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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025092902
(43)【公開日】2025-06-23
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20250616BHJP
【FI】
B65G1/04 537A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208297
(22)【出願日】2023-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 康祐
(72)【発明者】
【氏名】吉原 康二
(72)【発明者】
【氏名】名和 政道
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022FF01
3F022JJ09
3F022KK01
3F022NN21
3F022QQ13
(57)【要約】
【課題】昇降台の高さが変化し振動特性が変化しても台車の振動を軽減する。
【解決手段】走行用モータ40の走行を制御する走行制御部701は、FF制御部710、FFパラメータ算出部720、制振フィルタ730、制振Fパラメータ算出部740、および、FB制御部750を備える。FFパラメータ算出部720は、キャリッジの高さHに基づいてFFパラメータを算出する。制振Fパラメータ算出部730は、高さHに基づいて制振Fパラメータを算出する。これらのパラメータの値を用いて走行用モータ40を制御することにより、キャリッジの高さHに応じて変化する振動特性考慮して走行制御を実行でき、走行台車の振動を軽減することができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な台車と、
前記台車に固定されたマストに沿って昇降する昇降台と、
前記台車を走行させる駆動装置と、
前記駆動装置を制御することにより、前記台車の走行制御を行う制御装置と、を備えた搬送装置であって、
前記制御装置は、
前記昇降台の高さに応じた振動特性に基づいて走行制御用パラメータの値を求め、
前記走行制御用パラメータを用いて前記走行制御を実行する、搬送装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記昇降台の高さ情報に基づいてフィードフォワードパラメータを算出するフィードフォワードパラメータ算出部と、
前記台車の位置指令と前記フィードフォワードパラメータに基づいて、フィードフォワードトルクを算出するフィードフォワード制御部と、を含み、
前記走行制御用パラメータは、前記フィードフォワードパラメータである、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記昇降台の高さ情報に基づいて制振フィルタパラメータを算出する制振フィルタパラメータ算出部と、
前記制振フィルタパラメータを用いて、前記台車の位置指令をフィルタリングする制振フィルタと、を含み、
前記走行制御用パラメータは、前記制振フィルタパラメータである、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記高さ情報は、現在の昇降台の高さである、請求項2または請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記高さ情報は、前記昇降台の指令位置である、請求項2または請求項3に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第6444243号公報(特許文献1)には、走行台車に固定されるマストに沿って鉛直方向に昇降する昇降台を備えたスタッカークレーンが開示されている。走行台車は、走行モータによって水平方向に移動可能とされている。特許文献1のスタッカークレーンは、走行台車の位置を指定する位置指令値をフィルタリングする制振フィルタを含み、昇降台の積載状態に応じてフィルタリングに用いるパラメータ値を決定するとともに、フィルタリングがなされた位置指令値に基づいて、走行モータを駆動するためのトルク指令値を算出している。この特許文献1によれば、スタッカークレーンの制振制御を行いつつ、より短い時間で物品搬送が可能になるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6444243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昇降台が昇降することにより、昇降台の高さ(位置)が変化する。昇降台の高さが変化すると、スタッカークレーンの重心の位置が変化するので、その振動特性が変化する。このため、特許文献1のように、昇降台の積載状態に応じて制振制御を行っても、好適に振動を軽減できない懸念がある。
