(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009280
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】ゴム組成物及び冷媒輸送ホース
(51)【国際特許分類】
F16L 11/08 20060101AFI20250110BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20250110BHJP
B32B 25/18 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
F16L11/08 A
B32B1/08 B
B32B25/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112169
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彩
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA13
3H111CB04
3H111CB14
3H111CB29
3H111CC03
3H111CC07
3H111DA09
3H111DB09
4F100AA37A
4F100AB01B
4F100AH01A
4F100AJ11A
4F100AK01B
4F100AK28A
4F100AL09A
4F100AN02A
4F100BA02
4F100CA23A
4F100DA11
4F100DG01B
4F100DG07B
4F100GB90
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】耐POE性、耐冷媒透過性及び機械強度が優れるゴム組成物を提供すること。
【解決手段】内管と内管の外側に配置される補強層とを少なくとも備える冷媒輸送ホースの内管の製造に用いられるゴム組成物であり、ゴム組成物は、ブチル系ゴムと、鱗片状フィラーと、カーボンブラックと、パラフィンオイルとを含有し、ブチル系ゴムの含有量がゴム成分全量中の90質量%以上であり、ブチル系ゴムの含有量がゴム組成物全量中の30質量%未満であり、パラフィンオイルの含有量がブチル系ゴム100質量部に対して20質量部以上40質量部未満である、ゴム組成物、及び、冷媒輸送ホース。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管と前記内管の外側に配置される補強層とを少なくとも備える冷媒輸送ホースの前記内管の製造に用いられるゴム組成物であり、
前記ゴム組成物は、ブチル系ゴムと、鱗片状フィラーと、カーボンブラックと、パラフィンオイルとを含有し、前記ブチル系ゴムの含有量がゴム成分全量中の90質量%以上であり、前記ブチル系ゴムの含有量が前記ゴム組成物全量中の30質量%未満であり、前記パラフィンオイルの含有量が前記ブチル系ゴム100質量部に対して20質量部以上40質量部未満である、ゴム組成物。
【請求項2】
前記鱗片状フィラー及び前記カーボンブラックの合計の含有量が、前記ゴム組成物全量中の60~70質量%である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴム組成物を用いて製造された内管と、前記内管の外側に配置される補強層とを少なくとも備える、冷媒輸送ホース。
【請求項4】
前記内管のみを内管として備える、請求項3に記載の冷媒輸送ホース。
【請求項5】
前記内管が、前記冷媒輸送ホースの最内層である、請求項3に記載の冷媒輸送ホース。
【請求項6】
冷媒としてのHFO-1234yf、及び、冷凍機油としてのポリオールエステルを輸送する、請求項3に記載の冷媒輸送ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及び冷媒輸送ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリット車等のエコカーには冷媒を圧縮するための電動コンプレッサーが多く搭載されており、上記電動コンプレッサーのシステムを循環する絶縁性オイル(潤滑油)としてPOE(ポリオールエステル)が多く使用されている。
また、上記システムにおいて、ポリオールエステルや冷媒等を輸送するために使用されるホースが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記システムに使用されるホースには、耐POE性、耐冷媒透過性、機械強度等が優れることが要求される。本発明者が、特許文献1に開示されているゴム組成物について検討したところ、耐POE性、耐冷媒透過性及び機械強度のうちの少なくともいずれかが低い場合があることを知見した。
