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特開2025-92980顔料組成物の製造方法、顔料分散液の製造方法、水性インクの製造方法、及びインクジェット記録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025092980
(43)【公開日】2025-06-23
(54)【発明の名称】顔料組成物の製造方法、顔料分散液の製造方法、水性インクの製造方法、及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/46 20060101AFI20250616BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20250616BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20250616BHJP
【FI】
C09B67/46 A
C09D17/00
C09D11/322
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208435
(22)【出願日】2023-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】向井 拓史
(72)【発明者】
【氏名】岸 宏光
(72)【発明者】
【氏名】植竹 陽子
(72)【発明者】
【氏名】小菅 哲弥
【テーマコード(参考)】
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
4J037AA30
4J037CC11
4J037CC21
4J037EE28
4J037EE43
4J039BE01
4J039CA06
4J039EA35
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】アゾ顔料において、耐光性を向上させることが可能な顔料組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】顔料、水溶性無機塩、及び有機溶剤を含む混合物をソルベントソルトミリング法により混練して混練物を得る混練工程を含む顔料組成物の製造方法である。顔料は、有機不純物を含有するアゾ顔料である。有機溶剤は、アゾ顔料を0.005質量%以上溶解可能な有機溶剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、水溶性無機塩、及び有機溶剤を含む混合物をソルベントソルトミリング法により混練して混練物を得る混練工程を含む顔料組成物の製造方法であって、
前記顔料が、有機不純物を含有するアゾ顔料であり、
前記有機溶剤が、前記アゾ顔料を0.005質量%以上溶解可能な有機溶剤であることを特徴とする顔料組成物の製造方法。
【請求項2】
前記有機溶剤が、ジメチルスルホキシド及びN-メチルピロリドンのうちの少なくとも一方を含む請求項1に記載の顔料組成物の製造方法。
【請求項3】
前記混練工程における混練時の温度が、45℃以上90℃以下である請求項1に記載の顔料組成物の製造方法。
【請求項4】
前記混練工程における混練時のずり速度が、15s-1以上である請求項1に記載の顔料組成物の製造方法。
【請求項5】
前記アゾ顔料が、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、及びC.I.ピグメントレッド150からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の顔料組成物の製造方法。
【請求項6】
前記アゾ顔料が、C.I.ピグメントイエロー74である請求項1に記載の顔料組成物の製造方法。
【請求項7】
前記有機不純物が、下記化学式(1)で表される化合物を含む請求項6に記載の顔料組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の顔料組成物の製造方法により得られた顔料組成物、分散剤、及び水を混合し、前記分散剤により、前記顔料組成物を前記水に分散させる分散工程を含むことを特徴とする顔料分散液の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の顔料分散液の製造方法により得られた顔料分散液、及び水溶性有機溶剤を含む成分を混合する工程を含むことを特徴とする水性インクの製造方法。
【請求項10】
インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、請求項9に記載の水性インクの製造方法により得られた水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料組成物の製造方法、顔料分散液の製造方法、水性インクの製造方法、及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顔料を用いる市場はカラーフィルタやインクジェット用インクなど多方面に拡大している。それに伴い、顔料には高い色特性だけでなく、着色組成物としたときの安定性やろ過性、また基材に塗工した際の適性など、様々な信頼性が求められている。