(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025092102
(43)【公開日】2025-06-19
(54)【発明の名称】直流配電システムおよび直流配電盤
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20250612BHJP
【FI】
H02J1/00 301B
H02J1/00 301E
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207764
(22)【出願日】2023-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】渡部 與久
(72)【発明者】
【氏名】浮須 友和
【テーマコード(参考)】
5G165
【Fターム(参考)】
5G165CA02
5G165JA09
5G165LA03
5G165MA01
5G165NA10
(57)【要約】
【課題】設備の構成または状況に応じた配電経路を柔軟に構築できる直流配電システムまたは直流配電盤を提供する。
【解決手段】直流配線LNdは、複数の直流配電盤1の中の少なくとも2以上の直流配電盤1を介して一巡することで直流ループ配線を形成する。複数の直流配電盤1の一つである第1の直流配電盤1Bは、双方向DC/DCコンバータ11Aを有し、直流電力を蓄積する直流蓄電デバイス4を、双方向DC/DCコンバータ11Aを介して接続可能に構成される。配電システム制御装置6は、双方向DC/DCコンバータ11Aを制御することで、直流配線LNd上の電力潮流を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力した直流電力を配電する複数の直流配電盤と、
前記複数の直流配電盤の間で前記直流電力を伝達する直流配線と、
前記複数の直流配電盤を統括制御する配電システム制御装置と、
を備える直流配電システムであって、
前記直流配線は、前記複数の直流配電盤の中の少なくとも2以上の直流配電盤を介して一巡することで直流ループ配線を形成し、
前記複数の直流配電盤の一つである第1の直流配電盤は、双方向DC/DCコンバータを有し、前記直流電力を蓄積する直流蓄電デバイスを、前記双方向DC/DCコンバータを介して接続可能に構成され、
前記配電システム制御装置は、前記双方向DC/DCコンバータを制御することで、前記直流配線上の電力潮流を調整する、
直流配電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の直流配電システムであって、
さらに、前記直流配線に挿入され、2個の端子間を開閉可能に構成される直流開閉器を備え、
前記配電システム制御装置は、前記直流開閉器の開動作または閉動作の事前動作として、前記2個の端子間の電圧差を低減するように前記電力潮流を調整する、
直流配電システム。
【請求項3】
請求項1に記載の直流配電システムであって、
前記複数の直流配電盤の他の一つである第2の直流配電盤は、DC/DCコンバータを有し、発電を行う直流分散型電源を、前記DC/DCコンバータを介して接続可能に構成され、
前記複数の直流配電盤の少なくとも一つは、異常電流を検知した際に経路を遮断する直流遮断器を介して直流負荷を接続可能に構成され、
前記配電システム制御装置は、前記直流分散型電源から前記直流配線を介した前記直流負荷への配電経路上の電力損失を低減するように前記電力潮流を調整する、
直流配電システム。
【請求項4】
請求項2に記載の直流配電システムにおいて、
前記配電システム制御装置は、
前記複数の直流配電盤間の前記直流配線を介した接続関係の情報を保持する配線情報記憶部と、
前記直流配線の潮流情報を取得する潮流状態取得部と、
前記直流開閉器の開閉状態を取得する開閉状態取得部と、
前記配線情報記憶部の保持情報と、前記潮流状態取得部および前記開閉状態取得部で取得した情報とに基づいて、電気回路モデルと、前記電気回路モデル上の電圧値、電流値、または電力値を表すパラメータとを構築し、前記パラメータの値を変化させた場合の潮流変化を予測演算する潮流シミュレーション部と、
前記潮流シミュレーション部の予測演算結果に基づいて、前記複数の直流配電盤のいずれかに電圧の調整量を表す電圧調整指令値を出力する電圧調整部と、
を備える、
直流配電システム。
【請求項5】
請求項4に記載の直流配電システムにおいて、
前記潮流シミュレーション部は、前記複数の直流配電盤の中の任意の直流配電盤の直流電圧を変化させた場合の潮流変化を予測演算する、
直流配電システム。
【請求項6】
請求項4に記載の直流配電システムにおいて、
前記潮流シミュレーション部は、前記双方向DC/DCコンバータの前記直流電力を変化させた場合の潮流変化および前記複数の直流配電盤の端子電圧変化を予測演算する、
直流配電システム。
【請求項7】
請求項4に記載の直流配電システムにおいて、
前記配電システム制御装置は、さらに、前記開閉状態取得部および前記潮流状態取得部で取得した情報に基づき前記直流ループ配線にノイズ電流が重畳したことを検知するノイズ検知部を備える、
直流配電システム。
【請求項8】
請求項7に記載の直流配電システムにおいて、
前記配電システム制御装置は、前記ノイズ検知部でノイズを検知した場合は、前記直流ループ配線の一部の前記直流開閉器を開状態に変更する、
直流配電システム。
【請求項9】
請求項7に記載の直流配電システムにおいて、
前記配電システム制御装置は、前記ノイズ検知部でノイズを検知した場合は、前記ノイズによる電流変化を相殺するように前記潮流状態取得部の取得データを補正する、
直流配電システム。
【請求項10】
請求項7に記載の直流配電システムにおいて、
前記ノイズ検知部は、前記直流ループ配線を形成する2以上の直流配線から前記ノイズ電流を検知し、検知した2以上のノイズ電流に相関がある場合に、前記ノイズ電流を、電磁誘導に伴う還流電流と判定する、
直流配電システム。
【請求項11】
請求項1に記載の直流配電システムにおいて、
前記直流ループ配線は、複数形成され、
前記複数の直流配電盤の少なくとも一つは、前記複数の直流ループ配線に共通に接続される、
直流配電システム。
【請求項12】
請求項11に記載の直流配電システムにおいて、
さらに、前記直流配線に挿入され、2個の端子間を開閉可能に構成される直流開閉器を備え、
前記複数の直流配電盤は、
前記直流開閉器を開閉駆動し、かつ前記直流配線に流れる電流を計測する第1グループの直流配電盤と、
前記直流開閉器を開閉駆動せず、かつ前記直流配線に流れる電流を計測しない第2グループの直流配電盤と、
を含み、
前記第1グループの直流配電盤と前記第2グループの直流配電盤とは、交互に配置されている、
直流配電システム。
【請求項13】
複数の部品を収容した1個の筐体で構成される直流配電盤であって、
前記複数の部品は、
外部に引き出される複数の直流配線に接続され、導電材料で構成される直流分岐部と、
前記直流分岐部に電源配線を介して接続される双方向DC/DCコンバータと、
直流電力を蓄積し、前記直流分岐部に前記双方向DC/DCコンバータを介して接続される直流蓄電デバイスと、
前記直流分岐部と、外部に設けられる直流負荷とを接続する負荷動力線に挿入され、異常電流を検知した際に、前記負荷動力線の経路を遮断する直流遮断器と、
前記複数の直流配線の電流をそれぞれ計測する第1の電流センサと、
