び水酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種以上を含む、請求項4に記載のタブレット組成物。
【請求項6】
前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.05~2である、請求項1~3のいずれか一項に記載のタブレット組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タブレット組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
徐溶性技術は、これまでトイレのインタンク、オンタンク又は便器等への技術が主に報告されている。
例えば特許文献1には、徐溶化剤中に、水に不溶又は難溶な固形消臭剤を分散させた水洗トイレ用固形洗浄剤が開示されている。
【0003】
近年、衣類等の繊維製品の洗濯の分野に徐溶性技術を適用することが考えられており、高融点の非イオン界面活性剤や高級アルコールを融解成形した固形剤が提案されている。
例えば特許文献2には、25℃以上の融点を有する、水溶性非イオン界面活性剤又はポリエチレングリコール又はポリオキシレチレンとポリオキシプロピレンとの共重合体と、50℃以上の融点を有する水難溶性成分と、機能性成分とを含有する洗濯処理用固形組成物が開示されている。この洗濯処理用固形組成物は、各成分の融点以上に加熱したものを混合し、型に流し込み、固まるまで冷却することにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-60507号公報
【特許文献2】特開2022-104632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固形剤は、例えば洗濯ボールや洗濯ネット等に収容し、繊維製品の被洗物と共に洗濯機に投入して洗濯に用いる。
しかしながら、乾燥機能付きの洗濯機を用いて乾燥工程まで行う場合、固形剤の一部が溶け出すことがあり、耐熱性に課題がある。
また、輸送時や保管時に固形剤が高温に曝されると、徐溶性が変化することがあるため、固形剤には高温で保存しても徐溶性に優れることが求められる。
さらに、固形剤が洗濯中に割れると、洗濯ボール等から小片が飛び出て繊維製品へ付着することがある。洗濯ボールに留まったとしても、表面積が小さくなり、徐溶性が過度に高まることがある。そのため、固形剤には洗浄中に割れにくいことが求められる。
【0006】
本発明は、高温で保存しても徐溶性に優れ、耐熱性が良好であり、割れにくいタブレット組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
[1] (A)成分と、(B-1)成分及び(B-2)成分からなる(B)成分とを含有するタブレット組成物であって、
前記(A)成分は、乳酸カルシウム及び水酸化カルシウムの少なくとも一方であり、
前記(B-1)成分は、融点が100℃未満の滑沢剤であり、
前記(B-2)成分は、融点が100℃以上の滑沢剤である、タブレット組成物。
[2] 前記(B-1)成分は、融点が100℃未満の油性滑沢剤であり、
前記(B-2)成分は、融点が100℃以上の無機金属塩系滑沢剤である、前記[1]のタブレット組成物。
[3] 前記(B-1)成分は、カルナウバロウ、ライスワックス、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル及びヒマワリワックスから選ばれる1種以上であり、
前記(B-2)成分は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム及び軽質無水ケイ酸から選ばれる1種以上である、前記[2]のタブレット組成物。
[4] (C)成分をさらに含有し、
前記(C)成分は、マグネシウム及びアルミニウムのうち少なくとも一方を含む無機金属塩である、前記[1]~[3]のいずれかのタブレット組成物。
[5] 前記(C)成分は、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム及び水酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種以上を含む、前記[4]のタブレット組成物。
[6] 前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.05~2である、前記[1]~[5]のいずれかのタブレット組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温で保存しても徐溶性に優れ、耐熱性が良好であり、割れにくいタブレット組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のタブレット組成物の一例を示す側面図である。
【
図2】本発明のタブレット組成物の他の例を示す側面図である。
【
図3】(a)は本発明のタブレット組成物の他の例を示す斜視図であり、(b)は(a)に示すタブレット組成物のA-A’線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。例えばA~BはA以上B以下と同義である。
また、「タブレット組成物」とは、室温(例えば25℃)において一定した形状を保持し、経時的な形状の変化が生じにくい固形製剤のことであり、例えば錠剤、ジェル(ゲル)、ユニットドーズ等が挙げられる。特に錠剤の形態が好ましい。
また、「耐熱性」とは、タブレット組成物を、洗濯乾燥機を用いた繊維製品の洗濯に使用する際、又は食器洗い乾燥機を用いた台所用品である食器や調理器具(以下、これらを総称して「食器」ということがある。)の洗浄に使用する際に、洗濯乾燥機又は食器洗い乾燥機の乾燥温度にタブレット組成物が曝されても溶出しにくい性能のことである。
また、「徐溶性」とは、水と接触したときに、タブレット組成物の全体が一度に溶解せず、タブレット組成物の表面又はその近傍の一部が溶解する性質のことである。具体的には、タブレット組成物12gを15℃の水に40分間浸漬させた後にタブレット組成物の重量を測定したときの、浸漬前後の減少重量が0.2g以上5.0g未満であることが好ましく、0.5g以上2.5g以下であることがより好ましく、0.8g以上2.0g未満であることがより好ましい。
