(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025091958
(43)【公開日】2025-06-19
(54)【発明の名称】加飾積層体、転写シート、加飾部材、及び移動体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20250612BHJP
G09F 21/04 20060101ALI20250612BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20250612BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20250612BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20250612BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20250612BHJP
G02B 5/09 20060101ALI20250612BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
G09F21/04 Z
B32B3/30
B32B7/023
B32B7/06
G02B5/02 B
G02B5/02 C
G02B5/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207530
(22)【出願日】2023-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】小山 慶祐
(72)【発明者】
【氏名】與田 晋也
【テーマコード(参考)】
2H042
4F100
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA03
2H042AA05
2H042AA07
2H042AA21
2H042BA02
2H042BA03
2H042BA12
2H042BA13
2H042BA16
2H042DD02
2H042DD04
4F100AA21C
4F100AK25B
4F100AT00D
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10D
4F100DD01A
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4F100EC04B
4F100EH66C
4F100EJ54
4F100GB32
4F100HB00B
4F100JB14A
4F100JL14C
4F100JN06B
4F100JN18C
4F100JN21B
4F100YY00B
(57)【要約】 (修正有)
【課題】立体感を有し、且つマットな質感が表現された加飾積層体及び加飾部材を提供する。
【解決手段】加飾積層体10は、表側面11と裏側面12と、を有し、且つ賦形層20と拡散層90と、を備える。賦形層20は、凹凸構造25が形成された賦形面20aを有する。加飾積層体10は、少なくとも1つの単位光学要素13を有する。単位光学要素13において賦形面20aは、複数の傾倒面26Aと、隣り合う傾倒面26Aを接続する複数の接続面26Bと、を含む。傾倒面26Aの法線方向に対する角度が、傾倒面26Aに接続する接続面26Bの法線方向に対する角度よりも大きい。拡散層90は、入射した光を拡散させる。加飾積層体10の表側面11における入射角85°での鏡面光沢度G(85)の、加飾積層体10の表側面11における入射角20°での鏡面光沢度G(20)に対する比率である比率G(85)/G(20)が、2以上30以下である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側面と、前記表側面に向かい合う裏側面と、を有し、且つ賦形層と、前記賦形層よりも前記表側面に近い位置に位置して前記賦形層と向かい合う拡散層と、を備える加飾積層体であって、
前記賦形層は、凹凸構造が形成された賦形面を有し、
前記加飾積層体は、入射した光を前記凹凸構造に応じて反射、屈折および/又は回折させる、少なくとも1つの単位光学要素を有し、
前記単位光学要素において前記賦形面は、前記加飾積層体の法線方向に沿って延びる基準線に向かう方向に並び且つ前記基準線に向かって傾倒する複数の傾倒面と、隣り合う傾倒面を接続する複数の接続面と、を含み、
前記傾倒面の前記法線方向に対する角度が、当該傾倒面に接続する前記接続面の前記法線方向に対する角度よりも大きく、
前記拡散層は、入射した光を拡散させ、
前記加飾積層体の前記表側面における入射角85°での鏡面光沢度G(85)の、前記加飾積層体の前記表側面における入射角20°での鏡面光沢度G(20)に対する比率である比率G(85)/G(20)が、2以上30以下である、加飾積層体。
【請求項2】
前記複数の傾倒面は、レンズ面であり、
前記複数の接続面は、ライズ面である、請求項1に記載の加飾積層体。
【請求項3】
前記加飾積層体の前記表側面における入射角60°での鏡面光沢度G(60)が、70以下である、請求項1に記載の加飾積層体。
【請求項4】
前記表側面の側からJIS Z 8722:2009に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)が10%以上である、請求項1に記載の加飾積層体。
【請求項5】
前記拡散層は、バインダー樹脂と、前記バインダー樹脂中に分散された光拡散材とを含有する、請求項1に記載の加飾積層体。
【請求項6】
前記拡散層は、入射した光を拡散させる凹凸面を有する、請求項1に記載の加飾積層体。
【請求項7】
前記加飾積層体は、前記賦形層の前記賦形面を覆う輝度調整層を備える、請求項1に記載の加飾積層体。
【請求項8】
前記輝度調整層は、蒸着膜である、請求項7に記載の加飾積層体。
【請求項9】
前記賦形層の前記賦形面は、前記裏側面と向かい合い、
前記輝度調整層よりも前記裏側面に近い位置に位置して前記輝度調整層に接する第2輝度調整層を備える、請求項7に記載の加飾積層体。
【請求項10】
前記複数の接続面は、前記加飾積層体の法線方向に対して角度をなす、請求項1に記載の加飾積層体。
【請求項11】
前記拡散層よりも前記表側面に近い位置に位置して前記拡散層と向かい合う基材を備える、請求項1に記載の加飾積層体。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の加飾積層体と、
前記加飾積層体の前記表側面と向かい合う転写用基材と、を備える、転写シート。
【請求項13】
成形部と、
前記成形部の少なくとも一部を覆う請求項1乃至11のいずれか一項に記載の加飾積層体と、を備える、加飾部材。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の加飾積層体を備える、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加飾積層体、転写シート、加飾部材、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内外装製品(インストルメントパネル等)、家電製品、住宅等を加飾するための加飾積層体が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、表面に凹凸模様が設けられた加飾積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような加飾積層体には、様々な意匠表現を可能にすることが求められる。とりわけ、加飾積層体には、立体感を有する意匠を表現することが要望される。その一方で、加飾積層体には、艶の抑制されたマットな質感を表現することが要望される場合もある。立体感を有し、且つマットな質感が表現された加飾積層体によれば、高級感をともなった豊かな意匠表現が可能となる。
【0005】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであって、立体感を有し、且つマットな質感が表現された加飾積層体及び加飾部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施の形態は、以下の[1]~[14]に関連する。
【0007】
[1]
表側面と、前記表側面に向かい合う裏側面と、を有し、且つ賦形層と、前記賦形層よりも前記表側面に近い位置に位置して前記賦形層と向かい合う拡散層と、を備える加飾積層体であって、
前記賦形層は、凹凸構造が形成された賦形面を有し、
前記加飾積層体は、入射した光を前記凹凸構造に応じて反射、屈折および/又は回折させる、少なくとも1つの単位光学要素を有し、
前記単位光学要素において前記賦形面は、前記加飾積層体の法線方向に沿って延びる基準線に向かう方向に並び且つ前記基準線に向かって傾倒する複数の傾倒面と、隣り合う傾倒面を接続する複数の接続面と、を含み、
前記傾倒面の前記法線方向に対する角度が、当該傾倒面に接続する前記接続面の前記法線方向に対する角度よりも大きく、
前記拡散層は、入射した光を拡散させ、
前記加飾積層体の前記表側面における入射角85°での鏡面光沢度G(85)の、前記加飾積層体の前記表側面における入射角20°での鏡面光沢度G(20)に対する比率である比率G(85)/G(20)が、2以上30以下である、加飾積層体。
【0008】
[2]
前記複数の傾倒面は、レンズ面であり、
前記複数の接続面は、ライズ面である、[1]に記載の加飾積層体。
【0009】
[3]
前記加飾積層体の前記表側面における入射角60°での鏡面光沢度G(60)が、70以下である、[1]又は[2]に記載の加飾積層体。
【0010】
[4]
前記表側面の側からJIS Z 8722:2009に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)が10%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の加飾積層体。
【0011】
[5]
前記拡散層は、バインダー樹脂と、前記バインダー樹脂中に分散された光拡散材とを含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の加飾積層体。
【0012】
[6]
前記拡散層は、入射した光を拡散させる凹凸面を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の加飾積層体。
【0013】
[7]
前記加飾積層体は、前記賦形層の前記賦形面を覆う輝度調整層を備える、[1]~[6]のいずれかに記載の加飾積層体。
【0014】
[8]
前記輝度調整層は、蒸着膜である、[7]に記載の加飾積層体。
【0015】
[9]
前記賦形層の前記賦形面は、前記裏側面と向かい合い、
前記輝度調整層よりも前記裏側面に近い位置に位置して前記輝度調整層に接する第2輝度調整層を備える、[7]又は[8]に記載の加飾積層体。
【0016】
[10]
前記複数の接続面は、前記加飾積層体の法線方向に対して角度をなす、[1]~[9]のいずれかに記載の加飾積層体。
【0017】
[11]
前記拡散層よりも前記表側面に近い位置に位置して前記拡散層と向かい合う基材を備える、[1]~[10]のいずれかに記載の加飾積層体。
【0018】
[12]
[1]~[10]のいずれか一項に記載の加飾積層体と、
前記加飾積層体の前記表側面と向かい合う転写用基材と、を備える、転写シート。
【0019】
[13]
成形部と、
前記成形部の少なくとも一部を覆う[1]~[11]のいずれか一項に記載の加飾積層体と、を備える、加飾部材。
【0020】
[14]
[1]~[11]のいずれか一項に記載の加飾積層体を備える、移動体。
【発明の効果】
【0021】
本開示の実施の形態によれば、立体感を有し、且つマットな質感が表現された加飾積層体及び加飾部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、一実施の形態を説明する図であって、加飾部材を含む移動体を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿った断面図であって、
図1の加飾部材をセンサとともに示している。
【
図3】
図3は、一実施の形態による加飾積層体を示す部分拡大平面図である。
【
図5】
図5は、加飾積層体の反射層を拡大して示す平面図である。
【
図6】
図6は、加飾積層体の作用を説明するための図である。
【
図8】
図8は、全光線反射率の測定方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、一実施の形態による転写シートの断面図である。
【
図10】
図10は、一実施の形態による加飾部材の製造方法の一例を説明する図である。
【
図11】
図11は、一実施の形態による加飾部材の製造方法の一例を説明する図である。
【
図12】
図12は、一実施の形態による加飾部材の製造方法の一例を説明する図である。
【
図13】
図13は、一実施の形態による加飾部材の製造方法の一例を説明する図である。
【
図14A】
図14Aは、一実施の形態による賦形型を製造するための母型の製造方法の一例を説明する図である。
【
図14B】
図14Bは、一実施の形態による賦形型を製造するための母型の製造方法の一例を説明する図である。
【
図14C】
図14Cは、一実施の形態による賦形型を製造するための母型の製造方法の一例を説明する図である。
【
図15】
図15は、一実施の形態による賦形型の製造方法の一例を説明する図である。
【
図16】
図16は、一実施の形態による賦形型の製造方法の一例を説明する図である。
【
図17】
図17は、一実施の形態による賦形型と、賦形型により賦形された賦形層とを示す断面図である。
【
図18】
図18は、変形例1における加飾積層体を示す図である。
【
図19】
図19は、変形例1における転写シートを示す図である。
【
図20】
図20は、変形例2における転写シートを示す図である。
【
図21】
図21は、変形例2における転写シートを示す図である。
【
図22】
図22は、変形例3における転写シートを示す図である。
【
図23】
図23は、変形例3における転写シートを示す図である。
【
図24】
図24は、変形例3における転写シートを示す図である。
【
図25】
図25は、変形例3における転写シートを示す図である。
【
図26】
図26は、変形例4における転写シートを示す図である。
【
図27】
図27は、変形例4における転写シートを示す図である。
【
図28】
図28は、変形例5における加飾積層体を示す図である。
【
図29】
図29は、変形例6における賦形層を平面視した様子を示す図である。
【
図41】
図41は、
図34に対応する図であって、変形例6における加飾積層体を示す図である。
【
図42】
図42は、一部が切り取られた錐体の例を示す図である。
【
図43】
図43は、
図34に対応する図であって、変形例6における加飾積層体を示す図である。
【
図48】
図48は、変形例7における転写シートを示す図である。
【
図49】
図49は、変形例8における転写シートを示す図である。
【
図50】
図50は、変形例9における加飾部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0024】
方向の関係を図面間で明確にするため、いくつかの図面には、共通する方向が、共通する符号を付した矢印により示されている。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面の奥に向かう矢印は、例えば
図2に示すように、円の中にXを設けた記号により示されている。さらに、図面の紙面に垂直な方向に沿って手前に向かう矢印は、例えば
図3に示すように、円の中に点を設けた記号により示されている。図面中における、後述する傾倒面26A及び接続面26Bの数は、図面の簡略化の観点から、図面毎に適宜変更して表す場合がある。
【0025】
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「垂直」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られず、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0026】
本明細書において、「フィルム」、「シート」及び「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されるものではない。例えば「転写シート」は、転写フィルムと呼ばれる部材等と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
【0027】
本明細書において、あるパラメータに関して複数の上限値の候補及び複数の下限値の候補が挙げられている場合、そのパラメータの数値範囲は、任意の1つの上限値の候補と任意の1つの下限値の候補とを組み合わせることによって構成されてもよい。一例として、「パラメータBは、A1以上でもよく、A2以上でもよく、A3以上でもよい。パラメータBは、A4以下でもよく、A5以下でもよく、A6以下でもよい。」との記載について検討する。この例において、パラメータBの数値範囲は、A1以上A4以下でもよく、A1以上A5以下でもよく、A1以上A6以下でもよく、A2以上A4以下でもよく、A2以上A5以下でもよく、A2以上A6以下でもよく、A3以上A4以下でもよく、A3以上A5以下でもよく、A3以上A6以下でもよい。
【0028】
本明細書において、「抑制」とは、実現や発生等をおさえとどめることや、実現や発生等を妨げることを意味する。「抑制」とは、実現や発生等を完全に防止することだけでなく、実現や発生等の可能性を低減することや実現や発生等を起こりにくくすること等も意味する。
【0029】
図1乃至
図17は一実施の形態を説明する図である。このうち
図1および
図2は、加飾積層体10を備えた加飾部材3の適用例を示す図である。加飾積層体10は、シート状に形成され、加飾シートとも呼ばれる。加飾積層体10は、意匠を表示し、加飾積層体10が適用された物品(
図1に示す例では加飾部材3)等に意匠性を付与する。
【0030】
なお、
図1に示された例において、加飾部材3は、移動体1に用いられている。図示された例において、加飾部材3は、移動体1のフロントパネル2に設置されている。後述するように、加飾部材3は加飾積層体10を備える。このため、加飾部材3を備えた移動体1は、加飾積層体10を備えている。フロントパネル2は、エンジン車においてフロントグリルとして形成されている。一方、電気自動車においては、ラジエータ等の空冷されるべき熱交換器が設置されないこともある。したがって、フロントパネル2は、多数の孔が形成されたグリルとして、形成されなくてもよい。
【0031】
以下、図面に示された具体的な適用例を参照しながら、一実施の形態を説明していく。
図1に示された移動体1は自動車である。ただし、加飾部材3が適用される移動体1は自動車に限られない。加飾部材3は、移動可能な装置としてのその他の移動体1にも適用可能である。自動車以外の移動体1として、鉄道車両、台車、船、飛行機、ヘリコプター、ドローン、ロボットが例示される。加飾部材3及び加飾積層体10は、移動体の内装体に用いられてもよい。加飾部材3及び加飾積層体10は、例えば、内装材、外装材、天井材、床材等の建材や、家電のケース、通信機器筐体、化粧品容器等にも適用可能である。より具体的には、加飾部材3及び加飾積層体10は、スマートフォンの筐体や、スマートフォンのカバーにも適用可能である。
【0032】
<<加飾部材>>
まず、
図2を参照して加飾部材3の全体構成について説明する。
図2に示すように、加飾部材3は、表側面3aと、表側面3aに対向する裏側面3bと、を有している。表側面3aおよび裏側面3bは、それぞれ、後述する成形部65の表側面66および裏側面67に沿って拡がっている。図示された例では、表側面3aおよび裏側面3bは、それぞれ、X方向DxおよびX方向Dxに直交するY方向Dyに平面状に広がっている。そして、表側面3aおよび裏側面3bは、X方向DxおよびY方向Dyの両方向に直交するZ方向Dzにおいて対向している。Z方向Dzは、加飾積層体10の法線方向Dnに一致する。ただし、この例に限られず、表側面3aおよび裏側面3bは、曲面状でもよい。
【0033】
図2に示す例では、加飾部材3は、成形部65と、成形部65の少なくとも一部を覆う加飾積層体10と、を備える。
図2に示す例では、成形部65と加飾積層体10とは、加飾部材3の裏側面3bから表側面3aに向かう方向(Z方向Dz)に、この順で積層されている。
図2に示す例では、加飾部材3は、センサ5に対面して配置されている。
図2に示す例では、成形部65がセンサ5に対面し、加飾積層体10が観察者6に対面する。
【0034】
加飾積層体10は、表側面11と裏側面12とを有している。
図2に示す例では、表側面11は、加飾部材3の表側面3aを形成する。裏側面12は、加飾部材3の裏側面3b側(成形部65側)を向く。表側面11および裏側面12は、後述する成形部65の表側面66に沿って拡がっている。図示された例では、表側面11および裏側面12は、それぞれ、X方向DxおよびY方向Dyに平面状に広がっている。表側面11および裏側面12は、Z方向Dzにおいて対向している。ただし、この例に限られず、表側面11および裏側面12は、曲面状でもよい。
