(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009236
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】乗り物用シートのアームレスト構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/75 20180101AFI20250110BHJP
B60N 2/22 20060101ALI20250110BHJP
A47C 7/54 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B60N2/75
B60N2/22
A47C7/54 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112098
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】521452902
【氏名又は名称】アディエント ユーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】北河 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳一
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B087DC03
(57)【要約】
【課題】アームレストの角度が調整可能で、その角度がシートバックのリクライニング角度によらず維持される乗り物用シートのアームレスト構造を提供する。
【解決手段】乗り物用シートのアームレスト構造(AK)は、シートクッション(91)とシートクッション(91)に対してリクライニング動作が可能なシートバック(92)とシートバック(92)に取り付けられたアームレスト(93)とを有する乗り物用シート(ST)に備えられ、アームレスト(93)に付与されたトルクが所定値を超えるときに軸線(CL3)まわりの回動を許容してシートクッション(91)に対するアームレスト(93)の角度を調整可能とし、トルクが所定値を越えないときに回動を禁止するブレーキ部(AKA)と、シートバック(92)のリクライニング動作におけるリクライニング角度によらずアームレスト(93)のシートクッション(91)に対する角度を維持する平行リンク部(AKB)と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、前記シートクッションに対してリクライニング動作が可能なシートバックと、前記シートバックに取り付けられたアームレストとを有する乗り物用シートに備えられ、
前記アームレストに付与されたトルクが所定値を超えるときに前記シートバックの幅方向に延びる軸線まわりの前記アームレストの回動を許容して前記シートクッションに対する前記アームレストの角度を調整可能とし、前記トルクが前記所定値を越えないときに前記軸線まわりの前記アームレストの回動を禁止するブレーキ部と、
前記シートバックの前記リクライニング動作におけるリクライニング角度によらず前記アームレストの前記シートクッションに対する前記角度を維持する平行リンク部と、
を備えたアームレスト構造。
【請求項2】
前記アームレストは腕状の箱構造を有し、
前記シートバックは、内部にシートバックフレームを有し、
前記平行リンク部は前記シートバックフレームに回動可能に連結されたブラケットを有し、
前記ブレーキ部は、前記アームレストの内部に収容され、前記ブラケットに対し回動不能に固定された固定部と、前記アームレストに連結され前記固定部に対して回動可能な回動部と、前記固定部と前記回動部との間に介在して前記固定部に対し前記回動部が回動するときに回動抵抗力を生じさせる介在部と、を備えている請求項1記載のアームレスト構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗り物用シートのアームレスト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、自動車等に搭載されるリクライニング可能なシートにおいて、アームレストが、シートバックの傾動角度に拘わらずほぼ水平に維持されるアームレスト構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたアームレスト構造は、アームレストがほぼ水平に維持されるので、乗員の好みの角度に調整することができない。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、アームレストの角度が調整可能であり、その調整された角度がシートバックのリクライニング角度によらず維持される、乗り物用シートのアームレスト構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1) シートクッションと、前記シートクッションに対してリクライニング動作が可能なシートバックと、前記シートバックに取り付けられたアームレストとを有する乗り物用シートに備えられ、
