(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025092210
(43)【公開日】2025-06-19
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/232 20240101AFI20250612BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20250612BHJP
B60K 35/40 20240101ALI20250612BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20250612BHJP
【FI】
B60K35/232
B60K35/23
B60K35/40
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207948
(22)【出願日】2023-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】富平 武信
(72)【発明者】
【氏名】山本 壮祐
(72)【発明者】
【氏名】松尾 美治
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA14
2H199DA15
2H199DA30
2H199DA36
2H199DA46
3D344AA19
3D344AA21
3D344AA26
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】奥行き感のある虚像を表示できる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】車両用表示装置は、車両におけるドライバの前方の反射面に対して画像の表示光を投影することでドライバに対して虚像Viを表示し、かつ虚像の下部に対して虚像Viの上部がドライバから遠くに見えるように構成された表示装置と、表示装置を制御する制御部と、を備え、表示装置が表示する虚像Viは、所定画像を含み、所定画像は、消失点Vpに基づく奥行き方向に並び、かつ部分的に重なる複数の画像51,52,53を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるドライバの前方の反射面に対して画像の表示光を投影することで前記ドライバに対して虚像を表示し、かつ前記虚像の下部に対して前記虚像の上部が前記ドライバから遠くに見えるように構成された表示装置と、
前記表示装置を制御する制御部と、
を備え、
前記表示装置が表示する虚像は、所定画像を含み、
前記所定画像は、消失点に基づく奥行き方向に並び、かつ部分的に重なる複数の画像を有する
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記所定画像は、前記奥行き方向に並び、かつ部分的に重なる複数の案内画像を有し、
前記案内画像は、前記ドライバに対する経路案内の画像である
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記案内画像は、前記車両の前方の分岐箇所における進行方向を示す矢印を有し、
一つの前記案内画像は、他の一つの前記案内画像が有する前記矢印の先端部を覆わないように、他の一つの前記案内画像に重なる
請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記所定画像は、前記奥行き方向に並び、かつ部分的に重なる複数の図形画像を有し、
前記制御部は、前記車両と先行車両との車間距離に応じて複数の前記図形画像の重なり度合いを変化させる
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
複数の前記図形画像は、前記車間距離を自動的に制御する車両制御が実行されているときに表示され、
複数の前記図形画像は、前記車両を示す画像と、先行車両を示す画像との間に表示される
請求項4に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、虚像を表示する装置がある。特許文献1には、第一の表示光を発する第一の表示器と、第二の表示光を発する第二の表示器と、を備え、前記第一の表示光及び前記第二の表示光をウィンドシールドに投影することによって虚像を表示する車両用表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用表示装置において、奥行き感のある虚像を表示できることが望ましい。奥行き感のある虚像を表示することができれば、ドライバに対する立体的な情報提供が可能となる。
【0005】
本発明の目的は、奥行き感のある虚像を表示できる車両用表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用表示装置は、車両におけるドライバの前方の反射面に対して画像の表示光を投影することで前記ドライバに対して虚像を表示し、かつ前記虚像の下部に対して前記虚像の上部が前記ドライバから遠くに見えるように構成された表示装置と、前記表示装置を制御する制御部と、を備え、前記表示装置が表示する虚像は、所定画像を含み、前記所定画像は、消失点に基づく奥行き方向に並び、かつ部分的に重なる複数の画像を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用表示装置は、虚像の下部に対して虚像の上部がドライバから遠くに見えるように構成された表示装置を有する。表示装置が表示する虚像は、所定画像を含み、所定画像は、消失点に基づく奥行き方向に並び、かつ部分的に重なる複数の画像を有する。本発明に係る車両用表示装置によれば、下部に対して上部がドライバから遠くに見える虚像において、消失点に基づく奥行き方向に並び、かつ部分的に重なる複数の画像を有することで、奥行き感のある虚像を表示することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の車両用表示装置が搭載された車両の図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車両用表示装置の構成図である。
【
図4】
図4は、車両の前方の景色および虚像を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態の経路案内の虚像を示す図である。
