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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009239
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】配管装置
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/00 20060101AFI20250110BHJP
   G12B 9/08 20060101ALI20250110BHJP
   F16L 37/53 20060101ALI20250110BHJP
   F16L 37/14 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
F16L55/00 D
G12B9/08 A
F16L37/53
F16L37/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112103
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】岸 誠人
【テーマコード(参考)】
2F078
3J106
【Fターム(参考)】
2F078EA21
2F078EB12
2F078EC02
2F078EC41
3J106AB01
3J106BA02
3J106BB04
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE22
3J106EA03
3J106EB05
3J106EC01
3J106EC07
3J106ED33
3J106EE02
3J106FA20
(57)【要約】
【課題】センサ部材に通電するためのハーネスが捻じれて過大な負荷がかかるのを防止できるとともに、コストを低減できる配管装置を提供する。
【解決手段】配管20と、前記配管に突出形成される筒状のアダプタ2と、前記配管の外側から前記アダプタに挿入されるセンサ部材10と、前記センサ部材がアダプタから抜け出ることを阻止するクリップ部材3と、前記アダプタに挿入された前記センサ部材の軸回りの回転を許容しつつ、360度以上の回転を阻止する回転規制部材8と、を備え、前記回転規制部材は、前記センサ部材と前記クリップ部材の一方に設けられた突起と、前記センサ部材と前記クリップ部材の他方に設けられて、前記センサ部材が所定の回転角度以上回転したときに前記突起に突き当たる回転規制部と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管と、
前記配管に突出形成される筒状のアダプタと、
前記配管の外側から前記アダプタに挿入されるセンサ部材と、
前記センサ部材がアダプタから抜け出ることを阻止するクリップ部材と、
前記アダプタに挿入された前記センサ部材の軸回りの回転を許容しつつ、360度以上の回転を阻止する回転規制部材と、
を備え、
前記回転規制部材は、
前記センサ部材と前記クリップ部材の一方に設けられた突起と、
前記センサ部材と前記クリップ部材の他方に設けられて、前記センサ部材が所定の回転角度以上回転したときに前記突起に突き当たる回転規制部と、
を有する
ことを特徴とする配管装置。
【請求項2】
前記クリップ部材は、相対向して配置される一対の脚部と、前記脚部の基端を接続する接続部とを有し、
前記突起は、一端が前記接続部に接続されて前記脚部の間に配置され、
前記アダプタには、前記アダプタの肉厚を貫通する貫通孔と、前記貫通孔の周方向の両側に位置する横孔が形成され、
前記センサ部材は、係合部を有し、
前記係合部の外周には、周方向に沿うように長溝が形成され、
前記回転規制部は、前記長溝の周方向の両端に形成される端壁からなり、
前記突起は、前記貫通孔に挿通されて、前記突起の先端が前記長溝に挿入され、
一対の前記脚部は、前記係合部を径方向の両側から挟むように前記横孔に嵌る
請求項1に記載の配管装置。
【請求項3】
一対の前記脚部の先端には、前記横孔の縁に引っ掛かるフックが形成されている
請求項2に記載の配管装置。
【請求項4】
前記脚部には、内側へ突出するガイド部が設けられ、
前記ガイド部の先端は、前記係合部の外周に沿うように円弧状に湾曲する
請求項2に記載の配管装置。
【請求項5】
前記センサ部材は、係合部を有し、
前記突起は、前記係合部の外周に突出形成され、
前記クリップ部材は、相対向して配置される一対の脚部と、前記脚部の基端を接続する接続部と、を有し、
前記アダプタには、前記アダプタの肉厚を貫通する一対の横孔が形成され、
前記脚部の一方又は両方の内側には、角部が形成されて、
前記回転規制部は、前記角部からなり、
一対の前記脚部は、前記係合部を径方向の両側から挟むように前記横孔に嵌る
請求項1に記載の配管装置。
【請求項6】
前記アダプタは、前記横孔の軸方向の幅を狭める方向へ突出する突部を有し、
前記クリップ部材は、基端が前記接続部に接続されて先端側が一対の前記脚部の外側へ延びる一対のサブ脚部を有し、
前記サブ脚部の先端には、前記突部の角に引っ掛かるフックが形成されている
請求項5に記載の配管装置。
【請求項7】
前記係合部の外周形状は、回転対称となる
