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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009256
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】プラスチック容器及び充填製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 23/00 20060101AFI20250110BHJP
   B65D 85/72 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B65D23/00 H
B65D85/72 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112128
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】山口 菜穂
(72)【発明者】
【氏名】吉井 孝平
(72)【発明者】
【氏名】石井 大輔
【テーマコード(参考)】
3E035
3E062
【Fターム(参考)】
3E035AA03
3E035BA04
3E035BB10
3E035BC02
3E035BD04
3E062AA09
3E062AB02
3E062AC02
3E062DA02
3E062DA09
3E062JA04
3E062JA08
3E062JB26
(57)【要約】
【課題】本開示は、リサイクル適性を維持できるインク塗布量と1次元コード又は2次元コードをリーダーで読み取り可能なコントラストとを両立したプラスチック容器を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示に係るプラスチック容器1は、容器本体10と、アルカリ剥離性を有するプライマー層21とインク層22とを含む印刷部20と、を備えるプラスチック容器であって、印刷部は、識別コード部20Aを有し、識別コード部は、インク層として、1次元コードのバーの集合体又は2次元コードのセルの集合体を示す情報画像部22Aを少なくとも有し、かつ、容器本体から識別コード部を含む領域を切り出したプラスチック片100を白紙上に載置して平面状に押し付けた状態で、コード検証機によって測定したシンボルコトントラストが、20%以上であり、印刷部の乾燥インク付着量の合計量は、容器本体と印刷部との合計質量に対して2.5質量%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部と該口部に連接する胴部とを有する容器本体と、
前記胴部の外表面上に設けられたアルカリ剥離性を有するプライマー層と該プライマー層上に設けられたインク層とを含む印刷部と、
を備えるプラスチック容器であって、
前記印刷部は、識別コード部を有し、
該識別コード部は、前記インク層として、1次元コードのバーの集合体又は2次元コードのセルの集合体を示す情報画像部を少なくとも有し、かつ、
前記容器本体から前記識別コード部を含む領域を切り出したプラスチック片を白紙上に載置して平面状に押し付けた状態で、ISO/IEC 15415,ISO/IEC 15416に準拠したコード検証機によって測定したシンボルコトントラスト(SC)が、20%以上であり、
前記印刷部の乾燥インク付着量の合計量は、前記容器本体と前記印刷部との合計質量に対して2.5質量%以下であることを特徴とするプラスチック容器。
【請求項2】
前記識別コード部は、前記インク層として背景印刷部を更に有することを特徴とする請求項1に記載のプラスチック容器。
【請求項3】
前記識別コード部1個当たりの乾燥インク付着量は、0.150~300mg/個であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック容器。
【請求項4】
前記識別コード部が、1次元コードを示し、
前記識別コード部1個当たりの乾燥インク付着量は、5.00~300mg/個であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック容器。
【請求項5】
前記識別コード部が、2次元コードを示し、
前記識別コード部1個当たりの乾燥インク付着量は、0.150~170mg/個であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック容器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一つに記載のプラスチック容器に内容物が充填されている充填製品。
【請求項7】
口部と該口部に連接する胴部とを有する容器本体と、
前記胴部の外表面上に設けられたアルカリ剥離性を有するプライマー層と該プライマー層上に設けられたインク層とを含む印刷部と、
を備えるプラスチック容器に白色の内容物が充填されている充填製品であって、
前記印刷部は、識別コード部を有し、
該識別コード部は、前記インク層として、1次元コードのバーの集合体又は2次元コードのセルの集合体を示す情報画像部だけを有し、かつ、
前記容器本体から前記識別コード部を含む領域を切り出したプラスチック片を白紙上に載置して平面状に押し付けた状態で、ISO/IEC 15415,ISO/IEC 15416に準拠したコード検証機によって測定したシンボルコトントラスト(SC)が、20%以上であり、
前記印刷部の乾燥インク付着量の合計量は、前記容器本体と前記印刷部との合計質量に対して2.5質量%以下であり、
前記識別コード部1個当たりの乾燥インク付着量は、0.150~130mg/個であることを特徴とする充填製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラスチック容器及び充填製品に関する。
【背景技術】
【0002】