前記アームレストに付与されたトルクが所定値を超えるときに前記シートバックの幅方向に延びる軸線まわりの前記アームレストの回動を許容して前記シートクッションに対する前記アームレストの角度を調整可能とし、前記トルクが前記所定値を越えないときに前記軸線まわりの前記アームレストの回動を禁止するブレーキ部と、
前記シートクッションの前記リクライニング動作におけるリクライニング角度によらず前記アームレストの前記シートクッションに対する前記角度を維持する平行リンク部と、
を備えたアームレスト構造である。
2) 前記アームレストは腕状の箱構造を有し、
前記シートバックは、内部にシートバックフレームを有し、
前記平行リンク部は前記シートバックフレームに回動可能に連結されたブラケットを有し、
前記ブレーキ部は、前記アームレストの内部に収容され、前記ブラケットに対し回動不能に固定された固定部と、前記アームレストに連結され前記固定部に対して回動可能な回動部と、前記固定部と前記回動部との間に介在して前記固定部に対し前記回動部が回動するときに回動抵抗力を生じさせる介在部と、を備えている1)に記載のアームレスト構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アームレストの角度が調整可能であり、その調整された角度がシートバックのリクライニング角度によらず維持される、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の乗り物用シートのアームレスト構造の一態様が備えるアームレスト93を搭載した乗り物用シートSTの左側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の乗り物用シートのアームレスト構造の一態様であるアームレスト構造AKを示す左側面図である。
【
図3】
図3は、アームレスト構造AKが備えるアームレスト93の外観を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、アームレスト構造AKにおけるブレーキ部AKAを示す部分断面の組み立て図である。
【
図5】
図5は、ブレーキ部AKAが備えるスリップ筒77を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、ブレーキ部AKAが備えるコイルスプリング76を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、ブレーキ部AKAが備える押さえ板78を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、ブレーキ部AKAが備えるストッパブラケット75を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の乗り物用シートのアームレスト構造の一態様を、アームレスト構造AKによって説明する。説明における上下前後の各方向は、
図1に示される矢印で規定する。左方向は
図1の紙面手前方であり右方向は
図1の紙面奥方である。また、左右方向を幅方向とも称する。
【0010】
まず、アームレスト構造AKを搭載した乗り物用シートSTの構成の概要を、
図1を参照して説明する。
図1は、乗り物用シートSTの左側面図である。
【0011】
図1に示されるように、乗り物用シートST(以下、シートST)は、シートクッション91,シートバック92,及びアームレスト93を備えている。シートSTは、脚部911を介して乗り物の床FLに取り付けられている。
【0012】
シートクッション91は、内部に骨格となるクッションフレーム912を有する。クッションフレーム912と脚部911とは、連結されて一体化している。
【0013】
シートバック92は、シートクッション91の後部の左右それぞれに設けられたリクライニング部RKにおいて、リクライニング可能に連結されている。具体的には、シートバック92は、リクライニング部RKに設定された軸線CL1まわりに矢印DR1で示されるように回動可能とされ、不図示のロック機構により任意の角度で固定され、不図示のロック解除レバーの操作により固定が解除されるようになっている。
【0014】
アームレスト93は、シートバック92の左右側面それぞれに、左右対称となる形状及び構造で取り付けられている。具体的には、アームレスト93は、シートバック92の内部に収容された骨格となるシートバックフレーム921に対し、ブレーキ部AKAを介して連結されている。より詳しくは、アームレスト93は、ブレーキ部AKAによって、乗員の手の力によって根元の軸線CL3まわりに矢印DR2で示されるように回動して、軸線CL3まわりの角度を調整可能とされている。
図1に示されるように、アームレスト93の角度θは、軸線CL3を通り、アームレスト93の先端部位の上下方向中央位置を通る線分LN93と、シートクッション91を代表する線分LN91に対する角度θとして説明する。線分LN91は、シートクッション91が接地される床FLの角度と置き換えてもよい。
