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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025092938
(43)【公開日】2025-06-23
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20250616BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20250616BHJP
【FI】
B60C11/03 300E
B60C11/03 C
B60C11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208362
(22)【出願日】2023-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 洸樹
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC18
3D131BC44
3D131EB03U
3D131EB52U
3D131EB53U
3D131EB55U
3D131EB63U
3D131EB63X
3D131EB64U
3D131EB66U
3D131EB67U
3D131EB68U
3D131EB83V
3D131EB83W
3D131EB83X
3D131EB89U
3D131EB94V
3D131EB94W
3D131EB94X
3D131EC12V
3D131EC12W
3D131EC12X
3D131EC22U
(57)【要約】
【課題】走行時のノイズを低減する。
【解決手段】トレッド10を備え、回転方向が指定された空気入りタイヤ1であって、トレッド10は、赤道CL側から接地端E1,E2側に向かって延びる複数の主溝20,21と、主溝20,21に沿って設けられ、タイヤ周方向にわたって主溝20,21を隔てて交互に配置される第1ブロック群30,50および第2ブロック群40,60と、を有し、主溝20,21は、接地端E1,E2側よりも赤道CL側でタイヤ軸方向に対する傾斜が大きくなっており、第1ブロック群30,50および第2ブロック群40,60は、それぞれ複数のブロックを含み、第1ブロック群30,50に含まれるブロックの個数と、第2ブロック群40,60に含まれるブロックの個数が異なることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを備え、回転方向が指定された空気入りタイヤであって、
前記トレッドは、
赤道側から接地端側に向かって延び、タイヤ周方向に間隔を空けて配置される複数の主溝と、
前記主溝に沿って設けられ、タイヤ周方向にわたって前記主溝を隔てて交互に配置される第1ブロック群および第2ブロック群と、
を有し、
前記主溝は、前記接地端側よりも前記赤道側でタイヤ軸方向に対する傾斜が大きくなっており、
前記第1ブロック群および前記第2ブロック群は、それぞれ複数のブロックを含み、
前記第1ブロック群に含まれるブロックの個数と、前記第2ブロック群に含まれるブロックの個数とが異なる、空気入りタイヤ。
【請求項2】
正規リムに装着して正規内圧となるように空気を充填した状態で、所定の荷重を加え、タイヤを1周させた際、接地ラインの接地長さの変動範囲は、タイヤ1周にわたって、中心値に対して±20%以内の範囲である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1ブロック群は、前記赤道側に位置する第1センターブロックと、前記接地端側に位置する第1ショルダーブロックと、前記第1センターブロックと前記第1ショルダーブロックとの間に配置される第1メディエイトブロックとを有し、
前記第2ブロック群は、前記赤道側に位置する第2センターブロックと、前記接地端側に位置する第2ショルダーブロックとを有する、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記トレッドの平面視において、前記第1センターブロックの面積および前記第1メディエイトブロックの面積は、それぞれ前記第2センターブロックの面積よりも小さく、前記第1センターブロックの面積および前記第1メディエイトブロックの面積の合計は、前記第2センターブロックの面積よりも大きい、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記トレッドの平面視において、前記第1センターブロックの面積は、前記第1メディエイトブロックの面積の75%以上、125%以下である、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1センターブロックと前記第1メディエイトブロックとは、屈曲形状を有するスリットにより分断されている、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記トレッドの平面視において、前記第1メディエイトブロックのタイヤ軸方向の外端と、前記第2センターブロックのタイヤ軸方向の外端とは、タイヤ周方向に沿うように同一直線上に設けられている、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記第1センターブロックは、前記赤道に跨って配置され、前記第2センターブロックは、前記赤道を跨らずに配置されている、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記主溝のタイヤ軸方向に対する傾斜角度は、前記赤道上において、30°以上、60°以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記第2センターブロックには、前記主溝から前記第2センターブロックの内側に向かって延び、前記第2センターブロックの内部で終端するスリットが設けられている、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記スリットは、前記第2センターブロックの内側にいくにつれて幅が減少する幅狭領域を有する、請求項10に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記第1センターブロックには、前記第1センターブロックを横断する第1サイプが設けられ、