【
図6】
図6は、虚像に出現した第一画像を示す図である。
【
図7】
図7は、虚像に出現した第二画像を示す図である。
【
図8】
図8は、虚像に出現した第三画像を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態の経路案内の虚像を示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態の経路案内の虚像を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態の経路案内の虚像を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態の経路案内の虚像を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態の経路案内の虚像を示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態の経路案内の虚像を示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態の経路案内の虚像を示す図である。
【
図16】
図16は、車両の前方の景色および虚像を示す図である。
【
図18】
図18は、実施形態におけるACC制御の開始前の虚像を示す図である。
【
図19】
図19は、実施形態のACC制御中の虚像を示す図である。
【
図22】
図22は、実施形態のACC制御中の虚像を示す図である。
【
図23】
図23は、実施形態のACC制御中の虚像を示す図である。
【
図24】
図24は、車両の前方の景色および虚像を示す図である。
【
図25】
図25は、実施形態のACC制御中の虚像を示す図である。
【
図26】
図26は、実施形態のACC制御中の虚像を示す図である。
【
図27】
図27は、実施形態のACC制御中の虚像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る車両用表示装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1から
図29を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、車両用表示装置に関する。
図1は、実施形態の車両用表示装置が搭載された車両の図、
図2は、実施形態に係る車両用表示装置の構成図、
図3は、実施形態に係る虚像の図、
図4は、車両の前方の景色および虚像を示す図、
図5は、実施形態の経路案内の虚像を示す図、
図6は、虚像に出現した第一画像を示す図、
図7は、虚像に出現した第二画像を示す図、
図8は、虚像に出現した第三画像を示す図、
図9から
図15は、実施形態の経路案内の虚像を示す図である。
【0011】
図16は、車両の前方の景色および虚像を示す図、
図17は、実施形態の左折時の虚像を示す図、
図18は、実施形態におけるACC制御の開始前の虚像を示す図、
図19は、実施形態のACC制御中の虚像を示す図、
図20は、虚像に出現した第一画像を示す図、
図21は、虚像に出現した第二画像を示す図、
図22および
図23は、実施形態のACC制御中の虚像を示す図、
図24は、車両の前方の景色および虚像を示す図、
図25から
図27は、実施形態のACC制御中の虚像を示す図、
図28および
図29は、表示装置の一例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、車両用表示装置1は、ドライバ200に対して虚像Viを表示する装置である。
図2に示すように、車両用表示装置1は、車両100におけるドライバ200の前方の反射面110aに対して画像の表示光Ltを投影することでドライバ200に対して虚像Viを表示する。本実施形態の反射面110aは、ウインドシールド110における車内側の面である。反射面110aには、反射用のコーティングがなされていてもよい。
【0013】
本実施形態の車両用表示装置1は、後述するように、傾斜した虚像Viを表示する。
図1に示すように、車両用表示装置1は、虚像Viの下部Vdに対して虚像Viの上部Vuがドライバ200から遠くに見えるように構成される。
【0014】
図2に示すように、車両用表示装置1は、筐体2と、表示装置3と、制御部10と、を有する。筐体2は、車両100のウインドシールド110に対して下方に配置される。筐体2は、例えば、ダッシュボード120の下方に収容される。表示装置3および制御部10は、筐体2に収容される。
【0015】
表示装置3は、画像表示部4と、第一ミラー5と、第二ミラー6と、を有する。画像表示部4は、例えば、TFT-LCD(Thin Film Transistor-Liquid Crystal Display)等の液晶表示装置を有する。画像表示部4は、画像を表示する表示面4aを有する。画像の表示光Ltは、表示面4aから出射される。画像表示部4は、例えば、表示面4aに対して背面側に配置されたバックライトユニットを有している。この場合、バックライトユニットの光によって表示光Ltが生成される。
【0016】
第一ミラー5は、画像表示部4から出力される表示光Ltを第二ミラー6に向けて反射する。第一ミラー5は、光を反射する反射面5rを有する。例示された反射面5rの形状は、凸状の非球面である。反射面5rの形状は、第二ミラー6やウインドシールド110において生じる画像の歪みを補正する形状である。
【0017】
第二ミラー6は、第一ミラー5の側から入射する表示光Ltをウインドシールド110に向けて反射する。筐体2は、透明なカバー2aを有する。カバー2aは、ダッシュボード120の開口部と対向している。表示光Ltは、第二ミラー6の側からウインドシールド110の側に向けてカバー2aを透過する。ウインドシールド110の反射面110aは、表示光Ltを車両100のアイポイントEPに向けて反射する。ドライバ200は、表示光Ltによって虚像Viを視認する。ドライバ200から見た虚像Viの位置は、ウインドシールド110よりも車両前後方向Xの前方である。
【0018】
本実施形態の第二ミラー6は、ドライバ200に対して傾斜した虚像Viを表示するように構成されている。第二ミラー6は、凹状の反射面6rを有する。反射面6rの形状は、非球面の湾曲形状であって、画像を拡大する形状である。反射面6rは、画像上下方向の第一端部6uおよび第二端部6dを有する。