以下の説明は、シートバック92の左側面に取り付けられたアームレスト93を代表として説明する。
【0015】
アームレスト93は、外部からの所定値を超える力が付与されない限り、調整した角度で維持される。この維持される姿勢を以下、維持姿勢と称する。シートSTにおいて、アームレスト93の維持姿勢は、シートバック92のリクライニング角度によらず同じとなる。例えば、シートバック92の
図1の実線で示された第1リクライニング角度におけるアームレスト93の維持姿勢Aは、シートバック92を倒して二点鎖線で示される第2リクライニング角度にしたときのアームレスト93の維持姿勢Bと実質的に同じである。
【0016】
図2に示されるように、シートSTは、アームレスト構造AKを有する。アームレスト構造AKは、平行リンク部AKBと、平行リンク部AKBに連結されるブレーキ部AKAとを有する。
図2において、ブレーキ部AKAは一点鎖線で示されている。
【0017】
平行リンク部AKBは、リクライニング部RKのリクライニングフレーム11と、リンクバー12と、ブラケット51とを有する。リクライニングフレーム11は、クッションフレーム912にボルトとナットとの組である固定具Nによって固定されている。リクライニングフレーム11には、シートバックフレーム921の下端を、左右方向に延びる軸線CL1まわりに回動可能に連結した連結部P1と、連結部P1の後方の少し下方位置に設けられ、リンクバー12の下端部が左右方向に延びる軸線CL2まわりに回動可能に連結された連結部P2とを有する。ブレーキ部AKAは、リクライニングフレーム11の左面に連結固定される。
【0018】
シートバックフレーム921の長手方向(
図2の上下方向)の中央付近の側面には、ブラケット51が、左右に延びる軸線CL3まわりに回動可能に連結された連結部P3が設けられている。ブラケット51は、周縁の一部が径方向に張り出した略卵形状を有する。張り出した部分の先端には、リンクバー12の上端部が、左右方向に延びる軸線CL4まわりに回動可能に連結された連結部P4が設けられている。
【0019】
連結部P1と連結部P2とを繋ぐ線分の傾き及び距離と、連結部P3と連結部P4とを繋ぐ線分の傾き及び距離とは概ね等しい。すなわち、連結部P1と連結部P2とを繋ぐリクライニングフレーム11,連結部P2と連結部P3とを繋ぐリンクバー12,連結部P3と連結部P4とを繋ぐブラケット51,及び連結部P3と連結部P1とを繋ぐシートバックフレーム921によって、いわゆる平行リンクが構成されている。
【0020】
これにより、シートバック92のシートバックフレーム921を軸線CL1まわりに回動させるリクライニング動作を実行しても、ブラケット51の軸線CL3まわりの回動角度(姿勢)は実質的に変わることはなく、平行移動する。
【0021】
アームレスト93は、このブラケット51に対しブレーキ部AKAを介し、軸線CL3まわりに回動可能に連結されている。次に、
図3~
図8を参照してブレーキ部AKAを有するアームレスト93について説明する。
図3は、アームレスト構造AKが備えるアームレスト93の外観を示す斜視図である。
図4は、アームレスト構造AKにおけるブレーキ部AKAを示す部分断面の組み立て図である。
図5は、ブレーキ部AKAが備えるスリップ筒77を示す斜視図である。
図6は、ブレーキ部AKAが備えるコイルスプリング76を示す斜視図である。
図7は、ブレーキ部AKAが備える押さえ板78を示す斜視図である。
図8は、ブレーキ部AKAが備えるストッパブラケット75を示す斜視図である。
【0022】
図3及び
図4に示されるように、アームレスト93は、シートバック92に対し外側となり右方(内方)が開放された箱状の外ケース71と、シートバック92側となり左方(外方)が開放された箱状の内ケース72とが組み合わされて、腕状に細長い概ね閉じた箱構造を有する。外ケース71及び内ケース72は、例えばポリプロピレン樹脂で形成されている。アームレスト93の根元となる側の端部には、左右方向に延びる軸線CL7を中心とする貫通孔71aが形成されている。
【0023】
図4は、アームレスト93の部分断面図である。軸線CL7を連結部P3の軸線CL3と一致させた状態で、アームレスト93はブラケット51に固定される。ブラケット51は、シートバックフレーム921の連結座922に、軸線CL3回りに回動可能に連結されている。
【0024】
ブラケット51の左面には、固定されるアームレスト93の回り止めのため、3本のピンが突出形成されている。ブラケット51に対しては、後端部の連結部P4において、既述のようにリンクバー12がボルトN3とナットN4との螺着によって回動可能に連結されている。
【0025】
ブレーキ部AKAは、アームレスト93の内部に概ね収容されている。ブレーキ部AKAは、ベース板73,ベースブラケット74,ストッパブラケット75,コイルスプリング76,スリップ筒77,及び押さえ板78が組み合わされて構成されている。ブレーキ部AKAを構成する部材は、機能的に、固定部B1と回動部B2と介在部B3とに分類される。