前記第1メディエイトブロックには、前記第1メディエイトブロックを横断する第2サイプが設けられ、
前記第1サイプは、平面視において、前記第1サイプの長さ方向の両端を結ぶ直線がタイヤ軸方向に沿って設けられ、
前記第2サイプは、平面視において、前記第2サイプの長さ方向の両端を結ぶ直線がタイヤ軸方向に対して傾斜するように設けられている、請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記第1サイプおよび前記第2サイプは、平面視において、波型に配置されている、請求項12に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、より詳しくは、回転方向が指定された空気入りタイ
ヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの回転方向が指定された方向性タイヤが知られている。例えば、特許文献1には、赤道側から接地端側に向かって延びる主溝と、当該主溝に沿って形成され、タイヤ周方向に主溝と交互に配置されたブロックとを有するトレッドを備える空気入りタイヤが開示されている。特許文献1に開示されているトレッドパターンにおいては、ブロックは、赤道側に位置するセンターブロックと、接地端側に位置するショルダーブロックとを含む。そして、当該センターブロックおよび当該ショルダーブロックが、タイヤ周方向に沿って連続的に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6438768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ノイズ性能の優れた空気入りタイヤが求められている。走行時のノイズとして、走行時に各ブロックが路面に衝突する際に発生する打撃音が挙げられる。上記の通り、特許文献1に開示されている空気入りタイヤは、センターブロックおよびショルダーブロックが、タイヤ周方向に沿って連続的に配置されている。そのため、各ブロックが路面に衝突する際の打撃音が一定周期で発生しやすく、打撃音のピーク値が発生してしまい、ノイズの原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッドを備え、回転方向が指定された空気入りタイヤであって、トレッドは、赤道側から接地端側に向かって延び、タイヤ周方向に間隔を空けて配置される複数の主溝と、主溝に沿って設けられ、タイヤ周方向にわたって主溝を隔てて交互に配置される第1ブロック群および第2ブロック群と、を有し、主溝は、接地端側よりも赤道側でタイヤ軸方向に対する傾斜が大きくなっており、第1ブロック群および第2ブロック群は、それぞれ複数のブロックを含み、第1ブロック群に含まれるブロックの個数と、第2ブロック群に含まれるブロックの個数が異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る空気入りタイヤによれば、走行時のノイズを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の一例である空気入りタイヤの一部を示す斜視図である。
図2】実施形態の一例である空気入りタイヤの平面図である。
図3】実施形態の一例である空気入りタイヤにおいて、トレッドパターンの一部を拡大して示す図である。
図4】実施形態の一例である空気入りタイヤの走行時における、トレッドの接地ラインの変化を模式的に示す図である。
図5】実施形態の一例である空気入りタイヤを1周させた際、接地前縁での接地長さの変動範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する実施形態の各構成要素を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0009】
図1は、実施形態の一例である空気入りタイヤ1の一部を示す斜視図であって、タイヤの内部構造を併せて図示している。図1に示すように、空気入りタイヤ1は、路面に接地する部分であるトレッド10と、トレッド10の両側に配置された一対のサイドウォール11と、サイドウォール11のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード13とを備える。また、空気入りタイヤ1は、一対のビード13の間に架け渡されるカーカス14と、カーカス14のタイヤ径方向内側に配置されたインナーライナー15とを備える。
【0010】
空気入りタイヤ1は、回転方向が指定された方向性タイヤである。本明細書において、タイヤの「回転方向」とは、タイヤが装着される車両が前進するときの回転方向を意味する。また、本明細書では、説明の便宜上「左右」の用語を使用するが、この左右とは、タイヤが車両に装着された状態で車両の進行方向に向かって左右を意味する。空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向を示すための表示を有することが好ましい。空気入りタイヤ1の側面には、例えば、回転方向を示す文字および矢印の少なくとも一方が設けられている。図1には、タイヤの回転方向を示す矢印を図示している。また、図1を含む一部の図面には、車両が前進する方向に向かって「前後左右」の方向を示す矢印を図示している。
【0011】
また、本明細書では、トレッド10を構成するブロック等について「踏み込み側」および「蹴り出し側」の用語を使用する。ブロック等の「踏み込み側」とは、車両が前進する方向に空気入りタイヤ1が回転したときに路面に対して先に接地する側(回転方向前方)を意味し、「蹴り出し側」とは路面に対して後で接地する側(回転方向後方)を意味する。
【0012】
トレッド10は、主溝20,21を有する。主溝20,21は、赤道CL(図2参照)側から接地端側に向かって延び、接地端側よりも赤道CL側でタイヤ軸方向に対する傾斜角度が大きくなっている。より詳細には、主溝20は、赤道CL側から接地端E1側(図2参照)に延び、主溝21は、赤道CL側から接地端E2側(図2参照)に延びている。
【0013】
