(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025091919
(43)【公開日】2025-06-19
(54)【発明の名称】ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20250612BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20250612BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207473
(22)【出願日】2023-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 雄大
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172AB04
3E172AB05
3E172BA01
3E172BD03
3E172EA22
3E172EA23
3E172EA24
3E172EA35
3E172EA48
3E172JA08
(57)【要約】
【課題】望まない分離継手の分離を抑制することができるガス供給装置を提供する。
【解決手段】水素ガス充填装置1は、ガス供給管路5およびホース6と、ノズル7と、緊急時にホース6とガス供給管路5とを分離させる分離継手31と、を備えている。分離継手31は、ノズル側継手31Aと、反ノズル側継手31Bと、シェアピン31Cと、を有している。分離継手31は、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの間に所定の力が加わると、シェアピン31Cが破断することにより、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとに分離する。水素ガス充填装置1は、シェアピン31Cとは別に、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの接続状態を維持する離脱規制装置41を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクにガスを供給するガス供給経路と、
前記ガス供給経路の一端側に設けられ、前記タンクに接続されるノズルと、
前記ガス供給経路の途中に設けられ、緊急時に前記ガス供給経路を前記ノズル側となる一側と前記ノズルとは反対側となる他側とに分離させる分離継手と、を備え、
前記分離継手は、
前記ガス供給経路の前記一側に設けられるノズル側継手と、
前記ガス供給経路の前記他側に設けられる反ノズル側継手と、
前記ノズル側継手と前記反ノズル側継手との間に所定の力が加わると、前記ノズル側継手と前記反ノズル側継手との接続を解除する接続手段と、を有するガス供給装置において、
前記接続手段とは別に、前記ノズル側継手と前記反ノズル側継手との接続状態を維持する接続維持手段をさらに備える、ことを特徴とするガス供給装置。
【請求項2】
前記接続維持手段は、
前記反ノズル側継手に接続された前記ノズル側継手に当接することにより、前記ノズル側継手が前記反ノズル側継手から分離する方向に移動することを規制する規制位置に回動可能な支持部を備える、ことを特徴とする請求項1に記載のガス供給装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記ノズル側継手と非当接になることにより、前記接続維持手段による前記ノズル側継手の移動の規制を解除する解除位置に回動可能である、ことを特徴とする請求項2に記載のガス供給装置。
【請求項4】
前記ガス供給経路に設けられた遮断弁と、
前記遮断弁の開閉を行うことによりガスの供給の制御を行う制御部と、
前記接続維持手段の前記支持部が前記規制位置にあるか否かを検出する検出手段と、をさらに備え、
前記制御部は、前記検出手段により前記支持部が前記規制位置にあると検出された場合に、ガスの供給を禁止する、ことを特徴とする請求項2に記載のガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば車両(自動車)のタンク(燃料タンク、被充填タンク)に水素ガス等のガス(燃料ガス)を供給(充填)するガス供給装置(燃料ガス供給装置、燃料ガス充填装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ホース(充填ホース)の端部に設けられたノズル(充填ノズル)を通じて車両のタンク(被充填タンク)にガス(燃料ガス)を供給(充填)するガス供給装置(燃料ガス充填装置)が開示されている。このガス供給装置は、ホースの途中に分離継手(緊急離脱カップリング)が設けられている。このため、例えば、車両のタンクにノズルが接続されたまま車両が誤発進したときに、分離継手が分離することによりホースを分離させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス供給装置は、例えば、製造工場で組み立てられた後、トラックにて任意の場所まで搬送(出荷)され、搬送先(出荷先)に設置(固定)される。この場合、トラックで移動しているときに、トラックの走行振動による機器の緩み、道路の段差による衝撃等に伴って、ガス供給装置の分離継手が分離してしまう可能性がある。このとき、分離した継手がトラックの荷台の床面に衝突する等により、継手が損傷する可能性がある。また、分離した継手がトラックの荷台の他の機器に衝突し、当該他の機器を損傷させてしまう可能性もある。また、分離した分離継手は、再組み立てが必要になる。
【0005】
また、例えば、ガス供給装置をトラックに載せた状態で任意の場所まで移動し、移動先にて車両へ充填を行い、再び他の場所に移動する移動式水素ステーションサービスが提供されている。この場合も、トラックで移動しているときに、トラックの走行振動による機器の緩み、道路の段差による衝撃等に伴って、ガス供給装置の分離継手が分離してしまう可能性がある。また、移動式のガス供給装置であるか設置式(固定式)のガス供給装置であるかにかかわらず、ガス供給装置のメンテナンスを行っているとき等にホースに大きな力が加わると、例えば、ホースの無理な引き回し、ホースの踏み付け等に伴って、ホースが過剰に引っ張られると、分離継手が分離してしまう可能性もある。
【0006】
本発明の目的の一つは、望まない分離継手の分離を抑制することができるガス供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、好ましくは、タンクにガスを供給するガス供給経路と、前記ガス供給経路の一端側に設けられ、前記タンクに接続されるノズルと、前記ガス供給経路の途中に設けられ、緊急時に前記ガス供給経路を前記ノズル側となる一側と前記ノズルとは反対側となる他側とに分離させる分離継手と、を備え、前記分離継手は、前記ガス供給経路の前記一側に設けられるノズル側継手と、前記ガス供給経路の前記他側に設けられる反ノズル側継手と、前記ノズル側継手と前記反ノズル側継手との間に所定の力が加わると、前記ノズル側継手と前記反ノズル側継手との接続を解除する接続手段と、を有するガス供給装置において、前記接続手段とは別に、前記ノズル側継手と前記反ノズル側継手との接続状態を維持する接続維持手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、望まない分離継手の分離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態によるガス供給装置を模式的に示す構成図である。
【
図2】ガス供給経路、分離継手、接続維持手段等を示す側面図である。
【
図3】解除状態の接続維持手段を示す
図2と同様位置の側面図である。
【
図4】ガス供給経路、分離継手、接続維持手段等を示す斜視図である。
【
図5】解除状態の接続維持手段を示す
図4と同様位置の斜視図である。
【
図6】(A)分離前の分離継手と(B)分離した状態の分離継手とを示す側面図である。
【
図7】
図1中の制御装置による処理を示す流れ図である。
【
図8】変形例によるガス供給装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態および変形例によるガス供給装置として、車両(自動車)のタンク(燃料タンク)にガス(水素ガス)を供給(充填)するガス供給装置(水素ガス充填装置)を例に挙げ、添付図面に従って説明する。なお、
図7に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。
【0011】
図1ないし
図7は、実施形態を示している。
図1において、水素ガス充填装置1は、例えば燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)等の車両51の燃料タンク52(以下、タンク52という)に圧縮状態の水素ガス(ガス)を充填(供給)するガス充填装置(ガス供給装置)である。車両用の燃料ガス充填装置(燃料ガス供給装置)である水素ガス充填装置1は、例えば、水素ガス供給ステーション(水素ステーション)と呼ばれる設備(燃料供給所)に設置されている。水素ガス充填装置1は、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵するガス貯蔵部(貯蔵タンク)としてのガス蓄圧器2と、ガス蓄圧器2の水素ガスを車両51のタンク52に充填する充填機構としての水素ディスペンサ3(以下、ディスペンサ3という)と、ガス蓄圧器2からディスペンサ3の筐体4内にわたって延びるガス供給管路5と、を含んで構成されている。