前記負荷動力線の電流を計測する第2の電流センサと、
前記電源配線の電流を計測する第3の電流センサと、
前記双方向DC/DCコンバータの制御を含めて、前記直流配電盤を制御する配電盤コントローラと、
を含み、
前記複数の直流配線のいずれか1個は、外部の配線経路を介して、前記複数の直流配線の他のいずれか1個に接続される、
直流配電盤。
【請求項14】
請求項13に記載の直流配電盤において、
前記複数の直流配線の少なくともいずれか1個に、2個の端子間を開閉可能に構成される直流開閉器が挿入されることを前提として、
前記配電盤コントローラは、前記直流開閉器を開閉駆動する直流開閉器操作回路を備える、
直流配電盤。
【請求項15】
請求項13に記載の直流配電盤において、
地面と垂直な方向における相対的な位置関係を上方および下方とした場合に、
前記筐体には、前記上方に、前記複数の直流配線を外部へ引き出すための第1の配線孔が設けられ、前記下方に、前記負荷動力線を外部へ引き出すための第2の配線孔が設けられる、
直流配電盤。
【請求項16】
請求項15に記載の直流配電盤において、
前記直流分岐部、前記双方向DC/DCコンバータ、前記直流蓄電デバイスは、前記上方から前記下方に向けて順に配置される、
直流配電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流配電システムおよび直流配電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2015―163032号公報)には、直流電源装置から負荷装置に給電経路を介して電力を供給する給電システムが示される。給電経路には、スイッチ部が挿入される。また、給電経路の接続形態として、樹枝状給電経路、バス方式給電経路、ループ方式給電経路が示される。樹枝状給電経路では、樹枝状に分岐させた経路の先に負荷装置が接続される。バス方式給電経路では、バス上の分岐点から分岐させた先に分電盤が接続される。ループ方式給電経路では、1個の分電盤に接続されたループ配線上に複数の負荷装置が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、地球温暖化対策のひとつとして再生可能エネルギーの普及が進んでいる。その中でも特に、設置が容易である太陽光発電が注目されている。太陽光発電では、エネルギー利用効率の改善の一環として、太陽光発電による直流電力を、交流への変換を経ることなく負荷まで配電する直流配電の方式が検討されている。
【0005】
また、太陽光発電に加えて蓄電デバイスを備える場合、余剰となった太陽光発電の電力を蓄積できる。これにより、自家利用を促進する、小売電力の単価変動にあわせた充放電によりエネルギーコストを削減する、災害などの際に重要な負荷をバックアップするといった運用が可能となる。蓄電デバイスにおいても、太陽光発電と同様に、直流配電による利用効率の改善が見込まれている。
【0006】
ここで、例えば、工場設備などのフロア全域に広く直流配電経路を敷設することを想定した場合、特許文献1に示されるような樹枝状、バス方式、ループ方式といった配電経路を用いることが考えられる。また、配電経路に開閉器を挿入することが考えられる。このような構成を用いると、開閉器の開閉によって、特定の範囲への配電を停止すべく配電範囲を制限することは可能である。しかしながら、例えば、設備の構成を変更した場合や、設備の稼働状況や太陽光発電の発電状況が変わった場合などで、設備の構成または状況に応じた配電経路を柔軟に構築することは困難であった。
【0007】
本発明は、このようなことに鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、設備の構成または状況に応じた配電経路を柔軟に構築できる直流配電システムまたは直流配電盤を提供することにある。
【0008】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施の形態による直流配電システムは、入力した直流電力を配電する複数の直流配電盤と、複数の直流配電盤の間で直流電力を伝達する直流配線と、複数の直流配電盤を統括制御する配電システム制御装置と、を備える。直流配線は、複数の直流配電盤の中の少なくとも2以上の直流配電盤を介して一巡することで直流ループ配線を形成する。複数の直流配電盤の一つである第1の直流配電盤は、双方向DC/DCコンバータを有し、直流電力を蓄積する直流蓄電デバイスを、双方向DC/DCコンバータを介して接続可能に構成される。配電システム制御装置は、双方向DC/DCコンバータを制御することで、直流配線上の電力潮流を調整する。
【発明の効果】
【0010】
前記一実施の形態によれば、設備の構成または状況に応じた配電経路を柔軟に構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施の形態による直流配電システムの構成例を示す概略図である。
【
図2】
図1に示される構成を拡張した直流配電システムの構成例を示す概略図である。
【
図3】
図1における直流配電盤の内部構成例を示す斜視図である。
【
図4】
図1における配電システム制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図5A】
図1において、DC/DCコンバータの一形態である双方向DC/DCコンバータの構成例を示す回路図である。
【
図5B】
図5AにおけるDC/DCコンバータ制御器の構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図4における潮流シミュレーション部によって構築される電気回路モデルの一例を示す概略図である。
【
図7】
図6に示される電気回路モデルにおいて、パラメータの値を変化させた場合の潮流変化の一例を示す模式図である。
【
図8A】
図4におけるノイズ検知部の検知アルゴリズムの一例を説明する模式図である。
【
図8B】
図4におけるノイズ検知部の検知アルゴリズムの一例を説明する模式図である。
【
図8C】
図4におけるノイズ検知部の検知アルゴリズムの一例を説明する模式図である。
【
図8D】
図4におけるノイズ検知部の検知アルゴリズムの一例を説明する模式図である。
【
図8E】
図4におけるノイズ検知部の検知アルゴリズムの一例を説明する模式図である。
【
図9】第2の実施の形態による直流配電システムにおいて、設備に適用した場合の配置構成例を示す斜視図である。
【
図10A】
図9に示される直流配電システムを上部から見た場合の模式的な配置構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。実施の形態は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0013】
各種情報の例として、「テーブル」、「リスト」、「キュー」等の表現にて説明することがあるが、各種情報はこれら以外のデータ構造で表現されてもよい。例えば、「XXテーブル」、「XXリスト」、「XXキュー」等の各種情報は、「XX情報」としてもよい。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0014】