固定部B1はブラケット51に固定される側の部材であり、回動部B2は固定部B1に対し回動する側の部材であり、介在部は、固定部B1と回動部B2との間に介在する部材である。
固定部B1には、ベース板73,スリップ筒77,及び押さえ板78が含まれる。回動部B2には、ベースブラケット74及びストッパブラケット75が含まれる。外ケース71及び内ケース72は回動部B2に含まれる。介在部B3は、コイルスプリング76が該当する。
【0026】
まず、固定部B1を構成するベース板73及びスリップ筒77について説明する。
図4において、ベース板73は略円板状の部材であり、軸線CL3を中心とする貫通孔73aと、ブラケット51の三つのピン511に対応した孔を有する。貫通孔73aには、ボルトN1が挿通される。ブラケット51及びシートバックフレーム921には、軸線CL3を中心とする貫通孔(不図示)が設けられており、ボルトN1は、ブラケット51の貫通孔に挿通されると共に右側からナットN2が螺着され締め付けられる。これにより、ベース板73は、ブラケット51のピン511が係合して、ブラケット51に対し回動不能にまわり止めされた状態でブラケット51と締結される。すなわち、ベース板73は、ブラケット51と一体に、シートバックフレーム921に対して回動可能に支持される。
【0027】
ベース板73の左面にはスリップ筒77が同芯で固定されている。スリップ筒77は、
図5に示されるように、外径D77の円筒状の基部771と、基部771の右側に連接された、基部771よりも小径の小径部772とを有する。基部771の左縁部には、周方向に離隔して左方へ突出する三つの突起部774が形成されている。
図4に戻り、基部771の外側にはコイルスプリング76が嵌められている。
【0028】
介在部B3であるコイルスプリング76は、
図6に示されるように、ばね線材によって形成され、両端部が折り曲げられてそれぞれ径方向の外方に延びる第1腕部761及び第2腕部762とされている。外力が付与されていない自然状態で、第1腕部761と第2腕部762は概ね同じ方向に延びるようになっている。コイルスプリング76は、スリップ筒77に対し第1腕部761が右方(内側)となる姿勢で嵌められている。コイルスプリング76の自然状態での内径d76は、スリップ筒77の基部771の外径D77(
図5参照)よりも大きい。
【0029】
次に、回動部B2について説明する。
図4において、内ケース72は、軸線CL3を中心としベース板73の外径よりも大きい内径の円形の開口部72aを有する。また、内ケース72は、開口部72aの前方に貫通孔を有し、その縁部は短い環状で左方に突出するよう形成された突き出し部72bとされている。
【0030】
ベースブラケット74は、内ケース72の内側に位置決めされて収容される板金部材である。すなわち、ベースブラケット74は、
図4に示されるように、スリップ筒77の小径部772の外周面をガイドする円形の開口部74aと、内ケース72の突き出し部82bの外周面に係合する内周面を有する係合突き出し部74bとを有する。また、ベースブラケット74は、内ケース72の上下の内壁に沿って立ち上げられた一対の側壁(不図示)を有する。すなわち、ベースブラケット74は内ケース72に対し、係合突き出し部74b及び一対の側壁によって位置決めされ、開口部74aによって固定部B1のスリップ筒77に対しても径方向及び左右方向に位置決めされる。
【0031】
ストッパブラケット75は、ベースブラケット74の左側に隣接し内ケース72の内側に位置決めされて収容される板金部材である。すなわち、ストッパブラケット75は、
図4及び
図8に示されるように、基板状の基部750と、係合開口部75bと、起立部751と、一対の側壁75c,75dとを有する。
【0032】
基部750は、ベースブラケット74の左面に沿って配置され、係合開口部75bが係合突き出し部74bの外側に嵌合すると共に、一対の側壁75c,75dが内ケース72の上下の内壁近傍に位置することで、内ケース72の内側に位置決めされて収容される。
【0033】
ストッパブラケット75は、内ケース72の内側に位置決め収容された状態で、起立部751が、スリップ筒77の基部771に対し径方向外側で対向するように位置している。起立部751には、先端縁から右方に向け切り込まれた切込み部751aが形成されている。切込み部751aの幅は、コイルスプリング76の線材の外径よりもわずかに大きくなっている。ブレーキ部AKAの組み立てにおいて、
図4に示されるように、切込み部751aにはコイルスプリング76の第1腕部761が進入係合されている。
【0034】
図3及び
図4に示されるように、外ケース71は、貫通孔71aから先端側に隔たった位置に、円形に窪んだ押さえ凹部71bを有する。押さえ凹部71bの底壁71b1は、外ケース71と内ケース72とをブレーキ部AKAを収容して組付けた状態で、ベースブラケット74の係合突き出し部74bの先端に近接した位置にある。すなわち、底壁71b1は、ベースブラケット74及びストッパブラケット75が内ケース72の突き出し部72bから外れるのを防止している。
【0035】
押さえ板78は、
