IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -混合ガス供給装置 図1
  • -混合ガス供給装置 図2
  • -混合ガス供給装置 図3
  • -混合ガス供給装置 図4
  • -混合ガス供給装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025091830
(43)【公開日】2025-06-19
(54)【発明の名称】混合ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/10 20060101AFI20250612BHJP
   A61G 10/02 20060101ALI20250612BHJP
   C25B 1/02 20060101ALI20250612BHJP
【FI】
A61M16/10 B
A61G10/02 C
C25B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207319
(22)【出願日】2023-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】523112219
【氏名又は名称】江原 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(72)【発明者】
【氏名】江原 司郎
【テーマコード(参考)】
4C341
4K021
【Fターム(参考)】
4C341JJ01
4C341KK10
4C341KL04
4C341KL05
4C341KL06
4C341KL08
4K021AA01
4K021DB31
4K021DC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来の装置よりコストをさらに削減できる、混合ガス供給装置を提供する。
【解決手段】混合ガス供給装置1は、酸素ガスを発生させる酸素供給機2と、水素ガスを発生させる水素供給機3と、酸素供給機2と水素供給機3とに接続され、酸素ガスと水素ガスを含む混合ガスを圧縮する第1のコンプレッサ5と、第1のコンプレッサ5に接続され、混合ガスの出力流量を調整する流量調整器6と、流量調整器6に接続され、混合ガスを使用者に供給する出力部8と、出力部8に接続され、出力部8から排出された気体ガスを回収する回収ボックス11と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素ガスを発生させる酸素供給機と、
水素ガスを発生させる水素供給機と、
前記酸素供給機と前記水素供給機とに接続され、前記酸素ガスと前記水素ガスを含む混合ガスを圧縮する第1のコンプレッサと、
前記第1のコンプレッサに接続され、前記混合ガスの出力流量を調整する流量調整器と、
前記流量調整器に接続され、前記混合ガスを使用者に供給する出力部と、
前記出力部に接続され、前記出力部から排出された気体ガスを回収する回収ボックスと、
を備え、
前記回収ボックスにて回収した気体ガスを前記第1のコンプレッサに供給する混合ガス供給装置。
【請求項2】
二酸化炭素ガスを発生させる二酸化炭素供給機をさらに備え、
前記第1のコンプレッサは、さらに、前記二酸化炭素供給機に接続され、前記二酸化炭素ガスをさらに含む混合ガスを圧縮する、
請求項1に記載の混合ガス供給装置。
【請求項3】
前記回収ボックスは、前記気体ガスを構成する酸素及び水素のそれぞれの濃度を測定する測定装置を備え、
前記酸素供給機及び前記水素供給機は回収した前記気体ガスに含まれる酸素及び水素のそれぞれの濃度に基づいて酸素及び水素を供給する、請求項1に記載の混合ガス供給装置。
【請求項4】
前記回収ボックスは、前記気体ガスを構成する酸素、水素、二酸化炭素のそれぞれの濃度を測定する測定装置を備え、
前記酸素供給機、前記水素供給機、前記二酸化炭素供給機は、回収した前記気体ガスに含まれる酸素、水素、二酸化炭素のそれぞれの濃度に基づいて酸素、水素、二酸化炭素を供給する、請求項2に記載の混合ガス供給装置。
【請求項5】
密封構造であり、使用者がその内部に入ることができる大きさである加圧ルームと、
前記加圧ルームに接続された第2のコンプレッサと、
をさらに備え、
前記第2のコンプレッサは、空気を前記加圧ルーム内に送り込むことで前記加圧ルームの内部を加圧し、
前記加圧ルームの内部には、前記出力部が備えられており、前記使用者は加圧された前記加圧ルーム内で前記出力部から供給された前記混合ガスを吸入できる、
請求項1に記載の混合ガス供給装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記流量調整器より前記混合ガスが供給される入口部と、前記使用者に前記混合ガスを吸入させるための供給部と、前記使用者が吐き出した気体が排出される出口部と、を備える、請求項1に記載の混合ガス供給装置。
