(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009230
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
H04N 25/587 20230101AFI20250110BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20250110BHJP
H04N 23/54 20230101ALI20250110BHJP
H04N 23/56 20230101ALI20250110BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20250110BHJP
【FI】
H04N25/587
H04N25/70
H04N23/54
H04N23/56
H04N23/60 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112090
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 薫
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】安部 大智
【テーマコード(参考)】
5C024
5C122
【Fターム(参考)】
5C024AX02
5C024CX43
5C024EX03
5C024GX03
5C024GX16
5C024GY31
5C024HX47
5C024HX50
5C122EA21
5C122FC01
5C122FC02
5C122FC06
5C122FH11
5C122FH18
5C122HB01
5C122HB02
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】被検出対象を通る光の明暗の範囲を検出装置における検出の明暗のダイナミックレンジ内により容易に収められる検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置は、光を検出して検出された光の度合いに応じた出力を生じるセンサ部が二次元的に複数配置された検出領域を有するセンサパネルと、検出領域に対応して設けられた発光領域に配置された複数の点光源を有する光源部と、を備え、点光源を点灯させて複数のセンサ部からの出力を得る1回目の検出処理と、1回目の検出処理とは異なる輝度で点光源を点灯させて複数のセンサ部からの出力を得る2回目の検出処理と、が生じ、2回目の検出処理における点光源の輝度は、1回目の検出処理における点光源の輝度と複数のセンサ部からの出力との関係に基づく。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を検出して検出された光の度合いに応じた出力を生じるセンサ部が二次元的に複数配置された検出領域を有するセンサパネルと、
前記検出領域に対応して設けられた発光領域に配置された複数の点光源を有する光源部と、を備え、
前記点光源を点灯させて複数の前記センサ部からの出力を得る1回目の検出処理と、前記1回目の検出処理とは異なる輝度で前記点光源を点灯させて複数の前記センサ部からの出力を得る2回目の検出処理と、が生じ、
前記2回目の検出処理における前記点光源の輝度は、前記1回目の検出処理における前記点光源の輝度と複数の前記センサ部からの出力との関係に基づく、
検出装置。
【請求項2】
複数の前記センサ部は、前記センサ部の出力を得る検出回路と接続され、
前記センサ部は、フォトダイオードを有し、
前記フォトダイオードは、アノードに基準電位が与えられ、カソードに前記基準電位よりも電位が高いリセット電位が与えられ、
前記2回目の検出処理における複数の前記センサ部の出力を前記検出回路で認識可能な入力の下限と上限との範囲内にするために前記1回目の検出処理における前記点光源の輝度を決定する処理は、前記基準電位及び前記リセット電位の両方を変更する処理を含む、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
複数の前記センサ部は、前記センサ部の出力を得る検出回路と接続され、
前記センサ部は、フォトダイオードを有し、
前記フォトダイオードは、アノードに基準電位が与えられ、カソードに前記基準電位よりも電位が高いリセット電位が与えられ、
前記センサ部と前記検出回路との間に電気抵抗として機能する構成が介在し、
前記電気抵抗と前記検出回路との接続経路にバイアス電流を与える電流源が接続され、
前記2回目の検出処理における複数の前記センサ部の出力を前記検出回路で認識可能な入力の下限と上限との範囲内にするために前記1回目の検出処理における前記点光源の輝度を決定する処理は、前記バイアス電流を変更する処理を含む、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
複数の前記センサ部は、前記センサ部の出力を得る検出回路と接続され、
前記2回目の検出処理における前記点光源の輝度は、前記1回目の検出処理における複数の前記センサ部の出力を前記検出回路で認識可能な入力の上限以上の状態にした場合と、複数の前記センサ部の出力を前記検出回路で認識可能な入力の上限未満にした場合と、の間のシフト量に基づいて設定される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記1回目の検出処理は、
複数の前記センサ部の出力を前記検出回路で認識可能な入力の上限以上の状態にした状態の第1期間と、
複数の前記センサ部の出力を前記検出回路で認識可能な入力の上限未満にした状態の第2期間と、を含み、
前記第1期間における前記センサ部の出力と前記第2期間における前記センサ部の出力とが合成される、
請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記1回目の検出処理において前記第2期間の前に複数の前記センサ部の出力が前記検出回路で認識可能な入力の上限以上でなかった場合、複数の前記センサ部の出力が前記検出回路で認識可能な入力の上限以上になるように前記点光源の輝度を上げる、
請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記第1期間における前記センサ部の出力である第1出力と前記第2期間における前記センサ部の出力である第2出力との重複部分が前記第1出力又は前記第2出力から除かれて合成される、
請求項5に記載の検出装置。
【請求項8】
複数の前記センサ部はマトリクス状に配置され、
複数の前記センサ部の各々は、前記センサ部に出力を生じさせる走査信号を伝送するための走査線及び前記センサ部からの出力を伝送する信号線と接続されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記点光源から前記センサ部に到達する光の進路を限定する部材を備え、