【0005】
本開示の目的は、昇降台の高さが変化し振動特性が変化しても台車の振動を軽減可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の搬送装置は、走行可能な台車と、台車に固定されたマストに沿って昇降する昇降台と、台車を走行させる駆動装置と、駆動装置を制御することにより、台車の走行制御を行う制御装置と、を備えた搬送装置である。制御装置は、昇降台の高さに応じた振動特性に基づいて走行制御用パラメータの値を求め、走行制御用パラメータを用いて走行制御を実行する。
【0007】
この構成によれば、台車の走行制御に用いられる走行制御用パラメータの値が、昇降台の高さに応じた振動特性に基づいて求められる。これにより、昇降台の高さ応じて変化する振動特性を考慮して走行制御を実行でき、台車の振動を軽減することが可能になる。
【0008】
好ましくは、制御装置は、昇降台の高さ情報に基づいてフィードフォワードパラメータを算出するフィードフォワードパラメータ算出部と、台車の位置指令とフィードフォワードパラメータに基づいて、フィードフォワードトルクを算出するフィードフォワード制御部と、を含んでもよい。フィードフォワードパラメータを、昇降台の高さ情報に基づいて算出することにより、昇降台の高さに応じた振動特性を考慮した走行制御を実行できる。
【0009】
好ましくは、制御装置は、昇降台の高さ情報に基づいて制振フィルタパラメータを算出する制振フィルタパラメータ算出部と、制振フィルタパラメータを用いて、台車の位置指令をフィルタリングする制振フィルタと、を含んでもよい。制振フィルタパラメータを、昇降台の高さ情報に基づいて算出することにより、昇降台の高さに応じた振動特性を考慮した走行制御を実行できる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、昇降台の高さが変化し振動特性が変化しても台車の振動を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る自動倉庫システムの全体構成の一例を示す斜視図である。
図2】走行台車の走行駆動部とキャリッジの昇降駆動部を説明する図である。
図3】(A)および(B)は、本実施の形態におけるクレーン本体の振動特性を説明する図である。
図4】実施の形態における自動倉庫システムの制御システムの一例を示す概略構成図である。
図5】コントローラに構成された機能ブロックである昇降制御部の一例を示す図である。
図6】コントローラに構成された機能ブロックである走行制御部の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0013】
以下の実施の形態では、本開示に係る「搬送装置」が自動倉庫システム内のスタッカークレーンに適用された構成を例に説明する。しかし、本発明に係る「搬送装置」を適用可能な装置はスタッカークレーンに限定されない。本開示に係る「搬送装置」は、無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)、自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)、高所作業車などにも適用可能である。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る自動倉庫システム100の全体構成の一例を示す斜視図である。自動倉庫システム100は、スタッカークレーン式の搬送システムであって、スタッカークレーン本体(以下「クレーン本体」と略す。)1と、レール8と、収納棚9とを備える。
【0015】
クレーン本体1は、コントローラ7(図2参照)からの制御指令に従ってレール8上を移動(走行)する。クレーン本体1の走行方向を「X方向」と記載する。X方向は典型的には水平方向である。ただし、X方向は、水平方向を含むのであれば、水平方向に厳密に一致していなくてもよい。
【0016】
クレーン本体1は、たとえば給電線(図示せず)から供給される電力により動作する。ただし、クレーン本体1の給電方式は特に限定されない。クレーン本体1は、レール8から給電されてもよいし、レール8に沿って配置された非接触送電装置から給電されてもよい。また、収納棚9の上方に設けた給電レールからクレーン本体1に給電されてもよい。
【0017】
クレーン本体1は、走行台車11と、上部フレーム12と、2つの車輪13と、一対のマスト14と、キャリッジ15とを含む。なお、走行台車11が、本開示の「台車」の一例に相当する。
【0018】
