(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025091723
(43)【公開日】2025-06-19
(54)【発明の名称】制振材、積層体及び制振材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 29/14 20060101AFI20250612BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20250612BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250612BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20250612BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20250612BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20250612BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20250612BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20250612BHJP
B32B 27/22 20060101ALI20250612BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20250612BHJP
【FI】
C08L29/14
C08J5/18 CEX
C08K3/013
C08K7/00
C08K5/103
C08K3/36
C08K3/01
B32B27/30 102
B32B27/22
B32B27/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207145
(22)【出願日】2023-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山本 勇樹
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA29
4F071AA39
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4J002FD208
4J002FD342
4J002GF00
4J002GL00
4J002GP00
(57)【要約】
【課題】制振性に極めて優れ、しかも成形性や施工性等も良好で、合わせガラス用中間膜のリサイクル品としても有用な制振材、及び、該制振材を備える積層体を提供する。また、このような制振材を得るために好適な製造方法を提供する。
【解決手段】制振材は、ポリビニルアセタールと、可塑剤と、タッキファイヤーと、板状無機フィラーを含む充填材と、を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタールと、
可塑剤と、
タッキファイヤーと、
板状無機フィラーを含む充填材と、を含有する
ことを特徴とする制振材。
【請求項2】
前記板状無機フィラーの含有量は、前記制振材の総量100質量%に対して10質量%以上80質量%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の制振材。
【請求項3】
前記充填材の含有量は、前記制振材の総量100質量%に対して48質量%以上80質量%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の制振材。
【請求項4】
前記板状無機フィラーは、層状ケイ酸塩である
ことを特徴とする請求項1に記載の制振材。
【請求項5】
前記板状無機フィラーは、マイカである
ことを特徴とする請求項1に記載の制振材。
【請求項6】
粒度が100メッシュ以下である板状無機フィラーを原料とする
ことを特徴とする請求項1に記載の制振材。
【請求項7】
前記ポリビニルアセタールは、ポリビニルブチラールを含み、
前記可塑剤は、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の制振材。
【請求項8】
JIS K7391(2008年)に準拠して測定される機械インピーダンス測定(MIM)の各共振周波数に対する損失係数が、20℃、100~3000Hzにおいて0.05以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の制振材。
【請求項9】
更に、アルデヒド類を捕捉するキャッチャー剤を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の制振材。
【請求項10】
前記キャッチャー剤は、非晶性シリカである
ことを特徴とする請求項9に記載の制振材。
【請求項11】
シート状である
ことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の制振材。
【請求項12】
厚みが0.5mm以上8mm以下である
ことを特徴とする請求項11に記載の制振材。
【請求項13】
請求項11に記載の制振材を製造する方法であって、
ポリビニルアセタールと、可塑剤と、タッキファイヤーとを含む樹脂組成物に、板状無機フィラーを含む充填材を添加する工程と、該工程により得られた混合物をシート化する工程と、を含む
ことを特徴とする制振材の製造方法。
【請求項14】
前記板状無機フィラーの粒度は、100メッシュ以下である
ことを特徴とする請求項13に記載の制振材の製造方法。
【請求項15】
請求項11に記載の制振材の少なくとも一方の主面に、
不織布、アルミニウム、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン及びガラスクロスシートからなる群より選択される少なくとも1種の積層材が積層されている