複数の前記センサ部が配置されている検出領域を有するセンサパネルと、前記点光源と、が培地を挟んで対向する場合、前記部材は、前記培地と前記センサパネルとの間に配置される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物組織や微生物の培養環境を被検出対象とし、その状態を光学センサで検出可能にした検出装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した被検出対象の状態をより正確に検出するには、被検出対象を通る光の明暗の範囲を検出装置における検出の明暗のダイナミックレンジ内に収められるよう、当該ダイナミックレンジを調節することが望ましい。従来、このような調節は検出装置の管理者による手動で行われており、煩雑であった。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたもので、被検出対象を通る光の明暗の範囲を検出装置における検出の明暗のダイナミックレンジ内により容易に収められる検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による検出装置は、光を検出して検出された光の度合いに応じた出力を生じるセンサ部が二次元的に複数配置された検出領域を有するセンサパネルと、前記検出領域に対応して設けられた発光領域に配置された複数の点光源を有する光源部と、を備え、前記点光源を点灯させて複数の前記センサ部からの出力を得る1回目の検出処理と、前記1回目の検出処理とは異なる輝度で前記点光源を点灯させて複数の前記センサ部からの出力を得る2回目の検出処理と、が生じ、前記2回目の検出処理における前記点光源の輝度は、前記1回目の検出処理における前記点光源の輝度と複数の前記センサ部からの出力との関係に基づく。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、検出装置の主要構成を示す図である。
【
図2】
図2は、検出領域及び配線領域の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、センサ部の回路構成を示す回路図である。
【
図4】
図4は、信号線への信号の出力及び当該出力の検出回路への伝送に関わる回路の振る舞いを説明するための回路図である。
【
図5】
図5は、検出装置の動作時の態様を示す概略図である。
【
図6】
図6は、AFEが認識する信号強度と、検出領域の座標と、の関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、信号の合成処理の仕組みを示す概略図である。
【
図8】
図8は、頭打ちが生じた場合にバイアス電流の変更が行われるときの第1期間F1と第2期間F2の主要な信号制御の例を示すタイミングチャートである。
【
図9】
図9は、頭打ちが生じた場合に初期電位の変更が行われるときの第1期間F1と第2期間F2の主要な信号制御の例を示すタイミングチャートである。
【
図10】
図10は、1回目の検出処理で想定される信号強度のレベルと、2回目の検出処理で想定される信号強度のレベルと、の相対的な関係を示す概略図である。
【
図11】
図11は、1回目の検出処理で得られる信号強度の分布と2回目の検出処理で得られる信号強度の分布との差をダイナミックレンジとの関係で相対的に示す概略図である。
【
図12】
図12は、1回目の検出処理の輝度レベルと2回目の検出処理の輝度レベルとの差によるシフト量と、ダイナミックレンジとの関係を示す概略図である。
【
図13】
図13は、実施形態で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本開示の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本開示の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
図1は、検出装置1の主要構成を示す図である。検出装置1は、センサパネル10と、光源部20と、を備える。センサパネル10と光源部20とはホスト30に接続される。
【0010】
センサパネル10は、基板11上に検出領域SA(
図2参照)が設けられている。また、基板11上には、リセット回路13、走査回路14及び配線領域VAが実装されている。検出領域SA上の構成、リセット回路13及び走査回路14は、配線領域VAを介して検出回路15と接続されている。
【0011】
光源部20は、検出領域SAに光を照射する発光領域LAを有する。光源部20は、基板21上に点光源22が設けられている。点光源22は、例えばLED(Light Emitting Diode)のような発光素子であり、発光領域LA内に配置される。
図1に示す例では、複数の点光源22が、基板21上にマトリクス状に配置されている。
【0012】
複数の点光源22は、個別に発光制御可能に設けられる。光源部20には、光源駆動回路23が設けられている。光源駆動回路23は、ホスト30の制御下で、複数の点光源22の各々の点灯の有無及び点灯時の輝度制御を行う。
【0013】
ホスト30は、検出装置1の動作に関する各種の制御を行う。具体的には、ホスト30は、例えば検出装置1の構成に対応したマイクロコントローラ又はマイクロコントローラと同様に機能する情報処理装置である。係るホスト30は、SPI(Serial Peripheral Interface)のような規格化されたインタフェースを介して検出回路15と接続され、検出回路15からの出力を得る。また、係るホスト30は、規格化されたインタフェースを介して光源駆動回路23と接続され、点光源22の点灯パターンの決定等、点光源22の点灯に関する処理を行う。
【0014】
図2は、検出領域SA及び配線領域VAの構成例を示す図である。検出領域SAには複数のセンサ部WA(
図3)が設けられている。実施形態では、
図2に示すように、複数のセンサ部WAが第1方向Dx及び第2方向Dyに沿ってマトリクス状に配置されている。第1方向Dxと第2方向Dyとは直交する。また、以下の説明で第3方向Dzと記載した場合、第1方向Dx及び第2方向Dyに直交する方向をさす。
【0015】
リセット回路13は、リセット信号伝送線51,52,・・・,5nと接続されている。以下、リセット信号伝送線5と記載した場合、リセット信号伝送線51,52,・・・,5nのいずれかをさす。リセット信号伝送線5は、第1方向Dxに沿う配線である。
図2に示す例では、n本のリセット信号伝送線5が、第2方向Dyに並ぶ。nは、2以上の自然数である。係るn本のリセット信号伝送線5は、第1方向Dxの一端側で、リセット回路13と接続されている。
【0016】
走査回路14は、走査線61,62,・・・,6nと接続されている。以下、走査線6と記載した場合、走査線61,62,・・・,6nのいずれかをさす。走査線6は、第1方向Dxに沿う配線である。
図2に示す例では、n本の走査線6が、第2方向Dyに並ぶ。係るn本のリセット信号伝送線5は、第1方向Dxの他端側で、走査回路14と接続されている。
【0017】
図2に示すように、リセット信号伝送線5と走査線6とは、検出領域SA内で第2方向Dyに交互に並ぶ。なお、
図1及び
図2で例示するリセット回路13と走査回路14は、検出領域SAを挟んで対向する位置に配置されているが、リセット回路13と走査回路14のレイアウトはこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0018】
また、検出領域SA内には、信号線71,72,・・・,7mが設けられている。以下、信号線7と記載した場合、信号線71,72,・・・,7mのいずれかをさす。信号線7は、第2方向Dyに沿う配線である。
【0019】