上部フレーム12は、X方向に延びるように、クレーン本体1の上部に配置されている。上部フレーム12は、一対のマスト14を互いに接続する。
【0019】
一対のマスト14の各々の一端は走行台車11に固定されている。一対のマスト14の各々の他端は上部フレーム12に接続されている。本実施の形態では、一対のマスト14は、X方向に距離を隔てて配置されている。ただし、一対のマスト14の配置はこれに限定されず、一対のマスト14は、クレーン本体1の移動方向に直交する方向(水平面内においてX方向に直交するY方向)に距離を隔てて配置されていてもよい。
【0020】
キャリッジ15は、走行台車11と上部フレーム12との間を一対のマスト14に沿って昇降する。キャリッジ15は、コントローラ7(図2参照)からの制御指令に従って昇降用モータ50により駆動されることによって、指令された高さまで移動(昇降)する。キャリッジ15の移動後、収納棚9に収容された荷物Lがフォーク(いずれも図示せず)によってキャリッジ15上に載せられる。キャリッジ15上に置かれた荷物Lがフォークによって収納棚9に収容されてもよい。キャリッジ15は、本開示の「昇降台」の一例に相当する。
【0021】
走行台車11には、走行用モータ40および昇降用モータ50が搭載されている。図2は、走行台車11の走行駆動部4とキャリッジ15の昇降駆動部5を説明する図である。なお、図1には、走行駆動部4と昇降駆動部5の詳細を省略して図示している。図2を参照して、走行駆動部4は、走行用モータ40と、減速機41と、駆動プーリ42と、複数のアイドルプーリ43と、走行用ベルトRbと、を含む。走行用モータ40は、たとえばサーボモータであってよく、コントローラ7によって制御される。減速機41は、走行台車11に固定されており、走行用モータ40の回転を減速(トルクを増幅)して、駆動プーリ42に伝達する。
【0022】
本実施の形態において、走行用ベルトRbは、レール8に沿って両端部が固定された歯付きベルトであり、駆動プーリ42は、歯付きプーリである。走行用ベルトRbは、駆動プーリ42に巻き掛けられており、走行用モータ40の駆動力(出力トルク)によって、駆動プーリ42が回転することにより、走行台車11がレール8に沿ってX方向に走行する。レール8を設けることなく、車輪13が路面を走行する構成であってもよい。この場合、走行用ベルトRbは、走行方向(X方向)の両端部が固定される。走行用モータ40が、本開示の「駆動装置」の一例に相当する。なお、走行用ベルトRbは、Vベルトや平ベルトであってよい。また、ベルトに代えて、チェーン(ローラチェーン、サイレントチェーン)を用いてもよく、この場合には、駆動スプロケットが用いられる。
【0023】
昇降駆動部5は、昇降用モータ50と、減速機51と、駆動プーリ52と、複数のアイドルプーリ53と、昇降用ベルトLbと、を含む。昇降用モータ50は、たとえばサーボモータであってよく、コントローラ7によって制御される。減速機51は、走行台車11に固定されており、昇降用モータ50の回転を減速(トルクを増幅)して、駆動プーリ52に伝達する。
【0024】
昇降用ベルトLbは、両端部がキャリッジ15に固定された歯付きベルトである。昇降用ベルトLbは、駆動プーリ52に巻き掛けられており、昇降用モータ50の駆動力(出力トルク)によって、駆動プーリ52が回転することにより、キャリッジ15を昇降方向(Z方向)に昇降させる。なお、昇降用ベルトLbは、Vベルトや平ベルトであってよく、チェーンであってもよい。
【0025】
走行台車11の走行に伴い、クレーン本体1に振動が発生する。とくに、キャリッジ15(マスト14)が振動すると、荷物の搬送に影響を与える。このため、特許文献1にように、走行台車11(クレーン本体1)の走行制御を実行する際に、物理モデルを用いて制振制御を行うことにより、振動を抑制している。制振制御を好適に実行するためには、クレーン本体1の振動特性を好適に反映するパラメータを用いることが望ましい。
【0026】
図3は、本実施の形態における、クレーン本体1の振動特性を説明する図である。図3(A)は、キャリッジ15の高さHがh1である場合であり、図3(B)は、キャリッジ15の高さHが、h1より高いh2である場合を示している。なお、本実施の形態において、キャリッジ15の高さHは、走行台車11からキャリッジ15までの距離である。図3(A)および(B)に示すように、クレーン本体1の重心Gは、キャリッジ15の高さHに応じて変化し、キャリッジ15の高さが高くなるほど、重心Gの高さが高くなる。このため、クレーン本体1の振動特性がキャリッジ15の高さHに応じて変化する。特に、堅牢なキャリッジ15を採用する場合、キャリッジ15の質量(重量)が大きくなり、高さHに応じて変化する振動特性の変化が大きくなる。本実施の形態では、キャリッジ15の高さHに応じた振動特性に基づいて走行制御用パラメータの値を求めることにより、クレーン本体1の制振(振動の抑制)を好適に実行可能とする。