【0005】
そこで、本発明は、耐POE性、耐冷媒透過性及び機械強度が優れるゴム組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、冷媒輸送ホースを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により課題を解決できることを見出した。
【0007】
[1] 内管と上記内管の外側に配置される補強層とを少なくとも備える冷媒輸送ホースの上記内管の製造に用いられるゴム組成物であり、
上記ゴム組成物は、ブチル系ゴムと、鱗片状フィラーと、カーボンブラックと、パラフィンオイルとを含有し、上記ブチル系ゴムの含有量がゴム成分全量中の90質量%以上であり、上記ブチル系ゴムの含有量が上記ゴム組成物全量中の30質量%未満であり、上記パラフィンオイルの含有量が上記ブチル系ゴム100質量部に対して20質量部以上40質量部未満である、ゴム組成物。
[2] 上記鱗片状フィラー及び上記カーボンブラックの合計の含有量が、上記ゴム組成物全量中の60~70質量%である、[1]に記載のゴム組成物。
[3] [1]又は[2]に記載のゴム組成物を用いて製造(形成)された内管と、上記内管の外側に配置される補強層とを少なくとも備える、冷媒輸送ホース。
[4] 上記内管のみを内管として備える、[3]に記載の冷媒輸送ホース。
[5] 上記内管が、上記冷媒輸送ホースの最内層である、[3]又は[4]に記載の冷媒輸送ホース。
[6] 冷媒としてのHFO-1234yf、及び、冷凍機油としてのポリオールエステルを輸送する、[3]~[5]のいずれか1つに記載の冷媒輸送ホース。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐POE性、耐冷媒透過性及び機械強度が優れるゴム組成物を提供することを提供できる。
また、本発明は、冷媒輸送ホースを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の冷媒輸送ホースの一例の各層を切り欠いて示す斜視図である。
【
図2】本発明のゴム組成物の耐冷媒透過性を評価するために用いられた評価用カップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳述する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
本明細書において、各成分は、それぞれ単独で、又は、2種以上を組み合せて使用することができる。
本明細書において、ある成分を2種以上で併用する場合、その成分の「含有量」は、特段の断りが無い限り、それら2種以上の合計含有量を意味する。
本明細書において、各成分の製造方法は、断りがない限り特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
【0011】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、
内管と上記内管の外側に配置される補強層とを少なくとも備える冷媒輸送ホースの上記内管の製造に用いられるゴム組成物であり、
上記ゴム組成物は、ブチル系ゴムと、鱗片状フィラーと、カーボンブラックと、パラフィンオイルとを含有し、上記ブチル系ゴムの含有量がゴム成分全量中の90質量%以上であり、上記ブチル系ゴムの含有量が上記ゴム組成物全量中の30質量%未満であり、上記パラフィンオイルの含有量が上記ブチル系ゴム100質量部に対して20質量部以上40質量部未満である、ゴム組成物である。
【0012】
上記構成を有する本発明のゴム組成物が本発明の課題を解決できる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者は以下のとおり推測する。なお、下記推測により、効果が得られる機序が制限されるものではない。換言すれば、下記以外の機序により効果が得られる場合でも、本発明の範囲に含まれる。
本発明のゴム組成物は、ブチル系ゴム及びパラフィンオイルを所定の量で含有し、鱗片状フィラーとカーボンブラックとを含有することによって、耐冷媒透過性と耐POE性と機械強度とを優れたレベルでバランスさせることができると考えられる。
以下、耐POE性、耐冷媒透過性及び機械強度のうちの少なくとも1つがより優れることを、「本発明の効果がより優れる」ともいう。
【0013】
[ブチル系ゴム]