省資源の機運が高まっており、ワンウェイプラスチックの削減が求められている。PETボトルをはじめとしたプラスチック容器のラベルはその用途が終了した後は、廃棄され、特にプラスチックラベルは再生利用も困難なために廃棄率が非常に高い。そこで、ラベルレスを実現するため、プラスチック容器へ直接印字を形成する技術が開発されている(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1では、商品の名称、原材料名、内容量、賞味期限、製造元など必要な商品情報をボトルに直接刻印印字する技術が提案されている。
【0003】
近年、特許文献1で刻印印字されたような商品情報は、1次元コード又は2次元コードに記録されることが増加しており、ボトルに印字された1次元コード又は2次元コードの情報が正しく印字されているかを検査する装置が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-11819号公報
【特許文献2】WO2020/071188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラベルレスのプラスチック容器において、リサイクル適性を満たすためには、使用するインク塗布量の総量を減らすことが求められる。一方で、市場での差別化を図る一環として、高い美粧性又は広い印刷面積のデザイン画像が求められる場合があり、デザイン画像及び商品情報を含む画像全体のインク塗布量の総量を減らす方策が求められている。特許文献1のような刻印印字では、印字の色は白だけであり、デザイン画像の美粧性が不足する。また、刻印印字で1次元コード又は2次元コードを印字した場合、コード部が白色となり、特許文献2のような2値化しきい値によって印字の良否を判別する印字検査装置では適切にコードを判別できない場合がある。
【0006】
このため、着色インクを使用してプラスチック容器の外表面にダイレクト印刷する場合において、デザイン画像及び商品情報を含む画像全体のインク塗布量の総量を、リサイクル適性を満たす範囲とすることが求められている。しかし、商品情報として1次元コード又は2次元コードを使用し、1次元コード又は2次元コードのインク塗布量を減らすにあたり、コードリーダーで読み取り可能なインク塗布量とシンボルコントラストとの関係は、未だ見いだされていなかった。
【0007】
本開示は、リサイクル適性を維持できるインク塗布量と1次元コード又は2次元コードをリーダーで読み取り可能なコントラストとを両立したプラスチック容器及び充填製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプラスチック容器は、口部と該口部に連接する胴部とを有する容器本体と、前記胴部の外表面上に設けられたアルカリ剥離性を有するプライマー層と該プライマー層上に設けられたインク層とを含む印刷部と、を備えるプラスチック容器であって、前記印刷部は、識別コード部を有し、該識別コード部は、前記インク層として、1次元コードのバーの集合体又は2次元コードのセルの集合体を示す情報画像部を少なくとも有し、かつ、前記容器本体から前記識別コード部を含む領域を切り出したプラスチック片を白紙上に載置して平面状に押し付けた状態で、ISO/IEC 15415,ISO/IEC 15416に準拠したコード検証機によって測定したシンボルコトントラスト(SC)が、20%以上であり、前記印刷部の乾燥インク付着量の合計量は、前記容器本体と前記印刷部との合計質量に対して2.5質量%以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るプラスチック容器では、前記識別コード部は、前記インク層として背景印刷部を更に有することが好ましい。内容液の色にかかわらず、読取り可能なコードとすることができる。
【0010】
本発明に係るプラスチック容器では、前記識別コード部1個当たりの乾燥インク付着量は、0.150~300mg/個であることが好ましい。コードを読み取り可能なコントラストを維持しながらリサイクル適性をより高めることができる。
【0011】
本発明に係るプラスチック容器では、前記識別コード部が、1次元コードを示し、前記識別コード部1個当たりの乾燥インク付着量は、5.00~300mg/個であることが好ましい。1次元コードを読み取り可能なコントラストを維持しながらリサイクル適性をより高めることができる。
【0012】
本発明に係るプラスチック容器では、前記識別コード部が、2次元コードを示し、前記識別コード部1個当たりの乾燥インク付着量は、0.150~170mg/個であることが好ましい。2次元コードを読み取り可能なコントラストを維持しながらリサイクル適性をより高めることができる。
【0013】
本発明に係る充填製品は、本発明に係るプラスチック容器に内容物が充填されていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る充填製品は、口部と該口部に連接する胴部とを有する容器本体と、前記胴部の外表面上に設けられたアルカリ剥離性を有するプライマー層と該プライマー層上に設けられたインク層とを含む印刷部と、を備えるプラスチック容器に白色の内容物が充填されている充填製品であって、前記印刷部は、識別コード部を有し、該識別コード部は、前記インク層として、1次元コードのバーの集合体又は2次元コードのセルの集合体を示す情報画像部だけを有し、かつ、前記容器本体から前記識別コード部を含む領域を切り出したプラスチック片を白紙上に載置して平面状に押し付けた状態で、ISO/IEC 15415,ISO/IEC 15416に準拠したコード検証機によって測定したシンボルコトントラスト(SC)が、20%以上であり、前記印刷部の乾燥インク付着量の合計量は、前記容器本体と前記印刷部との合計質量に対して2.5質量%以下であり、前記識別コード部1個当たりの乾燥インク付着量は、0.150~130mg/個であることを特徴とする。コードを読み取り可能なコントラストを維持しながらリサイクル適性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、リサイクル適性を維持できるインク塗布量と1次元コード又は2次元コードをリーダーで読み取り可能なコントラストとを両立したプラスチック容器及び充填製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るプラスチック容器の一例を示す画像である。