【0019】
第一端部6uは、虚像Viの上部Vuに対応する端部である。つまり、第一端部6uは、表示光Ltのうち、虚像Viの上部Vuとして視認される光を反射する。第二端部6dは、虚像Viの下部Vdに対応する端部である。つまり、第二端部6dは、表示光Ltのうち、虚像Viの下部Vdとして視認される光を反射する。
【0020】
反射面6rの形状は、第一端部6uの拡大倍率が第二端部6dの拡大倍率よりも高倍率となるように設定される。また、反射面6rの形状は、第二端部6dから第一端部6uへ向かうに従って拡大倍率が大きくなるように設定される。反射面6rにおける拡大倍率が高倍率である場合、ドライバ200から見た虚像Viの位置が遠くなる。従って、本実施形態の表示装置3は、
図1に示すような傾斜した虚像Viをドライバ200に対して表示することができる。
【0021】
虚像Viは、ドライバ200から見た場合の画像上下方向Gvを有する。虚像Viは、画像上下方向Gvの上部Vuおよび下部Vdを有する。本実施形態の表示装置3によって表示される虚像Viは、下部Vdに対して上部Vuがドライバ200から遠くに見える。つまり、ドライバ200から見た場合、虚像Viの下部Vdに対して上部Vuが車両前後方向Xの前方に位置している。虚像Viの上部Vuが結像する位置からアイポイントEPまでの距離は、虚像Viの下部Vdが結像する位置からアイポイントEPまでの距離よりも長い。車幅方向から見た虚像Viの形状は、略線形である。つまり、表示装置3は、虚像Viの下部Vdから上部Vuへ向かうに従ってドライバ200の目から虚像Viまでの距離が徐々に遠くなるように構成される。
【0022】
上記のように傾斜した虚像Viは、ドライバ200に遠近感を感じさせることができる。虚像Viの上部Vuを見るときのドライバ200の輻輳角と、下部Vdを見るときのドライバ200の輻輳角とが異なることで、虚像Viの奥行き感がドライバ200によって体感される。
【0023】
車両前後方向Xに対する虚像Viの傾斜角度θは、例えば、5度でもよく、15度でもよく、5度から15度の間の任意の角度であってもよい。傾斜角度θは、45度以下の角度であってもよい。ドライバ200の目から虚像Viの上部Vuが結像する位置までの距離Luは、例えば、6mであってもよい。ドライバ200の目から虚像Viの下部Vdが結像する位置までの距離Ldは、例えば、4mであってもよい。距離Luは、距離Ldに対して1.5倍の値であってもよい。
【0024】
図2に示す制御部10は、表示装置3を制御する。より詳しくは、制御部10は、画像表示部4に対して表示面4aに表示すべき画像を指令する。制御部10は、表示すべき画像を生成し、この画像を画像表示部4に出力してもよい。制御部10は、例えば、表示装置3のメモリ等に記憶されているプログラムに基づいて画像表示部4を制御する。
【0025】
制御部10は、車両100を制御する車両ECU等から車両100に関する各種情報を取得する。制御部10が取得する情報は、例えば、車両100の走行速度、車両100のシフトポジション、ナビゲーションシステムによる経路案内の情報、車両100の位置情報、車両100のバッテリに関する情報、ACC(Adaptive Cruise Control)等の走行制御に関する情報を含む。
【0026】
以下に説明するように、本実施形態の車両用表示装置1によって表示される虚像Viは、奥行きが表現された所定画像を含む。これにより、本実施形態の車両用表示装置1は、ドライバ200に対して遠近感や奥行き感のある虚像Viを表示することができる。
【0027】
図3には、表示される虚像Viの一例が示されている。画像表示部4の表示面4aに表示される画像の形状は、例えば、
図3に示す虚像Viの形状と同様である。なお、表示面4aに表示される画像は、虚像Viとして表示する画像に対してワーピング処理がなされた画像であってもよい。ワーピング処理は、例えば、ウインドシールド110の形状や第二ミラー6の形状等に応じた補正処理である。
【0028】
図3の虚像Viは、車両の鳥瞰画像20、速度画像21、およびライン画像30を含む。鳥瞰画像20は、車両を模した画像であって、かつ車両を後方から鳥瞰した画像である。鳥瞰画像20の形状は、車両100の形状に基づいていてもよい。速度画像21は、車両100の走行速度を示す文字の画像である。ライン画像30は、車両100が走行するレーンの境界を表現する画像である。
図3のライン画像30は、予め定められた消失点Vpに向けて延在するラインの画像である。例示された虚像Viは、二本のライン画像30を含む。二本のライン画像30は、鳥瞰画像20に対して左右に配置される。
【0029】
本実施形態の虚像Viでは、消失点Vpが画像の外側に設定されている。例示された消失点Vpは、ドライバ200から見て虚像Viの上方に位置する。つまり、本実施形態のライン画像30は、画像上下方向Gvの上側に位置する消失点Vpに向けて延在している。画像横方向Ghにおける消失点Vpの位置は、例えば、中央である。なお、消失点Vpの位置は、例示された位置には限定されない。例えば、消失点Vpが虚像Viの内部に設定されてもよい。
【0030】
消失点Vpに向けて延在するライン画像30によって、虚像Viの奥行き感が演出される。ライン画像30の幅は、消失点Vpへ向かうに従って狭くなる。これにより、奥行き感が表現される。また、ライン画像30の輝度は、消失点Vpへ向かうに従って低輝度となる。これにより、奥行き感が表現される。
【0031】
速度画像21は鳥瞰画像20およびライン画像30の何れとも重ならない位置に表示される。言い換えると、速度画像21は、虚像Viにおける他の表示要素に対して独立して表示される。この場合、ドライバ200には、速度画像21が車両上下方向Zに沿った鉛直な面に表示されているかのように見える。従って、本実施形態の車両用表示装置1は、虚像Viを傾斜させつつ、速度画像21の視認性を確保することができる。
【0032】
図4および
図5には、ドライバ200に対する経路案内がなされるときの虚像Viが示されている。
図4に示すように、本実施形態の虚像Viは、車両100の前方の景色Scに重ねて表示される。例示された虚像Viは、車両100の前方の路面に重なるように表示される。この場合、表示装置3は、ウインドシールド110の下部に画像を投影する。
【0033】
