(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009247
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】車両の運動マネージャ
(51)【国際特許分類】
B60W 50/00 20060101AFI20250110BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20250110BHJP
【FI】
B60W50/00
B60W50/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112112
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519373914
【氏名又は名称】株式会社J-QuAD DYNAMICS
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一城
(72)【発明者】
【氏名】廣村 達哉
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA58
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD22
(57)【要約】
【課題】異種の運動要求があった場合に、双方の運動要求を車両の制御に反映させる。
【解決手段】管理ECU10は、走行用アプリケーションA1からの運動要求と、HMIアプリケーションA2からの運動要求とを受け付ける。走行用アプリケーションA1は、車両の加速度を制御するためのアプリケーションである。HMIアプリケーションA2は、車両から乗員への情報伝達を実現するためのアプリケーションである。管理ECU10は、HMIアプリケーションA2からの運動要求を受け付けた場合には、走行用アプリケーションA1からの運動要求の調停結果である選択加速度D1Xと、HMIアプリケーションA2からの運動要求であるHMI加速度D2とを調停した結果に基づいてアクチュエータに対する指示情報Kを算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアプリケーションからの運動要求を受け付けることと、
受け付けた複数の前記運動要求を調停することと、
前記運動要求の調停結果に基づいて、車両が有するアクチュエータに対する指示情報を算出することと、
算出した前記指示情報を前記アクチュエータの制御装置に出力することと、
を実行可能であり、
複数の前記アプリケーションのうちの1以上は、前記車両の加速度及び前記車両の舵角から選ばれる1以上を制御するための走行用アプリケーションであり、
複数の前記アプリケーションのうちの他の1以上は、前記車両から乗員への情報伝達を実現するためのHMIアプリケーションであり、
前記HMIアプリケーションからの前記運動要求を受け付けていない場合には、前記走行用アプリケーションからの前記運動要求の調停結果に基づいて前記指示情報を算出し、
前記HMIアプリケーションからの前記運動要求を受け付けた場合には、前記走行用アプリケーションからの前記運動要求の調停結果と、前記HMIアプリケーションからの前記運動要求と、を調停した結果である異種調停結果に基づいて、前記指示情報を算出する
車両の運動マネージャ。
【請求項2】
前記走行用アプリケーションからの前記運動要求の調停結果に前記HMIアプリケーションからの前記運動要求を重畳した結果を、前記異種調停結果とする
請求項1に記載の車両の運動マネージャ。
【請求項3】
前記走行用アプリケーションからの前記運動要求は、前記車両で実現すべき加速度の要求であり、
前記HMIアプリケーションからの前記運動要求は、予め定められた制御期間の中で前記車両を断続的に減速させる要求であり、
前記走行用アプリケーションの前記運動要求が示す加速度を、前記HMIアプリケーションからの前記運動要求に従って断続的に減少させることで、前記異種調停結果を算出する
