(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025091867
(43)【公開日】2025-06-19
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10D 12/00 20250101AFI20250612BHJP
H10D 84/80 20250101ALI20250612BHJP
H10D 30/66 20250101ALI20250612BHJP
【FI】
H01L29/78 655G
H01L29/78 657D
H01L29/78 652Q
H01L29/78 655B
H01L29/78 653A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207389
(22)【出願日】2023-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】ミネベアパワーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】生井 正輝
(57)【要約】
【課題】 装置全体としての放熱性を高めつつ、IGBT領域のオン電圧の上昇も抑制することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】 IGBT領域とダイオード領域を有するチップと、前記チップの上面とはんだを介して電気的に接続されるリードフレームと、前記チップの下面とはんだを介して電気的に接続される絶縁基板を具備する半導体装置であって、前記チップ内には、前記IGBT領域と前記ダイオード領域が交互に配置されており、前記リードフレームと前記はんだを介して電気的に接続される部位のIGBT領域のセル幅が、他の部位のIGBT領域のセル幅より広い半導体装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IGBT領域とダイオード領域を有するチップと、
前記チップの上面とはんだを介して電気的に接続されるリードフレームと、
前記チップの下面とはんだを介して電気的に接続される絶縁基板を具備する半導体装置であって、
前記チップ内には、前記IGBT領域と前記ダイオード領域が交互に配置されており、
前記リードフレームと前記はんだを介して電気的に接続される部位のIGBT領域のセル幅が、他の部位のIGBT領域のセル幅より広いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
交互に配置された前記IGBT領域と前記ダイオード領域は外周領域に囲まれており、
前記外周領域の内側に前記IGBT領域と前記ダイオード領域を跨ぐゲートパッド領域が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体装置において、
前記リードフレームと前記はんだを介して電気的に接続される部位のIGBT領域のセル幅が、同部位のダイオード領域のセル幅の略3倍であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の半導体装置において、
前記リードフレームと前記はんだを介して電気的に接続される部位のダイオード領域のセル幅は、他の部位のダイオード領域のセル幅より広いことを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一チップにIGBT領域とダイオード領域を搭載した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同一チップにIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)領域と、IGBT領域に対して逆並列に接続されたダイオード領域を搭載した逆導通IGBT(Reverse Conduction IGBT、以下「RC-IGBT」と称する)として、特許文献1の半導体装置が知られている。
【0003】
例えば、同文献の要約書には、「専用動作するIGBTセル領域とダイオードセル領域が半導体基板に隣接して交互に配置されてなる半導体装置(セミ混在型RC-IGBT)であって、高破壊耐量と低損失の長所を阻害することなく、IGBTセル領域のスナップバックが抑制可能な半導体装置を提供する。」なる課題の解決手段として「短冊形状の複数のIGBTセル領域と複数のダイオードセル領域とが、隣接して交互に配置されてなる半導体装置であって、前記複数のIGBTセル領域が、短冊形状の幅の狭い狭短冊幅領域10aと、狭短冊幅領域10aより幅の広い少なくとも1つの広短冊幅領域10bとで構成されてなり、前記複数のIGBTセル領域における裏面側の各第1領域1a,1bが、同じ層のP導電型で形成された架橋部領域5aで連結されている半導体装置100」が挙げられている。また、同文献の
