(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025091870
(43)【公開日】2025-06-19
(54)【発明の名称】表示灯
(51)【国際特許分類】
F21L 4/00 20060101AFI20250612BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20250612BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20250612BHJP
F21W 111/10 20060101ALN20250612BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20250612BHJP
【FI】
F21L4/00 416
F21V5/00 320
F21V5/04 300
F21V5/04 600
F21W111:10
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207393
(22)【出願日】2023-12-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 試験日:令和5年6月8日 試験場所:山形県JR東日本路線内(山形県東田川郡庄内町小出新田大谷地8) 〔刊行物等〕 打合せ日:令和5年7月31日 打合せ場所:JR東日本本社ビル13階(東京都渋谷区代々木二丁目2番2号) 〔刊行物等〕 試験日:令和5年9月7日 試験場所:竜王町農道(滋賀県蒲生郡竜王町須惠1287) 〔刊行物等〕 打合せ日:令和5年9月7日 打合せ場所:積水樹脂株式会社 竜王工場 R&Dプラザ4F カンフェレンスルーム(滋賀県蒲生郡竜王町鏡731-1) 〔刊行物等〕 打合せ日:令和5年11月22日 打合せ場所:JR西日本兵庫駅研修センター会議室(兵庫県神戸市兵庫区駅南通5丁目) 〔刊行物等〕 試験日:令和5年11月22日 試験場所:兵庫駅(兵庫県神戸市兵庫区駅南通5丁目)~和田岬駅(兵庫県神戸市兵庫区和田宮通4丁目1-2)間
(71)【出願人】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594067025
【氏名又は名称】嶋田プレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】宮下 充浩
(72)【発明者】
【氏名】高木 一誠
(72)【発明者】
【氏名】武田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】新宮 尚悟
(57)【要約】
【課題】上下方向以外の方向へ傾けて使用された場合であっても遠くの前方から視認可能な表示灯を提供する。
【解決手段】 表示灯1は、把持部2と、把持部2の先端に設けられた投光本体3と、を備え、投光本体3は、長手方向D1に配列された複数個のLEDを有するLED基板と、反射部材と、側壁41と、を有する。側壁41には、長手方向D1に沿って配列された複数個のレンズ部44が設けられ、複数個のLEDから発せられた光は、反射部材により側壁41へ向けて反射され、複数個のレンズ部44により屈折されて外部へ投光され、複数個のレンズ部44の各々における光の屈折方向はレンズ部44毎に相違する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部と、
前記把持部の先端に設けられた投光本体と、を備え、
前記投光本体は、第1方向に配列された複数個のLEDを有するLED基板と、反射部材と、投光部と、を有し、
前記投光部には、前記第1方向に沿って配列された複数個のレンズ部が設けられ、
前記複数個のLEDから発せられた光は、前記反射部材により前記投光部へ向けて反射され、前記複数個のレンズ部により屈折されて外部へ投光され、
前記複数個のレンズ部の各々における光の屈折方向は前記複数個のレンズ部毎に相違する表示灯。
【請求項2】
前記複数個のレンズ部の各々は、相互に平行に延びる複数個のシリンドリカルレンズを有し、
前記反射部材により前記投光部へ向けて反射された光は前記複数個のシリンドリカルレンズにより屈折されて外部へ投光され、
前記シリンドリカルレンズのレンズ方向は、前記レンズ部毎に少なくとも10°以上相違する請求項1に記載の表示灯。
【請求項3】
前記反射部材は、前記複数個のLEDに1対1で対応する複数の反射面を有し、前記複数の反射面の各々は半放物面状であって、
前記複数個のLEDの各々は、対応する前記反射面の焦点位置に位置づけられている請求項2に記載の表示灯。
【請求項4】
前記複数個のレンズ部は、相互に隣接する一対のレンズ部から成るレンズ部組を複数組構成し、
前記複数の反射面は前記複数組のレンズ部組と1対1で対応する請求項3に記載の表示灯。