なお、本明細書において、夏場等の気温の高い環境下で輸送又は保管したタブレット組成物の徐溶性を特に「高温保存時の徐溶性」という。
【0011】
本発明のタブレット組成物は、以下に示す(A)成分と、(B)成分とを含有するタブレット型の固形製剤である。
タブレット組成物は、(A)成分及び(B)成分に加えて、(C)成分をさらに含有することが好ましい。
タブレット組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、(A)成分及び(B)成分に加えて、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外の成分(以下、「任意成分」ともいう。)をさらに含有してもよい。
【0012】
<(A)成分>
(A)成分は、乳酸カルシウム及び水酸化カルシウムの少なくとも一方である。
タブレット組成物が(A)成分と後述の(B-1)成分とを併有することで、高温保存時の徐溶性がもたらされ得る。
【0013】
(A)成分の含有量は、タブレット組成物の総質量に対して1~25質量%が好ましく、2~20質量%がより好ましく、3~15質量%がさらに好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であれば、高温保存時の徐溶性がより向上する。(A)成分の含有量が上記上限値以下であれば、高温保存時の徐溶性がより向上する。加えて、繊維製品の洗濯中や食器の洗浄中にタブレット組成物がより割れにくくなる。
【0014】
<(B)成分>
(B)成分は、(B-1)成分及び(B-2)成分からなる。
(B-1)成分は、融点が100℃未満の滑沢剤である。
(B-2)成分は、融点が100℃以上の滑沢剤である。
すなわち、(B)成分は滑沢剤である。
【0015】
(B-1)成分の融点は100℃未満であり、60~95℃が好ましく、70~90℃がより好ましい。
(B-2)成分の融点は100℃以上であり、120~2000℃が好ましく、130~250℃がより好ましい。
(B-1)成分と(B-2)成分との融点の差は、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましい。融点の差が上記下限値以上であれば、高温保存時の徐溶性がより向上する。
滑沢剤の融点は、示差走査熱量測定により求められる。具体的には、示差走査熱量計を用い、0℃から250℃まで、2℃/分の昇温速度で昇温させたときの融解ピークの頂点温度を滑沢剤の融点とする。なお、滑沢剤として市販品を用いる場合、カタログ値のあるものは、簡易な測定値としてカタログ値を滑沢剤の融点として採用してもよい。
【0016】
(B-1)成分は、徐溶成分である。タブレット組成物が(B-1)成分を含有することで、適切な徐溶性がもたらされ得る。加えて、タブレット組成物が上述した(A)成分と(B-1)成分とを併有することで、高温保存時の徐溶性がもたらされ得る。
さらに、タブレット組成物が(B-1)成分を含有することで硬度が高まり、繊維製品の洗濯中や食器の洗浄中に割れにくくなる。
【0017】
(B-1)成分としては、例えば融点が100℃未満の油性滑沢剤、融点が100℃未満の水性滑沢剤等が挙げられる。これらの中でも、融点が100℃未満の油性滑沢剤が好ましい。
融点が100℃未満の油性滑沢剤としては、例えばカルナウバロウ、ライスワックス、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ヒマワリワックス、キャンデリラワックス、ローズワックス等が挙げられる。これらの中でも、融点の観点から、カルナウバロウ、ライスワックス、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ヒマワリワックスが好ましく、カルナウバロウ、ライスワックス、硬化油がより好ましい。その中でも特に、錠剤の形態のタブレット組成物を製造する場合、圧縮成形性(打錠性)がより高まる観点からカルナウバロウがさらに好ましい。
(B-1)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0018】
カルナウバロウとしては、公知のものを使用でき、例えば天然の粗ワックスを、脱ガム処理、脱酸処理、水素添加法、分別法、カラム処理等の方法で精製したものや、未精製のものが挙げられる。
ライスワックスとしては、公知のものを使用でき、例えば米ぬかから抽出された米油を精製する際に分離したものが挙げられる。
硬化油としては、公知のものを使用でき、例えば硬化ヒマシ油、硬化パーム油、硬化コメ油、硬化ヤシ油、硬化大豆油等が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、公知のものを使用でき、例えばショ糖オレイン酸エステル、ショ糖カプリル酸エステル、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル等が挙げられる。
ヒマワリワックスとしては、公知のものを使用でき、例えばヒマワリの種子から得られたものが挙げられる。
【0019】
(B-2)成分は、打錠性を高める成分である。タブレット組成物が(B-2)成分を含有することで、打錠性が高まり、錠剤の形態のタブレット組成物を製造する際に打錠障害が生じにくく、タブレット組成物を生産性よく容易に製造できる。
【0020】
(B-2)成分としては、例えば融点が100℃以上の無機金属塩系滑沢剤が挙げられる。具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、打錠性がより高まる観点から、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、軽質無水ケイ酸が好ましく、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムがより好ましく、ステアリン酸マグネシウムがさらに好ましい。
(B-2)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0021】
(B)成分としては、カルナウバロウ、ライスワックス、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル及びヒマワリワックスから選ばれる1種以上と、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム及び軽質無水ケイ酸から選ばれる1種以上とを含むことが好ましい。