【0012】
ガス蓄圧器2は、高圧に圧縮された水素ガス(燃料ガス)を貯蔵する水素ガス供給源(ガス供給源)である。ガス蓄圧器2は、ガス供給管路5の上流側に接続されている。ガス供給管路5は、ガス蓄圧器2からディスペンサ3に向けて延びると共に、ディスペンサ3の筐体4内に配設されている。ガス供給管路5は、ディスペンサ3のホース6およびノズル7を介して、車両51のタンク52に接続される。ガス供給管路5およびホース6は、車両51のタンク52に燃料ガスである水素ガスを供給するガス供給経路を構成している。
【0013】
ディスペンサ3は、筐体4、ホース6、ノズル7、ノズル掛け8、流量調整弁13、遮断弁14、熱交換器16、流量計20、圧力センサ21、温度センサ22、充填開始スイッチ23、充填停止スイッチ24、制御装置25等を備えている。筐体4は、ディスペンサ3の外形をなす箱体を構成している。筐体4は、例えば上下方向に長尺な直方体状(ボックス状)に形成されている。筐体4内には、ガス供給管路5、流量調整弁13、遮断弁14、熱交換器16、圧力センサ21、温度センサ22、制御装置25等が収容されている。筐体4のうち、水素ガスの充填作業を行う作業者または顧客と対面する前面側には、充填量等の報知すべき情報を表示する表示器26が設けられている。
【0014】
筐体4の側面側には、ノズル7が取り外し可能に掛止めされるノズル掛け8が設けられている。ノズル掛け8は、ノズル7を保持する保持部に相当する。ノズル7は、水素ガスの非充填時(即ち、充填作業の待機時間)にノズル掛け8に掛止めされる。換言すれば、ノズル掛け8は、車両51のタンク52に水素ガスを充填するとき以外、ノズル7を保持している。車両51のタンク52に水素ガスを充填するときは、充填作業の作業者(水素ステーションの係員、セルフの作業者等)により、ノズル7がノズル掛け8から取り外される。
【0015】
図1に示すように、ガス供給管路5は、筐体4内に配設され、加圧状態の水素ガスをガス蓄圧器2からホース6側に向けて供給する。ガス供給管路5は、ガス蓄圧器2側が上流側となり、ホース6側が下流側となっている。ガス供給管路5の下流側の端部には、筐体4の外部へと延びるガス供給接続路としてのホース6が接続されている。
【0016】
充填ホースであるホース6は、可撓性を有している。ホース6は、例えば、耐圧ホースが用いられている。ホース6の先端には、タンク52の充填口52Aに連結されるノズル7が設けられている。ホース6は、ガス供給管路5と共に、ガス供給経路(ガス充填経路)を構成している。ガス供給経路(ガス充填経路)は、ガス(水素ガス)を燃料として走行する車両51(タンク52)にガス(水素ガス)を供給(充填)するための経路(管路)である。
【0017】
ホース6は、基端側がガス供給管路5の下流端に接続されている。この場合、ガス供給管路5の下流側の端部とホース6の上流側の端部との間には、緊急離脱カップリングまたは離脱カップリングとも呼ばれる分離継手31が設けられている。分離継手31は、例えば、ホース6とガス供給管路5とを接続している。分離継手31は、緊急時に分離する安全装置である。分離継手31は、水素ガスの充填中または充填終了後に、ノズル7が車両51(タンク52)に接続されたまま車両51が誤発進したときに分離する。即ち、分離継手31は、ホース6が強い力で引っ張られることにより分離する。分離継手31は、分離したときにガス供給管路5およびホース6から水素ガスが放出されることを阻止する弁体(遮断弁)が内部に設けられている。
【0018】
充填ノズルであるノズル7は、ホース6の先端側に気密状態で接続されている。ノズル7は、所謂充填カップリングを構成している。ノズル7は、ホース6によって筐体4のガス供給管路5と接続されている。ノズル7には、開閉弁(図示せず)が内蔵されている。開閉弁は、水素ガスの流通を許可する「開位置」と水素ガスの流通を遮断する「閉位置」とに切換えられる。なお、ノズル7には、開閉弁に代えて、または、開閉弁と共に、逆止弁を設けてもよい。逆止弁は、ノズル7からタンク52への水素ガスの流通を許容し、タンク52からノズル7への水素ガスの流通を阻止する。
【0019】
ノズル7の先端側は、接続カプラ7Aとなっている。接続カプラ7Aは、タンク52の接続口となる充填口52Aに着脱可能に接続される。即ち、ノズル7の接続カプラ7Aは、ノズル7内の管路(図示せず)を通じて車両51のタンク52に水素ガスを供給するときに、タンク52の充填口52Aに気密状態で着脱可能に接続される。また、ノズル7は、タンク52の充填口52Aに対して係脱可能にロックされるロック機構(図示せず)を備えている。これにより、ノズル7は、水素ガスの充填時に充填口52Aから不用意に外れることを抑制できる。
【0020】
ガス蓄圧器2内の高圧な水素ガスは、ノズル7がタンク52の充填口52Aに対してロック機構によりロックされた状態で、ガス供給管路5、ホース6およびノズル7を通じて車両51のタンク52に充填される。即ち、水素ガス充填装置1は、ノズル7を備えており、このノズル7を用いて車両51のタンク52へ水素ガスを充填する。
【0021】
図1に示すように、ディスペンサ3には、それぞれガス供給管路5の途中に位置して、入口弁12と、制御弁としての流量調整弁13と、弁装置である遮断弁14と、が設けられている。入口弁12は、例えば手動操作により開弁、閉弁される。流量調整弁13は、入口弁12の下流側に配置され、制御装置25によって開弁、閉弁されることにより、ガス供給管路5を流れる燃料の流量を調整可能に制御する。遮断弁14は、流量調整弁13よりも下流側に配置されている。なお、ガス供給管路5の上流側から下流側に向けて設けられている流量計20、流量調整弁13、遮断弁14の配置(取り付けの順番)は、
図1中に示した順番に限定されない。
【0022】
入口弁12は、筐体4内に位置してガス供給管路5の途中に設けられている。なお、入口弁12は、必要に応じて取り付けられるものであり、不要であればこれを省略してもよい。流量調整弁13、遮断弁14および脱圧弁19は、ガス供給管路5を流れる水素ガスの流れ(例えば、水素ガスの流量、圧力)を制御する制御機器を構成している。流量計20、圧力センサ21および温度センサ22は、ガス供給管路5を流れる水素ガスの状況(即ち、流量、圧力、温度)を計測する計測機器を構成している。
【0023】
筐体4内には、ガス供給管路5の途中部位(例えば、流量計20と遮断弁14との間)に位置して流量調整弁13が設けられている。流量調整弁13は、例えば電磁式の弁装置であり、制御装置25からの信号に基づいて開弁制御される。この場合、流量調整弁13は、制御装置25の制御プログラムに基づく指令により任意の弁開度に制御され、ガス供給管路5内を流れる水素ガスの流量、水素ガス圧を可変に制御する。即ち、流量調整弁13は、制御装置25からの制御信号によって弁開度が制御されることにより、必要な開度に調整される。
【0024】
遮断弁14は、ガス供給管路5の途中部位(例えば、熱交換器16の下流側)に設けられている。遮断弁14は、空圧作動式の弁装置であり、例えば圧縮空気(エア)の供給で開弁する。即ち、遮断弁14は、駆動ガス供給路としてのエア供給管路9を介して圧縮エア、計装エア、駆動ガスとも呼ばれる圧縮空気(圧縮窒素ガス等の空気以外のガスも含む)が供給されることにより開弁する。このために、遮断弁14には、圧縮空気を供給させるエア供給管路9が接続されている。遮断弁14は、所定圧力以上の圧縮空気が供給されないと閉弁状態を維持するノーマルクローズ弁である。遮断弁14に供給される圧縮空気は、エア供給管路9の途中に設けられた電磁弁10により制御される。
【0025】
電磁弁10は、例えば、常時は閉弁位置にあるノーマルクローズ式電磁弁であり、制御装置25に接続されている。電磁弁10は、制御装置25から制御電流が供給されることにより開弁する。遮断弁14は、制御装置25の制御電流によって開閉が制御される電磁弁10を通じて圧縮空気が供給されることにより開弁する。このとき、遮断弁14は、供給される圧縮空気が所定圧力である(または所定圧力よりも高い)場合にこの圧縮空気によって開弁維持される。
【0026】
このように、遮断弁14は、制御装置25からの制御信号に基づいて開弁、閉弁されることにより、ガス供給管路5内で水素ガス(燃料ガス、充填ガス)の流通を許容または遮断する。この場合、制御装置25は、ノズル7を介して車両51のタンク52に水素ガスを充填するとき、または、水素ガスの充填を停止(終了)するときに、流量調整弁13と遮断弁14との開閉弁制御を行う。
【0027】
冷却器15は、ガス供給管路5内を流れる水素ガスを冷却するための冷却装置である。冷却器15は、車両51のタンク52に充填される水素ガスの温度上昇を抑えるため、ガス供給管路5の途中位置で水素ガスを冷却する。即ち、冷却器15は、ガス供給管路5を介して車両51(タンク52)に供給される水素ガスを冷却する。冷却器15は、熱交換器16と、コンプレッサ、ポンプ等の駆動機構を備えたチラーユニット17と、を含んで構成されている。熱交換器16は、ガス供給管路5の途中部位(例えば、流量調整弁13と遮断弁14との間)に設けられている。チラーユニット17は、熱交換器16に冷媒管路15A,15Bを介して接続されている。
【0028】