図1等でも、IGBTセル領域とダイオードセル領域が交互に配置され、IGBTセル領域として狭短冊幅領域10aと広短冊幅領域10bの2領域が存在する半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では特に言及されていないが、RC-IGBTでは、IGBT領域の通電時に発生したジュール熱を隣接するダイオード領域に放熱することでIGBT領域を冷却しており、ダイオード領域の通電時に発生したジュール熱を隣接するIGBT領域に放熱することでダイオード領域を冷却している。従って、RC-IGBTでは、IGBT領域とダイオード領域の境界数を増やす等して両領域の境界面積を増やせば、一方の領域から他方の領域への放熱時の熱抵抗を小さくすることができ、RC-IGBT全体としての放熱性を高めることができる。
【0006】
ここで、RC-IGBTのIGBT領域では、コレクタとエミッタの間に正電圧が印加され、かつ、ゲート電圧がオンしている期間に、ドリフト層にキャリア(正孔)を蓄積してドリフト層抵抗を低減することで、オン電圧を低減している。
【0007】
しかしながら、RC-IGBTの放熱性を高めるためにIGBT領域とダイオード領域の境界面積を増やすと、IGBT領域の通電時にIGBT領域のドリフト層に蓄積したキャリアがダイオード領域のボディ層から排出されやすくなるとともに、IGBT領域のドリフト層に蓄積した電子がダイオード領域のカソード層から排出されやすくなる。その結果、IGBT領域とダイオード領域の境界ではIGBT領域のキャリア蓄積が不十分となり、ドリフト層抵抗が高くなることに伴い、IGBT領域のオン電圧も高くなるという問題が発生する。
【0008】
そこで、本発明は、装置全体としての放熱性を高めつつ、IGBT領域のオン電圧の上昇も抑制することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の半導体装置は、IGBT領域とダイオード領域を有するチップと、前記チップの上面とはんだを介して電気的に接続されるリードフレームと、前記チップの下面とはんだを介して電気的に接続される絶縁基板を具備し、前記チップ内には、前記IGBT領域と前記ダイオード領域が交互に配置されており、前記リードフレームと前記はんだを介して電気的に接続される部位のIGBT領域のセル幅が、他の部位のIGBT領域のセル幅より広い半導体装置とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体装置によれば、装置全体としての放熱性を高めつつ、IGBT領域のオン電圧の上昇も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施例1のチップの要部を上面視した概略平面図。
【
図4】実施例1の半導体装置のIGBT領域通電時のジュール熱の移動を示す図。
【
図5】実施例2のチップの要部を上面視した概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の半導体装置の製造方法の実施例を説明する。
【実施例0013】
まず、
図1から
図4を用いて、本発明の実施例1に係る半導体装置100を説明する。
【0014】
図1は、本実施例の半導体装置100の外観斜視図である。ここに示すように、半導体装置100は、チップ1と、絶縁基板2と、リードフレーム3と、を有している。以下、各々を順次説明する。
【0015】
絶縁基板2は、セラミックス製の絶縁板2aの上面に、所望の数・形状の金属配線2bを配置した剛体である。なお、チップ1の下面と金属配線2bの上面は、はんだ4を介して電気的に接続される。
【0016】
リードフレーム3は、絶縁基板2の金属配線2bの上面と電気的に接続するために側方に突出した複数の端子3aと、チップ1の上面と電気的に接続するために下方に突出した凸部3bを備えた、大電流を流すための銅製剛体である。なお、リードフレーム3の端子3aの下面と金属配線2bの上面、および、凸部3bの下面とチップ1の上面は、はんだ4を介して電気的に接続される。
【0017】
チップ1は、同一チップ内にIGBT領域11と、IGBT領域11に対して逆並列に接続されたダイオード領域12を搭載したRC-IGBTである。
【0018】
図2は、チップ1の要部を上面視した概略平面図であり、後述するエミッタ電極15等の図示を省略したものである。ここに示すように、チップ1は、上記したIGBT領域11とダイオード領域12に加え、外周領域13と、ゲートパッド領域14を有する。なお、破線は、はんだ4を介してリードフレーム3の凸部3bと接触する部位である。
【0019】