【0035】
成形部65は、表側面66と裏側面67とを有している。裏側面67は、加飾部材3の裏側面3bを形成する。表側面66は、加飾部材3の表側面3a側(加飾積層体10側)を向く。図示された例では、表側面66および裏側面67は、それぞれ、X方向DxおよびY方向Dyに平面状に広がっている。そして、表側面66および裏側面67は、Z方向Dzにおいて対向している。ただし、この例に限られず、表側面66および裏側面67は、曲面状でもよい。
【0036】
成形部65は、樹脂材料やガラス等、種々の材料により形成されてよい。成形部65をなす樹脂材料は特に限定されない。成形部65をなす樹脂材料として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトル・ブタジエン・スチレン(ABS)、アクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン(AES)、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート(ASA)が例示される。
【0037】
成形部65は、着色されていてもよい。この場合、加飾部材3に所望の色を付与することができる。成形部65は、透明でもよく、不透明でもよい。成形部65が不透明である場合、成形部65によって、加飾部材3が適用される物品の少なくとも一部を隠蔽することができる。例えば
図2に示す例では、成形部65が不透明であることにより、加飾部材3はセンサ5を隠蔽することができる。この場合、着色された成形部65は、後述する着色層36と同様の材料で作製可能である。
【0038】
なお、本明細書で用いる「透明」とは、ヘーズメーター((株)村上色彩技術研究所製「HM-150N」、JIS K7361:1997準拠品)を用いて測定したときの、全光線透過率が、50%以上であることを意味する。本明細書で透明であると言及された材料や部材は、好ましくは、上述の方法により測定される全光線透過率が80%以上である。
【0039】
ところで、
図2に示すように、加飾部材3は、可視光よりも長波長の電磁波を用いたセンサ5に対面して配置され得る。センサ5は、一例として、移動体1の周囲の状況を監視してもよい。センサ5の検出結果は、移動体1の制御装置4に送信され得る。制御装置4は、センサ5の検出結果に基づき、警報を発してもよく、または移動体1の移動を制御してもよい。例えば、センサ5は、移動体1の前方の障害物等を検出してもよい。このセンサ5は、電磁波を発信可能かつ電磁波を受信可能であってもよい。センサ5が、障害物等で反射した反射波を受信することによって、障害物の有無や障害物までの距離を検出できる。センサ5は、ミリ波レーダ装置としてもよい。ミリ波レーダ装置は、波長が1mm以上10mm以下のミリ波を電磁波として用いてもよい。あるいは、センサ5は、ライダー装置としてもよい。ライダー装置は、赤外線を電磁波として用いてもよい。
【0040】
センサ5は、加飾部材3の裏側面3bに対面している。センサ5で用いられる電磁波は、Z方向Dzに沿って、加飾部材3を透過する。
図2に示す例において、表側面3aおよび裏側面3bは、電磁波の出射面および入射面となる。表側面3aおよび裏側面3bは、少なくともZ方向Dzにセンサ5と対面する領域において、平坦面となっていることが好ましい。表側面3aおよび裏側面3bを平坦面とすることによって、電磁波の拡散によるセンサ5の感度低下を抑制できる。
【0041】
<<加飾積層体>>
次に、加飾積層体10について、より詳細に説明する。
図3は、加飾積層体10の平面図である。
図4は、
図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図4に示すように、加飾積層体10は、賦形層20と拡散層90とを備えている。
図3においては、拡散層90の図示は省略している。拡散層90は、後述する反射界面27よりも表側面11に近い位置に位置する。拡散層90は、賦形層20よりも表側面11に近い位置に位置して賦形層20と向かい合っている。賦形層20は、凹凸構造25が形成された賦形面20aを有している。賦形層20は、賦形面20aとは反対側に位置する非賦形面20bを有している。
図4に示す例において、非賦形面20bは、加飾積層体10の法線方向Dnに垂直な、平坦な面である。
図4に示す例において、賦形面20aは裏側面12と向かい合っている。非賦形面20bは表側面11と向かい合っている。加飾積層体10は、賦形層20の賦形面20aを覆う輝度調整層30を備えている。
図4に示す例において、加飾積層体10は、充填層40を備えている。充填層40は、賦形層20よりも表側面11に近い位置に位置して賦形層20と向かい合っている。
図4に示す例において、充填層40は、輝度調整層30よりも表側面11に近い位置に位置している。
図4に示す例においては、充填層40、輝度調整層30及び賦形層20が、Z方向Dzに沿って裏側面12から表側面11へと向かう方向に、この順で積層されている。充填層40は、輝度調整層30に形成された後述する凹凸を埋めている。
図4に示す例において、拡散層90が加飾積層体10の表側面11を形成している。充填層40が、加飾積層体10の裏側面12を形成している。
【0042】
図3に示すように、加飾積層体10は、少なくとも1つの単位光学要素13を有する。各単位光学要素13は、表側面11に入射した光を、賦形面20aの凹凸構造25に応じて反射、屈折および/又は回折させる。これにより、加飾積層体10の厚み以上の立体感を表現できる。この結果、加飾積層体10の意匠性が向上する。図示された例では、加飾積層体10は、複数の単位光学要素13を有する。これにより、複数の単位光学要素13の組み合わせによる複雑な意匠を、加飾積層体10に付与できる。
【0043】
<賦形層>
まず、賦形層20について説明する。賦形層20は、賦形層20の厚み以上の立体感を表現することによって、豊かな意匠表現を可能にする役割を果たす。
【0044】
賦形層20について説明する。加飾積層体10は、少なくとも一つの単位賦形要素23を有する。
図3に示す例において、賦形層20は、複数の単位賦形要素23を有している。賦形層20が複数の単位賦形要素23を含むことにより、加飾積層体10に複数の単位光学要素13を形成できる。1つの単位賦形要素23が1つの単位光学要素13に対応する。賦形面20aにおいて、各単位賦形要素23には、凹凸構造25が形成されている。凹凸構造25は、賦形層20を後述する賦形型100を用いて賦形することで、形成され得る。
【0045】
賦形面20aに凹凸構造25が形成されていることにより、単位光学要素13に入射した光に、凹凸構造25に応じた光学作用がもたらされる。単位光学要素13は、入射した光を凹凸構造25に応じて反射、屈折および/又は回折させる。図示された例では、凹凸構造25の形状は、加飾積層体10の表側面11に入射した平行光を集束および/又は発散させるように、決定される。各単位光学要素13の全体又は一部は、加飾積層体10の表側面11から入射した光を集光するように構成されていてもよい。本明細書では、加飾積層体10の表側面11から入射した光を集光するように構成されたレンズを「凸レンズ」と称する。凸レンズは、凸面鏡と同様の光学作用をもたらすように構成されたレンズである。加飾積層体10の表側面11から入射した光を発散させるように構成されたレンズを「凹レンズ」と称する。凹レンズは、凹面鏡と同様の光学作用をもたらすように構成されたレンズである。
図4に示す例では、加飾積層体10を表側面11側から観察した場合、単位光学要素13の全体が凸レンズとして機能する。単位光学要素13の一部が凸レンズとして機能してもよい。単位光学要素13の全体又は一部が凹レンズとして機能してもよい。単位光学要素13の全体又は一部を凸レンズ又は凹レンズとして機能させることにより、加飾積層体10は、加飾積層体10の実際の厚みよりも奥行きのある意匠を表現できる。これによって、加飾積層体10は立体感を表現できる。このため、加飾積層体10によって、高級感をともなった豊かな意匠表現を実現できる。
【0046】
加飾積層体10の平面視における各単位賦形要素23の寸法(したがって、各単位光学要素13の寸法)は、特に限定されず、加飾積層体10が表現する意匠に応じて適宜設定可能である。ただし、単位光学要素13による視覚効果を有効にする観点から、各単位賦形要素23は、各々を肉眼で識別可能な程度の大きさを有していることが好ましい。具体的には、単位賦形要素23の最も短い長さを、1.0mm以上としてもよく、10mm以上としてもよく、20mm以上としてもよい。また、単位賦形要素23の最も長い長さを、200mm以下としてもよく、100mm以下としてもよい。加飾積層体10の平面視における各単位賦形要素23の寸法は、1.0mm以上200mm以下であってよい。
【0047】
単位光学要素13において、賦形面20aは、複数の傾倒面26Aと複数の接続面26Bとを含んでいる。
図3及び
図4に示す例においては、各単位光学要素13に対応する各単位賦形要素23が、複数の傾倒面26Aと複数の接続面26Bとを有している。これによって、各単位光学要素13に、複数の傾倒面26Aと複数の接続面26Bとが形成されている。
【0048】
複数の傾倒面26Aは、加飾積層体10の法線方向Dn(Z方向Dz)に沿って延びる基準線に向かう方向に並び且つ基準線に向かって傾倒する。複数の接続面26Bは、隣り合う傾倒面26Aを接続する。図示された例において、複数の傾倒面26Aは、加飾積層体10の法線方向Dnに沿って延びる第1基準線L1に向かう方向に並び且つ第1基準線L1に向かって傾倒している。基準線に向かう方向に並び且つ基準線に向かって傾倒する複数の傾倒面26Aを含む単位光学要素13には、上記の任意の断面上において、第1基準線L1に向かう方向に並び且つ第1基準線L1に向かって傾倒している複数の第1傾倒面26A1と、第2基準線L2に向かう方向に並び且つ第2基準線L2に向かって傾倒している複数の第2傾倒面26A2と、を含む単位光学要素13が含まれる。
【0049】
複数の傾倒面26Aと複数の接続面26Bとによって、単位光学要素13に入射した光に、複数の傾倒面26Aと複数の接続面26Bとの形状に応じた光学作用がもたらされる。
【0050】
図3及び
図4に示す例では、複数の傾倒面26Aは、レンズ面である。換言すれば、複数の傾倒面26Aは、連続したレンズ面をその厚み方向に垂直な面に沿って分割した複数のレンズ面に対応する。
図3及び
図4に示す例では、複数の接続面26Bは、ライズ面である。換言すれば、複数の接続面26Bは、隣り合うレンズ面を接続するライズ面に対応する。このような凹凸構造25によれば、単位光学要素13をレンズとして機能させ得る。さらに、このような凹凸構造25によれば、単位光学要素13をレンズとして機能させることによる加飾積層体10の厚みの増大を、効果的に抑制できる。例えば、図示された例のように、加飾部材3が車両のフロントグリルに用いられる場合、加飾部材3は軽量化の観点から薄肉化が要望されることがある。また、加飾部材3がセンサ5に対面して配置される場合、加飾積層体10はセンサ5から発せられる電磁波が加飾部材3を高透過率で透過することが求められる。この場合、加飾積層体10の厚みを小さくすることが好ましい。複数の傾倒面26Aがレンズ面であり、複数の接続面26Bがライズ面であることによって、単位光学要素13はレンズとして機能する。これにより、加飾積層体10が単位光学要素13を有している領域において、加飾積層体10の厚み以上の立体感を表現できる。
【0051】
賦形面20aは、光が反射される反射界面27を形成する。
図4に示す例においては、賦形面20aと賦形面20aを覆う輝度調整層30との間に、賦形面20aの凹凸構造25の形状に対応した形状を有する反射界面27が形成されている。
図4に示す例において、反射界面27は、賦形面20aの位置に形成されている。図示はしないが、反射界面27は、賦形面20aから、傾倒面26Aの加飾積層体10の法線方向Dnにおいて離れた位置に形成されてもよい。すなわち、賦形により形成される賦形面20aの位置と、賦形面20aの形状に対応する形状を有して光を反射させる反射界面27の位置とが、異なっていてもよい。
【0052】
傾倒面26Aの、加飾積層体10の法線方向Dn(Z方向Dz)に対する角度は、傾倒面26Aに接続する接続面26Bの、加飾積層体10の法線方向Dnに対する角度よりも大きい。具体的には、以下に説明する傾倒面26Aの法線方向Dnに対する角度θCは、傾倒面26Aに接続する接続面26Bの、加飾積層体10の法線方向Dnに対する角度θBよりも大きい。傾倒面26Aに接する接平面の、加飾積層体10の法線方向Dnに対する傾斜角θAの最大値が、角度θCである。傾倒面26Aと隣り合う接続面26Bに接する接平面の、加飾積層体10の法線方向Dnに対する傾斜角の最大値が、角度θBである。角度θBを、ライズ角θBとも称する。傾倒面26Aが、加飾積層体10の法線方向Dnに垂直な部分を有しており、且つ接続面26Bが、加飾積層体10の法線方向Dnに垂直な部分を有していない場合には、角度θCが角度θBよりも大きいとみなす。
【0053】
図4に示す例において、賦形層20の賦形面20aの、単位光学要素13を形成する一部は、加飾積層体10の法線方向Dnにおいて、裏側面12から表側面11に向けて突出する湾曲面25aを形成している。
図3及び
図4に示す例においては、各単位光学要素13の凹凸構造25がフレネルレンズ構造を有している。この場合、複数の傾倒面26Aは、球面レンズやシリンドリカルレンズのような曲面レンズのレンズ面を、当該曲面レンズの厚み方向(光軸方向)に垂直な面に沿って複数に分割することにより得られる複数のレンズ面に対応する。複数の接続面26Bは、当該複数のレンズ面を接続するライズ面に対応する。本実施の形態において、各単位光学要素13の凹凸構造25は、リニアフレネルレンズであるか、又はリニアフレネルレンズを組み合わせた構造を有している。特に、
図4に示す各単位光学要素13の凹凸構造25は、リニアフレネルレンズを組み合わせた構造を有している。このために、加飾積層体10を表側面11側から観察した場合、単位光学要素13の全体は凸レンズとして機能する。本実施の形態の各単位光学要素13は、光軸Axを有している。
【0054】
図3及び
図4に示す例において、単位光学要素13は、第1領域234を含んでいる。
図3及び
図4に示す例においては、複数の単位光学要素13の各々が、第1領域234を含んでいる。複数の傾倒面26Aは、第1領域234に配置された少なくとも1つの第1傾倒面26A1を含んでいる。本実施の形態において、複数の傾倒面26Aは、複数の第1傾倒面26A1を含んでいる。複数の接続面26Bは、隣り合う第1傾倒面26A1を接続する少なくとも1つの第1接続面26B1を含んでいる。複数の接続面26Bは、複数の第1接続面26B1を含んでいる。
図3及び
図4に示す例において、複数の第1傾倒面26A1は、平面である。複数の第1傾倒面26A1は、連続したレンズ面をその厚み方向に垂直な面に沿って分割した複数のレンズ面に対応する。複数の第1接続面26B1は、当該複数のレンズ面に対応する複数の第1傾倒面26A1を接続する、ライズ面に対応する。
図3及び
図4に示す例において、複数の第1傾倒面26A1の各々は、連続した凸レンズ面を分割して形成した複数の曲面の各々の機能に対応する機能を有するように構成されている。平面である複数の第1傾倒面26A1の傾きを調整することによって、複数の第1傾倒面26A1の各々が、連続した凸レンズ面を分割して形成した複数の曲面の各々の機能に対応する機能を有するように構成できる。図示はしないが、複数の第1傾倒面26A1の各々は、連続した凸レンズ面を分割してなる形状の曲面であってもよい。このような複数の第1傾倒面26A1によって、賦形層20の厚みを小さく抑えつつ、単位光学要素13を凸レンズとして機能させることができる。
【0055】
上述した通り、複数の傾倒面26Aは、加飾積層体10の法線方向Dn(Z方向Dz)に沿って延びる基準線に向かう方向に並び且つ基準線に向かって傾倒する。基準線に近接した位置で連続して並ぶ複数の傾倒面を、基準線近接傾倒面と称する。
図4に示す例では、基準線(第1基準線L1)が第1領域234を通っている。複数の第1傾倒面26A1が、基準線に近接した位置で連続して並んでいる。このため、
図4に示す例では、第1傾倒面26A1が基準線近接傾倒面に該当する。
【0056】
一例として、複数の傾倒面26Aが並ぶ方向に沿った単位光学要素13の断面において、基準線近接傾倒面の、基準線の一側におけるピッチの標準偏差が5μm以下であり且つ高さの標準偏差が1μm以下である。
図4は、複数の傾倒面26Aが並ぶ方向に沿った単位光学要素13の断面に相当する。
図4に示す例においては、第1傾倒面26A1が基準線近接傾倒面に該当する。この場合に、第1傾倒面26A1の、基準線の一側(
図4における第1基準線L1の右側又は左側)におけるピッチPの標準偏差が5μm以下であり且つ傾倒面26Aの高さH26の標準偏差が1μm以下であってもよい。このような単位光学要素13を有する加飾積層体10によれば、立体感の伴った従来にはない意匠表現を実現できる。
【0057】
基準線の一側において複数の基準線近接傾倒面が10以上並んでいる場合、基準線近接傾倒面の上記基準線の一側におけるピッチの標準偏差は、上記複数の傾倒面が並ぶ方向に沿った単位光学要素13の或る断面において、当該基準線に最も近い10の傾倒面の、当該基準線の一側におけるピッチの標準偏差である。基準線の一側において複数の基準線近接傾倒面が10以上並んでいる場合、基準線近接傾倒面の上記基準線の一側における高さの標準偏差は、上記複数の傾倒面が並ぶ方向に沿った単位光学要素13の或る断面において、当該基準線に最も近い10の傾倒面の、当該基準線の一側における高さの標準偏差である。
【0058】
図3に示す例では、加飾積層体10の平面視において、凹凸構造25は、単位光学要素13の外輪郭23aの少なくとも一部に沿って延びる傾倒面26Aを有する。
図3に示す例においては、第1傾倒面26A1が、単位光学要素13の外輪郭23aに沿って延びている。これにより、各単位光学要素13の外輪郭23aを効果的に際立たせることができる。図示された例では、互いに隣り合う単位光学要素13の間に間隙領域24が形成されている。このことによっても、各単位光学要素13の外輪郭23aを効果的に際立たせることができる。
図3に示す例において、複数の単位光学要素13は、平面視において正六角形状の外輪郭23aを有する。
図4に示された例において、複数の単位光学要素13はハニカム構造を形成している。
【0059】
図4に示す例において、複数の第1傾倒面26A1は、加飾積層体10の法線方向Dnに沿って延びる第1基準線L1に向かう方向に並んでいる。複数の第1傾倒面26A1は、第1基準線L1に向けて傾倒している。加飾積層体10を平面視したときの第1基準線L1の位置は、一点に定まっている。
図3に示す例において、各単位光学要素13において複数の第1傾倒面26A1が傾倒する方向の基準となる第1基準線L1は、各単位光学要素13の光軸Axに一致している。
【0060】
図3及び
図4に示す単位光学要素13においては、単位光学要素13の1つの全体にわたって第1領域234が広がっている。換言すれば、
図3及び
図4に示す単位光学要素13は、第1領域234を有し、且つ後述する第2領域235を有しない。
図3及び
図4に示す例においては、各単位光学要素13における凹凸構造25がフレネルレンズ構造を有している。
図3及び
図4に示す単位光学要素13の第1領域234に形成されている複数の第1傾倒面26A1及び複数の第1接続面26B1が、フレネルレンズ構造を形成している。
【0061】
図3に示すように複数の単位光学要素13が規則的に配列される場合、平面視における複数の単位光学要素13の幾何中心GCが規則的に配列されてもよい。本実施の形態において、単位光学要素13の幾何中心GCは、加飾積層体10の法線方向Dnから観察される単位光学要素13の外輪郭23aの形状の幾何中心である。本実施の形態では、隣り合う単位光学要素13の幾何中心GC同士の距離が、実質的に均一である。
図3に示す例において、各単位光学要素13の幾何中心GCは、各単位光学要素13の光軸Axに一致している。
【0062】
上述したように、本実施の形態の各単位光学要素13は、光軸Axを有している。このように、各単位光学要素13が光軸Axを有する場合、複数の単位光学要素13の光軸Axが、規則的に配列されていてもよい。この場合、隣り合う単位光学要素13の光軸Ax同士の距離が、実質的に均一である。
図3に示す例では、各単位光学要素13の光軸Axは、平面視における各単位光学要素13の幾何中心GCを通る。しかしながら、単位光学要素13の光軸Axの位置は、これに限られない。各単位光学要素13の光軸Axは、平面視における当該単位光学要素13の幾何中心GCを通らなくてもよい。
【0063】
本実施の形態において、加飾積層体10は、複数の単位光学要素13の間に形成された間隙領域24を有する。図示された例では、互いに隣り合う単位光学要素13の間に間隙領域24が形成されている。より具体的には、符号131を付した単位光学要素13の外輪郭23aの一の辺23bと、符号132を付した単位光学要素13の外輪郭23aの一の辺23bとは、間隙領域24を挟んで隣り合っている。符号131を付した単位光学要素13及び符号132を付した単位光学要素13の外輪郭23aの辺23b同士の間に、間隙領域24が形成されている。