ことを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振材、積層体及び制振材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
制振材は、振動エネルギーを熱エネルギーに変換することで音等の発生を抑える材料であり、例えば、住宅等の建築物の床や壁、天井、車両の床等に使用されている。
【0003】
ところで近年では、自動車、航空機等の車両用ガラスや建築物の窓ガラス等として、一対のガラス板を、可塑化されたポリビニルブチラール等からなる合わせガラス用中間膜を挟んで互いに密着させて得られる合わせガラスが広く使用されている。このような合わせガラスの製造時には、合わせガラス用中間膜をガラスと貼り合わせた際に、端部に余った合わせガラス用中間膜が切断されて、大量の廃棄物となっている。また、品質基準に適合しなかった合わせガラスや使用済みの合わせガラスを解体した際にも、大量の合わせガラス用中間膜が廃棄されている。そこで、環境負荷やコストの低減等の観点から、合わせガラス用中間膜の廃棄物を再利用(リサイクル)する技術が求められている。
【0004】
例えば特許文献1には、回収した可塑化ポリビニルブチラール樹脂と、再生ゴムと、無機系充填剤とを含む熱可塑性エラストマー組成物を、防水構造や防音構造等に利用する技術が開示されており、実施例では、無機系充填剤として炭酸カルシウム及び硫酸バリウムの粉砕品(バライト粉)が使用されている。特許文献2には、廃棄物由来のポリビニルブチラールと架橋剤とを含有する再生樹脂組成物に、無機充填材が添加されて成形された再生材を、遮音材や防音材等に利用する技術が開示されており、実施例では、無機充填材として硫酸バリウム及びカーボンが高体積比率で使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-94515号公報
【特許文献2】特開2018-83939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の組成物や特許文献2に記載の再生材は、制振性が充分ではない上、充填材として使用される硫酸バリウムの比重が大きいこと等に起因して、施工性等の点でも課題を有していた。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、制振性に極めて優れ、しかも成形性や施工性等も良好で、合わせガラス用中間膜のリサイクル品としても有用な制振材、及び、該制振材を備える積層体を提供することを目的とする。本発明はまた、このような制振材を得るために好適な製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、合わせガラス用中間膜の廃棄物を再利用する技術について検討するうち、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタールと、可塑剤と、タッキファイヤーと、充填材とを含有する組成物が、制振材用途に好適であることに着目し、特に該組成物が充填材として板状無機フィラーを必須に含む場合には、制振性に極めて優れ、しかも成形性や施工性等も良好な材料となることを見出した。
【0009】
従来の制振材は通常、振動エネルギーを熱エネルギーに変換しやすくするために、アルミ板等の金属板からなる拘束材(拘束層とも称す)が積層されて使用される。だが本発明者らは、上述したポリビニルアセタールと、可塑剤と、タッキファイヤーと、板状無機フィラーを含む充填材と、を含有する制振材は、振動が加えられた際に、板状無機フィラーとポリビニルアセタール等の樹脂との界面におけるエネルギー損失が大きくなることに由来して、高い制振性を発現することができる上、板状無機フィラーが拘束材としての機能も発揮することができるため、該制振材は、たとえ拘束材が積層されなくても高い制振性を発現することができることを見出した。従って、上記制振材は、高い制振性を発揮しながらも、設置場所が限定されず、汎用性が高い上、低コストで製造可能なものである。本発明者らはまた、板状無機フィラーは、例えば硫酸バリウムに比較して比重が小さいため、上記制振材は、軽量化や施工性向上も実現できることも見出した。また、上記制振材は、タッキファイヤーを含むことで、例えば制振材の製造時に混合物が混錬機に付着したり貼り付いたりすることが抑えられ、よって取扱い性も良好である。
【0010】
このように本発明者らは、上記制振材が、ポリビニルアセタールと、可塑剤と、タッキファイヤーと、板状無機フィラーとを含むことによる相乗効果によって、制振性に極めて優れ、しかも成形性や施工性等も良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。上記制振材はまた、合わせガラス用中間膜のリサイクル品としても有効であり、環境負荷の軽減やコスト低減を実現することができるものである。
【0011】
本開示1は、ポリビニルアセタールと、可塑剤と、タッキファイヤーと、板状無機フィラーを含む充填材と、を含有する、制振材である。
本開示2は、上記板状無機フィラーの含有量が、上記制振材の総量100質量%に対して10質量%以上80質量%以下である、本開示1の制振材である。
本開示3は、上記充填材の含有量が、上記制振材の総量100質量%に対して48質量%以上80質量%以下である、本開示1又は2の制振材である。
本開示4は、上記板状無機フィラーが、層状ケイ酸塩である、本開示1~3のいずれかの制振材である。
本開示5は、上記板状無機フィラーが、マイカである、本開示1~4のいずれかの制振材である。
本開示6は、粒度が100メッシュ以下である板状無機フィラーを原料とする、本開示1~5のいずれかの制振材である。