ここで、赤道CLとは、トレッド10のタイヤ軸方向の丁度中央(接地端E1,E2から等距離の位置)を通るタイヤ周方向に沿った線を意味する。また、本明細書において、接地端E1,E2とは、未使用の空気入りタイヤ1を正規リムに装着して正規内圧となるように空気を充填した状態で、所定の荷重を加えたときに平坦な路面に接地する領域のタイヤ軸方向両端と定義される。乗用車用タイヤの場合、所定の荷重は正規荷重の88%に相当する荷重である。
【0014】
ここで、「正規リム」とは、タイヤ規格により定められたリムであって、JATMAであれば「標準リム」、TRAおよびETRTOであれば「Measuring Rim」である。「正規内圧」は、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。正規内圧は、乗用車用タイヤの場合は通常250kPaとするが、Extra Load、またはReinforcedと記載されたタイヤの場合は290kPaとする。「正規荷重」は、JATMAであれば「最大負荷能力」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。レーシングカート用タイヤの場合、正規荷重は392Nである。
【0015】
トレッド10は、主溝20に沿って配置され、複数のブロックを含む第1ブロック群30および第2ブロック群40と、主溝21に沿って配置され、複数のブロックを含む第1ブロック群50および第2ブロック群60とを有する。そして、第1ブロック群30と第2ブロック群40とは、主溝20を介してタイヤ周方向にわたって交互に配置され、第1ブロック群50と第2ブロック群60とは、主溝21を介しタイヤ周方向にわたって交互に配置されている。なお、ブロックとは、主溝やスリットにより分断され、タイヤ径方向外側に向かって突出した凸部である。つまり、サイプにより分断された領域は、ブロックには含まれない。また、本明細書では、幅1.5mm以上の溝をスリット、幅1.5mm未満の溝をサイプとそれぞれ定義する。
【0016】
詳しくは後述するが、第1ブロック群30は、3つのブロックを有し、第2ブロック群40は、2つのブロックを有する。具体的には、第1ブロック群30は、赤道CL側に位置する第1センターブロック31と、接地端E1側に位置する第1ショルダーブロック33と、第1センターブロック31と第1ショルダーブロック33との間に配置される第1メディエイトブロック32とを有する。また、第2ブロック群40は、赤道CL側に位置する第2センターブロック41と、接地端E1側に位置する第2ショルダーブロック42とを有する。上記のように主溝20,21を接地端E1,E2側よりも赤道CL側でタイヤ軸方向に対する傾斜が大きくなるように配置しつつ、各ブロック群に含まれるブロックの数を変えることで、トレッド10が路面に衝突する際の打撃音の周期をずらすことができる。その結果、打撃音の周波数が分散され、走行時のノイズを低減させることができる。なお、本実施形態では、第1ショルダーブロック33と第2ショルダーブロック43とは同一の形状を有する。
【0017】
また、第1ブロック群50は、第1ブロック群30と同様に3つのブロックを有し、第2ブロック群60は、第2ブロック群40と同様に2つのブロックを有する。具体的には、第1ブロック群50は、赤道CL側に位置する第1センターブロック51と、接地端E2側に位置する第1ショルダーブロック53と、第1センターブロック51と第1ショルダーブロック53との間に配置される第1メディエイトブロック52とを有する。また、第2ブロック群60は、赤道CL側に位置する第2センターブロック61と、接地端E2側に位置する第2ショルダーブロック62とを有する。なお、本実施形態では、第1ショルダーブロック53と第2ショルダーブロック63とは同一の形状を有する。
【0018】
サイドウォール11は、トレッド10の両側に配置され、タイヤ周方向に沿って環状に設けられている。サイドウォール11は、空気入りタイヤ1のタイヤ軸方向外側に最も張り出した部分であって、タイヤ軸方向外側に向かって凸となるように緩やかに湾曲している。サイドウォール11は、カーカス14の損傷を防止する機能を有する。サイドウォール11は、空気入りタイヤ1がクッション作用をする際に最もたわむ部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0019】
空気入りタイヤ1には、トレッド10の接地端E1,E2と、サイドウォール11のタイヤ軸方向外側に最も張り出した部分との間に、サイドリブ12が設けられていてもよい。サイドリブ12は、タイヤ軸方向外側に向かって突出し、タイヤ周方向に沿って環状に設けられている。空気入りタイヤ1の接地端E1,E2、またはその近傍から左右のサイドリブ12までの部分は、ショルダーまたはバットレス領域とも呼ばれる。
【0020】
また、サイドウォール11には、一般的に、セリアルと呼ばれる文字、数字、記号等が設けられている。セリアルには、例えば、サイズコード、製造時期(製造年週)、製造場所(製造工場コード)などの情報が含まれる。
【0021】
ビード13は、サイドウォール11のタイヤ径方向内側に配置され、ホイールのリムに固定される部分である。ビード13は、ビードコア16と、ビードフィラー17とを有する。ビードコア16は、スチール製のビードワイヤで構成され、タイヤ周方向の全周にわたって延びる環状部材であり、ビード13に埋設されている。ビードフィラー17は、タイヤ径方向外側に延出する先端先細り形状を有し、タイヤ周方向の全周にわたって延びる環状の硬質ゴム部材である。
【0022】
カーカス14は、一対のビード13の間に架け渡され、ビードコア16の周りで折り返されることで係止されている。カーカス14は、有機繊維からなるカーカスコードと、トッピングゴムとを含む。カーカスコードは、タイヤ周方向に対して実質上直角(例えば、80°以上、90°以下)に配置されている。カーカスコードに用いられる有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、およびナイロン繊維が挙げられる。
【0023】
インナーライナー15は、一対のビード13間のタイヤ内面を覆っている。インナーライナー15は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、空気入りタイヤ1の空気圧を保持する機能を有する。