図2に示す例では、m本の信号線7が、第1方向Dxに並ぶ。mは、2以上の自然数である。係るm本の信号線7はそれぞれ、第2方向Dyの一端側で、セレクタ回路40が有する複数のスイッチのいずれか(例えば、スイッチSW1、スイッチSW2、スイッチSW3又はスイッチSW4)と接続されている。
【0020】
セレクタ回路40は、配線領域VA内に設けられる。セレクタ回路40は、複数のスイッチを有する。
図2に示す例では、当該複数のスイッチとして、スイッチSW1,SW2,SW3,SW4が示されている。1つのセレクタ回路40が有する複数のスイッチは、それぞれ異なるタイミングでON(接続状態)になる。1つのセレクタ回路40が有する複数のスイッチのうち、1つのスイッチがON(接続状態)である期間、他のスイッチはOFF(非接続状態)である。セレクタ回路40の数は、信号線7の数(m)に応じる。スイッチの数をpとすると、セレクタ回路40の数は、m/pあれば足りる。セレクタ回路40が複数ある場合、複数のセレクタ回路40はそれぞれ、個別の配線401,402,・・・,40pを介して検出回路15と接続される。
【0021】
なお、セレクタ回路40を介した信号線7と検出回路15との接続はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、配線領域VA内で信号線7を個別に検出回路15と直結させてもよい。配線領域VA内で、リセット回路13は、配線131を介して検出回路15と接続される。配線領域VA内で、走査回路14は、配線141を介して検出回路15と接続される。
【0022】
検出回路15は、センサ部WAに設けられるPD82(
図3参照)による光の検出に係り、リセット回路13及び走査回路14の動作タイミングを制御する。これによって、検出回路15は、後述する
図8及び
図9を参照して説明するセンサ部WAのリセット期間RT、露光期間EX、読出期間RDのタイミング制御を行う。また、検出回路15には、センサ部WAからの出力が入力される。検出回路15は、センサ部WAから入力された信号をホスト30に解釈可能なデータに変換してホスト30に出力する。なお、実施形態の検出回路15は、センサパネル10における複数のセンサ部WAのROIC(ReadOut Integrated Circuit)である。
【0023】
図3は、センサ部WAの回路構成を示す回路図である。なお、
図3における第1方向Dx、第2方向Dyは、リセット信号伝送線5、走査線6、信号線7の方向と対応しているに過ぎず、センサ部WA内の回路構成の相対的位置関係を厳密に示すものでない。
【0024】
図3に示すように、センサ部WA内には、スイッチング素子81、PD82、トランジスタ素子83及びスイッチング素子85が設けられている。PD82は、フォトダイオード(PD:PhotoDiode)である。スイッチング素子81,83,85は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0025】
スイッチング素子81のゲートは、リセット信号伝送線5と接続される。スイッチング素子81のソース又はドレインの一方には、リセット電位VResetが与えられている。スイッチング素子81のソース又はドレインの他方には、PD82のカソード及びトランジスタ素子83のゲートが接続されている。以下、接続部CPと記載した場合、当該他方、PD82のカソード及びトランジスタ素子83のゲートが接続されている箇所をさす。また、PD82のアノード側からは基準電位VCOMが与えられている。リセット電位VResetと基準電位VCOMとの電位差は予め定められているが、リセット電位VReset及び基準電位VCOMの電位は可変であってよい。尚、リセット電位VResetは、基準電位VCOMよりも高い電位である。
【0026】
リセット電位VReset及び基準電位VCOMは、例えば検出回路15に接続された図示しない電源回路を介して供給される電力に基づいて、検出回路15が検出領域SAへ供給するが、これに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0027】
ソースフォロアとして機能するトランジスタ素子83のドレインには、出力源電位VPP2が与えられている。トランジスタ素子83のソースには、スイッチング素子85のソース又はドレインの一方が接続されている。スイッチング素子85のソース又はドレインの他方は、信号線7と接続されている。スイッチング素子85のゲートは、走査線6と接続されている。
【0028】
リセット電位VReset及び基準電位VCOMならびに出力源電位VPP2は、例えば検出回路15に接続された図示しない電源回路を介して供給される電力に基づいて、検出回路15が検出領域SAへ供給するが、これに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0029】
出力源電位VPP2は、予め定められている。また、トランジスタ素子83のソース側の電位は、PD82の出力電位からトランジスタ素子83のゲート-ソース間の電圧(Vth)分下がった電位となる。この場合、トランジスタ素子83のソース側の電位は、PD82の出力の強弱と、リセット電位VReset及び基準電位VCOMの電位と、に応じる。PD82の出力の電位は、後述する露光期間EX中にPD82が検出する光に応じてPD82が生じさせる光起電力に応じる。
【0030】
走査線6を介して走査回路14から与えられる信号によってスイッチング素子85のゲートがONになると、スイッチング素子85のソース-ドレイン間が接続される。これによって、トランジスタ素子83を介してスイッチング素子85へ伝送される信号(電位)が、スイッチング素子85を通じて信号線7へ伝送される。このようにして、センサ部WAからの出力が生じる。以後、走査信号と記載した場合、走査線6を介して走査回路14から与えられる信号(電位)をさす。走査回路14は、走査信号を出力する回路である。
【0031】
ある1つのセンサ部WAに設けられた1つのPD82の出力は、予め定められた露光期間EX(
図8及び
図9参照)内に当該PD82が検出した光の強さに応じる。PD82の出力は、リセット信号伝送線5を介してリセット回路13から与えられる信号に応じてリセットされる。当該信号によってスイッチング素子81のゲートがONになると、スイッチング素子81のソース-ドレイン間が接続される。これによって、接続部CPの電位が、リセット電位VResetにリセットされる。以下、初期電位と記載した場合、当該リセット電位VResetをさす。また、リセット信号と記載した場合、リセット信号伝送線5を介してリセット回路13から与えられる信号をさす。リセット回路13は、リセット信号を出力する回路である。
【0032】
以下、信号線7への信号の出力及び当該出力の検出回路15への伝送の詳細について、
図4を参照して説明する。
【0033】
図4は、信号線7への信号の出力及び当該出力の検出回路15への伝送に関わる回路の振る舞いを説明するための回路図である。上述したように、いったんPD82の出力がリセットされると、接続部CPの電位は初期電位になる。次にPD82の出力が再度リセットされるまでの間にPD82が検出した光の強さに応じて、容量C1に蓄積された電荷がPD82から放電されるため、接続部CPの電位が下がる。