上記のような高い色特性の要求に対しては、一次粒子径を微細化した顔料を用いることが有効である。顔料の一次粒子径を微細化する方法として、例えば、顔料を、塩化ナトリウムなどの水溶性無機塩、及び親水性有機溶剤と共に、ニーダーなどの混練装置で機械的に混練する方法がある。このような、顔料、水溶性無機塩、及び親水性有機溶剤を含む混合物を混練する方法は、ソルトミリングや、ソルベントソルトミリングと称されている。ソルトミリング法による混練工程により得られた混練物を水洗することにより、混練物から水溶性無機塩及び親水性有機溶剤を除去することで、微細化された顔料が得られる(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、顔料の一次粒子の粉砕と結晶成長が並行して起こるため、最終的に粒度分布が狭く、平均粒子径が小さいわりに表面積の小さい顔料が得られる。
【0003】
一方、インクジェット記録方法は、高精細な画像の記録が可能であり、各方面で急速な発展を遂げている。そのなかで、記録物の耐光性などについて種々の検討がされている。例えば、特許文献2には、耐光性などに優れた不溶性アゾ顔料を用いたインク組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-94173号公報
【特許文献2】特開2018-154739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2で開示された技術のように、顔料として結晶性の高い顔料を用いることにより、耐光性に優れる画像を記録することが可能となる。特に、従来、彩度が優れる顔料において耐光性が劣る顔料があり、彩度に優れながら耐光性に優れる顔料として結晶性の高い顔料が有用であることが知られている。
【0006】
本発明者らは、過去の知見をもとに、耐光性に優れるアゾ顔料の作製を試みた。顔料の耐光性を向上させる一般的な方法としては、顔料の一次粒子径を大きくすることが考えられる。これは、顔料の分子構造が光によって劣化したとしても、発色へと影響する分子構造がその他に多くあるため、劣化の影響が小さいためと考えられる。しかし、顔料の一次粒子径が大きくなると、発色に寄与しない分子構造が増えるため、顔料としての発色性は低下してしまう。さらに、本発明者らの検討により、単純に顔料の一次粒子径を大きくしただけでは、所望の耐光性が得られないという結果になることがわかった。
【0007】
また、特許文献2に記載されるような結晶性の高い顔料を用いてインクを調製し、評価を行ったところ、所望の耐光性が得られないことがわかった。そのため、従来の方法では、耐光性を向上させることが難しいという課題がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、アゾ顔料において、耐光性を向上させることが可能な顔料組成物の製造方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記の製造方法で得られた顔料組成物を用いた、顔料分散液の製造方法、水性インクの製造方法、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明によれば、顔料、水溶性無機塩、及び有機溶剤を含む混合物をソルベントソルトミリング法により混練して混練物を得る混練工程を含む顔料組成物の製造方法であって、前記顔料が、有機不純物を含有するアゾ顔料であり、前記有機溶剤が、前記アゾ顔料を0.005質量%以上溶解可能な有機溶剤であることを特徴とする顔料組成物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アゾ顔料において、耐光性を向上させることが可能な顔料組成物の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、上記の製造方法で得られた顔料組成物を用いた、顔料分散液の製造方法、水性インクの製造方法、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
【0012】
本発明者らは、アゾ顔料において、結晶性に現れない別の要因で耐光性が低下していると考え、耐光性が向上したアゾ顔料を作製することを課題として様々な検討を試みた。その結果、本発明者らは、アゾ顔料の有機不純物には、顔料表面に付着した有機不純物と顔料内部に含まれた有機不純物が存在することを明らかにし、アゾ顔料内部に含まれる有機不純物が耐光性を著しく低下させていることを見出した。この有機不純物にはアゾ顔料の合成原料や合成反応途中で予期せず発生してしまった副生成物や、顔料の粒子径をコントロールするために添加するシナジストなども含まれている。アゾ顔料内部に含まれる有機不純物が耐光性を著しく低下させている理由について、本発明者らは以下のように推測している。
【0013】
有機顔料や有機染料などの有機色材は、白色光の一部を吸収し、吸収できなかった波長の光が合わさり、色を表現している。有機色材による光の吸収は、色材中に含まれる分子構造が担っており、その分子構造が光を吸収し、そのエネルギーを電子へと変換し、分子構造は励起状態となる。そしてこの励起状態となった分子構造は徐々にエネルギーを放出し、元の分子構造へと戻っていく。しかし、この励起状態は大きなエネルギーを持った不安定な状態であり、分子として劣化しやすい状況にあると考えられる。アゾ顔料内部に有機不純物が含まれていると、励起状態となった分子構造のエネルギー放出が抑制され、励起状態の分子構造でいる時間が長くなっていると考えられる。これにより劣化する可能性が高まり、結果としてアゾ顔料としての耐光性が低下してしまっているのだと、本発明者らは推測している。