本開示7は、上記ポリビニルアセタールが、ポリビニルブチラールを含み、上記可塑剤が、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含む、本開示1~6のいずれかの制振材である。
【0012】
本開示8は、JIS K7391(2008年)に準拠して測定される機械インピーダンス測定(MIM)の各共振周波数に対する損失係数が、20℃、100~3000Hzにおいて0.05以上である、本開示1~7のいずれかの制振材である。
本開示9は、更に、アルデヒド類を捕捉するキャッチャー剤を含む、本開示1~8のいずれかの制振材である。
本開示10は、上記キャッチャー剤が、非晶性シリカである、本開示9の制振材である。
本開示11は、シート状である、本開示1~10のいずれかの制振材である。
本開示12は、厚みが0.5mm以上8mm以下である、本開示11の制振材である。
本開示13は、本開示11又は12の制振材を製造する方法であって、ポリビニルアセタールと、可塑剤と、タッキファイヤーとを含む樹脂組成物に、板状無機フィラーを含む充填材を添加する工程と、該工程により得られた混合物をシート化する工程と、を含む、制振材の製造方法である。
本開示14は、上記板状無機フィラーの粒度が、100メッシュ以下である、本開示13の制振材の製造方法である。
本開示15は、本開示11又は12の制振材の少なくとも一方の主面に、不織布、アルミニウム、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン及びガラスクロスシートからなる群より選択される少なくとも1種の積層材が積層されている、積層体である。
以下に本発明を詳述する。
【0013】
(制振材)
本発明の制振材は、ポリビニルアセタールと、可塑剤と、タッキファイヤーと、充填材とを含む。充填材は、板状無機フィラーを必須に含む。なお、制振材は、必要に応じてその他の成分を更に含んでもよい。各含有成分はそれぞれ1種又は2種以上であってもよい。
【0014】
上記制振材の形状として、例えば、シート状、板状、棒状、ブロック状等が挙げられるが、シート状であることが好ましい。即ち上記制振材は、制振シートであることが好適である。なお、「シート」とは、厚みに基づく厳密な意味に限定されるものではなく、通常「フィルム」と称される薄手のものや、「プレート」と称される厚手のものも含むものとする。制振シートの厚みは特に限定されないが、制振効果や施工する際の取り扱い性等を考慮すると、例えば、0.05mm以上50mm以下であることが好ましく、0.5mm以上8mm以下であることがより好ましい。上記厚みは、制振シートの最大厚みである。
【0015】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタールであることが好ましい。
【0016】
上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。けん化度は、一般に70~99.8モル%であり、80~99.8モル%であることが好ましい。
【0017】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは1700以上、特に好ましくは2000以上であり、また、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、より一層好ましくは3000以下、更に好ましくは3000未満、特に好ましくは2800以下である。上記ポリビニルアセタールは、このような重合度のポリビニルアルコールをアセタール化して得られるものであることが好ましい。
なお、ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726(1994)「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0018】
上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。炭素数が1~10のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。中でも、n-ブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドが好ましく、n-ブチルアルデヒドがより好ましい。
【0019】
上記ポリビニルアセタールの中でも、耐候性向上等の観点から、ポリビニルブチラールが好適である。即ち上記ポリビニルアセタールが、ポリビニルブチラールを含むことが好ましい。ポリビニルアセタール100質量%中、ポリビニルブチラールが50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0020】
上記可塑剤として、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、有機リン酸可塑剤、有機亜リン酸可塑剤等のリン酸可塑剤等が挙げられる。可塑剤はまた、液状可塑剤であることが好ましい。
【0021】
上記一塩基性有機酸エステルとして、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n-ノニル酸)、デシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。中でも、トリエチレングリコールジカプロン酸エステル、トリエチレングリコールジ-2-エチル酪酸エステル、トリエチレングリコールジ-n-オクチル酸エステル、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキシル酸エステル等が好適である。
【0022】
上記多塩基性有機酸エステルとして、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4~8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物が挙げられる。中でも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適である。