【請求項5】
対をなす前記レンズ部間において、前記シリンドリカルレンズのレンズ方向は45°以上相違する請求項4に記載の表示灯。
【請求項6】
前記複数組のレンズ部組は、少なくとも第の1レンズ部組と第2のレンズ部組を有し、
前記第2のレンズ部組において、前記シリンドリカルレンズのレンズ方向は、前記第1方向に垂直な第2方向を基準に対称となる組み合わせである請求項4又は5に記載の表示灯。
【請求項7】
前記第1のレンズ部組において、前記第1方向に対する前記シリンドリカルレンズのレンズ方向は0°と90°の組み合わせである請求項6に記載の表示灯。
【請求項8】
前記複数個のレンズ部組は、少なくとも第1のレンズ部組と第2のレンズ部組を有し、
前記第1のレンズ部組において、前記第1方向に対する前記シリンドリカルレンズのレンズ方向は0°と90°の組み合わせであり、
前記第2のレンズ部組において、前記第1方向に対する前記シリンドリカルレンズのレンズ方向は135°と45°の組み合わせである請求項4又は5に記載の表示灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、警告灯、信号灯などの表示灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工事現場やイベント会場等で車両や人を誘導するために手持ち式の誘導灯が用いられている。例えば、特許文献1に開示に誘導灯は、把持部と、複数個のLEDを収容する長尺円筒状の発光部と、を備え、LEDから発せられた光は錐状鏡面を有する光分散手段によって全周方向に拡散されて外方に投射される。
【0003】
また、道路や鉄路における作業現場等においては、運転者や歩行者に対して各種の警告や信号を与えるために、手持ち式の表示灯が用いられている。例えば、特許文献2に開示の表示灯は、LEDからの光が投光部から前方に向けて投射され、その光の拡がりが、幅方向への拡がりよりも上下方向への拡がりの方が大きくなるように構成されている。
【0004】
そして、軌道工事等においては安全性確保のため、電車の運転手等に工事中であることを知らせる必要あることから、800m程度の遠方からでも視認できる表示灯が強く望まれている。この点、上述の誘導灯では、LEDからの光は発光部の全周方向に分散されてしまい、遠方からの視認は難しかった。一方、上述の表示灯では、光が前方へ投射されることから800m程離れた遠方からでも視認が可能となっている。
【0005】
また、特許文献2に開示の表示灯では、投光部からの光が上下方向へ大きく拡がることから、使用者が表示灯を上下に傾けて使用しても、表示灯からの光を前方から視認できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-222901号公報
【特許文献2】特開2020-30989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献2に開示の表示灯は、表示灯を上下に傾けても投光部からの光を遠方から視認可能に構成されている。しかしながら、表示灯は上下に傾くだけでなく、左右に傾いたり、表示灯の長手方向を中心に旋回する方向に傾いたりすることも多く、このように表示灯が上下方向以外の方向に傾いて使用された場合には、投光部からの光を遠くの前方から良好に視認することはできなかった。特に、表示灯を使用するときは、使用者は表示灯を把持して頭上へ掲げ、左右へ大きく振るようにして使用するのが一般的であるところ、このように表示灯を振りかざすようにして使用する場合には、表示灯の向きは上下方向以外の方向へも大きく傾きやすく、遠くの前方にいる対象者に対して安定的に合図を送ることができない虞があった。
【0008】
本発明は、上下方向以外の方向へ傾けて使用された場合であっても、遠くの前方から視認可能な表示灯の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る表示灯は、把持部と、前記把持部の先端に設けられた投光本体と、を備え、 前記投光本体は、第1方向に配列された複数個のLEDを有するLED基板と、反射部材と、投光部と、を有し、前記投光部には、前記第1方向に沿って配列された複数個のレンズ部が設けられ、前記複数個のLEDから発せられた光は、前記反射部材により前記投光部へ向けて反射され、前記複数個のレンズ部により屈折されて外部へ投光され、前記複数個のレンズ部の各々における光の屈折方向は前記複数個のレンズ部毎に相違する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る表示灯によれば、複数個のLEDから発せられた光は、反射部材により投光部へ向けて反射され、複数個のレンズ部により屈折されて外部へ投光され、複数個のレンズ部の各々における光の屈折方向はレンズ部毎に相違するので、投光部全体から投光される光は、正面視において全体的に放射状に拡がりながら前方へ向かう。よって、表示灯が傾けて使用された場合であっても、遠くの前方から視認可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】
