(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009249
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】音響システム
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20250110BHJP
G10K 15/00 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
H04R3/00 310
G10K15/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112116
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】薗部 健
(72)【発明者】
【氏名】田口 仁幸
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AA02
5D220AB08
(57)【要約】
【課題】他のユーザに煩わしさを与えない範囲内において特定のユーザが聞き取り易い通知音を出力する「音響システム」を提供する。
【解決手段】通知音音源1から出力される通知音は、可変ゲインアンプ2でゲインが調整された後に、運転席のヘッドレストに配置したスピーカ3から運転手に向けて出力される。ゲイン設定部5は、マイク4で収音した音から各席におけるノイズのパワーを推定し、予め求めておいた、スピーカ3から運転席のユーザまでの通知音の伝達関数C
dと、スピーカ3から特定の座席のユーザまでの通知音の伝達関数C
tを用いて、運転席においてノイズよりも通知音が大きくなり、特定の座席においてノイズよりも通知音が小さくなる通知音のゲインを算定し、可変ゲインアンプ2に設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に配置された複数の座席のうちの第1の座席に着座したユーザに、音源から出力された音を通知音として出力する音響システムであって、
各座席に着座したユーザのうちの前記第1の座席に着座したユーザに最も近くなる位置に配置したスピーカと、
設定されたゲインで前記音源から出力された音のレベルを調整して前記通知音として前記スピーカに出力するゲイン調整手段と、
前記第1の座席に着座したユーザまでの通知音の前記スピーカからの伝達関数である第1の伝達関数と、複数の座席のうちの前記第1の座席と異なる座席である第2の座席に着座したユーザまでの通知音の前記スピーカからの伝達関数である第2の伝達関数とが予め設定された、前記ゲイン調整手段に前記ゲインを設定するゲイン設定手段と、
前記室内のノイズを収音するマイクとを備え、
前記ゲイン設定手段は、マイクで収音したノイズから各座席におけるノイズの大きさを推定し、推定したノイズの大きさと前記第1の伝達関数と前記第2の伝達関数とに基づいて、前記第1の座席に着座したユーザの位置においてノイズよりも通知音が大きくなり、前記第2の座席に着座したユーザの位置においてノイズよりも通知音が小さくなる通知音のゲインを算定し、前記ゲイン調整手段に設定することを特徴とする音響システム。
【請求項2】
請求項1記載の音響システムであって、
前記ゲイン設定手段は、
推定した各座席におけるノイズのパワーをPN、前記音源から出力された音に前記第1の伝達関数を畳み込んだ信号のパワーをPX、前記第1の伝達関数をCd、前記第2の伝達関数をCt、前記ゲイン調整手段に設定するゲインをAとして、
A=α(PN/PX)
1<α<Cd/Ct
を満たすように、前記ゲイン調整手段に設定するゲインを算出することを特徴とする音響システム。
【請求項3】
自動車の車室内に配置された複数の座席のうちの第1の座席に着座したユーザに、音源から出力された音を通知音として出力する音響システムであって、
各座席に着座したユーザのうちの前記第1の座席に着座したユーザに最も近くなる位置に配置したスピーカと、
設定されたゲインで前記音源から出力された音のレベルを調整して前記通知音として前記スピーカに出力するゲイン調整手段と、
前記第1の座席に着座したユーザまでの通知音の前記スピーカからの伝達関数である第1の伝達関数と、複数の座席のうちの前記第1の座席と異なる座席である第2の座席に着座したユーザまでの通知音の前記スピーカからの伝達関数である第2の伝達関数とが予め設定された、前記ゲイン調整手段に前記ゲインを設定するゲイン設定手段と、
前記車室内のノイズを収音するマイクとを備え、