【0023】
上記有機エステル可塑剤として、例えば、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、リン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物、アジピン酸エステル、炭素数4~9のアルキルアルコール及び炭素数4~9の環状アルコールから作製された混合型アジピン酸エステル、アジピン酸ヘキシル等の炭素数6~8のアジピン酸エステル等が挙げられる。
【0024】
上記有機リン酸可塑剤として、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0025】
上記可塑剤としては、加水分解を起こしにくい観点から、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GOとも称す)、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)、テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(4GOとも称す)、及び/又は、ジヘキシルアジペート(DHAとも称す)を用いることが好ましい。上記可塑剤として、より好ましくは4GO及び/又は3GOであり、更に好ましくは3GOである。可塑剤100質量%中、3GOが50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0026】
上記制振材においては、上記ポリビニルアセタールがポリビニルブチラールを含み、上記可塑剤がトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)を含むことが特に好適である。
【0027】
上記可塑剤の含有量は、例えば、ポリビニルアセタール100重量部(上記制振材が他の樹脂を更に含む場合は、樹脂成分の合計量100重量部を意味する。)に対して、10重量部以上80重量部以下であることが好ましい。可塑剤の含有量がこの範囲内であると、衝撃吸収性等の各種性能を高めることができる上、制振材からの可塑剤のブリードアウトも充分に抑制できる。上記可塑剤の含有量は、20重量部以上がより好ましく、30重量部以上が更に好ましく、また上限は、60重量部以下がより好ましく、50重量部以下が更に好ましい。可塑剤の含有量の好ましい範囲は、10重量部以上80重量部以下であり、より好ましい範囲は20重量部以上60重量部以下であり、更に好ましい範囲は30重量部以上50重量部以下である。
【0028】
上記タッキファイヤーとしては、例えば、脂肪族共重合体(脂肪族系石油樹脂とも称す)、芳香族共重合体(芳香族系石油樹脂とも称す)、脂肪族芳香族共重合体(脂肪族-芳香族共重合体系石油樹脂とも称す)、脂環式共重合体(脂環式系石油樹脂とも称す)等の石油系樹脂、クマロン-インデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、及び、これらの水素添加物等が挙げられる。中でも、制振性向上の観点から、上記タッキファイヤーが石油樹脂であることが好ましく、石油樹脂の水素化物(水素化石油樹脂とも称す)であることがより好ましい。上記制振材が水素化石油樹脂を含む場合には、制振性が更に向上するとともに、臭気も抑制され、しかも、制振材の製造時に混合物が混錬機に付着したり貼り付いたりすることがより抑えられる。
【0029】
石油樹脂とは、石油ナフサ等の熱分解により副産物として生成する不飽和炭化水素を含む留分を重合させて樹脂化したものである。上記石油樹脂として具体的には、例えば、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン類、イソプレン、ピペリン等を含むC5留分を共重合して得られる脂肪族系石油樹脂、C9留分を主成分として重合した芳香族系石油樹脂、及び、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等が挙げられる。中でも、上記タッキファイヤーは、上述の通り水素化石油樹脂であることが好ましく、生産性や制振性向上の観点から、C9系石油樹脂に水素添加した芳香族水素添加石油樹脂(即ち、C9系石油樹脂の水素化物)であることが特に好ましい。
【0030】
上記石油樹脂はまた、軟化点が100℃以上であることが好ましい。これにより、制振性が更に向上し、0~40℃、中でも5~25℃の温度領域でより高い制振・遮音効果を発揮できる。軟化点は、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上である。軟化点が高い方が、樹脂の塑性変形を抑制することができるため、より高い制振性を発現することができる。軟化点の上限は特に限定されないが、例えば200℃以下であることが好ましく、これにより、制振材の損失係数の低下が抑制され、かつ制振材が脆くなりすぎることが充分に抑制される。上記軟化点は、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは150℃以下、特に好ましくは145℃以下である。特に、上記制振材が軟化点100℃以上の水素化石油樹脂を含む場合には、制振性や生産性により優れ、臭気抑制の観点でも非常に好適な制振材となり得る。
【0031】
上記タッキファイヤーとして、軟化点が異なる石油樹脂を併用することも好適である。例えば、上記制振材が、軟化点が130℃以上の石油樹脂(A)と、軟化点が130℃未満の石油樹脂(B)とを含む場合、制振性向上の観点から、これらの合計量100質量%に占める石油樹脂(A)が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、70質量%以上であることがより更に好ましく、80質量%以上であることが特に好ましく、90質量%以上であることが一層好ましく、100質量%であることが最も好ましい。特に上記制振材は、軟化点が130℃以上の水素化石油樹脂を含むことが好ましい。