図4では、接続部CPにおける電位に対応した静電容量を、容量C1で示している。従って、トランジスタ素子83のソース電位は、容量C1に応じるといえる。PD82が全く光を検出しないとすると、実質的にPD82には電流が流れないため容量C1の両端の電位は初期電位から変わらない。PD82が光を検出した度合いに応じて、容量C1は初期電位から低くなる方向に変化する。
【0034】
ここで、トランジスタ素子83のソースと、スイッチング素子85のソース又はドレインの一方と、の接続位置における静電容量を容量C2とする。また、スイッチング素子85のソース又はドレインの他方側の電位に対応した静電容量を容量C3とする。走査信号が出力されることでスイッチング素子85のソース-ドレイン間が接続される。
【0035】
スイッチング素子85のソース又はドレインの他方と、検出回路15に設けられたAFE31と、の間に介在する信号線7は、その延接長に応じた電気抵抗ERを有する。ここで、信号線7から分岐するように電流源32が設けられている。電流源32は定電流を信号線7から流出させることで、電気抵抗ERに流れる電流値に応じた電圧がスイッチング素子85のソース又はドレインの他方とAFE31との間で生じる。容量C4は例えば、信号線7の電位を安定させる容量である。以下、バイアス電流と記載した場合、電流源32から信号線7に与えられる(流出される)電流を示す。電流源32は、バイアス電流を与える電流源であり、例えば検出回路15内に設けられる。
【0036】
尚、
図4に示すように、容量C1は、一端が信号線(接続部CP)に接続され、他端に基準電位(GND)が与えられている容量素子とみなせる。また、容量C2は、一端がトランジスタ素子83とスイッチング素子85との間の信号伝送経路に接続され、他端に基準電位(GND)が与えられている容量素子とみなせる。また、容量C3は、一端がスイッチング素子85と検出回路15との間の信号伝送経路に接続され、他端に基準電位(GND)が与えられている容量素子とみなせる。また、容量C4は、一端がスイッチング素子85と検出回路15との間の信号伝送経路に接続され、他端に基準電位(GND)が与えられている容量素子とみなせる。尚、容量C1~C4は容量素子を用いないで、各素子の寄生容量であってもよい。
【0037】
また、接続部CPの電位が初期電位から変更されると、トランジスタ素子83の電位も変更される。すなわち、初期電位が変更されると、信号線7の電位もこれに応じて変更される。従って、初期電位の高低を制御することによっても、信号線7の電位の高低を制御できる。また、バイアス電流が変更されると、電気抵抗ERの両端の電位差も変更されるため、信号線7の電位も変更できる。
【0038】
なお、AFE31は、アナログ・フロント・エンド(Analog Front End)として機能する回路である。AFE31は、信号線7を介して与えられる入力に応じた信号を生成してホスト30へ出力する。
【0039】
次に、検出装置1の動作時の態様について、
図5を参照して説明する。
【0040】
図5は、検出装置1の動作時の態様を示す概略図である。検出装置1は、光源部20とセンサパネル10とが被検出体SUBを挟んで第3方向Dzに対向するよう設けられる。被検出体SUBは、例えば寒天培地のような培地が形成されたシャーレであるが、これに限られるものでなく、光源部20からの光を透過させる他の構成であってもよい。また、被検出体SUBとセンサパネル10との間には射線限定部材50が介在する。射線限定部材50は、光源部20からセンサパネル10に向かって照射される光LVのうちセンサパネル10に到達できる光の進路を限定する部材である。具体的には、射線限定部材50は、例えば第3方向Dzの貫通孔が複数点在する板状の部材である。射線限定部材50を通ることができる光は、当該貫通孔を通る光に限定される。当該貫通孔は、センサパネル10に設けられる点光源22の配置に対応する。当該貫通孔は、各PD82が2つ以上の点光源22からの光を同時に検出することがないよう設けられる。すなわち、実施形態では、1つのPD82が検出する光は、1つの点光源22からの光である。なお、当該貫通孔は各PD82に個別に設けられるのでなく、複数のPD82で共有される。従って、1つの点光源22からの光は、複数のPD82で共有される。被検出体SUBは、射線限定部材50上であって、検出領域SA内に載置される。光源部20は、点光源22の点灯によって、被検出体SUBの上方からセンサパネル10へ向かって光を照射する。点光源22から発せられて被検出体SUB側へ向かう光のうち、被検出体SUB及び射線限定部材50を通った光が検出領域SA内のPD82(
図3及び
図4参照)によって検出される。以下、センサスキャンと記載した場合、
図5に示すような光源部20、被検出体(例えば、被検出体SUB)、射線限定部材50及びセンサパネル10の位置関係が成立している状態で、光源部20からの光をセンサパネル10が検出する処理をさす。
【0041】
図5を参照して説明したセッティング条件下で、点光源22からの光をPD82で検出する検出処理が行われる。実施形態では、後述する1回目の検出処理FA及び2回目の検出処理FB(
図12参照)が行われる。なお、射線限定部材50に設けられた貫通孔を共有する複数のPD82の各々が検出する光の強さは異なり得る。以下、
図6を参照して複数のPD82の各々が検出する光の強さについて説明する。
【0042】
図6は、AFE31が認識する信号強度と、検出領域SAの座標と、の関係を示すグラフである。以下、単に信号強度と記載した場合、特筆しない限り、AFE31が認識する信号強度をさす。信号強度は、PD82によって検出された光の強さに対応する。また、
図6に示すグラフの横軸で示す検出領域SAの座標のうち「E1」は、第1方向Dx又は第2方向Dyのうち一方に沿う検出領域SAの一端側である。また、「E2」は、当該一方に沿う検出領域SAの他端側である。
図6に示すE1-E2間のグラフは、1つの点光源22から発せられて射線限定部材50を通る光の分布に対応して、当該1つの点光源22からの光が到達する位置に配置された複数のPD82の検出結果を示す信号強度の分布を示す。
図6を参照した説明では、
図5に合わせて当該一方が第1方向Dxであるものとして説明する。
図6のグラフは、
図5に示す照明範囲220に応じた信号強度を概略的に示しているものとする。また、
図6では、1回目の検出処理FAに含まれる第1期間F1のグラフ及び第2期間F2のグラフを示している。
【0043】
図6の第1期間F1のグラフで示すように、信号強度は、検出領域SAの座標に応じて異なり得る。ただし、頭打ち範囲WHとして図示するように、座標E1と座標E2との中間及び当該中間付近では、信号強度が高止まりしている。これは、AFE31のダイナミックレンジDRに起因する。ダイナミックレンジDRは、AFE31が処理できる信号の下限(Dmin)と上限(Dmax)とによって定められる。頭打ち範囲WHは、ダイナミックレンジDRのうち、上限(Dmax)に起因して生じている。仮に、当該上限(Dmax)に起因する信号強度の制限がない場合、横軸(座標)に沿って並ぶ複数のPD82の各々が検出する光の強さに応じた信号強度の分布は、
図6の第1期間F1のグラフにおける実線曲線W1と、破線曲線WMと、によって形成される正弦曲線状の分布を示す。これは、点灯する点光源22との相対距離がより近いPD82がより強い光を検出することによる。
【0044】