【0064】
図3に示す例では、加飾積層体10の平面視において、各傾倒面26Aの形状は、単位光学要素13の外輪郭23aの形状と相似である。各傾倒面26Aは、外輪郭23aの全周に亘って、外輪郭23aと平行に延びている。これにより、単位光学要素13の外輪郭23aをさらに効果的に際立たせることができる。
【0065】
一例として、各単位光学要素13における凹凸構造25は、リニアフレネルレンズであるか、又はリニアフレネルレンズを組み合わせた構造を有している。
図3に示す例においては、各単位光学要素13における各傾倒面26Aは、当該単位光学要素13の外輪郭23aのいずれかの辺23bと当該単位光学要素13の光軸Axとの間を、当該辺23bと平行に直線状に延びる部分を含む。これにより、単位光学要素13の外輪郭23aを効果的に際立たせることができる。
【0066】
各単位光学要素13は、加飾積層体10に求められる機能又は加飾積層体10が表現する意匠に応じて、適宜設計可能である。図示された例のように、加飾部材3がセンサ5に対面して配置される場合、加飾積層体10はセンサ5から発せられる電磁波が加飾部材3を高透過率で透過することが求められる。この場合、加飾積層体10の厚みを小さくすることが好ましい。加飾積層体10が表現する意匠は、加飾積層体10の用途により異なり得る。例えば、加飾積層体10を移動体1の外装材に用いる場合、加飾積層体10の表側面11に虹光が発生するのを抑制することが好ましい。その一方で、加飾積層体10は、その表側面11に虹光が発生するように設計されることが好ましい場合もある。
【0067】
加飾積層体10の厚み以上の立体感を表現しつつ、加飾積層体10の厚みを小さくする場合、凹凸構造25の高さH25は、0.2μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることが更に好ましい。また、凹凸構造25の高さH25は、50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。したがって、凹凸構造25の高さH25は、1μm以上50μm以下であってよい。凹凸構造25の高さH25が1μm以上であることにより、光学作用によって表示される意匠の視認性を更に向上できる。なお、本明細書中、「凹凸構造の高さH25」とは、当該凹凸構造を形成する傾倒面26A又は接続面26Bの高さ(Z方向Dzの寸法)H26(
図4参照)の最大値を意味する。
【0068】
加飾積層体10の表側面11に虹光が発生するのを抑制する場合、凹凸構造25の高さH25は1.0μmより大きいことが好ましい。
【0069】
加飾積層体10の表側面11に虹光が発生するのを抑制する場合、凹凸構造25のピッチP(傾倒面26AのピッチPとも称する)は、7.5μm以上であることが好ましく、12μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることが更に好ましい。また、単位光学要素13の小サイズ化を実現する観点から、凹凸構造25のピッチPは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。したがって、凹凸構造25のピッチPは、7.5μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0070】
一方、加飾積層体10の表側面11に虹光を発生させることが望まれる場合、凹凸構造25の高さH25は、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましい。また、この場合、凹凸構造25の高さH25は1.0μm以下であることが好ましい。したがって、凹凸構造25の高さH25は、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
【0071】
加飾積層体10の表側面11に虹光を発生させることが望まれる場合、凹凸構造25のピッチPは7.5μm未満であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることが更に好ましい。
【0072】
凹凸構造25を精度良く形成する観点から、凹凸構造25の高さH25は、0.2μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることが更に好ましい。また、同様の観点から、凹凸構造25のピッチPは、2μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることが更に好ましい。
【0073】
凹凸構造25のピッチPは、互いに等しくてもよいし、互いに異なっていてもよい。
図3に示す例において、凹凸構造25のピッチPは、当該凹凸構造25の光軸Axからの距離によって異なっている。具体的には、ピッチPは、光軸Axから離れるにつれて小さくなっている。凹凸構造25の高さH25、傾倒面26Aの高さH26及びピッチPは、走査型電子顕微鏡を用いて加飾積層体10の断面の画像を観察することによって測定できる。
【0074】
上述したように、本実施の形態の凹凸構造25は、フレネルレンズ構造である。本実施の形態の凹凸構造25は、焦点を有している。このように、凹凸構造25が焦点を有する場合に、凹凸構造25の焦点距離は、0.5mm以上350mm以下であることが好ましい。凹凸構造25の焦点距離は、2mm以上250mm以下であることがより好ましく、5mm以上150mm以下であることが更に好ましい。これにより、賦形層20の単位光学要素13が設けられている領域において、賦形層20の厚み以上の立体感を効果的に表現できる。このため、高級感をともなった豊かな意匠表現を実現できる。
【0075】
複数の単位光学要素13の少なくとも一つにおける凹凸構造25の焦点距離は、他の単位光学要素13における凹凸構造25の焦点距離とは異なっていてもよい。これにより、観察者は、各々の単位光学要素13のZ方向Dzにおける位置を、互いに異なるように感知する。これにより、立体感の伴った従来にはない意匠表現を実現できる。
【0076】
凹凸構造25のライズ角θB(
図4参照)は、適宜設定可能である。接続面26Bは、加飾積層体10の法線方向Dn(Z方向Dz)と平行にZ方向Dzに延びていてもよいし、加飾積層体10の法線方向Dnとは非平行に延びていてもよい。言い換えると、ライズ角θBは0°であってもよいし、0°より大きくてもよい。凹凸構造25を賦形が容易な形状にすること、及び賦形面20aと他の層(図示された例では、輝度調整層30)とをより強固に密着させることを考慮すると、ライズ角θBは、好ましくは15°以上であり、さらに好ましくは25°以上である。傾倒面26Aの面積を十分に確保して凹凸構造25にレンズ効果を適切に発揮させる観点からは(言い換えると、賦形層20に適切な奥行き感を表示させる観点からは)、ライズ角θBは、好ましくは55°以下であり、さらに好ましくは45°以下である。
【0077】
図示された例では、賦形層20を構成する材料として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)にウレタンアクリレートを混合したものが採用される。また、図示された例では、賦形層20を構成する材料は、シリコーンを含んでいる。このような賦形層20は、その液状の前駆材料を後述する基材72等の上に塗布した後、これを賦形型で賦形し紫外線照射して硬化させることにより、形成できる。賦形層20の前駆材料は、例えば、アクリル樹脂と、(メタ)アクリル系重合性モノマー又はオリゴマーと、を含む紫外線硬化性樹脂であってよい。この場合のアクリル樹脂は、重合性不飽和基を有してもよい。本明細書において、(メタ)アクリルという表現は、「アクリル」および「メタクリル」の一方または両方を意味する。アクリル樹脂/(メタ)アクリル系重合性モノマー又はオリゴマーの質量比率は、35/65以上95/5以下であることが好ましく、70/30以上90/10以下であることがさらに好ましい。この場合のアクリル樹脂/(メタ)アクリル系重合性モノマー又はオリゴマーは、紫外線硬化性樹脂における重合性不飽和基を有してもよい。このようにして形成された賦形層20は、柔軟性があり、延伸性を有する。このため、加飾積層体10を成形部65の面に沿って湾曲または延伸させる際に、賦形層20を所望のように湾曲または延伸させることができる。言い換えると、賦形層20によって、加飾積層体10の湾曲または延伸が妨げられる虞が少ない。
【0078】
図示された例では、輝度調整層30を表側面11から視認できるよう、賦形層20は透明である。図示された例では、複数の単位光学要素13の凹凸構造25は、継ぎ目無しで一体的に成形される(
図4参照)。
図4に示す例においては、複数の単位光学要素13の凹凸構造25と、凹凸構造25の間に位置する間隙領域24とが、継ぎ目無しで一体的に成形されている。
【0079】
<輝度調整層>
次に、輝度調整層30について説明する。輝度調整層30は、加飾積層体10で反射される光の輝度を調整する層である。加飾積層体10で反射される光の輝度が調整されることで、高級感をともなった豊かな意匠を、さらに効果的に加飾積層体10に付与できる。
【0080】
輝度調整層30は、加飾積層体10の表側面11の側で測定される可視光の反射率を調整するために設けられている。輝度調整層30は、賦形層20の賦形面20aを覆っている。これにより、賦形面20aと輝度調整層30との間の反射界面27における可視光の反射率が調整され、加飾積層体10の表側面11の側で測定される可視光の反射率が調整される。輝度調整層30の賦形層20に対面する面には、賦形面20aに対応する凹凸が形成されている。言い換えると、輝度調整層30には、賦形層20の凹凸構造25に対応する凹凸構造が形成されている。
【0081】
一例として、輝度調整層30は、反射層33である。反射層33は、賦形層20の賦形面20aを被覆することにより、賦形面20aと反射層33との間に反射界面27を形成する。反射層33によって、賦形面20aと反射層33との間の反射界面27における可視光の反射率が向上し、これにより加飾積層体10で反射される光の輝度が調整される。この反射層33は、金属材料又は無機材料の蒸着、若しくは金属材料又は無機材料のコーティング等により形成できる。反射層33は、透明蒸着層であってもよい。反射層33は、薄い膜状の層として形成される。反射層33の厚みは、接続面26Bの高さ(傾倒面26Aの高さ)H26よりも薄くなっていてもよい。反射層33の厚みは、凹凸構造25の高さH25の半分以下でもよく、接続面26Bの高さ(傾倒面26Aの高さ)H26の25%以下でもよく、接続面26Bの高さ(傾倒面26Aの高さ)H26の10%以下でもよい。このような厚みの反射層33は、賦形面20aの凹凸を埋めることなく、賦形面20aに対面する側とは反対の側に賦形面20aの凹凸に対応する凹凸を有する。図示はしないが、反射層33が、賦形面20aの凹凸を埋めていてもよい。一例として、加飾積層体10が反射層33を備え、且つ賦形層20が透明である場合に、賦形面20aと反射層33との間に形成された反射界面27が、表側面11から視認可能となる。
【0082】
図13Aに示す例では、輝度調整層30(反射層33)が、賦形面20aに対面する側とは反対の側に賦形面20aの凹凸に対応する凹凸を有している。輝度調整層30の当該凹凸は、接合層35によって埋められている。接合層35は、加飾積層体10の他の層と成形部65とを接合(接着、粘着または熱融着)させる。図示はしないが、
図5に示す着色層36の例と同様に、反射層33は、賦形面20aの凹凸を埋めるように形成されてもよい。
図13Aに示す例において、反射層33の接合層35に対面する面は、フレネルレンズ面26の凹凸に対応する凹凸を有している。したがって、接合層35は、フレネルレンズ面26の凹凸に対応する凹凸を有している。
【0083】
反射層33の材料としては、反射層33が形成する反射界面27の反射率が向上する材料を用いることが好ましく、さらに電波透過性をもつ材料を用いることがより好ましい。この場合、反射層33を構成する材料としては、例えば、アルミニウム、インジウム、錫等の金属材料や、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、硫化亜鉛、酸化アルミニウム等を用いることができる。特に、加飾積層体10をインサート成形によって成形部65と接合する場合には、反射層33を構成する材料は、インジウム、錫等の金属材料や、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO2)、硫化亜鉛、酸化アルミニウム等であることが好ましい。
【0084】
上述したように、センサ5で用いられる電磁波が、加飾積層体10を透過する。反射層33が、賦形面20aの全面に連続的に広がる層として形成されると、電磁波が遮断または減衰される。そこで、
図13Bに示すように、反射層33は、複数の金属粒部31を含んでもよい。金属粒部31は、金属光沢を有し、可視光を反射可能となっている。反射層33は、いわゆる海島構造の島を形成している。島状の金属粒部31が、互いに離間している。複数の金属粒部31の間には、海島構造の海を形成するすき間が設けられている。センサ5で用いられる電磁波、例えばミリ波は、このすき間を通過することによって、反射層33を透過する。このような金属層は、例えばインジウム材料として、スパッタリングや真空蒸着等の蒸着により形成され得る。反射層33は、複数の単位光学要素13にまたがって、継ぎ目無しで一体的に形成されてもよい。
【0085】
反射層33の厚みは、反射層33が形成する反射界面27の反射率を向上させることができる厚みであることが好ましい。反射層33の厚みは、例えば、0.005μm以上であってよい。また、反射層33の厚みは、20μm以下であってよい。したがって、反射層33の厚みは、0.005μm以上20μm以下であってよい。反射層33及び加飾積層体10に含まれるその他の層の厚みも、走査型電子顕微鏡を用いて加飾積層体10の断面の画像を観察することによって測定できる。
【0086】
反射層33を備える加飾積層体10は、賦形層20の賦形面20a上に反射層33を形成する工程を備える加飾積層体10の製造方法によって、製造できる。この場合、反射層33を形成する工程においては、賦形面20a上に、スパッタリングや真空蒸着等の成膜技術により、反射層33を形成する。
【0087】
<充填層>
充填層40は、輝度調整層30の凹凸を埋める平坦化層である。
図4に示す例では、輝度調整層30の充填層40に対面する面は、賦形面20aの凹凸に対応する凹凸を有している。
図4に示す例では、充填層40は、加飾積層体10の裏側面12を形成している。
【0088】
充填層40は、透明又は不透明な樹脂層とすることができる。充填層40は、上述した接合層35を兼ねていてもよい。すなわち、加飾部材3において、輝度調整層30の凹凸が接合層35によって埋められていてもよい。この場合、接合層35(充填層40)を形成する材料としては、熱可塑性樹脂や(メタ)アクリル酸エステル系共重合体などを採用可能である。熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えばアクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ゴム、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂等を採用可能である。これらの樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0089】
充填層40は、透明または不透明な樹脂層であってよい。充填層40が不透明である場合、充填層40によって、加飾部材3が適用される物品又は成形部65の少なくとも一部を隠蔽できる。例えば
図2に示す例では、充填層40が不透明であることにより、加飾部材3はセンサ5を隠蔽することができる。
【0090】
<拡散層>
拡散層90は、入射した光を拡散させる層である。拡散層90は、自身に対して入射した光を拡散させる。拡散層90は、加飾積層体10の表側面11から入射した光を拡散させる。拡散層90は、反射界面27において反射された光を拡散させてもよい。拡散層90は、反射界面27よりも表側面11に近い位置に位置する。すなわち、拡散層90と表側面11との距離は、反射界面27と表側面11との距離よりも小さい。一例として、拡散層90は、賦形層20よりも表側面11に近い位置に位置する。すなわち、拡散層90と表側面11との距離は、賦形層20と表側面11との距離よりも小さい。
図4に示すように、拡散層90は、反射界面27よりも表側面11に近い位置に位置する。
図4に示す例において、表側面11の側から加飾積層体10の内部に進入した光は、反射界面27において反射されて表側面11から加飾積層体10の外部へと進む。このとき、拡散層90は、反射界面27において反射されて表側面11から加飾積層体10の外部へと進む光を拡散させてもよい。入射した光を拡散層90が拡散させることによって、加飾積層体10の表側面11における光沢が減少する。このため、拡散層90によって加飾積層体10の表側面11に生じる艶を減らし得る。これによって、加飾積層体10により艶の抑制されたマットな質感を表現できる。
【0091】
図4に示す例において、拡散層90は、賦形層20を保護するハードコート層91を兼ねている。一例として、ハードコート層91は、耐擦傷性等を有している。この場合、拡散層90(ハードコート層91)は、賦形層20の非賦形面20bを覆うように設けられる。拡散層90(ハードコート層91)は、加飾積層体10の表側面11を形成している。拡散層90(ハードコート層91)は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂やEB硬化性樹脂等の樹脂組成物によって形成され得る。
【0092】
図4に示す例において、拡散層90は、入射した光を拡散させる凹凸面92を有する。
図4に示す例において、凹凸面92は、拡散層90の、加飾積層体10の表側面11を形成する面である。拡散層90が凹凸面92を有する場合、拡散層90に入射した光は、凹凸面92で乱反射することにより拡散される。
図4に示す例においては、加飾積層体10の表側面11から入射した光が、凹凸面92によって拡散される。反射界面27において反射された光が、凹凸面92を通ることで拡散されてもよい。
【0093】
凹凸面92は、上述した単位賦形要素23に相当する形状を有しない。例えば、凹凸面92は、リニアフレネルレンズ、又はリニアフレネルレンズを組み合わせた構造を有しない。凹凸面92は、サーキュラーフレネルレンズを有しない。凹凸面92は、フレネルレンズ構造を有しない。一例として、凹凸面92は、複数のレンズ面が加飾積層体10の法線方向Dnに沿って延びる基準線に向けて傾倒しているような形状を有しない。一例として、凹凸面92は、上述した複数の傾倒面26Aと複数の接続面26Bとを有する単位賦形要素23に相当する形状を有しない。
【0094】
凹凸面92に形成されている凹凸は、不規則な形状を有していてもよい。不規則な形状の凹凸が形成された凹凸面92を有する拡散層90は、例えば以下の方法によって作製できる。まず、樹脂と、樹脂中に拡散された粒子とを含み、樹脂中から粒子の一部が突出していることによって表面に不規則な形状の凹凸が形成されている凹凸層を準備する。次に、当該凹凸層上に拡散層90を形成する。これによって、拡散層90の凹凸層と接する面に、凹凸層の表面の凹凸に対応する不規則な形状の凹凸が形成された凹凸面92を有する拡散層90を作製できる。この場合、凹凸面92を有する拡散層90を作製した後に、拡散層90から凹凸層を剥離してもよい。一例として、凹凸層は、後述する離型層73である。
図4に示す加飾積層体10の拡散層90を作製する方法の、より具体的な例については後述する。
【0095】
凹凸面92に形成されている凹凸は、規則的な凹凸であってもよい。この場合、凹凸面92に形成されている規則的な凹凸のピッチは、単位光学要素13における凹凸構造25のピッチPよりも小さくてもよい。一例として、凹凸面92のピッチは、10μmより小さい。凹凸面92のピッチは、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよく、3μm以下であってもよい。一例として、凹凸面92に形成されている規則的な凹凸は、複数の突起部を有する。一例として、複数の突起部は、加飾積層体10の法線方向Dnに突出している。この場合、複数の突起部は、加飾積層体10の法線方向Dnに対して傾斜した傾斜面を有していてもよい。複数の突起部は、円錐、円錐台、角錐又は角錐台の形状を有していてもよい。
【0096】
図4に示すように、凹凸面92が加飾積層体10の表側面11を形成している場合、凹凸面92が、加飾積層体10に触れた者に触感を与えてもよい。一例として、凹凸面92は、加飾積層体10に触れた者に、摩擦が小さく「さらさら」とした触感を与える。「さらさら」した触感は官能的な表現であるが、本明細書における「さらさら」は一般的に「さらさら」と感じる触感であるもの全てが包含される。具体的には、指の腹で湿り気のない滑らかな面を触れた際に感じる触感を意味する。
【0097】
一例として、拡散層90は樹脂を含む。拡散層90は、樹脂からなっていてもよい。拡散層90に含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂を採用できる。拡散層90に含まれる樹脂として、硬化性樹脂を採用してもよい。この場合、拡散層90に含まれる樹脂として、熱硬化性樹脂、電子線(EB)硬化性樹脂または紫外線(UV)硬化性樹脂を採用してもよい。