【0027】
図4は、本実施の形態における自動倉庫システム100の制御システム200の一例を示す概略構成図である。制御システム200は、上位コントローラ2と、センサ群3と、コントローラ7とを備える。
【0028】
上位コントローラ2は、たとえば地上制御盤であって、クレーン本体1の外部に配置されている。上位コントローラ2は、HMI(Human Machine Interface)を含んでもよい。HMIは、たとえば、キーボード、マウス、操作ボタン、モニタ、タッチパネル付きモニタなどを含む。HMIは、クレーン本体1を移動させるためのオペレータの操作を受け付けたり、クレーン本体1の移動状況をオペレータのために表示したりする。上位コントローラ2は、たとえばオペレータによる操作に従って、クレーン本体1(走行台車11)の目標位置(X方向の位置)を指令する位置指令X*を生成する。また、上位コントローラ2は、たとえばオペレータによる操作に従って、キャリッジ15の目標位置(Z方向の位置:高さ)を指令する昇降位置指令Z*を生成する。上位コントローラ2は、位置指令X*および昇降位置指令Z*をコントローラ7に出力する。
【0029】
センサ群3は、走行用モータ40の回転角を検出する第1エンコーダ31と、昇降用モータ50の回転角を検出する第2エンコーダ32と、を含み、その検出結果をコントローラ7に出力する。
【0030】
コントローラ7は、上位コントローラ2からの制御指令(位置指令X*、昇降位置指令Z*、など)に従って、自動倉庫システム100の構成機器(本実施の形態では、走行用モータ40、昇降用モータ50)を制御する。コントローラ7は、たとえばクレーン本体1に搭載されている。しかし、コントローラ7がクレーン本体1の外部(たとえば地上)に配置されていてもよい。コントローラ7は、センサ群3による検出結果を有線で受信してもよいし無線で受信してもよい。コントローラ7は、自動倉庫システム100の構成機器への制御指令を有線で送信してもよいし無線で送信してもよい。
【0031】
コントローラ7は、プロセッサ71と、メモリ72とを含む。プロセッサ71は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などの処理回路(processing circuitry)を含む。メモリ72は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置とを含む。メモリ72には、OS(Operating System)を含むシステムプログラムと、コンピュータ読み取り可能なコードを含む制御プログラムと、自動倉庫システム100の構成機器を制御するための各種パラメータとが格納されている。プロセッサ71は、システムプログラム、制御プログラムおよびパラメータを読み出してメモリ72に展開して実行することによって様々な演算処理を実現する。コントローラ7による演算処理は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などにより実現されてもよい。
【0032】
コントローラ7は、複数のユニットに機能ごとに分割されていてもよい。たとえば、走行用モータ40を制御するユニットと、昇降用モータ50を制御するユニットとが別々に設けられていてもよい。コントローラ7は、本開示の「制御装置」の一例に相当する。
【0033】
コントローラ7は、位置指令X*および昇降位置指令Z*を上位コントローラ2から受けると、クレーン本体1(走行台車11)を移動(走行)する走行制御と、キャリッジ15を昇降する昇降制御を実行する。本実施の形態において、位置指令X*は、走行用モータ40の位置指令(回転角)として生成され、昇降位置指令Z*は、昇降用モータ50の位置指令(回転角)として生成される。
【0034】
図5は、コントローラ7に構成された機能ブロックである昇降制御部701の一例を示す図である。昇降制御部701は、昇降用モータ50を制御する。昇降制御部701は、位置算出部791と、位置制御部792と、速度算出部793と、速度制御部794と、を含む。位置算出部791は、第2エンコーダ32の信号に基づいて、昇降用モータ50の位置(回転角)Zrを算出する。位置算出部791は、算出された位置Zrを減算部797に出力する。
【0035】
減算部797は、上位コントローラ2から入力された昇降位置指令Z*から、位置算出部791により算出された位置Zrを減算する。減算部797は、減算値(Z*-Zr)を位置制御部792に出力する。
【0036】
位置制御部792は、減算部797による減算値(Z*-Zr)が解消される(ゼロに近付く)ように速度指令Vz*を生成する。位置制御部792は、生成された速度指令Vz*を減算部798に出力する。