【0022】
(B)成分の含有量は、タブレット組成物の総質量に対して1~30質量%が好ましく、3~25質量%がより好ましく、6~21質量%がさらに好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値以上であれば打錠性がより高まる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であれば、高温保存時の徐溶性がより向上する。
【0023】
(B-1)成分の含有量は、タブレット組成物の総質量に対して0.5~29.9質量%が好ましく、5~27質量%がより好ましく、8~25質量%がさらに好ましく、10~20質量%が特に好ましい。(B-1)成分の含有量が上記下限値以上であれば、(A)成分との併用によりタブレット組成物の高温保存時の徐溶性がより向上する。加えて、繊維製品の洗濯中や食器の洗浄中にタブレット組成物がより割れにくくなる。(B-1)成分の含有量が上記上限値以下であれば、(A)成分との併用によりタブレット組成物の高温保存時の徐溶性がより向上する。
【0024】
(B-2)成分の含有量は、タブレット組成物の総質量に対して0.1~5質量%が好ましく、0.2~4質量%がより好ましく、0.5~3質量%がさらに好ましい。(B-2)成分の含有量が上記下限値以上であれば、打錠性がより向上し、錠剤の形態のタブレット組成物をより生産性よく製造できる。(B-2)成分の含有量が上記上限値以下であれば、繊維製品の洗濯中や食器の洗浄中にタブレット組成物がより割れにくくなる。
【0025】
(A)成分及び(B)成分の含有量の合計(以下、「(A+B)量」ともいう。)は、タブレット組成物の総質量に対して10~40質量%が好ましく、15~35質量%がより好ましく、20~30質量%がさらに好ましい。(A+B)量が上記下限値以上であれば、繊維製品の洗濯中や食器の洗浄中にタブレット組成物がより割れにくくなる。(A+B)量が上記上限値以下であれば、高温保存時の徐溶性がより向上する。
【0026】
(A)成分/(B)成分で表される質量比(以下、「A/B比」ともいう。)は、0.05~2が好ましく、0.07~1.5がより好ましく、0.1~1がさらに好ましく、0.1~0.5が特に好ましい。A/B比が上記下限値以上であれば、タブレット組成物の高温保存時の徐溶性がより向上する。加えて、繊維製品の洗濯中や食器の洗浄中にタブレット組成物がより割れにくくなる。A/B比が上記上限値以下であれば、高温保存時の徐溶性がより向上する。
【0027】
<(C)成分>
(C)成分は、マグネシウム及びアルミニウムの少なくとも一方を含む無機金属塩(ただし、(B-2)成分を除く。)である。
(C)成分は、徐溶成分である。タブレット組成物が(C)成分を含有することで、(A)成分との併用により高温保存時の徐溶性がより向上する。加えて、タブレット組成物の硬度がより高まり、繊維製品の洗濯中や食器の洗浄中の割れをより抑制できる。
【0028】
(C)成分としては、例えば合成ヒドロタルサイト、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムアルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、タブレット組成物の硬度が向上する観点から、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化アルミニウムが好ましく、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウムがより好ましく、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムがさらに好ましい。
(A)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
なお、水酸化アルミニウムは、結晶質であってもよいし、非晶質であってもよい。非晶質の水酸化アルミニウムを「乾燥水酸化アルミニウムゲル」ともいう。
【0029】
(C)成分の含有量は、タブレット組成物の総質量に対して70質量%以下が好ましく、30~70質量%がより好ましく、40~60質量%がさらに好ましく、45~55質量%が特に好ましい。(C)成分の含有量が上記下限値以上であれば、(A)成分との併用によりタブレット組成物の高温保存時の徐溶性がより向上する。加えて、繊維製品の洗濯中や食器の洗浄中にタブレット組成物がより割れにくくなる。(C)成分の含有量が上記上限値以下であれば、(A)成分との併用によりタブレット組成物の高温保存時の徐溶性がより向上する。
【0030】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分の含有量の合計(以下、「(A+B+C)量」ともいう。)は、タブレット組成物の総質量に対して10~100質量%が好ましく、40~100質量%がより好ましく、50~90質量%がさらに好ましく、65~80質量%が特に好ましい。(A+B+C)量が上記下限値以上であれば、タブレット組成物の高温保存時の徐溶性がより向上する。加えて、繊維製品の洗濯中や食器の洗浄中にタブレット組成物がより割れにくくなる。(A+B+C)量が上記上限値以下であれば、打錠性に優れた粉末混合物を得られる。
【0031】
(C)成分/((A)成分+(B)成分)で表される質量比(以下、「C/(A+B)比」ともいう。)は、0~4.0が好ましく、0.5~4.0がより好ましく、1.0~3.0がさらに好ましく、2.0~3.0が特に好ましい。C/(A+B)比が上記下限値以上であれば、タブレット組成物の高温保存時の徐溶性がより向上する。C/(A+B)比が上記上限値以下であれば、タブレット組成物の高温保存時の徐溶性がより向上する。加えて、繊維製品の洗濯中や食器の洗浄中にタブレット組成物がより割れにくくなる。
【0032】
<任意成分>
任意成分は、例えば糖類、抗菌剤、抗カビ剤、消臭剤、忌避剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、移染防止剤、繊維表面改質剤、再汚染防止剤、金属イオン捕捉剤(キレート剤)、香料、シリコーン化合物、着色剤、増粘剤、減粘剤、可溶化剤、アルカリ剤、(C)成分以外の無機塩、有機酸、酸化防止剤、防腐剤、保存安定性向上剤、パール剤、エキス等が挙げられる。