【0032】
上記タッキファイヤーの含有量は、例えば、ポリビニルアセタール100重量部(上記制振材が他の樹脂を更に含む場合は、樹脂成分の合計量100重量部を意味する。)に対し、1重量部以上50重量部以下であることが好ましい。タッキファイヤーの含有量がこの範囲内であると、制振材の製造時に混合物が混錬機に付着したり貼り付いたりすることがより抑えられ、作業性や施工性がより良好になる上、シート成形がより容易になる。上記タッキファイヤーの含有量は、2重量部以上がより好ましく、5重量部以上が更に好ましく、10重量部以上が特に好ましく、また上限は、40重量部以下がより好ましく、30重量部以下が更に好ましい。タッキファイヤーの含有量の好ましい範囲は、1重量部以上50重量部以下であり、より好ましい範囲は2重量部以上40重量部以下であり、更に好ましい範囲は5重量部以上30重量部以下であり、特に好ましい範囲は10重量部以上30重量部以下である。
【0033】
上記充填材は、板状無機フィラーを必須に含む。板状無機フィラーとは、板状形状を有する無機充填材である。板状の中でも、鱗片状(即ち、薄い板状であって、最大寸法に対して厚みが極端に小さい形状を意味する。)であることが好ましい。板状無機フィラーとしては、例えば、マイカ、タルク、グラファイト、セリサイト、カオリン等の層状無機フィラーが好ましく、層状ケイ酸塩がより好ましく、マイカが更に好ましい。なお、上記充填材として、上記充填材のマスターバッチ品を用いてもよい。
【0034】
上記板状無機フィラーは、上記制振材を製造する際の原料としての板状無機フィラーの粒度が100メッシュ以下であることが好ましく、60メッシュ以下であることがより好ましい。即ち上記制振材は、粒度が100メッシュ以下である板状無機フィラーを原料とするものであることが好適であり、粒度が60メッシュ以下である板状無機フィラーを原料とするものであることがより好適である。上記粒度(原料としての粒度)は、40メッシュ以下であることが更に好ましく、20メッシュ以下であることが特に好ましい。このように粒度が粗い板状無機フィラーを原料として用いて制振材を製造すると、得られた制振材中の板状無機フィラーによる拘束材としての機能がより発揮されるため、該制振材の制振性がより高まる。上記粒度の下限は特に限定されず、1メッシュ以上であることが好ましい。
なお、上記粒度(メッシュ)は、JIS Z8801-1(2009年)に準拠して測定される値である。例えば100メッシュの目開き寸法は、150μmである。
【0035】
上記板状無機フィラーの含有量は、上記制振材の総量100質量%に対して10質量%以上であることが好ましい。これにより、板状無機フィラーが拘束材としての機能をより充分に発揮することができる。この効果をより発揮させる観点から、上記制振材の総量100質量%に対する板状無機フィラーの含有量は、15質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、60質量%以上、65質量%以上の順により好ましく、70質量%以上が最も好ましい。
【0036】
上記板状無機フィラーの含有量はまた、上記制振材の総量100質量%に対して80質量%以下であることが好ましい。これにより、シート成形がより容易になる。即ちシート状の制振材(制振シートとも称す)がより容易に得られる。上記制振材の総量100質量%に対する板状無機フィラーの含有量の範囲は、10質量%以上80質量%以下、15質量%以上80質量%以下、25質量%以上80質量%以下、30質量%以上80質量%以下、40質量%以上80質量%以下、45質量%以上80質量%以下、60質量%以上80質量%以下、65質量%以上80質量%以下の順により好ましく、70質量%以上80質量%以下が最も好ましい。
【0037】
また上記板状無機フィラーの体積含有率は、上記制振材の総体積を100体積%とすると、70体積%未満であることが好ましく、60体積%以下であることがより好ましい。上記充填材の体積含有率はまた、上記制振材の総体積100体積%に対して、10質量%以上であることが好ましく、25体積%以上であることがより好ましく、30体積%以上であることが更に好ましい。
【0038】
上記充填材は、板状無機フィラー以外の充填材(他の充填材とも称す)を1種又は2種以上更に含んでもよい。他の充填材としては特に限定されず、例えば、球状等の板状以外の形状を有する無機充填材や、有機充填材等が挙げられる。他の充填材としては、例えば、シリカ、ガラスビーズ、黒鉛、アルミナ、酸化チタン、ワラストナイト、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ガラスファイバー、セルロースファイバー、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノコイル等の1種又は2種以上が好ましく用いられる。
【0039】
上記充填材の含有量は、上記制振材の総量100質量%に対して48質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることが更に好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。上記充填材の含有量はまた、シート成形性の観点から、上記制振材の総量100質量%に対して80質量%以下であることが好ましい。充填材の含有量の好ましい範囲は、48質量%以上80質量%以下であり、より好ましい範囲は60質量%以上80質量%以下であり、更に好ましい範囲は65質量%以上80質量%以下であり、特に好ましい範囲は70質量%以上80質量%以下である。なお、充填材の含有量とは、充填材として板状無機フィラーのみを含む場合は板状無機フィラーのみの含有量を意味し、充填材として板状無機フィラーと他の充填材とを含む場合はこれらの合計含有量を意味する。