請求項2に記載の車両の運動マネージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の運動マネージャに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている車両の制御システムは、複数の実行部と、運動マネージャと、アクチュエータと、を備えている。各実行部は、それぞれ個別のアプリケーションを実行する。運動マネージャは、複数のアプリケーションからの運動要求を受け付ける。そして、運動マネージャは、それら複数の運動要求を調停する。すなわち、運動マネージャは、複数の運動要求の中から予め定められたルールに従い1つを選択する。そして、運動マネージャは、調停勝ちした運動要求に基づいて、アクチュエータに対する指示情報を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような技術において、例えば車両の制動要求といった運動要求に関して、複数の運動要求のうちの最大のものを選択する調停手法を採用することがある。ここで、アプリケーションからの運動要求には、車両の走行を目的としたものと、乗員への注意喚起を目的としたものとがある。乗員への注意喚起のための運動要求の大きさは、車両の走行を目的とした運動要求の大きさに比べて相当に小さいことがある。そのため、これらの2つの運動要求が同時にきたときに上述の調停手法によって調停を行うと、乗員への注意喚起のための運動要求が車両の走行のための運動要求に埋もれてしまって乗員への注意喚起のための運動要求を実現できないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための車両の運動マネージャは、複数のアプリケーションからの運動要求を受け付けることと、受け付けた複数の前記運動要求を調停することと、前記運動要求の調停結果に基づいて、車両が有するアクチュエータに対する指示情報を算出することと、算出した前記指示情報を前記アクチュエータの制御装置に出力することと、を実行可能であり、複数の前記アプリケーションのうちの1以上は、前記車両の加速度及び前記車両の舵角から選ばれる1以上を制御するための走行用アプリケーションであり、複数の前記アプリケーションのうちの他の1以上は、前記車両から乗員への情報伝達を実現するためのHMIアプリケーションであり、前記HMIアプリケーションからの前記運動要求を受け付けていない場合には、前記走行用アプリケーションからの前記運動要求の調停結果に基づいて前記指示情報を算出し、前記HMIアプリケーションからの前記運動要求を受け付けた場合には、前記走行用アプリケーションからの前記運動要求の調停結果と、前記HMIアプリケーションからの前記運動要求と、を調停した結果である異種調停結果に基づいて、前記指示情報を算出する。
【発明の効果】
【0006】
上記構成では、異種の運動要求があった場合に、双方の運動要求を車両の制御に反映させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】
図2は、選択加速度、HMI加速度、及び調停加速度の推移の例を表した図である。
【
図4】
図4は、管理処理の処理手順を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、車両の運動マネージャの一実施形態を、図面を参照して説明する。
<車両の全体構成>
図1に示すように、車両100は、指令ECU50と、管理ECU10と、第1アクチュエータシステム70と、第2アクチュエータシステム80と、を備えている。
【0009】
第1アクチュエータシステム70は、エンジン71と、エンジンECU75と、を備えている。エンジン71は、車両100の駆動源である。エンジン71は、スロットルバルブ、燃料噴射弁、及び点火装置などの複数のアクチュエータ72を備えている。なお、
図1では、複数のアクチュエータ72のうちの1つを代表で示している。エンジンECU75は、処理回路を備えたコンピュータである。処理回路は、CPUと、メモリと、を備えている。メモリは、CPUが実行するべき処理が記述された各種のプログラムを予め記憶している。エンジンECU75は、管理ECU10からの指示情報Kに基づいてエンジン71の各アクチュエータ72を制御する。すなわち、エンジンECU75は、各アクチュエータ72を制御する制御装置である。エンジンECU75が各アクチュエータ72を制御することで、エンジン71では燃料が燃焼する。それとともに車両100に駆動力が発生する。
【0010】
第2アクチュエータシステム80は、複数のブレーキ装置81と、ブレーキECU85と、を備えている。なお、