図2】識別コード部の一例を示す概略断面図である。
図3】識別コード部の別の例を示す概略断面図である。
図4】プラスチック片の一例を示す概略平面図であり、印刷層が1次元コードを示す一例である。
図5】プラスチック片の一例を示す概略平面図であり、印刷層が2次元コードを示す一例である。
図6】シンボルコントラストの測定方法を説明するための概略図であり、(a)は白紙上にプラスチック片を載せた状態、(b)は白紙上にプラスチック片を押し付けた測定時の状態を示す。
図7】本実施形態に係る充填製品の一例を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0018】
本実施形態に係るプラスチック容器1は、図1に示すように、口部11と口部11に連接する胴部12とを有する容器本体10と、図2に示すように、胴部12の外表面上に設けられたアルカリ剥離性を有するプライマー層21とプライマー層21上に設けられたインク層22とを含む印刷部20と、を備えるプラスチック容器であって、印刷部20は、識別コード部20Aを有し、識別コード部20Aは、インク層22として、1次元コードのバーの集合体又は2次元コードのセルの集合体を示す情報画像部22Aを少なくとも有し、かつ、容器本体10から識別コード部20Aを含む領域を切り出したプラスチック片100(図4又は図5に図示)を白紙上に載置して平面状に押し付けた状態で、ISO/IEC 15415,ISO/IEC 15416に準拠したコード検証機によって測定したシンボルコトントラスト(SC)が、20%以上であり、印刷部20の乾燥インク付着量の合計量は、容器本体10と印刷部20との合計質量に対して2.5質量%以下である。
【0019】
プラスチック容器1の材料となる熱可塑性合成樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、シクロオレフィンコポリマー樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマ樹脂、ポリ‐4‐メチルペンテン-1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン‐ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、又は、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン樹脂を例示することができる。この中で、PETが特に好ましい。プラスチック容器1の容量は、特に制限はなく、例えば280ml~2000mlである。
【0020】
プラスチック容器1の成形方法は、特に限定されないが、例えば、ブロー成形法である。具体的には、まず、熱可塑性樹脂を射出成形してプリフォームを製造し、次に、プリフォームをブロー成形して、図1に示すように、口部11及び胴部12が順に連接された形状を有するプラスチック容器1を製造する。
【0021】
容器本体10は、内容物を収容する内部空間を有する。内容物は、特に限定されないが、例えば、飲料、酒類、調味料などの液体、食品、薬品又は工業製品である。飲料は、例えば、牛乳、ヨーグルト飲料、乳酸菌飲料、乳飲料、アルコール飲料などの白色飲料、ストレートティー、レモンティー、緑茶、果汁系飲料、炭酸飲料、ビールなどの有色透明飲料、ミルクティー、コーヒーなどの混濁色飲料又はスポーツ飲料、水、炭酸水、酎ハイなどの透明飲料である。
【0022】
口部11は、内容物の充填口及び注ぎ口である。口部11には、キャップ(不図示)が装着されることによってボトルの密閉がなされる。口部11の下端には、ネックサポートリングが形成されていてもよい。
【0023】
胴部12は、口部11の下端に連接する部分であり、口部11側から順に、口部11の下端から下方に向かうにしたがって胴径を拡径させた上胴部12aと、筒状の胴部本体12bと、胴部本体12bとほぼ同じ胴径で連接して接地面を有する下胴部12cと、を有していてもよい。上胴部12aは、その形状から肩部と呼ばれることもある。胴部本体12bは、例えば、円筒形状又は正n角筒形状(ただし、nは4以上の整数である。)である。下胴部12cは、容器本体10の底部となる。
【0024】
印刷部20は、上胴部12a、胴部本体12b及び下胴部12cの少なくともいずれか一部に設けられる。図1では一例として、胴部本体12bに印刷部20として1次元コードを示す識別コード部20Aが設けられた形態を示したが、本発明はこれに限定されない。胴部12がリブを有する場合、識別コード部20Aは、リブを避けた部分に設けることが好ましい。印刷部20は、識別コード部20Aだけであるか、又は識別コード部20Aに加えて、デザイン画像部(不図示)を含んでいてもよい。また、印刷部20が設けられる領域は、1カ所だけであるか、又は2カ所以上であってもよい。印刷部20は胴部12のうち光透過性を有する部分に設けられることが好ましい。光透過性を有する形態は、例えば、無彩色であり胴部12の向こう側が透けて見える程度の可視光透過率を有する無色透明、有彩色であり胴部12の向こう側が透けて見える程度の可視光透過率を有する有色透明、胴部12を透過した光によって胴部12の向こう側の文字が読める程度の可視光透過率を有する半透明、又は胴部12を透過した光によって胴部12の向こう側の文字は読めないがシルエットは見える程度の可視光透過率を有する不透明を包含する。胴部12の少なくとも一部が光透過性を有する容器は、特に限定されないが、例えば、胴部12の全体が無色透明である一般的なペットボトル、胴部12の少なくとも一部が半透明又は可視光透過率を有する不透明である発泡ペットボトルを包含する。
【0025】
印刷部20は、図2に示すように、胴部12の外表面側から順に、プライマー層21、インク層22を有する。
【0026】