【0040】
また上記充填材の体積含有率は、上記制振材の総体積を100体積%とすると、70体積%未満であることが好ましく、60体積%以下であることがより好ましい。上記充填材の体積含有率はまた、上記制振材の総体積100体積%に対して、10質量%以上であることが好ましく、20体積%以上であることがより好ましい。
【0041】
上記制振材において、板状無機フィラーと他の充填材との含有量比は、例えば制振材がシート状(即ち制振シート)である場合の比重や厚み等にもよるが、例えば、質量比(板状無機フィラー/他の充填材)で30~100/0~70が好ましく、50~100/0~50がより好ましく、70~100/0~30が更に好ましく、90~100/0~10が特に好ましい。上記制振材が充填材として板状無機フィラーのみを含む形態も、好ましい。
【0042】
本発明の制振材100質量%中、ポリビニルアセタール、可塑剤、タッキファイヤー及び充填材の占める割合は、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、60質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上100質量%以下であることが更に好ましく、80質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。
【0043】
本発明の制振材は、ポリビニルアセタール、可塑剤、タッキファイヤー及び充填材の他に、例えば、アルデヒド類を捕捉するキャッチャー剤、離型剤、接着力調整剤、熱線吸収剤、紫外線遮蔽剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、熱可塑性エラストマー、液晶ポリマー等の各種添加剤の1種又は2種以上を含有してもよい。また、制振材(例えば制振シート)の外観を調整するために、着色剤として、カーボンブラック等の顔料又は染料等を1種又は2種以上含有してもよい。
【0044】
例えば上記制振材は、アルデヒド類を捕捉するキャッチャー剤を更に含むことが好ましい。上記制振材は、ポリビニルアセタールのアセチル基中等にアルデヒド基を有し得るため、アルデヒド類に特有の臭気を有することがあるが、上記制振材が、アルデヒド類を捕捉するキャッチャー剤を更に有する場合には、臭気の発生が充分に抑制される。
【0045】
上記キャッチャー剤として、例えば、ゼオライト、活性アルミナ、活性白土、セピオライト、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、シリカ等の多孔質粒子;アミノ基、イミノ基、アミド基、ヒドラジド基等のアルデヒド分子に吸着し得る基を有するアルデヒド吸着化合物;等が挙げられる。中でも、上記キャッチャー剤は、多孔質粒子であることが好ましく、シリカであることがより好ましく、非晶性シリカであることが更に好ましい。なお、多孔質粒子は、上記アルデヒド分子に吸着し得る基を有してもよい。
【0046】
上記制振材がキャッチャー剤を含む場合、キャッチャー剤の含有量は、ポリビニルアセタール100重量部に対し、0.01~5重量部であることが好ましく、0.1~3重量部であることがより好ましい。
【0047】
なお、キャッチャー剤が練り込まれた不織布を、上記制振材に積層してもよい。例えば、シート状の制振材(即ち制振シート)の少なくとも一方の主面に、キャッチャー剤が練り込まれた不織布が積層された積層体は、後述する本開示の積層体に包含される。
【0048】
本発明の制振材は、JIS K7391(2008年)に準拠して測定される機械インピーダンス測定(MIM)の各共振周波数に対する損失係数が、20℃、100~3000Hzにおいて0.05以上であることが好ましく、0.07以上であることがより好ましく、0.1以上であることが更に好ましく、0.13以上であることが特に好ましい。また、損失係数がこれら好ましい範囲を満たす共振周波数は、例えば、2次共振周波数であることが好ましく、2次及び3次共振周波数であることがより好ましく、2次、3次及び4次共振周波数であることが更に好ましく、2次、3次、4次及び5次共振周波数であることが特に好ましい。なお、損失係数は高ければ高いほど好ましいため、上記損失係数の上限は特に限定されない。
【0049】
具体的には、例えば上記制振材は、後述する制振性評価試験により損失係数及び共振周波数を測定したときに、20℃、300Hz以上800Hz以下において、損失係数が0.05以上であることが好ましく、0.07以上であることがより好ましく、0.1以上であることが更に好ましく、0.13以上であることが特に好ましい。
【0050】
本発明の制振材は、合わせガラス用中間膜の廃棄物を原料とするものであってもよい。上記制振材は、合わせガラス用中間膜のリサイクルの確立に極めて有用であり、環境負荷の軽減やコスト低減に充分に寄与することができる。
【0051】
合わせガラス用中間膜の廃棄物を上記制振材の原料として用いる場合、当該廃棄物が既にポリビニルアセタール、可塑剤、タッキファイヤー及び板状無機フィラーを含む場合は、当該廃棄物又は必要に応じて各種添加剤等を更に配合したものを、上記制振材として用いることができる。上記制振材が、ポリビニルアセタール、可塑剤、タッキファイヤー及び板状無機フィラーのうちいずれか1以上を含まない場合や、含有成分の含有量が上述した好ましい範囲に満たない場合には、その成分を当該廃棄物に配合したもの又は必要に応じて各種添加剤等を更に配合したものを、上記制振材として用いることができる。
【0052】
(制振材の製造方法)
