(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025092927
(43)【公開日】2025-06-23
(54)【発明の名称】炉心溶融物の冷却装置および原子力設備
(51)【国際特許分類】
G21C 9/016 20060101AFI20250616BHJP
G21C 13/00 20060101ALI20250616BHJP
【FI】
G21C9/016
G21C13/00 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208346
(22)【出願日】2023-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 千弘
【テーマコード(参考)】
2G002
【Fターム(参考)】
2G002AA04
2G002BA07
2G002CA03
2G002EA14
(57)【要約】
【課題】原子炉容器から流出した炉心溶融物を早期に冷却することを可能とする。
【解決手段】原子炉格納容器の基礎部に設置された構造物により原子炉が支持され、原子炉容器の下部から落下する炉心溶融物を冷却する炉心溶融物の冷却装置において、基礎部に中空形状をなして設けられるキャビティと、キャビティに設けられて冷却水を貯留する貯水槽と、炉心溶融物を受け止めて炉心溶融物の熱を貯水槽の冷却水に伝達する伝熱部材と、貯水槽の冷却水を伝熱部材の上方に噴出する噴出ノズルと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器の基礎部に設置された構造物により原子炉が支持され、原子炉容器の下部から落下する炉心溶融物を冷却する炉心溶融物の冷却装置において、
前記基礎部に中空形状をなして設けられるキャビティと、
前記キャビティに設けられて冷却水を貯留する貯水槽と、
前記炉心溶融物を受け止めて前記炉心溶融物の熱を前記貯水槽の冷却水に伝達する伝熱部材と、
前記貯水槽の冷却水を前記伝熱部材の上方に噴出する噴出ノズルと、
を備える炉心溶融物の冷却装置。
【請求項2】
前記伝熱部材は、貯水槽の上方に配置される伝熱板と、前記伝熱板から前記貯水槽に延出する伝熱ロッドとを有する、
請求項1に記載の炉心溶融物の冷却装置。
【請求項3】
前記噴出ノズルは、一端部が前記貯水槽に連通し、他端部が前記伝熱部材より上方に配置され、中間部に前記貯水槽の冷却水の圧力に応じて開放する開放弁が設けられる、
請求項1または請求項2に記載の炉心溶融物の冷却装置。
【請求項4】
前記開放弁は、ラプチャーディスクを有する、
請求項3に記載の炉心溶融物の冷却装置。
【請求項5】
前記噴出ノズルは、冷却水の噴出部が前記キャビティにおける前記炉心溶融物の入口部とは反対側に配置される、
請求項1に記載の炉心溶融物の冷却装置。
【請求項6】
前記伝熱板の上部に犠牲材が配置される、
請求項2に記載の炉心溶融物の冷却装置。
【請求項7】
前記貯水槽に冷却水を補充する冷却水補充機構が設けられる、
請求項1に記載の炉心溶融物の冷却装置。
【請求項8】
原子炉格納容器と、
前記原子炉格納容器の内部に配置される原子炉と、
請求項1に記載の炉心溶融物の冷却装置と、
を備える原子力設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炉心溶融物の冷却装置および原子力設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉格納容器は、岩盤等の堅固な地盤上に立設され、内部に原子炉が配置される。原子炉は、原子炉格納容器の基礎部に設けられたコンクリート構造物により支持される。原子力設備では、シビアアクシデントとして、炉心溶融物が原子炉容器から流出する事故が想定される。炉心溶融物は、原子炉容器の下部を溶融して下方に落下することから、原子炉容器の下方にキャビティを設け、キャビティにより炉心溶融物を受け止め、冷却水により炉心溶融物を冷却する。このような原子力設備としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の原子力設備では、炉心溶融物が原子炉容器から流出する事故が発生すると、ポンプを作動することで、キャビティに落下した炉心溶融物に対して冷却水を供給して冷却している。ところが、原子力設備における電源が喪失した場合、ポンプを作動することができず、早期に炉心溶融物を冷却することができないおそれがある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、原子炉容器から流出した炉心溶融物を早期に冷却することを可能とする炉心溶融物の冷却装置および原子力設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の炉心溶融物の冷却装置は、原子炉格納容器の基礎部に設置された構造物により原子炉が支持され、原子炉容器の下部から落下する炉心溶融物を冷却する炉心溶融物の冷却装置において、前記基礎部に中空形状をなして設けられるキャビティと、前記キャビティに設けられて冷却水を貯留する貯水槽と、前記炉心溶融物を受け止めて前記炉心溶融物の熱を前記貯水槽の冷却水に伝達する伝熱部材と、前記貯水槽の冷却水を前記伝熱部材の上方に噴出する噴出ノズルと、を備える。