前記ゲイン設定手段は、マイクで収音したノイズから各座席におけるノイズの大きさを推定し、推定した各座席におけるノイズのパワーをPN、前記音源から出力された音のレベルをゲイン調整手段で設定されたゲインで調整した信号に前記第1の伝達関数を畳み込んだ信号のパワーをPXA、前記音源から出力された音のレベルをゲイン調整手段で設定されたゲインで調整した信号に前記第2の伝達関数を畳み込んだ信号のパワーをPXAとして、
-0.41PN+34.71<PXA/PN<-0.71PN+57.03、
かつ、
PTA/PN<-0.41PN+34.71
を可及的に満たすように前記ゲイン調整手段に設定するゲインを算出することを特徴とする音響システム。
【請求項4】
請求項1記載の音響システムであって、
前記室内は自動車の車室内であることを特徴とする音響システム。
【請求項5】
請求項2記載の音響システムであって、
前記室内は自動車の車室内であることを特徴とする音響システム。
【請求項6】
請求項3、4または5記載の音響システムであって、
前記第1の座席は前記自動車の運転席であることを特徴とする音響システム。
【請求項7】
請求項6記載の音響システムであって、
前記スピーカは、前記運転席のヘッドレストに設けられていることを特徴とする音響システム。
【請求項8】
請求項6記載の音響システムであって、
前記第2の座席は、前記自動車の運転席を除く座席のうちで、当該座席に座したユーザまでの通知音の前記スピーカからの伝達関数のゲインが最大である座席であることを特徴とする音響システム。
【請求項9】
請求項6記載の音響システムであって、
前記第2の座席は、前記自動車の運転席を除く座席のうちからユーザによって選定された座席であることを特徴とする音響システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のユーザに向けて他のユーザに煩わしさを与えないように音を出力する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特定のユーザに向けて他のユーザに煩わしさを与えないように音を出力する技術としては、自動車の座席のヘッドレストにスピーカを設け、当該スピーカから当該座席に着座したユーザに向けて音を出力する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車の座席のヘッドレストに設けたスピーカから当該座席に着座したユーザに向けて音を出力する場合であっても、音量が大きい場合には、他のユーザにスピーカから出力した音が聞こえてしまい煩わしさを与えてしまう。一方で、他のユーザに聞こえないことが常に担保されるレベルまで音量を小さくすると、当該座席に着座したユーザにとってもスピーカから出力された音が聴き取り難くなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、特定のユーザに向けて他のユーザに煩わしさを与えない範囲内において、当該特定のユーザが聞き取り易い音を出力することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、室内に配置された複数の座席のうちの第1の座席に着座したユーザに、音源から出力された音を通知音として出力する音響システムに、座席に着座したユーザのうちの前記第1の座席に着座したユーザに最も近くなる位置に配置したスピーカと、設定されたゲインで前音記源から出力された音のレベルを調整して前記通知音として前記スピーカに出力するゲイン調整手段と、前記第1の座席に着座したユーザまでの通知音の前記スピーカからの伝達関数である第1の伝達関数と、複数の座席のうちの前記第1の座席と異なる座席である第2の座席に着座したユーザまでの通知音の前記スピーカからの伝達関数である第2の伝達関数とが予め設定された、前記ゲイン調整手段に前記ゲインを設定するゲイン設定手段と、前記室内のノイズを収音するマイクとを備えたものである。ここで、前記ゲイン設定手段は、マイクで収音したノイズから各座席におけるノイズの大きさを推定し、推定したノイズの大きさと前記第1の伝達関数と前記第2の伝達関数とに基づいて、前記第1の座席に着座したユーザの位置においてノイズよりも通知音が大きくなり、前記第2の座席に着座したユーザの位置においてノイズよりも通知音が小さくなる通知音のゲインを算定し、前記ゲイン調整手段に設定する。
【0007】