図1に示す表示灯における投射光の拡がりを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る表示灯について説明する。
図1~
図3を参照して、本実施形態に係る表示灯1は、全体として所定方向(長手方向D1/第1方向)に延びる棒状の外観を有し、把持部2と、把持部2の先端に設けられた投光本体3と、を備え、把持部2には電源電池(図示せず)が収容保持される。
【0013】
投光本体3は、長手方向D1に延びて透光性を有する中空筒状のハウジング4と、ハウジング4に収容された光源ユニット5と、制御基板6と、蓋7と、を備える。ハウジング4は、長手方向D1に垂直な前後方向(第3方向)D3において相互に対向する一対の第1側壁41,41と、一対の第1側壁41,41を相互に接続する第2側壁42と、を有し、第2側壁42には電源スイッチSが設けられている。また、長手方向D1及び前後方向D3に垂直な幅方向(第2方向)D2において第2側壁42と対向するハウジング4の一側面は開口し、開口部43を形成している。開口部43は蓋7により封止され、開口部43と蓋7の間には環状の止水ゴムPが介在している。
【0014】
光源ユニット5は、LED基板8と、LED基板8に取り付けられた反射部材9と、を備える。LED基板8は、長手方向D1に延びる基板81と、基板81の表面81aに設けられた複数個のLED82と、を有する。これら複数個のLED82は、一対の第1側壁41,41に対応して一対のLED列を形成している。即ち、各LED列は、長手方向D1に間隔を空けて配列された複数個(本実施形態では4個)のLED82を有し、第1側壁41と1対1で対応する。また、LED基板8は第2側壁42の内面に取り付けられ、基板81の表面81aは第1側壁41,41に対して垂直に延びている。
【0015】
反射部材9は、基板81の表面81aに装着される基部91と、基部91から起立して相互に対称な一対の反射部92,92と、を有し、これら反射部92,92は一対のLED列と1対1で対応する。各反射部92には、対応するLED列が有する4個のLED82の各々に対応して、凹状の4つの反射面93A,93B,93C,93Dが設けられている。以下、反射面93A~93Dを区別すること無く説明する場合には、単に反射面93という。
【0016】
各反射面93は半放物面状であって、各LED82は反射面93と一方の第1側壁41により囲まれた空間内に位置する。また、各LED82は、対応する反射面93の焦点位置に位置づけられている。
【0017】
ハウジング4の各第1側壁41は投光部として機能するものであり、第1側壁(投光部)41の外面には、反射部材9の反射面93に1対1で対応する4対のレンズ部組45A,45B,45C,45Dが設けられている。より具体的に、各第1側壁41の外面には8つのレンズ部44A,44B,44C,44D,44E,44F,44G,44Hが長手方向D1に沿って設けられ、レンズ部44A,44Bにより第1のレンズ部組45Aが、レンズ部44C,44Dにより第2のレンズ部組45Bが、レンズ部44E,44Fにより第3のレンズ部組45Cが、レンズ部44G,44Hにより第4のレンズ部組45Dが、それぞれ構成されている。
【0018】
レンズ部44Aは相互に平行に延びる複数個のシリンドリカルレンズ46aを有する。同様に、レンズ部44B~44Hは、相互に平行に延びる複数個のシリンドリカルレンズ46b~46hをそれぞれ有する。
【0019】
以下、レンズ部組45A~45Dを区別すること無く説明する場合には単にレンズ部組45と言い、レンズ部44A~44Hを区別すること無く説明する場合には単にレンズ部44と言う。同様に、シリンドリカルレンズ46a~46hを区別すること無く説明する場合には単にシリンドリカルレンズ46と言う。
【0020】
シリンドリカルレンズ46のレンズ方向(シリンドリカルレンズ46の長手方向)はレンズ部44毎に相違する。また、長手方向D1において、各LED86は対応のレンズ部組45の中央に位置づけられている。
【0021】
かかる構成において、各LED82から発せられた光の一部は、
図4に示す様に、反射部材9の反射面93により対応の第1側壁41へ向けて反射されて平行光となり、対応のレンズ部組45を構成する一対のレンズ部44により屈折されて外部へ投光される。そして、レンズ方向はレンズ部44毎に異なるから、光の屈折方向はレンズ部44毎に異なり、第1側壁41全体から投光される光は、正面視(及び背面視)において全体的に放射状に拡がりながら前方(及び後方)へ面状に向かうことになる。