図5に示すように、経路案内の虚像Viは、鳥瞰画像20、速度画像21、ライン画像30、および少なくとも一つの案内画像50を含む。
図5の虚像Viは、部分的に重ねて表示される三つの案内画像50を含む。案内画像50は、所定画像の一例であって、消失点Vpに基づく奥行き方向に並び、かつ部分的に重なる複数の画像51,52,53を有する。
【0034】
図5の案内画像50は、第一画像51、第二画像52、および第三画像53を有する。各案内画像50は、前方の分岐箇所における進行方向を案内する画像である。
図5の案内画像50は、ドライバ200に対して現在位置から三つ目の分岐箇所において左折するように経路案内する画像である。
【0035】
三つの案内画像50は、消失点Vpへ向かうラインに沿って並んで配置される。例えば、複数の案内画像50における左上の角を結ぶ仮想線L1は、消失点Vpに向けて延在する。このように、三つの画像51,52,53は、消失点Vpに基づく奥行き方向に並んでいる。従って、複数の案内画像50は、虚像Viに奥行き感を与えることができる。
【0036】
例示された案内画像50は、左側のライン画像30に沿って並んでいる。第一画像51は、三つの案内画像50のうち、ライン画像30に沿った最も手前側の位置に配置される。第三画像53は、三つの案内画像50のうち、ライン画像30に沿った最も奥側の位置に配置される。三つの案内画像50は、例えば、ライン画像30に沿って等間隔で配置される。ライン画像30において、案内画像50と重なる部分は、案内画像50によって隠される。
【0037】
第一画像51は、一つ目の分岐箇所での車両100の進行方向を案内する画像である。
図5の第一画像51は、直進を示す矢印マークを有している。第二画像52は、二つ目の分岐箇所での車両100の進行方向を案内する画像である。
図5の第二画像52は、直進を示す矢印マークを有している。第三画像53は、三つ目の分岐箇所での車両100の進行方向を案内する画像である。
図5の第三画像53は、左折を示す矢印マークを有している。
【0038】
一つの案内画像50は、他の一つの案内画像50が示す進行方向を隠さないように、他の一つの案内画像50の一部に重ねられる。例えば、第二画像52は、第三画像53の左折矢印が視認できる態様で第三画像53に重ねられる。つまり、第二画像52は、第三画像53が有する矢印の先端部を覆わないように第三画像53に重なる。第一画像51は、第二画像52の直進矢印が視認できる態様で第二画像52に重ねられる。つまり、第一画像51は、第二画像52が有する矢印の先端部を覆わないように第二画像52に重なる。従って、複数の案内画像50は、経路案内の機能を果たしつつ奥行き感を感じさせることができる。
【0039】
また、案内画像50には、他の案内画像50による影が表示される。例えば、第二画像52は、第一画像51による影52sを有する。影52sは、第一画像51に対して車両前後方向Xの後方から照射される光によって生成される影を模したものである。影52sは、第一画像51の縁を回り込むように略L字形状を有している。同様に、第三画像53は、第二画像52による影53sを有する。
【0040】
複数の案内画像50のうち、最も手前に表示される案内画像50は、他の案内画像50よりも大きい。複数の案内画像50のうち、最も奥側に表示される案内画像50は、他の案内画像50よりも小さい。また、三つ以上の案内画像50が表示される場合、手前側から奥側へと消失点Vpへ向かうに従って案内画像50が小さくなる。
【0041】
複数の案内画像50のうち、最も手前に表示される案内画像50は、他の案内画像50よりも高輝度で表示される。複数の案内画像50のうち、最も奥側に表示される案内画像50は、他の案内画像50よりも低輝度で表示される。また、三つ以上の案内画像50が表示される場合、奥側から手前側へと消失点Vpから遠ざかるに従って案内画像50が高輝度となる。
【0042】
複数の案内画像50が部分的に重ねて表示されることや、案内画像50が影52s,53sを有することで、ドライバ200には、案内画像50が車両上下方向Zに沿った鉛直な面に表示されているかのように見える。言い換えると、ドライバ200には、案内画像50が路面に立てられた標識の板のように見える。
【0043】
制御部10は、案内画像50の表示を開始する場合、複数の案内画像50を順番に出現させてもよい。この場合、制御部10は、第一画像51を最初に虚像Viに出現させ、第三画像53を最後に虚像Viに出現させてもよい。本実施形態の制御部10は、複数の案内画像50が順番に出現しながら重なり合う出現アニメーションを実行する。
【0044】
図6には、虚像Viに出現した第一画像51が示されている。第一画像51は、例えば、ライン画像30に沿った位置にフェードインによって出現する。出現した第一画像51は、破線の矢印AR1で示すように、ライン画像30に沿って手前側に移動する。移動中の第一画像51は、半透明である。すなわち、第一画像51の背後のライン画像30が透けて見えるように第一画像51が表示される。第一画像51の輝度は、消失点Vpから遠ざかるに従って高輝度となる。また、第一画像51の透過率は、消失点Vpから遠ざかるに従って低くなる。
【0045】
第一画像51が移動している間に、第二画像52がフェードインする。第二画像52が出現する位置は、第一画像51に対して消失点Vpの側の位置であって、かつ第一画像51と重ならない位置である。
【0046】
図7には、移動する第二画像52が示されている。第二画像52は、ライン画像30に沿って手前側に移動する。移動中の第二画像52は、半透明である。すなわち、第二画像52の背後のライン画像30が透けて見えるように第二画像52が表示される。第二画像52の輝度は、消失点Vpから遠ざかるに従って高輝度となる。また、第二画像52の透過率は、消失点Vpから遠ざかるに従って低くなる。第二画像52は、
図5に示す位置、すなわち第二画像52の一部に第一画像51が重なる位置まで移動する。第二画像52は、
図5に示す位置へ移動するまでの間に不透明となる。
【0047】
図8には、虚像Viに出現する第三画像53が示されている。第三画像53は、例えば、第二画像52の移動中にフェードインする。第三画像53が出現する位置は、第二画像52に対して消失点Vpの側の位置であって、かつ第二画像52と重ならない位置である。
【0048】