ここで、この音響システムは、前記ゲイン設定手段において、推定した各座席におけるノイズのパワーをPN、前記音源から出力された音に前記第1の伝達関数を畳み込んだ信号のパワーをPX、前記第1の伝達関数をCd、前記第2の伝達関数をCt、前記ゲイン調整手段に設定するゲインをAとして、
A=α(PN/PX)
1<α<Cd/Ct
を満たすように、前記ゲイン調整手段に設定するゲインを算出するように構成してよい。
【0008】
また、以上の音響システムにおいて、前記室内は自動車の車室内としてよい。
また、本発明は、前記課題達成のために、自動車の車室内に配置された複数の座席のうちの第1の座席に着座したユーザに、音源から出力された音を通知音として出力する音響システムに、各座席に着座したユーザのうちの前記第1の座席に着座したユーザに最も近くなる位置に配置したスピーカと、設定されたゲインで前記音源から出力された音のレベルを調整して前記通知音として前記スピーカに出力するゲイン調整手段と、前記第1の座席に着座したユーザまでの通知音の前記スピーカからの伝達関数である第1の伝達関数と、複数の座席のうちの前記第1の座席と異なる座席である第2の座席に着座したユーザまでの通知音の前記スピーカからの伝達関数である第2の伝達関数とが予め設定された、前記ゲイン調整手段に前記ゲインを設定するゲイン設定手段と、前記車室内のノイズを収音するマイクとを備えたものである。ここで、前記ゲイン設定手段は、マイクで収音したノイズから各座席におけるノイズの大きさを推定し、推定した各座席におけるノイズのパワーをPN、前記音源から出力された音のレベルをゲイン調整手段で設定されたゲインで調整した信号に前記第1の伝達関数を畳み込んだ信号のパワーをPXA、前記音源から出力された音のレベルをゲイン調整手段で設定されたゲインで調整した信号に前記第2の伝達関数を畳み込んだ信号のパワーをPXAとして、
-0.41PN+34.71<PXA/PN<-0.71PN+57.03、
かつ、
PTA/PN<-0.41PN+34.71
を可及的に満たすように前記ゲイン調整手段に設定するゲインを算出する。
【0009】
ここで、以上の前記室内が自動車の車室内である音響システムにおいて、前記第1の座席は前記自動車の運転席としてよい。
また、この場合、前記スピーカは、前記運転席のヘッドレストに設けることが好ましい。
また、この場合、前記第2の座席は、前記自動車の運転席を除く座席のうちで、当該座席に座したユーザまでの通知音の前記スピーカからの伝達関数のゲインが最大である座席としてもよいし、前記自動車の運転席を除く座席のうちからユーザによって選定された座席としてもよい。
【0010】
以上のような音響システムによれば、第1の座席のユーザに対しては、ノイズに埋もれないレベルの通知音を聞かせつつ、第2の座席のユーザが、通知音がノイズでマスクされて明瞭に聞こえなくなるように通知音を出力できる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、特定のユーザに向けて他のユーザに煩わしさを与えない範囲内において、当該特定のユーザが聞き取り易い音を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る音響システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る音響システムのマイクとスピーカの配置を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る音響システムにおいて考慮する伝達関数を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る音響システムの音量制御例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る音響システムの構成を示す。
音響システムは自動車に搭載されるシステムであり、図示するように、通知音を出力する通知音音源1、ゲインAが可変な可変ゲインアンプ2、スピーカ3、マイク4、ゲイン設定部5、制御部6を備えている。
通知音音源1が出力する通知音は、たとえば、カーナビゲーションのメッセージ音声や警告音などの、運転手向けの運転情報を表す音である。
そして、通知音音源1が出力した通知音は、可変ゲインアンプ2でパワーが調整され、スピーカ3から出力される。また、可変ゲインアンプ2のゲインAは、ゲイン設定部5によって設定される。
次に、
図2a、bに示すように、スピーカ3は運転席のヘッドレストに配置され、運転席に着座した運転手に向けて通知音を出力するように配置されている。
