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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025092836
(43)【公開日】2025-06-23
(54)【発明の名称】水酸化カリウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01D 1/30 20060101AFI20250616BHJP
【FI】
C01D1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208201
(22)【出願日】2023-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168893
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 正路
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 知佳
(72)【発明者】
【氏名】高尾 渉
(72)【発明者】
【氏名】近 翔太
(57)【要約】
【課題】ナトリウム含有量の少ない水酸化カリウムの製造方法の提供。
【解決手段】第1の水酸化カリウム結晶を、洗浄液としての水酸化カリウム水溶液で洗浄して、第2の水酸化カリウム結晶を得る工程、
を含む、水酸化カリウムの製造方法であって、
前記洗浄液のナトリウム濃度が、100mg/kg以下であり、
前記第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム濃度が、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、50mg/kg以下である、
前記製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の水酸化カリウム結晶を、洗浄液としての水酸化カリウム水溶液で洗浄して、第2の水酸化カリウム結晶を得る工程、
を含む、水酸化カリウムの製造方法であって、
前記洗浄液のナトリウム濃度が、100mg/kg以下であり、
前記第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム濃度が、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、50mg/kg以下である、
前記製造方法。
【請求項2】
前記第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム濃度が、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、35mg/kg以下である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
下記式:
収率=[第2の水酸化カリウム結晶の量(g)/第1の水酸化カリウム結晶の量(g)]×100
で表される第2の水酸化カリウム結晶の収率が、60~95%である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記洗浄液の使用量が、前記第1の水酸化カリウム結晶の質量を基準として、5~1000質量%である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記洗浄液のナトリウム濃度が、0.1~50mg/kgである、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記洗浄液の水酸化カリウム濃度が、10~50質量%である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記洗浄液が、前記第2の水酸化カリウム結晶の水溶液である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1の水酸化カリウム結晶のナトリウム濃度が、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、50mg/kgを超える、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第1の水酸化カリウム結晶のナトリウム濃度が、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、90~160mg/kgである、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第1の水酸化カリウム結晶が、原料としての水酸化カリウムの水溶液を、高温状態で濃縮して、前記第1の水酸化カリウム結晶を析出させる工程により得られる、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記高温状態が、100℃を超える、
請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記原料としての水酸化カリウムのナトリウム濃度が、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、200mg/kgを超える、
請求項10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記原料としての水酸化カリウムのナトリウム濃度が、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、200mg/kgを超え、かつ、1500mg/kg以下である、
請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水酸化カリウム(苛性カリ)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、簡便な方法で高純度苛性カリを得ることができる製造方法を提供することを目的とし、苛性カリ濃度48%を基準として、ナトリウム含有量が200mg/kg以下である苛性カリ水溶液を高温状態で濃縮して苛性カリの一水塩結晶を析出させ、当該一水塩結晶液を含むスラリーから結晶を単離することを特徴とする高純度苛性カリの製造方法が記載されている。また、特許文献1には、単離した結晶を水又は苛性カリ水溶液でリンスする製造方法が記載されている。
【0003】
特許文献2には、苛性カリ中の塩素及びナトリウム分を除去することにより高純度の苛性カリを安価に簡単なプロセスで得られる方法を提供することを目的とし、濃度50~65wt%の苛性カリ水溶液を、5~50℃まで冷却することにより苛性カリの結晶を析出させる高純度苛性カリの製造方法が記載されている。また、特許文献2には、苛性カリ結晶を、苛性カリ水溶液を用いてリンスしたことが記載されている。