これらの任意成分は公知物質であり、市場で容易に入手可能であり、また調製することも可能である。
任意成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
なお、タブレット組成物を構成する全ての成分の合計量は100質量%であり、100質量%を超えない。
【0033】
タブレット組成物が糖類を含有していれば、徐溶性がより向上する。加えて、賦形性が向上する。
糖類としては、例えばキシロース、ガラクトース等の単糖類;グラニュー糖、乳糖、ショ糖、マルトース、果糖、ブドウ糖、トレハロース、オリゴ糖、デキストリン等の二糖類以上の多糖類;マンニトール、ソルビトール、マルチトール、パラチニット、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール等の糖アルコールなどが挙げられる。これらの中でも二糖類以上の多糖類、糖アルコールが好ましく、その中でも特に、徐溶性と賦形性のバランスに優れる観点から、マンニトール、乳糖、ショ糖、オリゴ糖がより好ましく、マンニトール、乳糖がさらに好ましく、乳糖が特に好ましい。
これら糖類は、造粒物であってもよいし、造粒物でなくてもよい。
糖類は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
乳糖の含有量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、タブレット組成物の総質量に対して80質量%以下が好ましく、1~50質量%がより好ましく、5~30質量%がさらに好ましい。
【0034】
抗菌剤としては、例えば炭素数12~16のアルキルトリメチルアンモニウム塩(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の商品名「リポカードC12-37W」、「リポカードC50」、「リポカードC16Cl塩」、「リポカードC16MS塩」等)、ジアルキルジメチルアンモニウム塩(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の商品名「リポカード210-80E」、ロンザ株式会社製の商品名「CarboquatMW50」等)、ジアルキルメチルポリアンモニウムプロピオネート(ロンザ株式会社製の商品名「Bardap26」等)、ダイクロサン(BASF社製の商品名「チノサンHP100」等)、トリクロサン、塩化ベンザルコニウム(ロンザ株式会社製の商品名「BarquatMS100」、「BarquatMB80」等)、塩化ベンゼトニウム、ビス-(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、8-オキシキノリン、ビグアニド系化合物(ロンザ株式会社製の商品名「ProxelIB」等)、塩酸クロロヘキシジン、ポリリジン等が挙げられる。
抗菌剤の含有量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、タブレット組成物の総質量に対して10質量%未満が好ましい。
【0035】
抗カビ剤としては、ヨートルDP95(化合物名:ジヨードメチル-p-トリルスルホン)、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル等が挙げられる。
消臭剤としては、例えばメチルグリシンジ酢酸(MGDA)、アスパラギン酸ジ酢酸(ASDA)、イソセリンジ酢酸(ISDA)、β-アラニンジ酢酸(ADAA)、セリンジ酢酸(SDA)、グルタミン酸ジ酢酸(GLDA)イミノジコハク酸(IDS)、ヒドロキシイミノジコハク酸(HIDS)、又はこれらの塩、リシノール酸亜鉛、ベントナイト、デキストリン等が挙げられる。
忌避剤としては、公知の害虫忌避剤として使用されている公知の成分、例えばN,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド(DEET)、イカリジン等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば4-メトキシ-4’-tert-ブチルジベンゾイルメタン(、DSMニュートリションジャパン株式会社製の商品名「パルソール1789」等)等が挙げられる。
【0036】
蛍光剤としては、例えば4,4-ビス(2-スルホスチリル)ビフェニルジナトリウム(BASF社製の商品名「チノパールCBS-X」等)等が挙げられる。
移染防止基材としては、例えばポリビニルピロリドン等が挙げられる。
退色防止剤としては、例えば1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン等が挙げられる。
繊維表面改質剤としては、例えばセルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼや、ケラチナーゼ等の酵素等が挙げられる。
再汚染防止剤としては、例えばアルキレンテレフタレート単位、及びアルキレンイソフタレート単位からなる群から選択される少なくとも一種の繰り返し単位と、オキシアルキレン単位、及びポリオキシアルキレン単位からなる群から選択される少なくとも一種の繰り返し単位と、を有する水溶性ポリマーが挙げられる。具体的には、商品名「TexCare SRN-100」(クラリアント社製、重量平均分子量2000~3000)、商品名「TexCare SRN-300」(クラリアント社製、重量平均分子量7000)、商品名「Repel-O-Tex Crystal」(ローディア社製)、商品名「Repel-O-Tex QC」(ローディア社製)等が挙げられる。他の再汚染防止剤としては、ポリアルキレンイミンのアルキレンオキシド付加体、ポリアルキレンアミンのアルキレンオキシド付加体が挙げられる。具体的には、商品名「Sokalan HP20」(BASF社製)等が挙げられる。
金属イオン捕捉剤(キレート剤)としては、例えばマロン酸、コハク酸、リンゴ酸、ジグリコール酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0037】