また、マイク4は、エンジンノイズやロードノイズなどの車内のノイズを収音する。マイク4は、たとえば天井の車内中央の位置などに配置することができる。
以下、ゲイン設定部5が行う可変ゲインアンプ2のゲインAの設定ついて説明する。
当該設定には、通知音のスピーカ3から各席に着座したユーザまでの対象周波数領域の伝達関数を用いる。
対象周波数領域は、通知音の周波数領域であり、たとえば、人の声の周波数領域である100Hz-1kHzとする。
以下では、
図3に示すように、運転席のヘッドレストに配置したスピーカ3から運転席に着座したユーザ(運転手)までの対象周波数領域の伝達関数をC
dで表し、iを運転席以外の各席の席番号として、スピーカ3から運転席以外の各席に着座したユーザまでの対象周波数領域の伝達関数をC
i(図ではC
1からC
6)で表す。ここで、スピーカ3は運転席のヘッドレストに配置されているので、運転席の伝達関数C
dのゲインは、他の席の伝達関数C
iのゲインよりも顕著に大きくなる。
【0014】
図1に戻り、各席に着座したユーザまでの伝達関数C
d、伝達関数C
iは、予め車種毎などに実測等により求められて制御部6に記憶されている。
制御部6は、運転席の伝達関数C
dをゲイン設定部5に設定すると共に、運転席以外の席のうちの特定の座席に対応する伝達関数をターゲット伝達関数C
tとしてゲイン設定部5に設定する。
ここで、以下では、便宜上、ゲイン設定部5に設定したターゲット伝達関数C
tに対応する席を「ターゲット席」と呼称して説明を行う。
ターゲット伝達関数C
tとしては、伝達関数C
iのうちのゲインが最も大きい伝達関数を設定するか、運転席以外の席のうちのユーザによりターゲット席として設定された席(たとえば、VIP席)に対応する伝達関数を設定する。
【0015】
ここで、ターゲット伝達関数Ctとしては、伝達関数Ciのうちのゲインが最も大きい伝達関数を固定的に設定するようにしてもよく、この場合には、運転席の伝達関数Cdと、伝達関数Ciのうちのターゲット伝達関数Ctとして設定する伝達関数だけを、制御部6に記憶しておくようにしてもよい。または、制御部6に運転席の伝達関数Cdや伝達関数Ciを記憶せずに、運転席の伝達関数Cdと、ターゲット伝達関数Ctとして設定する伝達関数を予めゲイン設定部5に設定しておくようにしてもよい。
【0016】
運転席の伝達関数Cdとターゲット伝達関数Ctを設定されたゲイン設定部5は、マイク4で収音した車内のノイズの対象周波数領域のパワーPNを算出する。ここで、エンジンノイズやロードノイズである車内のノイズのレベルは、車内において一様に同等のレベルとなるため、マイク4で収音したノイズから求めたパワーPNは、車内の各席におけるノイズのパワーを表すものとして用いることができる。
【0017】
そして、ゲイン設定部5は、ノイズのパワーPNと、通知音音源1から入力する通知音と、設定されている運転席の伝達関数Cdと、ターゲット伝達関数Ctから、下式によってゲインAを算出し可変ゲインアンプ2に設定する。
A=α(PN/PX)
1<α<Cd/Ct
但し、PXは、通知音音源1から入力する(ゲイン調整していない)通知音に運転席の伝達関数Cdを畳み込んだ信号のパワーである。
【0018】
ここで、α=1のとき、
A=PN/PXとなり、運転席のユーザに伝わる通知音のパワーA・PXは、
A・PX=(PN/PX)・PX=PNとなるので、運転席における通知音のノイズに対するSNRは0dBとなる。
【0019】
一方、α=Cd/Ctとき、
A=(Cd/Ct)・(PN/PX)となり、ターゲット席のユーザに伝わる通知音のパワーCt・A・(PX/Cd)は、
Ct・A・(PX/Cd)=Ct・(Cd/Ct)・(PN/PX)・(PX/Cd)=(Ct・Cd・PN・PX)/(Ct・PX・Cd)=PNとなるので、ターゲット席における通知音のノイズに対するSNRは0dBとなる。
【0020】
よって、
1<α<Cd/Ctの条件を満たすように、ゲインAを算出して設定することにより、運転席において通知音がノイズより大きくなり、ターゲット席において通知音がノイズより小さくなるように通知音の音量を調整してスピーカ3から出力することができる。
【0021】
したがって、運転席のユーザは、通知音をノイズに埋もれずに聴き取ることができる一方で、ターゲット席のユーザは、通知音がノイズでマスクされて明瞭に聞こえなくなる。
ここで、ゲインAは、1<α<Cd/Ctの条件を満たす範囲内において最大となる値を設定してもよいし、1<α<Cd/Ctの条件を満たす範囲内において、予め設定しておいた標準ゲインに最も近くなるように設定してもよい。