【0098】
以上の構成を有する加飾積層体10の厚みは、0.005mm以上としてもよく、0.025mm以上としてもよく、0.05mm以上としてもよく、0.1mm以上としてもよく、0.15mm以上としてもよい。また、加飾積層体10の厚みは、2mm以下としてもよく、1.0mm以下としてもよく、1mm以下としてもよく、0.75mm以下としてもよく、0.5mm以下としてもよい。したがって、加飾積層体10の厚みは、0.005mm以上2mm以下であってよい。加飾積層体10の厚みは、0.025mm以上1.0mm以下としてもよく、0.05mm以上1mm以下としてもよく、0.1mm以上0.75mm以下としてもよく、0.15mm以上0.5mm以下としてもよい。
【0099】
<<加飾積層体の作用>>
次に、加飾積層体10の作用について説明する。加飾積層体10は、意匠を表示し、加飾積層体10が適用された物品等に意匠を付与する。ところで、加飾積層体10が立体感を表現できれば、高級感をともなった豊かな意匠表現が可能となる。加飾積層体10による立体感は、物理的な凹凸構造を形成することによって、表現できる。その一方で、加飾積層体10の用途等に依存して、加飾積層体10の厚みを十分に厚くすることができない場合がある。その一方で、例えば車両のフロントグリルに用いられる加飾部材のように、多くの加飾部材は軽量化の観点から薄肉化が要望される場合がある。ミリ波等の電磁波の透過を予定された加飾部材の厚みは、ミリ波の波長に応じて設定され、制約を受ける。加えて、電磁波の透過率を改善する観点から、加飾積層体の厚みを低減することが好ましい。
【0100】
これに対して、本実施の形態によれば、
図4に示すように、加飾積層体10が、少なくとも一つの単位光学要素13を有している。
図6は、単位光学要素13の光学作用を説明するための図である。本実施の形態では、単位光学要素13は、凸面鏡として機能するように構成されている。この場合、
図6に示すように、凸面鏡M1に映り込む範囲A1は、凸面鏡M1と同一位置に配置された鏡面反射面よりも広くなる。すなわち、凸面鏡M1に映り込む範囲A1は、加飾積層体10の法線方向Dnにおいて、観察者からより遠くに離間して配置された鏡面反射面M3に映り込む範囲A1と同一となる。結果として、上記反射界面への映り込みを観察した観察者は、凸面鏡M1として機能する単位光学要素13における反射界面27が実際の反射界面27の位置よりも奥深くに位置しているように感じる。すなわち、単位光学要素13によって、賦形層20の実際の厚みよりも深い奥行き感のある意匠を表示できる。このようにして、単位光学要素13は、賦形層20の厚みよりも奥行き感のある意匠を表示できる。したがって、賦形層20の厚みを薄くしながら、賦形層20の厚み以上の立体感を表現できる。これにより、高級感をともなった豊かな意匠表現を実現できる。
【0101】
<鏡面光沢度>
上述した加飾積層体10の作用を考慮して、さらに加飾積層体10の鏡面光沢度の好ましい数値範囲について説明する。加飾積層体10の表側面11における入射角85°での鏡面光沢度を、G(85)と記載する。加飾積層体10の表側面11における入射角20°での鏡面光沢度を、G(20)と記載する。加飾積層体10の表側面11における入射角60°での鏡面光沢度を、G(60)と記載する。このとき、鏡面光沢度G(85)の鏡面光沢度G(20)に対する比率である比率G(85)/G(20)は、2以上30以下である。
【0102】
鏡面光沢度G(85)、鏡面光沢度G(20)の測定方法について説明する。鏡面光沢度G(85)は、85°に入射角を設定することを除き、JIS Z 8741:1997に準拠して測定された値とする。鏡面光沢度G(20)は、20°に入射角を設定することを除き、JIS Z 8741:1997に準拠して測定された値とする。鏡面光沢度G(60)は、60°に入射角を設定することを除き、JIS Z 8741:1997に準拠して測定された値とする。鏡面光沢度を測定する際の測定環境は、温度23℃±2℃、相対湿度50%±5%とする。測定対象となる試料は、測定開始前に、測定環境に16時間配置する。鏡面光沢度の測定前には、測定装置の光源を15分間点灯し、光源の出力を安定させる。
【0103】
鏡面光沢度を測定する際、測定対象となる試料の入射面に対向する裏面に、黒色のテープを貼合して測定を実施する。
【0104】
比率G(85)/G(20)が上述した数値範囲にあることの効果について説明する。まず、比率G(85)/G(20)が2以上であることの効果について説明する。加飾積層体10には、立体感を有する意匠を表現することが要望される場合がある。その一方で、加飾積層体10には、艶の抑制されたマットな質感を表現することが要望される場合もある。発明者らは、上記課題に鑑みて研究を重ね、本開示の加飾積層体10に係る発明を完成させた。本開示の加飾積層体10は、
図4に示すように、単位光学要素13を備える。単位光学要素13において、賦形層20の賦形面20aは、光が反射される反射界面27を形成する。これによって、単位光学要素13は、入射した光を反射、屈折および/又は回折させる。このような単位光学要素13によって、加飾積層体10に、奥行きが感じられて立体感のある意匠を表現させ得る。その一方で、本開示の加飾積層体10は、
図4に示すように、賦形層20よりも表側面11に近い位置に位置する拡散層90を備えている。拡散層90は、反射界面27よりも表側面11に近い位置に位置する。拡散層90は、入射した光を拡散させる。これにより、加飾積層体10の表側面11における光沢を減少させて、加飾積層体10によって艶の抑制されたマットな質感を表現できる。本開示の加飾積層体10によれば、単位光学要素13における反射界面27によって立体感を表現し、且つ反射界面27よりも表側面11に近い位置に位置する拡散層90によって、加飾積層体10の表側面11における艶を減少させ得る。すなわち、本開示の加飾積層体10によれば、表側面11においてマットな質感を表現することと、加飾積層体10の表側面11よりも奥の位置において立体感を表現することとを、両立し得る。
【0105】
比率G(85)/G(20)が2以上であることの効果について説明するために、比較例として、
図7A、
図7B及び
図7Cに示す加飾積層体について考える。
図7A、
図7B及び
図7Cでは、上述した本実施の形態に係る加飾積層体10と同様に構成され得る部分について、本実施の形態に係る加飾積層体10における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いる。
【0106】
図7Aに示す加飾積層体は、以下に記載する点を除き、
図4に示す加飾積層体10と同様の特徴を有する。
図7Aに示す加飾積層体の反射界面27は、平坦な面である。このため、
図7Aに示す加飾積層体は、単位光学要素13を備えていない。
図7Aに示す加飾積層体のハードコート層91は、凹凸の形成された面を有しない。このため、
図7Aに示す加飾積層体のハードコート層91は、入射した光を拡散させる拡散層90としては機能しない。
図7Bに示す加飾積層体は、以下に記載する点を除き、
図4に示す加飾積層体10と同様の特徴を有する。
図7Bに示す加飾積層体の反射界面27は、平坦な面である。このため、
図7Bに示す加飾積層体は、単位光学要素13を備えていない。
図7Cに示す加飾積層体は、以下に記載する点を除き、
図4に示す加飾積層体10と同様の特徴を有する。
図7Cに示す加飾積層体のハードコート層91は、凹凸の形成された面を有しない。このため、
図7Cに示す加飾積層体のハードコート層91は、入射した光を拡散させる拡散層90としては機能しない。
【0107】
ここで、加飾積層体の表側面11に一定の強度の光を入射させる場合について考える。この場合、光を入射角20°で入射させる場合のほうが、光を入射角85°で入射させる場合よりも、表側面11を通過して反射界面27に向かう光の強度は大きくなる。その一方で、光を入射角20°で入射させる場合のほうが、光を入射角85°で入射させる場合よりも、表側面11において正反射される光の強度は小さくなる。
【0108】
さらに、
図7Aに示す加飾積層体と
図7Bに示す加飾積層体との各々の表側面11に、一定の強度の光を入射させる場合について考える。この場合、
図7Aよりも
図7Bにおいて、単位光学要素13における反射界面27において入射した光が反射、屈折および/又は回折する分だけ、正反射する光の強度が小さくなる。これによって、
図7Aよりも
図7Bにおいて、鏡面光沢度は減じられる。ここで、光を入射角20°で入射させる場合のほうが、光を入射角85°で入射させる場合よりも、表側面11を通過して反射界面27に向かう光の強度は大きくなる。このため、光を入射角20°で入射させる場合のほうが、光を入射角85°で入射させる場合よりも、単位光学要素13における反射界面27により鏡面光沢度が減じられる効果を大きく受ける。すなわち、
図7Bに示すような単位光学要素13を備える加飾積層体と、
図7Aに示すような単位光学要素13を備えない加飾積層体との鏡面光沢度の差を比較すると、
図7Bと
図7Aとの間における鏡面光沢度G(20)の差は、
図7Bと
図7Aとの間における鏡面光沢度G(85)の差よりも大きくなる。したがって、比率G(85)/G(20)は、
図7Bに示すような単位光学要素13を備える加飾積層体において、
図7Aに示すような単位光学要素13を備えない加飾積層体よりも、大きくなる。同様の論理により、比率G(85)/G(20)は、作用の強い単位光学要素13を備える加飾積層体において、作用の弱い単位光学要素13を備える加飾積層体よりも、大きくなる。
【0109】
続いて、
図7Aに示す加飾積層体と
図7Cに示す加飾積層体との各々の表側面11に、一定の強度の光を入射させる場合について考える。この場合、
図7Aよりも
図7Cにおいて、拡散層90において光が拡散される分だけ、正反射する光の強度が小さくなる。これによって、
図7Aよりも
図7Cにおいて、鏡面光沢度は減じられる。ここで、光を入射角20°で入射させる場合のほうが、光を入射角85°で入射させる場合よりも、表側面11及び拡散層90を通過して反射界面27に向かう光の強度は大きくなる。その一方で、光を入射角20°で入射させる場合のほうが、光を入射角85°で入射させる場合よりも、拡散層90を通過することなく拡散層90の表面で反射される光の強度は小さくなる。そして、表側面11及び拡散層90を通過して反射界面27に向かう光は、表側面11を通過して反射界面27に向かうときと、反射界面27において反射されて表側面11に向かう時との2回、拡散層90を通過する。これによって、当該光は、拡散層90による拡散の作用を2回受ける。このため、光を入射角20°で入射させる場合のほうが、光を入射角85°で入射させる場合よりも、拡散層90により鏡面光沢度が減じられる効果を大きく受ける。すなわち、
図7Cに示すような拡散層90を備える加飾積層体と、
図7Aに示すような拡散層90を備えない加飾積層体との鏡面光沢度の差を比較すると、
図7Cと
図7Aとの間における鏡面光沢度G(20)の差は、
図7Cと
図7Aとの間における鏡面光沢度G(85)の差よりも大きくなる。したがって、比率G(85)/G(20)は、
図7Cに示すような拡散層90を備える加飾積層体において、
図7Aに示すような拡散層90を備えない加飾積層体よりも、大きくなる。同様の論理により、比率G(85)/G(20)は、作用の強い拡散層90を備える加飾積層体において、作用の弱い拡散層90を備える加飾積層体よりも、大きくなる。
【0110】
以上より、加飾積層体が単位光学要素13を備えない場合、加飾積層体の備える単位光学要素13の作用が弱い場合、加飾積層体が拡散層90を備えない場合、及び加飾積層体の備える拡散層90の作用が弱い場合のいずれにおいても、比率G(85)/G(20)は小さくなる。その一方で、表側面11においてマットな質感を表現することと、加飾積層体10の表側面11よりも奥の位置において立体感を表現することとを両立する観点からは、単位光学要素13の作用も、拡散層90の作用も、一定以上強いことが好ましい。
【0111】
発明者らは、上記知見に鑑みてさらに研究を重ね、比率G(85)/G(20)が2以上であれば、単位光学要素13の作用も、拡散層90の作用も、強くできることを見出した。以上より、比率G(85)/G(20)を2以上とすることによって、単位光学要素13の作用と拡散層90の作用とを強くして、マットな質感を表現することと立体感を表現することとを両立し得る。
【0112】
特に、輝度調整層30として、アルミニウムの蒸着膜である反射層33を用いる場合には、反射界面27における光を反射させる作用を特に大きくできる一方で、マットな質感を表現しにくくなることも想定される。比率G(85)/G(20)が2以上であれば、輝度調整層30として、アルミニウムの蒸着膜である反射層33を用いた場合であっても、マットな質感を表現することと立体感を表現することとを両立できる。
【0113】
次に、比率G(85)/G(20)が30以下であることの効果について説明する。仮に比率G(85)/G(20)が30より大きい場合、反射界面27の、光を表側面11に向けて反射させる作用が弱いために、G(20)が特に小さくなっていることが想定される。一例として、反射界面27を形成する材料の光を反射させる作用が弱いために、G(20)が特に小さくなっていることが想定される。比率G(85)/G(20)が30以下であると規定することにより、上述したような、反射界面27の光を反射させる作用が弱いために、G(20)が特に小さくなっている場合が除外される。このため、反射界面27の光を反射させる作用の強さを十分に確保できる。これによって、奥行きが感じられて立体感のある意匠を表現するという単位光学要素13における反射界面27の効果を安定的に生じさせ得る。
【0114】
以上より、比率G(85)/G(20)が2以上30以下であることによって、単位光学要素13の作用と拡散層90の作用とを十分に強くして、マットな質感を表現することと立体感を表現することとを両立できる。より安定的に、マットな質感を表現することと立体感を表現することとを両立する観点からは、比率G(85)/G(20)は、3より大きく30以下であってもよい。
【0115】
一例として、加飾積層体10の表側面11における入射角60°での鏡面光沢度G(60)は、70以下である。鏡面光沢度G(60)は、60以下であってもよい。上述のように鏡面光沢度G(60)に上限値が定められた加飾積層体10によれば、より安定的に、艶の抑制されたマットな質感を表現できる。
【0116】
<全光線反射率(RSCI)>
上述した加飾積層体10の作用を考慮して、さらに加飾積層体10の全光線反射率(RSCI)の好ましい数値範囲について説明する。加飾積層体10の表側面11の側からJIS Z 8722:2009に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)は、10%以上であることが好ましい。
【0117】
ここで、本実施の形態における加飾積層体10の表側面11の全光線反射率(RSCI)は、JIS Z 8722:2009に準拠して幾何条件cで測定される。本明細書における全光線反射率(RSCI)は、JIS Z 8722:2009に準拠して、分光測色計を用いて、SCI方式で測定した反射率Y値(三刺激値XYZのY)である。全光線反射率(RSCI)の測定は、コニカミノルタ株式会社製の分光測色計(型番CM-700d)を用いて行う。測定の際、測定条件、観察条件、及び、測定径/照明径を以下のように設定する。全光線反射率(RSCI)の測定は、平らな台の上に置いた加飾積層体10の表側面11に分光測色計を垂直に押し当てて行う。この分光測色計の測定波長範囲は400nm~700nmであり、測定波長間隔は10nmである。
<測定条件>
・モード(正反射光処理モード):I+E(SCI+SCE)
<観察条件>
・表色系:Yxy
・視野角:10°視野
・主光源:D65
<測定径/照明径>
ターゲットマスクの交換及びレンズ位置切替えにより、Φ3mm/Φ6mm及びΦ8mm/Φ11mmのいずれかに設定。
【0118】
測定径/照明径は、単位光学要素13の寸法に応じて選択する。ここで、照明径は、分光測色計の照射領域の直径であり、測定径は、分光測色計の測定領域Cの直径である(
図8参照)。
【0119】
図示された例では、単位光学要素13の幾何中心に測定領域Cの中心を合わせた場合に、当該測定領域Cに当該単位光学要素13の少なくとも40%が収まるように測定径/照明径を選択し、全光線反射率(RSCI)を設定する。測定径は、選択可能な測定径の中から最も小さい測定径を選択する。例えば、単位光学要素13の少なくとも40%が直径3mmの仮想円内に収まる場合には、測定径/照明径がΦ3mm/Φ6mm及びΦ8mm/Φ11mmのいずれの場合であっても単位光学要素13の少なくとも40%が測定領域C内に収まるが、測定径/照明径をΦ3mm/Φ6mmに設定する。また、単位光学要素13の少なくとも40%が直径8mmの仮想円内に収まるが直径3mmの仮想円内に収まらない場合には、測定径/照明径をΦ8mm/Φ11mmに設定する。
【0120】
次に、
図8に示すように、加飾積層体10の平面視において、分光測色計の測定領域Cの中心が上記単位光学要素13の幾何中心と一致するように、単位光学要素13に対する測定領域Cの位置を決定して、全光線反射率(R
SCI)を測定する。
【0121】
上述した全光線反射率(RSCI)が10%以上である加飾積層体10においては、単位光学要素13における反射界面27の、光を表側面11に向けて反射させる作用が十分に強くなっていると考えられる。このため、奥行きが感じられて立体感のある意匠を表現するという単位光学要素13における反射界面27の効果を、より安定的に生じさせ得る。
【0122】
<<転写シート>>
図9は、
図4に示す加飾積層体10を成形部65に転写するのに用いられる転写シート70である。転写シート70は、上述した加飾積層体10と、加飾積層体10の表側面11と向かい合う基材72と、を備えている。本実施の形態において、基材72は、加飾積層体10を成形部65に転写する際に加飾積層体10から剥離される、転写用基材である。
【0123】
図9に示す例において、基材72は平板である。基材72としては、例えばポリエステル樹脂フィルムやポリオレフィン樹脂フィルム等、一般的な転写シートの基材として用いられるものを採用可能である。
【0124】
図9に示す転写シート70は、離型層73を備える。離型層73は、基材72の加飾積層体10と向かい合う面に形成されている。離型層73は、加飾積層体10からの基材72の剥離を容易にする剥離性を有する。
図9に示す例において、離型層73は、第1面73aと、第1面73aの反対側に位置する第2面73bとを有している。離型層73は、第1面73aにおいて基材72に接触している。離型層73の第2面73bは、加飾積層体10の表側面11と向かい合っている。離型層73は、第2面73bにおいて加飾積層体10の表側面11に接触している。
図9に示す例においては、拡散層90が加飾積層体10の表側面11を形成している。離型層73は、第2面73bにおいて拡散層90に接触している。
【0125】
図9に示す例において、離型層73の第2面73bには、拡散層90の凹凸面92に対応する形状の凹凸が形成されている。
図9に示す例において、離型層73は、樹脂74と、樹脂74中に拡散された粒子75とを含んでいる。樹脂74中から粒子75の一部が突出していることによって、離型層73の第2面73bに不規則な形状の凹凸が形成されている。離型層73の樹脂74を形成する材料としては、熱可塑性樹脂を採用できる。樹脂74を形成する材料として、硬化性樹脂を採用してもよい。この場合、樹脂74を形成する材料として、熱硬化性樹脂、電子線(EB)硬化性樹脂または紫外線(UV)硬化性樹脂を採用してもよい。より具体的には、樹脂74として、アクリル樹脂、塩酢ビ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や、これらの熱可塑性樹脂と硬化剤とを組み合わせた熱硬化性樹脂を採用可能である。粒子75は、有機材料を含んでもよく、無機材料を含んでもよい。粒子75が有機材料を含む場合、粒子75はアクリルビーズであってもよい。図示はしないが、離型層73の第2面73bに凹凸が形成されていない場合、離型層73は粒子75を含まなくてもよい。この場合、離型層73は樹脂74からなっていてもよい。
【0126】
転写シート70は、第1面70aと、第1面70aとは反対側に位置する第2面70bとを有している。第1面70aと加飾積層体10の表側面11との距離は、第1面70aと加飾積層体10の裏側面12との距離よりも小さい。第2面70bと加飾積層体10の裏側面12との距離は、第2面70bと加飾積層体10の表側面11との距離よりも小さい。本実施の形態において、転写用基材である基材72は、転写シート70の第1面70a及び第2面70bのいずれか一方を形成している。
図9に示す例においては、転写用基材である基材72が、転写シート70の第1面70aを形成している。
図9に示す例においては、加飾積層体10の裏側面12が、転写シート70の第2面70bを形成している。
【0127】
<<加飾部材の製造方法>>
次に、
図10乃至
図14を参照して、本実施の形態による加飾部材3(すなわち、