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、ブチル系ゴムを含有する。
本発明のゴム組成物に含有されるブチル系ゴムは、イソブチレン及びイソプレンによって形成される繰り返し単位を有する重合体であれば、特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
ブチル系ゴムとしては、例えばブチルゴム(IIR)が挙げられる。
【0014】
ゴム成分は23℃の条件下で固体であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ブチル系ゴムは23℃の条件下で固体であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ブチル系ゴムの重量平均分子量は、本発明の効果により優れるという観点から、50,000より大きく2,000,000以下であることが好ましい。
本発明において、ブチル系ゴムの重量平均分子量は、THF(テトラヒドロフラン)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。
【0015】
(ブチル系ゴム以外のゴム成分)
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、ブチル系ゴム以外のゴム成分(その他のゴム成分)を更に含有してもよい。
その他のゴム成分としては、例えば、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)が挙げられる。EPM、EPDMは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
【0016】
[ゴム成分全量中のブチル系ゴムの含有量]
本発明において、ブチル系ゴムの含有量はゴム成分全量中の90質量%以上である。ゴム成分全量中のブチル系ゴムの含有量が上記であることによって、本発明のゴム組成物は、耐POE性、耐冷媒透過性が優れる。
本発明の効果(特に耐POE性、耐冷媒透過性)がより優れるという観点から、ブチル系ゴムの含有量はゴム成分全量中の95~100質量%であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0017】
[ゴム組成物全量中のブチル系ゴムの含有量]
また、本発明において、ブチル系ゴムの含有量は、本発明のゴム組成物全量中の30質量%未満である。本発明のゴム組成物全量中のブチル系ゴムの含有量が上記であることによって、本発明のゴム組成物は、耐POE性が優れる。
本発明の効果(特に耐POE性、耐冷媒透過性)がより優れるという観点から、ブチル系ゴムの含有量は本発明のゴム組成物全量中の10質量%以上30質量%未満であることが好ましく、20質量%以上30質量%未満であることがより好ましく、26質量%以上30質量%未満であることが更に好ましい。
【0018】
[鱗片状フィラー]
本発明のゴム組成物は、鱗片状フィラーを含有する。
本発明のゴム組成物に含有される鱗片状フィラーは、鱗状の形を有するフィラーである。
鱗片状フィラーの形は鱗状であれば特に制限されない。鱗片状フィラーの外周は不定形であってもよい。
【0019】
鱗片状フィラーの平均直径は、特に制限されないが、本発明の効果がより優れるという観点から、0.1~700μmであることが好ましく、1~100μmがより好ましい。
本発明において、鱗片状フィラーの平均直径は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いた、レーザ回折法による体積平均径である。
【0020】
鱗片状フィラーのアスペクト比(平均直径/厚み)は、本発明の効果がより優れるという観点から、5~80であることが好ましい。
本発明において、鱗片状フィラーの厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)にて鱗片状フィラーを10,000倍で観察し、観察される視野の中からランダムに複数個の鱗片状フィラーを選択しその厚みを測定した測定値をもとに算出した平均値である。
【0021】
鱗片状フィラーとしては、例えば、タルク、マイカが挙げられる。
鱗片状フィラーは、本発明の効果がより優れるという観点から、タルクを含むことが好ましい。
タルク、マイカは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0022】
本発明において、鱗片状フィラーは、表面処理がされたもの、及び、表面処理がされていないもののうち、いずれであってもよい。
【0023】