図1では、複数のブレーキ装置81のうちの1つを代表で示している。ブレーキ装置81は、車両100の車輪毎に設けられている。ブレーキ装置81は、車輪と一体回転するディスクと、油圧に応じて動作するブレーキパッドと、ブレーキパッドに油圧を加えるアクチュエータ82と、を備えている。ブレーキECU85は、処理回路を備えたコンピュータである。処理回路は、CPUと、メモリと、を備えている。メモリは、CPUが実行するべき処理が記述された各種のプログラムを予め記憶している。ブレーキECU85は、管理ECU10からの指示情報Kに基づいてアクチュエータ82を制御する。すなわち、ブレーキECU85は、アクチュエータ82を制御する制御装置である。ブレーキECU85がアクチュエータ82を制御することで油圧が発生すると、ブレーキパッドがディスクに押し付けられる。それとともに、車両100に制動力が発生する。
【0011】
図示は省略するが、車両100は、第1アクチュエータシステム70及び第2アクチュエータシステム80の他にもアクチュエータシステムを備えている。他のアクチュエータシステムの例は、車両100の舵角を調整するステアリングシステムである。ステアリングシステムは、舵角の調整を担うアクチュエータと、このアクチュエータの制御装置となるECUと、を備えている。なお、舵角は、ステアリングハンドルの操舵角と、操舵輪の転舵角と、の双方を含む。操舵輪は、例えば前輪である。
【0012】
<指令ECU>
指令ECU50は、処理回路を備えたコンピュータである。処理回路は、CPUと、メモリと、を備えている。メモリは、CPUが実行するべき処理が記述された各種のプログラムを予め記憶している。メモリが記憶しているプログラムの例は、車両100の運動を制御するための複数のアプリケーションAである。指令ECU50は、自身が記憶しているこれらのアプリケーションAを実行する実行装置として機能する。指令ECU50は、複数のアプリケーションAを同時に実行することもある。なお、指令ECU50は、車両100が搭載している各種センサ101が検出する情報を逐次取得する。指令ECU50は、アプリケーションAを実行する上で、これらの各種センサ101から取得する情報を参照する。各種センサ101は、例えばカメラ及びレーダといった、車両100の周辺情報を検出する機器を含んでいる。各種センサ101は、例えば車両100の走行速度といった、車両100の走行状態を検出する機器を含んでいる。
図1では、各種センサ101のうちの1つを代表で示している。
【0013】
以下では、実際には指令ECU50が主体である内容を、実行対象のアプリケーションAを主体として記載することがある。例えば、指令ECU50が運動要求を出力することをアプリケーションAが運動要求を出力すると記したり、指令ECU50からの運動要求をアプリケーションAからの運動要求と記したりする。なお、本実施形態では、指令ECU50が記憶している複数のアプリケーションAのうち、車両100の加速度Cの制御に関するアプリケーションAを説明の対象とする。車両100の加速度Cは、車両100が前方に向かって加速する場合を正、車両100が後方に向かって加速する場合を負とする。
【0014】
指令ECU50が記憶しているアプリケーションAは、走行用アプリケーションA1とHMIアプリケーションA2との2種類に大別できる。走行用アプリケーションA1は、車両100の走行上の加速度Cを制御するためのアプリケーションAである。そして、走行用アプリケーションA1からの運動要求は、車両100で実現すべき加速度Cの要求である。この運動要求を具体化した情報として、走行用アプリケーションA1は、要求加速度D1を出力する。ここで、指令ECU50は、走行用アプリケーションA1を実行している場合、所定の制御周期毎に要求加速度D1を繰り返し出力する。指令ECU50は、要求加速度D1を出力するにあたり、当該要求加速度D1に第1識別値を付す。第1識別値は、運動要求の内容が要求加速度D1であることを示すデータ識別値である。
【0015】
HMIアプリケーションA2は、車両100から乗員への情報伝達を実現するためのアプリケーションAである。具体的には、HMIアプリケーションA2は、乗員に注意喚起を促すべく車両100を動作させる。そして、HMIアプリケーションA2からの運動要求は、時系列でみた場合に、制御期間Tの中で車両100を断続的に減速させる要求である。この運動要求を具体化した情報として、HMIアプリケーションA2は、
図2の(b)に示すHMI加速度D2を出力する。本実施形態のHMI加速度D2は、車両100が前進走行している場合を適用対象としている。HMI加速度D2において、加速度Cは、時間の経過と共に、ゼロと、指定加速度D2Aとを、交互に繰り返す。指定加速度D2Aは、負の値である。指定加速度D2Aは、乗員に注意喚起を促すのに適した値として、実験又はシミュレーションで予め定められている。
図2の(b)の例では、制御期間Tの中で2回の減速が実現されるようにHMI加速度D2が変化する。また、