冷却器15は、チラーユニット17から熱交換器16側に向けて冷媒(例えば、エチレングリコール等を含んだ液体)を供給する供給側の冷媒管路15Aと、熱交換器16からチラーユニット17側に向けて熱交換後の冷媒を戻す戻り側の冷媒管路15Bとを備えている。チラーユニット17は、冷媒管路15A,15Bを介して熱交換器16との間に冷媒を循環させる。これにより、冷却器15の熱交換器16は、ガス供給管路5内を流れる水素ガスと冷媒との間で熱交換を行い、ホース6に向けて供給される水素ガスの温度を規定温度(例えば、-33~-40℃)まで低下させる。
【0029】
ガス供給管路5の遮断弁14よりも下流側には、例えばホース6側からガス圧力を脱圧するための脱圧管路18が分岐して設けられている。脱圧管路18の途中には、脱圧弁19が設けられている。脱圧弁19は、ホース6(ノズル7)を用いた水素ガスの充填作業が完了し、遮断弁14が閉弁されたときに、制御装置25からの信号に基づいて開弁制御される。
【0030】
即ち、ノズル7の接続カプラ7Aをタンク52の充填口52Aから取り外す場合には、ホース6内の圧力を大気圧レベルまで減圧する必要がある。このため、ガス充填作業の完了時には、脱圧弁19を一時的に開弁して脱圧管路18の先端側を大気に開放させる。これにより、ホース6側の水素ガスは、外部に放出されてホース6内の圧力が大気圧レベルまで減圧される。この結果、ノズル7の接続カプラ7Aは、タンク52の充填口52Aから取り外し可能となる。
【0031】
脱圧弁19は、空圧作動式の弁装置であり、例えば圧縮空気(エア)の供給が断たれることにより開弁する。即ち、脱圧弁19は、エア供給管路9を介して圧縮空気が供給されることにより閉弁する。このために、脱圧弁19にも、圧縮空気を供給させるエア供給管路9が接続されている。脱圧弁19は、例えば、所定圧力以上の圧縮空気が供給されると閉弁するノーマルオープン弁である。脱圧弁19に供給される圧縮空気は、エア供給管路9の途中に設けられた電磁弁11により制御される。
【0032】
電磁弁11は、例えば、常時は開弁位置にあるノーマルオープン式電磁弁である。電磁弁11は、制御装置25に接続されている。電磁弁11は、制御装置25から制御電流が供給されることにより閉弁する。脱圧弁19は、制御装置25の制御電流によって開閉が制御される電磁弁11を通じて圧縮空気の供給が停止されることにより開弁する。即ち、脱圧弁19は、供給される圧縮空気が所定圧力よりも低くなると、開弁維持される。このように、脱圧弁19は、制御装置25からの制御信号に基づいて開閉されることにより、脱圧管路18内で水素ガス(燃料ガス、充填ガス)の流通を許容または遮断する。この場合、制御装置25は、水素ガスの充填作業が完了したときに、脱圧弁19の開閉弁制御を行う。
【0033】
筐体4内には、ガス供給管路5の途中部位(例えば、流量調整弁13よりも上流側)に位置して被測流体の質量流量を計測するコリオリ式の流量計20が設けられている。流量計20は、例えば入口弁12と流量調整弁13との間でガス供給管路5内を流れる水素ガスの流量(質量流量)を計測する。流量計20は、計測結果(検出信号)を制御装置25へと出力する。制御装置25は、車両51のタンク52への水素ガスの充填量を演算し、水素ガス燃料の払出し量を表示器26等で表示する。これにより、例えば顧客等に表示内容を報知する。
【0034】
圧力センサ21は、遮断弁14よりも下流側(即ち、ノズル7側)に位置してガス供給管路5に設けられている。圧力センサ21は、ガス蓄圧器2から供給される水素ガスの圧力(即ち、管路途中の圧力)を検知する。圧力センサ21は、ノズル7の近傍でガス供給管路5内の圧力を測定する。圧力センサ21は、測定した圧力に応じた検出信号を制御装置25へと出力する。
【0035】
温度センサ22は、遮断弁14と圧力センサ21との間に位置してガス供給管路5の途中に設けられている。温度センサ22は、ガス供給管路5内を流れる水素ガスの温度を検出する。温度センサ22は、検出結果(検出信号)を制御装置25へと出力する。なお、温度センサ22と圧力センサ21との配置関係は、
図1に示す配置に限るものではなく、例えば互いに逆となる配置にしてもよい。
【0036】
制御装置25は、流量調整弁13、遮断弁14(電磁弁10)、脱圧弁19(電磁弁11)、表示器26等を制御するコントローラ(コントロールユニット)を構成している。制御装置25は、流量調整弁13および遮断弁14(電磁弁10)の制御を行うことにより充填対象となるタンク52への燃料供給を制御する。制御装置25は、制御回路であり、例えば、CPU(演算装置)、メモリ25A(記憶装置)、タイマ等を有するマイクロコンピュータにより構成されている。メモリ25Aには、例えば、後述の
図7に示す処理フローを実行するための処理プログラムが記憶(格納)されている。
【0037】
図1に示すように、制御装置25の入力側には、流量計20、圧力センサ21、温度センサ22、湿度センサ(図示せず)、充填開始スイッチ23、充填停止スイッチ24、ノズル検出器27等が接続されている。また、後述するように、制御装置25の入力側には、離脱規制装置41の状態を検出するリミットスイッチ42が接続されている。一方、制御装置25の出力側は、流量調整弁13、遮断弁14(電磁弁10)、脱圧弁19(電磁弁11)、表示器26等と接続されている。
【0038】
表示器26は、筐体4の前面側に設けられている。表示器26は、水素ガスの充填作業を行う作業者が視認し易い高さ位置に配置されている。表示器26は、水素ガスの充填作業に必要な情報表示等を行う。また、表示器26には、後述の分離継手31が分離した場合に、その警告(エラー)が表示される。また、筐体4の前面側には、表示器26の他に充填開始スイッチ23および充填停止スイッチ24等の操作部が設けられている。また、筐体4の前面側で表示器26に隣接する位置には、販売情報の表示および管理を行うPOS端末(図示せず)が設けられている。
【0039】
充填開始スイッチ23および充填停止スイッチ24は、例えば燃料供給所(水素ステーション)の作業者(係員)またはセルフの作業者が手動操作可能なスイッチである。充填開始スイッチ23は、水素ガスの充填を開始するときに操作される。充填停止スイッチ24は、水素ガスの充填中にガスの充填を停止するときに操作される。充填開始スイッチ23と充填停止スイッチ24は、操作状態に応じた信号を制御装置25にそれぞれ出力する。これにより、制御装置25は、これらの信号に応じて遮断弁14を開弁または閉弁させる。
【0040】
図1に示すように、ノズル検出器27は、ノズル掛け8に設けられている。ノズル検出器27は、ノズル7が掛止めされたか否かを検出する。ノズル検出器27は、スイッチ(ノズルスイッチ)、例えば2位置切換型のスイッチにより構成されており、制御装置25に接続されている。ノズル検出器27は、例えば、ノズル7をノズル掛け8に掛止めすると、ノズル7によって押動され、オン(ON:通電)状態に切換わる。ノズル検出器27は、ノズル7がノズル掛け8から取り出される(または取り外される)と、オフ(OFF:非通電)状態に切換わる。
【0041】
ノズル検出器27は、ノズル7がノズル掛け8に掛止めされたか否かに対応する検出信号(ON信号またはOFF信号)を、制御装置25に出力する。なお、オン(ON:通電)とオフ(OFF:非通電)との関係は、逆にしてもよい。即ち、ノズル7がノズル掛け8から取り出されたときにオフ(OFF:非通電)からオン(ON:通電)になるようにしてもよい。また、ノズル検出器27は、筐体4側のノズル掛け8に設けるものに限らず、ノズル7側に設けてもよい。いずれの場合も、水素ガスの非充填時(即ち、充填作業の待機時間)は、ディスペンサ3のノズル掛け8にノズル7が保持される。即ち、車両51のタンク52に水素ガスを充填する充填作業が終了すると、ノズル7は、ノズル掛け8に戻され、収容状態に保持される。
【0042】
水素ガスを燃料として走行駆動される車両51は、例えば
図1に示すような4輪自動車(乗用車)により構成されている。車両51は、例えば燃料電池と電動モータとを含んで構成される駆動装置(図示せず)、
図1中に点線で示すタンク52等を備えている。タンク52は、水素ガスが充填される耐圧構造をもった容器として構成されている。タンク52は、例えば車両51の後部側に搭載されている。なお、タンク52は、車両51の後部側に限らず、前部側または中央部側に設ける構成としてもよい。
【0043】
タンク52には、ノズル7の接続カプラ7Aが着脱可能に取り付けられる充填口52A(レセプタクル)が設けられている。車両51のタンク52内には、ノズル7が充填口52Aに気密に連結(接続)された状態で水素ガスの充填が行われる。このとき、ノズル7は、ロック機構により充填口52Aに対して不用意に外れることがないようにロックされる。
【0044】
ところで、分離継手31は、例えばノズル7が車両51のタンク52に接続されたまま車両51が誤発進したときに、ホース6を介して引っ張り荷重を受けることにより分離する。この場合、
図6に示すように、分離継手31は、車両51側となるノズル側継手31Aとディスペンサ3側となる反ノズル側継手31Bとに分離される。このとき、分離継手31は、それぞれの継手31A,31Bの内部に設けられた弁体により、外部への水素ガスの放出が防止される。
【0045】
分離継手31は、例えば、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとを、シェアピン31C(
図2ないし