プライマー層21は、胴部12と印刷部20のインクとの密着性を確保するための層であり、かつ、アルカリ剥離性によってプラスチック容器1のリサイクル時に、印刷部20全体を胴部12から剥離させて分離可能とするための層である。プライマー層21は、アルカリ剥離性を有する。例えば、ペットボトルなどの容器は、リサイクルシステムにおいて、破砕処理及び粉砕処理を行った後、比重分離法によって比重の大きい容器の粉砕物と、比重の小さい蓋の粉砕物とに選別される。この選別は、例えば、容器を処理液(例えば、アルカリ水溶液)に浸漬させることによって行われる。プライマー層21がアルカリ剥離性を有することで、リサイクル適性に優れた容器とすることができる。アルカリ剥離性とは、アルカリ溶液に浸漬させると胴部12からプライマー層21が剥がれる性質をいう。アルカリ剥離性は、例えば、プライマー層21がアルカリに溶解して胴部12から剥離してもよいし、あるいはプライマー層21がアルカリに溶解せずアルカリ溶液中で胴部12とプライマー層21との間で界面剥離してもよい。本実施形態では、プライマー層21は、例えば、プラスチック容器1の少なくとも印刷部20を含む領域を、85℃以上90℃以下の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液中に15分浸漬および攪拌させると、印刷部20の少なくとも一部が胴部12から剥がれることが好ましい。プライマー層の厚さは、特に限定されないが、6~26μmであることが好ましく、11~15μmであることがより好ましい。
【0027】
プライマー層21は、例えば、プライマー層形成用組成物の塗膜であり、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの硬化膜であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、例えば、重合性モノマーと、重合性界面活性剤と、を含むことが好ましい。重合性モノマーは、アルカリ剥離性の観点から、少なくとも多官能モノマーを含むことが好ましい。多官能モノマーは、重合性基を2つ以上有するモノマーであれば特に限定されない。多官能モノマーは、硬化性の観点から、多官能のラジカル重合性モノマーであることが好ましく、多官能エチレン性不飽和モノマーであることがより好ましく、例えば、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートである。また、重合性モノマーは、多官能モノマーに加えて、更に単官能モノマーを含んでいてもよい。単官能モノマーは、重合性基を1つ有するモノマーであれば特に限定されない。単官能モノマーは、硬化性の観点から、単官能のラジカル重合性モノマーであることが好ましく、単官能エチレン性不飽和モノマーであることがより好ましい。単官能エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、単官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリルアミド、単官能芳香族ビニル化合物、単官能ビニルエーテル及び単官能N-ビニル化合物が挙げられ、例えば、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、ステアリル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートである。重合性界面活性剤としては、例えば、重合性シリコーン系界面活性剤、重合性フッ素系界面活性剤、及び重合性アクリル系界面活性剤が挙げられる。重合性シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、BYK-UV3500、3505、3530、3570、3575、3576(BYK社製)、Tegorad2100、2200、2250、2300、2500、2600、2700、2800、2010、2011(エボニック社製)、EBECRYL350、1360(ダイセル・オルネクス社製)、KP-410、411,412,413,414,415,416,418、420、422、423(信越シリコーン社製)等の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン系界面活性剤が挙げられる。重合性フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキル基と重合性基とを有する化合物が挙げられる。重合性フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックRS-56、RS-72-K、RS-75、RS-76-E、RS-65-NS、RS-78、RS-90(DIC社製)等の(メタ)アクリロイル基を有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。重合性アクリル系界面活性剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル構造の側鎖に重合性基が結合した化合物が挙げられる。重合性アクリル系界面活性剤の市販品としては、例えば、CN821(Sartomer社製)が挙げられる。活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、少なくとも1種の重合開始剤を含有してもよい。重合開始剤は、ラジカルを発生するラジカル重合開始剤であることが好ましく、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、1,3-ジ({α-[1-クロロ-9-オキソ-9H-チオキサンテン-4-イル)オキシ]アセチルポリ[オキシ(1-メチルエチレン)]}オキシ)-2,2-ビス({α-[1-メチルエチレン)]}オキシメチル)プロパンである。
【0028】
インク層22は、プライマー層21上に形成されて、文字、数字若しくは記号(以降、文字、数字又は記号をまとめて文字等ということもある)、及び/又は、イラスト若しくはアイコンなどのデザイン画像を示す層である。インク層22は、1層だけからなるか、又は2層以上であってもよい。
【0029】