香料としては、繊維製品用処理剤組成物へ配合できることが知られているものを特に制限なく用いことができる。例えば、使用できる香料原料のリストは、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals」,Vol.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)、「合成香料 化学と商品知識」,印藤元一著,化学工業日報社(1996)、「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)、「香りの百科」,日本香料協会編,朝倉書店(1989)、「Perfumery MaterialPerformance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)、「Flower oils and Floral CompoundsIn Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等に記載されている。
香料の配合量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、タブレット組成物の総質量に対して10質量%未満が好ましい。
【0038】
シリコーン化合物の分子構造は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよいし、また、架橋していてもよい。また、シリコーン化合物は変性シリコーン化合物であってもよく、前記変性シリコーン化合物は、1種の有機官能基により変性されたものであってもよいし、2種以上の有機官能基により変性されたものであってもよい。
シリコーン化合物は、オイルの状態で使用することができ、また任意の乳化剤によって分散された乳化物の状態でも使用することができる。
シリコーンの具体例としては、ジメチルシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フッ素変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーンや、アミノ変性シリコーンなどが挙げられる。例えば、ポリオキシエチレン変性シリコーン(デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社製の商品名「SH3775M」等)等が挙げられる。
シリコーン含有量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、タブレット組成物の総質量に対して10質量%未満が好ましい。
【0039】
着色剤としては、例えばアシッドレッド138、Polar Red RLS、アシッドイエロー203、アシッドブルー9、青色1号、青色205号、緑色3号、赤色106号、黄色203号、ターコイズP-GR(いずれも商品名)等の汎用の色素や顔料等が挙げられる。
着色剤の含有量は、配合目的を達成できる量である限り特に限定されないが、タブレット組成物の総質量に対して0.00005~0.005質量%が好ましい。
【0040】
有機酸としては、例えばコハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸、サリチル酸、マレイン酸、フタル酸、グルタル酸、シュウ酸等が挙げられる。
【0041】
<形状>
タブレット組成物の形状としては特に限定されないが、例えば円柱部を有する形状、角柱部を有する形状等が挙げられる。
【0042】
タブレット組成物が円柱部を有する形状である場合、タブレット組成物は円柱部のみからなる形状であってもよいし、円柱部及び円柱部より上下に膨出する膨出部を有する形状であってもよい。
【0043】
タブレット組成物が円柱部及び膨出部を有する形状である場合、このような形状のタブレット組成物としては、例えばスミ角平錠、スミ丸平錠、R錠(標準R錠)、2段R錠等が挙げられる。これらの中でもスミ角平錠、R錠が好ましい。
これらの錠剤の膨出部は上下非対称であってもよいが、上下対称であることが好ましい。
【0044】
図1は、スミ角平錠の形状であるタブレット組成物10の一例を示す側面図である。
この例のタブレット組成物10は、円柱部11と、第一の膨出部12と、第二の膨出部13とを有する両凸面錠剤である。
円柱部11の直径、すなわち円柱部11の天面及び底面の直径は15.1mm以上が好ましく、20~50mmがより好ましく、25~35mmがさらに好ましい。円柱部11の直径が上記下限値以上であれば、誤飲をより防止できる。円柱部11の直径が上記上限値以下であれば、最後まで均一に徐溶させることができる。
第一の膨出部12は、円柱部11の一方の端面の周縁近傍から、前記一方の端面の中心に向かい所定の立ち上がり角度θにて直線的に立ち上がり、天頂12Aを含む任意の領域が平面となる。
第二の膨出部13は、円柱部11の他方の端面の周縁近傍から、前記他方の端面の中心に向かい所定の立ち上がり角度θにて直線的に立ち上がり、天頂13Aを含む任意の領域が平面となる。
第一の膨出部12における立ち上がり角度θと、第二の膨出部13における立ち上がり角度θとは、同じであってもよく、異なっていてもよく、錠剤強度の観点から、同じであることが好ましい。
タブレット組成物10の厚みH1、すなわち、円柱部11の厚みと第一の膨出部12及び第二の膨出部13の最大厚みの合計は、5~20mmが好ましく、8~17mmがより好ましく、12~16mmがさらに好ましい。
なお、
図1に示すタブレット組成物10は、第一の膨出部12の外周に平面視円環状の水平面(ランド部14)を有し、第二の膨出部13の外周に平面視円環状の水平面(ランド部15)を有するが、例えば、ランド部を有さず、錠剤周縁部と膨出立ち上がり部とが接していてもよい。
【0045】
図2は、R錠の形状を有するタブレット組成物20の一例を示す側面図である。
この例のタブレット組成物20は、円柱部21と、第一の膨出部22と、第二の膨出部23とを有し、第一の膨出部22、第二の膨出部23それぞれの表面の曲線の曲率半径Rが、膨出部表面の位置によらず一定である両凸面錠剤である。
円柱部21の直径、すなわち円柱部21の天面及び底面の直径は、
図1に示すタブレット組成物10の円柱部11の直径と同様である。
第一の膨出部22は、円柱部21の一方の端面の周縁近傍から、前記一方の端面の中心に向かうに従って膨出する。第二の膨出部23は、円柱部21の他方の端面の周縁近傍から、前記他方の端面の中心に向かうに従って膨出する。