図5参照)等の所定の力が加わると破断する破断部材により接続した構成とすることができる。また、分離継手31は、例えば、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとを、所定の嵌合強度で接続した構成とすることができる。また、分離継手31は、例えば、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとを、所定の接着強度で接続した構成とすることができる。また、分離継手31は、例えば、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの間に所定の力が加わると、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの相対移動を可能とするボールロックにより接続された構成とすることができる。
【0046】
即ち、分離継手31のノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bは、所定の力が加わるとノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの分離(接続の解除)が可能な接続手段(破断部材、嵌合、接着、ボールロック等)により接続されている。なお、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bは、破断部材、嵌合、接着、ボールロックに限らず、所定の力が加わるとノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの分離が可能な各種の接続手段で接続することができる。また、所定の力は、例えば、ノズル7が車両51(タンク52)に接続されたまま車両51が誤発進したときにノズル側継手31Aが反ノズル側継手31Bから分離できる値として設定することができる。
【0047】
ここで、ディスペンサ3は、例えば、製造工場で組み立てられた後、トラックにて任意の場所まで搬送(出荷)され、搬送先(出荷先)に設置(固定)される。この場合、トラックで移動しているときに、トラックの走行振動による機器の緩み、道路の段差による衝撃等に伴って、ディスペンサ3の分離継手31が分離してしまう可能性がある。即ち、トラックの走行振動による機器の緩み、道路の段差による衝撃等に伴って、接続手段による接続が解除され(例えば、シェアピン31Cが破断し)、ノズル側継手31Aが反ノズル側継手31Bから分離(離脱)してしまう可能性がある。このとき、分離したノズル側継手31Aがトラックの荷台の床面に衝突する等により、ノズル側継手31Aが損傷する可能性がある。また、分離したノズル側継手31Aがトラックの荷台の他の機器に衝突し、当該他の機器を損傷させてしまう可能性もある。また、分離した分離継手31は、再組み立てが必要になる。
【0048】
また、例えば、後述の
図8(変形例)は、ディスペンサ3をトラック61に載せた状態で任意の場所まで移動し、移動先にて車両51へ充填を行い、再び他の場所に移動する移動式水素ステーションサービスを示している。この場合も、トラック61で移動しているときに、トラック61の走行振動による機器の緩み、道路の段差による衝撃等に伴って、ディスペンサ3の分離継手31が分離してしまう可能性がある。また、移動式のディスペンサ3(
図8)であるか設置式(固定式)のディスペンサ3(
図1)であるかにかかわらず、ディスペンサ3のメンテナンスを行っているとき等にホース6に大きな力が加わると、例えば、ホース6の無理な引き回し、ホース6の踏み付け等に伴って、ホース6が過剰に引っ張られると、分離継手31が分離してしまう可能性もある。一方、分離継手31は、車両51の誤発進時に分離が妨げられることは、好ましくない。
【0049】
そこで、実施形態では、分離継手31とは別に、分離継手31のノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの接続状態を維持する接続維持手段としての離脱規制装置41を備えている。これにより、移動中、メンテナンス中等に分離継手31に振動、衝撃、力が加わっても、分離継手31が分離すること(ノズル側継手31Aが反ノズル側継手31Bから抜き出てしまうこと)を抑制できる。また、実施形態では、離脱規制装置41のON/OFF、即ち、離脱規制装置41が分離継手31の分離を規制する制限状態(制限位置)であるか否か検出する検出手段としてのリミットスイッチ42を備えている。これにより、離脱規制装置41がON(制限位置)の状態で水素ガスの供給(充填)が行われてしまうこと、即ち、離脱規制装置41の解除忘れを抑制することができる。以下、これらの点について、詳しく説明する。
【0050】
まず、
図1に示すように、ガス供給装置としての水素ガス充填装置1は、ガス供給管路5およびホース6と、充填ノズルとも呼ばれるノズル7と、分離継手31と、を備えている。ガス供給管路5およびホース6は、充填対象(供給対象)となるタンク52にガス(燃料ガス)としての水素ガスを供給するガス供給経路である。ノズル7は、ガス供給経路の一端側となるホース6の先端側に設けられている。ノズル7は、タンク52に接続される。分離継手31は、ガス供給経路の途中、より具体的には、ガス供給管路5とホース6との間に設けられている。なお、実施形態では、分離継手31をガス供給管路5とホース6との間に設けているが、例えば、分離継手をホースの途中に設けてもよいし、ガス供給管路の途中に設けてもよい。即ち、分離継手は、ガス供給経路の途中(例えば、ガス供給管路とホースとの間、ホースの途中、または、ガス供給管路の途中)に設けることができる。
【0051】
分離継手31は、緊急時に、ガス供給経路を「ノズル7側となる一側」と「ノズル7とは反対側となる他側」とに分離させる。即ち、分離継手31は、ガス供給経路を、ノズル7側となる「ホース6側」と、ノズル7とは反対側となる「ガス供給管路5側」とに分離させる。このために、分離継手31は、ノズル側継手31Aと、反ノズル側継手31Bと、接続手段としてのシェアピン31Cと、を有している。ノズル側継手31Aは、ガス供給経路の一側(ノズル側)となるホース6の基端側に設けられている。即ち、ノズル側継手31Aは、ホース6の基端側に接続(固定)されている。これにより、ガス供給経路の一側でノズル側継手31Aとノズル7との間は、可撓性を有するホース6により接続されている。
【0052】
一方、反ノズル側継手31Bは、ガス供給経路の他側(ノズル7とは反対側)、即ち、ガス供給管路5の下流端に設けられている。即ち、反ノズル側継手31Bは、ガス供給管路5の下流端に接続されている。反ノズル側継手31Bは、ディスペンサ3側に固定されており、分離継手31が分離したときにも、ディスペンサ3側に保持される。即ち、
図2ないし
図5に示すように、分離継手31のノズル側継手31Aは、分離継手固定ブラケット35を介してディスペンサ3の支柱36に固定されている。
【0053】
シェアピン31Cは、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの間に設けられている。シェアピン31Cは、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとを連結している。シェアピン31Cは、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの間に所定の力が加わると、破断することにより、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの接続(連結)を解除する。即ち、分離継手31は、通常時にはノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとが接続されており、緊急時にはノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとが分離する。ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bは、これらの間に所定の力(引っ張り荷重)が加わると分離する。このために、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bは、例えば、所定の力が加わると破断するシェアピン31Cによって接続されている。
【0054】
なお、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの接続は、シェアピン31Cによるピン構造に限らず、例えば、所定以上の力が加わると接着面が離れる接着剤を用いてもよいし、所定以上の力が加わるとノズル側継手と反ノズル側継手とが離れるボールロック等の機構を用いてもよい。即ち、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとを接続する接続手段は、所定の力(引っ張り荷重)が加わると分離する(接続が解除される)各種の構成を採用することができる。いずれの場合も、ノズル側継手31Aの内部には、分離したときにホース6内の水素ガスが外部に放出されることを阻止する弁体(遮断弁)が設けられている。反ノズル側継手31Bの内部には、分離したときにガス供給管路5から水素ガスが外部に放出されることを阻止する弁体(遮断弁)が設けられている。
【0055】
また、