【0004】
特許文献3には、苛性カリ中の塩素及びナトリウム分を除去することにより高純度の苛性カリを安価に簡単なプロセスで得られる方法を提供することを目的とし、濃度50~70wt%の苛性カリ水溶液を、70~90℃の温度で沸騰状態に維持することにより苛性カリの結晶を析出させる高純度苛性カリの製造方法が記載されている。また、特許文献3には、苛性カリ結晶を、苛性カリ水溶液を用いてリンスしたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/018203号
【特許文献2】特開平1-246125号
【特許文献3】特開平1-246124号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ナトリウム含有量の少ない水酸化カリウムの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ナトリウム濃度の低い水酸化カリウム水溶液を洗浄液として使用して、水酸化カリウム結晶を洗浄することにより、ナトリウム含有量の少ない水酸化カリウムを製造することができる。
【0008】
本発明は以下の実施形態を含む。
[1]
第1の水酸化カリウム結晶を、洗浄液としての水酸化カリウム水溶液で洗浄して、第2の水酸化カリウム結晶を得る工程、
を含む、水酸化カリウムの製造方法であって、
前記洗浄液のナトリウム濃度が、100mg/kg以下であり、
前記第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム濃度が、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、50mg/kg以下である、
前記製造方法。
[2]
前記第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム濃度が、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、35mg/kg以下である、[1]に記載の製造方法。
[3]
下記式:
収率=[第2の水酸化カリウム結晶の量(g)/第1の水酸化カリウム結晶の量(g)]×100
で表される第2の水酸化カリウム結晶の収率が、60~95%である、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]
前記洗浄液の使用量が、前記第1の水酸化カリウム結晶の質量を基準として、5~1000質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]
前記洗浄液のナトリウム濃度が、0.1~50mg/kgである、[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]
前記洗浄液の水酸化カリウム濃度が、10~50質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]
前記洗浄液が、前記第2の水酸化カリウム結晶の水溶液である、[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]
前記第1の水酸化カリウム結晶のナトリウム濃度が、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、50mg/kgを超える、[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]
前記第1の水酸化カリウム結晶のナトリウム濃度が、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、90~160mg/kgである、[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]
前記第1の水酸化カリウム結晶が、原料としての水酸化カリウムの水溶液を、高温状態で濃縮して、前記第1の水酸化カリウム結晶を析出させる工程により得られる、[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]
前記高温状態が、100℃を超える、[10]に記載の製造方法。
[12]
前記原料としての水酸化カリウムのナトリウム濃度が、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、200mg/kgを超える、[10]又は[11]に記載の製造方法。
[13]
前記原料としての水酸化カリウムのナトリウム濃度が、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、200mg/kgを超え、かつ、1500mg/kg以下である、[10]~[12]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ナトリウム含有量の少ない水酸化カリウムを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
<水酸化カリウムの製造方法>
本発明の一実施形態は、第1の水酸化カリウム結晶を、洗浄液としての水酸化カリウム水溶液で洗浄して、第2の水酸化カリウム結晶を得る工程、を含む、水酸化カリウムの製造方法であって、前記洗浄液のナトリウム濃度が、100mg/kg以下であり、前記第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム濃度が、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、50mg/kg以下である、前記製造方法に関する。
【0012】
本実施形態に係る製造方法では、ナトリウム濃度の低い水酸化カリウム水溶液を洗浄液として使用して、水酸化カリウム結晶を洗浄することにより、ナトリウム含有量の少ない水酸化カリウムを製造することができる。
【0013】
本明細書において、ナトリウム濃度は、原子吸光法によって決定する。なお、水酸化カリウムのナトリウム含有量を決定する際に、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液を調製する場合には、純水を使用する。
【0014】
本明細書において、水酸化カリウム濃度は、塩酸を使用した中和滴定法(指示薬:フェノールフタレイン溶液)によって決定する。
【0015】
[洗浄工程]
本実施形態に係る製造方法は、第1の水酸化カリウム結晶を、洗浄液で洗浄して、第2の水酸化カリウム結晶を得る工程(「洗浄工程」という。)を含む。