図2の(b)の例では、指定加速度D2Aが継続する時間幅と、ゼロの加速度Cが継続する時間幅とが同じに設定されている。制御期間Tは、乗員への注意喚起を継続する上で適度な時間の長さとして、予め定められている。制御期間Tは、例えば1秒である。制御期間Tは、上記した所定の制御周期の1サイクルよりも長い。ここで、指令ECU50は、HMIアプリケーションA2を実行している場合、乗員への注意喚起を行うべき所定の条件が満たされる度に、制御期間Tの間、HMI加速度D2を繰り返し出力する。指令ECU50は、走行用アプリケーションA1と同じ制御周期でHMI加速度D2を出力する。なお、指令ECU50は、HMI加速度D2を出力するにあたり、当該HMI加速度D2に第2識別値を付す。第2識別値は、運動要求の内容がHMI加速度D2であることを示すデータ識別値である。第2識別値は、第1識別値とは異なる値として予め定められている。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の指令ECU50のメモリは、HMIアプリケーションA2を1つのみ記憶している。一方、指令ECU50のメモリは、異なる複数の走行用アプリケーションA1を記憶している。なお、
図1では、複数の走行用アプリケーションA1のうちの2つを代表で示している。
【0017】
<管理ECU>
図3に示すように、管理ECU10は、処理回路10Aを備えたコンピュータである。処理回路10Aは、CPU11と、メモリ12と、を備えている。メモリ12は、CPU11が実行するべき処理が記述された各種のプログラムWを予め記憶している。管理ECU10のCPU11がメモリ12に記憶されているプログラムWを実行することにより、管理ECU10は、車両100の運動マネージャとして機能する。運動マネージャは、アプリケーションAが要求する車両100の運動を管理する機能を果たす。なお、管理ECU10は、図示しない内部バスを介して指令ECU50及び各アクチュエータシステムのECUと情報を授受可能である。管理ECU10は、各種センサ101からも情報を逐次取得する。
【0018】
以下、車両100の加速度Cを対象に、運動マネージャとしての管理ECU10の機能を説明する。管理ECU10は、管理処理を実行可能である。管理処理は、車両100の加速度Cを統括管理するための処理である。
図1に示すように、管理ECU10は、管理処理を実行するにあたり、受付部20、第1調停部21、第2調停部22、及び出力部23として機能する。
【0019】
管理ECU10は、上記所定の制御周期で管理処理を繰り返し実行する。なお、管理ECU10は、いずれのアプリケーションAからも運動要求を受け付けなかった場合には、後述する各ステップの処理を実行せずにそのまま管理処理の1サイクルを終了する。この場合、アプリケーションAからの運動要求に基づいた各アクチュエータ72,82の制御は実行されない。
【0020】
図4に示すように、管理ECU10は、管理処理では、先ずステップS11の処理を行う。ステップS11では、受付部20が受付工程を行う。受付部20は、受付工程では、
図1に示すように、各アプリケーションAからの運動要求を受け付ける。すなわち、受付部20は、走行用アプリケーションA1からは要求加速度D1を受け付ける。また、受付部20は、HMIアプリケーションA2からはHMI加速度D2を受け付ける。受付部20は、各アプリケーションAからの運動要求を受け付けると、各運動要求に付されているデータ識別値に基づいて、運動要求の内容を把握する。なお、管理ECU10のメモリ12は、各データ識別値と、各データ識別値が示す運動要求の内容と、を対応付けて予め記憶している。受付部20は、運動要求の内容を把握すると、当該内容に応じて、運動要求を第1調停部21及び第2調停部22のいずれか一方に出力する。受付部20は、走行用アプリケーションA1からの運動要求である要求加速度D1については、第1調停部21に出力する。一方、受付部20は、HMIアプリケーションA2からの運動要求であるHMI加速度D2については、第2調停部22に出力する。なお、走行用アプリケーションA1からの運動要求がある一方でHMIアプリケーションA2からの運動要求を無い状況下で受付部20がステップS11の処理を行うこともあり得る。この場合、受付部20は、ステップS11では、走行用アプリケーションA1からの運動要求のみを受け付ける。そして、受付部20は、受け付けた全ての運動要求を第1調停部21に出力する。
図4に示すように、管理ECU10は、ステップS11の処理を終えると、処理をステップS12に進める。
【0021】
ステップS12では、第1調停部21が第1調停工程を行う。
