(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009194
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】車両ドアの固定装置
(51)【国際特許分類】
E05B 77/38 20140101AFI20250110BHJP
E05B 85/04 20140101ALI20250110BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
E05B77/38
E05B85/04
B60J5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112033
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池永 勇気
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ09
2E250LL01
2E250MM03
2E250PP06
2E250PP10
(57)【要約】
【課題】車両ドアと車体パネルの間のガタつきを簡素な構造で抑制できるようにする。
【解決手段】車両ドアの固定装置は、車体パネル12に固定されたドアストライカ20のフック32に対して、ドア側に装備されたドアロックのラッチが着脱自在に係合することでドアを閉位置に保持する。ドアストライカ20は、ドアストライカ本体22と嵩上げプレート24を備える。ドアストライカ本体22は、フック32およびフック32が接続されたベースプレート30を有する。嵩上げプレート24は、車体パネル12とベースプレート30の間に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体パネルに固定されたドアストライカのフックに対して、ドア側に装備されたドアロックのラッチが着脱自在に係合することで前記ドアを閉位置に保持する車両ドアの固定装置であって、
前記ドアストライカは、ドアストライカ本体と嵩上げプレートを備え、
前記ドアストライカ本体は、前記フックおよび前記フックが接続されたベースプレートを有し、
前記嵩上げプレートは、前記車体パネルと前記ベースプレートの間に配置されている、
ことを特徴とする車両ドアの固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアの固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のサイドドアは、一般的に、車体パネルに固定されたドアストライカのフックに対して、ドア側に装備されたドアロックのラッチが着脱自在に係合することで閉位置に保持される。
【0003】
特許文献1には、車両ドアのドアパネルに固定された固定楔と、車体パネルに配設された可動楔及びベースプレートとを備えた車両用ドア固定装置が開示されている。この車両用ドア固定装置では、車両ドアが閉ざされている状態において固定楔と可動楔とが押し合う力により、ドアパネルと車体パネルの間のガタつきを抑え、車体剛性の向上を図っており、車両の旋回性能を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両ドアと車体パネルの間のガタつきを簡素な構造で抑制できるようにすることが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、車両ドアと車体パネルの間のガタつきを簡素な構造で抑制できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両ドアの固定装置は、車体パネルに固定されたドアストライカのフックに対して、ドア側に装備されたドアロックのラッチが着脱自在に係合することで前記ドアを閉位置に保持する車両ドアの固定装置であって、前記ドアストライカは、ドアストライカ本体と嵩上げプレートを備え、前記ドアストライカ本体は、前記フックおよび前記フックが接続されたベースプレートを有し、前記嵩上げプレートは、前記車体パネルと前記ベースプレートの間に配置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、嵩上げプレートの分だけ、ドアストライカ本体のフックの脚部を短くすることができる。よって、ドアロックのラッチによりフックに印加される力に対して、フックの変形を抑制することができる。そのため、車両ドア(ラッチ側)と車体パネル(フック側)の間のガタつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は車体パネル12の一部を示す斜視図であり、(b)はドアストライカ20の拡大図であり、(c)は嵩上げプレート24の斜視図である。
【
図2】(a1)及び(a2)は従来技術のドアストライカ120を示す図であり、(b1)及び(b2)は実施形態に係るドアストライカ20を示す図である。
【