図1に示すように、分離継手31は、エア供給管路9と接続されている。より具体的には、反ノズル側継手31Bは、エア供給管路9と接続されている。そして、反ノズル側継手31Bに設けられたエア供給管路9の下流端の開口は、反ノズル側継手31Bとノズル側継手31Aとが接続された状態で、ノズル側継手31Aによって塞がれる。分離継手31が分離すると、即ち、ノズル側継手31Aが反ノズル側継手31Bから離れると、エア供給管路9の下流端の開口が露出し、この開口を通じてエア供給管路9の圧縮空気が外部に流出する。
【0056】
これにより、分離継手31が分離したときに、エア供給管路9の電磁弁10,11の開閉にかかわらず、遮断弁14を閉弁し、脱圧弁19を開弁できるようにしている。即ち、水素ガスの充填中は、制御装置25によって電磁弁10と電磁弁11とが開弁することにより、遮断弁14が開弁し、かつ、脱圧弁19が閉弁している。この場合でも、分離継手31が分離すると、エア供給管路9内の圧縮空気が遮断弁14および脱圧弁19に供給されなくなり、遮断弁14を閉弁し、脱圧弁19を開弁できる。
【0057】
このために、
図1に示すように、水素ガス充填装置1は、コンプレッサ28と、圧縮空気供給管路であるエア供給管路9とを備えている。コンプレッサ28は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給源(圧縮エア供給源、計装エア供給源、圧縮ガス供給源)である。エア供給管路9は、コンプレッサ28からの圧縮空気が流通する。コンプレッサ28およびエア供給管路9は、圧縮空気を駆動源として駆動される遮断弁14、脱圧弁19等の制御機器に圧縮空気を供給する。また、エア供給管路9は、分離継手31が分離したときに遮断弁14を閉弁すると共に脱圧弁19を開弁できるように、分離継手31に接続されている。なお、コンプレッサ28により供給される圧縮空気としては、圧縮された空気(エア)の他、窒素ガス等の不燃性のガス(気体)を用いてもよい。
【0058】
コンプレッサ28は、遮断弁14、脱圧弁19等の空圧作動式の弁装置を駆動するための圧縮空気(圧縮エア、計装エア、駆動ガス)を発生させる。コンプレッサ28は、例えば、電動モータ等の駆動源により駆動される圧縮機であり、エア供給管路9を介して圧縮空気を遮断弁14、脱圧弁19、分離継手31等に供給する。エア供給管路9は、筐体4内に配設されている。エア供給管路9は、コンプレッサ28と遮断弁14、脱圧弁19との間を接続している。
【0059】
また、エア供給管路9は、コンプレッサ28と分離継手31との間を接続している。分離継手31が分離すると、ノズル側継手31Aによって塞がれていたエア供給管路9の下流端の開口が露出し、この開口を通じてエア供給管路9の圧縮空気が外部に流出する。これにより、電磁弁10,11が開弁していても、遮断弁14と脱圧弁19とに圧縮空気が供給されなくなり、ノーマルクローズ弁である遮断弁14が閉弁し、かつ、ノーマルオープン弁である脱圧弁19が開弁する。
【0060】
さらに、実施形態では、ディスペンサ3は、分離継手31とは別に、より具体的には、分離継手31のシェアピン31Cとは別に、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの接続状態を維持する接続維持手段としての離脱規制装置41を備えている。離脱規制装置41は、例えば、トグルクランプにより構成されている。離脱規制装置41は、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの接続状態を維持する維持状態(維持位置)と、この維持を解除する解除状態(解除位置)とに切り換えが可能である。即ち、
図2および
図4に示すように、離脱規制装置41は、ノズル側継手31Aが反ノズル側継手31Bから離れる方向に移動するのを規制する規制状態(規制位置)にすることができる。
【0061】
また、
図3および
図5に示すように、離脱規制装置41は、ノズル側継手31Aの移動の規制を解除する非規制状態(非規制位置)にすることができる。離脱規制装置41は、規制状態(維持状態)のときに、仮にシェアピン31Cが破断した場合でも、ノズル側継手31Aが反ノズル側継手31Bから離脱してしまうことを阻止できる。即ち、離脱規制装置41は、規制状態(維持状態)のときに、仮に接続手段による接続が解除されたとしても(例えば、シェアピン31Cが破断したとしても)、ノズル側継手31Aが反ノズル側継手31Bから抜け出てしまうことを阻止できる。
【0062】
図2ないし
図5に示すように、離脱規制装置41は、例えば、締結部41Aと、レバー部41Bと、支持部41Cと、を備えている。締結部41Aは、分離継手31の近傍でディスペンサ3(筐体4)の支柱37(例えば、前述の支柱36とは別の支柱37)に設けられている。締結部41Aは、離脱規制装置41をディスペンサ3(筐体4)に固定するブラケットに相当する。レバー部41Bは、締結部41Aに回動可能に設けられている。レバー部41Bは、離脱規制装置41を規制状態(維持状態)と非規制状態(解除状態)とに切り換える。支持部41Cは、レバー部41Bの操作に伴って回動する。
図2および
図4に示すように、支持部41Cは、離脱規制装置41が規制状態(維持状態)のときに、分離継手31のノズル側継手31Aの下面(底面)と当接する。
【0063】
図3および
図5に示すように、支持部41Cは、離脱規制装置41が非規制状態(解除状態)のときに、分離継手31のノズル側継手31Aの下面(底面)から離間する。支持部41Cは、例えば、
図2ないし
図4に示すように、長方形状の板体により構成された当接板41C1を有している。また、支持部41Cの当接板41C1は、例えば、
図5に示すように、ホース6と干渉しないように切り欠き41C2を設けることにより、ノズル側継手31Aの下面(底面)に広い面積で当接するようにしてもよい。なお、
図1(および後述の
図8)の離脱規制装置41は、支持部41Cがノズル側継手31Aの下面(底面)に当接した状態(規制状態)を簡易的に示している。
【0064】
ここで、レバー部41Bを時計回りに回動させると、例えば、レバー部41Bを
図2および
図4の状態から
図3および
図5の状態に回動させると、このレバー部41Bの回動に応じて、支持部41Cは、反時計回りに回動する。このとき、支持部41Cは、
図2および
図4の状態、即ち、分離継手31のノズル側継手31Aの下面(底面)に当接した状態から、
図3および
図5の状態、即ち、分離継手31のノズル側継手31Aの下面(底面)に対して離間した状態に回動(移動)する。
【0065】
これに対して、レバー部41Bを反時計回りに回動させると、例えば、レバー部41Bを
図3および
図5の状態から
図2および
図4の状態に回動させると、このレバー部41Bの回動に応じて、支持部41Cは、時計回りに回動する。このとき、支持部41Cは、
図3および
図5の状態、即ち、分離継手31のノズル側継手31Aの下面(底面)に対して離間した状態から、
図2および
図4の状態、即ち、分離継手31のノズル側継手31Aの下面(底面)に当接した状態に回動(移動)する。
【0066】
レバー部41Bは、最も高い位置まで反時計方向に回動させると、即ち、
図2および
図4に示すような水平位置まで回動させると、レバー部41Bは、所定の力で固定(保持)された状態となる。これに伴って、支持部41Cも、所定の力で固定(保持)された状態となる。この状態で、支持部41Cの上面は、分離継手31のノズル側継手31Aの下部(底部)と当接する高さ位置となるように設定(調整)されている。なお、支持部41Cの上面と分離継手31のノズル側継手31Aの下部(底部)との当接は、完全に当接する場合だけでなく、ノズル側継手31Aの離脱を抑制できる範囲であれば、隙間を介して対向する場合も含む。
【0067】
このように、離脱規制装置41は、反ノズル側継手31Bに接続されたノズル側継手31Aに当接することにより、ノズル側継手31Aが反ノズル側継手31Bから分離する方向に移動することを規制する規制位置に回動可能な支持部41Cを備えている。即ち、
図2および
図4に示すように、支持部41Cは、ノズル側継手31Aが反ノズル側継手31Bから分離する方向に移動することを規制する規制位置に回動可能である。この状態で、支持部41Cは、所定の力で固定された状態となる。また、支持部41Cは、ノズル側継手31Aと非当接になることにより、離脱規制装置41によるノズル側継手31Aの移動の規制を解除する解除位置に回動可能である。即ち、
図3および
図5に示すように、支持部41Cは、ノズル側継手31Aの移動を規制しない解除位置に回動可能である。
【0068】
なお、離脱規制装置41は、ディスペンサ3の筐体4で覆われる構成としてもよいし、ディスペンサ3の筐体4で覆われない構成(露出する構成)としてもよい。即ち、離脱規制装置41は、筐体4の壁面(カバー)で覆われる構成としてもよい。この場合は、レバー部41Bの操作は、筐体4の壁面(カバー)を取り外して行うことができる。また、筐体4の壁面(カバー)に、レバー部41Bを操作するための開口(操作用開口)を設けてもよい。この開口(操作用開口)は、例えば、開閉扉で開閉可能に塞いでもよいし、開口したままとしてもよい。
【0069】
また、ディスペンサ3は、離脱規制装置41の近傍に、支持部41Cがノズル側継手31Aと当接していること(即ち、ノズル側継手31Aの移動を規制する規制位置であること)を検知する検出手段(検知手段)としてのリミットスイッチ42を備えている。リミットスイッチ42は、ディスペンサ3(筐体4)の支柱37に支持部材43を介して取り付けられている。リミットスイッチ42の支持部材43は、離脱規制装置41の締結部41Aと一体に形成してもよいし、この締結部41Aと別体に形成してもよい。