【0022】
なお、ターゲット伝達関数Ctとして、伝達関数Ciのうちのゲインが最も大きい伝達関数を設定した場合、運転席以外の席のうちターゲット席に最も大きく通知音が伝達されるので、上述のようにゲインAを算出して設定することにより、運転席以外の全ての席において通知音がノイズより小さくなる。
【0023】
さて、ゲインAは、ゲイン設定部5において次のように設定してもよい。
ITU勧告 "Recommendation ITU-T P.1150、 In-car communication audio specification" では、下式のUpperのyとLowerのyの間のSNRが、騒音レベルxに対して好ましい音声のSNRであることが示されている。
Upper;y=-0.71x+57.03
Lower;y=-0.41x+34.71
したがって、通知音をゲインAでゲイン調整した信号に運転席の伝達関数Cdを畳み込んだ信号のパワーをPXAとして運転席の通知音のSNRをPXA/PNで表し、通知音をゲインAでゲイン調整した信号にターゲット伝達関数Ctを畳み込んだ信号のパワーをPTAとしてターゲット席の通知音のSNRをPTA/PNで表すと、
-0.41PN+34.71<PXA/PN<-0.71PN+57.03
とすれば、運転席における通知音のSNRがUpperとLowerの間となって、運転席のユーザに好ましいSNRで通知音を聞かせることができる。
【0024】
一方、
PTA/PN<-0.41PN+34.71
とすれば、ターゲット席における通知音のSNRがLower未満となって、通知音がノイズにマスクされ明瞭に聞こえなくなる。
【0025】
そこで、-0.41P
N+34.71<P
XA/P
N<-0.71P
N+57.03、かつ、P
TA/P
N<-0.41P
N+34.71を満たすようにゲインAを算定し設定する。
すなわち、たとえば、
図4に示すようにノイズレベルに対して定まるUpperとLowerの中央値をTargetとして、運転席のSNRが、ノイズのパワーP
Nに対して定まるTargetとなるように求めたゲインAが、P
TA/P
N<-0.41P
N+34.71を満たすものであれば、当該Targetとなるように求めたゲインAを可変ゲインアンプ2に設定する。
【0026】
図4の黒丸はこのようにして設定したゲインAによる運転席のSNRを表し、菱形はこのゲインAにおけるターゲット席のSNRを表す。図示するように、アイドリング時や60km走行時などの異なるノイズレベルにおいて、運転席のユーザに好ましいSNRで通知音を聞かせつつ、ターゲット席においては通知音をノイズでマスクさせ明瞭に聞こえなくすることができる。
【0027】
一方、Targetとなるように求めたゲインAが、PTA/PN<-0.41PN+34.71を満たさない場合には、-0.41PN+34.71<PXA/PNかつPTA/PN<-0.41PN+34.71を満たす最大のゲインAを求め可変ゲインアンプ2に設定する。
【0028】
また、-0.41PN+34.71<PXA/PNかつPTA/PN<-0.41PN+34.71を満たすゲインAが存在しなかった場合には、Mを所定のマージンとして-0.41PN+34.71+M=PXA/PNを満たすゲインAを求め可変ゲインアンプ2に設定する。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明した。
ここで、以上の実施形態では、運転席のヘッドレストにスピーカ3を設けたが、各座席に着座したユーザのうち運転席に着座したユーザに最も近くなる他の位置にスピーカ3を設けてもよい。
また、以上の実施形態は運転席に着座したユーザが通知音を聞こえ、他の席に着座したユーザが通知音を明瞭に聞こえなくなるように制御する場合について示したが、運転席以外の特定の座席に着座したユーザが通知音を聞こえ、特定の座席以外の座席に着座したユーザが通知音を明瞭に聞こえなくなるように制御する場合について、以上の説明における運転席と当該特定の座席の関係を交換することにより同様に適用できる。
【0030】
また、以上の実施形態は自動車室内への適用について説明したが、本実施形態は、複数の座席が固定的に設けられている任意の室内に適用し、当該室内の特定の座席に着座したユーザが通知音を聞こえ、他の席に着座したユーザが通知音を明瞭に聞こえなくなるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1…通知音音源、2…可変ゲインアンプ、3…スピーカ、4…マイク、5…ゲイン設定部、6…制御部。