請求項2又は請求項3に記載の配管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ部材が取り付けられた配管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示の配管装置は、エンジンの冷却回路を構成する配管と、配管内の冷却液の温度を検知する温度センサとを備える。配管には筒状のアダプタが設けられ、このアダプタに温度センサがクリップ部材で留められている。クリップ部材は、例えば、特許文献2に開示されるように、線材を折り曲げて形成される。また、特許文献3には、燃料の性状を検出する燃料性状センサを留める樹脂製のクリップ部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011―179480号公報
【特許文献2】特開2010―048142号公報
【特許文献3】特開2012―202513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温度センサ、燃料性状センサ等のセンサ部材にはコネクタが設けられ、このコネクタに通電用のハーネスが接続される。特許文献1及び特許文献2に記載のように、線材を折り曲げて形成されたクリップ部材でセンサ部材を留めた場合、車両の振動等でセンサが回転し、この回転回数が多くなるとハーネスが捻じれて過大な負荷がかかる虞がある。
一方、ピン等でセンサ部材の回り止めをすると、搭載する車両のレイアウトに合わせてコネクタの向きを変更したい場合に、コネクタの向きを変更したセンサ部材を作り直す必要があり、コストがかかる。特許文献3のセンサ部材は、クリップ部材によって配管に回り止めされた状態で固定されるので、同様の問題が生じうる。
【0005】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、センサ部材に通電するためのハーネスが捻じれて過大な負荷がかかるのを防止できるとともに、コストを低減できる配管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係る配管装置は、配管と、前記配管に突出形成される筒状のアダプタと、前記配管の外側から前記アダプタに挿入されるセンサ部材と、前記センサ部材がアダプタから抜け出ることを阻止するクリップ部材と、前記アダプタに挿入された前記センサ部材の軸回りの回転を許容しつつ、360度以上の回転を阻止する回転規制部材と、を備え、前記回転規制部材は、前記センサ部材と前記クリップ部材の一方に設けられた突起と、前記センサ部材と前記クリップ部材の他方に設けられて、前記センサ部材が所定の回転角度以上回転したときに前記突起に突き当たる回転規制部と、を有することを特徴とする。
上記構成によれば、センサ部材に通電用のハーネスを接続し、クリップ部材を留めた状態で車体振動等が入力された場合、センサ部材がある程度は回転するものの、360度以上回転することはない。このため、ハーネスが捻じれて過大な負荷がかかるのを防止できる。さらに、車両搭載部品にレイアウト上の誤差が生じても、センサ部材がこれに追従して回転できる。このため、この場合にもハーネスに過大な負荷がかかるのを防止できる。
さらには、車両搭載部品のレイアウトが変更された場合、センサ部材がある程度回転できるので、レイアウトの変更に応じてコネクタの向きを変更したセンサ部材を作り直す必要がない。よって、コストを低減できる。
【0007】
また、前記クリップ部材は、相対向して配置される一対の脚部と、前記脚部の基端を接続する接続部とを有し、前記突起は、一端が前記接続部に接続されて前記脚部の間に配置され、前記アダプタには、前記アダプタの肉厚を貫通する貫通孔と、前記貫通孔の周方向の両側に位置する横孔が形成され、前記センサ部材は、係合部を有し、前記係合部の外周には、周方向に沿うように長溝が形成され、前記回転規制部は、前記長溝の周方向の両端に形成される端壁からなり、前記突起は、前記貫通孔に挿通されて、前記突起の先端が前記長溝に挿入され、一対の前記脚部は、前記係合部を径方向の両側から挟むように前記横孔に嵌ることが望ましい。
上記構成によれば、一対の脚部でセンサ部材の抜止ができる。
また、センサ部材の軸回りの回転は、突起が長溝の周方向の両端に形成された端壁の何れかに当接することにより止まり、長溝の周方向長さの範囲に制限される。つまり、回転規制部としての端壁と、これに当接する突起とで回転規制部材を構成し、センサ部材の軸回りの回転を許容しつつ、360度以上の回転を阻止できる。
【0008】
また、一対の前記脚部の先端には、前記横孔の縁に引っ掛かるフックが形成されていることが望ましい。
当該構成によれば、フックを外さないとクリップ部材をアダプタから引き抜けない。つまり、上記構成によれば、クリップ部材が容易に外れるのを防止でき、ひいては、センサ部材が意図せずアダプタから外れて冷却液が漏れるのを防止できる。
【0009】
また、前記脚部には、内側へ突出するガイド部が設けられ、前記ガイド部の先端は、前記係合部の外周に沿うように円弧状に湾曲することが望ましい。
これにより、ガイド部でセンサ部材の抜止を確実にできる。また、ガイド部の先端とセンサ部材が接触したとしても、センサ部材がガイド部で支えられて回転できる。よって、ガイド部がセンサ部材の回転の妨げにならない。
【0010】
また、前記センサ部材は、係合部を有し、前記突起は、前記係合部の外周に突出形成され、前記クリップ部材は、相対向して配置される一対の脚部と、前記脚部の基端を接続する接続部と、を有し、前記アダプタには、前記アダプタの肉厚を貫通する一対の横孔が形成され、前記脚部の一方又は両方の内側には、角部が形成されて、前記回転規制部は、前記角部からなり、一対の前記脚部は、前記係合部を径方向の両側から挟むように前記横孔に嵌ることが望ましい。
上記構成によれば、一対の脚部でセンサ部材の抜止ができる。
また、センサ部材の軸回りの回転は、突起の何れかが角部に当接することにより止まり、突起の間隔に制限される。つまり、回転規制部としての角部と、これに当接する突起とで回転規制部材を構成し、センサ部材の軸回りの回転を許容しつつ、360度以上の回転を阻止できる。