ここで、「第一の膨出部22の表面の曲線の曲率半径」とは、天頂22Aを通るように、円柱部21の端面に対して垂直方向に切断した際の断面において、第一の膨出部22の表面が描く曲線を円の一部とみなした際のその円の半径をいう。
「第二の膨出部23の表面の曲線の曲率半径」とは、天頂23Aを通るように、円柱部21の端面に対して垂直方向に切断した際の断面において、第二の膨出部23の表面が描く曲線を円の一部とみなした際のその円の半径をいう。
第一の膨出部22における天頂22Aは、一方の端面に対して最も高いところに位置する点である。第二の膨出部23における天頂23Aは、他方の端面に対して最も低いところに位置する点である。
第一の膨出部22の曲率半径Rと第二の膨出部23の曲率半径Rとは、同じでもよく、異なってもよく、錠剤強度の観点から、同じであることが好ましい。
タブレット組成物20の厚みH2、すなわち、円柱部21の厚みと第一の膨出部22及び第二の膨出部23の最大厚みの合計は、5~20mmが好ましく、8~17mmがより好ましく、12~16mmがさらに好ましい。
なお、
図2に示すタブレット組成物20は、第一の膨出部22の外周に平面視円環状の水平面(ランド部24)を有し、第二の膨出部23の外周に平面視円環状の水平面(ランド部25)を有するが、例えば、ランド部を有さず、錠剤周縁部と膨出立ち上がり部とが接していてもよい。
【0046】
タブレット組成物が円柱部のみからなる形状である場合、円柱部の直径は、
図1に示すタブレット組成物10の円柱部11の直径と同様である。
また、円柱部の高さ、すなわち円柱部のみからなるタブレット組成物の厚みは、5~20mmが好ましく、8~17mmがより好ましく、12~16mmがさらに好ましい。
円柱部のみからなるタブレット組成物は扁平状であってもよく、扁平状の場合、アスペクト比(円柱部の直径/円柱部の高さH)は1~10が好ましく、1.2~5がより好ましく、1.5~2.5がさらに好ましい。
【0047】
また、タブレット組成物が円柱部のみからなる形状である場合、円柱部の表面、具体的には円柱部の天面及び底面の少なくとも一方には、凹部が設けられていてもよい。
図3(a)は、表面に凹部が設けられた形状を有するタブレット組成物30の一例を示す斜視図であり、
図3(b)はタブレット組成物30のA-A’線に沿う断面図である。
図3に示すタブレット組成物30は、円柱部31のみで構成され、円柱部31の天面31aの中央に凹部32が設けられている。また、タブレット組成物30の厚みH3方向に沿う断面の形状は四角形であり、その4つの角が円弧で隅切られている。
なお、図示例のタブレット組成物30は、天面及び底面が平面であるが、天面及び底面の少なくとも一方は曲面であってもよい。
【0048】
円柱部31の直径、すなわち天面31a及び底面31bの直径は15.1mm以上が好ましく、20~50mmがより好ましく、25~35mmがさらに好ましい。天面31a及び底面31bの直径が上記下限値以上であれば、誤飲をより防止できる。天面31a及び底面31bの直径が上記上限値以下であれば、最後まで均一に徐溶させることができる。
【0049】
タブレット組成物30の厚みH3、すなわち、円柱部31の厚みは特に限定されないが、例えば5~20mmが好ましく、8~17mmがより好ましく、12~16mmがさらに好ましい。
【0050】
凹部32の深さhは、タブレット組成物30の厚みH3の20~40%が好ましく、25~35%がより好ましい。凹部32の深さhが上記下限値以上であれば、タブレット組成物30の硬度がより高まる。凹部32の深さhが上記上限値以下であれば、容易に打錠成形できる。
凹部32の開口部の口径dは、5~25mmが好ましく、7~20mmがより好ましく、15~20mmがさらに好ましい。なお、図示例の凹部32の開口部の形状は円形であるが、凹部32の開口部の形状は特に限定されず、多角形であってもよいし、楕円形であってもよい。
凹部32の容積は、タブレット組成物30の体積の5~25%が好ましく、10~20%がより好ましい。凹部32の容積が上記下限値以上であれば、タブレット組成物30の徐溶性がより向上する。凹部32の容積が上記上限値以下であれば、タブレット組成物30の硬度がより高まる。
なお、凹部32は、その中心に向かって渦巻き状となるように形成されていてもよい。
【0051】
タブレット組成物が角柱部を有する形状である場合、タブレット組成物は角柱部のみからなる形状であってもよいし、角柱部及び角柱部より上下に膨出する膨出部を有する形状であってもよい。
また、タブレット組成物が角柱部のみからなる形状である場合、角柱部の表面、具体的には角柱部の天面及び底面の少なくとも一方には、凹部が設けられていてもよい。
【0052】
角柱部を有する形状のタブレット組成物としては、円柱部を有する形状のタブレット組成物において、円柱部を角柱部に変更した形状が挙げられる。
角柱部の天面又は底面の外接円の直径は15.1mm以上が好ましく、20~50mmがより好ましく、25~35mmがさらに好ましい。角柱部の天面又は底面の外接円の直径が上記下限値以上であれば、誤飲をより防止できる。角柱部の天面又は底面の外接円の直径が上記上限値以下であれば、最後まで均一に徐溶させることができる。
角柱部の天面又は底面の形状は、多角形であれば特に限定されないが、例えば三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形、星型多角形等が挙げられる。
【0053】
タブレット組成物の形状としては、円柱部を有する形状が好ましく、タブレット組成物の硬度がより高まる観点では、円柱部及び膨出部を有する形状、円柱部の天面及び底面の少なくとも一方に凹部が設けられている形状がより好ましく、スミ角平錠の形状、円柱部の天面及び底面の少なくとも一方に凹部が設けられている形状がさらに好ましく、円柱部の天面及び底面の少なくとも一方に凹部が設けられている形状が特に好ましい。
【0054】
<重量>
タブレット組成物の1製剤当たりの重量は1.5g以上が好ましく、2~20gがより好ましく、10~15gがさらに好ましい。1製剤当たりの重量が上記下限値以上であれば、誤飲をより防止できる。1製剤当たりの重量が上記上限値以下であれば、タブレット組成物の硬度がより高まる。
【0055】
<製造方法>
タブレット組成物は、例えば、(A)成分と、(B)成分と、必要に応じて(C)成分及び任意成分の1つ以上とを混合して得られる混合物(粉末混合物ともいう。)を打錠することで得られる。