【0037】
速度算出部79は、第2エンコーダ32からの信号に基づいて、キャリッジ15が昇降する速度(昇降用モータ50の回転速度)Vzを算出する。速度算出部793は、算出された速度Vzを減算部798に出力する。
【0038】
減算部798は、位置制御部792からの速度指令Vz*から、速度算出部793により算出された速度Vzを減算する。減算部798は、減算値(Vz*-Vz)を速度制御部794に出力する。
【0039】
速度制御部794は、減算部798による減算値(Vz*-Vz)が解消される(ゼロに近付く)ようにトルク指令TrS*を生成する。速度制御部794は、トルク指令TrS*を昇降用モータ50に出力する。昇降用モータ50は、トルク指令TrS*のトルクが出力されるよう制御される。これにより、キャリッジ15の高さHが、目標位置(昇降位置指令Z*に相当する高さ)に一致するよう、昇降制御が実行される。
【0040】
図6は、コントローラ7に構成された機能ブロックである走行制御部702の一例を示す図である。走行制御部702は、走行用モータ40を制御する。走行制御部702は、フィードフォワード制御部(FF制御部)710と、フィードフォワードパラメータ算出部(FFパラメータ算出部)720と、制振フィルタ730と、制振フィルタパラメータ算出部(制振Fパラメータ算出部)740と、フィードバック制御部(FB制御部)750と、を含む。
【0041】
FF制御部710は、クレーン本体1の物理モデル(たとえば、二慣性モデル)から求めた伝達関数G1を用いて、トルクフィードフォワード値TrFFを算出する。伝達関数G1のパラメータは、たとえば、クレーン本体1(走行台車11、マスト14、キャリッジ15)の質量、共振周波数(一次、二次)、反共振周波数(一次、二次)、等を含む。以下、伝達関数G1のパラメータを、フィードフォワードパラメータ(FFパラメータ)とも称する。キャリッジ15の高さHに応じてクレーン本体1の重心Gが変化するので、クレーン本体1の振動特性が高さHに応じて変化する。そのため、キャリッジ15の高さHに応じて、FFパラメータである共振周波数や反共振周波数が変化する。本実施の形態では、FFパラメータ算出部720において、キャリッジ15の高さH(Z方向におけるキャリッジ15の位置)を用いて、FFパラメータの値を求め、トルクフィードフォワード値TrFFを算出する。
【0042】
本実施の形態において、高さHは、第2エンコーダ32の検出信号から位置算出部791(図5参照)で算出した、昇降用モータ50の位置Zrに基づいて定められ、FFパラメータ算出部720に入力される。本実施の形態において、高さHは、キャリッジ15の現在の高さであり、本開示の「高さ情報」の一例に相当する。FFパラメータ算出部720は、高さHに応じて、FFパラメータの値を算出し、FF制御部710に出力する。メモリ72には、予めシミュレーションや実験等によって設定された、FFパラメータマップが格納されており、FFパラメータ算出部720は、高さHに応じて、FFパラメータマップからFFパラメータの値を算出する。FFパラメータマップは、パラメータ毎(たとえば、共振周波数(一次、二次)、反共振周波数(一次、二次))に、高さHに応じて変化する、クレーン本体1の重心を考慮した振動特性に基づいて設定されている。FFパラメータマップは、たとえば、FFパラメータと高さHの二次元マップであってよい。FFパラメータ算出部720は、高さHに基づいて各々のFFパラメータの値を算出し、FF制御部710へ出力する。FFパラメータは、本開示の「走行制御用パラメータ」の一例に相当する。
【0043】
FF制御部710は、上位コントローラ2から入力された位置指令X*と、FFパラメータ算出部720で算出されたFFパラメータとから、伝達関数G1を用いて、トルクフィードフォワード値TrFFを算出し、加算部719へ出力する。
【0044】
制振フィルタ730は、伝達関数G2を用いて、位置指令X*をフィルタリングする。制振フィルタ730は、位置指令X*の振動成分(クレーン本体1が振動し易い周波数数成分)を除去する、ノッチフィルタの機能を備える。伝達関数G2は、伝達関数G1と同様に、クレーン本体1の物理モデルから求められ、そのパラメータは、たとえば、クレーン本体1(走行台車11、マスト14、キャリッジ15)の質量、共振周波数(一次、二次)、反共振周波数(一次、二次)、等を含む。以下、伝達関数G2のパラメータを、制振フィルタパラメータ(制振Fパラメータ)とも称する。高さHに応じて、制振Fパラメータである共振周波数や反共振周波数が変化する。このため、制振Fパラメータ算出部740において、高さHに基づいて制振Fパラメータの値を求め、制振フィルタ730で、位置指令X*をフィルタリングする。
【0045】