図1に示すように、第1調停部21は、受付部20から出力された要求加速度D1、つまりステップS11で受付部20が受け付けた要求加速度D1を調停する。第1調停部21は、受付部20が受け付けた複数の要求加速度D1の中で最も小さい値の要求加速度D1を選択する。そして、第1調停部21は、選択した要求加速度D1である選択加速度D1Xを基本調停結果として算出する。この後、第1調停部21は、選択加速度D1Xを第2調停部22に出力する。この後、
図4に示すように、管理ECU10は、ステップS13に処理を進める。
【0022】
ステップS13では、第2調停部22が判定工程を行う。具体的には、第2調停部22は、受付部20からHMI加速度D2を取得したか否か、すなわち、ステップS11で受付部20がHMIアプリケーションA2からHMI加速度D2を受け付けたか否かを判定する。第2調停部22は、受付部20からHMI加速度D2を取得していない場合(ステップS13:NO)、次のことを行う。すなわち、第2調停部22は、上記ステップS12の処理を通じて第1調停部21から取得した選択加速度D1Xを最終調停結果Fとして出力部23に出力する。それとともに管理ECU10は、この後説明するステップS14の処理をスキップしてステップS15に処理を進める。
【0023】
一方、第2調停部22は、ステップS13において、受付部20からHMI加速度D2を取得した場合、すなわち、ステップS11で受付部20がHMIアプリケーションA2からHMI加速度D2を受け付けた場合(ステップS13:YES)、ステップS14に処理を進める。この場合、第2調停部22は、ステップS14において、第2調停工程を行う。
図1に示すように、第2調停部22は、第2調停工程では、第1調停部21から取得した選択加速度D1Xと、受付部20から取得したHMI加速度D2とを調停する。具体的には、第2調停部22は、選択加速度D1XにHMI加速度D2を重畳する。この重畳の具体的な態様を説明する。なお、以下の説明では、
図2の(a)に示すように、制御期間Tの全体に亘って、選択加速度D1Xが、負の規定加速度D1Aで一定であると仮定する。第2調停部22は、
図2の(a)に示す選択加速度D1Xに
図2の(b)に示すHMI加速度D2を加算した値を、異種調停結果である調停加速度D3として算出する。ここで、HMI加速度D2は、ゼロ又は指定加速度D2Aの何れかである。したがって、
図2の(c)に示すように、調停加速度D3は、規定加速度D1A、又は規定加速度D1Aに指定加速度D2Aを加算した加算値DPのいずれかの値をとる。そして、調停加速度D3を時系列でみた場合には、
図2の(c)に示すように、制御期間Tの中で、規定加速度D1Aが加算値DPへと2回減少する。
図1に示すように、第2調停部22は、調停加速度D3を算出すると、この調停加速度D3を最終調停結果Fとして出力部23に出力する。この後、
図4に示すように、管理ECU10は、処理をステップS15に進める。
【0024】
ステップS15では、出力部23が算出工程を行う。
図1に示すように、この算出工程において、出力部23は、最終調停結果Fに基づいて、第1アクチュエータシステム70のアクチュエータ82と、第2アクチュエータシステム80のアクチュエータ82と、に対する指示情報Kを算出する。出力部23は、ステップS11において受付部20がHMIアプリケーションA2からHMI加速度D2を受け付けなかった場合には、基本調停結果である選択加速度D1Xに基づいて指示情報Kを算出する。一方、出力部23は、ステップS11において受付部20がHMI加速度D2を受け付けた場合には、異種調停結果である調停加速度D3に基づいて指示情報Kを算出する。
【0025】
出力部23は、次のようにして指示情報Kを算出する。先ず出力部23は、加速度の値である最終調停結果Fの大小に基づいて、第1アクチュエータシステム70と第2アクチュエータシステム80とへの最終調停結果Fの振り分け分を定める。そして、出力部23は、最終調停結果Fをそれぞれに振り分けた値を、力の単位に変換する。そして、出力部23は、変換後の値を指示情報Kとして算出する。最終調停結果Fが正の値である場合、出力部23は、当該最終調停結果Fが大きいほど、車両100の駆動力が大きくなるように指示情報Kを算出する。一方、最終調停結果Fが負の値である場合、出力部23は、当該第1加速度が小さいほど、車両100の制動力が大きくなるように指示情報Kを算出する。出力部23は、このようにして、最終調停結果Fに応じた指示情報Kをアクチュエータシステム毎に算出する。
【0026】