【0007】
また、本開示の原子力設備は、前記原子炉格納容器の内部に配置される原子炉と、前記炉心溶融物の冷却装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の炉心溶融物の冷却装置および原子力設備によれば、原子炉容器から流出した炉心溶融物を早期に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の原子力設備を表す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の炉心溶融物の冷却装置を表す概略図である。
【
図3】
図3は、炉心溶融物の冷却装置の作用を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0011】
<原子力設備>
図1は、本実施形態の原子力設備を表す概略図である。
【0012】
図1に示すように、原子力設備10は、原子力発電プラントに適用される。本実施形態の原子力設備10は、軽水を原子炉冷却材および中性子減速材として使用し、一次系全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)を備える。但し、原子炉は、加圧水型原子炉に限定されるものではなく、沸騰型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)などのその他の原子炉に適用することもできる。
【0013】
原子炉格納容器11は、岩盤等の堅固な地盤G上に配置される。原子炉格納容器11は、基礎部12と、格納容器本体13とを備える。基礎部12は、地盤G上に設置され、格納容器本体13は、基礎部12に立設される。基礎部12と格納容器本体13は、一体構造をなす。格納容器本体13は、内部に鉄筋コンクリートなどにより構築される構造物14が設けられる。構造物14は、基礎部12の上部で、格納容器本体13の内部に配置される。
【0014】
原子炉格納容器11は、中央部に原子炉15が配置される。構造物14は、原子炉格納容器11の中央部に円柱形状をなす空間部16が区画され、原子炉15は、空間部16に配置され、空間部16の内壁部を形成する構造物14により吊り下げ支持される。原子炉格納容器11は、原子炉15の周囲に複数の蒸気発生器17が配置される。複数の蒸気発生器17は、構造物14に支持される。原子炉15と複数の蒸気発生器17は、冷却水配管18により連結される。
【0015】
原子炉格納容器11は、原子炉15の下方にキャビティ19が区画形成される。キャビティ19は、原子炉15から落下する炉心溶融物を受け止めて冷却する。原子炉格納容器11は、基礎部12に冷却水を貯留する冷却水ピット20が設けられ、格納容器本体13の上部に冷却水噴射装置21が設けられる。冷却水ピット20は、冷却水経路22により冷却水噴射装置21に連結され、冷却水経路22に冷却水ポンプ23が設けられる。
【0016】
原子炉15は、原子炉容器24の内部に炉心25が配置されて構成される。原子炉容器24は、原子炉容器本体の上部に原子炉容器蓋が着脱自在に設けられて構成される。原子炉容器24は、上側部に一次冷却水としての軽水(冷却材)を供給する入口ノズルと、軽水を排出する出口ノズルが設けられる。原子炉容器24は、入口ノズルと出口ノズルに蒸気発生器17からの冷却水配管18がそれぞれ連結される。原子炉容器24の内部に配置される炉心25は、複数の燃料集合体により構成される。燃料集合体は、多数の燃料棒が支持格子により格子状に束ねられて構成される。なお、炉心25は、多数の燃料棒と共に原子炉15の出力を制御する複数の制御棒が配置される。
【0017】
原子炉15は、炉心25を構成する原子燃料が核分裂することで中性子を放出し、減速材および一次冷却水としての軽水が、放出された高速中性子の運動エネルギを低下させて熱中性子とし、新たな核分裂を起こしやすくすると共に、発生した熱を奪って冷却する。このとき、炉心25に制御棒を挿入することで、炉心25内で生成される中性子数を調整することで、原子炉15の出力が調整される。
【0018】
