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  • 特開-内燃機関の燃焼室構造 図1
  • 特開-内燃機関の燃焼室構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009252
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】内燃機関の燃焼室構造
(51)【国際特許分類】
   F02B 23/08 20060101AFI20250110BHJP
   F02F 1/24 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
F02B23/08 X
F02F1/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112119
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】立花 三奈
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】土屋 富久
【テーマコード(参考)】
3G023
3G024
【Fターム(参考)】
3G023AA06
3G023AB01
3G023AD03
3G023AD29
3G024AA02
3G024DA01
(57)【要約】
【課題】水素を燃料とする内燃機関においてプレイグニッションの発生を抑える。
【解決手段】水素を燃料とする内燃機関のシリンダヘッド10には燃焼室12が形成されている。燃焼室12を形成する壁面14は、有底の凹部を有さない面で構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を燃料とする内燃機関のシリンダヘッドに形成される燃焼室の構造であって、
前記燃焼室を形成する壁面は、有底の凹部を有さない面で構成されている
内燃機関の燃焼室構造。
【請求項2】
前記燃焼室を形成する前記壁面は、筒内噴射弁から噴射された燃料が前記壁面に付着することを抑えるための噴霧逃げ部を有していない
請求項1に記載の内燃機関の燃焼室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を燃料とする内燃機関の燃焼室構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2に示すように、特許文献1に記載の内燃機関は、シリンダヘッドには、燃焼室112を形成する壁面114がシリンダヘッド100に形成されている。また、気筒内に液体燃料を噴射する筒内噴射弁の先端部121が燃焼室112に露出するように組み付けられている。そして、筒内噴射弁の先端部121から噴射された燃料が壁面114に付着することを抑えるために、燃焼室112に露出している先端部121の周りには、噴霧逃げ部300が形成されている。噴霧逃げ部300は、壁面114に形成された凹部になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-2201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水素を燃料とする内燃機関では、ガソリンなどを燃料とする内燃機関と比べてプレイグニッションが起きやすい。そのため、プレイグニッションの発生を抑えることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する内燃機関の燃焼室構造は、水素を燃料とする内燃機関のシリンダヘッドに形成される燃焼室の構造であって、前記燃焼室を形成する壁面は、有底の凹部を有さない面で構成されている。
【発明の効果】
【0006】
この内燃機関の燃焼室構造は、水素を燃料とする内燃機関においてプレイグニッションの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態における内燃機関のシリンダヘッドの断面図である。
図2】従来における内燃機関のシリンダヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、内燃機関の燃焼室構造を具体化した一実施形態について、図1を参照して説明する。
<内燃機関のシリンダヘッド周辺の構成について>
図1に、筒内噴射式の内燃機関が備えるシリンダヘッド10の周辺構造を示す。なお、本実施形態の内燃機関は、気体燃料である水素を燃料とする内燃機関である。
【0009】
シリンダヘッド10の下面には、燃焼室12が形成されている。
また、シリンダヘッド10には、燃焼室12に吸気を導入するための吸気ポート15と、燃焼室12から排気を排出するための排気ポート16とが形成されている。
【0010】
吸気ポート15における燃焼室12への開口部分には、内燃機関の吸気行程に開弁して、燃焼室12と吸気ポート15とを連通させる吸気バルブ17が配置されている。
排気ポート16における燃焼室12への開口部分には、内燃機関の排気行程に開弁して、燃焼室12と排気ポート16とを連通させる排気バルブ18が配置されている。
【0011】
シリンダヘッド10において、燃焼室12の上面中央には、プラグ挿入孔11が形成されている。プラグ挿入孔11には、燃料と空気との混合気を火花放電により着火する点火プラグ19が取り付けられている。
【0012】
また、シリンダヘッド10には、内燃機関の気筒内に水素ガスを直接噴射する筒内噴射弁が取り付けられている。筒内噴射弁の先端部21には、燃料を噴射する噴孔が形成されている。
【0013】
シリンダヘッド10には、燃焼室12に開口する挿入孔13が形成されている。挿入孔13には、筒内噴射弁の先端部21が挿入される。
筒内噴射弁の先端部21と燃焼室12との間には、貫通孔32が形成されている。貫通孔32の内径は、挿入孔13よりも小さい。先端部21が有する噴孔から噴射された燃料は、貫通孔32を介して燃焼室12内に供給される。
【0014】
燃焼室12の上面を形成する壁面14は、筒内噴射弁から噴射された燃料が壁面14に付着することを抑えるための噴霧逃げ部を有していない。すなわち、壁面14は、有底の凹部を有さない面で構成されている。
【0015】
<作用及び効果>
本実施形態の作用及び効果を説明する。
水素を燃料とする内燃機関において、従来文献に記載されているような凹部形状の噴霧逃げ部がシリンダヘッドの燃焼室に形成されていると、燃焼が終わった排気行程でも噴霧逃げ部には燃え残った高温の水素ガスが残留する。これは、水素ガスのような気体燃料を噴射する内燃機関では、噴射された燃料が噴射直後から気筒内の上向きのタンブル流によって上方に導かれて凹部に残留しやすいためである。また、水素は空気よりも軽いため、燃焼室壁面の凹部に残留しやすい傾向がある。
【0016】
このようにして残留ガスが凹部に残っている状態で、燃料である水素が気筒内に供給されると、高温の残留ガスを着火源とするプレイグニッションが起きやすいことを本発明者は見出した。
【0017】
そこで、本実施形態では、シリンダヘッド10において燃焼室12を形成する壁面14が、凹部を有していない面で構成されている。従って、シリンダヘッド10に形成される燃焼室12において水素ガスが残留しやすい部位が存在しないため、水素の残留ガスを着火源とするプレイグニッションの発生を抑えることができる。
【0018】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0019】
・上述した貫通孔32を省略して、筒内噴射弁の先端部21を燃焼室12内に露出させてもよい。
・筒内噴射弁に代えて、吸気ポート15内に燃料を噴射するポート噴射弁を内燃機関が備えていてもよい。この場合には、上記挿入孔13及び上記貫通孔32は省略する。
【符号の説明】
【0020】
10…シリンダヘッド
11…プラグ挿入孔
12…燃焼室
13…挿入孔
14…壁面
15…吸気ポート
16…排気ポート
17…吸気バルブ
18…排気バルブ
19…点火プラグ
21…先端部
32…貫通孔
100…シリンダヘッド
112…燃焼室
114…壁面
121…先端部
300…噴霧逃げ部
図1
図2