【0024】
空気入りタイヤ1は、カーカス14のタイヤ径方向外側に配置されたベルト18と、ベルト18のタイヤ径方向外側全体を覆うキャッププライ19とをさらに備える。ベルト18は、カーカス14の頂部の外周側に配置されており、カーカス14の外周面に重ねて設けられている。ベルト18は、タイヤ周方向に対して傾斜する方向に配列したコードをゴム被覆してなるベルトプライで構成されている。ベルト18のコードの材質は特に限定されず、例えば、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミド等の有機繊維、またはスチール等の金属が挙げられる。また、空気入りタイヤ1は、キャッププライ19のタイヤ径方向外側に配置され、ベルト18のタイヤ軸方向の両端を覆うエッジプライ(図示せず)をさらに備えてもよい。キャッププライ19およびエッジプライは、ベルト18を補強する機能を有する。
【0025】
以下、図2および図3を参照しながら、空気入りタイヤ1のトレッドパターンについて詳説する。図2は、空気入りタイヤ1(トレッド10)の平面図である。
【0026】
図2に示すように、トレッド10は、赤道CL側から接地端側に向かって延び、接地端側よりも赤道CL側でタイヤ軸方向に対する傾斜角度が大きくなった主溝20,21を有する。主溝20は、赤道CL側から接地端E1側に延び、主溝21は、赤道CL側から接地端E2側に延びている。主溝20,21は、タイヤ周方向に任意の間隔で配置されている。
【0027】
主溝20には、長さが異なる2種類の主溝20A,20Bが含まれている。主溝20Aは、主溝20Bよりも長く、赤道CLを超えてトレッド10の右側領域に至る長さで設けられている。主溝20Bは、トレッド10の左側領域において赤道CLを超えない長さで設けられている。また、主溝21についても同様に、長さが異なる2種類の主溝21A,21Bが含まれている。
【0028】
主溝20Aの踏み込み側には、第1ブロック群30が配置され、主溝20Bの踏み込み側には、第2ブロック群40が配置されている。すなわち、主溝20A、第1ブロック群30、主溝20B、第2ブロック群40の順でタイヤ周方向に繰り返し配置されている。また、上記のように、主溝20Aは、主溝20Bよりも長く、赤道CLを超えてトレッド10の右側領域に至る長さで設けられている。そのため、第1ブロック群30は、赤道CLを超えてトレッド10の右側領域に至る長さで設けられている。また、第2ブロック群40は、主溝20Bと同様に、赤道CLを超えない長さで設けられている。
【0029】
また、タイヤの右側領域についても同様に、主溝21Aの踏み込み側には、第1ブロック群50が配置され、主溝21Bの踏み込み側には、第2ブロック群60が配置されている。すなわち、主溝21A、第1ブロック群50、主溝21B、第2ブロック群60の順でタイヤ周方向に繰り返し配置されている。そして、第1ブロック群50は、赤道CLを超えてトレッド10の左側領域に至る長さで設けられている。また、第2ブロック群60は、赤道CLを超えない長さで設けられている。これにより、第1ブロック群30および第1ブロック群50は、赤道CLに沿って千鳥状に配置されている。
【0030】
本実施形態のトレッドパターンは、トレッド10の平面視において、赤道CLに対し、第1ブロック群30,50および第2ブロック群40,60をタイヤ周方向に所定ピッチずらして左右対称に配置したパターンである。つまり、第1ブロック群30の形状は、第1ブロック群50を赤道CLに対して反転させた場合の形状と同じであり、第2ブロック群40の形状は、第2ブロック群60を赤道CLに対して反転させた場合の形状と同じである(主溝20,21についても同様)。本実施形態のトレッドパターンは、左右のバランスが良く、操縦安定性の改善において有効である。
【0031】
トレッド10の平面視において、主溝20、第1ブロック群30、および第2ブロック群40は、蹴り出し側に向かって凸となるように湾曲した形状を有する。また、主溝21、第1ブロック群50、および第2ブロック群60についても同様に、蹴り出し側に向かって凸となるように湾曲した形状を有する。つまり、主溝20,21、第1ブロック群30,50、および第2ブロック群40,60は、いずれも赤道CL側から接地端E1,E2側に向かって次第に蹴り出し側に位置するようにタイヤ軸方向に対して傾斜している。
【0032】
主溝20,21は、上記のように、接地端E1,E2側よりも赤道CL側でタイヤ軸方向に対する傾斜角度が大きくなっている。言い換えると、主溝20,21は、赤道CL側から接地端E1,E2に向かって、次第にタイヤ軸方向に沿うようになり、タイヤ軸方向に対する傾斜が緩やかになっている。タイヤ軸方向に対する主溝20,21の傾斜角度は、赤道CL側で、例えば、30°以上、60°以下、または40°以上、50°以下である。本実施形態のように、第1ブロック群30,50と第2ブロック群40,60に含まれるブロック数が異なるトレッドパターンにおいて、主溝20,21を接地端E1,E2側よりも赤道CL側でタイヤ軸方向に対する傾斜が大きくなるように配置することで、トレッド10が路面に衝突する際の打撃音の周期をずらすことができる。その結果、打撃音のピーク値が分散され、走行時のノイズを低減させることができる。
【0033】
主溝20は、赤道CLの近傍において、主溝21につながっている。主溝20は、主溝21との交点から接地端E1側に延び、接地端E1を超えて左側のサイドリブ12にわたって設けられている。また、主溝21は、赤道CLの近傍における主溝20との交点から接地端E2側に延び、接地端E2を超えて右側のサイドリブ12にわたって設けられている。
【0034】
主溝20,21の幅は、全長にわたって一定であってもよいが、本実施形態では、赤道CL側から接地端E1,E2側に向かって次第に大きくなっている。この場合、排水性能が向上することに加え、雪をつかみ踏み固める雪柱せん断力が向上して、雪上路面における制動性能が向上する。主溝20,21の幅は、例えば、赤道CL側において、2.0mm以上、10.0mm以下であり、接地端E1,E2側におおいて、例えば、3.0mm以上、15.0mm以下である。また、主溝20,21は、互いに同じ深さで構成されている。主溝20,21の深さは、例えば、5.0mm以上、15.0mm以下である。なお、本明細書において、溝(スリットおよびサイプも含む)の幅とは、特に断らない限り、トレッド10の接地面に沿ったプロファイル面における幅を意味する。また、溝の深さとは、特に断らない限り、トレッド10の接地面に沿ったプロファイル面から、溝底までのタイヤ径方向に沿った長さを意味する。