また、同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。例えば、ある一つの構成要素の符号を“1”として、複数の構成要素を“1A”,“1B”等で区別する場合がある。これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合もある。
【0015】
実施の形態において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。その一例として、計算機は、プロセッサ(例えばCPU、GPU)によりプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ)やインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体は、プロセッサであってよい。また、プログラムを実行して行う処理の主体は、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノードであってもよい。
【0016】
さらに、プログラムを実行して行う処理の主体は、演算部であれば良く、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(ApplicationSpecific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0017】
プログラムは、プログラムソースから計算機にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバは、プロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが、配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施の形態において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0018】
(第1の実施の形態)
<直流配電システムの構成>
図1は、第1の実施の形態による直流配電システムの構成例を示す概略図である。
図1に示される直流配電システムは、例えば、生産工場等を代表とする様々な設備に適用される。当該直流配電システムは、複数、この例では3基の直流配電盤1A,1B,1Cと、複数、この例では3個の直流開閉器5と、配電システム制御装置6と、エネルギー管理装置7とを備える。各直流配電盤1は、入力した直流電力を配電する。すなわち、複数の直流配電盤1は、直流配線LNdを介して相互に結線され、直流配線LNdを介して直流電力を伝達する。
【0019】
ここで、直流配線LNdは、複数の直流配電盤1の中の少なくとも2以上の直流配電盤1を介して一巡することで直流ループ配線を形成する。この例では、直流ループ配線は、3基の直流配電盤1A,1B,1Cを介することで形成されるが、最小単位として、2基の直流配電盤1を介することでも形成され得る。各直流配電盤1は、主に、直流分岐部10、DC/DCコンバータ11、電流センサ12、直流遮断器13、および配電盤コントローラ14を備える。
【0020】
直流分岐部10は、外部へ引き出される複数の直流配線LNdを接続し、当該複数の直流配線LNdを集約または分岐する動力回路の一部であって、例えば、銅バーや端子台などの導電材料で構成される。DC/DCコンバータ11は、電源配線LNpを介して直流分岐部10に接続される。DC/DCコンバータ11は、1次側の直流端子と2次側の直流端子との間で電力を変換する。明細書では、直流分岐部10へ接続される側の端子を2次側と称する。
【0021】
電流センサ12は、直流分岐部10に接続される各配線の電流を計測する。この例では、電流センサ12は、DC/DCコンバータ11に繋がる電源配線LNpと、直流遮断器13を介して外部の直流負荷2に繋がる負荷動力線LNlと、外部へ繋がる複数の直流配線LNdに流れる電流をそれぞれ計測する。
【0022】
直流遮断器13は、直流配電盤1の外部に設けられる直流負荷2を直流分岐部10へ接続するための遮断器であって、直流負荷2と直流分岐部10とを接続する負荷動力線LNlに挿入される。具体的には、直流遮断器13は、負荷動力線LNlにおいて地絡、短絡などに伴う異常電流が生じた場合、当該異常電流を検知し、負荷動力線LNlの経路を遮断する。これにより、直流遮断器13は、直流分岐部10に繋がる他の直流系統を保護する。
【0023】
また、この例では、直流配電盤(第2の直流配電盤)1Aに含まれるDC/DCコンバータ11Aの1次側には、直流分散型電源3が接続される。直流分散型電源3は、例えば、太陽光発電パネルまたはそれらに連なる集電箱などで構成され得る。この場合、DC/DCコンバータ11Aは、1次側から2次側に向けた片方向の電力変換機能があればよい。なお、太陽光発電パネルを用いる場合、日射量に対し端子電圧を操作することで最大電力点を探索する最大電力点追従制御を行う機能などを搭載することが望ましい。この機能は、例えば、DC/DCコンバータ11、配電盤コントローラ14、またはエネルギー管理装置7のいずれかに搭載され得る。
【0024】
一方、直流配電盤(第1の直流配電盤)1Bに含まれるDC/DCコンバータ11Bの1次側には、直流蓄電デバイス4が接続される。直流蓄電デバイス4として、例えば、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、電解コンデンサなどが適用され得る。直流蓄電デバイス4を接続する場合のDC/DCコンバータ11Bは、双方向DC/DCコンバータであるとよい。双方向DC/DCコンバータは、1次側から2次側に向けた方向および2次側から1次側へ向けた方向の双方向の電力変換機能を有する。
【0025】
この例のように、直流配電盤1Aには直流分散型電源3を、直流配電盤1Bには直流蓄電デバイス4をそれぞれ接続し、直流配線LNdを通じて両端の直流配電盤1を配電可能に構成することで、例えば、再生可能エネルギーによるエネルギー自給を高めるといったシステム運用が可能となる。すなわち、例えば、直流配電盤1Aで生じた直流発電電力が直流負荷2Aの消費に比べて余剰となった場合、この余剰電力を、直流配電盤1Bの直流蓄電デバイス4に充電できる。そして、直流蓄電デバイス4に充電した電力を、例えば、直流発電電力が不足する場合や、または、災害時などで利用できる。
【0026】
直流蓄電デバイス4を用いる場合、有限の蓄電エネルギー容量によって生じ得る過充電を防止するため、例えば、蓄電率(SOC)を管理する機能などを搭載することが望ましい。この機能は、例えば、配電盤コントローラ14またはエネルギー管理装置7などに搭載され得る。
【0027】
直流開閉器5は、直流配線LNdに挿入され、2個の端子間を開閉可能に構成される。この例では、複数の直流配電盤1A,1B,1Cを互いに結線する3本の直流配線LNdに、それぞれ、1個ずつ直流開閉器5が挿入される。直流開閉器5は、様々な目的に応じて開閉される。一例として、直流開閉器5は、システム上の発電電力および直流負荷2の消費電力の状況に応じて配線の損失を低減する目的で開閉され得る。または、直流開閉器5は、定期的なメンテナンスのために局所的に一部の直流配電盤1を絶縁する目的で開閉され得る。
【0028】