識別コード部20Aのインク層22は、1次元コードのバーの集合体又は2次元コードのセルの集合体を示す情報画像部22Aを有する。識別コード部20Aのインク層22は、情報画像部22Aに加えて、文字等及び/又はデザイン画像を示すその他の画像部を有していてもよい。1次元コードは、例えば、JAN/EAN/UPCコード、ITFコード、CODE39、NW-7(CODABAR)又はCODE128などのバーコードである。2次元コードは、例えば、QRコード(登録商標)、microQRコード(登録商標)、DataMatrix又はVeriCodeなどのマトリクス型2次元コード、PDF417又はCODE49などのスタック型2次元コードである。情報画像部22Aの厚さは、特に限定されないが、6~26μmであることが好ましく、6~15μmであることがより好ましい。
【0030】
本実施形態に係るプラスチック容器1では、識別コード部20Aは、図3に示すように、インク層22として背景印刷部22Bを更に有することが好ましい。本実施形態に係るプラスチック容器1では、内容物を充填した充填製品として市場を流通し、市場において識別コード部20Aの1次元コード又は2次元コードが読み取られる場合がある。このような場合に、識別コード部20Aのインク層22が情報画像部22Aに加えて背景印刷部22Bを有することで、内容液の色にかかわらず、識別コード部20が示す1次元コード又は2次元コードを読取り可能とすることができる。また、内容物が充填される前の空ボトルについて1次元コード又は2次元コードが読み取られる場合には、コードの背景が透明であると読取ができない場合があるところ、識別コード部20Aのインク層22が情報画像部22Aに加えて背景印刷部22Bを有することで、識別コード部20が示す1次元コード又は2次元コードを読取り可能とすることができる。背景印刷部22Bは、プライマー層21と情報画像部22Aとの間に設けられたベタ印刷であることが好ましく、1度塗りであるか、又は2度塗り以上の重ね塗りであってもよい。背景印刷部22Bの厚さは、特に限定されないが、6~26μmであることが好ましく、11~15μmであることがより好ましい。また、背景印刷部22Bは、情報画像部22Aのバー同士の間又はセル同士の間に印刷された白印刷であってもよい。この場合、背景印刷部22B及び情報画像部22Aはプライマー層21上に形成される。
【0031】
デザイン画像部のインク層は、例えば、商品名若しくは会社名などを示すロゴ、又は、色彩、絵画、写真、イラスト若しくは模様などの意匠性を高めるための画像を示す部分である。
【0032】
インク層22は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの硬化物を有することが好ましい。活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、着色剤を含む以外は、プライマー層形成用組成物の好ましい形態として例示した活性エネルギー線硬化型インクジェットインクと同様の構成を有する。着色剤としては、染料及び顔料が挙げられる。耐熱性、耐光性、耐水性等の耐久性の観点から、着色剤は、顔料であることが好ましい。顔料としては、通常市販されている有機顔料及び無機顔料のいずれも使用することができる。顔料としては、例えば、伊藤征司郎編「顔料の辞典」(2000年刊)、W.Herbst,K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、特開2002-12607号公報、特開2002-188025号公報、特開2003-26978号公報及び特開2003-342503号公報に記載の顔料が挙げられる。着色剤の色は、例えば、黒、白、青、赤、緑、黄、橙など何色でもよく、特に限定されるものではないが、識別コード部20Aの情報画像部22Aを印刷する場合は、黒、青又は緑であることが好ましい。また、背景印刷部22Bを印刷する場合は、白、赤、黄又は橙であることが好ましい。黒色顔料は、例えば、カーボンブラックである。白色顔料は、例えば、二酸化チタンである。
【0033】
印刷部20の乾燥インク付着量の合計量は、容器本体10と印刷部20との合計質量に対して2.5質量%であり、2.4質量%以下が好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以下であることが更に好ましい。印刷部20の乾燥インク付着量の合計量の下限値は、容器本体の質量に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、容器本体10と印刷部20との合計質量に対して0.17質量%以上である。印刷部20の乾燥インク付着量の合計量は、プライマー層21の乾燥質量及びインク層22の乾燥質量の合計である。例えば、印刷部20が識別コード部20A及びデザイン画像部である場合、印刷部20の乾燥インク付着量の合計量は、識別コード部20Aにおけるプライマー層21の乾燥質量及びインク層22の乾燥質量に、デザイン画像部におけるプライマー層21の乾燥質量及びインク層22の乾燥質量を加えた量である。印刷部20の乾燥インク付着量の合計量は、例えば、次のように求めることができる。予めプラスチック容器1全体の質量(質量W1)を測定しておき、当該プラスチック容器1を少なくとも印刷部20を含む領域がアルカリ溶液(例えば85℃以上90℃以下の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液)に浸漬させて印刷部20を剥離除去して乾燥させた容器本体10の質量(質量W2)を測定する。そして、質量W1と質量W2との差(W1-W2)が、印刷部20の乾燥インク付着量の合計量である。容器本体10の質量は、印刷部20を設ける前の容器本体10自体の質量であり、前記質量W2である。容器本体10と印刷部20との合計質量は、容器本体10の質量に印刷部20の乾燥インク付着量の合計量を足した質量であり、前記質量W1と前記質量W2との和(W1+W2)である。容器本体として発泡ペットボトルを用いる場合、インク層22が背景印刷部22Bを有さず、情報画像部22Aだけを有していても、読み取り可能なシンボルコントラストを確保できる。このため、プラスチック容器1全体において乾燥インク付着量の総量を削減することができる。