【請求項7】
前記第2のコンプレッサでかける圧力は、1気圧以上2気圧未満である、請求項5に記載の混合ガス供給装置。
【請求項8】
前記第2のコンプレッサでかける圧力は、2気圧以上である、請求項5に記載の混合ガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合ガスを供給し使用者に吸入させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者に疲労回復やリラックス効果をもたらす目的で、酸素カプセルや酸素ボックス等の装置が使用されている。通常これらの装置は、密封された装置内に使用者が入り、装置内に酸素濃度を高めた空気を送り込み、使用者に効率的に酸素を吸収させるというものである。特許文献1には、高圧下で酸素を含有した空気をヒトに供給する高気圧酸素カプセルが記載されている。
【0003】
近年、水素のもつ還元効果によって健康増進効果や美容効果が高まることが注目されている。これに基づき、水素水やサプリメントの販売、また、水素カプセルや水素ボックス等の装置の利用が普及している。特許文献2には、水素浴を行う水素浴ユニットに関して記載されており、利用者が容器内に入り水素浴を行うことが記載されている。
【0004】
また、酸素と水素を同時に吸入できる装置も流通している。酸素を吸入することは様々なメリットがある反面、健康に有害とされる活性酸素(ヒドロキシラジカル)が体内において増加するというデメリットがある。水素は上記の効果の他にも、ヒドロキシラジカルを除去することも知られており、酸素と水素を同時に吸入することで酸素吸入による上記デメリットを軽減する効果が得られると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-020097号公報
【特許文献2】特開2017-158987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、使用者に酸素や水素を吸入させることで疲労回復やリラックス効果をもたらす種々の装置が知られている。一般に、従来の装置よりコストが抑えられる装置は需要が高く、本装置についても同様に、さらにコストが抑えられる装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の混合ガス供給装置は、酸素ガスを発生させる酸素供給機と、水素ガスを発生させる水素供給機と、前記酸素供給機と前記水素供給機とに接続され、前記酸素ガスと前記水素ガスの混合ガスを圧縮する第1のコンプレッサと、前記第1のコンプレッサに接続され、前記混合ガスの出力流量を調整する流量調整器と、前記流量調整器に接続され、前記混合ガスを使用者に供給する出力部と、前記出力部に接続され、前記出力部から排出された気体ガスを回収する回収ボックスとを備え、前記回収ボックスにて回収した気体ガスを前記第1のコンプレッサに供給する。
【0008】
この構成により、出力部から回収された回収ボックス内の気体ガスを第1のコンプレッサに供給することで、気体ガス中の酸素ガスと水素ガスとを再利用することができる。これにより、必要な気体ガスのすべてを生成するのに比べて、コストを削減することができる。
【0009】
本発明の混合ガス供給装置は、二酸化炭素ガスを発生させる二酸化炭素供給機をさらに備え、前記第1のコンプレッサは、さらに、前記二酸化炭素供給機に接続され、前記酸素ガスと前記水素ガスと前記二酸化炭素ガスとを含む混合ガスを圧縮する。
【0010】
この構成により、使用者は、酸素ガスと水素ガスだけでなく二酸化炭素ガスも同時に吸入することができる。二酸化炭素ガスは血管拡張効果を有しており、また、二酸化炭素濃度が高くなることで酸素を末梢神経に運搬する効果を高めるという効果を有している。これにより、使用者の体に酸素ガスが取り込まれやすくなり、酸素ガスの有する効果をより発揮することができる。
【0011】
本発明の混合ガス供給装置の前記回収ボックスは、前記気体ガスを構成する酸素及び水素の濃度を測定する測定装置を含み、前記酸素供給機及び前記水素供給機は回収した前記気体ガスに含まれる酸素及び水素の濃度に基づいて酸素及び水素を供給してもよい。この構成により、測定結果に基づいて適切な量の気体ガスを各供給機から補充することができる。
【0012】
本発明の混合ガス供給装置の前記回収ボックスは、前記気体ガスを構成する酸素、水素、二酸化炭素のそれぞれの濃度を測定する測定装置を備え、前記酸素供給機、前記水素供給機、前記二酸化炭素供給機は、回収した前記気体ガスに含まれる酸素、水素、二酸化炭素のそれぞれの濃度に基づいて酸素、水素、二酸化炭素を供給してもよい。この構成により、測定結果に基づいて適切な量の気体ガスを各供給機から補充することができる。