配電盤コントローラ14は、例えば、プロセッサ、メモリおよび外部通信インタフェースを含むマイクロコントローラなどを搭載した配線基板によって実現され得る。配電盤コントローラ14は、直流配電盤1全体を制御する。その一つとして、配電盤コントローラ14は、直流配電盤1の内部に設けられる電流センサ12およびDC/DCコンバータ11から情報を取得し、さらに外部に設けられる配電システム制御装置6、または他の直流配電盤1に含まれる配電盤コントローラ14と情報を送受信する。そして、配電盤コントローラ14は、得られた情報に基づいて、DC/DCコンバータ11に指令値を与えることで、DC/DCコンバータ11を制御する。
【0029】
また、配電盤コントローラ14は、直流開閉器5を開閉駆動する直流開閉器操作回路を備えてもよい。直流開閉器操作回路は、例えば、直流開閉器5の開閉のための駆動信号を出力するドライバ回路などを含む。この場合、配電盤コントローラ14は、外部、例えば、配電システム制御装置6などからの開閉命令に応じて、近隣に設置された直流開閉器5を開閉駆動する。
【0030】
配電システム制御装置6およびエネルギー管理装置7のそれぞれは、例えば、プロセッサ、メモリおよび外部通信インタフェースを含むコンピュータシステムなどによって実現され得る。配電システム制御装置6は、主に、直流配電システム全体の動作を統括制御する。その一つとして、配電システム制御装置6は、DC/DCコンバータ11を制御することで、直流配線LNd、すなわち直流ループ配線上の電力潮流を調整する。一方、エネルギー管理装置7は、主に、直流配電システム全体で生成または消費される電力を管理する。
【0031】
この例では、配電システム制御装置6およびエネルギー管理装置7を個別に設けたが、いずれも直流配電盤1を通信制御する装置であるため、両機能を集約した1つの管理装置を設けてもよい。または、一部の機能、例えばエネルギー管理装置7の機能などをクラウドサーバに実装し、残りの機能を生産工場等の現場設備に実装し、両者を協調運用するといったシステム構成であっても構わない。
【0032】
図2は、
図1に示される構成を拡張した直流配電システムの構成例を示す概略図である。
図2に示される直流配電システムは、
図1に示した3基の直流配電盤1A,1B,1Cに加えて、さらに1基の直流配電盤1Dを備える。例えば、直流配電盤1Aは、
図1に示したような直流分散型電源3による発電電力と、直流負荷2Aによる消費電力との差分に基づいて、外部との間で電力Paを入力または出力する。同様に、直流配電盤1B,1C,1Dは、それぞれ、直流分散型電源3または直流蓄電デバイス4による電力と、直流負荷2による電力とに基づいて、外部との間で電力Pb,Pc,Pdを入力または出力する。
【0033】
このような構成を用いると、
図1の場合と同様に、3基の直流配電盤1A,1B,1C間の3本の直流配線LNdによって、直流ループ配線LP1が形成される。これに加えて、別の3基の直流配電盤1B,1C,1D間の3本の直流配線LNdによって、別の直流ループ配線LP2が形成される。明細書では、このように複数の直流ループ配線が格子状または網目状に配置される配電経路を、メッシュ状配電経路と呼ぶ。
【0034】
この例では、2個の直流ループ配線LP1,LP2が形成されたが、例えば、さらに1基の直流配電盤1を追加すると、3個または4個といった直流ループ配線を形成できる。メッシュ状配電経路では、複数の直流配電盤1の少なくとも一つ、
図2に示される例では、2個の直流配電盤1B,1Cのそれぞれは、複数の直流ループ配線LP1,LP2に共通に接続される。
【0035】
以上のように、複数の直流配電盤1を介して直流ループ配線を形成することで、設備の状況に応じた配電経路を柔軟に構築できる。一例として、
図1において、直流配電盤1Aに接続される直流分散型電源3からの発電電力が不足する場合であっても、直流配電盤1Bに接続される直流蓄電デバイス4から直流ループ配線、ひいては、直流ループ配線に接続される直流負荷2A,2B,2Cに電力を供給できる。あるいは、例えば、所定の直流負荷2に対する右回りの配電経路に障害が生じたような場合でも、左回りの代替え経路を確保できる。
【0036】
また、例えば、
図1に示したように、隣り合う直流配電盤1間の直流配線LNd、この例では3本の直流配線LNdにおける電力潮流を、3基の直流配電盤1A,1B,1Cによる入力電力または出力電力によって個々に調整可能な配線トポロジを構築できる。このため、設備の構成または状況に応じて、各直流配線LNdの電力潮流をきめ細かく調整でき、その結果として、設備の構成または状況に応じた配電経路を柔軟に構築できる。
【0037】
さらに、
図2に示したようなメッシュ状配電経路を用いることでも、設備の構成または状況に応じた配電経路を柔軟に構築できる。すなわち、例えば、生産工場等の設備に予めメッシュ状配電経路を形成しておけば、設備内の装置の構成や配置が変わった場合や、設備の稼働状況や太陽光発電の発電状況が変わった場合でも、変更内容に応じた好適な配電経路を柔軟に構築できる。具体的には、例えば、送電ロスを低減できるように、直流開閉器5を用いて配電経路を定め、直流配電盤1を用いて配電経路、詳細には各直流配線LNdにおける電力潮流を調整できる。
【0038】
なお、例えば、特許文献1に示されるような、樹枝状、バス方式、ループ方式による配電経路では、設備の構成変更に際して、電源の再敷設などが必要とされる場合がある。また、当該配電経路では、電力潮流を細かく調整することは困難である。さらに、例えば、樹枝状配電経路では、主幹系統に電池類を配置し、枝となる回路を順に起動する必要がある。一方、メッシュ状配電経路では、まず、任意に配置された電池によって電力供給を行える区画を、起動および安定化させ、その後に、徐々に区画を広げるといった段階的な起動を行える。このため、特に非常時のバックアップ起動が柔軟になる。
【0039】
<直流配電盤の詳細>
図3は、
図1における直流配電盤1の内部構成例を示す斜視図である。
図3に示される直流配電盤1は、複数の部品を収容した1個の筐体17で構成される。当該複数の部品は、直流蓄電デバイス4A,4Bと、直流分岐部10P,10Nと、DC/DCコンバータ11と、電流センサ12G,12L,12Bと、直流遮断器13A,13B,13Cと、配電盤コントローラ14と、過電流保護素子15とを含む。DC/DCコンバータ11は、この例では双方向DC/DCコンバータである。
【0040】
正負の直流分岐部10P,10Nには、外部に引き出される複数の直流配線LNdが接続される。複数の直流配線LNdは、
図1で述べたように、他の直流配電盤1との間でそれぞれ電力を伝達する。直流分岐部10には、直流ループ配線を形成する上で、最低でも2以上の直流配線LNdが接続され、この例では、3個または3対の直流配線LNd1,LNd2,LNd3が接続される。そして、複数の直流配線LNdのいずれか1個は、外部の配線経路を介して、複数の直流配線LNdの他のいずれか1個に接続される。
【0041】
第1の電流センサ12Gは、当該3個の直流配線LNd1,LNd2,LNd3の電流をそれぞれ計測する。第2の電流センサ12Lは、直流分岐部10と直流遮断器13とを接続する負荷動力線LNlの電流を計測する。第3の電流センサ12Bは、直流分岐部10とDC/DCコンバータ11とを接続する電源配線LNpの電流を計測する。
【0042】
過電流保護素子15は、例えば、ヒューズまたはサーミスタなどで構成され、盤内の配線の一部、この例では電源配線LNpに挿入される。過電流保護素子15を設けることで、その前後の回路での短絡などにより過電流が生じた場合に、影響の波及を防止するといった安全対策を実現できる。配電盤コントローラ14は、この例では、