【0035】
主溝20,21の赤道CL側の先端の溝内にはブリッジ22,23が設けられている。ブリッジ22は、主溝20Aの先端に設けられたブリッジ22Aと、主溝20Bの先端に設けられたブリッジ22Bを含む。また、ブリッジ23は、主溝21Aの先端に設けられたブリッジ23Aと、主溝21Bの先端に設けられたブリッジ23Bを含む。
【0036】
ブリッジ22,23は、主溝20,21の溝底からタイヤ径方向外側に向かって突出した凸部であって、隣り合うセンターブロック同士を連結している。具体的には、ブリッジ22Aは、第1センターブロック31と第1センターブロック51とを連結し、ブリッジ22Bは、第1センターブロック31と第2センターブロック41とを連結している。また、ブリッジ23Aは、第2センターブロック41と第1センターブロック51とを連結し、ブリッジ23Bは、第1センターブロック51と第2センターブロック61とを連結している。
【0037】
ブリッジ22,23を設けることにより、各センターブロックがタイヤ周方向に連結されるため、赤道CLの近傍でブロック剛性が高くなり、制動時のトラクション性能を向上させることができる。また、ブリッジ22,23は、各主溝の先端のみに設けられているため、良好な排水性能を確保することもできる。つまり、ブリッジ22,23を設けることにより、良好な排水性能を確保しつつ、制動時のトラクション性能を向上させることができる。ブリッジ22,23の主溝20,21に沿った長さは、例えば、後述のブリッジ72,73のスリット70,71に沿った長さよりも短くてもよい。ブリッジ22,23の主溝20,21に沿った長さは、例えば、0.5mm以上、5.0mm以下である。
【0038】
ブリッジ22,23は、主溝20,21の深さの30%以上、70%以下、または40%以上、60%以下の高さを有することが好ましい。また、ブリッジ22,23は、主溝20,21の赤道CL側の先端にいくにつれて高さが増加する傾斜領域を有していてもよい。ブリッジ22,23に当該傾斜領域を設けることで、主溝20,21内の水が、接地端E1,E2側に流れやすくなり、空気入りタイヤ1の排水性能が向上する。
【0039】
トレッド10は、主溝20同士をタイヤ回転方向に連結するスリット70と、主溝21同士をタイヤ回転方向に連結するスリット71とを有する。スリット70,71は、主溝20,21の最大幅よりも幅が狭い溝である。スリット70の幅は、例えば、2.0mm以上、6.0mm以下である。
【0040】
スリット70は、踏み込み側から蹴り出し側に向かって次第に接地端E1から離れるようにタイヤ周方向に対して傾いている。また、スリット71も同様に、踏み込み側から蹴り出し側に向かって次第に接地端E2から離れるようにタイヤ周方向に対して傾いている。本実施形態においては、スリット70,71は、主溝20,21と同じ深さで設けられている。なお、スリット70,71の深さは、主溝20,21の深さよりも小さくてもよい。
【0041】
スリット70は、第1メディエイトブロック32と第1ショルダーブロック33を区画するスリット70Aと、第2センターブロック41と第2ショルダーブロック42とを区画するスリット70Bとを含む。上記の通り、第1ブロック群30と第2ブロック群40とは、タイヤ周方向にわたって交互に配置されている。そのため、スリット70Aとスリット70Bとは、タイヤ周方向にわたって交互に配置されている。なお、スリット70Aとスリット70Bとは同一形状を有する。
【0042】
スリット71は、スリット70と同様に、第1メディエイトブロック52と第1ショルダーブロック53とを区画するスリット71Aと、第2センターブロック61と第2ショルダーブロック62とを区画するスリット70Bとを含む。また、スリット71Aとスリット71Bとは、タイヤ周方向にわたって交互に配置されている。なお、スリット71は、スリット70を赤道CLに対して反転させた場合の形状と同じである。つまり、スリット71Aとスリット71Bとは同一形状を有する。
【0043】
スリット70,71の踏み込み側の端部の溝底には、主溝20,21と同様に、ブリッジ72,73が設けられている。ブリッジ72は、スリット70Aに設けられたブリッジ72Aと、スリット70Bに設けられたブリッジ72Bとを含む。また、ブリッジ73は、スリット71Aに設けられたブリッジ73Aと、スリット71Bに設けられたブリッジ73Bとを含む。
【0044】
ブリッジ72,73は、ブリッジ22,23と同様に、スリット70,71の溝底からタイヤ径方向外側に向かって突出した凸部であって、隣り合うセンターブロック同士を連結する。具体的には、ブリッジ72Aは、第1メディエイトブロック32と第1ショルダーブロック33とを連結し、ブリッジ72Bは、第2センターブロック41と第2ショルダーブロック42とを連結する。また、ブリッジ73Aは、第1メディエイトブロック52と第1ショルダーブロック53とを連結し、ブリッジ72Bは、第2センターブロック61と第2ショルダーブロック62とを連結する。
【0045】
ブリッジ72,73を設けることにより、スリット70,71周辺における面内収縮が抑制される。その結果、スリット70,71を水が流れやすくなり、空気入りタイヤ1の排水性能が向上する。また、ブリッジ72,73をスリット70,71の踏み込み側の端部に設けることにより、制動時のトラクション性能が向上する。
【0046】
ブリッジ72,73のスリット70,71に沿った長さは、スリット70,71の長さの60%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。ブリッジ72,73の長さをスリット70,71の長さの60%以下とすることにより、スリット70,71の容積を確保することができ、雪上路面における制動性能を確保することができる。また、ブリッジ72,73のスリット70,71に沿った長さは、スリット70,71の長さの10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。ブリッジ72,73の長さをスリット70,71の長さの10%以上とすることにより、上記の排水性能の向上、および制動時のトラクション性能の向上が顕著である。よって、ブリッジ72,73のスリット70,71に沿った長さは、スリット70,71の長さの10%以上、60%以下であることが好ましく、20%以上、50%以下であることがより好ましい。