出力部23は、以上のようにして各指示情報Kを算出すると、算出した各指示情報Kを、エンジンECU75とブレーキECU85とに出力する。この後、
図4に示すように、管理ECU10は、ステップS15の処理を終了する。それとともに管理ECU10は、管理処理の一連の処理を終了し、再び管理処理の各処理を実行する。
【0027】
<実施形態の作用>
いま、
図1に示すように、2つの走行用アプリケーションA1からの要求加速度D1と、HMIアプリケーションA2からのHMI加速度D2とが出力されたとする。この場合、管理ECU10は、これら3つの運動要求を調停するにあたって、2段階の調停を行う。先ず1段階目の調停として、第1調停部21は、2つの走行用アプリケーションA1からの要求加速度D1を調停する。すなわち、第1調停部21は、2つの要求加速度D1のうち小さいほうを選択加速度D1Xとして選択する。この後、2段階目の調停として、第2調停部22は、選択加速度D1Xと、HMIアプリケーションA2からのHMI加速度D2とを加算することで調停加速度D3を算出する。制御期間T全体を通して見たとき、第2調停部22は、
図2の(c)に示すように、選択加速度D1Xである規定加速度D1Aを各タイミングのHMI加速度D2に従って断続的に減少させることで各タイミングの調停加速度D3を算出する。この調停加速度D3の算出を受けて、出力部23は、当該調停加速度D3に応じた指示情報Kを算出する。そして、出力部23は、算出した指示情報KをエンジンECU75とブレーキECU85とに出力する。すると、これらの各ECU75,85は、指示情報Kに従って、対象となる各アクチュエータ72,82を制御する。この結果として、車両100では、
図2の(c)で示すように、選択加速度D1Xが断続的に減少する推移が実現される。
【0028】
<実施形態の効果>
(1)上記実施形態の作用に記載したとおり、管理ECU10は、走行用アプリケーションA1とHMIアプリケーションA2との双方から運動要求を受け付けた場合、2段階で調停を行う。そして、この2段階の調停のうちの2段階目の調停では、管理ECU10は、複数の運動要求の中の1つを選択するという1段階目の調停とは異なるルールで異種の運動要求の調停を行う。そして、管理ECU10は、2段階目の調停では、異種の運動要求の双方を協調させるかたちで調停を行う。このことで、管理ECU10は、HMIアプリケーションA2からの運動要求を、走行用アプリケーションA1からの運動要求に埋没させることなく指示情報Kに反映させることができる。すなわち、本実施形態では、車両100の走行のための運動要求と、乗員への注意喚起のための運動要求という、異種の運動要求があった場合に、これらの双方の運動要求を車両100の制御に反映させることができる。
【0029】
(2)管理ECU10は、2段階目の調停では、選択加速度D1XとHMI加速度D2とを加算する。このようにして、2つの加速度Cを加算することで、管理ECU10は、2つの加速度Cを確実に調停加速度D3に反映させることができる。
【0030】
(3)本実施形態のように、車両100を断続的に減速させるHMI加速度D2を車両100の走行上の要求加速度D1に重畳させると次のことが可能になる。すなわち、例えば
図2の(c)に示すように、車両100の減速中に断続的に車両100を制動できる。
【0031】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0032】
・選択加速度D1XとHMI加速度D2との重畳の態様は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、これらの2つの加速度Cを重畳する上で、加算に代えて、乗算を利用してもよい。重畳の態様として乗算を利用する場合、HMI加速度D2を適切な係数に変換して選択加速度D1Xに乗算することが考えられる。
【0033】
・選択加速度D1XとHMI加速度D2との調停の仕方は、重畳を利用したものに限定されない。上記調停の仕方は、選択加速度D1XとHMI加速度D2との双方を異種調停結果ひいては指示情報Kに反映させることができるものであればよい。
【0034】
・HMIアプリケーションA2からの運動要求に関して、車両100を断続的に減速させる際の減速の回数は適宜変更可能である。
・HMIアプリケーションA2からの運動要求は、車両100を断続的に減速させる要求に限らない。車両100から乗員へ適切な情報伝達ができるように、必要な運動要求を行ってよい。
【0035】