図1で述べたような直流開閉器操作回路を備えている。これにより、配電盤コントローラ14は、例えば、配電システム制御装置6からの開閉命令に応じて、直流開閉器5を開閉駆動する。
【0043】
このように、
図3に示される例では、直流蓄電デバイス4は、直流配電盤1を構成する筐体17の内部に収容される。そして、DC/DCコンバータ11に設けられた2個の蓄電デバイス端子に対して、2個の直流蓄電デバイス4A,4Bがそれぞれ接続される。このようにDC/DCコンバータ11に対して複数の直流蓄電デバイス4を接続可能に構成することで、仮に直流蓄電デバイス4Aに故障が生じた際にも直流蓄電デバイス4Bでシステムの運転を継続できる。
【0044】
なお、直流蓄電デバイス4が複数の単電池を直列または並列に接続した蓄電モジュールで構成される場合、
図3に示されるように、内部の単電池の電圧を管理する蓄電コントローラ4Cを設けることが望ましい。蓄電コントローラ4Cは、例えば、直流蓄電デバイス4内のコントローラ、およびDC/DCコンバータ11との通信によって、このような単電池の電圧を管理する。
【0045】
また、
図3に示されるように、直流配電盤1を略直方体形状の筐体17で構成した場合、筐体17には、上方に、第1の配線孔18aが設けられ、下方に、第2の配線孔18bが設けられることが望ましい。第1の配線孔18aは、直流分岐部10に接続される直流配線LDdを外部に引き出すための孔である。第2の配線孔18bは、直流分岐部10に接続される負荷動力線LNlを外部に引き出すための孔である。負荷動力線LNlは、1次の直流遮断器13A、2次の直流遮断器13B,13Cを介して、外部の直流負荷2に接続される。
【0046】
このような直流配電盤1を用いることで、
図2に示したようなメッシュ状配電経路を容易に構築できる。このような直流配電盤1内部の配置構成により、詳細は、
図9で述べるが、設備のレイアウトの観点で、直流配電盤1を設備に組み込み易くなる。また、1次の直流遮断器13A、2次の直流遮断器13B,13Cの順に電力が伝達されるため誤操作の防止に優れる。なお、明細書では、地面と水平な方向をX軸方向およびY軸方向とし、地面と垂直な方向をZ軸方向とする。上方および下方は、Z軸方向における相対的な位置関係を表す。
【0047】
さらに、
図3に示されるように、直流蓄電デバイス4は、DC/DCコンバータ11の下方に設けられ、直流分岐部10は、DC/DCコンバータ11の上方に設けられる。これにより、例えば、絶縁型のDC/DCコンバータ11を用いた場合に、直流蓄電デバイス4と直流分岐部10とを明確に絶縁でき、DC/DCコンバータ11の混触防止を強化できる。
【0048】
また、直流蓄電デバイス4の収容空間は、筐体17の下方に設けられる。これにより、一般的に重量が大きくかつ寿命が短い直流蓄電デバイス4を交換する際に、交換作業などが容易となる。さらに、直流蓄電デバイス4は、一般的に発熱部品であるため、相対的に低い位置の外気を取り込むことで、効果的に冷却を促進できる。
【0049】
<配電システム制御装置の詳細>
図4は、
図1における配電システム制御装置6の構成例を示すブロック図である。
図4に示される構成は、例えば、プロセッサおよびメモリを含むコンピュータシステムによって実現され、主にプロセッサを用いたプログラム処理によって実現され得る。当該配電システム制御装置6は、配線情報記憶部61と、運用方針情報記憶部62と、開閉状態取得部63と、潮流状態取得部64と、ノイズ検知部65と、潮流シミュレーション部66と、開閉操作部67と、電圧調整部68とを備える。
【0050】
配線情報記憶部61は、複数の直流配電盤1間の直流配線LNdを介した接続関係の情報を予め保持する。具体的には、配線情報記憶部61は、例えば、個々の直流配線LNdの両端がどの直流配電盤1に接続され、さらに直流分岐部10のどの位置に接続されているかの情報や、直流配線LNdの種類、配線抵抗、耐熱指標の情報などを保持する。運用方針情報記憶部62は、例えば、評価指標の項目および目標値といった予め定められたシステムの運用方針の情報を保持する。配線情報記憶部61および運用方針情報記憶部62は、メモリで実現される。
【0051】
開閉状態取得部63は、例えば、直流開閉器5との通信、または、直流開閉器5の開閉駆動を担う配電盤コントローラ14との通信によって、直流開閉器5の開閉状態を取得する。潮流状態取得部64は、直流配線LNdの潮流情報を取得する。詳細には、潮流状態取得部64は、各配電盤コントローラ14との通信によって、各電流センサ12による検出情報や、DC/DCコンバータ11内で検出される電流および電圧の情報などを取得する。これにより、直流配電システム全体において、各直流配線LNdに流れる電流の状態や、各直流配線LNdに印加される電圧の状態などが判明する。
【0052】
ノイズ検知部65は、詳細は後述するが、開閉状態取得部63および潮流状態取得部64で取得した情報に基づき、直流ループ配線にノイズ電流が重畳したことを検知する。一般に、環状の導体に対して電磁的な外来ノイズが生じた場合には、電磁誘導により還流電流が誘起されることが知られている。ノイズで生じた還流電流は、システム全体の潮流を判定する際に誤差となる。
【0053】
このため、ノイズ電流を特定することで、誤差の相殺処理を施すことが可能になる。具体的には、配電システム制御装置6は、ノイズによる電流変化を相殺するように、潮流状態取得部64の取得データ、例えば電流データを補正すればよい。あるいは、配電システム制御装置6は、ノイズが生じる直流ループ配線上の一部の直流開閉器5を開状態に変更することで、ノイズ電流の発生自体を抑制してもよい。メッシュ状配電経路では、このようにループの一部を開放しても、直流負荷2への配電を維持できる。
【0054】
潮流シミュレーション部66は、配線情報記憶部61の保持情報と、開閉状態取得部63および潮流状態取得部64で取得した情報とに基づいて、電気回路モデルと、当該電気回路モデル上の電圧値、電流値、または電力値を表すパラメータとを構築する。そして、潮流シミュレーション部66は、所定のパラメータの値を変化させた場合の潮流変化を予測演算する。または、潮流シミュレーション部66は、直流開閉器5の開閉状態を変化させた場合の潮流変化を予測演算する。
【0055】
一例として、潮流シミュレーション部66は、現在の運転状態から任意の直流配電盤1の直流電圧を変化させた場合の潮流変化を予測演算する。あるいは、潮流シミュレーション部66は、現在の運転状態から任意の双方向DC/DCコンバータの直流電力を変化させた場合の潮流変化および複数の直流配電盤1の端子電圧変化を予測する。そして、潮流シミュレーション部66は、このようなパラメータ走査を行いながら、運用方針情報記憶部62で定められる評価指標が目標値に近づくようなパラメータ条件を特定する。例えば、潮流シミュレーション部66は、どの直流配電盤1からの直流電圧をどれだけ調整すればよいかを特定する。
【0056】
開閉操作部67は、潮流シミュレーション部66の予測演算結果に基づいて、所定の直流開閉器5、または、その開閉駆動を担う配電盤コントローラ14に開閉命令を出力する。すなわち、開閉操作部67は、所定の直流開閉器5の開閉状態を変化させることで評価指標が目標値に近づくか否かを、潮流シミュレーション部66の予測演算結果に基づいて判定し、目標値に近づくように開閉状態を変化させる。
【0057】