昇降用モータ50の位置Zrに基づいて決定された高さHが、制振Fパラメータ算出部740に入力されると、制振Fパラメータ算出部740は、高さHに応じて、制振Fパラメータの値を算出する。メモリ72には、予めシミュレーションや実験等によって設定された、制振Fパラメータマップが格納されており、制振Fパラメータ算出部740は、高さHに応じて、制振Fパラメータマップから制振Fパラメータの値を算出する。制振Fパラメータマップは、パラメータ毎(たとえば、共振周波数(一次、二次)、反共振周波数(一次、二次))に、高さHに応じて変化する重心Gを考慮した振動特性に基づいて設定されている。制振Fパラメータマップは、たとえば、制振Fパラメータと高さHの二次元マップであってよい。制振Fパラメータ算出部740は、高さHに基づいて各々の制振Fパラメータの値を算出する。制振Fパラメータは、本開示の「走行制御用パラメータ」の一例に相当する。
【0046】
制振フィルタ730は、伝達関数G2と制振Fパラメータ算出部740で算出した制振Fパラメータとを用いて、位置指令X*をフィルタリングし、フィルタリングした位置指令Xfを速度フィードフォワード部(速度FF部)712および減算部714に出力する。
【0047】
速度FF部712は、フィルタリングされた位置指令Xfを微分することによって速度フィードフォワード値VFFを生成する。速度FF部712は、生成された速度フィードフォワード値VFFを演算部717に出力する。
【0048】
FB制御部750は、位置算出部751と、位置制御部752と、速度算出部753と、速度制御部754と、を含む。位置算出部751は、第1エンコーダ31の信号に基づいて、走行用モータ40の位置(回転角)Xを算出する。位置算出部751は、算出された位置Xを減算部714に出力する。
【0049】
減算部714は、制振フィルタ730によりフィルタリングされた位置指令Xfから、位置算出部751により算出された位置Xを減算する。減算部714は、減算値(Xf-X)を位置制御部752に出力する。
【0050】
位置制御部752は、減算部714による減算値(Xf-X)が解消される(ゼロに近付く)ように速度指令Vx*を生成する。位置制御部752は、生成された速度指令Vx*を演算部717に出力する。
【0051】
速度算出部753は、第1エンコーダ31からの信号に基づいて、クレーン本体1が移動する速度(走行用モータ40の回転速度)Vxを算出する。速度算出部753は、算出された速度Vxを演算部717に出力する。
【0052】
演算部717は、位置制御部752からの速度指令Vx*に速度FF部712からの速度フィードフォワード値VFFを加算し、その加算値から速度算出部753により算出された速度Vxを減算する。演算部717は、当該演算による値(Vx*+VFF-Vx)を速度制御部754に出力する。
【0053】
速度制御部754は、演算部717による演算値(Vx*+VFF-Vx)が解消される(ゼロに近付く)ようにトルク指令TrR*を生成する。速度制御部754は、生成されたトルク指令TrR*を加算部719に出力する。
【0054】
加算部719は、速度制御部754からのトルク指令TrR*にFF制御部710からのトルクフィードフォワード値TrFFを加算する。加算部719は、加算値(TrR*+TrFF)を走行用モータ40に出力する。走行用モータ40は、加算値(TrR*+TrFF)のトルクが出力されるよう制御される。このように、コントローラ7は、クレーン本体1を、物理モデルを用いて、振動が抑制されるよう走行制御する。
【0055】
本実施の形態によれば、クレーン本体1の走行制御に用いられる、FFパラメータ/制振Fパラメータの値が、キャリッジ15の高さHに応じた振動特性に基づいて求められる。これにより、高さHに応じたクレーン本体1の重心Gを考慮して、走行制御を実行でき、振動を軽減することが可能になる。
【0056】
上記実施の形態では、FFパラメータおよび制振Fパラメータの値を、高さHに基づいて算出していた。しかし、FFパラメータおよび制振Fパラメータの少なくとも一方を、高さHに基づいて算出するようにしてもよい。これによっても、高さHに応じた重心Gの位置を考慮して、走行制御を実行でき、クレーン本体1の振動を軽減することが可能になる。
【0057】
上記実施の形態では、キャリッジ15の高さHを、第2エンコーダ32で検出信号を用いて算出した昇降用モータ50の位置Zrに基づいて求めている。位置Zrは、キャリッジ15の現在の高さHに相当する。現在のキャリッジ15の高さHを、走行台車11に設けた測距センサ33(図1)を用いて検出するようにしてもよい。測距センサ33は、光学式、ミリ波式、超音波式、であってよく、ステレオカメラであってもよい。測距センサ33で測定した、走行台車11とキャリッジ15の距離が高さHに相当する。また、現在のキャリッジ15の高さHとして、昇降位置指令Z*、すなわち過去の昇降位置指令に基づいて移動された結果のキャリッジ15の高さを用いて、現在の高さHとしてもよい。