【0011】
また、前記アダプタは、前記横孔の軸方向の幅を狭める方向へ突出する突部を有し、前記クリップ部材は、基端が前記接続部に接続されて先端側が一対の前記脚部の外側へ延びる一対のサブ脚部を有し、前記サブ脚部の先端には、前記突部の角に引っ掛かるフックが形成されていることが望ましい。
当該構成によれば、フックを外すには、サブ脚部の先端を開く必要があり、フックが車体振動等で外れるのを防止できる。また、フックを外さないとクリップ部材をアダプタから引き抜けないので、上記構成によれば、クリップ部材が容易に外れるのを防止でき、ひいてはセンサ部材が意図せずアダプタから外れて冷却液が漏れるのを防止できる。
【0012】
また、前記係合部の外周形状は、回転対称となることが望ましい。
前記係合部の外周形状が回転対称であれば、車両搭載部品のレイアウトが変更された場合、センサ部材の向きを変えてアダプタに装着できるので、レイアウトの変更に応じてコネクタの向きを変更したセンサ部材を作り直す必要がない。よって、コストをさらに低減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る配管装置によれば、センサ部材に通電するためのハーネスが捻じれて過大な負荷がかかるのを防止できるとともに、コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第一の実施形態に係る配管装置の斜視図である。
図2図2は、図1のアダプタに温度センサを挿入する前の状態を示した分解斜視図である。
図3図3は、図1の温度センサが挿入されたアダプタにクリップを装着する前の状態を示した一部分解斜視図である。
図4図4(a)は図1のクリップの側面図、図4(b)は図4(a)のクリップの平面図、図4(c)は図4(a)のクリップの正面図である。
図5図5(a)は、図1の配管装置のA-A矢視断面図、図5(b)は図5(a)の温度センサが周り止めされた状態を示した断面図である。
図6図6は、第二の実施形態に係る配管装置の斜視図である。
図7図7は、図6の温度センサ、アダプタ、クリップ部材を組み立てた組立体の側面図である。
図8図8は、図6のアダプタに温度センサを挿入する前の状態を示した分解斜視図である。
図9図9は、図6の温度センサが挿入されたアダプタにクリップを装着する前の状態を示した一部分解斜視図である。
図10図10(a)は図6のクリップの側面図、図10(b)は図10(a)のクリップの平面図、図10(c)は図10(a)のクリップの正面図である。
図11図11(a)は、図7の組立体のB-B矢視断面図、図11(b)は、図7の組立体のC-C矢視断面図、図11(c)は図11(b)の温度センサが周り止めされた状態を示した断面図である。
図12図12は、図1のクリップの変形例であり、図12(a)はクリップの側面図、図12(b)は図12(a)のクリップの平面図、図12(c)は図12(a)のクリップの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る配管装置の各実施形態について図面に基づき説明する。各実施形態において、配管装置は、自動車の冷却回路に利用される。冷却回路は、冷却液を循環させることにより、内燃機関(エンジン)、燃料電池、バッテリー等の自動車における発熱装置を冷却する。各実施形態において、同一又は対応する構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する場合がある。
【0016】
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る配管装置1Aの斜視図である。配管装置1Aは、冷却液の配管20と、この配管20に接続されるアダプタ2と、このアダプタ2に挿入される温度センサ10と、この温度センサ10をアダプタ2に留めるクリップ部材3と、温度センサ10の回転を規制する回転規制部材8と、を備える。
【0017】
配管20は、冷却液の流路を構成する。アダプタ2は、配管20から外方へ突出するように形成される。アダプタ2は、配管20と一体形成される。アダプタ2において、配管20に接続される方の端を「基端」、その反対側を「先端」とする。アダプタ2は筒状で、その両端が開口する。アダプタ2の基端側の開口は、配管20内に連通する。アダプタ2の先端側の開口は、外気に開放される。アダプタ2の先端側の開口は、温度センサ10及び後述のシール10f部材により液密に塞がれる。これにより、配管20内の冷却液がアダプタ2から流出するのを防止できる。
尚、アダプタ2は、配管20と別体形成されて、溶接、溶着、螺合等によりに配管20に接合されてもよい。
【0018】
図2は、温度センサ10がアダプタ2に挿入される前の状態を示す斜視図である。アダプタ2は、段差形状を有し、小径部2Aと大径部2Bとを有する。小径部2Aはアダプタ2の基端側に位置し、大径部2Bはアダプタ2の先端側に位置する。大径部2Bの内径及び外径は、小径部2Aの内径及び外径よりも大きい。大径部2Bと小径部2Aの内周側の境界に段差2fが形成される。
【0019】
アダプタ2の中心を通る軸心線に沿う方向を「軸方向」、軸心線に直交する方向を「径方向」、アダプタ2の内周及び外周の円周方向に沿う方向を「周方向」という。大径部2Bの先端部に、貫通孔2aと、二つの横孔2b,2cが周方向に並んで形成される。二つの横孔2b,2cは、貫通孔2aの両側に位置する。貫通孔2aと横孔2b,2cは、それぞれアダプタ2の肉厚を径方向に貫通する。横孔2b,2cは、周方向に長い長孔である。貫通孔2aの中心を通る直線を軸として、各横孔2b,2cの形状は線対称となる。アダプタ2において、貫通孔2aがある側を「正面」、その反対側を「背面」とする。