【0013】
本発明の混合ガス供給装置は、密封構造であり、使用者がその内部に入ることができる大きさである加圧ルームと、前記加圧ルームに接続された第2のコンプレッサと、をさらに備え、前記第2のコンプレッサは、空気を前記加圧ルーム内に送り込むことで前記加圧ルームの内部を加圧し、前記加圧ルームの内部には、前記出力部が備えられており、前記使用者は加圧された前記加圧ルーム内で前記出力部から供給された混合ガスを吸入できるようにしてもよい。
【0014】
この構成により、使用者は、加圧環境下となった加圧ルームの内部で混合ガスを吸入することができる。加圧環境下で混合ガスを吸入することで各気体ガスの分圧が高くなり、血中に溶け込む気体ガスの割合が大きくなる。したがって、常圧下で混合ガスを吸入するよりも、混合ガスによる効果を得ることができる。
【0015】
本発明の混合ガス供給装置の前記出力部は、前記流量調整器より前記混合ガスが供給される入口部と、前記使用者に前記混合ガスを吸入させるための供給部と、前記使用者が吐き出した気体が排出される出口部と、を備える構成であってもよい。この構成により、使用者が吸入する混合ガスを効果的に吸入させることができる。
【0016】
本発明の混合ガス供給装置において、前記第2のコンプレッサでかける圧力は、1気圧以上2気圧未満であってもよい。この構成により、医療行為とみなされない一般的に使用されやすい2気圧未満の加圧環境下で、使用者に負担が少ない環境で吸入させることができる。
【0017】
本発明の混合ガス供給装置において、前記第2のコンプレッサでかける圧力は、2気圧以上であってもよい。この構成により、血中に溶け込む気体ガスの割合をさらに大きくでき、使用者に、各気体ガスをより効果的に吸入させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高圧下で酸素ガスと水素ガスとを含む混合ガスを供給し、さらに気体ガスを再利用することでコスト削減を可能とする混合ガス供給装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の混合ガス供給装置1の構成を示すブロック図である。
図2】本実施の形態の混合ガス供給装置1の一部の外観を示す外観図である。
図3】本実施の形態の混合ガス供給装置1の使用の流れを示すフローチャートである。
図4】本実施の形態における気体ガスを再利用する流れを示すフローチャートである。
図5】本実施の形態における気体ガスを再利用する流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態の混合ガス供給装置について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施する場合の一例を示すものであって、本発明を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本発明の実施にあたっては、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。
【0021】
本実施の形態の混合ガス供給装置1は、使用者に酸素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガスを吸入させる装置である。ここで、「使用者」とはヒトであるが、ペットなどの動物であってもよい。
【0022】
図1は、本実施の形態の混合ガス供給装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態の混合ガス供給装置1は、酸素を発生させる酸素供給機2と、水素を発生させる水素供給機3と、二酸化炭素を供給させる二酸化炭素供給機4と、第1のコンプレッサ5と、流量調整器6と、加圧ルーム7と、出力部8と、第2のコンプレッサ9と、回収ボックス11と、を備える。
【0023】
酸素供給機2は、酸素濃縮方法としてPSA型式(Pressure SwingAbsorption 圧力分子振分け吸着方式)で酸素ガスを発生させる。水素供給機3は、水素発生方法として電解方式(電気分解物質投入方式)またはPEM方式(Polymer Electrolyte Membrane プロトン交換膜方式)で水素ガスを発生させる。
【0024】
二酸化炭素供給機4は、二酸化炭素発生方法として、重曹とクエン酸を混ぜた固形物を使用して二酸化炭素ガスを発生させる。なお、各気体ガスの発生方法は、ここに記載した方法に限られず、また、各気体ガスのボンベを使用する等他の方法であってもよい。
【0025】