(鱗片状フィラーの含有量)
鱗片状フィラーの含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、本発明のゴム組成物全量中の10~30質量%であることが好ましく、15~25質量%がより好ましい。
【0024】
[カーボンブラック]
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有する。
本発明のゴム組成物に含有されるカーボンブラックは特に制限されない。例えば、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF等のカーボンブラックが挙げられる。
カーボンブラックは、本発明の効果がより優れるという観点から、DBP(ジブチルフタレート)吸油量が50~120ml/gであるカーボンブラックを含むことが好ましい。カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K6217-4:2017に準じて測定することができる。
カーボンブラックは、本発明の効果がより優れるという観点から、SRFカーボンブラック及び/又はISAFカーボンブラックを含むことが好ましく、SRFカーボンブラックを含むことがより好ましい。
【0025】
(カーボンブラックの含有量)
カーボンブラックの含有量は、本発明の効果(特に耐POE性、機械強度)がより優れるという観点から、本発明のゴム組成物全量中の30~60質量%であることが好ましく、35~55質量%がより好ましい。
【0026】
[鱗片状フィラー及びカーボンブラックの合計の含有量]
鱗片状フィラー及びカーボンブラックの合計の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、本発明のゴム組成物全量中の60~70質量%であることが好ましく、63.0~70質量%であることがより好ましい。
【0027】
[パラフィンオイル]
本発明のゴム組成物は、パラフィンオイルを含有する。
本発明のゴム組成物に含有されるパラフィンオイルは、23℃条件下で液状の脂肪族炭化水素化合物であれば特に制限されない。
本発明において、パラフィンオイルについて、23℃条件下で液状であることは、40℃における動粘度が20,000mm2/s以下であることを指す。
【0028】
パラフィンオイルは、本発明の効果(特に耐POE性)がより優れるという観点から、パラフィンオイルの動粘度が10~600mm2/sであることが好ましく、100~550mm2/sであることがより好ましい。パラフィンオイルの動粘度は、JIS K2283:2000に準じて40℃の条件下で測定することができる。
【0029】
[パラフィンオイルの含有量]
本発明において、パラフィンオイルの含有量は、上記のブチル系ゴム100質量部に対して20質量部以上40質量部未満である。パラフィンオイルの含有量は上述の範囲であることによって、本発明のゴム組成物は、耐POE性、耐冷媒透過性、機械強度が優れる。
パラフィンオイルの含有量は、本発明の効果(特に耐冷媒透過性、機械強度)がより優れるという観点から、上記のブチル系ゴム100質量部に対して、20~28質量部であることが好ましい。
【0030】
(添加剤)
本発明のゴム組成物は、必要に応じて、更に添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、鱗片状フィラー以外のフィラー(例えばシリカ)、樹脂(例えば臭素化アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂のような樹脂加硫剤)、ステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、硫黄のような加硫剤、加硫促進剤、過酸化物のような架橋剤、接着助剤が挙げられる。
各添加剤は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
各添加剤の含有量は適宜添加することができる。
【0031】
(製造方法、用途等)
本発明のゴム組成物はその製造について特に制限されない。例えば、上記の必須成分と、必要に応じて使用することができる添加剤とを、30~150℃の条件下で、バンバリー、ニーダー等の密閉式混合機、または混練ロール機により混練して、ゴム組成物を製造する方法が挙げられる。
【0032】
本発明のゴム組成物を加硫又は架橋させる条件は特に制限されない。例えば、加圧しながら140~160℃の条件下で本発明のゴム組成物を加硫又は架橋させることができる。
【0033】