図2に示す加飾部材3)の製造方法の一例について説明する。本実施の形態の加飾部材3及び賦形層20の賦形型を製造する方法は、後述する加飾部材の製造方法及び賦形層の賦形型の製造方法に限られない。本実施の形態においては、一例として、拡散層90及び賦形層20の材料が紫外線(UV)硬化性樹脂である場合の、加飾部材3の製造方法について説明する。
図10乃至
図14は、加飾積層体10を成形部65に転写するための転写シート70(すなわち、
図9に示す転写シート70)の製造方法を示す断面図である。
【0128】
まず、
図10に示すように、一方の面に離型層73が形成された、平板な基材72を準備する。離型層73の第2面73bには、凹凸が形成されている。
【0129】
次に、
図11に示すように、離型層73上に、上述した拡散層90の前駆材料の層93を形成する。層93の離型層73と接触する面には、離型層73の第2面73bに形成されている凹凸の形状に応じて、凹凸が形成される。これにより、層93から凹凸面92を有する拡散層90が形成される。
【0130】
次に、
図12に示すように、拡散層90上に、上述した賦形層20の前駆材料の層29を形成する。次に、
図12に示すように、層29に賦形型100を押し当てて、これを賦形する。賦形型100は、凹凸構造25に対応した凹凸を有する。次に、層29に紫外線を照射し、層29を硬化させる。これにより、賦形面20aに凹凸構造25が形成された賦形層20が、作製される。その後、賦形型100を賦形層20から取り外す。賦形型100は、層29に紫外線を照射する前に層29から取り外されてもよい。
【0131】
賦形型100の凹凸は、凹凸構造25の接続面26Bのライズ角θBが0°ではなく、15°以上となるように、決定されている。これにより、賦形型100で層29を賦形する際に、層29に、賦形型100の凹凸を高い精度で反映させた凹凸を形成することが容易である。言い換えると、賦形層20に、賦形型100の凹凸に応じた凹凸構造25を形成することが容易である。また、凹凸構造25の接続面26Bのライズ角θBが15°以上であることにより、賦形層20または層29を賦形型100から抜き取ることが容易である。
【0132】
次に、
図13に示すように、賦形層20の賦形面20aを覆うように、輝度調整層30を形成する。一例として、輝度調整層30は、賦形面20aに、金属材料若しくは無機材料の蒸着又はコーティング等を施すことで形成される。
図13に示す例においては、輝度調整層30として反射層33を形成している。輝度調整層30として反射層33を形成した後、輝度調整層30上に接合層35(充填層40)を形成する。これにより、
図9に示す転写シート70が作製される。
【0133】
次に、転写シート70を、成形部65を成形するための成形型内に配置する。次に、加飾積層体10上の裏側面12(すなわち、接合層35)と成形型の内面との間に溶融樹脂を導入し、成形型内で樹脂を固化させる。これにより、転写シート70に接合された成形部65が、上記成形型内で成形される。その後、基材72を加飾積層体10から剥離する。これにより、成形部65に加飾積層体10が転写された加飾部材3(
図2参照)が完成する。このような加飾部材3の成形方法は、インモールド成形として知られる。本実施の形態においては、基材72と離型層73とを、加飾積層体10から剥離する。これによって、
図4に示すように、加飾積層体10の表側面11を形成する拡散層90の面に、凹凸面92が形成される。
【0134】
本実施の形態において、転写用基材である基材72は、転写シート70の第1面70a及び第2面70bのいずれか一方を形成している。これによって、転写シート70を、第1面70a及び第2面70bの基材72によって形成されていない一方において成形部65等に対して取り付けた後、基材72を剥離させることによって、加飾積層体10を転写できる。すなわち、成形部65等に対して積層体を取り付けた後に基材を剥離する、という操作を複数回行うことなく、一括して加飾積層体10を転写できる。
【0135】
<<賦形層の賦形型の製造方法>>
次に、賦形層20に凹凸構造25を賦形するための賦形型100の製造方法の一例について説明する。
【0136】
まず、
図14A乃至
図14Cを参照して、賦形型100を形成するための母型110の作製方法について説明する。最初に、
図14Aに示すように、母型形成用部材111を準備する。母型形成用部材111は、ガラス板等の平板な基板112と、基板112の一方の面を被覆する感光材層113とを含む。図示された例では、感光材層113は、ポジ型のレジストを用いて形成される。
【0137】
次に、
図14Bに示すように、感光材層113にレーザー光Rを照射する。このとき、レーザー光Rの母型形成用部材111上における照射位置を移動させながら、感光材層113の全領域にレーザー光を照射する。また、このとき、レーザー光Rの強度は、3階調以上の多階調で制御される。レーザー光Rの強度の制御は、凹凸構造25を表すデータに基づいて制御される。このデータは、賦形層20の賦形面20aに形成すべき凹凸パターンに関する情報を含んでいる。この凹凸パターンは、賦形層20の複数の単位賦形要素23を含む(したがって、これら複数の単位賦形要素23間の間隙領域24も含む)領域の凹凸パターンである。また、この凹凸パターンは、賦形面20aに形成すべき凹凸の、非賦形面20bを基準とした高さ(深さ)を、3段階以上の多段階で表している。このようなデータを用いて、レーザー光Rの強度は、3階調以上の多諧調で制御される。また、レーザー光Rは、上記凹凸パターンを反映した強度で、感光材層113上の各位置に照射される。この結果、感光材層113の各位置におけるレーザー光Rの露光量は、上記凹凸パターンを反映した露光量となる。
【0138】
次に、
図14Cに示すように、感光材層113を現像し、感光材層113の一部を除去する。上述したように、感光材層113の各位置におけるレーザー光Rの露光量が上記凹凸パターンを反映した露光量であるため、現像後の感光材層113には、上記凹凸パターンを反映した凹凸が形成される。このようにして、上記凹凸パターンを反映した凹凸を有する母型110が作製される。
【0139】
このようにして、複数の単位賦形要素23の複数の凹凸構造25に応じた凹凸を有する母型110が、継ぎ目無しで一体的に形成される。このため、母型110に意図しない凹凸が形成される虞が少ない。また、感光材層113のレーザー光Rの露光量が多階調で調整されることで、母型110に、上記凹凸パターンに応じた凹凸を精度良く形成できる。
【0140】
次に、
図15および
図16を参照して、賦形型100の作製方法について説明する。まず、
図15に示すように、母型110の凹凸面110aに、金属層115を形成する。金属層115は、例えば電鋳処理によってニッケル等で形成されてよい。金属層115には、母型110の凹凸を反映した(したがって、上記凹凸パターンを反映した)凹凸が形成される。
【0141】
次に、
図16に示すように、金属層115を母型110から分離する。金属層115は、例えば母型110の感光材層113を溶剤で溶解して除去することにより、母型110から分離されてよい。母型110から分離された金属層115が、賦形型100として用いられる。また、このようにして作製された賦形型100を複数組み合わせることにより、大型の賦形型を作製してもよい。
【0142】
図17に示すように、このようにして作製された賦形型100を用いることで、賦形層20に複数の単位賦形要素23を、意図された配列パターンで、一度に賦形できる。同時に、複数の単位賦形要素23間の間隙領域24も賦形できる。したがって、賦形層20に、複数の単位賦形要素23を、意図した平面形状および配列パターンで、精度良く形成できる。
【0143】
さらに、このようにして作製される賦形型100は、従来の切削加工により作成された母型を用いて作製される賦形型と比較して、凹凸構造25の設計の自由度が高い。具体的には、傾倒面26A及び接続面26Bの形状を、従来の方法と比較して、自由に設定できる。
【0144】
<<<変形例>>>
次に、
図18乃至
図50を参照して、本実施の形態の各種変形例について説明する。
図18乃至
図50において、
図1乃至
図17に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0145】
<変形例1:拡散層の変形例>
上述の実施の形態においては、拡散層90が、入射した光を拡散させる凹凸面92を有する例について説明した。しかしながら、拡散層90の形態は、これに限られない。
図18は、変形例1における拡散層90を備える加飾積層体10を示す断面図である。
図18に示す例において、拡散層90は、バインダー樹脂95と、バインダー樹脂95中に分散された光拡散材96とを含有する。この場合、バインダー樹脂95と光拡散材96との間の屈折率差を利用して、又は、光拡散材96が有する反射性を利用して、光を等方的に拡散できる。これによって、変形例1の拡散層90は、入射した光を拡散できる。
【0146】
変形例1の拡散層90に含有されるバインダー樹脂95としては、例えば、塩素系樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)、酢酸セルロース樹脂等、公知の材料を採用可能である。バインダー樹脂95として、上述の実施の形態における離型層73の樹脂74を形成する材料と同様の材料を用いてもよい。
【0147】
変形例1の拡散層90に含有される光拡散材96は、拡散層90に求められる光拡散性等に応じて適宜選択されてよい。光拡散材96としては、例えば、プラスチックビーズ等の有機粒子、シリカなどの無機粒子等が挙げられる。プラスチックビーズとしては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル-スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、塩化ビニルビーズ等が挙げられるが、これらのうちアクリルビーズが好ましい。光拡散材96として、上述の実施の形態における粒子75と同様の粒子を用いてもよい。
図18に示す例において、光拡散材96は粒子である。図示はしないが、光拡散材96は、気泡であってもよい。
【0148】
図18に示す例においても、拡散層90は、加飾積層体10の表側面11を形成している。
図18に示す例において、拡散層90の、加飾積層体10の表側面11を形成する面は、平坦である。
図18に示す例においても、拡散層90は、賦形層20を保護するハードコート層91を兼ねている。拡散層90(ハードコート層91)は、賦形層20の非賦形面20bを覆うように設けられている。
【0149】
図18に示すような、バインダー樹脂95と光拡散材96とを含有する拡散層90によっても、入射した光を拡散させることによって、加飾積層体10により艶の抑制されたマットな質感を表現できる。
【0150】
<<変形例1の加飾積層体の転写に用いられる転写シート>>
図19は、変形例1の加飾積層体10を成形部65に転写するのに用いられる転写シート70である。転写シート70は、変形例1の加飾積層体10と、基材72と、を備えている。基材72は、加飾積層体10を成形部65に転写する際に加飾積層体10から剥離される、転写用基材である。
【0151】
転写シート70は、加飾積層体10からの基材72の剥離が容易となるように構成されている。例えば、図示はしないが、加飾積層体10が、さらに剥離層を備えてもよい。加飾積層体10が剥離層を備える場合、剥離層が、加飾積層体10の表側面11を形成してもよい。一例として、
図18に示す拡散層90の、賦形層20に接触している面とは反対側に、剥離層が設けられていてもよい。この場合、基材72が、剥離層によって形成される加飾積層体10の表側面11に接触していてもよい。剥離層は、基材72又は離型層73からの加飾積層体10の剥離を容易にする剥離性を有する。剥離層を形成する材料としては、例えば、アクリル樹脂、塩酢ビ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や、これらの熱可塑性樹脂と硬化剤とを組み合わせた熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂を採用可能である。
【0152】
図示はしないが、転写シート70が離型層を備えてもよい。変形例1の転写シート70の離型層は、上述した離型層73と同様の離型層であってもよく、粒子75を含まない点を除いて上述した離型層73と同様の離型層であってもよい。
【0153】
転写シート70の層構成は、加飾積層体10からの基材72の剥離が容易となるように構成されている限り、特に限られない。転写シート70は、剥離層を含んでいなくてもよい。転写シート70は、離型層を含んでいなくてもよい。転写シート70において、拡散層90が加飾積層体10の表側面11を形成していてもよい。基材72が、拡散層90によって形成される加飾積層体10の表側面11に接触していてもよい。
【0154】
図18に示す加飾積層体10及び
図19に示す転写シート70は、例えば以下の方法によって製造できる。まず、一方の面に拡散層90が形成された、平板な基材72を準備する。このとき、拡散層90が、バインダー樹脂95と、粒子である光拡散材96とを含有することによって、拡散層90の、基材72に接触している面とは反対側の面には、凹凸面94が形成される。
【0155】
次に、拡散層90上に、賦形層20、輝度調整層30、及び接合層35をこの順に形成する。拡散層90上に賦形層20、輝度調整層30、及び接合層35を形成する方法として、上述の実施の形態における離型層73上に賦形層20、輝度調整層30、及び接合層35を形成する方法を適用できる。これによって、
図18に示す加飾積層体10を備える、
図19に示す転写シート70を製造できる。
【0156】
拡散層90上に賦形層20を形成する際に、賦形層20の拡散層90と接触する面には、拡散層90の凹凸面94の形状に応じて、凹凸が形成される。拡散層90に入射した光は、賦形層20が拡散層90の凹凸面94に接触する界面において乱反射することによって拡散されてもよい。図示はしないが、賦形層20が拡散層90の面に接触する界面は、平坦であってもよい。
【0157】
<変形例2:加飾積層体の変形例>
加飾積層体10は、輝度調整層30よりも裏側面12に近い位置に位置して輝度調整層30に接する、第2輝度調整層51を備えてもよい。
図20は、変形例2の加飾積層体10を備える転写シート70の一例を示す図である。
図20に示す加飾積層体10の拡散層90は、入射した光を拡散させる凹凸面92を有している。
図21は、変形例2の加飾積層体10を備える転写シート70の、
図20とは異なる別の一例を示す図である。
図21に示す加飾積層体10の拡散層90は、バインダー樹脂95と光拡散材96とを含有している。
図20及び
図21に示す例において、賦形層20の賦形面20aは裏側面12と向かい合っている。
図20及び
図21に示す例において、加飾積層体10は、輝度調整層30よりも裏側面12に近い位置に位置して輝度調整層30に接する、第2輝度調整層51を備えている。
【0158】
第2輝度調整層51は、光が反射される第2反射界面51aを形成する。第2反射界面51aは、加飾積層体10の表側面11と向かい合っている。これによって、第2反射界面51aは、加飾積層体10の表側面11から入射した光を反射する。
【0159】
図20及び
図21に示す例において、第2輝度調整層51は、接合層35と輝度調整層30との間に位置している。
図20及び
図21に示す例において、第2輝度調整層51は、輝度調整層30の凹凸を埋める平坦化層としても機能している。この場合、加飾積層体10は充填層40を有していなくてもよい。接合層35が充填層40を兼ねていなくてもよい。
図20及び
図21に示す例において、第2輝度調整層51の接合層35と接触する面は、平坦である。これにより、接合層35の第2輝度調整層51と接触する面は、平坦となっている。
【0160】
第2輝度調整層51の作用について説明する。輝度調整層30(
図20及び
図21に示す例においては反射層33)の材料などによっては、表側面11から加飾積層体10に入射した光の一部が、反射界面27において反射されずに裏側面12へと向かうこともあり得る。第2輝度調整層51によって、反射界面27において反射されずに裏側面12へと向かう光を反射させ得る。これによって、反射界面27において反射されずに裏側面12へと向かう光を、意匠表現に利用できる。第2輝度調整層51の材料を調整することによって、意匠表現を調整することもできる。例えば、金属の表面のような印象、すなわちメタリック感を表現することもできる。
【0161】
第2輝度調整層51は、例えば、樹脂層の面にアルミニウムフレークを配置したものである。この場合、樹脂層の、アルミニウムフレークが配置された面が、第2反射界面51aとなる。第2輝度調整層51は、樹脂層の中にパール顔料が分散されたものであってもよい。第2輝度調整層51は、樹脂層の面にインキを塗布したものであってもよい。この場合、樹脂層の、インキが塗布された面が、第2反射界面51aとなる。樹脂層の面に塗布されるインキの色は、例えば銀色である。これらの場合に、第2輝度調整層51に含まれる樹脂層の材料として、熱可塑性樹脂を採用できる。樹脂層の材料として、硬化性樹脂を採用してもよい。この場合、樹脂層の材料として、熱硬化性樹脂、電子線(EB)硬化性樹脂または紫外線(UV)硬化性樹脂を採用してもよい。
【0162】
<変形例3:加飾積層体の変形例>
加飾積層体10は、表側面11と反射界面27との間に位置する色彩付与層52を備えてもよい。
図22は、変形例3の加飾積層体10を備える転写シート70の一例を示す図である。
図23は、変形例3の加飾積層体10を備える転写シート70の、
図22とは異なる別の一例を示す図である。
図22及び
図23に示す加飾積層体10の拡散層90は、入射した光を拡散させる凹凸面92を有している。
図24は、変形例3の加飾積層体10を備える転写シート70の、
図22及び
図23とは異なる別の一例を示す図である。
図25は、変形例3の加飾積層体10を備える転写シート70の、
図22乃至
図24とは異なる別の一例を示す図である。
図24及び
図25に示す加飾積層体10の拡散層90は、バインダー樹脂95と光拡散材96とを含有している。
【0163】
図22乃至
図25に示す例において、色彩付与層52は、表側面11と賦形層20との間に位置している。色彩付与層52は、入射する光の一部を透過させやすく、他の一部を透過させにくいように構成されている。より具体的には、色彩付与層52は、特定の波長の光を透過させやすく、当該特定の波長以外の光を透過させにくいように構成されている。これによって、色彩付与層52を透過した光には色彩が付与される。色彩付与層52の透過率は、例えば30%以上である。ここで、色彩付与層52の透過率は、ヘーズメーター((株)村上色彩技術研究所製「HM-150N」、JIS K7361:1997準拠品)を用いて測定したときの全光線透過率を意味する。色彩付与層52の全光線透過率は、50%以上であってもよく、80%以上であってもよい。
【0164】
色彩付与層52の作用について説明する。色彩付与層52によって、加飾積層体10に入射した光が表側面11から反射界面27に向かうとき、及び反射界面27において反射された光が表側面11に向かうときに、当該光に色彩を付与できる。これによって、より豊かな意匠表現ができる。
【0165】
色彩付与層52は、例えば、樹脂層の中に顔料及び染料の少なくともいずれか一方が分散されたものである。この場合に、色彩付与層52に含まれる樹脂層の材料として、熱可塑性樹脂を採用できる。樹脂層の材料として、硬化性樹脂を採用してもよい。この場合、樹脂層の材料として、熱硬化性樹脂、電子線(EB)硬化性樹脂または紫外線(UV)硬化性樹脂を採用してもよい。樹脂層の中に含ませる顔料及び染料は、色彩付与層52によって光に色彩を付与できる限り、特に限られない。色彩付与層52は、例えば、色彩付与層52を透過した光に青色の色彩を付与する。
【0166】
加飾積層体10は、
図22及び
図24に示すように、第2輝度調整層51と色彩付与層52とをともに備えてもよい。加飾積層体10は、
図23及び
図25に示すように、色彩付与層52を備え、且つ第2輝度調整層51を備えなくてもよい。
【0167】
<変形例4:加飾積層体の変形例>
上述の実施の形態及び各変形例においては、拡散層90が加飾積層体10の表側面11を形成している例について説明した。しかしながら、加飾積層体10の層構成は、これに限られない。拡散層90の位置は、反射界面27よりも表側面11に近い位置である限り、特に限られない。
図26は、変形例4の加飾積層体10を備える転写シート70の一例を示す図である。
図27は、変形例4の加飾積層体10を備える転写シート70の、
図26とは異なる別の一例を示す図である。
図26及び
図27に示す加飾積層体10においては、拡散層90が加飾積層体10の表側面11を形成していない。
図26及び
図27に示す加飾積層体10の拡散層90は、バインダー樹脂95と光拡散材96とを含有している。
図26及び
図27に示す加飾積層体10の拡散層90は、ハードコート層91を兼ねていない。
図26及び
図27に示す加飾積層体10は、拡散層90とは別に、ハードコート層91を備えている。
【0168】
図26に示す例において、拡散層90は、賦形層20とハードコート層91との間に位置している。