図3】(a)はドアストライカ20の作用効果を説明するための図であり、(b)は車体パネルへの荷重伝達について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。全ての図面において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下の説明において、特段の断りがない限り、前後左右上下等の方向および向きを表す語句は、車両に関する方向および向きを表す。各図において、矢印FRの向きが前方、矢印UPの向きが上方、矢印RHの向きが右方を表す。
【0011】
図1(a)は車体パネル12の一部を示す斜視図であり、車両右側のドア開口部の後側を示す。このドア開口部は、運転席の横にある。車両10は、車両ドアとしてのサイドドアの固定装置を備える。サイドドアの固定装置は、車体パネル12に固定されたドアストライカ20のフック32(
図1(b)参照)に対して、ドア側に装備されたドアロックのラッチが着脱自在に係合することでサイドドアを閉位置に保持する。なお、ドアストライカとドアロックの係合構造は、公知のものを採用することができ、特許文献1にも開示されている。
【0012】
図1(b)は、
図1(a)のA部分を拡大したものであり、ドアストライカ20の詳細に示す。本実施形態に係るドアストライカ20は、ドアストライカ本体22と嵩上げプレート24を備える。ドアストライカ本体22は、一般的なドアストライカと同様の構造ではあるが、嵩上げプレート24の高さ分だけフック32の脚部32A,32Bが短くなっている(
図2(b1),(b2)参照)。嵩上げプレート24は、
図1(b)に示すように、車体パネル12とドアストライカ本体22のベースプレート30の間に配置されている。
【0013】
ドアストライカ本体22は、金属製である。ドアストライカ本体22は、フック32と、フック32が接続されたベースプレート30を備える。ベースプレート30は、板状に形成されており、2つのボルト38を通すための2つの穴36(
図2(b2)参照)を有する。
図1(b)に示すように、ベースプレート30の前方側には、フック32が固定されている。フック32は、コの字形に屈曲された丸棒状の部材である。フック32は、前後方向に沿って配置された左右一対の脚部32A,32Bと、これらの脚部32A,32Bの先端を車幅方向に連結する連結部32Cを備える。脚部32A,32Bの後端はそれぞれ、ベースプレート30に接続された根本部32AR,32BRを構成している。
【0014】
嵩上げプレート24は、金属製であり、比較的高い剛性を有している。嵩上げプレート24は、
図1(c)に示すように板状部材であり、表裏の表面(ベースプレートと車体パネルに接する表面)は平坦になっている。嵩上げプレート24は、プレート本体50と、プレート本体50に設けられた2つの穴52を有する。2つの穴52は、2つのボルト38(
図1(b)参照)を通すためのボルト穴である。
【0015】
車体パネル12の裏側には、2つのナット(不図示)が固定されている。2つのボルト38は、ベースプレート30の2つの穴36(
図2(b2)参照)と嵩上げプレート24の2つの穴52(
図1(c)参照)に通されて、車体パネル12の裏側の2つのナットに螺合されている。これにより、ドアストライカ本体22と嵩上げプレート24は、車体パネル12に固定されている。なお、
図1(b)では、ボルト38を締めるための工具挿入穴(ボルト38の中央の穴)が簡略化して円形に描かれているが、実際には、ねじ頭の規格に合わせた形状(ヘクサロビュラ・インターナルまたはトリプルスクエア)を有している。
【0016】
図2(a1),(a2)は、従来技術のドアストライカ120を示す図である。
図2(b1),(b2)は、本実施形態に係るドアストライカ20を示す図である。同図(a1),(b1)は、ドアストライカ120,20を上側から見た図であり、ベースプレート130,30及び嵩上げプレート24を断面で示す。同図(a2),(b2)は、ドアストライカ120,20を右側から見た図であり、ベースプレート130,30及び嵩上げプレート24を断面で示す。同図では、ボルトは省略されている。
【0017】
従来技術のドアストライカ120は、ドアストライカ本体122のみからなる。車体パネル12から従来技術のフック132の前方側先端(
図2(a1),(a2)の上方側先端)までの距離と、車体パネル12から本実施形態のフック32の前方側先端(
図2(b1),(b2)の上方側先端)までの距離は、同じである。
図2における参照符号LPが付された破線の四角は、フック132,32の脚部132A,32Aに対するドアロックのラッチの係合位置(噛み合い位置)を示す。車体パネル12からラッチ係合位置LPまでの距離も、従来技術のドアストライカ120と、本実施形態のドアストライカ20とで変わりはない(同じである)。
【0018】
本実施形態に係るドアストライカ20では、
図2(b1),(b2)に示すように、嵩上げプレート24の高さ分だけ、ドアストライカ本体22の脚部32A,32Bが短くなっている。脚部の下端(車両後側の端)からラッチ係合位置LPの上端(車両前側の端)までの距離L1,L2(
図2(a1),(b1)参照)に関し、従来技術の距離L1に比べて、本実施形態の距離L2は短くなっている(L2>L1)。また、脚部32A,132Aの根本部32AR,132ARの上端(車両前側の端)からラッチ係合位置LPの下端(車両後側の端)までの距離L3,L4(