[冷媒輸送ホースの内管用]
本発明のゴム組成物は、内管と内管の外側に配置される補強層とを少なくとも備える冷媒輸送ホースにおいて、内管の製造に用いられるゴム組成物である。
冷媒輸送ホースについて後述する。
【0034】
[冷媒輸送ホース]
本発明の冷媒輸送ホースは、本発明のゴム組成物を用いて製造された内管と、上記内管の外側に配置される補強層とを少なくとも備える、冷媒輸送ホースである。本明細書において本発明の冷媒輸送ホースを「本発明のホース」とも称する。
【0035】
[内管]
本発明のホースが有する内管は、本発明のゴム組成物を用いて製造(形成)された内管であれば特に制限されない。
【0036】
本発明のホースは、本発明のゴム組成物を用いて製造された内管(ゴム層)のみを内管として備えることが好ましい。
本発明のホースが本発明のゴム組成物を用いて製造された内管のみを内管として備える場合、内管が複数層(積層体)である場合よりも、製造工数が少なく好ましい。
また、本発明のホースが本発明のゴム組成物を用いて製造された内管のみを内管として備える場合、例えば、内管が上記ゴム層と更に例えば過酸化物加硫のEPDM層とを有する積層体である場合よりも、内管における上記ゴム層と上記EPDM層との間の剥離を考慮する必要がなく、上記剥離による耐POE性、耐冷媒透過性の低下を抑制でき、好ましいと考えられる。
【0037】
本発明のゴム組成物を用いて製造された内管は、本発明の効果がより優れるという観点から、本発明のホースの最内層であることが好ましい。
【0038】
[補強層]
本発明のホースは、上記内管の外側に補強層を有する。補強層は1層又は複数層とすることができる。
補強層は内管に隣接しても良く、内管と補強層との間に層間ゴム層等が配設されていてもよい。
補強層に使用される材料としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ポリケトン繊維、ポリアリレート繊維、ポリケトン繊維のような繊維材料;ブラスメッキが施されたワイヤ、亜鉛メッキワイヤーのような硬鋼線などの金属材料が挙げられる。
補強層はその形状について特に制限されない。例えば、ブレード状、スパイラル状のものが挙げられる。
【0039】
(外管)
本発明のホースは、上記補強層の外側に、更に外管を有することができる。外管は特に制限されない。例えば、従来公知の冷媒輸送ホースの外管が挙げられる。
外管と補強層との間に層間ゴム層等が配設されていてもよい。
外管は1層又は複数層とすることができる。外管が複数層である場合、隣接する外管の間に層間ゴム層等が配設されていてもよい。
外管を構成する材料は特に制限されない。例えば、ゴム組成物を用いることができる。外管を構成する材料(ゴム組成物)としては、例えば、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムのようなゴム成分を含むゴム組成物が挙げられる。
【0040】
以下、本発明のホースを添付の図面を用いて詳細に説明する。本発明のホースは図面に限定されない。
図1は、本発明の冷媒輸送ホースの一例の各層を切り欠いて示す斜視図である。
図1において、ホース1は、内管2と、内管2の外側に配置される補強層3とを備え、更に、補強層3の外側に配置される外管4を備える。内管2が本発明のゴム組成物を用いて製造される。内管2はホース1の最内層である。
【0041】
本発明のホースの製造方法は、特に限定されない。例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、あらかじめ離型剤を塗布したマンドレルに、内管ゴム材用ゴム押出機から本発明のゴム組成物を押し出し、内管を形成させる。
つぎに、内管(接着層がある場合は接着層)の上に補強層を形成させる。補強層の形成方法は特に制限されない。
更に、補強層(接着層がある場合は接着層)の上に外管材(例えば、上記の、外管を構成する材料)を押し出し、外管を形成させることができる。
その後、これらの層の積層体を130~190℃、30~180分の条件で、加硫することにより加硫接着させて、本発明のホースを製造することができる。加硫の方法としては例えば、蒸気加硫、オーブン加硫(熱空気加硫)、温水加硫が挙げられる。
【0042】
本発明のホースは、例えば、カーエアコンのようなエアコン用のホースとして使用することができる。本発明のホースは、例えば、高圧用、低圧用として使用することができる。
【0043】
本発明のホースは冷媒輸送ホースである。本発明のホースは、冷媒を輸送するために使用することができる。また、本発明のホースは、冷媒及び冷凍機油(潤滑油)を輸送するために使用することができる。