逆に言えば、第1期間F1では、実線曲線W1と頭打ち範囲WHとによって形成される実線のグラフに対応した出力が、複数のセンサ部WAからの出力に対応した「ある点光源22の点灯パターンに対応した1回のセンサスキャンの出力」として扱われる。すなわち、ある時点(例えば、後述する読出期間RD)での複数のセンサ部WAの各々の出力を合わせた出力が、検出領域SAからの出力として扱われる。
【0045】
図4を参照して説明したように、信号強度(信号線7の電位)は、バイアス電流及び初期電位の少なくともいずれか一方の変更によって変更できる。そこで、
図6の第1期間F1のグラフにおける頭打ち範囲WHのような、ダイナミックレンジDRの上限(Dmax)に対応する出力が生じた場合、信号強度を下げることで、当該上限(Dmax)に起因する信号の識別限界を解消できる。
【0046】
図6の第2期間F2のグラフは、第1期間F1のグラフに比して、信号強度をシフト量SHだけ下げたものである。これによって、第1期間F1ではAFE31が認識できなかった破線曲線WMの部分を含む実線曲線W2に対応した信号強度の分布を、第2期間F2ではAFE31が認識できている。一方、第2期間F2では、破線曲線WBとして示す部分が下限(Dmin)を下回り、AFE31による信号の認識及び信号強度の識別ができなくなっている。このように、信号強度の変更によって、複数のPD82の各々が検出する光の強さに応じた信号強度の分布とダイナミックレンジDRとの関係を変更できる。
【0047】
複数のPD82の各々が検出する光の強さに応じた信号強度の分布における信号強度の下限と上限との差がダイナミックレンジDRを超える場合、単にAFE31を動作させても、複数のPD82の各々が検出する光の強さに応じた信号強度の分布を識別しきれない。そこで、この場合、
図6を参照して説明した第1期間F1と第2期間F2のように、信号強度を変更した2回の検出結果を利用することで、複数のPD82の各々が検出する光の強さに応じた信号強度の分布をより確実に識別できる。ここで、第1期間F1から第2期間F2へ信号強度を変更するときの信号強度のシフト量(シフト量SH)は、ダイナミックレンジDRの上限(Dmax)と下限(Dmin)との差(上下差)以下である。
図6に示す例の場合、シフト量SHは、当該上下差未満である。
図6に示す重複レンジDiは、当該上限差からシフト量SHを差し引いた差分である。言い換えれば、重複レンジDiに含まれる部分の信号は、第1期間F1と第2期間F2の両方で認識されている。そこで、2回の検出結果を利用するとき、重複レンジDiに含まれる部分の重複への対策が施された信号の合成処理が行われる。
【0048】
図7は、信号の合成処理の仕組みを示す概略図である。
図7では、
図6に示す第1期間F1で得られた信号を第1信号P1として示している。また、
図7では、
図6に示す第2期間F2で得られた信号を第2信号P2として示している。信号の合成処理では、第1信号P1と第2信号P2とを足し合わせ、重複レンジDiに含まれる部分の信号強度を1回分差し引く処理が行われる。これによって、ダイナミックレンジDRを超える信号強度の分布と、重複レンジDiに含まれる部分の重複と、の両方への対策が反映された合成信号WSの取得を行える。
【0049】
なお、実施形態では、ダイナミックレンジDRの上限(Dmax)に対応する信号の入力がAFE31に生じたかの判定及び係る入力が生じた場合の信号強度の変更は、例えば検出回路15によって行われる。また、信号の合成処理は、例えばホスト30によって行われるが、検出回路15に信号の合成処理を行う機能を持たせてもよい。また、頭打ちが生じていない場合、実施形態では、一度強制的に頭打ちが生じるように点光源22の発光強度が高められる。すなわち、第1期間F1と第2期間F2とが必ず生じるよう、点光源22の発光強度の設定及びダイナミックレンジDRの変更が行われる。ここでいう頭打ちとは、1つ以上の座標で、信号強度がダイナミックレンジDRの上限(Dmax)に到達することをさす。頭打ちが生じている場合、信号強度がダイナミックレンジDRの上限と等しいのか、上限を超えるかの識別が不可能であるため、信号の合成処理のための第2期間F2に対応する検出が行われる。
【0050】
実施形態では、PD82が全く光を検出しない場合の信号強度がダイナミックレンジDRの下限(Dmin)を上回るよう、予め信号強度が設定されているものとする。これによって、信号強度の分布のうち、ダイナミックレンジDR外のものが、ダイナミックレンジDRの上限(Dmax)を超えるものに限られるようになる。
【0051】
次に、信号強度の変更の具体的な方法として、バイアス電流が変更される場合と、初期電位が変更される場合と、を順次説明する。以後、信号レベルのシフト処理と記載した場合、バイアス電流又は初期電位の変更による信号強度の変更処理をさす。
【0052】
図8は、頭打ちが生じた場合にバイアス電流の変更が行われるときの第1期間F1と第2期間F2の主要な信号制御の例を示すタイミングチャートである。
図8及び後述する
図9におけるCL1は、リセット信号を示す。また、
図8及び
図9におけるCL2は、走査信号を示す。また、
図8におけるVoは、バイアス電流を示す。
【0053】
第1期間F1と第2期間F2のように、複数回行われる光の検出処理は、単位時間周期で行われる。すなわち、第1期間F1の時間長と第2期間F2の時間長とは実質同じである。また、各単位時間内に含まれるリセット期間RT、露光期間EX、読出期間RDの各々に割り当てられる時間長の比率も、第1期間F1と第2期間F2とで実質同じである。リセット期間RT、読出期間RDの開始タイミング制御は、検出回路15によって行われる。
【0054】
第1期間F1及び第2期間F2で共通して、まず、リセット期間RT中にリセット信号がリセット回路13からリセット信号伝送線5に与えられる。これによって、接続部CP(容量C1の一端の電位)が初期電位になる。その後、露光期間EX中にPD82が検出した光の強さに応じて容量C1の一端の電位及び容量C2の一端の電位が変動する。そして、読出期間RD中に走査信号が走査回路14から走査線6に与えられることで、信号線7を介して入力される信号(電位)が、容量C2の一端の電位に応じた信号強度(電位)になる。
【0055】
第1期間F1と第2期間F2との境界タイミングで、バイアス電流の変更が行われる。
図8に示す例では、バイアス電流が上げられることによって、容量C4の一端の電位レベルを下げる変更が行われている。これによって、
図6を参照して説明したように、第2期間F2の信号強度を第1期間F1に比して下げることができる。
【0056】
図9は、頭打ちが生じた場合に初期電位の変更が行われるときの第1期間F1と第2期間F2の主要な信号制御の例を示すタイミングチャートである。
図9におけるVResetは、
図3及び
図4を参照して説明したリセット電位VResetを示す。また、
図9におけるVCOMは、
図3及び
図4を参照して説明した基準電位VCOMを示す。
【0057】
図9に示す例では、第1期間F1と第2期間F2との境界タイミングで、バイアス電流ではなく初期電位の変更が行われる点で、
図8と異なる。具体的には、第1期間F1と第2期間F2との境界タイミングで、リセット電位VReset及び基準電位VCOMが下げられている。これによって、容量C4の一端の電位レベルが下がるので、第2期間F2の信号強度を第1期間F1に比して下げることができる。以上、特筆した事項を除いて、