【0034】
プライマー層形成用組成物及びインク層形成用組成物が活性エネルギー線硬化型インクジェットインクである場合について、印刷部20の形成方法の一例を説明する。まず、プライマー層形成用組成物として活性エネルギー線硬化型インクジェットインクをインクジェットヘッドから吐出して胴部12の外表面に付着させる。その後、活性エネルギー線を照射して硬化膜を形成する。この硬化膜がプライマー層21である。次いで、インク層形成用組成物として活性エネルギー線硬化型インクジェットインクをインクジェットヘッドから吐出してプライマー層21上に付着させる。その後、活性エネルギー線を照射して硬化物を形成する。インク層22が2層以上である場合は、インクの付着及び硬化を繰り返す。得られた硬化物がインク層22である。活性エネルギー線は、特に限定されず、例えば、γ線、β線、電子線、紫外線又は可視光線である。このうち、活性エネルギー線は、紫外線であることが好ましい。
【0035】
識別コード部20Aは、図4又は図5に示すように、容器本体10から識別コード部20Aを含む領域を切り出したプラスチック片100を、図6(b)に示すように、白紙901上に載置して平面状に押し付けた状態で、ISO/IEC 15415,ISO/IEC 15416に準拠したコード検証機によって測定したシンボルコトントラスト(以降、白紙上でのシンボルコントラスト、白紙上でのSCということもある。)が、20%以上である。識別コード部20Aの白紙上でのシンボルコントラストは、40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。白紙901とは、色が白い紙であればよく、特に限定されないが、例えば、普通紙、コート紙、白板紙である。白紙の白色度は、特に限定されないが、70~100%であることが好ましく、80~95%であることがより好ましい。白紙の厚さは、特に限定されないが、0.05~1.00mmであることが好ましく、0.07~0.50mmであることがより好ましい。シンボルコントラストを測定時に作業台などの平滑面900に白紙を載置した状態において、白紙の厚さが薄くて台の色が透ける場合、台の色が透けなくなるように複数枚の白紙を重ねてシンボルコントラストを測定する。
【0036】
プラスチック片100は、図4又は図5に示すように、識別コード部20Aの周囲に10~40mm程度の余白を設けて胴部12を切り出すことが好ましい。識別コード部20Aが1次元コードを示す場合、プラスチック片100のサイズは、バーの長さ方向の長さが45~200mmであり、かつ、コードの幅方向の長さが15~70mmであることが好ましい。識別コード部20Aが2次元コードを示す場合、プラスチック片100のサイズは、一辺の長さが16~70mmであることが好ましい。本発明はプラスチック片100のサイズに限定されない。
【0037】
識別コードの白紙上でのシンボルコントラストの測定は、例えば次のように行う。胴部12が円筒形状である場合、プラスチック片100は図6(a)に示すように湾曲しているが、作業台などの平滑面900上に白紙901を載せ、図6(b)に示すように、その白紙901にプラスチック片100を押し付けて白紙901とプラスチック片100との間に隙間がない状態として、バーコード検証機で識別コード部20Aでの読取りを行う。これによって、シンボルコントラストを測定する。バーコード検証機は、ISO/IEC 15415,ISO/IEC 15416に準拠している装置であり、例えば、MICROSCAN社製のLVS-9580 Verifierである。
【0038】
本実施形態に係るプラスチック容器1では、識別コード部20Aの1個当たりの乾燥インク付着量は、0.150~300mg/個であることが好ましく、0.200~280mg/個であることがより好ましく、0.300~220mg/個であることが更に好ましい。0.150mg/個未満では、シンボルコントラストが低くなり、コードを読み取りできない場合がある。300mg/個を超えると、インク使用量が過剰となる場合がある。識別コード部20Aの1個あたりの乾燥インク付着量は、1個の1次元コード及びこれに付随する印刷に係る乾燥インク総量、又は1個の2次元コード及びこれに付随する印刷に係る乾燥インク総量である。例えば、識別コード部20Aが、プライマー層21と、背景印刷部22Bと、情報画像部22Aとを有する場合、識別コード部20Aの1個あたりの乾燥インク付着量は、プライマー層21の乾燥質量と、背景印刷部22Bの乾燥質量と、情報画像部22Aの乾燥質量と、の合計量である。
【0039】
本実施形態に係るプラスチック容器1では、識別コード部が、1次元コードを示し、識別コード部20Aの1個当たりの乾燥インク付着量は、5.00~300mg/個であることが好ましく、7.00~280mg/個であることがより好ましい。5.00mg/個未満では、シンボルコントラストが低くなり、コードを読み取りできない場合がある。300mg/個を超えると、インク使用量が過剰となる場合がある。1次元コードを読み取り可能なコントラストを維持しながらリサイクル適性をより高めることができる。
【0040】
本実施形態に係るプラスチック容器1では、識別コード部20Aが、2次元コードを示し、識別コード部20Aの1個当たりの乾燥インク付着量は、0.150~170mg/個であることが好ましく、0.200~160mg/個であることがより好ましい。0.150mg/個未満では、シンボルコントラストが低くなり、コードを読み取りできない場合がある。170mg/個を超えると、インク使用量が過剰となる場合がある。2次元コードを読み取り可能なコントラストを維持しながらリサイクル適性をより高めることができる。
【0041】