また、開閉操作部67は、ノイズ検知部65の検知結果に基づいて、ループを開放すべく所定の直流開閉器5、または配電盤コントローラ14に開閉命令を出力する。なお、このような開閉操作部67を設ける場合、開閉状態取得部63は、開閉操作部67の操作結果を取得するような構成であってもよい。
【0058】
電圧調整部68は、潮流シミュレーション部66の予測演算結果に基づいて、複数の直流配電盤1のいずれかに、電圧の調整量を表す電圧調整指令値ΔV*を出力する。すなわち、電圧調整部68は、潮流シミュレーション部66で特定された直流配電盤1に、特定された電圧調整量を通知する。また、詳細は後述するが、電圧調整部68は、開閉操作部67において任意の直流開閉器5の開閉命令が出力された場合にも、直流開閉器5のダメージを軽減するため、潮流シミュレーション部66で特定された直流配電盤1に、特定された電圧調整量を通知する。
【0059】
このように、潮流シミュレーション部66、言い換えれば回路シミュレータを搭載した配電システム制御装置6を設けることで、システムの運用方針に基づいて、直流配電システムの動作、詳細には潮流状態などを逐次最適化することが可能になる。また、ノイズ検知部65を設けることで、直流ループ配線に伴い副作用となり得るノイズ電流を検知でき、当該ノイズ電流の影響を軽減するための処置を施すことが可能になる。
【0060】
<双方向DC/DCコンバータの詳細>
図5Aは、
図1において、DC/DCコンバータ11の一形態である双方向DC/DCコンバータの構成例を示す回路図である。
図5Bは、
図5AにおけるDC/DCコンバータ制御器110の構成例を示すブロック図である。
図5Aに示される双方向DC/DCコンバータは、1次側端子PNp1,PNn1と、2次側端子PNp2,PNn2と、両端子間で電力を変換する主回路と、主回路を制御するDC/DCコンバータ制御器110とを備える。
【0061】
主回路は、1次側と2次側とを絶縁する絶縁トランス112と、絶縁トランス112の1次側を駆動するブリッジ構成の半導体スイッチ群111と、絶縁トランス112の2次側を駆動するブリッジ構成の半導体スイッチ群113と、2次側に接続される直流コンデンサ114,115とを備える。また、スイッチングによるエネルギー移動を促すため、1次側または2次側には、図示を省略するインダクタンス素子またはキャパシタンス素子が付加されてもよい。このような主回路は、デュアルアクティブブリッジ(DAB)と呼ばれ、双方向に電力を融通できる。
【0062】
一例として、DABでは、半導体スイッチ群111のスイッチング位相と、半導体スイッチ群113のスイッチング位相との位相差を制御することで、電力の大きさや電力を伝達する方向を制御できる。なお、DC/DCコンバータ11の主回路には、このようなDABに限らず、様々な構成が適用され得る。すなわち、システムの構成および用途に応じて片方向型/双方向型および絶縁型/非絶縁型などを適宜組み合わせることで、適切な主回路が選定されればよい。
【0063】
また、この例では、直列接続された複数の直流コンデンサ114,115からなるコンデンサ群を、DC/DCコンバータ11の2次側端子PNp2,PNn2間に接続すると共に、コンデンサ群の中性点を接地する方式が示されている。このような方式を用いることで、接地電圧GNDと2次側電圧との電圧差を小さくできるため、耐圧部品の選定や試験の難易度を下げ、システムのコストを低減できる。
【0064】
DC/DCコンバータ制御器110は、センサを用いて検出した1次側電圧V1、1次側電流I1、2次側電圧V2H,V2Lおよび2次側電流I2H,I2Lといった検出情報を入力する。そして、DC/DCコンバータ制御器110は、外部通信端子Com_Mから得た動作指令値と、蓄電コントローラ通信端子Com_Bから収集した直流蓄電デバイス4の内部情報と、入力した検出情報とに基づいて、主回路の変換動作を制御する。この例では、DC/DCコンバータ制御器110は、制御信号SW11-SW14を用いて半導体スイッチ群111のスイッチング動作を制御し、制御信号SW21-SW24を用いて半導体スイッチ群113のスイッチング動作を制御する。
【0065】
なお、外部通信端子Com_Mは、
図1および
図2における配電盤コントローラ14に接続される。蓄電コントローラ通信端子Com_Bは、
図3における蓄電コントローラ4Cに接続される。また、DC/DCコンバータ制御器110は、例えば、マイクロコントローラ内のプロセッサを用いたプログラム処理や、または、FPGA等によって実現され得る。
【0066】
DC/DCコンバータ制御器110は、より詳細には、例えば、
図5Bに示されるように、充放電電力制御部116と、電圧調整制御部117と、蓄電側充放電制御部118と、最大電力点追従制御部119とを備える。充放電電力制御部116は、例えばエネルギー管理装置7などから配電盤コントローラ14および外部通信端子Com_Mを介して入力した充放電電力指令値P
*と、センサによる検出情報(V2H,V2L,I2H,I2L)とに基づき、第1の指令値を生成する。充放電電力指令値P
*は、例えば、エネルギーコストの低減などを加味して、適宜変更され得る。
【0067】
電圧調整制御部117は、
図4に示した配電システム制御装置6から配電盤コントローラ14および外部通信端子Com_Mを介して入力した電圧調整指令値ΔV
*と、センサによる検出情報(V2H,V2L)とに基づき、第2の指令値を生成する。蓄電側充放電制御部118は、充放電電力制御部116からの第1の指令値と、電圧調整制御部117からの第2の指令値とに基づき、直流蓄電デバイス4の電圧または電流を制御する。
【0068】
直流蓄電デバイス4の代表例である蓄電池は、電荷量に応じた化学作用により電力を充放電する。このため、蓄電池の電流積算値を基準とした制御が適用されることが望ましい。そこで、
図5Bに示される例では、最終の制御段である蓄電側充放電制御部118は、1次側の電流制御系で構成され、第1の指令値および第2の指令値に基づいて生成された、直流蓄電デバイス4側、すなわち1次側の電流指令値I1
*を入力する。蓄電側充放電制御部118は、1次側電流I1の値と1次側の電流指令値I1
*との誤差がゼロに近づくように、制御信号SW11-SW14,SW21-SW24を生成する。
【0069】
なお、
図5Bには、直流蓄電デバイス4の代わりに、太陽光発電パネルを接続する場合の構成例も併せて示される。太陽光発電パネルを接続する場合、DC/DCコンバータ制御器110は、
図1で述べたような最大電力点追従制御を実行する最大電力点追従制御部119を備えてもよい。最大電力点追従制御部119は、例えば、1次側の電圧制御系で構成され、1次側電圧V1および1次側電流I1を入力して1次側の電圧指令値V1
*を生成する。蓄電側充放電制御部118は、1次側電圧V1の値と1次側の電圧指令値V1
*との誤差がゼロに近づくように制御する。
【0070】
<潮流シミュレーション部の動作内容>
図6は、
図4における潮流シミュレーション部66によって構築される電気回路モデルの一例を示す概略図である。
図6には、
図2に示したメッシュ状配電経路において、直流開閉器5が全て閉状態の場合の回路モデルが示される。潮流シミュレーション部66は、このような回路モデルを用いて、例えば、直流配電盤1の電圧が直流配線LNdの潮流に及ぼす影響を予測演算する。
【0071】
図6では、