図9は、
図8と同様である。尚、PD82のアノード-カソード間の逆バイアス電圧にかかわらずフォトダイオードの特性が変化しない場合は基準電位VCOMの電位は変更せずにリセット電位VReset電位のみ変更してもよい。
【0058】
なお、
図6を参照して説明した座標と信号強度との関係を示すグラフの形状は、
図5を参照して説明したような、発光領域LAの中央付近に位置する点光源22が点灯している場合のものである。正弦曲線状のグラフに対応する信号強度の分布のピークは、点灯する点光源22の配置に対応する。センサスキャンでは、複数の点光源22のうち一部(1つ又は複数)が点灯し、当該点灯に応じたセンサ部WAからの出力を得る処理が繰り返される。係る繰り返しで得られた出力をホスト30が統合することで、被検出体(例えば、被検出体SUB)のセンシング結果が導出される。係る繰り返しの中で、複数の点光源22が全て1度以上点灯する。なお、実施形態では、点光源22と射線限定部材50とPD82との関係を考慮し、1つのPD82が同時に点灯する2つ以上の点光源22からの光を受けることがないよう、点光源22の点灯が制御される。
【0059】
また、バイアス電流及び初期電位の両方を変更して信号強度を変更するようにしてもよいが、バイアス電流又は初期電位の変更による信号強度の変更の方が、信号強度の変更に係る処理をより単純化できる。
【0060】
以上、1回目の検出処理FAについて説明した。次に、2回目の検出処理FBについて説明する。実施形態では、1回目の検出処理FAに上述した第1期間F1と第2期間F2とが含まれる。一方、当該1回目の検出処理FAの後、さらに、2回目の検出処理FBが行われる。
【0061】
図10は、1回目の検出処理FAで想定される信号強度のレベルSETBと、2回目の検出処理FBで想定される信号強度のレベルSETAと、の相対的な関係を示す概略図である。
図10に示すように、2回目の検出処理FBでは、1回目の検出処理FAよりも信号強度のレベルを相対的に下げる制御が適用される。具体的には、2回目の検出処理FBでは、1回目の検出処理FAよりも点光源22の発光強度が下げられる。
図10では、1回目の検出処理FAで想定される信号強度のレベルSETBと、2回目の検出処理FBで想定される信号強度のレベルSETAと、の差は、シフト量SH2に対応する。
【0062】
図11は、1回目の検出処理FAで得られる信号強度の分布と2回目の検出処理FBで得られる信号強度の分布との差をダイナミックレンジDRとの関係で相対的に示す概略図である。
図6及び
図7を参照して説明した通り、1回目の検出処理FAで得られる合成信号WSは、ダイナミックレンジDRを超え得るものになる。このため、1回目の検出処理FAで得られる合成信号WSにおけるピークTV1は、上限Dmaxを上回ることが想定される。
【0063】
一方、2回目の検出処理FBでは、上述したように、1回目の検出処理よりも点光源22の発光強度がシフト量SH2だけ下げられる(
図12参照)。これによって、2回目の検出処理FBで得られる信号WTにおけるピークTV2は、上限Dmaxを下回る。逆に言えば、2回目の検出処理FBにおける点光源22の発光強度によってもたらされる光の輝度レベルBL2(
図12参照)は、2回目の検出処理FBのピークTV2が上限Dmaxを下回るよう設定される。ここで、1回目の検出処理FAで得られる合成信号WSにおけるピークTV1と、2回目の検出処理FBのピークTV2と、の差は、シフト量SH2に対応する。また、ピークTV1は、
図6に示す第1期間F1における破線曲線WMのピークTV1に対応する。
【0064】
図12は、1回目の検出処理FAの輝度レベルTV1と2回目の検出処理FBの輝度レベルTV2との差によるシフト量SH2と、ダイナミックレンジDRとの関係を示す概略図である。
図12に示すように、1回目の検出処理FAの第1期間F1における点光源22の発光強度によりもたらされる光の輝度レベルに応じて生じるPD82の信号強度がピークTV1であったとする。この場合、1回目の検出処理FA後に行われる2回目の検出処理で、点光源22の発光強度が下げられることで、2回目の検出処理FBで生じるPD82の信号強度がピークTV2になる。
【0065】
なお、第1期間F1と第2期間F2との間では、信号強度のシフト量(シフト量SH)に応じて、ダイナミックレンジDRと、「ピークTV1に対応する点光源22の発光強度」と、の相対関係が変化する。具体的には、1回目の検出処理FA中には変化しない点光源22の発光強度(に応じて生じるピークTV1)に対して、シフト量SHだけダイナミックレンジDRのレベルが上がる。
図12では、シフト量SHだけダイナミックレンジDRのレベルが上がることで、ピークTV1を基準として、第1期間F1におけるダイナミックレンジDRの上限Dmax及び下限Dminが、第2期間F2では上限Dmax2と下限Dmin2になることを示している。これによって、第1期間F1中はダイナミックレンジDRの上限Dmaxを超えていた「ピークTV1に対応する点光源22の発光強度」が、第2期間F2中はダイナミックレンジDRの上限Dmax2と下限Dmin2との範囲内に入る。すなわち、第1期間F1中は「ピークTV1に対応する点光源22の発光強度」が上限Dmaxを超えることは分かるが、どの程度超えているか不明であったのが、第2期間F2には「ピークTV1に対応する点光源22の発光強度」が判明するようになる。従って、ピークTV1をダイナミックレンジDR内に収めるシフト量SHを1回目の検出処理FA中に特定できる。2回目の検出処理F2では、係るシフト量SHに基づき、ダイナミックレンジDRでなく発光強度の方を相対的にシフト量SH2だけ下げることで、下げられた発光強度に対応するピークTV2をダイナミックレンジDR内に収めている。シフト量SHからシフト量SH2を求める具体的な方法は、後述する
図13のフローチャート及び
図13を参照した説明、特に、式(1)及び式(2)で示している。なお、2回目の検出処理F2におけるダイナミックレンジDRの上限Dmax及び下限Dminは、第1期間F1と同様である。
【0066】
このように、第1期間F1と第2期間F2との間では、点光源22の発光強度が輝度レベルTV1のままでありながら、ダイナミックレンジDRとの相対的な関係の変化が実現されている。これに対し、1回目の検出処理FAと2回目の検出処理FBとの間では、点光源22の発光強度が、シフト量SH2に対応した度合いだけ下げられることで、2回目の検出処理FBにおけるピークTV2をダイナミックレンジDR内に収める制御が実現されている。
【0067】
以下、輝度レベルの決定方法及び2回の検出処理を含む処理の流れについて、
図13のフローチャートを参照して説明する。
図13は、実施形態で行われる処理の流れを示すフローチャートである。まず、輝度レベルの初期設定が行われる(ステップS11)。以下、xと記載した場合、特筆しない限り、輝度レベルの管理に利用される変数をさす。
【0068】