【0058】
キャリッジ15は、コントローラ7からの昇降位置指令Z*に従って昇降用モータ50が制御され、指令された高さ(位置)まで移動(昇降)し、キャリッジ15の移動後、荷物Lが収納棚9に収容(入庫)され、あるいは、荷物Lが収納棚9からキャリッジ15上に取り出される(出庫)。この際に、キャリッジ15(マスト14)が振動すると、荷物Lの入出庫に影響を与える。キャリッジ15の高さHが指令された高さであるときの振動を抑制することにより、荷物Lの入出庫の影響を軽減できる。したがって、キャリッジ15の目標位置である昇降位置指令Z*に基づいて、キャリッジ15の高さの目標値(最終到達位置)Htを求め、FFパラメータ算出部720、および、制振Fパラメータ算出部740において、最終到達位置Htを用いて、FFパラメータ、制振Fパラメータを算出してもよい。この場合、最終到達位置Htが、本開示の「高さ情報」の一例に相当する。
【0059】
上記実施の形態では、走行用ベルトRbを用いて、走行台車11(クレーン本体1)の走行を行っていたが、車輪13が駆動されることにより走行を行うように構成されてもよい。また、昇降用ベルトLbを用いて、キャリッジ15の昇降を行っていたが、これに限られない。たとえば、ボールねじ機構を用いて、キャリッジ15の昇降を行うものであってもよい。
【0060】
上記実施の形態では、走行用モータ40および昇降用モータ50として、サーボモータを用いていたが、モータの種類は、サーボモータに限られず、たとえば、ステッピングモータ等、どのような種類であってもよい。また、走行台車11およびキャリッジ15の駆動源は、油圧モータや平面モータ等であってもよい。
【0061】
本開示における実施態様を例示すると、次のような態様を例示できる。
1)走行可能な台車(11)と、台車(11)に固定されたマスト(14)に沿って昇降する昇降台(15)と、台車(11)を走行させる駆動装置(40)と、駆動装置(40)を制御することにより、台車(11)の走行制御を行う制御装置(7)と、を備えた搬送装置であって、制御装置(7)は、昇降台(15)の高さHに応じた台車(11)の振動特性に基づいて走行制御を実行する、搬送装置。
【0062】
2)上記1において、台車(11)の走行制御は、駆動装置(40)のフィードフォワードトルクを算出するフィードフォワード制御を含み、台車(11)の振動特性に基づいてフィードフォワード制御のパラメータを変更する、搬送装置。
【0063】
3)上記1または2において、台車(11)の走行制御は、台車(11)の位置指令X*をフィルタリングする制振フィルタを含み、台車(11)の振動特性に基づいて制振フィルタのパラメータを変更する、搬送装置。
【0064】
4)上記1において、制御装置(7)は、昇降台(25)の高さHに基づいてフィードフォワードパラメータを算出するフィードフォワードパラメータ算出部(720)と、高さHに基づいて制振フィルタパラメータを算出する制振フィルタパラメータ算出部(740)と、台車の位置指令X*とフィードフォワードパラメータに基づいて、フィードフォワードトルクを算出するフィードフォワード制御部(710)と、制振フィルタパラメータを用いて、位置指令X*をフィルタリングする制振フィルタ(730)と、を含む、搬送装置。
【0065】
5)上記1または4において、高さHは、昇降台(15)の現在の高さ、あるいは、昇降台(25)の最終到達位置である、搬送装置。
【0066】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
100 自動倉庫システム、1 クレーン本体、11 走行台車、12 上部フレーム、13 車輪、14 マスト、15 キャリッジ、200 制御システム、2 上位コントローラ、3 センサ群、31 第1エンコーダ、32 第2エンコーダ、33 測距センサ、4 走行駆動部、40 走行用モータ、41 減速機、42 駆動プーリ、5 昇降駆動部、50 昇降用モータ、51 減速機、52 駆動プーリ、7 コントローラ、71 プロセッサ、72 メモリ、701 昇降制御部、702 走行制御部、710 フィードフォワード制御部、712 速度フィードフォワード部、720 フィードフォワードパラメータ算出部、730 制振フィルタ、740 制振フィルタパラメータ算出部、750 フィードバック制御部、751 位置算出部、752 位置制御部、753 速度算出部、754 速度制御部、791 位置算出部、792 位置制御部、793 速度算出部、794 速度制御部、8 レール、9 収納棚。
図1
図2
図3
図4
図5
図6