本実施形態に係る充填製品は、本実施形態に係るプラスチック容器1に内容物が充填されている。本実施形態に係る第一例の充填製品では、識別コード部は、図3に示すように、インク層として背景印刷部22Bを更に有することが好ましい。第一例の充填製品は、背景印刷部22Bを有することで、内容物の色にかかわらず、識別コード部20が示す1次元コード又は2次元コードを読取り可能とすることができる。内容物は、特に限定されず、例えば、上記した内容物である。また、第一例の充填製品では、内容物の色は特に限定されない。
【0042】
本実施形態に係る第二例の充填製品2は、図7に示すように、本実施形態に係るプラスチック容器1に内容物が充填されている充填製品であって、内容物の色は、白色である。図7に示す充填製品2は、図1に示すプラスチック容器1に白色の内容物として乳酸菌飲料(キリン iMUSE(登録商標) ヨーグルトテイスト、キリンビバレッジ社製)を充填し、口部11(図1に図示)にキャップ30を螺合して密封している。白色は、乳白色、白濁及び半透明白を包含する。白色の内容物は、特に限定されないが、例えば、牛乳、ヨーグルト飲料、乳酸菌飲料、乳飲料、アルコール飲料などの白色飲料である。
【0043】
本実施形態に係る第二例の充填製品では、識別コード部20Aは、図2に示すように、インク層22として情報画像部22Aだけを有し、識別コード部20Aの1個当たりの乾燥インク付着量は、0.150~130mg/個である。識別コード部20Aの1個当たりの乾燥インク付着量は、0.200~120mg/個であることがより好ましい。0.150mg/個未満では、シンボルコントラストが低くなり、コードを読み取りできない場合がある。130mg/個を超えると、インク使用量が過剰となるが得られない場合がある。内容物が白色である場合、背景印刷部22Bを設けなくても、充填製品の識別コード部20Aは、白紙上のシンボルコントラスト相当のシンボルコントラストが確保できるため、背景印刷部22Bを省略することができる。結果として、プラスチック容器1全体において乾燥インク付着量の総量を削減することができる。識別コード部20Aが、1次元コードを示す場合、5.00~127mg/個であることが好ましく、7.00~125mg/個であることがより好ましく、7.50~120mg/個であることが更に好ましい。識別コード部20Aが、2次元コードを示す場合、0.150~90mg/個であることが好ましく、0.200~75mg/個であることがより好ましく、0.300~60mg/個であることが更に好ましい。コードを読み取り可能なコントラストを維持しながらリサイクル適性をより高めることができる。
【実施例0044】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0045】
(実験例1)
(プライマー層の形成)
インクジェット記録装置(Cylinder JET、トライテック社製)及びインクジェットヘッド(KM1024i、コニカミノルタ製)を用いて、図1に示すように、円筒状の胴部本体12bを有する内容量450mlの容器本体10の胴部本体12bに、プライマー層形成用組成物としてアルカリ剥離性を有するUV硬化性インクジェットインク(以降、プライマーという。)を付与した。具体的には、容器本体10の長手方向に41cm、容器本体10の周方向に14cmの領域に、打滴量14pL及び解像度720×720dpi(dot per inch)の条件で、プライマーを付与し、100%ベタ画像を記録した。プライマーを付与した後、インクジェット記録装置に付属しているLED光源を用いて、露光量0.5J/cmで紫外線を照射してプライマー層21を形成した。LED光源として、ピーク波長385nmのUV-LED照射機(G5A、京セラ製)を用いた。容器本体10の質量は28gであった。
【0046】
(背景印刷部の形成)
次いで、プライマーの付与と同様の条件で、プライマー層21上に、インク層形成用組成物として白色顔料を含有する白色UV硬化性インクジェットインク(以降、白インクという。)を付与し、背景印刷部22Bとして所定濃度の白ベタ画像を記録し、プライマーの硬化と同様の条件で紫外線を照射した。
【0047】
(情報画像部の形成)
次いで、背景印刷部22B上に、打滴量14pL及び解像度720×720dpi(dot per inch)の条件で、インク層形成用組成物として黒色顔料を含有する黒色UV硬化性インクジェットインク(以降、黒インクという。)を付与し、情報画像部22Aとして所定濃度の1次元コードの画像を記録し、プライマーの硬化と同様の条件で紫外線を照射した。プライマー層形成用組成物及びインク層形成用組成物は、発明の詳細な説明で例示した組成を有する。1次元コードの画像は、トランケーションした標準バーコードとし、サイズは、バーコードの高さ9mm、バーコードの幅37.29mmとした。
【0048】
実験例1について、白インクのイラストレーターでの濃度表示(以降、白インクの濃度という。)を100%、80%、60%、40%、20%、0%とし、黒インクのイラストレーターでの濃度表示(以降、黒インクの濃度という。)を100%、80%、60%、40%、20%として、白インクの濃度及び黒インクの濃度を組合わせて、前記の通り識別コード部20Aの印刷を行った。白インクの濃度0%は、背景印刷部の形成を行わず、プライマー層21上に直接情報画像部22Aを形成したことを意味する。
【0049】
(実験例2)
実験例1のプライマー層の形成において、プライマーの付与領域を、容器本体10の長手方向に42cm、容器本体10の周方向に15cmの領域に変更し、実験例1の情報画像部の形成において、情報画像部22Aとして所定濃度の2次元コードの画像を記録した以外は実験例1と同様にして識別コード部20Aの印刷を行った。2次元コードの画像は、50×50セルとし、サイズは12.60mm×12.60mmとした。
【0050】
(乾燥インク付着量)