打錠方法としては、例えば、臼と杵とを有する打錠機を用いて打錠(圧縮成形)する方法が挙げられる。
打錠条件は特に制限されないが、打錠圧は20~100kNが好ましく、40~60kNがより好ましい。
【0056】
<作用効果>
以上説明した本発明のタブレット組成物は、上述した(A)成分及び(B)成分を含有するので、高温で保存しても徐溶性に優れ、耐熱性が良好である。また、本発明のタブレット組成物は高い硬度を有するので、繊維製品の洗濯中や食器の洗浄中に割れにくい。しかも、タブレット型であるため、耐熱性にも優れる。特に、各成分を圧縮成形して得られる錠剤の形態のタブレット組成物は、耐熱性により優れる。
【0057】
<用途>
本発明のタブレット組成物は、洗濯機による洗濯処理や、食器洗い機による食器洗いの際に、洗浄対象である被洗物とともに使用することができる。すなわち、タブレット組成物は、洗濯処理用又は食器洗浄処理用として使用することが好ましい。
乾燥機能を搭載した洗濯機(洗濯乾燥機)や食器洗い機(食器洗い乾燥機)を用いて被洗物を洗浄し、乾燥まで行う場合、乾燥工程時には洗濯乾燥機や食器洗い乾燥機の庫内の温度は高温(例えば30~90℃程度)となる。そのため、洗濯乾燥機や食器洗い乾燥機にタブレット組成物を使用すると、タブレット組成物は高温に曝されることになるが、本発明のタブレット組成物であれば耐熱性に優れるので高温に曝されても溶出しにくい。よって、本発明のタブレット組成物は、洗濯乾燥機を用いた洗濯処理用、又は食器洗い乾燥機を用いた食器洗浄処理用として特に好適である。
洗濯処理の場合、被洗物の例としては、衣類(衣料)、布巾、タオル類、シーツ、カーテン等の繊維製品などが挙げられる。繊維製品の素材は特に限定されず、綿、絹、羊毛等の天然繊維、ポリエステル、ポリアミド等の化学繊維などのいずれでもよい。
食器洗浄処理の場合、被洗物の例としては、皿、箸、スプーン等の直接食事に使用する器具;鍋、包丁等の調理器具などが挙げられる。本明細書では、これらを総称して「食器」ともいう。
【0058】
また、本発明のタブレット組成物が(A)成分及び(B)成分に加えて、(A)成分以外の機能性成分を含有していれば、水と接触するたびにタブレット組成物の表面又はその近傍の一部が溶解し、タブレット組成物に含まれる(A)成分及び(B)成分とともに機能性成分が徐放され、機能性成分の効果を持続的に発揮できる。
機能性成分としては、例えば上述した任意成分が挙げられる。例えばタブレット組成物に抗菌剤、抗カビ剤、消臭剤等を配合しておけば、これらの機能が被洗物に加えて、洗濯機や食器洗い機の庫内にも付与される。
【0059】
<使用方法>
本発明のタブレット組成物は、そのままで、もしくは容器、用具又は袋内に収容して使用することができる。例えば、本発明のタブレット組成物を洗濯処理用として用いる場合、洗濯ボールや洗濯ネット等の市販の洗濯用品の内部にタブレット組成物を入れて、それらを被洗物と共に洗濯機に入れて洗濯に用いることができる。洗濯ボールとしては、例えば株式会社伊原企販製の商品名「Eco洗濯ボール」の、中身のトルマリンを取り出した外側の容器部分を用いることができる。洗濯ネットとしては、例えばDiyouth社製の商品名「Umi.洗濯ネット」を用いることができる。これらの洗濯用品は、本発明のタブレット組成物が洗濯において全て又はほぼ全て溶解した場合には、別途、本発明のタブレット組成物を収容して用いることで再利用することができる。
本発明のタブレット組成物を収容した洗濯ボールや洗濯ネット等の洗濯用品は、予め洗濯機中に入れておいてもよいし、被洗物を入れてからその上に入れてもよく、注水、洗浄、排水、すすぎ、脱水、(洗濯機によっては)乾燥の全工程において、洗濯機中に入れておいてよい。洗濯終了後、被洗物を洗濯機から取り出すときに、本発明のタブレット組成物を収容した洗濯ボールや洗濯ネット等の洗濯用品は、そのまま洗濯機中に入れたままでよく、次回の洗濯時にそのまま使用することができる。
本発明のタブレット組成物を食器洗浄処理用として用いる場合も、洗濯処理用として用いる場合と同様の方法により使用できる。
【実施例0060】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。本実施例において「%」は特に断りがない限り「質量%」を示す。
【0061】
「使用原料」
(A)成分又はその代替品として、以下に示す化合物を用いた。
・A-1:乳酸カルシウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)。
・A-2:水酸化カルシウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)。
・A-3:ケイ酸カルシウム(関東化学株式会社製、(A)成分の代替品)。
【0062】
(B)成分又はその代替品として、以下に示す化合物を用いた。
・B-1-1:カルナウバロウ(東亜化成株式会社製、融点85℃、油性滑沢剤)。
・B-1-2:硬化油(フロイント産業株式会社製のヒマシ油、融点85℃、油性滑沢剤)。
・B-1-3:ライスワックス(東亜化成株式会社製、融点80℃、油性滑沢剤)。
・B-1-4:ショ糖脂肪酸エステル(三菱ケミカル株式会社製、融点80℃、油性滑沢剤)。
・B-1-5:ポリエチレングリコール4000(三洋化成工業株式会社製、融点55℃、水性滑沢剤)。
・B-2-1:ステアリン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製、融点147℃、無機金属塩系滑沢剤)。
・B-2-2:ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社製、融点140℃、無機金属塩系滑沢剤)。
・B-2-3:フマル酸ステアリルナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製、融点196℃、無機金属塩系滑沢剤)。
・B-2-4:軽質無水ケイ酸(フロイント産業株式会社製、融点1713℃、無機金属塩系滑沢剤)。
・B-2-5:ステアリン酸マグネシウム(米山薬品工業株式会社製、融点88℃、無機金属塩系滑沢剤、(B-2)成分の代替品)。
【0063】
(C)成分として、以下に示す化合物を用いた。