図26に示す例においては、充填層40、輝度調整層30、賦形層20、拡散層90及びハードコート層91が、Z方向Dzに沿って裏側面12から表側面11へと向かう方向に、この順で積層されている。これによって、ハードコート層91が、加飾積層体10の表側面11を形成している。
【0169】
図27に示す例において、加飾積層体10は、色彩付与層52を備えている。
図27に加飾積層体10において、拡散層90は、賦形層20と色彩付与層52との間に位置している。
図27に示す例においては、充填層40、輝度調整層30、賦形層20、拡散層90、色彩付与層52及びハードコート層91が、Z方向Dzに沿って裏側面12から表側面11へと向かう方向に、この順で積層されている。これによって、ハードコート層91が、加飾積層体10の表側面11を形成している。
【0170】
図示はしないが、加飾積層体10が、入射した光を拡散させる凹凸面92を有する拡散層90を備える場合に、当該拡散層90が、加飾積層体10の表側面11を形成していなくてもよい。
【0171】
拡散層90により艶の抑制される度合いの調整を容易にする観点からは、拡散層90が加飾積層体10の表側面11を形成していることが好ましい。これによって艶の抑制される度合いを調整することで、より好ましいマットな質感を表現できる。凹凸面92を有する拡散層90によって加飾積層体10に触れた者に触感を与える観点からも、拡散層90が加飾積層体10の表側面11を形成していることが好ましい。
【0172】
<変形例5:加飾積層体の変形例>
加飾積層体10は、拡散層90よりも表側面11に近い位置に位置して拡散層90と向かい合う、基材76を備えてもよい。
図28は、変形例5の加飾積層体10の一例を示す図である。
図28に示す加飾積層体10の拡散層90は、バインダー樹脂95と光拡散材96とを含有している。
【0173】
図28に示す加飾積層体10は、拡散層90よりも表側面11に近い位置に位置して拡散層90と向かい合う、基材76を備えている。
図28に示す例においては、充填層40、輝度調整層30、賦形層20、拡散層90及び基材76が、Z方向Dzに沿って裏側面12から表側面11へと向かう方向に、この順で積層されている。
図28に示す加飾積層体10においては、基材76が、加飾積層体10の表側面11を形成している。
【0174】
基材76としては、上述の実施の形態における転写用基材である基材72の材料と同様の材料を採用可能である。
【0175】
図28に示す加飾積層体10は、例えば以下の方法によって製造できる。まず、一方の面に拡散層90が形成された、平板な基材76を準備する。次に、拡散層90上に、賦形層20、輝度調整層30、及び接合層35をこの順に形成する。拡散層90上に賦形層20、輝度調整層30、及び接合層35を形成する方法として、上述の実施の形態における離型層73上に賦形層20、輝度調整層30、及び接合層35を形成する方法を適用できる。これによって、
図28に示す加飾積層体10を製造できる。
【0176】
図28に示す加飾積層体10は、
図19に示す転写シート70を、基材72を剥離することなく加飾積層体10として用いたものとみなせる。この場合、
図28に示す加飾積層体10の基材76は、
図19に示す転写シート70の基材72に相当する。ただし、
図28に示す加飾積層体10においては、加飾積層体10の基材76以外の部分からの基材76の剥離が容易ではなくてもよい。図示はしないが、変形例5の加飾積層体10は、上述した転写シート70、例えば
図9、20乃至27に示す転写シート70を、基材72を剥離することなく加飾積層体10として用い、且つ転写シート70の基材72を基材76として用いたものであってもよい。
【0177】
変形例5の、基材76を備える加飾積層体10において、基材76は透明である。これによって、基材76を剥離する必要なく、表側面11から加飾積層体10に入射した光を反射界面27に到達させ、反射界面27において反射された光を表側面11から出射させ得る。
【0178】
変形例5の、基材76を備える加飾積層体10は、基材76を剥離することなく、上述した成形部65等に対して取り付けることができる。その一方で、拡散層90により艶の抑制される度合いの調整を容易にする観点からは、拡散層90が加飾積層体10の表側面11を形成していることが好ましい。凹凸面92を有する拡散層90によって加飾積層体10に触れた者に触感を与える観点からも、拡散層90が加飾積層体10の表側面11を形成していることが好ましい。これらの観点からは、加飾積層体10が基材76を備えないことが好ましい。
【0179】
<変形例6:単位光学要素の変形例>
図3に、複数の単位光学要素13が平面視において正六角形状の外輪郭23aを有する例を示した。しかしながら、単位光学要素13の形態は、この例に限られない。複数の単位光学要素13の外輪郭23aは、六角形状以外の多角形状であってもよい。例えば、各単位光学要素13の外輪郭23aは、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状又は八角形状等の多角形状であってもよい。
図29は、変形例6における単位光学要素13の一例を有する賦形層20を平面視した様子を示す図である。例えば
図29に示すように、八角形状の外輪郭23aを有する単位光学要素13が、千鳥配列されていてもよい。複数の単位光学要素13の外輪郭23aは、多角形状以外の形状を有していてもよい。すなわち、単位光学要素13の外輪郭23aは、曲線部や円弧状に延びる部分を含んでいてもよい。単位光学要素13の外輪郭23aは、特に限られない。単位光学要素13の外輪郭23aは、例えば、円形状、半円形状、楕円形状、扇形、三日月形、ハート形、文字の形状等の形状であってよい。複数の単位光学要素13は、互いに異なる形状を有していてもよい。複数の単位光学要素13は、不規則的な配列で配置されていてもよい。さらに、図示はしないが、各々の単位光学要素13が、互いに重なって配置されていてもよい。複数の単位光学要素13は、互いに異なる形状の外輪郭23aを有していてもよい。
【0180】
複数の単位光学要素13の形態の、別の例についてさらに説明する。上述の実施の形態において、凹凸構造25がリニアフレネルレンズであるか、又はリニアフレネルレンズを組み合わせた構造を有している例について説明した。しかしながら、凹凸構造25の形態は、これに限られない。凹凸構造25は、サーキュラーフレネルレンズであってもよい。この場合、
図30に示すように、平面視における各傾倒面26Aの形状は、真円であってもよいし、楕円形であってもよい。複数の単位光学要素13の間で、当該楕円形の長軸が延びる方向(以下、単に長軸方向と記す)が異なっていてもよい。例えば、ある一つの単位光学要素13における長軸方向が、他の一つの単位光学要素13における長軸方向と、非平行であってもよいし、垂直であってもよい。
図31に示すように、平面視において、各傾倒面26Aは円弧状に延びていてもよい。
図31に示す例では、各単位光学要素13の傾倒面26Aは、当該単位光学要素13の光軸Axを中心とした円に沿って延びている。
図32に示すように、賦形層20は、リニアフレネルレンズとして形成された凹凸構造25と、サーキュラーフレネルレンズとして形成された凹凸構造25を含んでいてもよい。複数の単位光学要素13は、外輪郭23aの形状が異なる単位光学要素13を含んでいてもよい。
【0181】
さらに、複数の傾倒面26Aが複数の第1傾倒面26A1を含み、複数の接続面26Bが複数の第1接続面26B1を含む単位光学要素13の、別の一例について説明する。
図33は、変形例6における単位光学要素13の別の一例を有する賦形層20を平面視した様子を示す図である。
図34は、
図33のXXXIV-XXXIV線に沿った賦形層20の断面を、輝度調整層30及び充填層40の断面とともに示す図である。
図33においては、加飾積層体10の賦形層20、輝度調整層30及び充填層40以外の部分の図示は省略されている。
図33及び
図34に示す単位光学要素13の第1領域234は、
図35に示す円錐形状のレンズ(アキシコンレンズ)として機能する。
図33及び
図34に示す例において、複数の第1傾倒面26A1は、円錐の側面を分割してなる。第1領域234は、加飾積層体10の法線方向Dn(Z方向Dz)に見て、複数の第1傾倒面26A1のうち最も外側に位置する傾倒面26Aoから、複数の第1傾倒面26A1のうち最も内側に位置する傾倒面26Acに亘る領域である。複数の第1傾倒面26A1は、加飾積層体10の法線方向Dnに沿って延びる第1基準線L1に向かう方向に並んでいる。複数の第1傾倒面26A1は、第1基準線L1に向けて傾倒している。
図33及び
図34に示す例において、第1基準線L1は、上記円錐の垂線に一致する。円錐の垂線とは、円錐の頂点から底面に垂直に下した線である。
【0182】
図33及び
図34に示す例では、第1領域234が
図35に示す直錐体形状のレンズとして機能する単位光学要素13について説明した。しかしながら、単位光学要素13の形態は、これに限られない。単位光学要素13の第1領域234は、
図36に示すような斜錐体形状のレンズとして機能してもよい。
図37は、
図33のXXXVII-XXXVII線に沿った賦形層20の断面を、輝度調整層30及び充填層40の断面とともに示す図である。
図37においては、加飾積層体10の賦形層20及び充填層40以外の部分の図示は省略されている。第1領域234は、底面の形状が楕円である円錐の形状のレンズとして機能してもよい。
【0183】
上述した例では、第1領域234が円錐形状のレンズとして機能する形状を有する例を示した。しかしながら、第1領域234の形状は、これに限られない。第1領域234は、円錐以外の錐体形状のレンズとして機能してもよい。例えば、第1領域234は、
図38に示すような底面が多角形の錐体形状のレンズとして機能してもよい。
図39は、変形例6における単位光学要素13の別の一例を有する賦形層20を平面視した様子を示す図である。第1傾倒面26A1は、
図39に実線で示すように形成されてもよい。なお、本明細書において「錐体」とは、直錐体だけでなく、斜錐体も含む概念である。
【0184】
第1領域234は、錐台形状のレンズとして機能してもよい。この場合、第1領域234は、
図40及び
図41に示すような直錐体の頂部を取り除いた錐台形状のレンズとして機能してもよい。第1領域234は、斜錐体の頂部を取り除いた錐台形状のレンズとして機能してもよい。
図41に、第1領域234が錐台形状のレンズとして機能するように凹凸構造25が構成される場合の、賦形層20、輝度調整層30及び充填層40の断面を示す。
図41においては、加飾積層体10の賦形層20及び充填層40以外の部分の図示は省略されている。
【0185】
一例として、複数の第1傾倒面26A1は、錐体若しくは錐台の互いに異なる高さ位置における側面又は当該側面の一部の形状をなす。換言すれば、複数の第1傾倒面26A1は、錐体若しくは錐台の側面を分割してなる形状を有するように構成されている。複数の第1傾倒面26A1がその側面又は当該側面の一部の形状をなしている錐体を、第1の錐体と称する。複数の第1傾倒面26A1がその側面又は当該側面の一部の形状をなしている錐台を、第1の錐台と称する。複数の第1傾倒面26A1が、第1の錐体若しくは第1の錐台の互いに異なる高さ位置における側面又は当該側面の一部の形状をなすことによって、第1領域234を、第1の錐体の形状のレンズ若しくは第1の錐台の形状のレンズとして機能させ得る。
【0186】
第1領域234は、略錐体形状又は略錐台形状のレンズとして機能してもよい。第1領域234は、
図42に示すような、錐体、錐台、略錐体又は略錐台の一部がその底面に垂直な仮想の面において切り取られた形状のレンズとして機能してもよい。
図42に示す形状は、
図38に示す錐体の一部がその底面に垂直な仮想の面において切り取られた形状に相当する。この場合、第1傾倒面26A1は、
図39に一点鎖線で示すように形成される。
図42に示す形状のレンズとして機能するように形成された、
図39において符号23Cを付した単位光学要素13を、不完全単位光学要素13Cと称する。
図38に示す形状のレンズとして機能するように形成された、
図39において符号23Dを付した単位光学要素13を、完全単位光学要素13Dと称する。不完全単位光学要素13Cは、完全単位光学要素13Dの一部が、加飾積層体10の法線方向Dn(Z方向Dz)に平行な仮想の面において切り取られた形状を有している。
【0187】
第1領域234が上述したいずれの形状のレンズとして機能する場合も、第1領域234の凹凸構造25は、複数の第1傾倒面26A1が、加飾積層体10の法線方向Dn(Z方向Dz)に沿って延びる第1基準線L1に向かう方向に並ぶように形成される。複数の第1傾倒面26A1は、第1基準線L1に向けて傾倒する。複数の第1傾倒面26A1は、錐体、錐台、略錐体及び略錐台の互いに異なる高さ位置における側面又は当該側面の一部の形状をなす。
【0188】
図41は、賦形面20aが錐台形状又は略錐台形状のレンズとして機能する場合の、加飾積層体10の賦形層20、輝度調整層30及び充填層40の断面に相当する。
図41に示すように、単位光学要素は、第1傾倒面26A1が並ぶ方向に第1領域234と隣り合う第2領域235を含む。一例として、第2領域235において、賦形面20aは平坦面又は曲面である。
図41に示す例では、第2領域235において、賦形面20aは平坦面である。第2領域235は、球面レンズであってもよい。
【0189】
第2領域235は、複数の第2傾倒面26A2と、隣り合う第2傾倒面26A2を接続する複数の第2接続面26B2と、を含んでもよい。複数の第2傾倒面26A2は、連続したレンズ面をその厚み方向に垂直な面に沿って分割した複数のレンズ面に対応する形状を有してもよい。複数の第2接続面26B2は、当該複数のレンズ面に対応する複数の第2傾倒面26A2を接続する、ライズ面に対応する形状を有してもよい。
図43に示すように、第2領域235にフレネルレンズ構造が形成されていてもよい。この場合、第2領域235は、フレネルレンズ構造を形成する複数の第2傾倒面26A2及び隣り合う第2傾倒面26A2を接続する複数の第2接続面26B2を含んでもよい。
図43に示す例において、フレネルレンズ構造は、連続した球面レンズを分割してなる第2傾倒面26A2と、隣り合う第2傾倒面26A2を接続する第2接続面26B2とを含んでいる。
図43に示す例では第2領域235に形成されたフレネルレンズ構造は凸レンズとして機能するが、フレネルレンズ構造はこれに限られない。フレネルレンズ構造は、凹レンズとして機能してもよい。第2領域235にフレネルレンズ構造が形成されていることにより、賦形層20の厚み以上の豊かな立体感を表現できると共に、複雑な意匠を表現できる。
【0190】
第2領域235には、第1領域234の第1傾倒面26A1に対応する錐台形状又は略錐台形状とは異なる錐体形状、錐台形状、略錐体形状若しくは略錐台形状のレンズとして機能する凹凸構造25が形成されていてもよい。
【0191】
一例として、複数の第2傾倒面26A2は、錐体若しくは錐台の互いに異なる高さ位置における側面又は当該側面の一部の形状をなす。換言すれば、複数の第2傾倒面26A2は、錐体若しくは錐台の側面を分割してなる形状を有するように構成されている。複数の第2傾倒面26A2がその側面又は当該側面の一部の形状をなしている錐体を、第2の錐体と称する。複数の第2傾倒面26A2がその側面又は当該側面の一部の形状をなしている錐台を、第2の錐台と称する。複数の第2傾倒面26A2が、第2の錐体若しくは第2の錐台の互いに異なる高さ位置における側面又は当該側面の一部の形状をなすことによって、第2領域235を、第2の錐体の形状のレンズ若しくは第2の錐台の形状のレンズとして機能させ得る。
【0192】
一例として、複数の第1傾倒面26A1は、第1の錐台の互いに異なる高さ位置における側面又は当該側面の一部の形状をなしている。複数の第2傾倒面26A2は、第2の錐体若しくは第2の錐台の互いに異なる高さ位置における側面又は当該側面の一部の形状をなしている。この場合、第1の錐台の底面の形状と、第2の錐体若しくは前記第2の錐台の底面の形状とが、互いに異なっていてもよい。一例として、
図39に二点鎖線で示す例において、第1領域234は底面が六角形状である錐台(第1の錐台)の形状のレンズとして機能するように形成されている。第2領域235は底面が円の錐体、すなわち円錐(第2の錐体)の形状のレンズとして機能するように形成されている。この場合、複数の第1傾倒面26A1は、第1の錐台の互いに異なる高さ位置における側面の形状をなし、複数の第2傾倒面26A2は、第2の錐体若しくは錐台の互いに異なる高さ位置における側面の形状をなしていてよい。
図39に二点鎖線で示されている単位光学要素13においては、平面視において、第1領域234が第2領域235を囲っている。
【0193】
図44に、
図39のXLIV-XLIV線に沿った賦形層20の断面を、輝度調整層30及び充填層40の断面とともに示す。
図44に示す例において、第2領域235には、第1領域234の第1傾倒面26A1とは異なる機能を有する凹凸構造25が形成されている。第2領域235には、例えば錐体形状、錐台形状、略錐体形状若しくは略錐台形状のレンズとして機能する凹凸構造25が形成されている。この場合、第2傾倒面26A2は、上記法線方向Dn(Z方向Dz)に沿って延びる第2基準線L2に向かう方向に並んでいてよい。第2傾倒面26A2は、第2基準線L2に向けて傾倒してよい。
図44に示す例においては、加飾積層体10を平面視したときの第2基準線L2の位置は、一点に定まっている。図示された例では、第2基準線L2は、第2の錐体である円錐の垂線に一致する。第2基準線L2は、第1基準線L1と一致していてもよいし、一致していなくてもよい。
【0194】
複数の単位光学要素13の形態の、別の例についてさらに説明する。例えば、
図45及び
図46に示すように、四角形状の外輪郭23aを有する単位光学要素13が、正方配列されていてもよい。
図45に示す単位光学要素13の複数の傾倒面26Aは、例えば
図45に示す第1基準線L1に向かう方向に並び且つ第1基準線L1に向かって傾倒しているとみなせる。
図46に示す単位光学要素13の複数の傾倒面26Aは、例えば
図46に示す第1基準線L1に向かう方向に並び且つ第1基準線L1に向かって傾倒しているとみなせる。
図45に示す例において、各単位光学要素13の凹凸構造25は、リニアフレネルレンズである。
図47は、
図46に示す賦形層20の、XLVII-XLVII線に沿った断面を、輝度調整層30及び充填層40の断面とともに示す部分断面図である。
図47においては、加飾積層体10の賦形層20及び充填層40以外の部分の図示は省略されている。
図47に示すように、凹凸構造25に含まれて隣り合っている傾倒面26Aと接続面26Bとは、境界26Cにおいて接続している。四角形状の外輪郭23aを有する単位光学要素13が正方配列されている場合に、単位光学要素13の一つの平面視において、傾倒面26Aと接続面26Bとは、当該単位光学要素13の一つに含まれる境界26Cが一方向に延びるように、配置されている。単位光学要素13の一つの平面視において、傾倒面26Aと接続面26Bとの境界26Cは、全て一方向に延びている。この場合に、複数の単位光学要素13の一つの平面視において境界26Cが延びている方向と、複数の単位光学要素13の他の一つの平面視において境界26Cが延びている方向とは、異なっていてもよい。
【0195】
加飾積層体10が、
図46及び
図47に示す複数の単位光学要素13を有する場合について、さらに説明する。
図47に示す例において、単位光学要素13の一つに含まれる複数の傾倒面26Aは、互いに平行な平坦面である。単位光学要素13の一つに含まれる複数の接続面26Bは、互いに平行な平坦面である。
図47に示すように、単位光学要素13の一つにおける凹凸構造25のピッチPと、単位光学要素13の他の一つにおける凹凸構造25のピッチPとは、異なっていてもよい。単位光学要素13の一つにおける凹凸構造25の高さH25と、単位光学要素13の他の一つにおける凹凸構造25の高さH25とは、異なっていてもよい。
【0196】
単位光学要素13の一つの平面視において境界26Cが延びている方向、凹凸構造25のピッチP、及び凹凸構造25の高さH25は、単位光学要素13ごとに調整される。一例として、複数の単位光学要素13を設けることによって、複数の単位光学要素13が設けられた領域において、疑似的に立体的な形状を表示することが求められる場合がある。この場合に、表示させるべき立体的な形状に応じて、単位光学要素13ごとに、境界26Cが延びている方向、ピッチP、及び凹凸構造25の高さH25を調整してもよい。この場合、境界26Cが延びている方向、ピッチP、及び凹凸構造25の高さH25の調整によって、疑似的に、所望の立体的な形状を表示できる。一例として、表示させるべき立体的な形状に光が照射されたときに、光を照射する方向に応じて、当該立体的な形状に特定の陰影が生じると仮定する。この場合、複数の単位光学要素13が設けられた領域に光が照射されたときに当該特定の陰影が生じるように、境界26Cが延びている方向、ピッチP、及び凹凸構造25の高さH25を調整する。これにより、所望の立体的な形状の陰影を表示することによって、疑似的に当該立体的な形状を表示できる。
【0197】
<変形例7:輝度調整層の変形例>