プライマーの乾燥質量(g)は、インクジェット記録装置から吐出されたプライマーの総量(ml)にプライマーの比重(g/ml)を乗じて求めた。白インクの乾燥質量及び黒インクの乾燥質量も、プライマーの乾燥質量を同様にして求めた。識別コード部1個当たりの乾燥インク付着量は、プライマーの乾燥質量と、白インクの乾燥質量と、黒インクの乾燥質量との和である。識別コード部20Aとして1次元コードの1個当たりの、白インクの濃度及び黒インクの濃度の各組合せにおける白インクの乾燥質量、黒インクの乾燥質量、プライマーの乾燥質量を表1に示し、識別コード部20Aとして2次元コードの1個当たりの、白インクの濃度及び黒インクの濃度の各組合せにおける白インクの乾燥質量、黒インクの乾燥質量、プライマーの乾燥質量を表2に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
(読取評価)
実験例1及び実験例2の識別コード部20Aの読取評価を次のとおり行った。1次元コードの結果を表1、2次元コードの結果を表2に示す。読取評価は、実験例1のプラスチック容器1から識別コード部20Aを含む領域を切り出したプラスチック片100を用いて、作業台上白紙としてコピー用紙(PPC用紙-RJ、三菱王子紙販売社製)を作業台の色が透けない枚数を重ねて載せ、当該白紙上にプラスチック片100を押し当てて平坦状とし、バーコード検証機(LVS-9580 Verifier MICROSCAN社製)を用いて、識別コード部20Aの1次元コード又は2次元コードの読み取りを行った。バーコード検証機でシンボルコントラストのグレード判定及び白紙上のシンボルコントラストの測定を実施した。評価基準は次のとおりである。
グレードがA、白紙上のSCが70%以上:実用レベル
グレードがB、白紙上のSCが60%以上70%未満:実用レベル
グレードがC、白紙上のSCが40%以上60%未満:実用レベル
グレードがD、白紙上のSCが20%以上40%未満:実用レベル(実用下限)
グレードがF、白紙上のSCが20%未満:実用不適レベル
×(コード検証機がコードを認識しない):実用不適レベル
【0054】
表1からわかるように、1次元コードにおいて、バーコード検証機によって測定した白紙上のシンボルコントラストが20%以上の例のうち、識別コード部の乾燥インク付着量は、最小で0.0095g/個(白0%、黒60%又は50%のとき)、最大で0.0181g/個(白100%、黒100%のとき)であった。識別コード部の乾燥インク付着量は、容器本体と識別コード部との合計質量に対して、0.06質量%以下であり、これはリサイクル適性を有する印刷部全体の乾燥インク付着量の割合である2.5質量%以下より大幅に小さかった。したがって、印刷部として、識別コード部に加えて、デザイン画像部を設けたとしても、リサイクル適性に優れたプラスチック容器とすることができるといえる。リサイクル適性を維持できるインク塗布量と1次元コード又は2次元コードをリーダーで読み取り可能なコントラストとを両立したプラスチック容器を得ることができた。
【0055】
表2からわかるように、2次元コードにおいて、バーコード検証機によって測定した白紙上のシンボルコントラストが20%以上の例のうち、識別コード部の乾燥インク付着量は、最小で0.0041g/個(白0%、黒50%のとき)、最大で0.0079g/個(白100%、黒100%のとき)であった。識別コード部の乾燥インク付着量は、容器本体と識別コード部との合計質量に対して、0.03質量%以下であり、これはリサイクル適性を有する印刷部全体の乾燥インク付着量の割合である2.5質量%以下より大幅に小さかった。したがって、印刷部として、識別コード部に加えて、デザイン画像部を設けたとしても、リサイクル適性に優れたプラスチック容器とすることができるといえる。リサイクル適性を維持できるインク塗布量と1次元コード又は2次元コードをリーダーで読み取り可能なコントラストとを両立したプラスチック容器を得ることができた。
【0056】
(実験例3)
実験例1のプラスチック容器1に、乳酸菌飲料(キリン iMUSE(登録商標) ヨーグルトテイスト、キリンビバレッジ社製)を450ml充填し、キャップで密封した充填製品を得た。実験例3の識別コード部20Aの読取評価を次のとおり行った。読取評価は、バーコード検証機(LVS-9580 Verifier MICROSCAN社製)を用いて、実験例3の充填製品の識別コード部20Aの1次元コード又は2次元コードを、内容物が入った状態で容器の外側から読み取った。バーコード検証機でシンボルコントラストのグレード判定及びシンボルコントラストの測定を実施した。結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
(実験例4)
実験例1のプラスチック容器1に、牛乳(農協牛乳(登録商標)、協同乳業社製)を450ml充填し、キャップで密封した。実験例3と同様に読取評価を行った。結果を表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
(実験例5)
実験例2のプラスチック容器1に、乳酸菌飲料(キリン iMUSE(登録商標) ヨーグルトテイスト、キリンビバレッジ社製)を450ml充填し、キャップで密封した。実験例3と同様に読取評価を行った。結果を表5に示す。
【0061】
【表5】
【0062】
(実験例6)
実験例2のプラスチック容器1に、牛乳(農協牛乳(登録商標)、協同乳業社製)を450ml充填し、キャップで密封した。実験例3と同様に読取評価を行った。結果を表6に示す。
【0063】
【表6】
【0064】
表3及び表5からわかるように、識別コード部は、内容物が入った状態のままコードが読み取り可能なシンボルコントラストを有していることが確認できた。これらの結果から、背景印刷部があれば、内容物の色にかかわらず、読み取り可能なシンボルコントラストを有しているといることが予測される。表4及び表6に示すように、特に内容物が牛乳である場合は、背景印刷部がなく、少ない黒インク量でも高いシンボルコントラストを有していた。
【符号の説明】
【0065】
1 プラスチック容器
10 容器本体
11 口部
12 胴部
12a 上胴部
12b 胴部本体
12c 下胴部
20 印刷部
20A 識別コード部
21 プライマー層
22 インク層
22A 情報画像部
22B 背景印刷部
100 プラスチック片
900 平滑面
901 白紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7