酸素供給機2と、水素供給機3と、二酸化炭素供給機4は、第1のコンプレッサ5に接続される。第1のコンプレッサ5は、各供給機2~4で生じた水素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガスを吸い込み、第1コンプレッサ5内はこれらの気体を含む混合ガスで充填され、圧縮される。本実施形態では、各供給機2~4と第1のコンプレッサ5とが混合器等を介することなく直接接続されており、簡易な構成となっている。
【0026】
第1のコンプレッサ5には流量調整器6が接続されている。流量調整器6は、混合ガスの出力流量(出力速度)を調整する。第1のコンプレッサ5は、内部に充填された混合ガスを圧縮し、流量調整器6を介して出力部8へ出力する。使用者は、出力部8を装着することで出力されている混合ガスを吸入する。
【0027】
ヒトの1回の呼吸において必要かつ十分な空気の流量は、毎分10リットルである。そのため、流量調整器6の出力速度は毎分10リットルであることが好ましい。
【0028】
本実施の形態の混合ガス供給装置1は、加圧環境を作るために加圧ルーム7を備える。加圧ルーム7の内部には出力部8が備えられている。使用者は加圧ルーム7の内部へ入り、設置されている出力部8を装着して混合ガスの吸入を行う。
【0029】
加圧ルーム7は気密性のあるルームであり、外部よりも高い圧力を維持することができる。加圧ルーム7は、使用者が加圧ルーム7の内部に入ることができる程度の大きさである。加圧ルーム7は、複数の使用者が入ることができる大きさであってもよい。加圧ルーム7にはドアが備えられており、使用者は、ドアを介して加圧ルーム7へ入る。ドアを閉めることで加圧ルーム7の気密性は保たれる。
【0030】
加圧ルーム7には、第2のコンプレッサ9が接続されている。第2のコンプレッサ9は、外部の空気を吸い込み圧縮し、圧縮した空気を加圧ルーム7内へ出力する。
【0031】
本実施の形態の混合ガス供給装置1は、加圧ルーム7内の圧力を1~5気圧に設定することができる。加圧ルーム7内に入った使用者は出力部8を装着し、加圧環境下で出力部8から供給された混合ガスを吸入する。使用者は加圧環境下で混合ガスを吸入することにより、血中へ溶け込む各気体ガスの割合が大きくなり、常圧下で吸入するよりも効率よく各気体ガスのそれぞれの効果を得ることができる。
【0032】
一般的に、吸入目的の加圧装置は2気圧以上だと医療行為とみなされてしまうため、2気圧未満とすることが好まれる。これにより、使用者に負担の少ない環境で吸入させることができる。しかし、本実施形態の混合ガス供給装置1は、2気圧以上の条件とすることが可能であり、これにより使用者は、各気体ガスの効果をより効率的に得ることができる。
【0033】
施術者は混合ガスの各気体ガスの濃度を設定できる。施術者は、混合ガスの各気体ガスがそれぞれ所望する濃度となるように、各気体供給機2~4の出力を調整する。
【0034】
出力部8は、レギュレータの構成を参考にしたものであってもよい。出力部8の構成は、吸入ガスの入口である入口部と、使用者が吸入を行う供給部と、呼気ガスの出口である出口部を有するものである。これにより、目標濃度の混合ガスを効率的に体内に導入することができると共に、出力部8から排出される各気体ガスを効率的に回収できる。出力部8を使用することなく各気体ガスの目的とする各体内分圧を達成するには、加圧ルーム7内を目標濃度の混合ガスで充填しなければならない。これは、目標濃度の混合ガスを体内に導入することを目的とする本発明において、膨大な混合ガスを使用しなければならないこととなりコストもかかるため、現実的ではない。
【0035】
本実施の形態では加圧環境下で混合ガスを吸入する装置を説明したが、常圧環境下で混合ガスを吸入してもよい。この場合、混合ガス供給装置1は、加圧ルーム7と第2のコンプレッサ9を備えない。流量調整器6は出力部8に接続されており、使用者は、常圧環境下で出力部8を装着し、供給される混合ガスを吸入する。
【0036】
本実施の形態の出力部8は、回収ボックス11に接続される。回収ボックス11は出力部8から排出される気体を回収する。
【0037】
本実施の形態で使用する出力部8は、入口部であるインレットバルブと、供給部であるマウスピースと、出口部であるエキゾーストバルブを有する。通常は、インレットバルブ、エキゾーストバルブは閉じた状態である。インレットバルブは流量調整器6に接続されており、エキゾーストバルブは回収ボックス11に接続されている。
【0038】
使用者はマウスピースを咥え、息を吸う。使用者の吸入により出力部8の内部は陰圧となり、インレットバルブは開放される。開放されたインレットバルブから、第1のコンプレッサにおいて生成された混合ガスが送り込まれる。
【0039】