【0016】
洗浄方法は特に限定されず、第1の水酸化カリウム結晶と洗浄液とを接触させればよい。具体的な洗浄方法としては、例えば、フィルター上に配置した第1の水酸化カリウム結晶に洗浄液に加えて吸引濾過する方法、第1の水酸化カリウム結晶に洗浄液を加えて遠心分離する方法、第1の水酸化カリウム結晶に洗浄液を霧状に噴霧して遠心分離する方法、及び第1の水酸化カリウム結晶に洗浄液を霧状に噴霧して吸引ろ過する方法が挙げられる。
【0017】
(洗浄液)
洗浄液としては、ナトリウム濃度の低い水酸化カリウム水溶液が使用される。洗浄液のナトリウム濃度は、100mg/kg以下であり、好ましくは0.1~50mg/kgであり、より好ましくは0.5~40mg/kgであり、更に好ましくは1~30mg/kgである。
洗浄液のナトリウム濃度が低いほど、第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム含有量を低減することができる。
【0018】
洗浄液の水酸化カリウム濃度は、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは30~50質量%である。
洗浄液の水酸化カリウム濃度を前記範囲内に調節することによって、第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム含有量を更に低減することができる。
洗浄液の水酸化カリウム濃度を前記範囲内に調節することによって、第2の水酸化カリウム結晶の収率を向上させる(言い換えると、洗浄工程で溶解する第1の水酸化カリウム結晶の量を低減させる)ことができる。
【0019】
洗浄液の使用量は、第1の水酸化カリウム結晶の質量を基準として、好ましくは5~1000質量%であり、より好ましくは10~500質量%であり、更に好ましくは15~300質量%であり、特に好ましくは20~200質量%である。
洗浄液の使用量を前記範囲内に調節することによって、第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム含有量を低減させつつ、第2の水酸化カリウム結晶の収率を向上させる(言い換えると、洗浄工程で溶解する第1の水酸化カリウム結晶の量を低減させる)ことができる。
【0020】
洗浄液の温度は特に限定されず、広い温度範囲で使用することができる。洗浄液の温度を、例えば、0~60℃に設定してもよい。
【0021】
(第1の水酸化カリウム結晶)
第1の水酸化カリウム結晶のナトリウム濃度は、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、好ましくは50mg/kgを超え、より好ましくは60mg/kgを超え、更に好ましくは90~160mg/kgであり、特に好ましくは100~120mg/kgである。
第1の水酸化カリウム結晶のナトリウム含有量が低いほど、第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム含有量を低減することができる。
なお、本実施形態に係る製造方法では、第1の水酸化カリウム結晶のナトリウム含有量がある程度高くとも、ナトリウム濃度の低い洗浄液を使用することによって、第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム含有量を大幅に低減することができる。また、ナトリウム含有量がある程度高い第1の水酸化カリウム結晶は入手が容易との利点もある。
【0022】
第1の水酸化カリウム結晶のナトリウム含有量は、後述する[準備工程]における条件を変更することによって調節することができる。例えば、準備工程における原料としての水酸化カリウムのナトリウム含有量を下げると、第1の水酸化カリウム結晶のナトリウム含有量が低下する傾向にある。
【0023】
第1の水酸化カリウム結晶は、水和物の形態であってもよい。
【0024】
第1の水酸化カリウム結晶は、後述する[準備工程]で調製されたものであることが好ましい。
【0025】
(第2の水酸化カリウム結晶)
第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム濃度は、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、50mg/kg以下である。本技術分野では、前記ナトリウム濃度を1mg/kg下げるだけであっても、容易ではなく、かつ、大きな意義がある。
第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム含有量は低いほど好ましい。第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム濃度(前記換算値)は、例えば、下記の上限値以下であることが好ましい:
49mg/kg、48mg/kg、47mg/kg、46mg/kg、45mg/kg、44mg/kg、43mg/kg、42mg/kg、41mg/kg、40mg/kg、39mg/kg、38mg/kg、37mg/kg、36mg/kg、35mg/kg、34mg/kg、33mg/kg、32mg/kg、31mg/kg、30mg/kg、29mg/kg、28mg/kg、27mg/kg、26mg/kg、25mg/kg、24mg/kg、23mg/kg、22mg/kg、21mg/kg、20mg/kg、19mg/kg、18mg/kg、17mg/kg、16mg/kg、15mg/kg、14mg/kg、13mg/kg、12mg/kg、11mg/kg、10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、又は1mg/kg。
【0026】
第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム含有量は低いほど好ましいため、特に下限は存在しないが、第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム濃度(前記換算値)を、例えば、下記の下限値以上としてもよい:
0mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、又は10mg/kg。
【0027】
第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム濃度(前記換算値)の上記の上限値と下限値とを適宜組み合わせて、特定の数値範囲を決定してもよい。例えば、下記の数値範囲が挙げられる:
0~50mg/kg、1~45mg/kg、2~40mg/kg、3~35mg/kg、4~30mg/kg、5~25mg/kg、6~20mg/kg、7~15mg/kg、又は8~10mg/kg。