図2の場合と同様に、4基の直流配電盤1A,1B,1C,1Dが設けられ、これらを5個の直流配線LNdによって互いに接続することで、三角形状となる2個の直流ループ配線LP1,LP2が網目上に形成されている。4基の直流配電盤1A,1B,1C,1Dにおける直流分岐部10の電圧は、それぞれVa,Vb,Vc,Vdで与えられる。5個の直流配線LNdの抵抗値は、それぞれRa,Rb,Rc,Rd,Reで与えられる。
【0072】
また、4基の直流配電盤1A,1B,1C,1Dにおける直流ループ配線に対する電力収支は、それぞれPa,Pb,Pc,Pdで与えられる。電力収支は、直流分散型電源3による電力流入と直流負荷2での電力消費との差分、または直流蓄電デバイス4の充放電電力と直流負荷2での電力消費との差分に相当する電力である。
【0073】
図7は、
図6に示される電気回路モデルにおいて、パラメータの値を変化させた場合の潮流変化の一例を示す模式図である。
図7では、
図6における電力Pa,Pb,Pc,Pdが棒グラフで示され、電圧Va,Vb,Vc,Vdが折線グラフで示される。
図7におけるケースAでは、各直流配線LNdのインピーダンス、ここでは抵抗値を同一とした条件において、例えば、直流配電盤1Aで電力Paの発電電力が生じ、直流配電盤1Dで電力Pdの消費電力が生じている。
【0074】
一方、
図7におけるケースBでは、ケースAを基準として、直流配電盤1Bにおいて、直流蓄電デバイス4から電力Pbの放電が行われ、直流配電盤1Cにおいて、直流蓄電デバイス4へ電力Pcの充電が行われている。ケースAとケースBとの比較から分かるように、電力Pa,Pdおよび電圧Va,Vdは共通でありながら、電力Pbおよび電力Pcを操作することによって、電圧Vaと電圧Vbとが略同一、かつ電圧Vcと電圧Vdとが略同一の状況を生じさせることができる。
【0075】
このように、システム全体の直流配電盤1における直流電力を操作することによって、任意の直流配線LNdに挿入される直流開閉器5における2個の端子間の電圧を近づけ、当該直流配線LNdの潮流を制限できる。これにより、例えば、当該直流開閉器5を閉状態から開状態へ変更する際に、直流開閉器5の通電電流を小さくでき、理想的にはゼロにできる。このため、直流開閉器5の開動作に伴うアークの発生などに起因するダメージを軽減でき、直流開閉器5の寿命を延ばせる。
【0076】
具体例として、ケースBでは、
図6における直流配電盤1Aと直流配電盤1Bとの間、および直流配電盤1Cと直流配電盤1Dとの間にそれぞれ設けられる図示しない直流開閉器5を閉状態から開状態へ変更できる。この場合でも、メッシュ状配電経路を用いているため、各直流配電盤1へ接続される図示しない直流負荷2への配電経路は維持される。
【0077】
なお、ここでは、閉状態から開状態への変更を例としたが、開状態から閉状態への変更も同様である。すなわち、直流開閉器5における2個の端子間の電圧を近づけた状態で開状態から閉状態へ変更することで、直流開閉器5の閉動作に伴う突入電流などに起因するダメージも軽減できる。また、直流開閉器5の通電電流がゼロの状態は、当該直流開閉器5が開状態であるのと等価である。したがって、別の観点では、直流開閉器5の開閉動作無しでメッシュ状配電経路の配電経路を切り替えることも可能である。この場合、直流開閉器5の開閉動作回数を減らせるため、直流開閉器5の寿命を延ばせる。
【0078】
なお、実際の運用方法の一例として、まず、
図4における潮流シミュレーション部66での予測演算結果に基づき、所定の直流開閉器5の開閉状態へ変更した方がよいと判定される。この場合、開閉操作部67は、当該所定の直流開閉器5へ開閉命令を出力する前に、当該開閉命令の情報を電圧調整部68へ出力する。電圧調整部68は、当該所定の直流開閉器5の開動作または閉動作の事前動作として、潮流シミュレーション部66を用いて、当該所定の直流開閉器5における2個の端子間の電圧差を低減するように電力潮流を調整する。
【0079】
この際に、電圧調整部68は、例えば、ケースAにおける電圧VbをケースBにおける電圧Vbに変化させるように、配電盤コントローラ14を介して双方向DC/DCコンバータへ、電圧の調整量を表す電圧調整指令値ΔV*を出力する。同様に、電圧調整部68は、ケースAにおける電圧VcをケースBにおける電圧Vcに変化させるように、配電盤コントローラ14を介して双方向DC/DCコンバータへ電圧調整指令値ΔV*を出力する。
【0080】
図7におけるケースCでは、ケースAと異なり、各直流配線LNdのインピーダンス、ここでは抵抗値は、不均一となっている。ケースCにおいて、例えば、直流配電盤1Aでは、直流分散型電源3により電力Paの発電電力が生じ、直流配電盤1Dでは、直流負荷2により電力Pdの消費電力が生じている。さらに、直流配電盤1Bでは、直流蓄電デバイス4への電力Pbの充電が行われ、直流配電盤1Cでは、直流蓄電デバイス4からの電力Pcの放電が行われている。一方、ケースDでは、ケースCと異なり、直流配電盤1Bにおいて、電力Pbの放電が行われ、直流配電盤1Cにおいて、電力Pcの充電が行われている。
【0081】
ケースCとケースDとの比較から分かるように、電力Pa,Pdおよび電圧Va,Vdは略共通でありながら、電力Pbおよび電力Pcを変化させることで、主に、電圧Vaと電圧Vbとの電位差、および電圧Vbと電圧Vcとの電位差を低減できる。その結果、システム全体での電力損失を低減できる。この例では、直流配電盤1Bと直流配電盤1Cとを接続する直流配線LNdや、特に、直流配電盤1Aと直流配電盤1Bとを接続する、抵抗値が高い直流配線LNdの配線損失を低減できる。このようにして、配電システム制御装置6は、直流分散型電源3から直流配線LNdを介した直流負荷2への配電経路上の電力損失を低減するように、電力潮流を調整できる。
【0082】
<ノイズ検知部の詳細>
図8A、
図8B、
図8C、
図8Dおよび
図8Eは、
図4におけるノイズ検知部65の検知アルゴリズムの一例を説明する模式図である。
図8Aに示される例では、4個の直流配電盤1を接続する直流配線対LNd-PNによって直流ループ配線LPが形成されている。直流配線対LNd-PNは、正極の直流配線LNd-Pと、負極のLNd-Nとで構成される。
【0083】
このような直流ループ配線LPを貫く方向に磁力線が変化した場合、例えば、
図8Bに示されるように、正極の直流配線LNd-Pおよび負極の直流配線LNd-Nの両方に同相のノイズ電流が生じる。例えば、正極側のノイズ電流IA1Pと、それと同相である負極側のノイズ電流IA1Nとが生じる。ここで、正極側のノイズ電流と負極側のノイズ電流とを加算すれば、
図8Cに示されるように、同相ノイズ電流、例えば、“1A1P+1A1N”を抽出できる。
【0084】
具体的には、例えば、
図4における潮流状態取得部64は、ある直流配電盤1から正極側の電流および負極側の電流を取得し、ノイズ検知部65は、当該正極側の電流と負極側の電流とを加算する。このような加算によって得られる交流的な電流、例えば“1A1P+1A1N”は、同相ノイズ電流となる。すなわち、通常の電流では、同相ノイズ電流と異なり、正極側の電流と負極側の電流との加算結果は、交流的にはゼロである。
【0085】
さらに、ノイズ検知部65は、直流ループ配線LPを形成する2以上の直流配線対LNd-PNを対象に同相ノイズ電流を算出し、算出した2以上の同相ノイズ電流に対して相関を取る。その結果、ノイズ検知部65は、相関がある場合には、当該同相ノイズ電流を、電磁誘導によって生じた還流電流と判定できる。