次の段階では、使用者はマウスピースを咥えたまま息を吐く。出力部8内の陰圧が解消されてインレットバルブは閉じる。その後、使用者の呼気により出力部8の内部は陽圧となり、エキゾーストバルブが開放される。回収ボックス11は、呼気ガスおよび吸入されずに出力部8内に残存した気体ガスを回収することができる。
【0040】
本実施の形態で使用する出力部8はダイビング等で使用するレギュレータの構成を参考にしたものであるが、ダイビング等で使用するレギュレータは、呼気を水中に廃棄する。本実施の形態で使用する出力部8は、出口部から排出される気体は、回収ボックス11で回収される。これらは主に、排出する気体を回収するか否かという点で異なる。
【0041】
呼気には二酸化炭素が含まれていることは知られている。また、使用者に供給されたすべての水素、酸素は使用者の体内に取り入れられることはなく、いくらかの水素、酸素は呼気として排出される。また、使用者により吸い込まれず、出力部8の内部に留まる混合ガスも存在する。回収ボックス11は、これらの混合ガスを含んだ気体ガスを回収する。
【0042】
回収された気体ガスは、第1のコンプレッサ5に供給される。供給された気体ガスは、流量調整器6、出力部8を介して使用者に供給される。このようにして、本実施形態の混合ガス供給装置1は混合ガスを再利用することができ、コスト削減につなげることができる。
【0043】
上記で述べたように、呼気は、吸気に比べて二酸化炭素を多く排出することが知られている。二酸化炭素は、酸素や水素など他の気体と比べて水に溶けやすい性質を持つ。したがって、回収ボックス11で回収した気体ガスを水にくぐらせてから第1のコンプレッサ5に供給するような構成であってもよい。
【0044】
また、事前に、通常の人間が混合ガスを吸入した場合、その呼気の構成気体ガスのそれぞれの濃度の測定結果をモデルデータとして把握しておいてもよい。
【0045】
この場合、混合ガス供給装置1を起動させた当初は設定した濃度となるように各供給機2~4を設定する。回収ボックス11である程度気体ガスを回収出来たら、各気体ガス供給機2~4の出力の設定を変更できる。例えば、装置を起動した当初は水素供給機3から供給される水素によって混合ガス中の水素ガスの濃度が4%となるような量を供給するよう設定し、数分後には装置起動当初より少ない量に設定する。これにより、回収ボックス11により供給される水素ガスと水素供給機3から供給される水素ガスを合わせて、所望する4%の濃度である水素ガスが使用者に供給される。
【0046】
回収ボックス11内部で測定された気体ガスと、各供給機2~4のいずれかまたはすべてで発生させた気体ガスは、第1のコンプレッサ5に送られる。これにより、第1のコンプレッサ5内の混合ガスの各気体の濃度は所望の濃度となる。このように、回収ボックス11内の気体ガスを使用することで、各気体を再利用することができ、一から気体ガスを生成するよりも効率的であり、また、コストを抑えることができる。
【0047】
今回、回収ボックス内の呼気ガスの酸素濃度を把握するために、以下のモデルデータが得られた。まず、以下の条件で被験者に気体ガスを吸入させた場合の呼気ガスに含まれる酸素濃度を測定した。被験者に、1気圧下において20.8%の酸素を含む気体を5分間吸入させた。5回の測定により得られた被験者の呼気ガスに含まれる酸素濃度の数値はそれぞれ、17.7%、17.9%、16.5%、17.7%、17.8%であった。これらの平均値は17.5%である(小数点第2位以下は四捨五入)。大気中の酸素濃度は約21%、呼気中の酸素濃度は約16%といわれているので、この測定器を用いた測定は信用できる。
【0048】
次に、被験者に、1気圧下において50%の酸素を含む気体を5分間吸入させた。5回の測定により得られた被験者の呼気ガスに含まれる酸素濃度の数値はそれぞれ、24%、26%、28%、34%、36%であった。上記のデータと異なり、回数を重ねるごとに上昇し、また、35%程度で頭打ちとなった。酸素濃度の測定には、酸素濃度計OXY-1S(株式会社イチネン製作所)を用いた。
【0049】
次に、以下の条件で被験者に気体ガスを吸入させた場合の呼気ガスに含まれる水素濃度を測定した。被験者に、1気圧下において4%の水素を含む気体を5分間吸入させた。5回の測定により得られた被験者の呼気ガスに含まれる水素濃度の数値はそれぞれ、0.96%、1.04%、1.12%、1.36%、1.44%であった。これらの平均値は1.2%である(小数点第2位以下は四捨五入)。水素濃度の測定には、高濃度可燃性ガス検知器XP-33602-W(新コスモス電機株式会社)を用いた。
【0050】
上記のモデルデータを参考にすると、1気圧下で酸素濃度が50%である空気を使用者に吸入させたとき、所定の時間が経過した後の呼気ガス中の酸素濃度は35%であると考えられる。よって、回収ボックス11の気体ガスを再利用する場合は、35%の酸素濃度が50%の酸素濃度となるように酸素ガスを酸素供給機2から発生させればよい。