【0070】
図1に示すように、リミットスイッチ42は、ディスペンサ3の制御装置25に接続されている。リミットスイッチ42は、離脱規制装置41の支持部41Cが規制位置であるか否かに対応する検出信号(ON信号またはOFF信号)を、制御装置25に出力する。リミットスイッチ42は、例えば、支持部41Cがノズル側継手31Aと当接しているときに支持部41Cと接触することによりオン(ON:通電)となる。これに対して、リミットスイッチ42は、支持部41Cがノズル側継手31Aから離れたときに支持部41Cと非接触となることによりオフ(OFF:非通電)となる。制御装置25は、リミットスイッチ42のオン(ON:通電)、オフ(OFF:非通電)に基づいて、離脱規制装置41が規制状態(即ち、支持部41Cが規制位置)であるか否かを判定する。なお、オン(ON:通電)とオフ(OFF:非通電)との関係は、逆にしてもよい。即ち、支持部41Cがノズル側継手31Aに当接したときにオフ(OFF:非通電)になるようにしてもよい。
【0071】
ディスペンサ3は、離脱規制装置41の支持部41Cが規制位置にあるときに、水素ガスの供給を禁止する。このために、ディスペンサ3は、遮断弁14と、制御部としての制御装置25と、検出手段としてのリミットスイッチ42と、を備えている。遮断弁14は、ガス供給管路5に設けられている。遮断弁14は、閉弁することにより、ガス供給管路5による水素ガスの供給を遮断する。制御装置25は、遮断弁14の開閉を行うことによりガスの供給の制御を行う。リミットスイッチ42は、離脱規制装置41の支持部41Cが規制位置にあるか否かを検出する。この上で、制御装置25は、リミットスイッチ42により支持部41Cが規制位置にあると検出された場合に、ガスの供給を禁止する。
【0072】
即ち、制御装置25は、リミットスイッチ42からの信号に基づいて支持部41Cが規制位置にあると判定した場合、遮断弁14を閉にする(開にしない)。また、制御装置25は、支持部41Cが規制位置にあるときに、水素ガスの充填、即ち、充填開始スイッチ23が操作された場合、離脱規制装置41が規制位置にあること(水素ガスの供給を禁止していること)を報知(警告)する。例えば、制御装置25は、表示器26に離脱規制装置41が規制位置にある旨(水素ガスの供給を禁止している旨)を表示する。なお、この報知(警告)は、表示器26の表示に代えて、または、表示器26の表示と共に、音(ブザー、音声)および/または光(警告灯)により行ってもよい。
【0073】
次に、
図7に示す流れ図(フローチャート)について説明する。
図7は、制御装置25で行われる制御処理を示す流れ図である。
図7の処理は、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0074】
図7の制御処理は、例えば、制御装置25への通電により開始される。制御装置25は、S1で、ノズル7がノズル掛け8から外されたか否かを判定する。この判定は、ノズルスイッチ(ノズル検出器27)の信号(通電、非通電)により判定することができる。S1で「NO」、即ち、ノズル7がノズル掛け8から外されていないと判定された場合は、S1の処理を繰り返す。この場合は、充填作業が開始される前の待機状態であり、ノズル7がノズル掛け8から取り外されるのを待機する。一方、S1で「YES」、即ち、ノズル7がノズル掛け8から外されたと判定された場合は、S2に進む。
【0075】
S2では、離脱規制装置41による分離継手31の分離の規制が解除されているか否かを判定する。即ち、離脱規制装置41が解除状態であるか否かを判定する。この判定は、リミットスイッチ42からの信号に基づいて行うことができる。S2で「NO」、即ち、離脱規制装置41が解除状態でない(規制状態である)と判定された場合は、S3に進む。S3では、離脱規制装置41が解除状態でない(規制状態である)旨の報知を行う。例えば、制御装置25は、表示器26にメッセージ、例えば「離脱規制装置の規制を解除して下さい」を表示する。なお、表示器26の表示に代えて、または、表示器26の表示と共に、「離脱規制装置の規制を解除して下さい」を音声で報知してもよい。S3で報知を行ったら、S2に戻り、S2以降の処理を繰り返す。
【0076】
これに対して、S2で「YES」、即ち、離脱規制装置41が解除状態である(規制状態でない)と判定された場合は、S4に進む。このとき、表示器26にメッセージ(「離脱規制装置の規制を解除して下さい」)が表示されていた場合は、その表示を終了する。即ち、S3の報知は終了する。S4では、充填開始スイッチ23が操作されたか否かを判定する。S3で「NO」、即ち、充填開始スイッチ23が操作されていないと判定された場合は、S2に戻り、S2以降の処理を繰り返す。これに対して、S3で「YES」、即ち、充填開始スイッチ23が操作されたと判定された場合は、S5に進む。
【0077】
S5では、遮断弁14(および流量調整弁13)を開弁する。これにより、車両51のタンク52に対する水素ガスの充填(供給)が開始される。S5で、遮断弁14(および流量調整弁13)を開弁したら、S6に進む。S6では、充填制御を行う。例えば、S6では、流量計20、圧力センサ21、温度センサ22の測定結果を監視しつつ、流量調整弁13の開度等を予め設定された制御方式(例えば、定圧上昇制御方式または定流量制御方式)で調整する。これにより、ガス供給管路5内に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御する。
【0078】
S6に続くS7では、充填完了条件を満たしたか否かを判定する。例えば、S7では、水素ガスの充填量が予め設定された目標充填量に達したか否か、または、圧力センサ21により検出した水素ガスの圧力が予め設定された目標充填圧力に達したか否か、を判定する。S7で「NO」、即ち、水素ガスの充填量または圧力が目標充填量または目標充填圧力に達していないと判定された場合は、S6に戻り、充填制御を継続する。これに対して、S7で「YES」、即ち、水素ガスの充填量または圧力が目標充填量または目標充填圧力に達したと判定された場合は、S8に進む。また、充填中に作業者が充填停止スイッチ24を操作した場合も、S8に進む。
【0079】
S8では、遮断弁14(および流量調整弁13)を閉弁する。これにより、車両51のタンク52に対する水素ガスの充填(供給)が終了(停止)する。また、脱圧弁19を開弁し、ノズル7の圧力を大気圧レベルに減圧することにより、ノズル7をタンク52の充填口52Aから取り外し可能にする。S8で、遮断弁14(および流量調整弁13)を閉弁したらリターンする。即ち、リターンを介してスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。
【0080】
なお、
図1ないし
図5に示すように、分離継手31の下側には、ホースガイド38が配置されている。ホースガイド38は、略円筒状の筒体として構成されており、筐体4に固定されている。即ち、ホースガイド38は、ホース6が挿通される筒部38Aと、筒部38Aを筐体4に取り付けるブラケット部38Bと、を有している。ホースガイド38は、ブラケット部38Bを介して筐体4にボルト等の固定部材を用いて固定されている。
【0081】
ホースガイド38内には、ホース6が挿通されている。これにより、ホースガイド38は、分離したノズル側継手31Aが通過する通路を内部に有している。ホースガイド38は、ノズル側継手31Aおよびホース6が分離する方向(反ノズル側継手31Bから離れて行く方向)を規制する。この場合に、ホースガイド38は、分離したノズル側継手31Aの分離方向をホース6が延びる方向に規制する。このために、ホース6の基端側でホース6とノズル側継手31Aとの接続部よりも下側が、ホースガイド38内に挿通されている。
【0082】
これにより、ノズル側継手31Aが反ノズル側継手31Bから分離すると、ノズル側継手31Aは、ホースガイド38内からホース6が抜ける方向となる下側に向けて、ホース6と共にホースガイド38内を通過する。これにより、ノズル側継手31Aは、ホースガイド38によってホース6が延びる方向に進路が規制される。このように、ホースガイド38は、ホース6を案内する機能に加えて、このホース6と同方向にノズル側継手31Aも案内する機能を備えている。
【0083】
実施形態による水素ガス充填装置1は、上述の如き構成を有するもので、次に、水素ガス充填装置1による水素ガスの充填作業について説明する。
【0084】
車両51のタンク52に水素ガスを充填するときに、充填作業を行う作業者は、ノズル7をノズル掛け8から取り外す。そして、
図1中に二点鎖線で示すように、ノズル7をタンク52の充填口52Aに接続し、当該接続部位をロックする。この状態で、充填作業の作業者が充填開始スイッチ23をON操作すると、制御装置25は、流量調整弁13と遮断弁14(電磁弁10)に開弁信号を出力して流量調整弁13と遮断弁14を開弁させる。
【0085】
これにより、ガス蓄圧器2内の水素ガスは、ガス供給管路5、ホース6およびノズル7を通じて車両51のタンク52に充填される。制御装置25は、例えば流量計20、圧力センサ21、温度センサ22の測定結果を監視しつつ、流量調整弁13の開度等を予め設定された制御方式(例えば、定圧上昇制御方式または定流量制御方式)で調整する。これにより、ガス供給管路5内に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御することができる。