本発明の制振材を製造する方法としては、ポリビニルアセタールと、可塑剤と、タッキファイヤーとを含む樹脂組成物に、板状無機フィラーを必須とする充填材を添加する工程を含む方法が好ましい。特に上記制振材がシート状である場合、該制振材(制振シート)の製造方法は、ポリビニルアセタールと、可塑剤と、タッキファイヤーとを含む樹脂組成物に、板状無機フィラーを含む充填材を添加する工程(工程(1)とも称す)と、該工程(1)により得られた混合物をシート化する工程(工程(2)とも称す)と、を含むことが好ましい。なお、上記製造方法により得られる制振材は、本発明の好ましい形態の一つである。
【0053】
上記工程(1)において、上記樹脂組成物は、ポリビニルアセタールと、可塑剤と、タッキファイヤーとを含有する。必要に応じて、上記樹脂組成物は、上述した各種添加剤や着色剤を更に含んでもよい。上記工程(1)では、上記樹脂組成物に板状無機フィラー等の充填材を添加した後、混合することが好ましい。上記工程(1)は、例えば、混錬機等を用いて、加熱環境下で行われる。各含有成分はそれぞれ1種又は2種以上用いることができる。なお、計量、投入又は混錬時に充填材が飛散しないように、充填材(板状無機フィラーを含む)として、該充填材のマスターバッチ品を用いてもよい。
【0054】
上記工程(1)で用いられる各原料の配合量は、得られた制振材における含有割合が上述した好ましい範囲になるように、それぞれ設定することが好適である。
【0055】
原料として用いられる板状無機フィラーの粒度は、上述したように100メッシュ以下が好ましく、60メッシュ以下がより好ましく、40メッシュ以下が更に好ましく、20メッシュ以下であることが特に好ましい。上記粒度の下限は特に限定されず、1メッシュ以上であることが好ましい。
【0056】
上記工程(2)は、上記工程(1)で得られた混合物を、シート状の原反に賦形する工程であることが好ましい。例えば、上記混合物を押出機によって押し出すことで、制振シートを作製することが好適である。その後、得られた制振シートの少なくとも一方の主面に、不織布等の積層材を積層する工程を行うことが好ましく、これにより、後述する本発明の積層体が好適に得られる。
【0057】
(積層体)
本発明の積層体は、シート状の上記制振材(即ち制振シート)の少なくとも一方の主面に、不織布、アルミニウム、ポリエチレンテレフタレート(PETとも称す)、高密度ポリエチレン(HDPEとも称す)及びガラスクロスシートからなる群より選択される少なくとも1種の積層材が積層されている。なお、上記アルミニウム、PET、HDPE及びガラスクロスシートは、シート状(フィルム状も含む)であることが好ましい。
【0058】
上記積層材のうち、不織布は、微小な空隙を有するものであれば特に限定されない。不織布の材料(材質)は特に限定されないが、例えば、セルロース、絹、麻、パルプ等の天然繊維;ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート等の合成繊維;これらの混紡;等が挙げられる。不織布合成繊維の中でも、熱可塑性樹脂から得られる合成繊維が好ましく、パルプ及び/又はポリエステルがより好ましい。不織布には、必要に応じてバインダーを用いてもよく、また必要に応じて着色してもよい。なお上述したように、不織布は、キャッチャー剤が練り込まれた不織布であってもよい。
【0059】
上記アルミニウムとして、例えば、一般に拘束材として使用されるアルミ板が好適に使用される。上述したように本発明の制振材は、拘束材が積層されなくても高い制振性を発現し得るが、本発明の制振材にアルミニウム等の拘束材を更に積層することで、制振性により一層優れる積層体が得られる。
【0060】
上記制振シートの主面に積層する積層材の厚みは、例えば、該積層材の各層の最大厚みが0.02mm以上1mm以下であることが好ましい。最大厚みがこの範囲内であると、上記積層体の取り扱い性がより向上する。上記最大厚みのより好ましい範囲は、用いられる積層材の種類等によっても異なるが、例えば上記積層材としてアルミニウムを用いる場合、アルミニウムから構成される層の最大厚みが0.03mm以上0.5mm以下であることがより好ましく、0.05mm以上0.3mm以下であることが更に好ましい。また上記積層材としてPET(PETからなる不織布を除く)を用いる場合、PETから構成される層の最大厚みが0.02mm以上0.5mm以下であることがより好ましく、0.02mm以上0.1mm以下であることが更に好ましく、0.02mm以上0.05mm以下であることが特に好ましい。また上記積層材として不織布を用いる場合、不織布から構成される層の最大厚みが0.02mm以上0.5mm以下であることがより好ましく、0.03mm以上0.1mm以下であることが更に好ましく、0.04mm以上0.05mm以下であることが特に好ましい。
【0061】
上記積層材は、制振シートの少なくとも一方の主面に積層すればよいが、制振シートの両面の主面に積層することが好適である。「主面に積層する」とは、積層する面の総面積を100%とすると、その50%以上を覆うように積層することを意味する。総面積100%のうち70%以上を覆うように積層することが好ましく、80%以上を覆うように積層することがより好ましく、90%以上を覆うように積層することが更に好ましい。上限は100%以下であればよい。
【0062】
上記積層材は、適当な大きさに切断して(即ちスライスして)積層してもよい。その場合にも、積層面の総面積100%に対して上述した割合を覆うように、上記積層材を積層することが好適である。
【発明の効果】
【0063】
本発明によれば、制振性に極めて優れ、しかも成形性や施工性等も良好で、合わせガラス用中間膜のリサイクル品としても有用な制振材、及び、該制振材を備える積層体を提供することができる。本発明はまた、このような制振材を得るために好適な製造方法を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1A】試験例で用いたマイカ60のSEM写真である(拡大倍率:100倍)。
【
図1B】試験例で用いたマイカ40のSEM写真である(拡大倍率:100倍)。
【
図1C】試験例で用いたマイカ20のSEM写真である(拡大倍率:100倍)。