【0051】
また、上記のモデルデータを参考にすると、1気圧下で水素濃度が4%である空気を使用者に吸入させたとき、所定の時間が経過した後の呼気ガス中の酸素濃度は1.2%であると考えられる。よって、回収ボックス11の気体ガスを再利用する場合は、1.2%の水素濃度が4%の水素濃度となるように水素ガスを水素供給機3から発生させればよい。
【0052】
上記のモデルデータを参考にして、50%の酸素濃度、および4%の水素濃度である気体を使用者に吸入させたとき、呼気ガスを回収して再利用する場合について検討する。この条件下における使用者の呼気ガスに含まれる酸素濃度は35%であり、水素濃度は1.2%であると考えられる。よって、回収ボックス11の気体ガスを再利用する場合は、35%の酸素濃度が50%の酸素濃度となるように、かつ、1.2%の水素濃度が4%の水素濃度となるように、酸素供給機2および水素供給機3から各気体ガスを発生させればよい。
【0053】
このように、施術条件下における呼気ガスに含まれる気体ガスの濃度をあらかじめ測定しておけば、効率よく必要な気体ガスを供給することができる。
【0054】
また、二酸化炭素ガスを再利用する場合についても検討する。ヒトの静脈と動脈の二酸化炭素は、分圧でいうと40mmHgであると知られている。これを濃度に換算すると、1気圧は760mmHgであることから、ヒトの体内の二酸化炭素濃度は5%程度であるといえる。
【0055】
1気圧下において、20%の酸素を吸入した後の呼気ガスは、酸素濃度は約17%、二酸化炭素濃度は4%であると知られている。よって、呼気ガスを回収後そのまま再利用すれば、二酸化炭素を新たに供給しなくてもよい。回収ボックス内の二酸化炭素濃度が過剰となった場合には、二酸化炭素ガスは水によく溶けるため、呼気ガスを水にくぐらせた後に再利用すればよい。
【0056】
また、各供給機2~4等は、収納ボックス50に適当に収納されてもよい。これにより、空間を有効に使用できる。
【0057】
図2は、本実施の形態の混合ガス供給装置1の一部の外観を示す外観図である。収納ボックス50の上面にはタイマー51とモニター52が備えられ、下面の四角にはキャスター55が備えられている。収納ボックス50の上面には、出力部8として吸入マスクが接続されている。
【0058】
収納ボックス50の内部には、酸素供給機2、水素供給機3、第1コンプレッサ5が配置されている。酸素供給機2、および水素供給機3は、第1コンプレッサ5に接続される。
【0059】
酸素供給機2と水素供給機3に接続されているそれぞれの管は、収納ボックス50の内部から、モニター52の中央部にある丸穴53を通って収納ボックス50の外部へ接続される構成である。この2つのそれぞれの管は、収納ボックス50の上面左奥に配置されている2つのビンに接続される。
【0060】
2つのビンの内部には、水が含まれている。気体供給機2、3で発生した気体ガスに水をくぐらせることで、気体の発生を視覚的に確認することができる。また、酸素ガスの発生にはゼオライトが使用されることが多いが、ゼオライトは水分子を吸着するため、発生した酸素ガスは乾燥している。これを防ぐため、発生した酸素ガスは水にくぐらせるのが好ましい。
【0061】
この2つのビンは、収納ボックス50内部に設置されている第1のコンプレッサ5へ接続される。第1のコンプレッサは、流量調整器6を介して出力部8に接続されている。
【0062】
収納ボックス50の上面は、タイマー51とモニター52とを備える。タイマー51は、設定した時間となったら音を発生させるものであってよいし、また、各気体ガス供給機2~4の稼働時間を設定するものであってもよい。モニター52は、各供給機2~4から発生させる各気体ガスの濃度、すなわち施術内容を表示する。
【0063】
次に、各気体ガスを吸入することで得られる主な効果を説明する。酸素ガスは血流を改善する効果を有し、酸素ガスを吸入することで、リラックス効果や疲労回復効果、美容効果等が得られる。また、酸素ガスを吸入することには様々なメリットがある反面、健康に有害とされる活性酸素が体内において増加するというデメリットもある。活性酸素の中でも非常に強い酸化力を持つものは、細胞や組織を損傷することで様々な病気の原因となる。活性酸素のうちの一つにヒドロキシラジカルがあるが、ヒドロキシラジカルは活性酸素の中で最も反応性が高いため、細胞に与える影響は大きい。
【0064】
水素ガスは、疲労回復や健康増進、美容、腫瘍の縮小等に効果的であると言われている。また、水素ガスは還元作用を有するものであり、ヒドロキシラジカルと反応してこれを除去する作用を持つ。
この反応式は、以下のとおりである。