【0047】
ブリッジ72,73は、スリット70,71の深さの30%以上、70%以下、または40%以上、60%以下の高さを有することが好ましい。また、本実施形態では、ブリッジ72,73は、スリット70,71の踏み込み側にいくにつれて高さが増加する傾斜領域74(図3参照)を有している。つまり、スリット70,71は、スリット70,71の踏み込み側にいくにつれて深さが小さくなる領域を有する。ブリッジ72,73に傾斜領域74を設けることで、スリット70,71内の水が、主溝20,21側に流れやすくなり、空気入りタイヤ1の排水性能が向上する。
【0048】
トレッド10は、スリット70,71に加えて、主溝20同士をタイヤ回転方向に連結するスリット80と、主溝21同士をタイヤ回転方向に連結するスリット81とを有する。スリット80は、第1センターブロック31と第1メディエイトブロック32とを区画し、スリット81は、第1センターブロック51と第1メディエイトブロック52とを区画する。
【0049】
スリット80は、主溝21Aの略延長上に設けられている。スリット80は、主溝20Aを隔てて主溝21Aと対向配置され、主溝20Bを隔てて後述のスリット90と対向配置される。スリット80を、主溝20Aを隔てて主溝21Aと対向配置することにより、雪上走行時において、スリット80の内部に多くの雪を蓄積することができる。その結果、雪をつかみ踏み固める雪柱せん断力が向上し、雪上路面における制動性能を向上させることができる。また、スリット81は、主溝20Aの略延長上に設けられている。スリット81は、主溝21Aを隔てて主溝20Aと対向配置され、主溝21Bを隔てて後述のスリット90と対向配置される。
【0050】
スリット80,81は、いずれも屈曲形状を有する。スリット80,81が屈曲形状を有する場合、スリット80,81で発生するノイズの周波数が分散されやすくなる。その結果、走行時に発生するノイズを低減することができる。
【0051】
スリット80,81の底面には、第1の方向に沿って延びるサイプ85(図3参照)が設けられている。サイプ85は、例えば、スリット80,81の延伸方向にわたって設けられている。つまり、サイプ85は、主溝20,21同士をタイヤ回転方向に連結する。屈曲形状を有するスリット80,81の底面にサイプ85を設けることで、ドライ路面での操縦安定性能を向上させることができる。
【0052】
以下、図3をさらに参照しながら、空気入りタイヤ1のトレッドパターンについて詳説する。図3は、トレッドパターンの一部を拡大して示す図である。なお、上記の通り、第1ブロック群50の形状は、第1ブロック群30を赤道CLに対して反転させた場合の形状と同じであり、第2ブロック群60の形状は、第2ブロック群40を赤道CLに対して反転させた場合の形状と同じである。そのため、以下では、第1ブロック群30および第2ブロック群40について説明し、第1ブロック群50および第2ブロック群60についての説明を省略する。
【0053】
図2および図3に示すように、トレッド10は、上記の通り、主溝20により区画され、複数のブロックを含む第1ブロック群30および第2ブロック群40を有する。そして、第1ブロック群30と第2ブロック群40とは、タイヤ周方向にわたって交互に配置されている。より詳細には、第1ブロック群30は、主溝20Aの踏み込み側に配置され、第2ブロック群40は、主溝20Bの踏み込み側に配置されている。
【0054】
第1ブロック群30は、赤道CL側に位置する第1センターブロック31と、接地端E1側に位置する第1ショルダーブロック33と、第1センターブロック31と第1ショルダーブロック33との間に配置される第1メディエイトブロック32とを有する。そして、第1センターブロック31と第1メディエイトブロック32との間には、隣り合う2本の主溝20をタイヤ回転方向に連結するスリット80が設けられ、第1メディエイトブロック32と第1ショルダーブロック33との間には、隣り合う2本の主溝20をタイヤ回転方向に連結するスリット70Aが設けられている。すなわち、第1センターブロック31と第1メディエイトブロック32とはスリット80により区画され、第1メディエイトブロック32と第1ショルダーブロック33とは、スリット70Aにより区画されている。
【0055】
また、第2ブロック群40は、赤道CL側に位置する第2センターブロック41と、接地端E1側に位置する第2ショルダーブロック42とを有する。第2センターブロック41と第2ショルダーブロック42との間には、隣り合う2本の主溝20をタイヤ回転方向に連結するスリット70Bが設けられている。すなわち、第2センターブロック41と第2ショルダーブロック42とは、スリット70Bにより区画されている。
【0056】
上記の通り、第1ブロック群30には、第1センターブロック31、第1メディエイトブロック32、および第1ショルダーブロック33からなる3つのブロックが含まれる。また、第2ブロック群40には、第2センターブロック41および第2ショルダーブロック42からなる2つのブロックが含まれる。ここで、走行時のノイズは、各ブロックが路面に衝突する際の打撃音の周波数のピーク値に大きく影響を受ける。そして、タイヤ周方向にわたってブロック数の変化がない場合、すなわち、第1ブロック群30に含まれるブロックの個数と、第2ブロック群40に含まれるブロックの個数とが同じ場合、トレッド10が路面に衝突する際の打撃音が一定周期で発生しやすく、打撃音の周波数のピーク値が発生してしまう。その結果、走行時のノイズが増大してしまう。一方、本実施形態のトレッドパターンのように、主溝20,21を接地端E1,E2側よりも赤道CL側でタイヤ軸方向に対する傾斜が大きくなるように配置しつつ、各ブロック群に含まれるブロックの数を変えることで、トレッド10が路面に衝突する際の打撃音の周期をずらすことができる。その結果、打撃音の周波数が分散され、走行時のノイズを低減させることができる。