【0020】
各横孔2b,2cの背面側の縁に、係合部2d,2eが形成される(図5)。係合部2d,2eの形状は、平面視で角状である。この係合部2d,2eにクリップ部材3の後述するフック3b1,3c1が係合する。
【0021】
温度センサ10は、センサ部材であり、配管20内の冷却液の液温を検出する。図2に示すように、温度センサ10は、先端側から感温部10a、本体部10i、フランジ部10b、係合部10d、及びコネクタ10cを有する。本体部10iの外周に環状のシール部材10fが装着される。温度センサ10は、先端側からアダプタ2内に挿入される。温度センサ10がアダプタ2に装着された状態で、感温部10aが冷却液中に浸漬される。シール部材10fは、温度センサ10とアダプタ2との間をシールする。これにより、配管20内の冷却液が外へ漏れない。
【0022】
本体部10iの外径は、感温部10aの外径よりも大きい。フランジ部10bの外径は、本体部10iの外径よりも大きい。温度センサ10がアダプタ2に装着された状態で、フランジ部10bがアダプタ2の段差2fに乗る。係合部10dは、アダプタ2の貫通孔2a及び横孔2b,2cと対応する位置に配置される。コネクタ10cには、通電のためのハーネス(図示せず)が接続される。温度センサ10から出力された信号は、エレクトロニックコントロールユニット(ECU)に出力されて、冷却液の温度に応じた制御がなされる。
【0023】
感温部10aの中心を通る直線を温度センサ10の「中心線」、感温部10aの外周の円周方向に沿う方向を温度センサ10の「周方向」という。温度センサ10は、アダプタ2に装着された状態で、温度センサ10の中心線がアダプタ2の中心と略重なるように調心される。係合部10dの外周には、一対の長溝10e1,10e2が周方向に並んで形成される。長溝10e1,10e2の形状は円弧状で、温度センサ10の周方向に沿って延びる。温度センサ10の中心線を軸として、係合部10dの外周形状は回転対称で2回対称となる。長溝10e1,10e2の周方向の両端に、端壁10g、10hが形成される。
【0024】
係合部10dにおいて、長溝10e1,10e2が形成されていない部分が突部10d1,10d2である。端壁10g、10hは、その突部10d1,10d2の両端に形成されているともいえる。つまり、突部10d1,10d2は、一対の長溝10e1,10e2の間にそれぞれ形成される。二つの突部10d1,10d2の外周は、円弧状に湾曲し、温度センサ10の中心線上に中心を持つ円の同一円周上に配置される。
【0025】
クリップ部材3は、合成樹脂製である。図3,4に示すように、クリップ部材3は、一対の脚部3b,3cと、これら脚部3b,3cの基端を接続する接続部3aと、接続部3aから突出する突起3a1とを有する。脚部3b,3cは、所定の間隔をあけて相対向して配置される。突起3a1は、脚部3b,3cの間に配置され、一端が接続部3aに接続される。一方の脚部3b(3c)から見て他方の脚部3c(3b)側を「内側」、脚部3b,3cから見て接続部3aと反対側の端を「先端」という。
【0026】
脚部3b,3cの先端に、フック3b1,3c1が形成される。フック3b1,3c1は、アダプタ2の横孔2b,2cの背面側の縁に引っ掛かる(図5)。脚部3b,3cの長手方向の中央には、内側へ突出するガイド部3b2,3c2が形成される。ガイド部3b2,3c2の先端は、温度センサ10の突部10d1,10d2外周に沿うように、平面視で円弧状に湾曲する。
【0027】
続いて、配管装置1Aの組立方法について説明する。組立作業をする主体は、人、ロボット、装置等、適宜選択できる。以下の説明では、組立作業をする主体を「作業主体」という。本実施の形態において、組立方法は、アダプタ2に温度センサ10を挿入する第一工程と、クリップ部材3でアダプタ2に温度センサ10を留める第二工程とを有する。第一工程の前段階で、アダプタ2は配管20に一体的に設けられている。
【0028】
図2に示すように、第一工程において、作業主体はアダプタ2に温度センサ10を感温部10a側から挿し込む。温度センサ10のフランジ部10bがアダプタ2の段差2fに当接すると、温度センサ10の挿入側(配管20側)への移動が阻止される。この状態で、温度センサ10とアダプタ2との間は、シール部材10fで塞がれる。また、アダプタ2の貫通孔2a及び横孔2b,2cが温度センサ10の係合部10dと向かい合う。
【0029】
図3に示すように、第二工程において、作業主体は温度センサ10を回転し、コネクタ10cを所定の方向へ向ける。これにより、係合部10dの一方の長溝10e1と貫通孔2aとが向かい合う。この状態で、作業主体は、アダプタ2の正面外側からクリップ部材3を径方向へスライドさせて装着する。このとき、クリップ部材3の突起3a1がアダプタ2の貫通孔2aから一方の長溝10e内へ挿入される。また、クリップ部材3の脚部3b,3cがアダプタ2の横孔2b,2cに嵌る。そして、脚部3b,3cのガイド部3b2,3c2がアダプタ2の内側へ突出して、その先端が温度センサ10の突部10d1,10d2と向かい合う。さらに、横孔2b,2cの背面側の縁にそれぞれ形成された係合部2d,2eに、脚部3b,3cのフック3b1,3c1が係合する(図5)。
【0030】
このようにクリップ部材3がアダプタ2に装着された状態で、クリップ部材3のアダプタ2に対する軸方向の移動が阻止され、回り止めされる。また、温度センサ10がアダプタ2から退出方向へ移動しようとすると、温度センサ10のフランジ部10bがクリップ部材3の突起3a1又はガイド部3b2,3c2に突き当る。このため、温度センサ10がアダプタ2から抜け出ることをクリップ部材3が阻止する。