+2(・OH)→2H
【0065】
酸素ガス単体の吸入ではヒドロキシラジカルの発生がデメリットであったが、酸素ガスと水素ガスを同時に吸入することで、ヒドロキシラジカルを除去することができる。それぞれの気体ガスが有する効果に加えて、相乗的な効果が得られる。
【0066】
次に、二酸化炭素ガスを吸入することによる効果を説明する。血中二酸化炭素濃度が増加することで、血液のPHは弱酸性となる。血中では、酸素はヘモグロビンに結合することで結合型酸素として運搬されるが、血液のPHが弱酸性に傾くことでヘモグロビンに結合されていた酸素は解離されて溶解型酸素となり、抹消組織へ酸素が供給されやすくなる。また、血中二酸化炭素濃度が高くなることで血管拡張効果も有する。
【0067】
二酸化炭素ガスと酸素ガスを同時に吸入することで、血管拡張がなされて血行が良くなるところへ溶解型酸素が増加し、抹消組織への酸素供給がより高まるという効果を有する。このように、酸素ガスと二酸化炭素ガスを同時に吸入することでそれぞれの気体ガスが有する効果に加えて相乗的な効果が得られる。
【0068】
次に、高圧環境下とすることで、酸素ガスの効果を効率的に得られることを説明する。生体の動脈血酸素分圧は以下の式1で求められる。
(式1)
動脈血酸素分圧(P)=(大気圧(PB)-飽和水蒸気圧)×吸入酸素濃度(FiO)-動脈血二酸化炭素分圧(PCO)÷呼吸商
【0069】
大気圧が大きくなるほど上記式1の「大気圧(PB)」の数値が大きくなり、動脈血酸素分圧は上昇する。また、室内環境が高圧環境下である場合も、上記式の大気圧(PB)の数値は大きくなり、動脈血酸素分圧は上昇する。本実施の形態の混合ガス供給装置1は、加圧環境により使用者の動脈血酸素分圧を上げた状態で混合ガスを供給することができる。
【0070】
動脈血酸素分圧が上昇した場合、血中の結合型酸素の割合は不変であるが、溶解型酸素の割合は増加する。溶解型酸素が増加することにより、体内の各細胞への酸素供給量は増加する。溶解型酸素は分子が小さいため抹消組織に到達することができ、血行が良くなり新陳代謝も活発となる。美肌効果や冷え性改善にも効果が得られる。
【0071】
また、混合ガスの酸素割合を上げることで、上記式の「吸入酸素濃度(FiO)」の数値は大きくなり、動脈血酸素分圧が大きくなるため、上記と同様の理由で溶解型酸素の割合は増加する。動脈血二酸化炭素分圧も同様に、高圧環境下において大きくなる。
【0072】
以上のように、使用者に高圧環境下で吸入させる場合は加圧ルーム7を用いることを記載した。しかし、常圧環境下で混合ガスを吸入させてもよい。この場合は、加圧ルーム7は用いず、流量調整器6は出力部8に接続される。出力部8を装着した使用者は、常圧環境下で混合ガスを吸入する。
【0073】
また、本実施の形態では3種類の気体による混合ガスを使用したが気体の種類はこれに限られない。1種類の気体でも、2種類の気体の組み合わせであってもよい。
【0074】
次に、本実施の形態の混合ガス供給装置1を使用する流れについて説明する。図3は、本実施形態の混合ガス供給装置1の使用の流れを示すフローチャートである。
【0075】
施術者は、混合ガス供給装置1の電源を入れる(S1)。施術者は、使用条件の設定を行う(S2)。使用条件とは、各発生させる気体の割合と、加圧ルーム7内の気圧である。加圧ルーム7を使用せずに常圧下で吸入を行う場合は、気圧の設定は行わない。
【0076】
設定された条件に従い、混合ガス供給装置1の酸素供給機2は酸素ガスを発生させ、水素供給機3は水素ガスを発生させ、二酸化炭素供給機4は二酸化炭素ガスを発生させ、それぞれの気体ガスを第1のコンプレッサ5に送る。第1のコンプレッサ5は混合ガスを圧縮し(S3)、流量調整器6を介して出力部8へ供給する(S4)。
【0077】
使用者は加圧ルーム7の内部へ入り、ドアが閉められる(S5)。混合ガス供給装置1は、第2のコンプレッサ9により、設定された圧力まで加圧ルーム7内の圧力を高める(S6)。使用者は、加圧ルーム7内にある出力部8を装着し、供給されている混合ガスを吸入する(S7)。設定した吸入時間が経過したら吸入を終了する(S8)。
【0078】
図4は、排出された気体ガスを回収して再利用する流れを示したフローチャートである。使用者は、混合ガスの吸入を行う(S31)。使用者の吸入により、出力部8の内部は使用者の呼気ガス、および使用者に吸入されずに残存した各気体ガスで満たされる。出力部8の内部が陽圧になることにより、出力部8の出口部から気体ガスが排出される(S32)。
【0079】