・C-1:メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業株式会社製)。
・C-2:ケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業株式会社製)。
・C-3:合成ヒドロタルサイト(協和化学工業株式会社製)。
・C-4:乾燥水酸化アルミニウムゲル(日興製薬株式会社製)。
【0064】
任意成分として、以下に示す化合物を用いた。
・乳糖:フロイント産業株式会社製。
【0065】
「測定・評価」
<耐熱性の評価>
タブレット組成物1錠を保護容器(株式会社伊原企販製の商品名「Eco洗濯ボール」の、中身のトルマリンを取り出した外側の容器部分)の中に収容した。
ドラム式洗濯乾燥機(パナソニックホールディングス株式会社製、製品名「NA-VX7600L」)に、タブレット組成物を収容した保護容器を入れて、標準コース(注水から乾燥まで、水温15℃、乾燥時の庫内の最高温度80℃)にて約4時間洗濯乾燥した。乾燥後のタブレット組成物の外観を目視にて観察し、以下の評価基準に基づき耐熱性を評価した。◎、〇及び△を合格とした。
(評価基準)
◎:全く溶けず、べたつきもない。
〇:やや溶け、べたつきがあるが問題ないレベル。
△:半分程度溶け、べたつきがある。
×:ほとんど溶け、べたつきが目立つ。
【0066】
<高温保存時の徐溶性の評価>
タブレット組成物をTOPPAN株式会社製のアルミパウチに封入し、40℃の恒温槽に30日間静置して保管した。
保管後のタブレット組成物1錠を保護容器(株式会社伊原企販製の商品名「Eco洗濯ボール」の、中身のトルマリンを取り出した外側の容器部分)の中に収容した。
ドラム式洗濯乾燥機(パナソニックホールディングス株式会社製、製品名「NA-VX7600L」)に、タブレット組成物を収容した保護容器を入れて、標準コース(注水から脱水まで、水温15℃)にて約40分間洗濯した。洗濯前後のタブレット組成物の重量変化(洗濯前の重量-洗濯後の重量)を徐溶量とした。同様の評価を合計で5回行い、5回の徐溶量から平均徐溶量を算出し、以下の評価基準に基づき耐熱性を評価した。◎、〇及び△を合格とした。
(評価基準)
◎:平均徐溶量が0.8g以上2.0g未満。
〇:平均徐溶量が0.5g以上0.8g未満、又は、2.0g以上2.5g以下。
△:平均徐溶量が0.2g以上0.5g未満、又は、2.5g超5.0g未満。
×:平均徐溶量が0.2g未満、又は、5.0g以上。
【0067】
<割れの評価>
タブレット組成物1錠を保護容器(株式会社伊原企販製の商品名「Eco洗濯ボール」の、中身のトルマリンを取り出した外側の容器部分)の中に収容した。
ドラム式洗濯乾燥機(パナソニックホールディングス株式会社製、製品名「NA-VX7600L」)に、タブレット組成物を収容した保護容器を入れて、標準コース(注水から脱水まで、水温15℃)にて約40分間洗濯した。洗濯後のタブレット組成物を保護容器から取り出し、タブレット組成物の外観を目視にて観察し、以下の評価基準に基づき洗濯中の割れを評価した。〇及び△を合格とした。
(評価基準)
〇:割れが認められない。
△:1cm角未満の割れが発生した。
×:1cm角以上の割れが発生した。
【0068】
「実施例1」
表1に示す配合組成に基づき、各成分の粉体を合計が200gになるようにビニール袋に秤量し、ビニール袋を手で100回振って各粉体を混合し、粉体混合物を得た。得られた粉体混合物を単発打錠機(株式会社富士薬品機械製、製品名「FY-TPF-100S」)を用い、円柱部の直径が30mmの扁平スミ角の杵を用いて、50kNの打錠圧で打錠し、
図1に示すようなスミ角平錠の形状を有するタブレット組成物を得た。1製剤当たりの重量は12gであった。タブレット組成物の厚みは15mmであり、膨出部の立ち上がり角度θは30°であった。
得られたタブレット組成物について、耐熱性、高温保存時の徐溶性及び割れを評価した。結果を表1に示す。
【0069】
「実施例2~14」
各成分の配合組成が表1、2に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にしてタブレット組成物を製造し、各種評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0070】
「比較例1~6」
各成分の配合組成が表3に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にしてタブレット組成物を製造し、各種評価を行った。結果を表3に示す。
なお、打錠中にスティッキング又はキャッピングが発生した場合、「打錠障害」とした。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
表1~3において、各成分の配合量(質量%)はすべて、タブレット組成物の1製剤当たりの総質量に対する割合であり、指定のある場合を除き、純分換算での値を示す。なお、配合量の空欄は、その成分が配合されていないこと(配合量0質量%)を意味する。
また、表1~3中の「(A+B)量」は、1製剤当たりの総質量に対する(A)成分及び(B)成分の含有量の合計である。「(A+B+C)量」は、1製剤当たりの総質量に対する(A)成分、(B)成分及び(C)成分の含有量の合計である。「A/B比」は、(B)成分に対する(A)成分の質量比である。「C/(A+B)比」は、(A)成分及び(B)成分の含有量の合計に対する(C)成分の質量比である。
【0075】
表1、2から明らかなように、各実施例で得られたタブレット組成物は、高温で保存しても徐溶性に優れ、耐熱性が良好であり、洗濯中に割れにくかった。
一方、表3から明らかなように、(A)成分を含まない比較例1で得られたタブレット組成物は、高温保存時の徐溶性に劣っていた。
(A)成分の代替品としてケイ酸カルシウムを含む比較例2で得られたタブレット組成物は、高温保存時の徐溶性に劣っていた。
(B-1)成分を含まない比較例3で得られたタブレット組成物は、高温保存時の徐溶性に劣っていた。また、洗濯中に割れやすかった。
(B-2)成分を用いなかった比較例4、5の場合、打錠中にスティッキング又はキャッピングが発生したため、タブレット組成物を製造できなかった。
(B-2)成分の代替品として融点が100℃未満の滑沢剤を含む比較例6で得られたタブレット組成物は、高温保存時の徐溶性に劣っていた。また、洗濯中に割れやすかった。