第三画像53は、ライン画像30に沿って手前側に移動する。移動中の第三画像53は、半透明である。すなわち、第三画像53の背後のライン画像30が透けて見えるように第三画像53が表示される。第三画像53の輝度は、消失点Vpから遠ざかるに従って高輝度となる。また、第三画像53の透過率は、消失点Vpから遠ざかるに従って低くなる。第三画像53は、
図5に示す位置、すなわち第三画像53の一部に第二画像52が重なる位置まで移動する。第三画像53は、
図5に示す位置へ移動するまでの間に不透明となる。
【0049】
上記のように複数の案内画像50が連続的に出現し、かつライン画像30に沿って移動しながら互いに重なり合うことで、奥行き感が演出される。後から出現する案内画像50が既出の案内画像50の奥側に出現し、かつ既出の案内画像50と重なる位置まで奥行き方向に沿って移動してくることで、奥行き方向の空間の広がりが演出される。
【0050】
次に、複数の案内画像50が出現した後の虚像Viについて説明する。制御部10は、車両100の現在位置に応じて虚像Viを変化させる。
図9には、車両100が一つ目の分岐箇所に接近したときの虚像Viが示されている。一つ目の分岐箇所は、交差点である。この場合、虚像Viは、交差する道路を示すライン画像32を含む。ライン画像30,32が交差する箇所Cr1は、一つ目の分岐箇所に対応する。制御部10は、車両100の前進に応じてライン画像32を画像上下方向Gvの下側に向けて移動させる。
【0051】
図10には、車両100が一つ目の分岐箇所を通過しているときの虚像Viが示されている。交差する道路のライン画像32は、鳥瞰画像20の側方に表示される。第一画像51は、車両100が一つ目の分岐箇所を通り過ぎるまで表示される。
【0052】
図11には、車両100が一つ目の分岐箇所を通り過ぎた後の虚像Viが示されている。制御部10は、一つ目の分岐箇所を通過すると、第一画像51の表示を終了する。このときに、第一画像51は、例えば、ライン画像30に沿って移動しながら虚像Viの下端へスライドアウトする。このときに、第一画像51は、フェードアウトしてもよい。
【0053】
第一画像51の表示が終了すると、
図11に示すように、案内画像50として第二画像52および第三画像53が表示される。第二画像52は、第三画像53に部分的に重ねて表示される。
図11の第二画像52は、例えば、
図5の第一画像51と同じ位置かつ同じ大きさで表示される。
図11の第三画像53は、例えば、
図5の第二画像52と同じ位置かつ同じ大きさで表示される。第二画像52は、第三画像53よりも高輝度で表示される。
【0054】
制御部10は、車両100の現在位置に応じて虚像Viを変化させる。例えば、車両100が二つ目の分岐箇所に接近した場合、
図9のライン画像32と同様のライン画像が表示される。
【0055】
制御部10は、車両100が二つ目の分岐箇所を通り過ぎると、第二画像52の表示を終了する。このときに、第二画像52は、例えば、ライン画像30に沿って移動しながら虚像Viの下端へスライドアウトする。このときに、第二画像52は、フェードアウトしてもよい。
【0056】
第二画像52の表示が終了すると、
図12に示すように、案内画像50として第三画像53のみが表示される。第三画像53は、ライン画像30に重ねて表示される。ライン画像30には、第三画像53による影30sが表示される。
【0057】
図13および
図14には、車両100が三つ目の分岐箇所に接近したときの虚像Viが示されている。三つ目の分岐箇所は、交差点であって、車両100が左折すべき箇所である。制御部10は、左折や右折をする分岐箇所に接近した場合、高い高度から鳥瞰したライン画像30,32を表示させる。このときに、制御部10は、車両100が分岐箇所へ近づくに従って鳥瞰図における目の位置を上昇させる。
【0058】
図14には、
図13よりも更に分岐箇所に近づいたときの虚像Viが示されている。
図14の鳥瞰図における目の位置は、
図13の鳥瞰図における目の位置よりも高い位置である。ドライバ200は、高い位置から見下ろしたライン画像30,32によって前方の分岐箇所の道路形状を容易に確認することができる。
【0059】
図14では、第三画像53に代えて矢印画像54が表示される。矢印画像54は、分岐箇所における進行方向に沿った形状を有する。矢印画像54は、現在走行している道路のライン画像30に沿った部分54aと、左折後の道路のライン画像32に沿った部分54bと、を有する。ドライバ200は、ライン画像30,32および矢印画像54によって、分岐箇所の形状を事前に把握することができる。矢印画像54は、消失点Vpに基づく奥行きが表現された画像である。例えば、部分54aの幅は、消失点Vpへ向かうに従って狭くなる。
【0060】
図15には、分岐箇所の直前に到達したときの虚像Viが示されている。
図15の鳥瞰図における目の位置は、例えば、
図12の鳥瞰図における目の位置と同じである。つまり、制御部10は、分岐箇所に到達する前に、鳥瞰図の目の位置を上昇した位置から元の位置まで下降させる。車両100が分岐箇所の直前に到達すると、矢印画像54によって進行方向が案内される。
【0061】
矢印画像54は、鳥瞰画像20から消失点Vpに向けて画像上側に延び、先端部は進行すべき方向に向けて曲がっている。車両100が前進すると、ライン画像32が鳥瞰画像20に近づく。言い換えると、車両100が分岐箇所へ近づくに従ってライン画像32が画像下側に向けて移動する。ライン画像32の移動に応じて、矢印画像54が短くなる。
【0062】
図16に示すように、このときのライン画像30,32の形状は、ドライバ200が見ている道路300の実際の形状と同様である。従って、ドライバ200は、道路300において曲がるべき分岐箇所を容易に識別することができる。また、ドライバ200から見て、虚像Viにおける上部Vuが下部Vdに対して遠くに見える。このように傾斜した虚像Viは、実際の道路300の路面に沿って表示されているように感じられやすい。よって、本実施形態の車両用表示装置1は、虚像Viにおける自然な奥行き感を演出することができる。
【0063】
図17には、車両100が分岐箇所を左折しているときの虚像Viが示されている。制御部10は、車両100の向きの変化に応じてライン画像30,32を回転させる。制御部10は、例えば、車両100のヨーレートセンサの検出結果に基づいて、ライン画像30,32の位置および角度を決定する。
【0064】