蒸気発生器17は、原子炉格納容器11の外部に設けられた蒸気タービンに蒸気配管を介して連結される。蒸気タービンは、発電機が連結される。蒸気発生器17は、原子炉15から供給される高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換を行うことで、蒸気を生成する。生成された蒸気は、蒸気タービンに送られて駆動し、発電機による発電を行う。蒸気タービンを駆動した蒸気は、冷却された後に蒸気発生器17に戻される。
【0019】
<炉心溶融物の冷却装置>
図2は、本実施形態の炉心溶融物の冷却装置を表す概略図である。
【0020】
図1および
図2に示すように、原子力設備10は、炉心溶融物の冷却装置30を備える。炉心溶融物の冷却装置30は、原子炉格納容器11の基礎部12に設置された構造物14により原子炉15が支持され、原子炉15を構成する原子炉容器24の下部から落下する炉心溶融物を冷却するものである。炉心溶融物の冷却装置30は、キャビティ19と、貯水槽31と、伝熱部材32と、噴出ノズル33とを備える。
【0021】
キャビティ19は、原子炉15の下方に位置する基礎部12に中空形状をなして設けられ、原子炉15の中心部から水平方向にずれた位置に配置される。キャビティ19は、区画された部屋であり、炉心溶融物が拡散する拡散空間部として機能する。キャビティ19は、移送通路34を通して原子炉容器24の下方空間部に連通する。すなわち、移送通路34は、一端部が基礎部12の上面に開口し、他端部がキャビティ19の側部に連通する。移送通路34は、L字形状をなし、鉛直通路34aと、水平通路34bとを有する。鉛直通路34aは、上端部が基礎部12の上面に開口し、下端部が水平通路34bの一端部に連通する。水平通路34bは、他端部がキャビティ19に連通する。移送通路34は、基礎部12を貫通して設けられた貫通孔であり、貫通孔の内壁面に耐火材(例えば、金属配管など)が配置されることが好ましい。
【0022】
貯水槽31は、キャビティ19に設けられ、内部に冷却水を貯留する。貯水槽31は、内部が中空なタンクであり、ほぼ密閉した形状をなす。貯水槽31は、キャビティ19の下半分の領域に設けられ、キャビティ19の上半分の領域が拡散空間部となる。貯水槽31は、移送通路34に連通する入口部19aが貯水槽31の上面より上方に位置する。貯水槽31は、内部に冷却水が充填されるが、上部に空気層31aが設けられることが好ましい。
【0023】
伝熱部材32は、炉心溶融物を受け止め、炉心溶融物の熱を貯水槽31の冷却水に伝達する。伝熱部材32は、複数の伝熱板41と、複数の伝熱ロッド42とを有する。複数の伝熱板41は、貯水槽31の上方に配置される。この場合、複数の伝熱板41は、隙間なく配置してもよいし、所定間隔を空けて配置してもよい。複数の伝熱ロッド42は、伝熱板41から貯水槽31に延出する。すなわち、伝熱ロッド42は、貯水槽31の内部に鉛直方向に沿って配置され、上端部が貯水槽31の上面部を貫通して伝熱板41の下面に連結され、下部が貯水槽31の底部に連結される。つまり、複数の伝熱板41は、複数の伝熱ロッド42により貯水槽31に支持される。
【0024】
伝熱部材32は、複数の伝熱板41上に炉心溶融物が移送されてくると、炉心溶融物を受け止る。炉心溶融物は、高温であることから、複数の伝熱板41は、炉心溶融物の熱を複数の伝熱ロッド42を介して貯水槽31の冷却水に伝達する。すると、貯水槽31の冷却水は、伝熱部材32から伝達される熱により昇温される。
【0025】
噴出ノズル33は、貯水槽31の冷却水を伝熱部材32の上方に噴出する。具体的に、噴出ノズル33は、貯水槽31の冷却水を伝熱部材32が受け止めた炉心溶融物に向けて噴出する。噴出ノズル33は、一端部が貯水槽31の下部に連通し、他端部が伝熱部材32の伝熱板41より上方に配置される。噴出ノズル33は、第1鉛直部51と、第1水平部52と、第2鉛直部53と、第2水平部54と、噴出部55とを有する。第1鉛直部51は、一端部が貯水槽31の下部に連結され、他端部が第1水平部52の一端部に連結される。第1水平部は、他端部が第2鉛直部53の一端部に連結される。第2鉛直部53は、他端部が第2水平部54の一端部に連結される。第2水平部54は、他端部がキャビティ19に侵入して配置される。すなわち、噴出ノズル33は、第2水平部54の他端部に設けられた噴出部55が伝熱板41の上方に配置される。
【0026】
噴出ノズル33は、冷却水の噴出部55がキャビティ19における入口部19aとは反対側に配置される。噴出ノズル33や噴出部55は、複数設けることが好ましい。すなわち、噴出ノズル33を貯水槽31の周囲に複数設けたり、噴出ノズル33の先端部を分岐して複数の噴出部55を設けたりすることで、異なる複数個所からキャビティ19の上方に向けて冷却水を噴出することが好ましい。但し、噴出ノズル33や噴出部55をキャビティ19における入口部19a側に設けてもよい。