【0014】
そこで、本発明者らはアゾ顔料の耐光性を向上させるためにはアゾ顔料内部に含まれている有機不純物を除去する必要があるという認識に至った。アゾ顔料内部の有機不純物を除去する手法としては、アゾ顔料を水溶液や有機溶剤などで洗浄することが一般的である。そこで、本発明者らは、まず、酸及びアルカリ水溶液を用いて、有機不純物を含有するアゾ顔料を洗浄することを試みた。しかし、アゾ顔料内部の有機不純物の量には影響がなかった。さらに、本発明者らは、アゾ顔料内部に含まれている有機不純物が、アゾ顔料の合成原料であることを特定し、その合成原料を溶解させることが可能な有機溶剤を用いて洗浄を行った。しかし、アゾ顔料内部の有機不純物の量には影響がなかった。このことから、本発明者らは、アゾ顔料内部に含まれている有機不純物が結晶構造内に取り込まれていると推測した。
【0015】
そこで、本発明者らはアゾ顔料内部に取り込まれている有機不純物の除去手法として、ソルベントソルトミリング法に着目した。ソルベントソルトミリング法は、前述の通り、顔料、水溶性無機塩、及び有機溶剤を含む混合物を混練することであり、顔料の一次粒子の粉砕と結晶成長が同時に進行していると推測され、これにより、粒度分布の整った顔料を作製することが可能となる。
【0016】
また、ソルベントソルトミリング法では、混練として強力な荷重をかけているため、銅フタロシアニンブルーなどの顔料は結晶形を変えることも可能である。このような強力な荷重をかければアゾ顔料の結晶構造内に含まれている有機不純物を取り出せると考えた。そこで、アゾ顔料、水溶性無機塩、及び有機溶剤として一般的に使用されているジエチレングリコールを用いて、ソルベントソルトミリング法による混練を行った。しかし、アゾ顔料内部の有機不純物の量には影響がなかった。
【0017】
本発明者らは、強力な荷重だけでは結晶構造内に取り込まれた有機不純物の除去には不十分であると考え、ソルベントソルトミリング法において溶解・結晶成長を促すことが解決の手段であると推測した。そこで、アゾ顔料及び水溶性無機塩に加えて、アゾ顔料を0.005質量%以上溶解可能な有機溶剤、換言すると、アゾ顔料に対して0.005質量%以上の溶解性を有する有機溶剤を用いて、ソルベントソルトミリング法による混練を行った。その結果、アゾ顔料内部に取り込まれた有機不純物を減少させることが可能であることが判明した。また、得られた顔料を用いて耐光性を評価したところ、混練処理後で耐光性が向上していることが確認された。
【0018】
アゾ顔料に対する有機溶剤の溶解性は、以下のようにして判定することが可能である。判定対象となるアゾ顔料及び有機溶剤を用意し、25℃において、有機溶剤にアゾ顔料を添加し、30分以上撹拌する。次いで、アゾ顔料と有機溶剤を分離し、得られた溶液の質量吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)を確認する。その後、徐々に添加するアゾ顔料を増やし、同様の操作で質量吸光係数を確認し、質量吸光係数が減少し始めた時の、有機溶剤の質量に対するアゾ顔料の質量の割合(質量%)が、当該有機溶剤の溶解できる最大量であると判断する。
【0019】
<顔料組成物の製造方法>
本発明の一実施形態の製造方法は、顔料、水溶性無機塩、及び有機溶剤を含む混合物をソルベントソルトミリング法により混練して混練物を得る混練工程を含む顔料組成物の製造方法である。顔料は、有機不純物を含有するアゾ顔料である。有機溶剤は、アゾ顔料を0.005質量%以上溶解可能な有機溶剤である。以下、混練工程、及び各使用材料などについて、詳細に説明する。
【0020】
〔混練工程〕
本実施形態の顔料組成物の製造方法における混練工程では、有機不純物を含有するアゾ顔料、そのアゾ顔料を0.005質量%以上溶解可能な有機溶剤、及び水溶性無機塩を含む混合物をソルベントソルトミリング法により混練して混練物を得る。ソルベントソルトミリング法は、混練装置を用いて、顔料、水溶性無機塩、及び有機溶剤を含む混合物を、その混合物に荷重をかけて圧縮しつつ混練する方法である。本実施形態の顔料組成物の製造方法では、ソルベントソルトミリング法による混練工程によって、微細化したアゾ顔料、水溶性無機塩、及び有機溶剤を含有する混練物を得ることができる。
【0021】
混練装置としては、例えば、バッチ式及び連続式、並びに、常圧式、加圧式、及び減圧式などの混練装置を用いることができ、内容物に荷重をかけて圧縮しつつ混練する装置を好適に用いることができる。また、混練釜及びホッパーなどの材料投入部や、材料を撹拌するための撹拌翼、撹拌羽、ブレード、スクリュー、及びロールなどの撹拌部などを備えた混練装置を好適に用いることができる。具体的な混練装置としては、例えば、ニーダー、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、プラネタリーミキサー、及び連続式一軸混練機などの混練装置を挙げることができる。プラネタリーミキサーとしては、例えば、井上製作所製のトリミックス(商品名)を挙げることができる。また、連続式一軸混練機としては、例えば、浅田鉄工製のミラクルKCK(商品名)を挙げることができる。上記に挙げた混練装置のなかでも、プラネタリーミキサーを用いることが好ましい。