次に、センサスキャンが行われる(ステップS12)。ステップS12のセンサスキャンの結果、ダイナミックレンジDRの上限(Dmax)に対応する(または超える)信号の出力を生じたセンサ部WAがあるかの判定が行われる(ステップS13)。例えば、ステッS11の処理又は後述するステップS14の処理で設定された輝度レベルに対応する点光源22の発光強度によって輝度レベルTV1に対応する出力が得られる場合には、ダイナミックレンジDRの上限(Dmax)に対応する信号の出力を生じたセンサ部WAがあると判定される。ここで、ステップS13でダイナミックレンジDRの上限(Dmax)に対応する信号の出力を生じたセンサ部WAがないと判定された場合(ステップS13;No)、輝度レベルを上げる処理が行われる(ステップS14)。すなわち、センサスキャンにおける点光源22の発光強度をより強める処理が行われる。
図13に示すステップS14の記載における「x=x+h」は、xの値がステップS14の処理前の値(x)から、hだけ大きくなるよう更新されることを示す(x+h)。ステップS14の処理後、ステップS12の処理へ移行する。
【0069】
ステップS13でダイナミックレンジDRの上限(Dmax)に対応する(または超える)信号の出力を生じたセンサ部WAがあると判定された場合(ステップS13;Yes)、最新のスキャンデータが第1期間F1のスキャンデータとされてよい。ここでいうスキャンデータとは、センサスキャンの結果として生じる複数のPD82からの出力に対応してAFE31から得られるデータをさす。
図6を例として説明すると、第1期間F1のグラフにおける実線曲線W1と、破線曲線WMと、によって形成される正弦曲線状の分布で表される信号に対応したデータが、最新のスキャンデータ、すなわち、第1期間F1のスキャンデータとみなされる。
【0070】
また、ステップS13でダイナミックレンジDRの上限(Dmax)に対応する(または超える)信号の出力を生じたセンサ部WAがあると判定された場合(ステップS13;Yes)、以後の処理のため、信号レベルシフト量の管理に利用される変数(a)が所定の初期値(z)で設定される(ステップS15)。また、2回目の検出処理FBで採用される輝度レベルの導出に利用される変数(Rawdata)が設定される(ステップS16)。ステップS15の処理とステップS16の処理とは順不同である。
【0071】
ステップS16の処理によって設定される変数(Rawdata)の初期値は、ステップS16の処理の時点での最新のスキャンデータが示す、センサ部WAのダイナミックレンジ(b)である。より詳細に補足すると、bは、後述するステップS17の処理による信号レベルのシフト処理を経ていない状態での信号レベルである。すなわち、bは、第1期間F1のスキャンデータとして採用可能なスキャンデータを得た時点でのダイナミックレンジDRに対応し、当該時点からバイアス電流の変更と初期電位の変更のいずれも経ていないダイナミックレンジDRに対応する。後述するステップS22の式(1)に含まれるbも、ここで説明したbと同一である。
【0072】
ステップS16の処理後、信号レベルのシフト処理が行われる(ステップS17)。ステップS17の処理では、
図8を参照して説明したように、バイアス電流が変更されるか、又は、
図9を参照して説明したように、初期電位が変更される。無論、バイアス電流の変更と初期電位の変更との両方が行われてもよい。実施形態では、ステップS17の処理が1回行われることで適用される信号強度の変更量は、一定の変更量(例えば、z)であるが、ステップS17の処理が繰り返される回数に応じて変更量が減少してもよい。ここで一定の変更量とされたzは、ステップS15の処理で設定された変数(a)の初期値として代入された値と同一である。
【0073】
ステップS17の処理後、センサスキャンが行われる(ステップS18)。ステップS17のセンサスキャンの結果、ダイナミックレンジDRの上限(Dmax)に対応する信号の出力を生じたセンサ部WAがあるかの判定が行われる(ステップS19)。
【0074】
ステップS19でダイナミックレンジDRの上限(Dmax)に対応する信号の出力を生じたセンサ部WAがあると判定された場合(ステップS19;Yes)、ステップS16の処理で設定された変数(Rawdata)の値が更新される(ステップS20)。
図13に示すステップS20の記載における「Rawdata=Rawdata+a」は、当該変数(Rawdata)の値がステップS14の処理前の値からaだけシフトするよう更新されることを示す(Rawdata+a)。すなわち、当該変数(Rawdata)には、ステップS17の処理によるダイナミックレンジDRのシフトの度合いが反映される。
【0075】
ステップS20の処理後、ステップS15の処理で設定された変数(a)の値が更新される(ステップS21)。
図13に示すステップS21の記載における「a=a+h」は、aの値がステップS21の処理前の値からzだけ大きくなるよう更新されることを示す(a+z)。このzは、ステップS15の処理で設定された変数(a)の初期値として代入され、ステップS17の処理で一定の変更量とされたzの値と同一である。ステップS21の処理後、ステップS17の処理へ移行する。
【0076】
ステップS19でダイナミックレンジDRの上限(Dmax)に対応する信号の出力を生じたセンサ部WAがないと判定された場合(ステップS19;No)、その時点での最新のスキャンデータ(Rawdata)が第2期間F2のスキャンデータとされてよい。
従って、この時点で、第1期間F1のスキャンデータと第2期間F2のスキャンデータとの合成による合成信号WS(
図7参照)が得られる。
【0077】
また、ステップS18の処理がn回行われることで得られたスキャンデータをraw(n)とすると、ステップS16の処理で設定された変数(Rawdata)が、以下の式(1)に従って更新される(ステップS22)。以下の式(1)における「Max(raw(n)-(b-a),0)」の記載は、bからaの値を差し引いた値(b-a)を、「raw(n)」から差し引いた値が0を超える場合にはその値が反映され、そうでない場合には0が反映されることを示す。ステップS22の処理を経た後のRawdataは、当該変数(Rawdata)の値がステップS22の処理前の値から「Max(raw(n)-(b-a),0)」だけシフトするよう更新される。
Rawdata=Rawdata+Max(raw(n)-(b-a),0)…(1)
【0078】
ステップS22の処理後、2回目の検出処理FBにおける輝度レベルBL2を設定するため、以下の式(2)による演算処理が行われる(ステップS23)。式(2)におけるyは、後述する目標値である。式(2)におけるRawdataは、式(1)の左辺である。
BL2=x×y/Rawdata…(2)
【0079】
目標値(y)は、
図11及び
図12を参照して説明したピークTV2と上限Dmaxとの関係を成立させるよう予め定められる。具体例を挙げると、目標値(y)は、上限Dmaxを100%とし、下限Dminを0%とした場合の90%程度に対応する値として設定されるが、これに限られるものでなく、上限Dmaxと下限Dminとの間で適宜適当に設定されてよい。
【0080】
ステップS23の処理後、ステップS23の処理で決定された輝度レベルBL2と、デフォルトのバイアス電流及びリセット電位設定と、の組み合わせで2回目の検出処理FBのためのセンサスキャンが行われる(ステップS24)。すなわち、2回目の検出処理FBでも、1回目の検出処理FAと同様、PD82が全く光を検出しない場合の信号強度がダイナミックレンジDRの下限(Dmin)を上回るよう、予め信号強度が設定される。より具体的に説明すると、ステップS17の処理が行われることでいったんPD82が全く光を検出しない場合の信号強度がダイナミックレンジDRの下限(Dmin)を下回る状態になりうるが、ステップS24の時点では、ステップS17の処理が行われたことによる影響が解消される。そのうえで、2回目の検出処理FBでは、1回目の検出処理FAの輝度レベルよりも低い輝度レベル(BL2)で検出処理が行われる。