図2(a2),(b2)参照)に関し、従来技術の距離L3に比べて、本実施形態の距離L4は短くなっている(L3>L4)。
【0019】
次に、本実施形態に係るドアストライカ20の作用効果について説明する。
【0020】
本実施形態のドアストライカ20によれば、嵩上げプレート24の分だけ、ドアストライカ本体22のフック32の脚部32A,32Bを短くすることができる。よって、ドアロックのラッチによりフック32に印加される力に対して、フック32の変形を抑制することができる。すなわち、フック32(ストライカシャフト)の剛性を向上させることができる。
【0021】
図2(a2)の従来技術のように、フック132の脚部132Aが長い場合には、ドアロックのラッチから車両上下方向(
図2(a2)の左右方向)に荷重F1が印加された際に、フック132が車両上下方向に変形しやすい(倒れ込みやすい)。フック132が車両上下方向に倒れ込むと、その根本にあるベースプレート130の上部(
図2(a2)の左側部分)または下部(
図2(a2)の右側部分)が、車体パネル12を凹ませるように車体パネル12に荷重F2を印加する。これにより車体パネル12が変形するので、フック132の車両上下方向への倒れこみがさらに大きくなる。
図3(a)は、車両10のサイドドア16におけるドアヒンジ18とドアストライカ120(または20)の位置を概略的に示す図である。ドアストライカ120のフックが上下方向に変動すると、ドアヒンジ18を介してAピラーが倒れるように変形しやすくなる。また、サイドドア16と車体パネル12の間のガタつきが大きくなってしまう。
【0022】
しかし、本実施形態に係るドアストライカ20によれば、フック32の脚部32A,32Bが短いため、フック32の車両上下方向への倒れ込みを抑制することができる。また、車体パネル12の変形を抑制することができる。よって、サイドドア16と車体パネル12の間のガタつきを抑制することができ、車体剛性を向上させて、車両10の旋回性能を向上させることができる。すなわち、本実施形態によれば、非常に簡素な構造のドアストライカ20でありながら、特許文献1に記載された発明と同様の効果を得ることができる。
【0023】
また、本実施形態によれば、ドアストライカ本体22を、嵩上げプレート24(剛性の高いプレート)を挟んで車体パネル12へ取り付けることで、ドアストライカ本体22が受けた荷重を広い面で車体パネル12に伝達することができる。
図3(b)は、感圧紙を使ってドアストライカと車体パネル12の間の接触圧力を車両走行前後で確認した結果の一例である。接触圧力が大きい部位が濃い黒で示されている。なお、従来技術のドアストライカ120では、ドアストライカ120(ドアストライカ本体122)と車体パネル12の間に感圧紙(複写用紙)を配置して確認を行っており、本実施形態に係るドアストライカ20では、嵩上げプレート24と車体パネル12の間に感圧紙(複写用紙)を配置して確認を行っている。
図3(b)から、従来技術では、締結部周辺のみでドアストライカ120が車体パネル12に局所的に接触していることが分かる。一方、本実施形態では、嵩上げプレート24が車体パネル12に全面的に接触しており、車体パネル12に対する局所的な圧力を低下させることができることが分かる。
【0024】
なお、従来技術のドアストライカのベースプレートには、平坦な板状ではなく、部分的に車体パネルに接するような形状のものがあり、この場合には、車体パネル12に対して局所的な圧力を与えやすい。しかし、本実施形態のように、ドアストライカ本体22を、嵩上げプレート24を挟んで車体パネル12に取り付けることで、車体パネル12に対する局所的な荷重印加を抑制することができる。
【0025】
また、本実施形態によれば、嵩上げプレート24の厚みを変えることで、脚部32A,32Bの長さが異なる別のドアストライカ本体22を使用することもできる。嵩上げプレート24の厚みを変えることで、フック32の脚部32Aに対する相対的なラッチ係合位置LPを変えることができる。
【0026】
また、ドアストライカ20は、ユーザの乗降時に視界に入る場所にあるので、嵩上げプレート24を追加することで、車両10の差別感を演出することができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、嵩上げプレート24の側面が露出する構造であるため、嵩上げプレート24の側面(或いは全体)の色、刻印等を変えて、車両10の意匠性を向上させることができる。ユーザの好みに応じて、嵩上げプレート24を選択、交換することができる。
【0028】
また、本実施形態によれば、既存のドアストライカを交換するだけで、上記した作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0029】
10 車両、12 車体パネル、16 サイドドア、18 ドアヒンジ、20 ドアストライカ、22 ドアストライカ本体、24 嵩上げプレート、30 ベースプレート、32 フック、32A,32B 脚部、32AR,32BR 根本部、32C 連結部、36 穴、38 ボルト、50 プレート本体、52 穴、120 ドアストライカ、122 ドアストライカ本体、130 ベースプレート、132 フック、132A,132B 脚部、132AR 根本部、136 穴、LP ラッチ係合位置。