【0057】
トレッド10の平面視において、第1センターブロック31の面積(S31)および第1メディエイトブロック32の面積(S32)は、それぞれ第2センターブロック41の面積(S41)よりも小さく、第1センターブロック31の面積(S31)および第1メディエイトブロック32の面積(S32)の合計(S31+S32)は、それぞれ第2センターブロック41の面積(S41)よりも大きいことが好ましい。つまり、第1センターブロック31と第1メディエイトブロック32とを区画するスリット80は、S31<S41、S32<S41、およびS31+S32>S41を満たすように配置されることが好ましい。S31<S41、S32<S41、およびS31+S32>S41を満たす場合、各ブロックの大きさが近くなり、耐摩耗性能に優れた空気入りタイヤを提供できる。換言すると、S31<S41、S32<S41、およびS31+S32>S41を満たさない場合、各ブロックの大きさの差が大きくなりすぎるため、大きさの小さいブロックにおいて、偏摩耗が生じ易くなる。
【0058】
トレッド10の平面視において、第1センターブロック31の面積(S31)は、第1メディエイトブロック32の面積(S32)の75%以上、125%以下であることが好ましく、80%以上、120%以下であることがより好ましい。第1センターブロック31の面積(S31)が、第1メディエイトブロック32の面積(S32)の75%以上、125%以下である場合、より耐摩耗性能に優れた空気入りタイヤを提供できる。
【0059】
図3に示すように、トレッド10の平面視において、第1メディエイトブロック32のタイヤ軸方向の外端32Aと、第2センターブロック41のタイヤ軸方向の外端41Aとは、タイヤ周方向に沿うように同一直線上に設けられている。
【0060】
また、第1センターブロック31は、赤道CLに跨って配置され、第2センターブロック41は、赤道CLを跨らずに配置されていることが好ましい。この場合、後述するタイヤを1周させた際の接地前縁での接地長さの変動範囲を中心値に対して±20%以内の範囲にすることが容易になり、走行時のノイズをより低減させることができる。
【0061】
第1センターブロック31および第1メディエイトブロック32のタイヤ軸方向長さは、例えば、それぞれ接地幅D(図2参照)の10%以上、30%以下である。また、第2センターブロック41のタイヤ軸方向長さは、例えば、接地幅Dの15%以上、40%以下である。
【0062】
第2センターブロック41には、主溝20Bから第2センターブロック41の内側に向かって延び、第2センターブロック41の内部で終端するスリット90が設けられている。スリット90は、主溝21Aの略延長上に設けられており、主溝20Bを隔ててスリット80と対向配置される。スリット90は、雪上走行時、雪をつかみ踏み固める雪柱せん断力を提供する。つまり、スリット90は、空気入りタイヤ1の雪上路面における制動性能の向上に寄与する。
【0063】
スリット90を第2センターブロック41の内部で終端させることにより、第2センターブロック41の容積を確保でき、ブロック剛性の低下を抑制できる。その結果、制動時のトラクション性能を確保しつつ、雪上路面での制動性能を向上させることができる。また、スリット90は、空気入りタイヤ1の耐摩耗性を確保する観点から、第2センターブロック41の蹴り出し側に設けられることが好ましい。
【0064】
スリット90は、タイヤ周方向およびタイヤ軸方向に対して傾斜している。この場合、タイヤ周方向および軸方向の両方にエッジ効果がはたらき、雪上路面における制動性能の改善効果がより顕著になる。スリット90は、例えば、タイヤ周方向に比べタイヤ軸方向に対してより大きく傾いている。タイヤ軸方向に対するスリット90の傾斜角度の一例は、60°以上、90°未満である。
【0065】
スリット90の幅は、主溝20B側の端部において、例えば、スリット70の幅よりも小さい。スリット90の幅は、主溝20B側の端部において、例えば、1.5mm以上、3.0mm以下である。また、スリット90は、第2センターブロック41の内側にいくにつれて幅が減少する幅狭領域91を有する。つまり、スリット90は、先端に向かって次第に幅が狭くなった先細り形状を有する。スリット90が幅狭領域91を有することで、第2センターブロック41の容積をより確保でき、ブロック剛性の低下をより抑制できる。幅狭領域91において、スリット90の幅は、線形的に減少していてもよいし、非線形的に減少していてもよい。
【0066】
スリット90の深さは、スリット90の延伸方向にわたって一定でもよいが、本実施形態では、スリット90の先端側は、第2センターブロック41の内側にいくにつれて深さが減少している。スリット90の深さは、主溝20B側の端部において、例えば、主溝20のブリッジ22が設けられている部分の深さと略同一である。スリット90の深さは、主溝20B側の端部において、例えば、主溝20の深さの30%以上、90%以下であり、好ましくは40%以上、80%以下である。
【0067】
図3に示すように、第1センターブロック31には、第1センターブロック31を横断するサイプ(第1サイプに相当)92が複数設けられ、第1メディエイトブロック32には、第1メディエイトブロック32を横断するサイプ(第2サイプに相当)93が複数設けられている。
【0068】
トレッド10の平面視において、サイプ92は、サイプ92の長さ方向両端を結ぶ直線が、タイヤ軸方向に沿って設けられており、サイプ93は、サイプ93の長さ方向両端を結ぶ直線が、タイヤ軸方向に対して傾斜するように設けられている。すなわち、サイプ92は、タイヤの軸方向に沿って延伸し、サイプ93は、タイヤ軸方向に対して傾斜した方向に沿って延伸する。サイプ92とサイプ93との延伸方向を変えることで、ドライ路面での操縦安定性を向上させることができる。サイプ93のタイヤ軸方向に対する傾斜角度は、例えば、20°以上、70°以下である。
【0069】