制御部10は、左折の進行に応じて矢印画像54を変化させる。より詳しくは、左折が進行するに従って矢印画像54が短くなる。制御部10は、矢印画像54におけるライン画像32に沿った部分54bを短くしていく。制御部10は、左折が完了すると、矢印画像54の表示を終了する。
【0065】
次に、車両100においてACC(Adaptive Cruise Control)制御がなされる場合の虚像Viについて説明する。
図18には、ACC制御が開始される前の虚像Viが示されている。車両100は、高速道路を走行している。
図18の虚像Viは、鳥瞰画像20、速度画像21、およびライン画像30を有する。
【0066】
図19には、ACC制御が開始されたときの虚像Viが示されている。
図19の虚像Viは、鳥瞰画像20、速度画像21、ライン画像33、設定値画像22、および複数の図形画像60を有する。
【0067】
設定値画像22は、ACC制御における走行速度の設定値である。以下の説明では、ACC制御における走行速度の設定値を単に設定速度と称する。設定速度は、例えば、ドライバ200によって設定される。
図19の設定速度は、120[km/h]である。設定値画像22は、速度画像21とは異なる色で表示される。速度画像21の色は、例えば、白色である。設定値画像22の色は、例えば、緑色である。設定値画像22は、速度画像21に対して画像上下方向Gvの上側に配置される。設定値画像22は、速度画像21よりも小さな文字で表示される。
【0068】
ACC制御が実行されているときのライン画像33の色は、ACC制御が実行されていないときのライン画像30の色と異なる。ACC制御の開始前のライン画像30の色は、例えば、白色である。ACC制御の実行中のライン画像33の色は、例えば、水色または青色である。それまでと異なる色のライン画像33が表示されることで、ACC制御へ移行したことがドライバ200に認識される。
【0069】
図形画像60は、ACC制御における車間距離の変化等を立体的に表現する画像である。本実施形態の図形画像60の形状は、矩形である。
図19の図形画像60は、第一画像61、第二画像62、および第三画像63を有する。三つの図形画像60は、部分的に重ねて表示される。三つの図形画像60の相対位置は、車間距離の目標値等に応じて変化する。
【0070】
三つの図形画像60は、消失点Vpへ向かうラインに沿って並んで配置される。図形画像60は、鳥瞰画像20に対して消失点Vpに近い奥側に配置される。第一画像61は、三つの図形画像60のうち、消失点Vpに基づく奥行き方向において最も手前側の位置に配置される。第三画像63は、三つの図形画像60のうち、最も奥側の位置に配置される。三つの図形画像60は、例えば、消失点Vpに基づく奥行き方向に沿って等間隔で配置される。
【0071】
一つの図形画像60は、他の一つの図形画像60の一部に重ねられる。例えば、第二画像62は、第三画像63の下部に重ねられる。第一画像61は、第二画像62の下部に重ねられる。互いに重ねられる複数の図形画像60は、ドライバ200に奥行き感を感じさせることができる。図形画像60は、消失点Vpに基づく奥行き方向に並び、かつ部分的に重なる複数の画像を有する所定画像を構成する。
【0072】
複数の図形画像60のうち、最も手前に表示される図形画像60は、他の図形画像60よりも大きい。複数の図形画像60のうち、最も奥側に表示される図形画像60は、他の図形画像60よりも小さい。また、三つ以上の図形画像60が表示される場合、手前側から奥側へと消失点Vpへ向かうに従って図形画像60が小さくなる。
【0073】
複数の図形画像60のうち、最も手前に表示される図形画像60は、他の図形画像60よりも高輝度で表示される。複数の図形画像60のうち、最も奥側に表示される図形画像60は、他の図形画像60よりも低輝度で表示される。また、三つ以上の図形画像60が表示される場合、奥側から手前側へと消失点Vpから遠ざかるに従って図形画像60が高輝度となる。一つの図形画像60において、輪郭線の輝度が最も高輝度である。
【0074】
制御部10は、図形画像60の表示を開始する場合、複数の図形画像60を順番に表示させてもよい。この場合、制御部10は、第一画像61を最初に出現させ、第三画像63を最後に出現させてもよい。本実施形態の制御部10は、複数の図形画像60を順番に出現させる出現アニメーションを実行する。
【0075】
図20には、虚像Viに出現した第一画像61が示されている。第一画像61は、例えば、フェードインによって出現する。第一画像61は、例えば、
図19の位置と同様の位置に出現する。すなわち、出現する第一画像61の一部には、鳥瞰画像20が重なる。これにより、第一画像61が車両100よりも奥側の空間に出現したことが表現される。設定値画像22は、第一画像61と同時に出現してもよい。
【0076】
図21には、虚像Viに出現した第二画像62が示されている。第二画像62は、例えば、フェードインによって出現する。第二画像62は、例えば、
図19の位置と同様の位置に出現する。すなわち、出現する第二画像62の一部には、第一画像61が重なる。これにより、第二画像62が第一画像61よりも奥側の空間に出現したことが表現される。
【0077】
同様に、第三画像63は、第二画像62よりも奥側に出現する。第三画像63は、例えば、フェードインによって出現する。第三画像63は、例えば、
図19の位置と同様の位置に出現する。すなわち、出現する第三画像63の一部には、第二画像62が重なる。これにより、第三画像63が第二画像62よりも奥側の空間に出現したことが表現される。
【0078】
上記のように複数の図形画像60が連続的に出現し、かつ消失点Vpに基づく奥行き方向に並んでいくことで、奥行き感が演出される。また、複数の図形画像60が互いに重なり、一つの図形画像60が他の一つの図形画像60の一部を覆い隠すことで、奥行き方向における並び順が直感的に理解しやすくなる。
【0079】
本実施形態の第一画像61は、第一画像61の一部に鳥瞰画像20が重なるように表示される。つまり、第一画像61の一部が鳥瞰画像20によって隠される。このような表示により、複数の図形画像60が車両100の前方の仮想物体やセグメントを示すものであることがドライバ200にとって分かりやすい。
【0080】
次に、複数の図形画像60が出現した後の虚像Viについて説明する。ACC制御では、先行車両が検出されていない場合や、先行車両から車両100までの車間距離が十分にある場合、設定速度で車両100を走行させる制御が実行される。この場合の目標速度は、設定速度と等しい。車両100に搭載された車両ECUは、目標速度で車両100を走行させる走行制御を実行する。