【0027】
噴出ノズル33は、中間部、つまり、第2鉛直部53に開放弁56が設けられる。開放弁56は、貯水槽31の冷却水の圧力に応じて開閉するものであり、ラプチャーディスクを採用することが好ましい。すなわち、開放弁56は、貯水槽31の冷却水の圧力が予め設定された所定圧力になると、ラプチャーディスクが破裂することで、開放される。
【0028】
なお、炉心溶融物の冷却装置30は、伝熱部材32の上部に犠牲材コンクリート61が設けられることが好ましい。犠牲材コンクリート61は、炉心溶融物の融点を低下させて低粘性化させる犠牲材であり、コンクリートで限定されるものではない。
【0029】
また、炉心溶融物の冷却装置30は、貯水槽31に冷却水を補充する冷却水補充機構62が設けられることが好ましい。すなわち、貯水槽31よりも鉛直方向の上方に補充タンク63を配置し、貯水槽31と補充タンク63を補充経路64により連結し、補充経路64に開閉弁65を設ける。この場合、開閉弁65は、手動式とすることが好ましい。冷却水補充機構62は、開閉弁65を開放することで、補充タンク63の冷却水を自由落下により補充経路64から貯水槽31に補充することができる。なお、冷却水補充機構62は、この構成に限定されるものではない。たとえば、冷却水補充機構62は、電源が使用できる場合や電源が復旧した場合、遠隔操作できるように、電動開閉弁66と電動ポンプ67とを有するものであってもよく、両者を併設してもよい。
【0030】
<炉心溶融物の冷却方法>
図3は、炉心溶融物の冷却装置の作用を表す概略図である。
【0031】
図1に示すように、原子力設備10にて、例えば、シビアアクシデントが発生し、炉心溶融による炉心損傷事故が発生することが想定される。このとき、
図1および
図3に示すように、原子炉15は、原子炉容器24の下部が破損し、炉心25が溶融した炉心溶融物25Aが流出する。原子炉容器24の下部から流出した炉心溶融物25Aは、原子炉容器24の下方に設けられた移送通路34の鉛直通路34aに落下する。その後、炉心溶融物25Aは、移送通路34の鉛直通路34aから水平通路34bを流れ、入口部19aからキャビティ19に到達する。
【0032】
キャビティ19に流れた炉心溶融物25Aは、伝熱部材32により受け止められる。伝熱部材32は、複数の伝熱板41が炉心溶融物25Aを受け止め、複数の伝熱ロッド42により炉心溶融物25Aの熱を貯水槽31の冷却水に伝達する。貯水槽31の冷却水は、伝熱部材32により伝達された炉心溶融物25Aの熱により昇温される。貯水槽31の冷却水は、昇温されて膨張し、噴出ノズル33を介して開放弁56に対して圧力を作用させる。そして、貯水槽31の冷却水の圧力が所定圧力になると、開放弁(ラプチャーディスク)56が破裂することで、開放される。
【0033】
すると、貯水槽31の冷却水が噴出ノズル33および開放弁56を通って噴出部55に至り、噴出部55は、冷却水を伝熱部材32が受け止めた炉心溶融物25Aに向けて噴出する。そして、炉心溶融物25Aは、噴出部55から噴出された冷却水により冷却される。
【0034】
なお、伝熱部材32の上部に犠牲材コンクリート61が設けられていた場合、キャビティ19に流れた炉心溶融物25Aは、犠牲材コンクリート61に接触し、溶融混合することで融点がさらに低下して低粘性化する。
【0035】
また、炉心溶融物25Aは、数1000℃であることから、伝熱部材32上の炉心溶融物25Aを冷却した冷却水は、気化して貯水槽31の冷却水が減少する。このとき、作業者または検出器が貯水槽31における冷却水の減少を検出し、冷却水補充機構62を作動させることで、貯水槽31に冷却水を補充する。
【0036】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る炉心溶融物の冷却装置は、原子炉格納容器11の基礎部12に設置された構造物14により原子炉15が支持され、原子炉容器24の下部から落下する炉心溶融物25Aを冷却する炉心溶融物の冷却装置30において、基礎部12に中空形状をなして設けられるキャビティ19と、キャビティ19に設けられて冷却水を貯留する貯水槽31と、炉心溶融物25Aを受け止めて炉心溶融物25Aの熱を貯水槽31の冷却水に伝達する伝熱部材32と、貯水槽31の冷却水を伝熱部材32の上方に噴出する噴出ノズル33とを備える。
【0037】