【0086】
このとき、制御装置25は、流量計20からの流量パルスを積算して水素ガスの充填量(質量)を演算し、水素ガスの充填量が予め設定された目標充填量に達するか、または圧力センサ21により検出した水素ガスの圧力が予め設定された目標充填圧力に達したか否かを判定する。目標とする充填量(圧力)に達したと判定したときには、制御装置25からの信号により流量調整弁13および遮断弁14(電磁弁10)が閉弁され、タンク52への水素ガスの充填が終了される。なお、作業者が充填停止スイッチ24を操作した場合にも、充填作業は終了される。
【0087】
次に、この状態で制御装置25は充填終了制御処理を実行する。この充填終了制御処理では、制御装置25からの信号により脱圧弁19(電磁弁11)を閉弁状態から開弁するように制御する。そして、脱圧弁19が開弁したときには、脱圧管路18が大気に開放されることにより、ノズル7側のガスが外部に放出されてノズル7の圧力が大気圧レベルに減圧される。この状態で、作業者はノズル7の接続カプラ7Aをタンク52の充填口52Aから取り外すことができる。
【0088】
タンク52の充填口52Aから取り外されたノズル7は、作業者によって筐体4側のノズル掛け8に戻され、手動操作により掛止めされる。ノズル掛け8に設けられたノズル検出器27は、ノズル7がノズル掛け8に戻されたか否かを検出する。ノズル7がノズル掛け8に戻されて掛止めされると、ノズル検出器27からの検出信号が制御装置25に出力される。これにより、制御装置25は、ノズル7による充填作業が終了したと判定し、次回の充填作業に対する待機状態となる。
【0089】
次に、離脱規制装置41の操作について説明する。
【0090】
例えば、製造工場で組み立てられたディスペンサ3を現地(充填所:水素ステーション)に出荷(移動)する場合は、出荷前(移動前)に、離脱規制装置41のレバー部41Bを
図2および
図4の位置にする。この場合、レバー部41Bがディスペンサ3(筐体4)のカバーにより覆われる構成の場合は、カバーを取り付ける工程の前に、レバー部41Bを
図2および
図4の位置に操作する。また、カバーが取り付けられた後の工程でレバー部41Bの操作を行う必要がある場合は、カバーを取り外してレバー部41Bを
図2および
図4の位置に操作する。また、カバーを取り付けずに出荷する場合、または、レバー部41Bがカバーで覆われない(露出した)構成の場合は、必要なときにレバー部41Bを
図2および
図4の位置に操作する。
【0091】
いずれの場合も、ディスペンサ3を製造工場または倉庫等の出荷場所から出荷(移動)する前に、レバー部41Bを
図2および
図4の位置にし、支持部41Cの上面を分離継手31のノズル側継手31Aの下部(底部)に当接させる。レバー部41Bを
図2および
図4の位置まで回動させると、支持部41Cは、ノズル側継手31Aに当接した状態で、かつ、当該位置で固定された状態となる。これにより、分離継手31は、離脱規制装置41によって分離(ノズル側継手31Aの離脱)が規制される。
【0092】
ディスペンサ3は、このように分離継手31の分離を離脱規制装置41によって規制した状態で、トラック等の車両により搬送される。搬送中に、走行振動による機器の緩み、道路の段差による衝撃等に伴って、ノズル側継手31Aが反ノズル側継手31Bから分離(離脱)しようとした場合でも、ノズル側継手31Aの下方への移動を支持部41Cが規制する。このため、充填中の緊急時以外に、分離継手31が分離してしまうこと、即ち、ノズル側継手31Aが反ノズル側継手31Bから抜け出てしまうことを抑制できる。搬送先に到着後、搬送先でディスペンサ3の設置が完了したら、離脱規制装置41の解除、即ち、離脱規制装置41による分離継手31の分離の規制を解除する。例えば、作業員は、分離継手31が収容されている位置に対応する筐体4のカバーを取り外す。そして、離脱規制装置41のレバー部41Bを時計方向に操作(回動)すると、これに伴って、支持部41Cが反時計方向に回動する。これにより、支持部41Cの上面と分離継手31のノズル側継手31Aの下部(底部)とが非当接となる。
【0093】
このとき、レバー部41Bは、
図2および
図4の位置から
図3および
図5の位置まで回動させる。これにより、分離継手31のノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの分離が離脱規制装置41によって規制された規制状態から、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの分離が可能な解除状態(非規制状態)になる。その後、筐体4のカバーを取り付けることにより、ディスペンサ3は、水素ガスの充填(供給)を行うことが可能な状態となる。離脱規制装置41が解除状態のときは、ノズル7がタンク52の充填口52Aに接続された状態のまま車両51が発進すると、分離継手31が分離する。これにより、筐体4の転倒、水素ガスの流出を抑制できる。
【0094】
一方、離脱規制装置41が規制状態のときは、水素ガスの充填(供給)が許可されない。即ち、離脱規制装置41の支持部41Cが規制位置のときは、この旨の信号がリミットスイッチ42から制御装置25に出力される。制御装置25は、離脱規制装置41が規制状態のときは、遮断弁14の開弁を禁止する。これにより、離脱規制装置41が規制状態のまま水素ガスの充填(供給)が行われることを抑制できる。
【0095】
また、例えば、ディスペンサ3のメンテナンスを行うときにも、離脱規制装置41により分離継手31の分離を規制することができる。この場合は、メンテナンスを開始する前に、メンテナンスの作業員は、分離継手31が収容されている位置に対応する筐体4のカバーを取り外す。そして、離脱規制装置41のレバー部41Bを
図3および
図5の位置から
図2および
図4の位置まで操作する。これにより、分離継手31は、離脱規制装置41によって分離が規制される状態となる。この状態で、メンテナンスを開始する。メンテナンス中に、例えば、ホース6の無理な引き回し、ホース6の踏み付け等に伴って、ホース6が過剰に引っ張られたとしても、ノズル側継手31Aの下方への移動を支持部41Cによって規制できる。メンテナンスが終わったら、離脱規制装置41のレバー部41Bを
図2および
図4の位置から
図3および
図5の位置まで操作する。これにより、分離継手31は、離脱規制装置41によって分離が規制されない解除状態(非規制状態)となる。その後、カバーを筐体4に取り付けることにより、ディスペンサ3は、水素ガスの充填(供給)を行うことが可能な状態となる。
【0096】
以上のように、実施形態では、分離継手31のシェアピン31Cとは別に、この分離継手31のノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの接続状態を維持する離脱規制装置41を備えている。このため、移動中、メンテナンス中等、分離継手31の分離を望まないときに、分離継手31にシェアピン31Cが破断するような振動、衝撃、力が加わっても、離脱規制装置41によりノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの接続状態を維持できる(完全に分離してしまうことを抑制できる)。これにより、望まない分離継手31の分離を抑制することができる。
【0097】
実施形態では、離脱規制装置41は、ノズル側継手31Aが反ノズル側継手31Bから分離する方向に移動することを規制する規制位置に回動可能な支持部41Cを備えている。このため、支持部41Cを規制位置に回動させ、支持部41Cをノズル側継手31Aに当接させることにより、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの接続状態を維持することができる。
【0098】
実施形態では、支持部41Cは、ノズル側継手31Aの移動の規制を解除する解除位置に回動可能である。このため、支持部41Cを解除位置に回動させることにより、支持部41Cがノズル側継手31Aと非当接になる。これにより、分離継手31にシェアピン31Cが破断する力が加わった場合に、分離継手31は、ノズル側継手31Aの移動が離脱規制装置41(支持部41C)によって規制されることなく分離できる。
【0099】
実施形態では、リミットスイッチ42により支持部41Cが規制位置にあると検出された場合に、制御装置25は、水素ガスの充填を禁止する。このため、離脱規制装置41(支持部41C)によりノズル側継手31Aの移動が規制された状態で、水素ガスの充填が行われることを抑制できる。これにより、水素ガスの充填中に離脱規制装置41(支持部41C)により分離継手31が分離できなくなることを抑制できる。
【0100】
なお、実施形態では、設置式(固定式)の水素ステーションのディスペンサ3に離脱規制装置41を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、
図8に示す変形例のように、移動式の水素ステーションのディスペンサ3に離脱規制装置41を設ける構成としてもよい。
図8に示すように、移動式の水素ステーションは、例えば、運搬車両としてのトラック61により構成されている。トラック61は、荷台61Aを有しており、荷台61Aには、ディスペンサ3、ガス蓄圧器2および圧縮機62が搭載されている。コンプレッサ(昇圧器)である圧縮機62は、水素ガスを圧縮する。圧縮機62は、ガス蓄圧器2に接続されており、圧縮した水素ガスをガス蓄圧器2に供給する。