【0022】
ここで、レンズ部44毎に相違するレンズ方向の角度差(第1角度差)は10°以上であるのが好ましく、15°以上であるのが更に好ましい。また、各レンズ部組45におけるレンズ方向の角度差(第2角度差)は45°以上であるのが好ましく、60°以上であるのが更に好ましい。即ち、レンズ部組45Aにおけるシリンドリカルレンズ46aとシリンドリカルレンズ46bのレンズ方向の角度差(第2角度差)は45°以上であるのが好ましく、レンズ部組45Bにおけるシリンドリカルレンズ46cとシリンドリカルレンズ46dのレンズ方向の角度差(第2角度差)も同様に45°以上であるのが好ましい。
【0023】
更に、4対のレンズ部組45のうち、一対のレンズ部組45(
図1に示す例では第1のレンズ部組45A)においては、そのレンズ方向が長手方向D1に対して0°と90°の組み合わせとするのが好ましく、残りのレンズ部組45(
図1に示す例では第2~第4のレンズ部組45B~45D)の各々においては、そのレンズ方向が幅方向D2を基準に対称となる組み合わせとするのが好ましい。
【0024】
このようなレンズ方向の組み合わせとすることによって、レンズ部44によって放射状に投光される光の偏りを低減し、より均一に光を拡散させることができる。
【0025】
そして、本実施形態に係る表示灯1は、例えば次の様にして用いられる。まず、使用者は把持部2を把持して表示灯1を頭上に掲げ、一方の第1側壁41(前面)を前方へ向ける。この状態で表示灯1を左右に大きく振ることで、前方に位置する対象者(例えば、電車の運転手)に合図を送る。
【0026】
このとき、表示灯1の向きは上下方向を初め、あらゆる方向に傾くおそれがあるが、本実施形態の表示灯1では、複数個のレンズ部44によって、それぞれ異なる方向へ光を屈折させて放射状に投光するため、表示灯1の向きが傾いても、遠方にいる対象者へも十分な光を届けることができる。
[実施例]
【0027】
本実施形態に係る表示灯1の照度を計測した。ここでは、
図5に示すように、長手方向D1に対するリンドリカルレンズ46a~46hのレンズ方向をそれぞれ0°,90°,135°,45°,60°,120,150°,15°とした。
図6は、表示灯1から1m先の照度分布図である。
図6から理解されるように、表示灯1から発せられる光は表示灯1を中心に放射状に拡がっている。
【0028】
以上、本発明の実施形態に係る表示灯について添付の図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形、修正が可能である。
【0029】
例えば、上述の実施形態では、光源ユニット5における各LED列は4個のLED82を備えるが、各LED列は少なくとも2個のLED82を備えれば良く、各反射部92はこれに対応して少なくとも2つの反射面93を備え、また各第1側面41には少なくとも2組以上のレンズ部組45を設ければよい。即ち、各LED列が2個,3個又は5個以上のLED82を備える場合には、LED82の個数に対応させて、各反射部92は2つ,3つ又は5つ以上の反射面93を備えるものとし、ハウジング4の各第1側面41には2組,3組又は5組以上のレンズ部組45を設ければよい。
【0030】
ここで、光源ユニット5における各LED列が2個のLED82を備え、第1側面41に2組のレンズ部組45を設ける場合、一方のレンズ部組45におけるシリンドリカルレンズのレンズ方向は0°と90°の組み合わせとし、他方のレンズ部組45におけるシリンドリカルレンズのレンズ方向は135°と45°の組み合わせとするのが好ましい。ただし、本発明は係る構成に限定されない。
【0031】
レンズ部組45の配列順序は
図1に示すものに限定されない。また、レンズ部組45の配列順序は前側と後側(前側の第1側壁41と後側の第1側壁41)で同一である必要はなく、異なる配列順序であっても良い。レンズ部組45の組合せや個数も前側と後側で同一である必要はなく、前側と後側で異なっても良い。
【0032】
上記実施形態の表示灯1では、投光本体3の前後方向D2両側へ向けて光を投光するが、前方へのみ投光するように構成してもよい。この場合には、前側の第1側壁41にのみレンズ部44を設けて後側の第1側壁41におけるレンズ部44は省略し、これに対応して後側のLED列及び反射部92を省略すれば良い。
【0033】
上記実施形態では、第1側壁41にレンズ部44を設け、第1側壁41に投光部としての機能を持たせたが、第1側壁41と投光部とを別個に設けることもできる。
【符号の説明】
【0034】
1 表示灯
2 把持部
3 投光本体
4 ハウジング
8 LED基板
9 反射部材
41 第1側壁(投光部)
82 LED
93 (93A~93B)反射面
44(44A~44H) レンズ部
45(45A~45D) レンズ部組
46(46a~46h) シリンドリカルレンズ