【0028】
第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム含有量は、洗浄液の使用量又は組成を変更することによって調節することができる。例えば、洗浄液の使用量を増やすと、第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム含有量が低下する傾向にある。また、洗浄液のナトリウム濃度を下げると、第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム含有量が低下する傾向にある。
【0029】
洗浄工程における第2の水酸化カリウム結晶の収率([第2の水酸化カリウム結晶の量(g)/第1の水酸化カリウム結晶の量(g)]×100)は、好ましくは60~95%であり、より好ましくは70~93%であり、更に好ましくは80~90%である。
第2の水酸化カリウム結晶の収率を前記範囲内に調節することによって、第2の水酸化カリウム結晶の量を確保しつつ、第2の水酸化カリウム結晶のナトリウム含有量を低減させることができる。
【0030】
第2の水酸化カリウム結晶の収率は、洗浄液の使用量又は組成を変更することによって調節することができる。例えば、洗浄液の使用量を増やすと、収率が低下する傾向にある。また、洗浄液の水酸化カリウム濃度を下げると、収率が低下する傾向にある。
【0031】
第2の水酸化カリウム結晶は、水和物の形態であってもよい。
【0032】
第2の水酸化カリウム結晶は、洗浄液の原料として使用されてもよい。すなわち、洗浄工程で得られた第2の水酸化カリウム結晶を水に溶解して、水酸化カリウム水溶液を調製し、これを次の洗浄工程(「第2の洗浄工程」ともいう。)での洗浄液(「第2の洗浄液」ともいう。)として使用してもよい。第2の水酸化カリウム結晶から調製された洗浄液のナトリウム濃度、水酸化カリウム濃度、及び使用量の好ましい値は、上述の(洗浄液)の欄に記載のとおりである。
【0033】
第2の洗浄液の調製に使用する水は、高純度の水であれば特に限定されない。水としては、例えば、イオン交換水、超純水、及び逆浸透膜水が挙げられる。
【0034】
[準備工程]
本実施形態に係る製造方法は、洗浄工程の前に、第1の水酸化カリウム結晶を調製する工程(「準備工程」という。)を含んでいてもよい。
【0035】
第1の水酸化カリウム結晶の調製方法は特に限定されないが、例えば、原料としての水酸化カリウムの水溶液から、第1の水酸化カリウム結晶を析出させる方法が挙げられる。より具体的な方法としては、例えば、原料としての水酸化カリウムの水溶液を濃縮して、第1の水酸化カリウム結晶を析出させる方法(「濃縮法」という。)、及び原料としての水酸化カリウムの水溶液を冷却して、第1の水酸化カリウム結晶を析出させる方法(「冷却法」という。)が挙げられる。ナトリウム含有量の少ない水酸化カリウムを製造する観点からは、濃縮法を採用することが好ましい。
【0036】
濃縮法では、水酸化カリウム水溶液を高温状態で濃縮することが好ましい。
高温状態は、好ましくは100℃を超え、より好ましくは100~150℃であり、更に好ましくは100~120℃である。
高温状態は、沸騰状態であることも好ましい。沸騰状態は、温度及び圧力を調節することで確保することができる。
【0037】
原料としての水酸化カリウムのナトリウム濃度は、48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのナトリウム濃度に換算すると、好ましくは200mg/kgを超え、より好ましくは200mg/kgを超え、かつ、1500mg/kg以下であり、更に好ましくは300~1300mg/kgであり、特に好ましくは500~1000mg/kgである。
【0038】
準備工程及び洗浄工程は、例えば、国際公開第2007/018203号に記載の装置を使用して実施してもよい。
【実施例0039】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0040】
実施例における各種の値は、本発明の実施形態における好ましい下限値又は上限値としてもよい。また、実施例における同種の2つの値を適宜組み合わせて好ましい数値範囲としてもよい。なお、以下で使用される「ppm」は「mg/kg」と同義である。
【0041】
[実施例1]
水酸化カリウム水溶液(原料)(KOH濃度:48.5質量%、Na濃度:800ppm)を、KOH濃度が61質量%となるまで濃縮し、撹拌機付きのニッケル材で内張りしたタンクに入れた。この水酸化カリウム水溶液を、100℃で沸騰状態になるように圧力を調節して濃縮し、水酸化カリウム一水塩結晶を含むスラリーを得た。このスラリーから結晶を遠心分離機によって取り出した。この結晶の質量を基準として100質量%の量の水酸化カリウム水溶液(洗浄液)(KOH濃度:48.5質量%、Na濃度:5ppm以下)を使用して、結晶を洗浄した。
洗浄は、具体的には、遠心分離機によって取り出した結晶をメンブランフィルター上に載せ、その上から洗浄液を加えて吸引濾過することにより行った。
洗浄前の結晶及び洗浄後の結晶のNa濃度(48質量%濃度の水酸化カリウム水溶液でのNa濃度に換算)はそれぞれ、110ppm及び10ppmであった。
また、洗浄後の結晶の収率([洗浄後の結晶の量/洗浄前の結晶の量]×100)は81%であった。
【0042】
[実施例2]
洗浄液のNa濃度を30ppmに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0043】
[実施例3]
洗浄液の量を、結晶の質量を基準として20質量%に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行った。
【0044】
[比較例1]
洗浄液のNa濃度を800ppmに変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0045】
[比較例2]
洗浄液として純水(Na濃度:0.1ppm以下)を使用したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0046】
[比較例3]
洗浄液の量を、結晶の質量を基準として1質量%に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行った。
【0047】
[比較例4]
洗浄液の量を、結晶の質量を基準として4質量%に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行った。
【0048】
各実施例及び各比較例の結果を表1に示す。
【表1】