【0101】
移動式の水素ステーションを構成するトラック61は、移動先に到着すると、荷台61Aの圧縮機62がホース等の管路を介して図示しない水素供給源に接続される。水素供給源は、例えば、水素ガスが充填されたガス容器(シリンダ)の集合体であるカードル、水素ガスを貯留する容積の大きい中間蓄圧器、水素ガスを製造する水素製造装置、および/または、水素を充填して配送する水素トレーラーに対応する。荷台61Aのガス蓄圧器2には、水素供給源から圧縮機62を介して高圧の水素ガスが供給される。
【0102】
次に、移動式の水素ステーションで水素ガスの充填を行うときの作業員による離脱規制装置41の操作について説明する。
【0103】
トラック61が充填所に到着すると、作業員は、分離継手31および離脱規制装置41が収容されている位置に対応する筐体4のカバーを取り外す。なお、離脱規制装置41が筐体4のカバーで覆われていない場合は、この作業は必要ない。作業員は、離脱規制装置41のレバー部41Bを操作(回動)する。具体的には、レバー部41Bを
図2および
図4の状態から
図3および
図5の状態となるように時計方向に回動すると、このレバー部41Bの回動に伴って支持部41Cが反時計方向に回動する。これにより、分離継手31のノズル側継手31Aと支持部41Cとが非当接状態となる。即ち、分離継手31は、ノズル側継手31Aと反ノズル側継手31Bとの接続状態が離脱規制装置41によって維持された状態から分離可能な状態に変わる。
【0104】
その後、筐体4のカバーを取り付け、ノズル7を車両51に接続させて、充填を開始する。離脱規制装置41が解除状態のときは、充填中にノズル7がタンク52の充填口52Aに接続された状態のまま車両51が発進すると、分離継手31が分離する。これにより、筐体4の転倒、水素ガスの流出を抑制できる。充填が終了すると、ノズル7をノズル掛け8に戻す。その後、同様に充填作業を行い、他の充填所へ移動する場合は、筐体4のカバーを取り外し、離脱規制装置41のレバー部41Bを反時計方向に操作(回動)する。これにより、支持部41Cがノズル側継手31Aに当接した状態で、かつ、当該支持部41Cが当該位置に固定された状態となる。これにより、トラック61の移動中に、走行振動による機器の緩み、道路の段差による衝撃等に伴って、ノズル側継手31Aが反ノズル側継手31Bから分離(離脱)しようとした場合でも、ノズル側継手31Aの下方への移動を支持部41Cが規制する。このため、充填中の緊急時以外に、分離継手31が分離してしまうこと、即ち、ノズル側継手31Aが反ノズル側継手31Bから抜け出てしまうことを抑制できる。
【0105】
離脱規制装置41のレバー部41Bを規制位置(
図2および
図4に示す水平位置)にしたら、筐体4のカバーを取り付け、次の充填所へ移動する。なお、トラック61で移動するときに、筐体4にカバーを取り付けないこともある。また、筐体4のカバーに扉を設け、扉を開けることにより、離脱規制装置41の操作(レバー部41Bの操作)を行えるようにしてもよい。また、トラック61は、離脱規制装置41が解除状態のときに、発進できないようにしてもよい。この場合は、例えば、ディスペンサ3(制御装置25)とトラック61の始動装置または車両制御装置とを接続する構成とする。
【0106】
トラック61の始動装置または車両制御装置は、ディスペンサ3のリミットスイッチ42から制御装置25を介して出力される信号、即ち、離脱規制装置41が規制状態であるか否かの信号に基づいて、トラック61の始動または発進を許可または禁止する。この場合、トラック61の始動装置または車両制御装置は、離脱規制装置41が規制状態であるときに、トラック61の始動または発進を許可する。これに対して、トラック61の始動装置または車両制御装置は、離脱規制装置41が解除状態であるときに、トラック61の始動または発進を禁止する。
【0107】
このとき、即ち、トラック61のドライバが始動操作または発進操作を行っても、トラック61の始動装置または車両制御装置がトラック61を始動または発進できないようにしたときは、トラック61のドライバに、「離脱規制装置41が解除されているためトラック61の始動または発進を禁止している」旨を報知する。この報知(即ち、離脱規制装置41が規制状態でない旨の報知)は、例えば、トラック61の運転席の前に設けられた車体モニタに表示することにより行うことができる。また、音声による報知を行ってもよい。これにより、離脱規制装置41を規制状態にすることを忘れてトラック61が走行してしまうことを抑制できる。
【0108】
なお、実施形態および変形例では、離脱規制装置41をトグルクランプにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、離脱規制装置は、「ノズル側継手と反ノズル側継手との接続状態を維持する維持状態(維持位置)」と「この維持を解除する解除状態(解除位置)」とに切り換えが可能な各種の構造(機構)を採用することができる。即ち、離脱規制装置は、「ノズル側継手が反ノズル側継手から離れる方向に移動するのを規制する規制状態(規制位置)」と「この規制を解除する非規制状態(非規制位置)と」に切り換えることが可能な各種の装置(支持装置、固定装置、切り換え装置、係合装置等)を採用することができる。
【0109】
実施形態では、エア供給管路9に供給する圧縮空気の供給源をコンプレッサ28とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、圧縮空気の供給源は、例えば、ガス容器(高圧ガス容器、ガスボンベ)等、コンプレッサ以外の供給源を用いてもよい。
【0110】
実施形態および変形例では、タンク52が搭載された車両51として自動車を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、車両は、フォークリフト等の作業車両としてもよい。また、自動車としては、例えば、バス等の乗合自動車でもよいし、トラック等の貨物自動車でもよい。
【0111】
実施形態および変形例では、車両51のタンク52に水素ガスを充填する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、車両以外のタンク(ボンベ、容器等)に水素ガスを充填するときに用いることもできる。また、水素ガス充填装置1のディスペンサ3を、他の場所に水素ガスを給送するための管路(水素給送管路)の途中に設置してもよい。さらに、ガスとして水素ガスを例に挙げて説明したが、天然ガス(NG)、プロパンガス(LPG)等の水素ガス以外のガス(燃料ガス)を用いる構成(ガス充填装置)としてもよい。
【0112】
実施形態および変形例では、1つのディスペンサ3で1系統のガス供給管路5およびホース6を通じて1台の車両51に水素ガスを充填する構成、即ち、シングルタイプのディスペンサ(シングル型充填装置)の場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ダブルタイプのディスペンサ(ダブル型充填装置)等、1つのディスペンサで複数の系統(2以上の系統)のガス供給管路およびホース(ガス供給接続路)を通じて、1台の車両または複数台の車両に燃料ガスを充填する構成としてもよい。
【0113】
以上説明した実施形態によれば、分離継手の接続手段とは別に、この分離継手のノズル側継手と反ノズル側継手との接続状態を維持する接続維持手段を備えている。このため、移動中、メンテナンス中等、分離継手の分離を望まないときに、分離継手に接続手段の接続が解除されるような振動、衝撃、力が加わっても、接続維持手段によりノズル側継手と反ノズル側継手との接続状態を維持できる(完全に分離してしまうことを抑制できる)。これにより、望まない分離継手の分離を抑制することができる。
【0114】
実施形態によれば、接続維持手段は、ノズル側継手が反ノズル側継手から分離する方向に移動することを規制する規制位置に回動可能な支持部を備えている。このため、支持部を規制位置に回動させ、支持部をノズル側継手に当接させることにより、ノズル側継手と反ノズル側継手との接続状態を維持することができる。
【0115】
実施形態によれば、支持部は、ノズル側継手の移動の規制を解除する解除位置に回動可能である。このため、支持部を解除位置に回動させることにより、支持部がノズル側継手と非当接になる。これにより、分離継手に接続手段の接続が解除される力が加わった場合に、分離継手は、ノズル側継手の移動が接続維持手段(支持部)によって規制されることなく分離できる。
【0116】
実施形態によれば、検出手段により支持部が規制位置にあると検出された場合に、制御部は、ガスの供給を禁止する。このため、接続維持手段(支持部)によりノズル側継手の移動が規制された状態で、ガスの供給が行われることを抑制できる。これにより、ガスの供給中に接続維持手段(支持部)により分離継手が分離できなくなることを抑制できる。
【符号の説明】
【0117】
1 水素ガス充填装置(ガス供給装置)
5 ガス供給管路(ガス供給経路)
6 ホース(ガス供給経路)
7 ノズル
14 遮断弁
25 制御装置(制御部)
31 分離継手
31A ノズル側継手
31B 反ノズル側継手
31C シェアピン(接続手段)
41 離脱規制装置(接続維持手段)
41C 支持部
42 リミットスイッチ(検出手段)
52 タンク