【0031】
続いて、配管装置1Aの作動について説明する。
図5(a)に示すように、突起3a1が長溝10e1の中央にある状態を温度センサ10のアダプタ2に対する基準位置とする。温度センサ10が基準位置にある場合、温度センサ10はアダプタ2に対して軸回りの回転が許容され、図5中時計回り及び反時計回りに回転できる。しかし、図5(b)に示すように、温度センサ10の基準位置からの回転角度がある程度大きくなると、突起3a1が長溝10e1の端壁10gに突き当り、それ以上の回転が規制される。
【0032】
このように、長溝10e1の端壁10gは、温度センサ10が所定以上回転したときに突起3a1に突き当たる回転規制部として機能する。また、この回転規制部(端壁10g)と突起3a1とを有して回転規制部材8が構成される。この回転規制部材8は、温度センサ10の軸回りの回転を許容しつつ、温度センサ10の360度以上の回転を阻止する。
【0033】
また、本実施の形態では、図5(b)に示すように、突起3a1が一方の端壁10gに当接した状態から他方の端壁10hに当接するまで、温度センサ10は時計回りに約90度回転できる。同様に、突起3a1が他方の端壁10hに当接した状態から一方の端壁10gに当接するまで、温度センサ10は反時計回りにも約90度回転できる。つまり、コネクタ10cの向きが正逆方向に約90度の範囲で可動となる。
【0034】
前述の通り、係合部10dの外周に一対の長溝10e1,10e2が形成され、係合部10dの外周形状は回転対称で2回対称となる。このため、図5に示す状態から温度センサ10を180度回転してアダプタ2に装着でき、この場合にも、コネクタ10cの向きが約90度の範囲で可動となる。
【0035】
以上、説明したように、本実施の形態の配管装置1Aは、配管20と、配管20に突出形成される筒状のアダプタ2と、配管20の外側からアダプタ2に挿入される温度センサ(センサ部材)10と、温度センサ10がアダプタ2から抜け出るのを阻止するクリップ部材3と、アダプタ2に挿入された温度センサ10の軸回りの回転を許容しつつ、360度以上の回転を阻止する回転規制部材8と、を備える。回転転規制部材8は、クリップ部材3に設けられた突起3a1と、温度センサ10に設けられて温度センサ10が所定以上回転したときに突起3a1に突き当たる端壁(回転規制部)10g、10hとを有する。
【0036】
上記構成によれば、温度センサ10に通電用のハーネスを接続し、クリップ部材3を留めた状態で車体振動等が入力された場合、温度センサ10がある程度は回転するものの、360度以上回転することはない。このため、ハーネスが捻じれて過大な負荷がかかるのを防止できる。さらに、車両搭載部品にレイアウト上の誤差が生じても、温度センサ10がこれに追従して回転できる。このため、この場合にもハーネスに過大な負荷がかかるのを防止できる。
さらには、車両搭載部品のレイアウトが変更された場合、温度センサ10がある程度回転できるので、レイアウトの変更に応じてコネクタ10cの向きを変更した温度センサ10を作り直す必要がない。よって、コストを低減できる。
【0037】
また、本実施の形態において、クリップ部材3は、相対向して配置される一対の脚部3b,3cと、脚部3b,3cの基端を接続する接続部3aと、を有する。突起3a1は、一端が接続部3aに接続されて脚部3b,3cの間に配置される。アダプタ2には、このアダプタ2の肉厚を貫通する貫通孔2aと、貫通孔2aの両側に位置する横孔2b,2cが形成される。貫通孔2a及び横孔2b,2cは、アダプタ2の周方向に並ぶ。温度センサ10は、係合部10dを有する。係合部10dの外周には、周方向に沿うように長溝10e1,10e2が形成される。長溝10e1,10e2の周方向の両端に形成される端壁10g、10hが回転規制部となる。突起3a1は、貫通孔2aに挿通されて、突起3a1の先端が長溝10e1(10e2)に挿入される。また、脚部3b,3cは、係合部10dを径方向の両側から挟むように横孔2b,2cに嵌る。
【0038】
上記構成によれば、脚部3b,3cで温度センサ10の抜止ができる。
また、温度センサ10の軸回りの回転は、突起3a1が端壁10g、10hの何れかに当接することにより止まり、長溝10e1(10e2)の周方向長さの範囲に制限される。つまり、回転規制部としての端壁10g、10hと、これに当接する突起3a1とで回転規制部材8を構成し、温度センサ10の軸回りの回転を許容しつつ、360度以上の回転を阻止できる。
なお、回転規制部材8の構成はこの限りではなく、温度センサ10の軸回りの回転を許容しつつ、360度以上の回転を阻止できる限り、適宜変更できる。
【0039】
また、本実施の形態において、脚部3b,3cの先端には、横孔2b,2cの縁に引っ掛かるフック3b1,3c1が形成されている。クリップ部材3がアダプタ2に装着された状態で、フック3b1,3c1は横孔2b,2cの縁に引っ掛かる。当該構成によれば、フック3b1,3c1を外さないとクリップ部材3をアダプタ2から引き抜けない。つまり、上記構成によれば、クリップ部材3が容易に外れるのを防止でき、ひいては、温度センサ10が意図せずアダプタ2から外れて冷却液が漏れるのを防止できる。
【0040】
また、本実施の形態において、横孔2b,2cの背面側の縁に角状の係合部2d,2eが形成されている。フック3b1,3c1は、この係合部2d,3eをアダプタ2の外周側から銜えるように引っ掛かる。このため、フック3b1,3c1を外すには、脚3b,3cの先端を開く必要があり、フック3b1,3c1が車体振動等で外れるのを防止できる。