図8Aおよび
図8Cに示される例では、ある直流配電盤1における同相ノイズ電流“1A1P+1A1N”と、別の直流配電盤1における同相ノイズ電流“1B1P+1B1N”とに相関があるため、ノイズ検知部65は、当該同相ノイズ電流を還流電流と判定する。
【0086】
また、予めノイズとして想定できる周波数などが特定できる場合、ノイズ検知部65は、
図8Cに示したような電流加算を行う代わりに、
図8Dに示されるように、正極側または負極側の一方の電流、例えば“1A1P”に対して、当該周波数成分を抽出するフィルタ処理を施してもよい。これにより、ノイズ検知部65は、
図8Eに示されるようなノイズ電流“1A1P_fil”を抽出できる。そして、ノイズ検知部65は、
図8Cの場合と同様にして、直流ループ配線LPを形成する2以上の直流配線LNdを対象にノイズ電流を抽出し、2以上のノイズ電流、例えば、“1A1P_fil”および1B1P_fil”に対して相関を取ればよい。
【0087】
このように、2以上の直流配線LNdまたは直流配線対LNd-PNからノイズ電流を検知し、検知した2以上のノイズ電流の相関を取ることで、ノイズ電流が還流電流であるか否かをより確実に判定できる。そして、還流電流である場合には、直流ループ配線LPの一部の直流開閉器5を開状態に変更することや、または、当該直流ループ配線LP上の直流配電盤1からの取得データを対象に、当該取得データを補正する、といった対策を行える。
【0088】
なお、ノイズ電流を抽出する際には、影響を無視できるノイズを除外するため、予め振幅の閾値を設け、ノイズ検知部65は、閾値より小さい振幅の電流を無視するように構成されてもよい。または、電流の時間変化量に対して閾値を設け、ノイズ検知部65は、閾値より小さい時間変化量の電流を無視するように構成されてもよい。
【0089】
<第1の実施の形態の主要な効果>
以上、第1の実施の形態の方式では、2以上の直流配電盤を介して一巡する直流ループ配線が形成され、望ましくは、複数の直流ループ配線を格子状または網目状に配置することでメッシュ状配電経路が構築される。このような構成を用いることで、設備の構成または状況に応じた配電経路を柔軟に構築できる。また、2以上の直流配電盤によって、各直流配電盤の間を接続する直流配線上の電力潮流を調整できる。これにより、例えば、直流配線に挿入される直流開閉器の開閉動作に伴うダメージを軽減できる。
【0090】
(第2の実施の形態)
<直流配電システムの適用例>
図9は、第2の実施の形態による直流配電システムにおいて、設備に適用した場合の配置構成例を示す斜視図である。
図9には、例えば、生産工場などの設備のフロアに、第1の実施の形態で述べた直流配電システムを敷設した場合の各部の配置構成例が示される。
図9では、四角形、例えば長方形などの格子の四角に、それぞれ、4基の直流配電盤1E,1F,1G,1Hが配置されている。設備全体では、このような格子が、X軸方向およびY軸方向に順次並べて配置される。
【0091】
4基の直流配電盤1E,1F,1G,1Hは、格子の4辺に相当する4個の直流配線LNdを介して接続される。直流配線LNdは、例えば、天井吊りの配線ラックとして敷設される。なお、直流配線LNdは、ケーブルのほかバスダクトなどの構造であってもよい。一方、例えば、製造装置などの直流負荷2E,2F,2G,2Hは、それぞれ、直流配電盤1E,1F,1G,1Hに対して、床面のピット等に敷設された負荷動力線LNlを介して接続される。このような配置構成例を用いることで、例えば、
図3に示した直流配電盤1内部の上下配置に適した直流配電システムを構築できる。
【0092】
また、4個の直流配線LNdには、それぞれ、4個の直流開閉器5EF,5FH,5GH,5EGが挿入される。この際に、各直流開閉器5は、直流配電盤1による操作が容易となるように、直流配電盤1の近くに配置されるとよい。また、各直流配電盤1、詳細には、配電盤コントローラ14は、前述した直流開閉器操作回路、例えば、ドライバ回路の数を増設できるように構成されるとよい。さらに、各直流配電盤1は、直流配線LNdの電流を計測する、
図3に示した第1の電流センサ12Gの数も増設できるように構成されるとよい。
【0093】
一般に、生産工場などでは、搬送機械の動線として直線を多用するため、直流配電盤1は、
図9に示されるように、四角形を標準とした格子状に配置されることが望ましい。したがって、格子の交点となる直流配電盤1において、直流開閉器操作回路の最大実装数は、4個となり得る。同様に、直流配電盤1において、電流センサ12Gの最大実装数も、4個となり得る。
【0094】
図10Aは、
図9に示される直流配電システムを上部から見た場合の模式的な配置構成例を示す平面図である。
図10Aでは、格子は、前述したように、XY平面において四角形で構成される。この場合、全ての直流配電盤1が直流開閉器5を駆動する必要はなく、一定の基準で定めた直流配電盤1が直流開閉器5を駆動すればよい。同様に、全ての直流配電盤1が直流配線LNdに流れる電流を計測する必要はなく、一定の基準で定めた直流配電盤1が直流配線LNdに流れる電流を計測すればよい。
【0095】
ここでは、一定の基準として、少なくとも一部の領域において、黒塗りで示される第1グループの直流配電盤1aと、白塗りで示される第2グループの直流配電盤1bとは、XY平面上で交互に配置される。第1グループの直流配電盤1aは、直流開閉器5を駆動し、かつ直流配線LNdに流れる電流を計測する。一方、第2グループの直流配電盤1bは、直流開閉器5を駆動せず、かつ直流配線LNdに流れる電流を計測しない。
【0096】
このような一定の基準を設けることで、例えば、直流開閉器5の開閉管理を容易化でき、また、直流配線LNdに流れる電流を重複して計測せずに済む。さらに、第2グループの直流配電盤1bは、特に、直流開閉器操作回路を搭載する必要はなく、第1の電流センサ12Gを搭載する必要もない。これにより、部品コストを低減できる。なお、直流配電盤1間の直流配線LNdに関しては、エリア102で示されるように、直流分岐部10に対して2系統の直流配線を並列に接続することで、直流配電盤1間の送電容量を拡張するように構成されてもよい。
【0097】
図10Bは、
図10Aに示される配置を変形した配置構成例を示す平面図である。
図10Bでは、格子は、少なくとも1組の平行辺を含む六角形で構成される。この場合、直流配電盤1は、最大3個の直流開閉器5を駆動し、最大3個の直流配線LNdに流れる電流を計測する。
図10Bでも、
図10Aの場合と同様に、少なくとも一部の領域において、第1グループの直流配電盤1aと、第2グループの直流配電盤1bとは、XY平面上で交互に配置される。
【0098】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1:直流配電盤、2:直流負荷、3:直流分散型電源、4:直流蓄電デバイス、5:直流開閉器、6:配電システム制御装置、10:直流分岐部、11:DC/DCコンバータ、12:電流センサ、13:直流遮断器、14:配電盤コントローラ、17:筐体、18:配線孔、61:配線情報記憶部、63:開閉状態取得部、64:潮流状態取得部、65:ノイズ検知部、66:潮流シミュレーション部、68:電圧調整部、LNd:直流配線、LNl:負荷動力線、LNp:電源配線、LP:直流ループ配線