【
図2A】試験例で用いた硫酸バリウムのSEM写真である(拡大倍率:100倍)。
【
図2B】試験例で用いた硫酸バリウムのSEM写真である(拡大倍率:500倍)。
【
図3A】試験例で用いた炭酸カルシウムのSEM写真である(拡大倍率:100倍)。
【
図3B】試験例で用いた炭酸カルシウムのSEM写真である(拡大倍率:500倍)。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。なお、wt%は、重量%を意味し、vоl%は、体積%を意味し、部は、重量部を意味する。
【0066】
以下の例では、原料成分として以下の化合物等を使用した。
(1)ポリビニルブチラール:水酸基の含有率31モル%、アセチル化度0.7モル%、ブチラール化度68.3モル%、平均重合度1800、積水化学工業社製
(2)可塑剤:トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)、積水化学工業社製
(3)タッキファイヤー:アルコンM-135、荒川化学工業社製(軟化点135℃)
(4)離型剤:粉末ステアリン酸 さくら、日油社製
(5)着色剤:カーボンブラック、東海カーボン社製、シーストSP
(6)充填材
・硫酸バリウム:A-200、竹原化学工業社製(
図2A及び
図2B参照)
・炭酸カルシウム:R重炭、丸尾カルシウム社製(
図3A及び
図3B参照)
・マイカ60:中国産白雲母(乾式粉砕品)、60メッシュ、鱗片状、巴工業社製(
図1A参照)
・マイカ40:中国産白雲母(乾式粉砕品)、40メッシュ、鱗片状、巴工業社製(
図1B参照)
・マイカ20:中国産白雲母(乾式粉砕品)、20メッシュ、鱗片状、巴工業社製(
図1C参照)
【0067】
図1A、
図1B及び
図1Cは、それぞれマイカ60、マイカ40及びマイカ20の走査型電子顕微鏡写真(SEM写真とも称す)である。いずれの図も、拡大倍率は100倍である。
図1A、
図1B及び
図1Cから分かるように、マイカ60、マイカ40及びマイカ20の形状はいずれも、板状(より正確には鱗片状)であった。
図2A及び
図2Bは、硫酸バリウムのSEM写真であり、
図3A及び
図3Bは、炭酸カルシウムのSEM写真である。
図2A及び
図3Aでは、拡大倍率は100倍であり、
図2B及び
図3Bでは、拡大倍率は500倍である。
図2A、
図2B、
図3A及び
図3Bから分かるように、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムの形状は、球又は立方体のような形状であり、明らかに板状ではない。なお、SEM写真はいずれも、日立ハイテク社製の卓上顕微鏡Miniscope(登録商標)TM4000PlusIIを用いて撮影したものである。
【0068】
(比較例1)
ポリビニルブチラール100部に対して可塑剤(3GO)を40部加えて、中間体を作製した。この中間体100部に対し、表1に示す各成分を表1に示す配合量で加えて樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を120℃にてミキシングロールで充分に混練した後、押出機により押し出して、シート状体を得た。このシート状体を制振シートと称す。
【0069】
(比較例2、3及び試験例1~20)
ポリビニルブチラール100部に対して可塑剤(3GO)を40部加えて、中間体を作製した。この中間体100部に対し、表1~3に示す各成分(但し充填材を除く)を当該表に示す配合量で加えて樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物に、表1~3に示す充填材を当該表に示す配合量で加え、120℃にてミキシングロールで充分に混練した後、押出機により押し出して、シート状体(制振シート)を得た。
【0070】
(評価試験)
各試験例において以下の評価等を行った。結果を表1~3に示す。
【0071】
(1)混錬機への付着及び貼り付き
制振シート製造時における、混錬機(即ちミキシングロール)への原料の付着又は貼り付きを目視で観察し、下記3段階の基準で評価した。
1:混錬機への付着又は貼り付きが大きい。
2:混錬機への付着又は貼り付きが、中程度である。
3:混錬機への付着又は貼り付きが少ない。
【0072】
(2)シート成形性(シート成形可否)
得られた制振シートを折り曲げたときの状態を目視で観察することで、シート成形性を下記3段階の基準で評価した。
1:制振シートを曲げると、該シートが割れる。
2:制振シートを繰り返し曲げると、該シートに亀裂が入る。
3:制振シートを繰り返し曲げても、該シートに亀裂が入らない。
【0073】
(3)シート比重
得られた制振シートから、幅30mm×長さ30mmのサンプルを切り出した。このサンプルを用いて、水中置換法でシート比重を測定した。
【0074】
(4)シート厚み
得られた制振シートについて、厚みを測定した。表1~3には、最大厚みを記載した。
【0075】
(5)制振性
得られた制振シートから、幅30mm×長さ300mmのサンプルを切り出した。厚み0.8mm±0.06mm、幅30mm、長さ300mmのSPCC鋼板上に、両面テープを介して、制振シートから切り出した上記サンプルを貼着した。両面テープとして、積水化学工業社製の「内装部材固定用両面テープ5782」を使用した。得られた積層サンプルを用いて、JIS K7391(2008年)の中央加振法に従って、20℃にて、損失係数及び共振周波数を求めた。
【0076】
【0077】
【0078】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、制振性に極めて優れ、しかも成形性や施工性等も良好で、合わせガラス用中間膜のリサイクル品としても有用な制振材、及び、該制振材を備える積層体を提供することができる。本発明によればまた、このような制振材を得るために好適な製造方法を提供することもできる。