【0081】
なお、
図13を参照して説明したフローチャートに従った処理の主体は、例えばホスト30であるが、係る処理のうち一部又は全部を担う回路等を他の構成(例えば、検出回路15等)に設けてもよい。
【0082】
以上、実施形態によれば、光を検出して検出された光の度合いに応じた出力を生じるセンサ部WAが二次元的に複数配置された検出領域SAを有するセンサパネル10と、検出領域SAに対応して設けられた発光領域LAに配置された複数の点光源22を有する光源部20と、を備え、点光源22を点灯させて複数のセンサ部WAからの出力を得る1回目の検出処理FAと、1回目の検出処理FAとは異なる輝度で点光源22を点灯させて複数のセンサ部WAからの出力を得る2回目の検出処理FBと、が生じ、2回目の検出処理FBにおける点光源の輝度は、1回目の検出処理FAにおける点光源22の輝度と複数のセンサ部WAからの出力との関係に基づく。
【0083】
すなわち、1回目の検出処理FAにおける点光源22の輝度によってもたらされる、複数のセンサ部WAからの出力が当該出力の入力対象(例えば、検出回路15)にどのように扱われるか(例えば、上限Dmax以上か否か)が、2回目の検出処理FBに反映される。従って、1回目の検出処理FAにおける点光源22の輝度とセンサ部WAからの出力との対応関係に基づいた調節(例えば、
図13を参照して説明したステップS20からステップS22の処理)を行うことで、2回目の検出処理FBを、被検出対象を通る光の明暗の範囲を検出装置における検出の明暗のダイナミックレンジ内により容易に収められる。
【0084】
また、複数のセンサ部WAが、前記センサ部の出力を得る検出回路15と接続され、センサ部WAが、PD82を有し、PD82が、アノードに基準電位VCOMが与えられ、カソードにリセット電位Vresetが与えられ、2回目の検出処理FBにおける複数のセンサ部WAの出力を検出回路15で認識可能な入力の下限(Dmin)と上限(Dmax)との範囲内にするために1回目の検出処理FAにおける点光源22の輝度を決定する処理が、基準電位VCOM及びリセット電位Vresetの両方を変更する処理を含むことで、複数のセンサ部WAからの出力が入力される検出回路15のダイナミックレンジDR内に複数のセンサ部WAからの出力を収めるための処理(例えば、
図13を参照して説明したフローチャートの流れに従う処理)を行える。
【0085】
また、複数のセンサ部WAが、前記センサ部の出力を得る検出回路15と接続され、センサ部WAが、PD82を有し、PD82が、アノードに基準電位VCOMが与えられ、カソードにリセット電位Vresetが与えられ、センサ部WAと検出回路15との間に電気抵抗(電気抵抗ER)として機能する構成(信号線7)が介在し、当該電気抵抗と検出回路15との接続経路にバイアス電流を与える電流源32が接続され、2回目の検出処理FBにおける複数のセンサ部WAの出力を検出回路15で認識可能な入力の下限(Dmin)と上限(Dmax)との範囲内にするために1回目の検出処理FAにおける点光源22の輝度を決定する処理が、当該バイアス電流を変更する処理を含むことで、複数のセンサ部WAからの出力が入力される検出回路15のダイナミックレンジDR内に複数のセンサ部WAからの出力を収めるための処理(例えば、
図13を参照して説明したフローチャートの流れに従う処理)を行える。
【0086】
また、複数のセンサ部WAが、センサ部WAの出力を得る検出回路15と接続され、2回目の検出処理FBにおける点光源22の輝度が、1回目の検出処理FAにおける複数のセンサ部WAの出力を検出回路15で認識可能な入力の上限(Dmax)以上に状態にした場合と、複数のセンサ部WAの出力を当該上限未満にした場合と、の間のシフト量(例えば、変数aの値が示すシフト量)が反映された出力(例えば、ステップS23の処理で算出された輝度レべルBL2の値が示す出力)に基づいて設定されることで、2回目の検出処理FBを、被検出対象を通る光の明暗の範囲を検出装置における検出の明暗のダイナミックレンジ内により確実に収められる。
【0087】
また、1回目の検出処理FAは、複数のセンサ部WAの出力を検出回路15で認識可能な入力の上限(Dmax)以上の状態にした状態の第1期間F1と、複数のセンサ部WAの出力を検出回路15で認識可能な入力の上限(Dmax)未満にした状態の第2期間F2と、を含み、第1期間F1におけるセンサ部WAの出力と第2期間F2におけるセンサ部WAの出力とが合成されることで、ダイナミックレンジDRを上回る分解能でのセンシングを実現できる。
【0088】
また、1回目の検出処理FAにおいて、第2期間F2の前に複数のセンサ部WAの出力が検出回路15で認識可能な入力の上限(Dmax)以上でない場合、
図13に示すステップS14の処理で説明したように、複数のセンサ部WAの出力が当該上限以上になるように点光源22の輝度を上げることで、より確実に第1期間F1において複数のセンサ部WAの出力を当該上限以上にできる。
【0089】
また、第1期間F1におけるセンサ部WAの出力である第1出力(例えば、第1信号P1)と、第2期間F2におけるセンサ部WAの出力である第2出力(例えば、第2信号P2)と、の重複部分(例えば、重複レンジDiの範囲内)を当該第1出力又は当該第2出力から除かれて合成されることで、第1期間F1と第2期間F2の2回のセンシングを通じて得られたセンサ出力を、センサ部WAに設けられたPD82のポテンシャルを十分に活用したセンシングの結果を示す出力として採用できる。
【0090】
また、複数のセンサ部WAがマトリクス状に配置され、複数のセンサ部WAの各々は、センサ部WAに出力を生じさせる走査信号を伝送するための走査線及びセンサ部WAからの出力を伝送する信号線と接続されていることで、複数のセンサ部WAをより効率的に配置できる。
【0091】
また、点光源22からセンサ部WAに到達する光の進路を限定する射線限定部材50を備え、複数のセンサ部WAが配置されている検出領域SAを有するセンサパネル10と、点光源22と、が培地(例えば、被検出体SUB)を挟んで対向する場合に射線限定部材50が当該培地とセンサパネル10との間に配置されることで、点光源22から発せられて当該培地を透過する光を検出領域SAで検出できる。すなわち、当該培地の状態をセンシングできる。
【0092】
なお、本実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書記載から明らかなもの、又は当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本開示によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0093】
1 検出装置
6 走査線
7 信号線
10 センサパネル
15 検出回路
22 点光源
31 AFE
32 電流源
50 射線限定部材
82 フォトダイオード
F1 第1期間
F2 第2期間
VReset リセット電位
VCOM 基準電位
WA センサ部