排出された気体ガスは、回収ボックス11で回収される(S33)。測定された回収ボックス内の気体ガスは、そのまま第1のコンプレッサへ供給される(S34)。混合ガスにおける各気体の望ましい濃度については下記で述べるが、所望する濃度に足りていない気体ガスは、各気体ガス供給機2~4を調整することにより不足分を補充される(S35)。不足した気体ガスが供給されることにより、混合ガスを構成する各気体ガスの濃度は所望する濃度となる。
【0080】
濃度が調整された混合ガスは、流量調整器6、出力部8を経由して、使用者により吸入される(S36)。以上のように気体ガスを回収して再利用することで、一から気体ガスを生成することと比較して、コストを削減することができる。
【0081】
図5は、排出された気体ガスを回収して再利用する流れを示した、図4とは別の動作の例を示すフローチャートである。使用者は、混合ガスの吸入を行う(S51)。使用者の吸入により、出力部8の内部は使用者の呼気ガス、および使用者に吸入されずに残存した各気体ガスで満たされる。出力部8の内部が陽圧になることにより、出力部8の出口部から気体ガスが排出される(S52)。
【0082】
排出された気体ガスは、回収ボックス11で回収される(S53)。回収ボックス11に回収された気体ガスは、回収ボックス11に設置されているガスクロマトグラフィーにより気体ガスを構成する各気体の濃度を測定される(S54)。測定された回収ボックス11内の気体ガスは、そのまま第1のコンプレッサ5へ供給される(S55)。このとき、酸素供給機2および水素供給機3を使用している場合は、酸素ガスと水素ガスの濃度が測定できればよく、さらに二酸化炭素供給機を使用している場合は、さらに二酸化炭素ガスの濃度も測定できればよい。
【0083】
混合ガスにおける各気体の望ましい濃度については下記で述べるが、S54における測定結果に基づき所望する濃度に足りていない気体ガスは、酸素供給機2または水素供給機3、二酸化炭素供給機4を調整することにより不足分を補充される(S56)。不足する気体ガスが供給されることにより、第1のコンプレッサ5内にある混合ガスを構成する各気体ガスの濃度は所望する濃度となる。
【0084】
第1のコンプレッサにおいて濃度が調整された混合ガスは、流量調整器6、出力部8を経由して、使用者により吸入される(S57)。以上のように気体ガスを回収して再利用することで、一から気体ガスを生成することと比較して、コストを削減することができる。
【0085】
酸素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガスの各気体ガスの濃度の割合は、常圧下で行う場合であれば、酸素94%、水素4%、二酸化炭素2%とすることが好ましい。加圧下で行うのであれば、安全性に鑑み、水素は2%とするのが好ましい。
【0086】
大気は、窒素78%、酸素21%、その他1%(二酸化炭素は0.04%)であることが知られている。本実施の形態で説明した混合ガスの割合は、二酸化炭素4%であり、大気より二酸化炭素濃度が高く、上記で説明した二酸化炭素の血管拡張効果が得られる。
【0087】
一般に、二酸化炭素濃度は、室内において3%以上とすることは危険であると言われている。しかし、これは通常の呼吸を継続することが前提である。室内が1気圧下で二酸化炭素濃度が3%である場合、室内の二酸化炭素分圧は22.8mmHgである。一方、通常のヒトの肺胞内の二酸化炭素分圧は40mmHgである。また、本発明では、二酸化炭素の他に酸素、および水素を供給するものである。これらを踏まえると、本実施形態における混合ガスの二酸化炭素濃度を4%として供給することは問題ない。
【0088】
上記では、回収ボックス11の内部の気体ガスをそのまま第1のコンプレッサへ供給したが、回収ボックス11の内部の気体ガスを構成する酸素ガス、水素ガス、二酸化炭素ガスの濃度を、ガスクロマトグラフィーを用いて測定する構成であってもよい。この場合、測定した濃度と、出力部8で所望する混合ガスの各気体の濃度とを比較することができる。所望する濃度に対して不足量の気体ガスを、各気体供給機2~4より発生させる。
【0089】
このように、回収ボックス11の内部の気体ガス濃度を測定することで、補充する気体ガスをきめ細かく設定することができる。よって、気体ガスをそのまま再利用することに比べて、コスト削減ができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、ヒトやペットの健康状態や運動機能などに対する改善効果を効率的に得ることができ、混合ガスを供給する装置として有用である。
【符号の説明】
【0091】
1 混合ガス供給装置
2 酸素供給機
3 水素供給機
4 二酸化炭素供給機
5 第1のコンプレッサ
6 流量調整器
7 加圧ルーム
8 出力部
9 第2のコンプレッサ
11 回収ボックス
50 収納ボックス
51 タイマー
52 モニター
53 丸穴
55 キャスター
図1
図2
図3
図4
図5