サイプ92,93は、波形サイプであることが好ましい。雪上路面における制動性能を向上させるためには、サイプの本数を増やし、エッジを増やす必要がある。しかしながら、サイプの本数を増やすと、例えば、ブロック剛性が過度に低下し、ブロックの倒れ込みによって接地面積が減少しやすくなる。ブロックの倒れ込みが過度に生じると、ドライ路面での操縦安定性が低下する。本実施形態のように、サイプ92,93を波形サイプとすることで、サイプの本数を増やさずに、エッジを増加させることができる。その結果、ドライ路面での操縦安定性を確保しつつ、雪上路面における制動性能を向上させることができる。
【0070】
サイプ92,93の波は、サイプ92,93の長さ方向に対して直交する方向に凸となった部分であって、平面視略三角形に構成されている。サイプ92,93は、直線に形成されたストレート部分と、複数の波が繰り返された波形部分とを有する。ストレート部分はサイプ92,93の長さ方向の両端に設けられ、波形部分は当該ストレート部分の間に設けられている。波形部分は、サイプ92,93の長さ方向両端を結ぶ中心線の両側に対して凸となるように、ジグザグ状に屈曲して構成されている。
【0071】
サイプ92,93の振幅は、例えば、各波で一定であり、サイプ92,93の波形部分は一定の周期で規則的に構成されている。サイプ92,93の振幅の一例は、0.5mm以上、3.0mm以下である。なお、本明細書において、波形サイプの振幅とは、サイプ92,93の長さ方向両端を結ぶ中心線から最大の波の頂点までの距離を意味する。
【0072】
サイプ92,93の深さは、例えば、主溝20の深さの10%以上、100%以下である。また、サイプ92,93は、波形部分の深さが、ストレート部分の深さよりも大きくてもよい。すなわち、サイプ92,93は、長さ方向の中央側の深さが、長さ方向の両端側の深さよりも大きくてもよい。また、サイプ92,93の深さは、サイプごとに異なっていてもよい。
【0073】
また、第2センターブロック41には、第2センターブロック41を横断するサイプ94が複数設けられている。サイプ94は、波形サイプであり、タイヤ軸方向に対して傾斜した方向に沿って延伸する。サイプ94のタイヤ軸方向に対する傾斜角度は、例えば、サイプ93のタイヤ軸方向に対する傾斜角度と略同一である。
【0074】
以下、図4および図5を参照しながら、空気入りタイヤ1の走行時の接地前縁での接地長さの変動範囲について説明する。図4は、空気入りタイヤ1の走行時におけるトレッド10の接地ラインの変化を模式的に示す図である。図5は、本実施形態の空気入りタイヤ1を1周させた際、接地前縁での接地長さの変動範囲を示す図である。
【0075】
図4に示すように、トレッド10の接地ラインLは、略円弧形状を有し、タイヤ軸方向中央が凸となった形状を有する。ここで、接地ラインLとは、未使用の空気入りタイヤ1を正規リムに装着して、正規内圧となるように空気を充填した状態で、所定の荷重(正規荷重の70%に相当する荷重)を加えたときの接地面の輪郭線のうち、踏み込み側の輪郭線であり、走行時に空気入りタイヤ1が路面に接地し始める部分である。
【0076】
図4に示すように、空気入りタイヤ1の走行に伴い、接地ラインLは踏み込み側(後方側)へ移動する。この際、各接地ラインLの接地長さは、トレッドパターンに応じて徐々に変化する。なお、接地ラインLの接地長さとは、接地ラインLのうち、実際に路面と接する部分の長さを意味する。
【0077】
ここで、接地ラインLの接地長さの変化量は、走行時のノイズに大きく影響する。図5に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ1のトレッドパターンにおいては、接地ラインLの接地長さは、タイヤ1周にわたって、中心値に対して±20%以内の範囲である。より詳細には、接地ラインLをタイヤ1周にわたって移動させた際の接地長さの最大値をX、接地長さの最小値をY、接地長さの中心値をZ((X+Y)/2)とした場合、X≦Z×1.20、かつY≧Z×0.80を満たす。接地ラインLの接地長さを、タイヤ1周にわたって、中心値に対して±20%以内の範囲に収めることで、走行時のノイズを低減させることができる。
【0078】
接地ラインLの接地長さは、タイヤ1周にわたって、中心値に対して±18%以内の範囲であることがより好ましく、±16%以内の範囲であることがさらに好ましい。この場合、走行時のノイズをより低減させることができる。なお、接地ラインLの接地長さの変化量は、上記のように、トレッドパターンの配置により調整することができる。特に、本実施形態のように、主溝20,21を接地端E1,E2側よりも赤道CL側でタイヤ軸方向に対する傾斜が大きくなるように配置しつつ、第1ブロック群30および第2ブロック群40に含まれるブロックの数を変えることで、接地ラインLの接地長さの変化量を小さくすることができる。
【0079】
以上の通り、主溝20,21を接地端E1,E2側よりも赤道CL側でタイヤ軸方向に対する傾斜が大きくなるように配置しつつ、第1ブロック群30および第2ブロック群40に含まれるブロックの個数を変えることで、トレッド10が路面に衝突する際の打撃音の周期をずらすことができる。その結果、打撃音の周波数が分散され、走行時のノイズを低減させることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 空気入りタイヤ、10 トレッド、11 サイドウォール、12 サイドリブ、13 ビード、14 カーカス、15 インナーライナー、16 ビードコア、17 ビードフィラー、18 ベルト、19 キャッププライ、20,20A,20B,21,21A,21B 主溝、22,22A,22B,23,23A,23B ブリッジ、30 第1ブロック群、31 第1センターブロック、32 第1メディエイトブロック、32A 外端、33 第1ショルダーブロック、40 第2ブロック群、41 第2センターブロック、41A 外端、42 第2ショルダーブロック、50 第1ブロック群、51 第1センターブロック、52 第1メディエイトブロック、53 第1ショルダーブロック、60 第2ブロック群、61 第2センターブロック、62 第2ショルダーブロック、70,70A,70B,71,71A,71B スリット、72,72A,72B,73,73A,73B ブリッジ、74 傾斜領域、80,81 スリット、85 サイプ、90 スリット、91 幅狭領域、92 サイプ(第1サイプ)、93 サイプ(第2サイプ)
図1
図2
図3
図4
図5