【0081】
図19の虚像Viが表示されているときの車両100の走行速度は、100[km/h]である。従って、車両ECUは、車両100を設定速度である120[km/h]まで加速させる制御を実行する。
【0082】
複数の図形画像60の相対位置は、車間距離の目標値等に応じて決定される。以下の説明では、車間距離の目標値を単に目標距離Dtと称する。車両100の前方に先行車両が検出されていない場合や、車両100から先行車両までの車間距離が十分に大きい場合、図形画像60の間隔は初期の間隔に設定される。
図19には、初期の間隔D1で配置された図形画像60が示されている。
【0083】
図22には、ACC制御による加速中の虚像Viが示されている。車両100が目標車速に向けて加速している場合、制御部10は、ライン画像33に重ねて複数のマーク画像34を表示する。例示されたマーク画像34は、円形または長円形の画像であって、ライン画像33とは異なる色で表示される。マーク画像34の色は、例えば、白色である。
【0084】
制御部10は、ACC制御によって車両100が加速しているときに、マーク画像34を移動させる加速アニメーションを実行する。
図23には、加速アニメーションにおけるマーク画像34の移動の向きが破線の矢印で示されている。加速アニメーションにおいて、マーク画像34は、ライン画像33に沿って消失点Vpから遠ざかるように移動する。つまり、マーク画像34は、消失点Vpに基づく奥行き方向に沿って消失点Vpから遠ざかる。マーク画像34の大きさは、消失点Vpから遠ざかるに従って大きくなる。加速アニメーションが表示されることで、ドライバ200は、現在の車両100の加速がACC制御による意図された加速であることを認識する。マーク画像34は、消失点Vpに基づく奥行きが表現された画像である。
【0085】
制御部10は、加速アニメーションにおいて、走行速度が増加するに従ってマーク画像34の移動速度を増加させる。マーク画像34の移動速度が車両100の走行速度と連動して変化することで、ドライバ200の感覚に合致したアニメーションとなる。
【0086】
車両ECUは、車両100の走行速度が目標速度に到達すると、加速を終了して定速走行の制御に移行する。制御部10は、車両100の加速が終了すると加速アニメーションを終了する。これにより、マーク画像34の表示が終了する。
【0087】
図24および
図25には、車両100が先行車両400に追い付こうとしているときの虚像Viが示されている。このときの車両100から先行車両400までの車間距離Dsは、目標距離Dtよりも大きい。
【0088】
図25に示すように、車両100が先行車両400に追い付こうとしている場合の虚像Viは、車両画像65を含む。車両画像65は、先行車両400を示す画像であって、図形画像60よりも消失点Vpの側に表示される。車両画像65の位置は、検出された車間距離Dsに応じて変化する。車間距離Dsが短くなるに従って、車両画像65の位置が鳥瞰画像20に近づく。
【0089】
制御部10は、車両画像65の表示を開始するときに、図形画像60の相対位置を変化させる。より詳しくは、制御部10は、二つの図形画像60の間隔を広げるように図形画像60の位置を変化させる。
図25における図形画像60の間隔は、第二の間隔D2である。第二の間隔D2は、初期の間隔D1よりも大きい。制御部10は、第二画像62および第三画像63を消失点Vpに向けて移動させることにより、三つの図形画像60を第二の間隔D2で表示する。
【0090】
図26には、車間距離Dsが目標距離Dtに近い値まで減少したときの虚像Viが示されている。車間距離Dsが目標距離Dtに近づくと、車両画像65に第三画像63が重なる。これにより、ドライバ200は、車両100が先行車両400に接近したことを直感的に知ることができる。言い換えると、ドライバ200は、ACC制御によって車両100が先行車両400に対する追従モードに移行することを知ることができる。車両ECUは、車間距離Dsが目標距離Dtを下回らないように、減速制御を実行する。
【0091】
図26の虚像Viは、ACC制御による減速中の虚像Viである。制御部10は、ACC制御によって車両100が減速している場合、ライン画像33に重ねて複数のマーク画像34を表示する。減速時のマーク画像34は、例えば、加速時のマーク画像34と同様の形状および色を有する。
【0092】
制御部10は、ACC制御によって車両100が減速しているときに、マーク画像34を移動させる減速アニメーションを実行する。減速アニメーションにおけるマーク画像34の移動の向きは、
図23に示す向きである。すなわち、マーク画像34は、消失点Vpから遠ざかるように、ライン画像33に沿って移動する。ここで、減速アニメーションにおけるマーク画像34の移動の速度は、加速アニメーションにおけるマーク画像34の移動の速度よりも遅い。
【0093】
減速アニメーションが実行されることで、ドライバ200は、現在の車両100の減速がACC制御による意図された減速であることを認識する。制御部10は、減速アニメーションにおいて、走行速度が減少するに従ってマーク画像34の移動速度を減少させる。マーク画像34の移動速度が車両100の走行速度と連動して変化することで、ドライバ200の感覚に合致したアニメーションとなる。
【0094】
車間距離の目標値は、ACC制御における目標速度に応じて変化する。先行車両400への接近により車両100が減速する場合、目標距離Dtも減少する。
図27には、
図26に対して車両100が更に減速したときの虚像Viが示されている。
図27では、
図26に対して車両画像65が鳥瞰画像20に接近しており、図形画像60の間隔が狭くなっている。このような図形画像60の変化により、複数の図形画像60が緩衝材として車間を維持しているかのような演出がなされる。
【0095】
図形画像60の間隔の変化は、減速の開始時には速く、減速の終了時にはゆっくりとされてもよい。この場合、複数の図形画像60が接近してくる車両画像65によって押し縮められて反発力を発生しているように見せることができる。
【0096】
制御部10は、ACC制御による減速が終了すると、減速アニメーションを終了する。これにより、マーク画像34の表示が終了する。ドライバ200は、マーク画像34が消えることにより、先行車両400に合わせた定速走行に移行したことを認識する。