本発明のホースが輸送できる冷媒としては、例えば、フッ素系化合物が挙げられ、具体的には例えば、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(構造式:CF3-CF=CH2、HFO-1234yf)、1,2,3,3-テトラフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペンのような二重結合を有するフッ素系化合物;HFC-134a(構造式:CF3-CFH2)のような飽和ハイドロフルオロカーボンが挙げられる。
本発明のホースが輸送できる冷凍機油としては、例えば、ポリオールエステルが挙げられ、ポリオールエステルとしては具体的には例えば、ペンタエリスリトールテトラヘプタノエートのようなペンタエリスリトールのエステル、トリメチロールプロパントリカプレート、トリメチロールプロパンヤシ前留脂肪酸エステル、トリメチロールプロパントリオレエートのような、トリメチロールプロパンのエステルが挙げられる。
【0044】
本発明のホースは、例えば、冷媒輸送ホース冷媒としてのHFO-1234yf、及び、冷凍機油としてのポリオールエステルを輸送するために好適に使用することができる。
【実施例0045】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
【0046】
<ゴム組成物の製造>
下記第1表の各成分(各成分の含有量の単位:質量部)を撹拌機で混合し、ゴム組成物を製造した。
【0047】
<評価>
上記のとおり製造された各ゴム組成物を用いて以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0048】
(耐POE性)
・シートの作製
上記のとおり製造された各ゴム組成物を、プレス加硫機を用いて、153℃で45分間加硫し、厚さ2mmのシートを作製した。
・耐POE性試験
上記のとおり作製したシート(縦15cm、横15cm)を、JIS K 6258-2016に準じて、100℃に加熱したポリオールエステル(商品名ND-11、JX日鉱日石エネルギー社製)中に70時間浸漬する耐POE性試験を行い、試験の前後でシートの体積を測定して、JIS K6258-2016 8.1.3項に示されている体積変化の計算式で体積膨潤率を算出した。
評価結果は、上記体積膨潤率が5.0%以下であった場合、耐POE性が優れたと評価し、これを「●」で示した。
体積膨潤率が5.0%より小さい程、耐POE性がより優れる。
一方、上記体積膨潤率が5.0%を超えた場合、耐POE性が悪いと評価し、これを「×」で示した。
【0049】
(耐冷媒透過性)
・シートの作製
上記のとおり製造された各ゴム組成物を、プレス加硫機を用いて、153℃で45分間加硫し、厚さ0.5mmのシートを作製した。
【0050】
・冷媒透過試験
耐冷媒透過性の評価方法について、添付の図面を用いて以下に説明する。
図2は、本発明のゴム組成物の耐冷媒透過性を評価するために用いられた評価用カップの断面図である。
図2において、評価用カップ30は、ステンレス鋼製カップ10(以下カップ10)、上記のとおり作製したシート14、焼結金属板16、固定部材18及び19、ボルト20並びにナット22を有する。カップ10の内部に冷媒12が入っている。
まず、カップ10に冷媒12をカップ10の容量の半分まで入れ、カップ10の開口部をシート14で覆い、シート14の上部に焼結金属板16を載せた。次に、固定部材18、19を介して、ボルト20とナット22とで、カップ10の端部とシート14と焼結金属板16とを固定し、カップ10の端部とシート14と焼結金属板16とを密着させて、評価用カップ30を準備した。
本実施例において冷媒として、HFO-1234yf(三井・デュポンフロロケミカル社製)を使用した。
【0051】
上記のとおり準備した評価用カップを、90℃の条件下に7日間置く冷媒透過試験を行った。
試験前後で評価用カップ全体の重量を測定し、試験後の減量分を算出した。
試験後の減量分等を下記数式に当てはめてガス透過係数を算出した。
ガス透過係数(mg・mm/24hr・cm2)=(M・t)/(T・A)
式中、Mは上記減量分[mg]、tはシートの膜厚[mm]、Tは試験時間[24hr]、Aは透過面積[cm2]である。
【0052】
ガス透過係数が12.0mg・mm/24hr・cm2以下であった場合、耐冷媒透過性が優れたと評価し、これを「●」で示した。
ガス透過係数が12.0mg・mm/24hr・cm2より小さい程、耐冷媒透過性がより優れる。