なお、フック3b1,3c1や、これが引っ掛かる係合部2d,2eの形状は適宜変更できる。また、フック3b1,3c1は省略してもよい。
【0041】
また、本実施の形態において、脚部3b,3cに内側へ突出するガイド部3b2,3c2が設けられる。このガイド部3b2,3c2の先端は、係合部10dの外周に沿うように円弧状に湾曲する。より詳しくは、係合部10dにおいて、長溝10e1,10e2の形成されていない部分が突部10d1,10d2である。ガイド部3b2,3c2の先端は、その突部10d1,10d2の外周に沿うように、中央が両端よりも窪むように湾曲する。これにより、ガイド部3b2,3c2で温度センサ10の抜止を確実にできる。また、ガイド部3b2,3c2の先端と温度センサ10が接触したとしても、温度センサ10がガイド部3b2,3c2で支えられて回転できる。よって、ガイド部3b2,3c2が温度センサ10の回転の妨げにならない。
なお、回転規制部材8以外が温度センサ10の回転を妨げることがなく、温度センサ10の抜止が可能であれば、ガイド部3b1,3c2の形状は適宜変更できる。また、ガイド部材3b1,3c2は省略してもよい。
【0042】
また、本実施の形態において、係合部10dの外周形状は、回転対称となる。このため車両搭載部品のレイアウトが変更された場合、温度センサ10の向きを変えてアダプタに装着できるので、レイアウトの変更に応じてコネクタ10cの向きを変更した温度センサを作り直す必要がない。よって、コストをさらに低減できる。なお、係合部10dの外周形状は、必ずしも回転対称でなくてもよく、適宜変更できる。
【0043】
尚、本実施の形態において、クリップ部材3の接続部3aは、クリップ部材3の表側方向にのみ突出する形状を示したが、本発明にあっては、その形態に限定されるものではない。例えば、図12(a)は、クリップ部材3の変形例を示す側面図、図12(b)は図12(a)のクリップの平面図、図12(c)は図12(a)のクリップの正面図である。図12(a)~図12(c)に示すように接続部3を、クリップ部材3の表裏面ともに突出する形状としてもよい。このように接続部3aを形成することにより表裏の方向性が無くなり、クリップ部材3の組付け性をより良好にすることができる。
【0044】
つぎに、本発明の第二の実施の形態に係る配管装置について説明する。
【0045】
図6は、本実施の形態に係る配管装置1Bの斜視図である。配管装置1Bは、冷却液の配管20と、この配管20に接続されるアダプタ5と、このアダプタ5に挿入される温度センサ15と、この温度センサ15をアダプタ5に留めるクリップ部材6と、温度センサ15の回転を規制する回転規制部材18と、を備える。
以下、説明の便宜上、図6中上下を単に「上」「下」という場合がある。
【0046】
配管20は、冷却液の流路を構成する。アダプタ5は、配管20から外方へ突出するように形成される。アダプタ5は、配管20と一体形成される。アダプタ5において、配管20に接続される方の端を「基端」、その反対側を「先端」とする。アダプタ5は筒状で、その両端が開口する。アダプタ5の基端側の開口は、配管20内に連通する。アダプタ5の先端側の開口は、外気に開放される。アダプタ5の先端側の開口は、温度センサ15及び後述のシール15f部材により液密に塞がれる。これにより、配管20内の冷却液がアダプタ5から流出するのを防止できる。
尚、アダプタ5は、配管20と別体形成されて、溶接、溶着、螺合等によりに配管20に接合されてもよい。
【0047】
図7は、図6の温度センサ15、アダプタ5、クリップ部材6を組み立てた組立体の側面図であり、図8は、温度センサ15をアダプタ5に挿入する前の状態を示す斜視図である。
アダプタ5は、段差形状を有し、小径部5Aと大径部5Bとを有する。小径部5Aはアダプタ2の基端側に位置し、大径部5Bはアダプタ2の先端側に位置する。大径部5Bの内径及び外径は、小径部5Aの内径及び外径よりも大きい。大径部5Bと小径部5Aの内周側の境界に段差15hが形成される。
【0048】
アダプタ5の中心を通る軸心線に沿う方向を「軸方向」、軸心線に直交する方向を「径方向」、アダプタ5の内周及び外周の円周方向に沿う方向を「周方向」という。大径部5Bの先端部に、二つの横孔5a,5bが周方向に並んで形成される。横孔5a,5bは、周方向に長い長孔である。アダプタ5は、横孔5a,5bの基端側の周壁中央から上方へ突出する突部5c,5dを有する。この突部5c,5dにより、横孔5a,5bの中央部の縦幅は、両端部の縦幅よりも狭い。アダプタ5において、横孔5a,5bの間の図8中手前側を「正面」、奥側を「背面」とする。
【0049】
温度センサ15は、センサ部材であり、配管20内の冷却液の液温を検出する。温度センサ15は、先端側から感温部15a、本体部15g、フランジ部15b、係合部15d、及びコネクタ15cを有する。本体部15gの外周に環状のシール部材15fが装着される。温度センサ15は、先端側からアダプタ5内に挿入される。温度センサ15がアダプタ5に装着された状態で、感温部15aが冷却液中に浸漬される。シール部材15fは、温度センサ15とアダプタ5との間をシールする。これにより、配管20内の冷却液が外へ漏れない。
【0050】
本体部15gの外径は、感温部15aの外径よりも大きい。フランジ部15bの外径は、本体部15gの外径よりも大きい。温度センサ15がアダプタ5に装着された状態で、フランジ部15bがアダプタ15の段差15hに乗る。係合部15dは、アダプタ5の横孔5b,5cと対応する位置に配置される。コネクタ15cには、通電のためのハーネスが接続される。温度センサ15から出力された信号は、エレクトロニックコントロールユニット(ECU)に出力されて、冷却液の温度に応じた制御がなされる。