・指令ECU50が、複数のHMIアプリケーションA2を記憶していることもあり得る。この場合でも、第2調停工程の調停に参加させるHMIアプリケーションA2の運動要求が1つになるように事前の処理を構成すればよい。そして、第2調停工程では、いずれかのHMIアプリケーションA2からの運動要求と基本調停結果とを調停して異種調停結果を算出すればよい。
【0036】
・走行用アプリケーションA1からの運動要求同士の調停方法は、上記実施形態の例に限定されない。適切な調停結果が得られるように、調停のルールを定めておけばよい。
・走行用アプリケーションA1は、車両100の走行上の加速度Cを制御するものに限定されない。走行用アプリケーションA1は、車両100の走行上の舵角を制御するものでもよい。同様に、HMIアプリケーションA2は、車両100の舵角の変化を通じて車両100から乗員への情報伝達を実現するものでもよい。運動要求で取り扱うパラメータが車両100の舵角の場合も、上記実施形態と同様、走行用アプリケーションA1の運動要求同士を調停した基本調停結果を算出した上で、その基本調停結果と、HMIアプリケーションA2からの運動要求とを調停した異種調停結果を算出すればよい。そして、その異種調停結果に基づいてステアリングシステムのアクチュエータに対する指示情報を算出すればよい。基本調停結果と、HMIアプリケーションA2からの運動要求とを調停するにあたっては、上記実施形態と同様、これらを重畳させてもよい。基本調停結果と、HMIアプリケーションA2からの運動要求との双方を異種調停結果ひいては指示情報に反映させることができるのであれば、調停方法は問わない。運動要求で取り扱うパラメータが車両100の舵角の場合、走行用アプリケーションA1からの運動要求は、例えば、ステアリングハンドルの要求操舵角とすることが考えられる。HMIアプリケーションA2からの運動要求は、例えば、時系列でみた場合に、予め定められた制御期間の中でステアリングハンドルを左右に揺らす要求とすることが考えられる。これらの双方の運動要求を指示情報に反映させてステアリングハンドルを制御すれば、ステアリングハンドルを旋回させつつ当該ステアリングハンドルを左右に揺らすことができる。なお、操舵角は、例えば、車両100が直進するときのステアリングハンドルの中立位置からの角度として定めることができる。
【0037】
・車両100の全体構成は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、車両100の駆動源は、エンジン71に代えて、又は加えて、モータジェネレータであってもよい。車両100にモータジェネレータを搭載する場合、モータジェネレータを制御する制御装置を車両に搭載すればよい。これらの機器を車両に設けた場合、車両には、アクチュエータであるモータジェネレータと、モータジェネレータの制御装置と、を含むアクチュエータシステムが搭載される。
【0038】
・管理ECU10の処理回路10Aは、以下(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。この点、例えば指令ECU50といった、他のECUの処理回路についても同様である。
【0039】
(a)処理回路10Aは、コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサを備えている。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含んでいる。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含んでいる。
【0040】
(b)処理回路10Aは、各種処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路を備えている。専用のハードウェア回路としては、例えば、特定用途向け集積回路、すなわちASIC又はFPGAを挙げることができる。なお、ASICは、「Application Specific Integrated Circuit」の略記であり、FPGAは、「Field Programmable Gate Array」の略記である。
【0041】
(c)処理回路10Aは、各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうちの残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備えている。
【符号の説明】
【0042】
10…管理ECU 72…アクチュエータ 75…エンジンECU 82…アクチュエータ 85…ブレーキECU 100…車両