一方、ガス透過係数が12.0mg・mm/24hr・cm2を超えた場合、耐冷媒透過性が悪いと評価し、これを「×」で示した。
【0053】
(機械強度)
・シートの作製
上記のとおり製造された各ゴム組成物を、プレス加硫機を用いて、153℃で45分間加硫し、厚さ2mmのシートを作製した。
【0054】
・引張試験
上記のとおり作製したシートを用いて、JIS K 6251:2017に準じて、引張速度500mm/分、23℃の条件下において引張試験を行い、100%モジュラス(M100)を測定した。
100%モジュラスが6.0MPaを超えた場合、機械強度が優れたと評価し、これを「●」で示した。
100%モジュラスが6.0MPaより大きい程、機械強度がより優れる。
一方、100%モジュラスが6.0MPa以下であった場合、機械強度が悪いと評価し、これを「×」で示した。
【0055】
【0056】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
・IIR:ブチルゴム。商品名BUTYL 301、LANXESS社製、重量平均分子量60万
【0057】
・EPDM:エチレン-プロピレン-ジエンゴム。上記ジエンはエチリデンノルボルネン(ENB)。商品名EPT4070、三井化学社製
・NBR:アクリロニトリルブタジエンゴム。商品名Nipol 1041、日本ゼオン社製
・NBR-PVC:アクリロニトリルブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンド物(NBR/PVC=70/30)。商品名Nipol DN508SCR、日本ゼオン社製
【0058】
・カーボンブラック:SRFカーボンブラック。商品名旭♯50、旭カーボン株式会社
【0059】
・タルク:商品名ImerFlex T20、イメリススペシャリティーズジャパン社製。鱗状の形のタルク。平均直径6.1μm、アスペクト比6。
【0060】
・樹脂:臭素化アルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、タッキロール250-I、田岡化学工業社製
・酸化亜鉛 5質量部:商品名「酸化亜鉛 3種」、正同化学工業社製
【0061】
・パラフィンオイル1:商品名YピュアスピンG、コスモ石油ブリカンツ社製。水素精製装置で精製したパラフィンオイル。動粘度21mm2/s@40℃
・パラフィンオイル2:商品名SUNPAR 2280、日本サン石油社製。水素精製装置で精製したパラフィンオイル。動粘度481mm2/s@40℃
【0062】
・(比較)液状ポリブテン(グレードHV-300):液状ポリブテン。商品名日石ポリブテン HV-300、ENEOS社製。数平均分子量1400。23℃条件下で粘稠な液体。動粘度26,000mm2/s@40℃。
なお、上記液状ポリブテンは40℃条件下の動粘度が20,000mm2/sを超えるので、本発明におけるパラフィンオイルに該当しない。
また、上記液状ポリブテンは、23℃条件下で固体ではないので、本発明におけるゴム成分としてのブチル系ゴムに該当しない。
・ステアリン酸:ステアリン酸50S、日新理化株式会社性製
【0063】
第1表の結果から、本発明のゴム組成物は、所望の効果を示すことが確認された。
また、実施例同士の比較から、以下のことが確認された。
すなわち、実施例1、2の結果から、カーボンブラックの含有量がゴム組成物全量中の例えば30~60質量%(又は35~55質量%)である場合、カーボンブラックの含有量が多いほうが、耐POE性、機械強度がより優れた。
実施例2、3の結果から、パラフィンオイルの含有量が少ない場合(ブチル系ゴム100質量部に対するパラフィンオイルの含有量が例えば20~28質量部である場合)に耐冷媒透過性、機械強度がより優れた。
実施例2、4の結果から、ブチル系ゴムの含有量が多いほうが耐POE性、耐冷媒透過性がより優れた。
実施例2、5の結果から、パラフィンオイルの動粘度が大きいほうが耐POE性がより優れた。
実施例2、6の結果から、鱗片状フィラーの含有量がゴム組成物全量中の例えば10~30質量%(又は15~25質量%)である場合、鱗片状フィラー(例えばタルク)の含有量が大きいほうが耐POE性、耐冷媒透過性、機械強度がより優れた。
【0064】
一方、ブチル系ゴムの含有量がゴム成分全量中の90質量%未満である比較例1~3、ブチル系ゴムの含有量がゴム組成物全量中の30質量%以上である比較例4、パラフィンオイルの含有量が所定の範囲を外れる比較例5、6、パラフィンオイルを含有せず代わりに液状ポリブテンを含有する比較例7は、耐POE性、耐冷媒透過性及び機械強度のうちの少なくともいずれかが悪かった。