【0097】
なお、図形画像60が表示される場面は、ACC制御の実行中には限定されない。例えば、制御部10は、衝突回避のための自動ブレーキ制御がなされるときに、複数の図形画像60を含む虚像Viを表示させてもよい。制御部10は、ドライバ200が車両100の運転操作をしているときに、先行車両400との間に十分な車間距離を確保するよう促すために複数の図形画像60を含む虚像Viを表示させてもよい。
【0098】
以上説明したように、本実施形態の車両用表示装置1は、表示装置3と、表示装置3を制御する制御部10と、を有する。表示装置3は、車両100におけるドライバ200の前方の反射面110aに対して画像の表示光Ltを投影することでドライバ200に対して虚像Viを表示する。表示装置3は、虚像Viの下部Vdに対して虚像Viの上部Vuがドライバ200から遠くに見えるように構成される。
【0099】
表示装置3が表示する虚像Viは、所定画像を含む。所定画像は、消失点Vpに基づく奥行き方向に並び、かつ部分的に重なる複数の画像を有する。本実施形態の車両用表示装置1は、下部Vdに対して上部Vuがドライバ200から遠くに見える虚像Viと、所定画像と、の組み合わせにより、奥行き感のある虚像Viを表示することができる。
【0100】
所定画像は、例えば、奥行き方向に並び、かつ部分的に重なる複数の案内画像50を有する。案内画像50は、ドライバ200に対する経路案内の画像である。案内画像50が部分的に重なって表示されることで、ドライバ200に対する経路案内に関する立体的な情報提供が可能となる。
【0101】
本実施形態の案内画像50は、車両100の前方の分岐箇所における進行方向を示す矢印を有する。一つの案内画像50は、他の一つの案内画像50が有する矢印の先端部を覆わないように他の一つの案内画像50に重なる。これにより、経路案内の機能を損なうことなく奥行き感のある表示が可能となる。
【0102】
所定画像は、例えば、奥行き方向に並び、かつ部分的に重なる複数の図形画像60を有する。制御部10は、車両100と先行車両400との車間距離に応じて複数の図形画像60の重なり度合いを変化させる。重なり度合いが変化する複数の図形画像60は、車間距離の変化を立体的に表現することができる。
【0103】
本実施形態の図形画像60は、車間距離を自動的に制御する車両制御(例えば、ACC制御)が実行されているときに表示される。複数の図形画像60は、鳥瞰画像20と車両画像65との間に表示される。鳥瞰画像20は、車両100を示す画像の一例である。車両画像65は、先行車両400を示す画像の一例である。車両100を示す画像と先行車両400を示す画像との間に複数の図形画像60が部分的に重なりながら表示されることで、車両100と先行車両400との位置関係が立体的に表現される。
【0104】
なお、虚像Viを傾斜して表示させる手段は、第二ミラー6の倍率には限定されない。例えば、
図28に示すように、画像表示部4の姿勢によって虚像Viを傾斜させることも可能である。
図28に示す画像表示部4において、表示面4aは、表示面4aから第一ミラー5へ向かう表示光Ltの光軸に対して傾斜している。より詳しくは、表示面4aは、第二ミラー6の第一端部6uへ向かう表示光Ltの光路長が第二端部6dへ向かう表示光Ltの光路長よりも長くなるように傾斜している。従って、虚像Viは、虚像Viの下部Vdに対して虚像Viの上部Vuがドライバ200から遠くに見えるように、車両上下方向Zに対して傾斜する。
【0105】
表示装置3は、傾斜した表示面4aおよび第二ミラー6の両方によって虚像Viを傾斜させることもできる。表示装置3は、表示面4aの傾斜の度合いを調整する機構を有していてもよい。
図29には、回転可能な画像表示部4が示されている。
図29の画像表示部4は、回転軸4bを中心に回転可能である。回転軸4bの中心軸線は、表示面4aの中央部を通る直線である。表示装置3は、画像表示部4を回転させるモータ11を有する。制御部10は、モータ11を制御して表示面4aの角度を目標角度とする。このような構成により、虚像Viの傾斜角度を変化させることができる。
【0106】
[実施形態の変形例]
なお、所定画像において、部分的に重なる画像の数は、実施形態で例示された数には限定されない。例えば、所定画像は、部分的に重なる四つ以上の画像を有していてもよい。例えば、所定画像は、部分的に重なる四つ以上の案内画像50を有していてもよい。例えば、所定画像は、部分的に重なる四つ以上の図形画像60を有していてもよい。
【0107】
案内画像50に表示される内容は、経路案内の矢印には限定されない。案内画像50は、文字情報を含んでいてもよい。図形画像60の形状は、矩形には限定されない。図形画像60の形状は、円形や長円形上であってもよく、その他の形状であってもよい。虚像Viの表示位置は、実施形態で例示された位置には限定されない。例えば、虚像Viは、車両100の前方の注意対象等に重ねて表示されてもよい。注意対象は、例えば、先行車両400等の他車両や歩行者であってもよく、その他の対象物であってもよい。ドライバ200に向けて表示光Ltを反射する反射面は、ウインドシールド110の面には限定されない。反射面は、例えば、コンバイナの反射面であってもよく、その他の反射部材の面であってもよい。
【0108】
上記の実施形態に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0109】
1:車両用表示装置
2:筐体、 3:表示装置、 4:画像表示部、 4a:表示面
5:第一ミラー
6:第二ミラー、 6r:反射面、 6u:第一端部、 6d:第二端部
10:制御部
20:鳥瞰画像、 21:速度画像、 22:設定値画像
30,33:ライン画像、 31:ポジション画像、 32:ライン画像
34:マーク画像
50:案内画像、 51:第一画像、 52:第二画像、 53:第三画像
54:矢印画像
60:図形画像、 61:第一画像、 62:第二画像、 63:第三画像
65:車両画像
100:車両、 110:ウインドシールド、 110a:反射面
120:ダッシュボード
200:ドライバ
300:道路
400:先行車両
Ds:車間距離、 Dt:目標距離
EP:アイポイント
Gh:画像横方向、 Gv:画像上下方向
L1:仮想線
Lt:表示光
Sc:景色
Vi:虚像、 Vd:下部、 Vu:上部
Vp:消失点
X:車両前後方向、 Z:車両上下方向