図示するように、外周領域13の内側には、IGBT領域11とダイオード領域12のセルが交互に配置されており、図中左端の複数のIGBT領域11とダイオード領域12のセルを跨ぐようにゲートパッド領域14が配置されている。また、凸部3bの下方のIGBT領域11のセル幅は、凸部3bと接しないIGBT領域11のセル幅より広くなっている。以下では、前者を広幅IGBT領域11a、後者を狭幅IGBT領域11bと称する。なお、本実施例では、広幅IGBT領域11a同士の幅が均等、狭幅IGBT領域11b同士の幅が均等、ダイオード領域12同士の幅が均等であるものとし、ダイオード領域12、狭幅IGBT領域11b、広幅IGBT領域11aの順にセル幅が広くなり、広幅IGBT領域11aのセル幅はダイオード領域12のセル幅の略3倍(2.5~3.5倍)であるものとする。
【0020】
図3は、半導体装置100の断面図である。ここに示すように、チップ1の上面に設けられたエミッタ電極15は、チップ上はんだ4aを介してリードフレーム3の凸部3bと電気的・熱的に接続されており、チップ1の下面に設けられたコレクタ電極16は、チップ下はんだ4bを介して絶縁基板2の金属配線2bと電気的・熱的に接続されている。
【0021】
IGBT領域11(広幅IGBT領域11a、狭幅IGBT領域11b)は、ドリフト層21、バッファ層22、コレクタ層23、ボディ層24、エミッタ層25、トレンチ26、ゲート電極27、ゲート絶縁膜28を有する。ドリフト層21は、チップ1の中央を占めるn型の半導体層であり、最も厚い層である。バッファ層22は、ドリフト層21の下方に設けたn型の半導体層である。コレクタ層23は、バッファ層22の下方に設けたp型の半導体層であり、コレクタ電極16の上面と接している。ボディ層24は、ドリフト層21の上方に設けたp型の半導体層であり、エミッタ電極15の下面と接している。エミッタ層25は、ボディ層24の上面に設けたn型の半導体層であり、エミッタ電極15の下面と接している。トレンチ26は、ボディ層24とエミッタ層25を貫通してドリフト層21まで達する穴である。ゲート電極27は、トレンチ26内に配置された電極である。ゲート絶縁膜28は、ゲート電極27の外周を覆う絶縁膜である。
【0022】
ダイオード領域12は、上記したドリフト層21、バッファ層22、ボディ層24、トレンチ26に加え、カソード層31、エミッタ絶縁膜32を有する。カソード層31は、バッファ層22の下方に設けたn型の半導体層であり、コレクタ電極16の上面と接している。エミッタ絶縁膜32は、トレンチ26内に配置されたエミッタ電極15の外周を覆う絶縁膜である。
【0023】
<チップ1の放熱経路>
次に、
図4を用いて、IGBT領域11の通電時におけるチップ1の放熱経路を説明する。ここに示すように、広幅IGBT領域11aで発生したジュール熱は、左右のダイオード領域12に放熱されるとともに、チップ上はんだ4aを介して凸部3b(リードフレーム3)に放熱され、チップ下はんだ4bを介して金属配線2b(絶縁基板2)に放熱される。同様に、狭幅IGBT領域11bで発生したジュール熱は、左右のダイオード領域12に放熱されるとともに、エミッタ電極15を介して装置外(具体的には、半導体装置100を封止する樹脂モールド(図示せず))に放熱され、チップ下はんだ4bを介して金属配線2b(絶縁基板2)に放熱される。
【0024】
図4から自明なように、広幅IGBT領域11aと狭幅IGBT領域11bでは左右のダイオード領域12との境界面積は等しいため、広幅IGBT領域11aの単位体積当たりの左右境界面積は、狭幅IGBT領域11bのそれより狭くなる。従って、狭幅IGBT領域11bと比較すると広幅IGBT領域11aには以下の長短がある。すなわち、広幅IGBT領域11aには、狭幅IGBT領域11bと比べてキャリア蓄積効果が高いのでオン電圧の上昇を抑制できるという利益がある一方で、狭幅IGBT領域11bと比べてダイオード領域12への放熱経路の熱抵抗が大きいのでダイオード領域12への放熱に限定すれば放熱性能が劣後するという不利益がある。
【0025】
しかし、本実施例の広幅IGBT領域11aは、ヒートシンクとしての機能も担うリードフレーム3に放熱する経路も備えているため、この放熱経路の存在によって上記の不利益を改善することができ、狭幅IGBT領域11bと同等に十分な放熱性能を確保することができる。
【0026】
以上で説明したように、本実施例の半導体装置によれば、装置全体としての放熱性を高めつつ、IGBT領域のオン電圧の上昇も抑制することができる。
このように、広幅IGBT領域11a同士で挟まれたダイオード領域12をセル幅の広い広幅ダイオード領域12aとすることで、凸部3bと接する部位において、広幅IGBT領域11aとダイオード領域12の境界数(すなわち、境界面積)を更に小さくできるため、実施例1よりも更にIGBT領域のオン電圧の上昇を抑制することができる。