図7に示されるように、薄板の環状部品であって、円形の開口部78bを有する環状の基部780を有する。基部780には、弧状のスリット78aが周方向に離隔して三か所形成されている。スリット78aは、スリップ筒77の三つの突起部774が進入係合可能な形状及び配置で形成されている。基部780は、縁部から基部780の表面に直交する方向(軸方向)に延出する係止腕781を有する。
【0036】
押さえ板78は、スリップ筒77に対し、その突起部774をスリット78aに係合させ、係止腕781によってコイルスプリング76の第2腕部762を、自然状態の周方向位置からコイルスプリング76を締め付ける方向に概ね90°回動させた状態(
図6参照)で固定されている。
【0037】
第2腕部762を、
図6に示される締め付け方向に回動させることで、コイルスプリング76の内径d76は小さくなり、スリップ筒77の基部771の外周面を締め付ける状態となる。そのため、この締め付ける状態で、例えば第1腕部761を回動させる場合には、コイルスプリング76と基部771の外周面との間に生じる摩擦力に抗するトルクを付与する必要がある。
【0038】
すなわち、アームレスト構造AKにおける回動部B2は、固定部B1に対し、介在部B3で生じる回動抵抗力に抗する所定値を超えるトルクを外部から付与することで回動可能である。また、回動部B2が所望の回動位置になったときに外部からの付与トルクを解除する、或いは付与トルクを所定値以下にすると、回動部B2は、介在部B3で生じる回動抵抗力によって回動が禁止されてその回動位置で維持される。介在部B3で生じる回動抵抗力に抗するトルクは、アームレスト93に対し人の手により付与できる程度に調整されている。
【0039】
このように、シートSTは、アームレスト構造AKを備えることで、乗り物の乗員がアームレスト93に対し意図的に回動させようとする程度の力を手などで付与することで、そのアームレスト93は適度な抵抗力を生じながら回動する。また、アームレスト93は、乗員が力の付与を止めた時点からその回動位置で維持される。
【0040】
また、アームレスト構造AKは、平行リンク部AKBを有しているため、アームレストベース5のブラケット51の回動姿勢が、シートバック92のリクライニング角度によらず実質的に同じとなる。ブラケット51には、ブレーキ部AKAの固定部B1が一体的に固定されている。これにより、アームレスト93の回動姿勢(回動位置)を任意の姿勢(位置)に調整した場合、調整後の回動姿勢(回動位置)は、シートバック92のリクライニング角度によらず実質的に維持される。
【0041】
以上詳述したように、乗り物用シートSTのアームレスト構造AKは、アームレスト93の角度を任意の角度に調整可能であり、シートバック92のリクライニング位置によらず、アームレスト93が調整された任意の角度で維持される。
【0042】
本発明は、以上説明した実施形態及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。
【0043】
アームレスト93の調整における回動を規制する力を発揮するブレーキ部AKAの構造として、コイルスプリング76とコイルスプリング76が外嵌されるスリップ筒77の外周面との間の摩擦力を利用する構造を説明したが、この構造に限定されない。ブレーキ部AKAは、アームレスト93に付与される外力が所定値以下の場合に、アームレスト93の回動を規制し、所定値を越える場合に、アームレスト93の回動を許容するものであればよい。
【0044】
乗り物は、自動車、鉄道などの車両のみならず、船舶、航空機などの飛行体などを含み、人を乗せて移動する移動体を意味する。
また、上述の説明における上下左右前後の各方向は、説明の便宜のため規定した方向であり、シートST及びアームレスト構造AKの使用姿勢などを限定するものではない。
【符号の説明】
【0045】
11 リクライニングフレーム
12 リンクバー
5 アームレストベース
51 ブラケット
511 ピン
71 外ケース
71a 貫通孔
71b 押さえ凹部
71b1 底壁
72 内ケース
72a 開口部
72b 突き出し部
73 ベース板
73a 貫通孔
74 ベースブラケット
74a 開口部
74b 係合突き出し部
75 ストッパブラケット
750 基部
751 起立部
751a 切込み部
75b 係合開口部
75c,75d 側壁
76 コイルスプリング
761 第1腕部
762 第2腕部
77 スリップ筒
771 基部
772 小径部
774 突起部
78 押さえ板
780 基部
781 係止腕
78a スリット
78b 開口部
91 シートクッション
911 脚部
912 クッションフレーム
92 シートバック
921 シートバックフレーム
922 連結座
93 アームレスト
AK アームレスト構造
AKA ブレーキ部
AKB 平行リンク部
B1 固定部
B2 回動部
B3 介在部
CL1,CL2,CL3,CL4,CL7 軸線
d76 内径
D77 外径
FL 床
N 固定具
N1,N3 ボルト
N2,N4 ナット
P1~P4 連結部
RK リクライニング部
ST 乗り物用シート(シート)