【0051】
感温部15aの中心を通る直線を温度センサ15の「中心線」、感温部15aの外周の周方向に沿う方向を温度センサ15の「周方向」、中心線に直交する方向を温度センサ15の「径方向」という。温度センサ15は、アダプタ5に装着された状態で、温度センサ15の中心線がアダプタ5の中心と略重なるように調心される。係合部15dの外周には、4つの突起15e1,15e2,15e3,15e4が設けられる。突起15e1,15e2,15e3,15e4は、係合部15dの周方向に等間隔で並べて配置される。突起15e1,15e2,15e3,15e4を含む係合部15dの外周形状は、回転対称で4回対称となる。
【0052】
クリップ部材6は、合成樹脂製である。図9,10に示すように、クリップ部材6は、一対の脚部6b,6cと、これら脚部6b,6cの外側に配置される一対のサブ脚部6d,6eと、脚部6b,6cおよびサブ脚部6d,6eの基端を接続する接続部6aとを有する。脚部6b,6cは、所定の間隔をあけて相対向して配置される。一方の脚部6b(6c)から見て他方の脚部6c(6b)側を「内側」、その逆側を「外側」、脚部6b,6cから見て接続部6aと反対側の端を「先端」という。
【0053】
脚部6b,6cの先端側は基端側よりも幅が狭く、これらの境界に傾斜部6b1又は角部6c1が形成されている。より詳しくは、一方の脚部6bに傾斜部6b1が形成され、他方の脚部6cに角部6c1が形成されている。サブ脚部6d,6eの基端は、脚部6b,6cの基端の上側に重なるように設けられる。サブ脚部6d,6eの先端側は、脚部6b,6cの外側へ延びる。サブ脚部6d,6eの先端に、フック6d1,6e1が形成される。フック6d1,6e1は、アダプタ5の突部5c,5dの背面側の角に引っ掛かる(図11)。
【0054】
続いて、配管装置1Bの組立方法について説明する。組立作業をする主体は、人、ロボット、装置等、適宜選択できる。以下の説明では、組立作業をする主体を「作業主体」という。本実施の形態において、組立方法は、アダプタ5に温度センサ15を挿入する第一工程と、クリップ部材6でアダプタ5に温度センサ15を留める第二工程とを有する。第一工程の前段階で、アダプタ5は配管20に一体的に設けられる。
【0055】
図8に示すように、第一工程において、作業主体はアダプタ5に温度センサ15を感温部15a側から挿し込む。温度センサ15のフランジ部15bがアダプタ5の段差15hに当接すると、温度センサ15の挿入側(配管20側)への移動が阻止される。この状態で、温度センサ15とアダプタ5との間は、シール部材15fで塞がれる。また、アダプタ5の横孔5a,5bが温度センサ15の係合部15dと向かい合う。
【0056】
図9に示すように、第二工程において、作業主体は温度センサ15を回転し、コネクタ15cを所定の方向へ向ける。これにより、一つの突起15e2がアダプタ5の正面を向き、その両側の突起15e1,15e3と横孔5a,5bとが向かい合う。この状態で、作業主体は、アダプタ5の正面外側からクリップ部材6を径方向へスライドさせて装着する。このとき、クリップ部材6の脚部6b,6cがアダプタ5の突部5c,5dの内側に挿入されて、3つの突起15e1,15e3,15e4が脚部6cの傾斜部6b1及び角部6c1より先端側に位置する。さらに、サブ脚部6d,6eが突部5c,5dに乗り上げてフック6d1,6d2が突部5c,5dの背面側の縁に引っ掛かる。
【0057】
このようにクリップ部材6がアダプタ5に装着された状態で、クリップ部材6がアダプタ5に対する軸方向の移動が阻止され、回り止めされる。また、温度センサ15がアダプタ5から退出方向へ移動しようとすると、温度センサ15のフランジ部15bがクリップ部材6の脚部6b,6cに突き当たる。このため、温度センサ15がアダプタ5から抜け出ることをクリップ部材6が阻止する。
【0058】
続いて、配管装置1Bの作動について説明する。
図11(a)に示すように、一つの突起15e1が一方の脚部6cの角部6c1に当接した状態を温度センサ15のアダプタ5に対する基準位置とする。他方の脚部6bの傾斜部6b1は、突起15e1,15e2,15e3,15e4と干渉せず、温度センサ15が基準位置にある場合、温度センサ15はアダプタ5に対して図11中時計回りに回転できる。しかし、図11(c)に示すように、温度センサ15の基準位置からの回転角度がある程度大きくなると、他の突起15e2が角部6c1に突き当り、その以上の回転が規制される。
【0059】
このように、クリップ部材6の角部6c1は、温度センサ15が所定以上回転したときに突起15e1,15e2に突き当たる回転規制部として機能する。また、この回転規制部(角部6c1)と突起15e1,15e2とを有して回転規制部材18が構成される。この回転規制部材18は、温度センサ15の軸回りの回転を許容しつつ、温度センサの360度以上の回転を阻止する。
【0060】
また、本実施の形態では、図11(a)(c)に示すように、一つの突起15e1が角部6c1に当接した状態から他の突起15e2が角部6c1に当接するまで、温度センサ15は時計回りに約45度回転できる。反対に、他の突起15e2が角部6c1に当接した状態から一つの突起15e1が角部6c1に当接するまで、温度センサ15は反時計回りにも約45度回転できる。つまり、コネクタ15cの向きが正逆方向に約45度の範囲で可動となる。
【0061】
前述の通り、係合部15dの外周に四つの突起15e1,15e2,15e3,15e4が周方向に等間隔で形成される。このため、図11(a)に示す状態から温度センサ15を、45度、90度、135度回転してアダプタ5に装着でき、この場合にも、コネクタ15cの向きが約45度の範囲で可動となる。