上述の実施の形態及び各変形例においては、輝度調整層30が反射層33である例について説明した。しかしながら、輝度調整層30は、これに限られない。輝度調整層30は、屈折率変調層34であってもよい。屈折率変調層34は、その屈折率が賦形層20の屈折率とは異なる層である。
図48は、変形例7の加飾積層体10を示す図である。
図48に示す例においては、賦形層20の凹凸構造25が屈折率変調層34によって覆われている。この場合、賦形層20と屈折率変調層34との間に反射界面27が形成され、賦形面20aにおける光の反射率を向上させることができる。これにより、加飾積層体10で反射される光の輝度を調整できる。
【0198】
屈折率変調層34は、高屈折率材料(例えば、金属酸化物、金属硫化物又は金属窒化物)の蒸着またはコーティング等により形成できる。屈折率変調層34は、透明蒸着層であってもよい。屈折率変調層34を形成する高屈折率材料としては、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛(ZnS)、チタン酸バリウム、酸化ケイ素(SiO2)のいずれか、若しくは、これらの組み合わせを採用可能である。また、屈折率変調層34は、透明蒸着層であってもよい。屈折率変調層34がこのような材料で形成されることにより、屈折率変調層34の電磁波透過性を向上できる。上述したように輝度調整層30が反射層33である場合にも、輝度調整層30が屈折率変調層34である場合にも、輝度調整層30は蒸着膜であり得る。
【0199】
屈折率変調層34を高屈折率材料のコーティングで形成する場合、屈折率変調層34は、例えば次のような方法により形成できる。高屈折率材料で形成された平均粒子径100nm以下の高屈折率粒子を含むインキを準備し、これを賦形面20aにコーティングする。これにより、屈折率変調層34を形成できる。このような高屈折率粒子を含むインキとしては、例えば、酸化ジルコニウム分散液(堺化学工業社製、SZR series(製品名))を採用可能である。インキは、バインダー樹脂を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。バインダー樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂等を採用可能である。電離放射線硬化性樹脂は、例えば、電子線硬化性樹脂である。紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂をバインダー樹脂として含む屈折率変調層34は、柔軟性があり、延伸性を有する。このため、加飾積層体10を成形部65の面に沿って湾曲または延伸させる際に、屈折率変調層34を所望のように湾曲または延伸させることができる。言い換えると、屈折率変調層34によって、加飾積層体10の湾曲または延伸が妨げられる虞が少ない。
【0200】
輝度調整層30が屈折率変調層34である場合に、凹凸構造25の接続面26Bのライズ角θBが0°より大きくてもよい。接続面26Bのライズ角θBは、15°以上であってもよい。これにより、接続面26B上に屈折率変調層34を成膜することが容易である。
【0201】
屈折率変調層34は、
図4に示す反射層33と同様に、薄い膜状の層として形成されてよい。この場合、屈折率変調層34の厚みは、単位光学要素13における凹凸構造25の高さH25よりも薄くてもよい。屈折率変調層34の厚みは、高さH25の半分以下でもよく、高さH25の25%以下でもよく、高さH25の10%以下でもよい。このような厚みの屈折率変調層34は、賦形面20aの凹凸を埋めることなく、賦形面20aに対面する側とは反対の側に賦形面20aの凹凸に対応する凹凸を形成する。図示はしないが、屈折率変調層34が、賦形面20aの凹凸を埋めていてもよい。この場合、加飾積層体10は充填層40を有していなくてもよい。
【0202】
屈折率変調層34の厚みは、屈折率変調層34が形成する反射界面27の反射率を十分に大きくできる厚みであることが好ましい。屈折率変調層34の厚みは、例えば、0.005μm以上であってよい。反射層33の厚みは、20μm以下であってよい。反射層33の厚みは、0.005μm以上20μm以下であってよい。
【0203】
<変形例8:輝度調整層の変形例>
上述の実施の形態及び各変形例においては、輝度調整層30が反射層33又は屈折率変調層34である例について説明した。しかしながら、輝度調整層30は、これに限られない。輝度調整層30は、着色層36であってもよい。着色層36は加飾積層体10に入射した光の一部を吸収し、これにより、賦形面20aと輝度調整層30との間の反射界面における可視光の反射率が調整される。また、着色層36により、加飾積層体10に所望の色彩を付与できる。
図49は、変形例8の加飾積層体10を示す図である。着色層36を構成する材料としては、樹脂に顔料や染料を混合したものを採用可能である。着色層36は、さらに、紫外線吸収剤や光安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0204】
着色層36に含まれる樹脂は、例えば、非紫外線硬化系のアクリル樹脂でもよい。
アクリル樹脂は、例えば、(メタ)アクリレート化合物の重合体である。重合体は、(メタ)アクリレート化合物の単独重合体でもよく、共重合体でもよい。(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレートおよびエチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ならびにヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。アクリル樹脂としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が好ましい。
本明細書において、(メタ)アクリレート化合物という表現は、「アクリレート化合物」および「メタクリレート化合物」の一方または両方を意味する。
【0205】
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、耐熱性および耐摩耗性などの耐久性の観点から、例えば、10000以上でもよく、50000以上でもよい。アクリル樹脂のMwは、層間密着性の観点から、例えば、100000以下でもよく、80000以下でもよい。本明細書において、Mwは、ポリスチレンを標準物質としてゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した値を意味し、JIS K 7252-3:2016に準拠した方法で測定する。
【0206】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、耐熱性および耐摩耗性などの耐久性の観点から、例えば、70℃以上でもよく、85℃以上でもよい。アクリル樹脂のTgは、層間密着性の観点から、例えば、110℃以下でもよく、100℃以下でもよい。したがって、アクリル樹脂のTgは、70℃以上110℃以下であってよい。本明細書において、Tgは、JIS K 7121:2012に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により得られるガラス転移温度である。
【0207】
着色層36に含まれる樹脂は、アクリル系熱硬化性樹脂の硬化物でもよい。該硬化物は、例えば、アクリル系熱硬化性樹脂と硬化剤とから形成される。アクリル系熱硬化性樹脂としては、例えば、一分子中に水酸基を2つ以上有するアクリルポリオールが挙げられる。アクリルポリオールとしては、例えば、原料モノマーとしてヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマーを少なくとも用いた、(メタ)アクリレート化合物の重合体が挙げられる。硬化剤としては、例えば、イソシアネート化合物が挙げられる。
【0208】
着色層36が黒色に着色されている場合、着色層36は典型的には黒色顔料を含んでいる。着色層36は、黒色顔料に代えて黒色染料を含んでいてもよいし、顔料及び染料の両方を含んでもよい。着色層36が含む黒色顔料としては、例えば、カーボンブラックやチタンブラック、複合金属酸化物、ペリレンブラックを採用可能である。また、着色層36が含む黒色染料としては、例えば、アゾ系ブラック染料、ニグロシンブラック染料を採用可能である。
【0209】
着色層36が青色に着色されている場合、着色層36は典型的には青色顔料を含んでいる。着色層36は、青色顔料に代えて青色染料を含んでいてもよいし、顔料及び染料の両方を含んでもよい。着色層36が含む青色顔料としては、例えば、銅フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、コバルトブルー、複合金属酸化物を採用可能である。また、着色層36が含む青色染料としては、例えば、メチン系染料、アントラキノン系染料、アゾ系染料、トリアリールメタン系染料、フタロシアニン系染料を採用可能である。
【0210】
着色層36が赤色に着色されている場合、着色層36は典型的には赤色顔料を含んでいる。着色層36は、赤色顔料に代えて赤色染料を含んでいてもよいし、顔料及び染料の両方を含んでもよい。着色層36が含む赤色顔料としては、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、複合金属酸化物、酸化鉄を採用可能である。また、着色層36が含む赤色染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、ペリノン系染料を採用可能である。
【0211】
着色層36が黄色に着色されている場合、着色層36は典型的には黄色顔料を含んでいる。着色層36は、黄色顔料に代えて黄色染料を含んでいてもよいし、顔料及び染料の両方を含んでもよい。着色層36が含む黄色顔料としては、例えば、イソインドリン系顔料、アントラキノン系顔料、縮合アゾ系顔料、複合金属酸化物、酸化鉄を採用可能である。また、着色層36が含む黄色染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、メチン系染料、キノフタロン系染料、ピラゾロン系染料を採用可能である。
【0212】
着色層36が緑色に着色されている場合、着色層36は典型的には緑色顔料を含んでいる。着色層36は、緑色顔料に代えて緑色染料を含んでいてもよいし、顔料及び染料の両方を含んでもよい。着色層36が含む緑色顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、イソインドリン系顔料を採用可能である。また、着色層36が含む緑色染料としては、例えば、トリフェニルメタン系塩基性染料、フタロシアニン系染料を採用可能である。
【0213】
着色層36が紫色に着色されている場合、着色層36は典型的には紫色顔料を含んでいる。着色層36は、紫色顔料に代えて紫色染料を含んでいてもよいし、顔料及び染料の両方を含んでもよい。着色層36が含む紫色顔料としては、例えば、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料を採用可能である。また、着色層36が含む紫色染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、アジン系染料、キノリン系染料を採用可能である。
【0214】
着色層36が紅紫色に着色されている場合、着色層36は典型的にはマゼンタ顔料を含んでいる。着色層36は、マゼンタ顔料に代えてマゼンタ染料を含んでいてもよいし、顔料及び染料の両方を含んでもよい。着色層36が含むマゼンタ顔料としては、例えば、キナクリドン系顔料を採用可能である。また、着色層36が含むマゼンタ染料としては、例えば、唐紅、アントラキノン系染料を採用可能である。
【0215】
また、着色層36は、上述した顔料や染料だけでなく調色顔料や調色染料を含んでもよい。例えば着色層36を黒色に着色する場合であって、黒色顔料や黒色染料が赤みがかっている場合、着色層36は調色顔料または調色染料として上述した青色顔料や青色染料をさらに含んでもよい。この場合の調色顔料としては、例えば、青色顔料の他、上述した赤色顔料、黄色顔料、緑色顔料、マゼンタ顔料、紫色顔料など、種々の着色顔料を採用可能である。また、この場合の調色染料としては、青色染料の他、上述した赤色染料、緑色染料、マゼンタ染料、黄色染料、紫色染料など、種々の染料を採用可能である。
【0216】
あるいは、着色層36は、黒色顔料および黒色染料以外の上述した各色の顔料、染料を含んで黒色となっていてもよい。
【0217】
このような着色層36は、その液状の前駆材料を賦形層20の賦形面20aに塗布し、これを硬化させることにより、作製される。着色層36の前駆材料は、上述した着色層36に含まれる樹脂と顔料または染料とを含む。
【0218】
図49に示す例において、着色層36は、賦形面20aの凹凸を埋めている。すなわち、着色層36である輝度調整層30が、賦形面20aの凹凸を埋める平坦化層としても機能している。この場合、加飾積層体10は充填層40を有していなくてもよい。接合層35が充填層40を兼ねていなくてもよい。
図49に示す例において、輝度調整層30の接合層35と接触する面は、平坦である。これにより、接合層35の輝度調整層30と接触する面は、平坦となっている。
【0219】
このような着色層36は、その液状の前駆材料を賦形層20の賦形面20aに塗布し、これを硬化させることにより、作製される。着色層36の前駆材料は、上述した着色層36に含まれる樹脂と顔料または染料とを含む。
【0220】
複数の単位調整要素41の少なくとも一部における全光線透過率は、他の単位調整要素41における全光線透過率とは異なっていてもよい。これにより、加飾積層体10によって複雑な意匠を表現できる。
【0221】
着色層36の厚みは、0.1μm以上500μm以下であることが好ましい。
【0222】
<変形例9:加飾部材の変形例>
加飾部材3の形状としては、任意の形状を採用し得る。言い換えると、加飾積層体10が適用される成形部65の形状は、任意の形状であってよい。例えば、
図50に示すように、加飾部材3は曲面68を含んでいてもよい。より具体的には、成形部65は加飾部材3の曲面3cに対応する曲面68を含んでおり、加飾積層体10は成形部65の曲面68を覆っていてもよい。加飾積層体10が曲面68を覆うことにより、加飾部材3の曲面3cを観察する観察者は、加飾部材3に動かすことなく、加飾積層体10への光の入射角度の変化に応じた加飾積層体10の光学作用の変化を把握できる。言い換えると、加飾部材3の曲面3c上においては加飾積層体10に対する光の入射角度が場所によって異なるので、加飾部材3の曲面3cを観察する観察者は、視線を動かすだけで、平らな加飾積層体10をその傾きを変化させながら観察した場合と同様の、加飾積層体10からの反射光の動きを感知できる。加飾積層体10の上記光学作用の変化を効果的に把握する観点から、加飾部材3の曲面(したがって、成形部65の曲面)の曲率半径は、250mm以下であることが好ましく、100mm以下であることが更に好ましい。
【0223】
以上に説明してきた一実施の形態又はその変形例によれば、加飾積層体10は、表側面11と、表側面11に向かい合う裏側面12と、を有し、且つ賦形層20と、賦形層20よりも表側面11に近い位置に位置して賦形層20と向かい合う拡散層90と、を備える。賦形層20は、凹凸構造25が形成された賦形面20aを有する。加飾積層体10は、入射した光を凹凸構造25に応じて反射、屈折および/又は回折させる、少なくとも1つの単位光学要素13を有する。単位光学要素13において賦形面20aは、加飾積層体10の法線方向Dnに沿って延びる基準線に向かう方向に並び且つ基準線に向かって傾倒する複数の傾倒面26Aと、隣り合う傾倒面26Aを接続する複数の接続面26Bと、を含んで、光が反射される反射界面27を形成する。傾倒面26Aの法線方向Dnに対する角度が、傾倒面26Aに接続する接続面26Bの法線方向Dnに対する角度よりも大きい。拡散層90は、入射した光を拡散させる。加飾積層体10の表側面11における入射角85°での鏡面光沢度G(85)の、加飾積層体10の表側面11における入射角20°での鏡面光沢度G(20)に対する比率である比率G(85)/G(20)が、2以上30以下である。これによって、立体感を有し、且つマットな質感が表現された加飾積層体10及び加飾部材3を提供できる。
【0224】
以上に説明してきた一実施の形態又はその変形例において、複数の傾倒面26Aは、レンズ面であり、複数の接続面26Bは、ライズ面である。これによって、単位光学要素13をレンズとして機能させ得る。このため、加飾積層体10が単位光学要素13を有している領域において、加飾積層体10の厚み以上の立体感を表現できる。
【0225】
以上に説明してきた一実施の形態又はその変形例において、拡散層90は、バインダー樹脂95と、バインダー樹脂95中に分散された光拡散材96とを含有する。これによって、拡散層90が入射した光を拡散させることで、加飾積層体10により艶の抑制されたマットな質感を表現できる。
【0226】
以上に説明してきた一実施の形態又はその変形例において、拡散層90は、入射した光を拡散させる凹凸面92を有する。これによって、拡散層90が入射した光を拡散させることで、加飾積層体10により艶の抑制されたマットな質感を表現できる。
【0227】
以上に説明してきた一実施の形態又はその変形例において、加飾積層体10は、賦形層20の賦形面20aを覆う輝度調整層30を備える。これによって、加飾積層体10で反射される光の輝度が調整されることで、高級感をともなった豊かな意匠を、さらに効果的に加飾積層体10に付与できる。
【0228】
以上に説明してきた一実施の形態又はその変形例において、輝度調整層30は、蒸着膜である。以上に説明してきた一実施の形態又はその変形例の加飾積層体10によれば、蒸着膜を賦形面20aに強固に密着させ得る。以上に説明してきた一実施の形態又はその変形例の加飾積層体10によれば、蒸着膜を輝度調整層30として用いることで、加飾積層体10で反射される光の輝度を調整できる。
【0229】
以上に説明してきた一実施の形態又はその変形例によれば、賦形層20の賦形面20aは、裏側面12と向かい合う。以上に説明してきた一実施の形態又はその変形例において、加飾積層体10は、輝度調整層30よりも裏側面12に近い位置に位置して輝度調整層30に接し、光が反射される第2反射界面51aを形成する、第2輝度調整層51を備える。これによって、反射界面27において反射されずに裏側面12へと向かう光を、意匠表現に利用できる。
【0230】
以上に説明してきた一実施の形態又はその変形例によれば、複数の接続面26Bは、加飾積層体10の法線方向Dnに対して角度をなす。これによって、複数の接続面26Bが、加飾積層体10の法線方向Dnに対して角度をなしていることによって、賦形面20aと他の層とを強固に密着させることができる。さらに、単位光学要素13に対応する単位賦形要素23が、賦形の容易な形状となる。
【0231】
以上に説明してきた一実施の形態又はその変形例において、加飾積層体10は、拡散層90よりも表側面11に近い位置に位置して拡散層90と向かい合う基材76を備える。このような加飾積層体10は、基材76を剥離することなく、成形部65等に対して取り付けることができる。
【0232】
以上に説明してきた一実施の形態又はその変形例において、転写シート70は、上述した加飾積層体10と、加飾積層体10の表側面11と向かい合う転写用基材72と、を備える。このような転写シート70によれば、従来にはない意匠表現を実現し得る。
【0233】
以上に説明してきた一実施の形態又はその変形例において、加飾部材3は、成形部65と、上述した加飾積層体10を備えている。このような加飾部材3によれば、従来にはない意匠表現を実現し得る。
【0234】
以上に説明してきた一実施の形態又はその変形例において、移動体1は、上述した加飾積層体10を備えている。このような移動体1によれば、従来にはない意匠表現を実現し得る。
【実施例0235】
次に、上記実施の形態及び各変形例の具体的実施例について述べる。
【0236】
<実施例1>
一方の面に離型層73が形成された、平板な基材72を準備した。離型層73としては、樹脂74と、樹脂74中に拡散された粒子75とを含むものを用いた。離型層73に含まれる樹脂74は、アクリルポリオールとした。離型層73に含まれる粒子75は、メラミン粒子とした。離型層73が樹脂74と粒子75とを含むことによって、離型層73の第2面73bには、凹凸が形成されていた。
【0237】
次に、
図11に示すように、離型層73上に、拡散層90の前駆材料の層93を形成した。これによって、層93の離型層73と接触する面には、離型層73の第2面73bに形成されている凹凸の形状に応じて、凹凸が形成された。これにより、凹凸面92を有する拡散層90が形成された。拡散層90の材料は、アクリル樹脂とした。換言すれば、材料をアクリル樹脂とする拡散層90が形成されるように、拡散層90の前駆材料の層93の材料を選択した。
【0238】
次に、
図12に示すように、拡散層90上に、賦形層20の前駆材料の層29を形成した。次に、
図13に示すように、層29に賦形型100を押し当てて、これを賦形した。賦形型100は、凹凸構造25に対応した凹凸を有していた。次に、層29に紫外線を照射し、層29を硬化させた。これにより、賦形面20aに凹凸構造25が形成された賦形層20を作製した。その後、賦形型100を賦形層20から取り外した。