第1の態様に係る炉心溶融物の冷却装置によれば、原子炉容器24の下部が破損し、炉心25が溶融した炉心溶融物25Aが落下すると、炉心溶融物25Aは、キャビティ19に移送される。キャビティ19に移送された炉心溶融物25Aは、伝熱部材32により受け止められ、炉心溶融物25Aの熱が貯水槽31の冷却水に伝達される。すると、貯水槽31の冷却水は、伝熱部材32から伝達された炉心溶融物25A熱により昇温されて膨張し、噴出ノズル33を介して伝熱部材32上の炉心溶融物25Aに向けて噴出されることとなり、炉心溶融物25Aは、冷却水により冷却される。その結果、原子力設備10における電源が喪失した場合であっても、原子炉容器24から流出した炉心溶融物25Aを早期に冷却することができる。
【0038】
また、炉心溶融物の冷却装置によれば、キャビティ19に移送された炉心溶融物25Aに対して噴出ノズル33から冷却水を噴出して冷却することで、炉心溶融物25Aと大量の冷却水との接触による水蒸気爆発の発生を抑制することができる。さらに、キャビティ19に貯水槽31と伝熱部材32と噴出ノズル33とを設けるだけであり、構造の複雑化を抑制して製造コストの増加を抑制することができる。
【0039】
第2の態様に係る炉心溶融物の冷却装置は、第1の態様に係る炉心溶融物の冷却装置であって、さらに、伝熱部材32は、貯水槽31の上方に配置される伝熱板41と、伝熱板41から貯水槽31に延出する伝熱ロッド42とを有する。これにより、伝熱板41により炉心溶融物25Aを受け止めることができ、伝熱ロッド42により炉心溶融物25Aの熱を適切に貯水槽31の冷却水に伝達することができる。
【0040】
第3の態様に係る炉心溶融物の冷却装置は、第1の態様または第2の態様に係る炉心溶融物の冷却装置であって、さらに、噴出ノズル33は、一端部が貯水槽31に連通し、他端部が伝熱部材32より上方に配置され、中間部に貯水槽31の冷却水の圧力に応じて開放する開放弁56が設けられる。これにより、貯水槽31の冷却水の圧力が所定圧力に到達するまで、伝熱部材32上に炉心溶融物25Aを拡散することができると共に、所定圧力の冷却水を噴出することで、広範囲に冷却水を噴出して炉心溶融物25Aを適切に冷却することができる。
【0041】
第4の態様に係る炉心溶融物の冷却装置は、第3の態様に係る炉心溶融物の冷却装置であって、さらに、開放弁56は、ラプチャーディスクを有する。これにより、開放弁56の構造の簡素化を図ることができる。
【0042】
第5の態様に係る炉心溶融物の冷却装置は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに係る炉心溶融物の冷却装置であって、さらに、噴出ノズル33は、冷却水の噴出部55がキャビティ19における炉心溶融物25Aの入口部19aとは反対側に配置される。これにより、伝熱部材32上に広かった炉心溶融物25Aの下流部に向けて冷却水を噴出することとなり、炉心溶融物25Aを適切に冷却することができる。
【0043】
第6の態様に係る炉心溶融物の冷却装置は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係る炉心溶融物の冷却装置であって、さらに、伝熱板41の上部に犠牲材コンクリート(犠牲材)61が配置される。これにより、キャビティ19に移送された炉心溶融物25Aは、犠牲材コンクリート61に受け止められて溶融混合することで、融点を低下して低粘性化することとなり、早期に冷却することができる。
【0044】
第7の態様に係る炉心溶融物の冷却装置は、第1の態様から第6の態様のいずれか一つに係る炉心溶融物の冷却装置であって、さらに、貯水槽31に冷却水を補充する冷却水補充機構62が設けられる。これにより、貯水槽31に常時冷却水を確保することができ、炉心溶融物25Aを所定期間にわたって適切に冷却することができる。
【0045】
第8の態様に係る原子力設備は、原子炉格納容器11と、原子炉格納容器11の内部に配置される原子炉15と、炉心溶融物の冷却装置30とを備える。これにより、炉心溶融物の冷却装置30は、原子力設備10における電源が喪失した場合であっても、原子炉容器24から流出した炉心溶融物25Aを早期に冷却することができ、安全性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 原子力設備
11 原子炉格納容器
12 基礎部
13 格納容器本体
14 構造物
15 原子炉
16 空間部
17 蒸気発生器
18 冷却水配管
19 キャビティ
20 冷却水ピット
21 冷却水噴射装置
22 冷却水経路
23 冷却水ポンプ
24 原子炉容器
25 炉心
25A 炉心溶融物
30 炉心溶融物の冷却装置
31 貯水槽
32 伝熱部材
33 噴出ノズル
34 移送通路
41 伝熱板
42 伝熱ロッド
51 第1鉛直部
52 第1水平部
53 第2鉛直部
54 第2水平部
55 噴出部
56 開放弁
61 犠牲材コンクリート
62 冷却水補充機構
63 補充タンク
64 補充経路
65 開閉弁
66 電動開閉弁
67 電動ポンプ