【0062】
以上、説明したように、本実施の形態の配管装置1Bは、配管20と、配管20に突出形成される筒状のアダプタ5と、配管20の外側からアダプタ5に挿入される温度センサ(センサ部材)15と、温度センサ15がアダプタ5から抜け出るのを阻止するクリップ部材6と、アダプタ5に挿入された温度センサ15の軸回りの回転を許容しつつ、360度以上の回転を阻止する回転規制部材18と、を備える。回転規制部材18は、温度センサ15に設けられた一つ以上の突起15e1,15e2,15e3,15e4と、クリップ部材6に設けられて温度センサ15が所定以上回転したときに何れかの突起15e1,15e2,15e3,15e4に突き当たる角部(回転規制部)6c1とを有する。
【0063】
上記構成によれば、温度センサ15に通電用のハーネスを接続し、クリップ部材6を留めた状態で車体振動が入力された場合、温度センサ15がある程度は回転するものの、360度以上回転することはない。このため、ハーネスが捻じれて過大な負荷がかかるのを防止できる。さらに、車両搭載部品にレイアウト上の誤差が生じても、温度センサ15がこれに追従して回転できる。このため、この場合にもハーネスに過大な負荷がかかるのを防止できる。
さらには、車両搭載部品のレイアウトが変更された場合、温度センサ15がある程度回転できるので、レイアウトの変更に応じてコネクタ15cの向きを変更した温度センサを作り直す必要がない。よって、コストを低減できる。
【0064】
また、本実施の形態において、温度センサ15は、係合部15dを有する。この係合部15dの外周に、突起15e1,15e2,15e3,15e4が突出形成される。クリップ部材6は、相対向して配置される一対の脚部6b,6cと、脚部6b,6cの基端を接続する接続部6aと、を有する。アダプタ5には、アダプタ5の肉厚を貫通する一対の横孔5a,5bが形成される。一方の脚部6cの内側に角部6c1が形成されている。この角部6c1が回転規制部となる。一対の脚部6b,6cは、係合部15dを径方向の両側から挟むように横孔5a,5bに嵌る。
【0065】
上記構成によれば、脚部6b,6cで温度センサ15の抜止ができる。
また、温度センサ15の軸回りの回転は、突起15e1,15e2,15e3,15e4の何れかが角部6c1に当接することにより止まり、突起15e1,15e2,15e3,15e4の間隔に制限される。つまり、回転規制部としての角部6c1と、これに当接する突起15e1,15e2,15e3,15e4とで回転規制部材18を構成し、温度センサ15の軸回りの回転を許容しつつ、360度以上の回転を阻止できる。
なお、回転規制部材18の構成はこの限りではなく、温度センサ15の軸回りの回転を許容しつつ、360度以上の回転を阻止できる限り、適宜変更できる。例えば、本実施の形態において、突起の数は4つであるが、3つ以下でも5つ以上でもよい。さらに、回転規制部としての角部6c1が両方の脚部6c,6dに設けられてもよい。
【0066】
また、本実施の形態において、アダプタ5は、横孔5a,5bの軸方向の幅を狭める方向へ突出する突部5c,5dを有する。クリップ部材6は、基端が接続部6aに接続されて先端側が一対の脚部6b,6cの外側へ延びる一対のサブ脚部6d,6eを有する。サブ脚部6d,6eの先端には、突部5c,5dの角に引っ掛かるフック6d1,6e1が形成されている。当該構成によれば、フック6d1,6e1を外すには、サブ脚部6d,6eの先端を開く必要があり、フック6d1,6e1が車体振動等で外れるのを防止できる。また、フック6d1,6e1を外さないとクリップ部材6をアダプタ5から引き抜けないので、上記構成によれば、クリップ部材6が容易に外れるのを防止でき、ひいては温度センサ15が意図せずアダプタ5から外れて冷却液が漏れるのを防止できる。
なお、フック6d1,6e1や、これが引っ掛かる突部5c,5dの形状は適宜変更できる。また、フック6d1,6e1は省略してもよい。
【0067】
また、本実施の形態において、係合部15dの外周形状は、回転対称となる。このため、車両搭載部品のレイアウトが変更された場合、温度センサ15の向きを変えてアダプタ5に装着できるので、レイアウトの変更に応じてコネクタ15cの向きを変更した温度センサを作り直す必要がない。よって、コストをさらに低減できる。なお、係合部15dの外周形状は、必ずしも回転対称でなくてもよく、適宜変更できる。
【0068】
なお、本実施の形態では、センサ部材が温度センサの場合を例に説明したが、その形態に限定されず、例えば燃料性状センサに適用することもできる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1A 配管装置
1B 配管装置
2 アダプタ
2d 係合部
2e 係合部
3 クリップ部材
3a1 突起
3b 脚部
3b1 フック
3c 脚部
3c1 フック
5 アダプタ
5c 突起
5d 突起
6 クリップ部材
6a 接続部
6b 脚部
6b1 傾斜部
6c 脚部
6c1 角部(回転規制部)
6d サブ脚部
6e サブ脚部
6d1 フック
6e1 フック
8 回転規制部材
10 温度センサ(センサ部材)
10d1 突起
10d2 突起
10e1 長溝
10e2 長溝
10g 端壁
10h 端壁
15 温度センサ(センサ部材)
15e1 突起
15e2 突起
15e3 突起
15e4 突起
18 回転規制部材
20 配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12