【0239】
次に、賦形層20の賦形面20aを覆うように、輝度調整層30として屈折率変調層34を形成した。実施例1においては、屈折率変調層34として、賦形面20aに、酸化チタン(TiO
2)の蒸着膜を形成した。輝度調整層30の形成によって、賦形層20の賦形面20aと輝度調整層30との間に、反射界面27が形成された。反射界面27を形成する賦形面20aは、複数の単位光学要素13において複数の傾倒面26Aと複数の接続面26Bとを含んでいた。各単位光学要素13の凹凸構造25は、
図3及び
図4に示すような、リニアフレネルレンズを組み合わせた構造を有していた。複数の単位光学要素13は、
図3に示すように、平面視において正六角形状の外輪郭23aを有していた。
【0240】
輝度調整層30として屈折率変調層34を形成した後、輝度調整層30上に接合層35(充填層40)を形成した。これにより、
図48に示す加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。
【0241】
<実施例2>
実施例2として、以下に記載する点以外は実施例1と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。実施例2においては、離型層73に含まれる粒子75の量を、実施例1において離型層73に含まれる粒子75の量の1.5倍とした。これにより、実施例2の拡散層90には、実施例1よりも、光を拡散させる作用がより強く、表側面11に生じる艶を減らす効果がより大きな凹凸面92が形成されていると考えられる。
【0242】
<実施例3>
実施例3として、以下に記載する点以外は実施例1と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。実施例3においては、離型層73に含まれる粒子75の量を、実施例1において離型層73に含まれる粒子75の量の2倍とした。これにより、実施例3の拡散層90には、実施例1及び実施例2よりも、光を拡散させる作用がより強く、表側面11に生じる艶を減らす効果がより大きな凹凸面92が形成されていると考えられる。
【0243】
<実施例4>
実施例4として、以下に記載する点以外は実施例1と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。実施例4においては、屈折率変調層34として、賦形面20aに、硫化亜鉛(ZnS)の蒸着膜を形成した。
【0244】
<実施例5>
実施例5として、以下に記載する点以外は実施例4と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。実施例5においては、離型層73に含まれる粒子75の量を、実施例4において離型層73に含まれる粒子75の量の1.5倍とした。これにより、実施例5の拡散層90には、実施例4よりも、光を拡散させる作用がより強く、表側面11に生じる艶を減らす効果がより大きな凹凸面92が形成されていると考えられる。
【0245】
<実施例6>
実施例6として、以下に記載する点以外は実施例4と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。実施例6においては、離型層73に含まれる粒子75の量を、実施例4において離型層73に含まれる粒子75の量の2倍とした。これにより、実施例6の拡散層90には、実施例4及び実施例5よりも、光を拡散させる作用がより強く、表側面11に生じる艶を減らす効果がより大きな凹凸面92が形成されていると考えられる。
【0246】
<実施例7>
実施例7として、以下に記載する点以外は実施例1と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。実施例7においては、
図4に示すような、輝度調整層30として反射層33を備える加飾積層体10を製造した。反射層33として、賦形面20aに、アルミニウム(Al)の蒸着膜を形成した。
【0247】
<実施例8>
実施例8として、以下に記載する点以外は実施例7と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。実施例8においては、離型層73に含まれる粒子75の量を、実施例7において離型層73に含まれる粒子75の量の1.5倍とした。これにより、実施例8の拡散層90には、実施例7よりも、光を拡散させる作用がより強く、表側面11に生じる艶を減らす効果がより大きな凹凸面92が形成されていると考えられる。
【0248】
<実施例9>
実施例9として、以下に記載する点以外は実施例7と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。実施例9においては、離型層73に含まれる粒子75の量を、実施例7において離型層73に含まれる粒子75の量の2倍とした。これにより、実施例9の拡散層90には、実施例7及び実施例8よりも、光を拡散させる作用がより強く、表側面11に生じる艶を減らす効果がより大きな凹凸面92が形成されていると考えられる。
【0249】
<実施例10>
実施例10として、以下に記載する点以外は実施例1と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。実施例10においては、
図20に示す加飾積層体10のような、接合層35と輝度調整層30との間に位置する第2輝度調整層51を備える加飾積層体10を製造した。第2輝度調整層51としては、アクリル樹脂にアルミ顔料を分散したインキを塗布したものを用いた。実施例10においては、屈折率変調層34として、賦形面20aに、硫化亜鉛(ZnS)の蒸着膜を形成した。
【0250】
<実施例11>
実施例11として、以下に記載する点以外は実施例10と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。実施例11においては、離型層73に含まれる粒子75の量を、実施例10において離型層73に含まれる粒子75の量の1.5倍とした。これにより、実施例11の拡散層90には、実施例10よりも、光を拡散させる作用がより強く、表側面11に生じる艶を減らす効果がより大きな凹凸面92が形成されていると考えられる。
【0251】
<実施例12>
実施例12として、以下に記載する点以外は実施例10と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。実施例12においては、離型層73に含まれる粒子75の量を、実施例10において離型層73に含まれる粒子75の量の2倍とした。これにより、実施例12の拡散層90には、実施例10及び実施例11よりも、光を拡散させる作用がより強く、表側面11に生じる艶を減らす効果がより大きな凹凸面92が形成されていると考えられる。
【0252】
<実施例13>
実施例13として、以下に記載する点以外は実施例1と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。実施例13においては、
図49に示すような、輝度調整層30として着色層36を備える加飾積層体10を製造した。着色層36としては、樹脂であるアクリル樹脂中に、顔料としてカーボンブラックが混合されたものを用いた。
【0253】
<実施例14>
実施例14として、以下に記載する点以外は実施例13と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。実施例14においては、離型層73に含まれる粒子75の量を、実施例13において離型層73に含まれる粒子75の量の1.5倍とした。これにより、実施例14の拡散層90には、実施例13よりも、光を拡散させる作用がより強く、表側面11に生じる艶を減らす効果がより大きな凹凸面92が形成されていると考えられる。
【0254】
<比較例1>
比較例1として、以下に記載する点以外は実施例1と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。比較例1においては、
図7Cに示すような、ハードコート層91が凹凸の形成された面を有さず、入射した光を拡散させる拡散層90としては機能しない、加飾積層体を製造した。
【0255】
<比較例2>
比較例2として、以下に記載する点以外は実施例1と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。比較例2においては、ハードコート層91が凹凸の形成された面を有さず、入射した光を拡散させる拡散層90としては機能しない、加飾積層体を製造した。比較例2においては、屈折率変調層34として、賦形面20aに、硫化亜鉛(ZnS)の蒸着膜を形成した。比較例2においては、接合層35と輝度調整層30との間に位置する第2輝度調整層51を備える加飾積層体を製造した。第2輝度調整層51としては、アクリル樹脂にアルミ顔料を分散したインキを塗布したものを用いた。
【0256】
<比較例3>
比較例3として、以下に記載する点以外は実施例1と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。比較例3においては、ハードコート層91が凹凸の形成された面を有さず、入射した光を拡散させる拡散層90としては機能しない、加飾積層体を製造した。比較例3においては、輝度調整層30として着色層36を備える加飾積層体を製造した。着色層36としては、樹脂であるアクリル樹脂中に、顔料としてカーボンブラックが混合されたものを用いた。
【0257】
<比較例4>
比較例4として、以下に記載する点以外は実施例13と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。比較例4においては、離型層73に含まれる粒子75の量を、実施例13において離型層73に含まれる粒子75の量の2倍とした。これにより、比較例4の拡散層90には、実施例13及び実施例14よりも、光を拡散させる作用がより強く、表側面11に生じる艶を減らす効果がより大きな凹凸面92が形成されていると考えられる。
【0258】
<比較例5>
比較例5として、以下に記載する点以外は実施例1と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。比較例5においては、ハードコート層91が凹凸の形成された面を有さず、入射した光を拡散させる拡散層90としては機能しない、加飾積層体を製造した。比較例5においては、賦形層20の賦形面20aに、凹凸構造25を形成せず、平坦とした。これにより、比較例5の加飾積層体は、単位光学要素13を備えなかった。比較例5においては、加飾積層体に輝度調整層30を設けなかった。比較例5においては、接合層35と賦形層20との間に第2輝度調整層51を設けた。第2輝度調整層51としては、アクリル樹脂にアルミ顔料を分散したインキを塗布したものを用いた。すなわち、比較例5の加飾積層体は、接合層35、第2輝度調整層51、賦形層20及びハードコート層91が、裏側面12から表側面11へと向かう方向に、この順で積層されたものであった。
【0259】
<比較例6>
比較例6として、以下に記載する点以外は実施例1と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。比較例6においては、賦形層20の賦形面20aに凹凸構造25を形成せず、賦形面20aを平坦とした。これにより、比較例6の加飾積層体は、単位光学要素13を備えなかった。比較例6においては、加飾積層体に輝度調整層30を設けなかった。比較例6においては、接合層35と賦形層20との間に第2輝度調整層51を設けた。第2輝度調整層51としては、アクリル樹脂にアルミ顔料を分散したインキを塗布したものを用いた。すなわち、比較例6の加飾積層体は、接合層35、第2輝度調整層51、賦形層20及び拡散層90(ハードコート層91)が、裏側面12から表側面11へと向かう方向に、この順で積層されたものであった。
【0260】
<比較例7>
比較例7として、以下に記載する点以外は比較例6と同様の方法によって、加飾積層体10を備える転写シート70を作製した。比較例7においては、離型層73に含まれる粒子75の量を比較例6において離型層73に含まれる粒子75の量の1.5倍とした。これにより、比較例7の拡散層90には、比較例6よりも、光を拡散させる作用がより強く、表側面11に生じる艶を減らす効果がより大きな凹凸面92が形成されていると考えられる。
<加飾部材の作製>
【0261】
得られた実施例1乃至14及び比較例1乃至7の加飾積層体を有する転写シート70のそれぞれを用いて、インモールド成形によって、
図2に示すような成形部65に加飾積層体10が転写された加飾部材3を作製した。具体的には、以下の方法によって加飾部材3を作製した。まず、転写シート70を、成形部65を成形するための成形型内に配置した。次に、転写シート70上の裏側面12(すなわち、接合層35)と成形型の内面との間に溶融樹脂を導入し、成形型内で樹脂を固化させた。これにより、転写シート70に接合された成形部65を、上記成形型内で成形した。その後、基材72を加飾積層体10から剥離した。以上によって、加飾部材3を作製した。換言すれば、接合層35によって成形部65に接合された状態の加飾積層体10を作製した。作製された加飾部材3は、成形部65と、加飾積層体10の裏側面12と成形部65の表側面66とが向かい合うように成形部65に接合された、
図4に示すような加飾積層体10と、を備えていた。
【0262】
得られた実施例1乃至14及び比較例1乃至7の加飾積層体を有する加飾部材に関して、鏡面光沢度の測定、比率G(85)/G(20)の算出、全光線反射率(RSCI)の測定、及び加飾積層体によって表現されている意匠の官能評価を行った。詳細を以下に示す。
【0263】
<鏡面光沢度>
各実施例及び各比較例の加飾積層体を有する加飾部材に関して、鏡面光沢度として、鏡面光沢度G(20)、鏡面光沢度G(60)及び鏡面光沢度G(85)を測定した。鏡面光沢度G(20)は、20°に入射角を設定することを除き、JIS Z 8741:1997に準拠して測定された値とした。鏡面光沢度G(60)は、60°に入射角を設定することを除き、JIS Z 8741:1997に準拠して測定された値とした。鏡面光沢度G(85)は、85°に入射角を設定することを除き、JIS Z 8741:1997に準拠して測定された値とした。
【0264】
鏡面光沢度の測定は、以下の方法によって行った。鏡面光沢度を測定する装置としては、コニカミノルタ社製のRhopointIQ-Sを用いた。鏡面光沢度を測定する際の測定環境は、温度23℃±2℃、相対湿度50%±5%とした。測定対象となる試料、すなわち各実施例及び各比較例の加飾積層体を有する加飾部材を、測定開始前に、測定環境に16時間配置した。鏡面光沢度の測定前には、測定装置の光源を15分間点灯し、光源の出力を安定させた。
【0265】
鏡面光沢度を測定する際、加飾積層体を有する加飾部材の裏側面12を、黒色粘着テープで覆った。具体的には、加飾積層体を有する加飾部材の裏側面3bに黒色粘着テープを貼合することによって、加飾積層体の裏側面12を黒色粘着テープで覆った。そして、加飾積層体10の表側面11を入射面として、鏡面光沢度G(20)、鏡面光沢度G(60)及び鏡面光沢度G(85)を測定した。
【0266】
上述の鏡面光沢度の測定によって測定された鏡面光沢度G(20)と鏡面光沢度G(85)とから、鏡面光沢度G(85)の鏡面光沢度G(20)に対する比率である比率G(85)/G(20)を算出した。
【0267】
<全光線反射率(RSCI)>
各実施例及び各比較例の加飾積層体を有する加飾部材に関して、表側面11の全光線反射率(RSCI)を測定した。表側面11の全光線反射率(RSCI)は、JIS Z 8722:2009に準拠して幾何条件cで測定した。特に、全光線反射率(RSCI)として、JIS Z 8722:2009に準拠して、分光測色計を用いて、SCI方式で測定した反射率Y値(三刺激値XYZのY)を測定した。全光線反射率(RSCI)の測定は、コニカミノルタ株式会社製の分光測色計(型番CM-700d)を用いて行った。測定の際、測定条件、観察条件、及び、測定径/照明径は、以下のように設定した。全光線反射率(RSCI)の測定は、平らな台の上に置いた加飾積層体10の表側面11に分光測色計を垂直に押し当てて行った。この分光測色計の測定波長範囲は400nm~700nmであり、測定波長間隔は10nmであった。
<測定条件>
・モード(正反射光処理モード):I+E(SCI+SCE)
<観察条件>
・表色系:Yxy
・視野角:10°視野
・主光源:D65
<測定径/照明径>
ターゲットマスクの交換及びレンズ位置切替えにより、Φ3mm/Φ6mm及びΦ8mm/Φ11mmのいずれかに設定。
【0268】
測定径/照明径は、単位光学要素13の寸法に応じて選択した。ここで、照明径は、分光測色計の照射領域の直径であり、測定径は、分光測色計の測定領域Cの直径である(
図8参照)。
【0269】
単位光学要素13の幾何中心に測定領域Cの中心を合わせた場合に、当該測定領域Cに当該単位光学要素13の少なくとも40%が収まるように測定径/照明径を選択し、全光線反射率(RSCI)を設定した。測定径は、選択可能な測定径の中から最も小さい測定径を選択した。
【0270】
次に、
図8に示すように、加飾積層体10の平面視において、分光測色計の測定領域Cの中心が上記単位光学要素13の幾何中心と一致するように、単位光学要素13に対する測定領域Cの位置を決定して、全光線反射率(R
SCI)を測定した。
【0271】
<意匠の官能評価>
各実施例、比較例の加飾積層体を有する加飾部材に関して、表現される意匠の官能評価を行った。意匠の官能評価においては、加飾積層体を有する加飾部材を、通常の一般的な明るさの部屋の壁に、表側面11が部屋の中心を向くように取り付けた。そして、被験者に、Y方向Dyにおいて表側面11と30cmだけ離れた位置から観察させ、加飾積層体を有する加飾部材によって表現されている意匠を評価させた。
【0272】
被験者に意匠を評価させるにあたっては、被験者に、加飾積層体を有する加飾部材によって表現されている意匠が、以下のA、B、C及びDのいずれに最もよくあてはまるかを評価させた。
A:立体感が明確に表現され、且つマットな質感が明確に表現されていた。
B:立体感が明確に表現され、且つマットな質感が表現されていたが、表側面11に若干の艶が現れていた。
C:立体感が表現されていたが、立体感がやや明確ではなかった。
D:立体感が表現されていなかった。
【0273】
実施例1乃至14及び比較例1乃至7の加飾積層体を有する加飾部材に関する、鏡面光沢度の測定、比率G(85)/G(20)の算出、全光線反射率(RSCI)の測定、及び加飾積層体を有する加飾部材によって表現されている意匠の官能評価の結果を、表1に示す。
【0274】
【0275】
表1に示すように、拡散層90と単位光学要素13とを備え、比率G(85)/G(20)が、2以上30以下である実施例1乃至14の加飾積層体を有する加飾部材は、意匠の官能評価において「A」、「B」、「C」のいずれかと評価された。その一方で、拡散層90を備えない比較例1乃至3の加飾積層体を有する加飾部材は、比率G(85)/G(20)が2以上30以下にはならず、意匠の官能評価において「D」と評価されることがわかった。単位光学要素13を備えない比較例5乃至7の加飾積層体を有する加飾部材は、比率G(85)/G(20)が2以上30以下にはならず、意匠の官能評価において「D」と評価された。さらに、比率G(85)/G(20)が30より大きかった比較例4の加飾積層体を有する加飾部材は、意匠の官能評価において「D」と評価された。
【0276】
表1に示すように、全光線反射率(RSCI)が10%以上である実施例1乃至12の加飾積層体を有する加飾部材は、意匠の官能評価において「A」、「B」のいずれかと評価された。その一方で、全光線反射率(RSCI)が10%より小さい実施例13及び14の加飾積層体を有する加飾部材は、意匠の官能評価において「C」と評価された。
【0277】
表1に示すように、鏡面光沢度G(60)が60以下であり、且つ比率G(85)/G(20)が3より大きい、実施例1乃至6、8、9及び12の加飾積層を有する加飾部材は、意匠の官能評価において「A」と評価された。その一方で、鏡面光沢度G(60)が60より大きいか、又は比率G(85)/G(20)が3以下であるかの、少なくとも一方に該当する実施例7、10及び11の加飾積層体を有する加飾部材は、意匠の官能評価において「B」と評価された。
【0278】
具体例を参照しながら一実施の形態及びその変形例を説明してきたが、以上の具体例が一実施の形態及び変形例を限定することを意図していない。上述した一実施の形態及び変形例は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
1:移動体、3:加飾部材、5:センサ、10:加飾積層体、11:表側面、12:裏側面、13:単位光学要素、20:賦形層、20a:賦形面、20b:非賦形面、23:単位賦形要素、234:第1領域、235:第2領域、24:間隙領域、25:凹凸構造、26A:傾倒面、26B:接続面、27:反射界面、30:輝度調整層、35:接合層、40:充填層、51:第2輝度調整層、51a:第2反射界面、52:色彩付与層、65:成形部、70:転写シート、72:基材、73:離型層、74:樹脂、75:粒子、76:基材、90:拡散層、91:ハードコート層、92:凹凸面、95:バインダー樹脂、96:光拡散材