【0022】
混練工程における顔料、水溶性無機塩、及び有機溶剤の混合比率については、顔料の使用量を基準として、以下の比率とすることが好ましい。混練工程における、水溶性無機塩の使用量は、顔料の使用量に対する質量比率で、3.0倍以上20.0倍以下であることが好ましく、5.0倍以上10.0倍以下であることがさらに好ましい。また、混練工程における、有機溶剤の使用量は、顔料の使用量に対する質量比率で、0.5倍以上5.0倍以下であることが好ましく、0.8倍以上3.0倍以下であることがさらに好ましい。
【0023】
混練工程における混練時間は、特に限定されないが、1時間以上10時間以下であることが好ましく、2時間以上8時間以下であることがさらに好ましい。混練時間が2時間以上であることにより、アゾ顔料に含有されている有機不純物を除去しやすくなり、得られる顔料組成物の耐光性を向上させやすい。一方、混練時間が8時間以下であることにより、アゾ顔料同士の凝集を抑制しやすいことで、得られる顔料組成物における顔料の粒度分布の広がりを抑えやすい。
【0024】
本発明者らの検討の結果、ソルベントソルトミリング法によって、アゾ顔料の結晶構造内の有機不純物を除去するためには、混練の際に以下に述べる条件を加えることがより好ましいことが判明した。
【0025】
(剪断力)
本実施形態の顔料組成物の製造方法では、ソルベントソルトミリング法による混練工程によって、アゾ顔料内部から有機不純物を取り除くことが重要である。そのため、上述の通り、アゾ顔料に強力な荷重をかけることが、その条件の一つである。この「荷重をかける」ことを具体的に表現する場合には、「ずり速度」で表すことが可能である。混練工程における混練時のずり速度は、10s-1以上であることが好ましく、アゾ顔料自体に剪断力を与えやすい観点から、15s-1以上であることがより好ましく、20s-1以上であることがさらに好ましい。
【0026】
(温度)
また、混練工程における混練時の温度は、20℃以上130℃以下であることが好ましく、25℃以上120℃以下であることがより好ましく、45℃以上90℃以下であることがさらに好ましい。混練時の温度を45℃以上にすることにより、有機溶剤にアゾ顔料がより溶解しやすくなることで、アゾ顔料内部から有機不純物を取り除きやすくなる。一方、混練時の温度を90℃以下にすることにより、有機溶剤の蒸発を抑制しやすくなるため、アゾ顔料に対する有機溶剤の溶解性による有機不純物の除去効果を高めやすい。
【0027】
混練時の温度は、混練物の温度を意味する。混練物の温度を調整する方法は特に限定されないが、混練容器を溶剤循環装置などで行うことが可能である。混練時の温度が45℃以上90℃以下で混練すれば、混練時の温度変化は特に限定されないが、粒度分布をより均一にするためには、混練時の温度変化を5℃以内とすることが好ましい。また、45℃以上90℃以下で混練を行う場合でも、混練時に瞬間的に45℃以上90℃以下の範囲から外れる場合も想定される。本開示においては、混練工程における混練中の温度が一時的に上記範囲から外れた場合でも、当該範囲から外れた温度にある時間が、混練工程の全工程の1割以内であれば、その混練工程は、混練時の温度が上記範囲内で行われたことと同じと判断する。
【0028】
(顔料)
混練工程で用いる顔料としては、有機不純物を含有するアゾ顔料を用いる。そのアゾ顔料としては、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー205、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド187、及びC.I.ピグメントレッド256などを挙げることができる。アゾ顔料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記のアゾ顔料のなかでも、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、及びC.I.ピグメントレッド150からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらのアゾ顔料は、当該アゾ顔料に含まれている有機不純物を除去することによって耐光性が向上しやすい。特に、C.I.ピグメントイエロー74は、有機不純物の除去による耐光性の向上が顕著であるため、さらに好ましい。C.I.ピグメントイエロー74は、モノアゾ構造であり、また、イオン性であるニトロ基を有していることで、励起状態の分子構造がより不安定であると推測される。また、有機不純物として下記化学式(1)で表される化合物(o-アセトアセトアニシジド)を含有するC.I.ピグメントイエロー74の場合、化学式(1)で表される化合物を除去することによる耐光性の向上が顕著であった。化学式(1)で表される化合物は、C.I.ピグメントイエロー74の合成原料で、化学構造が類似していることから、C.I.ピグメントイエロー74が励起状態の分子構造でいる時間を長くする効果を与えると推測される。その結果、化学式(1)で表される化合物は、C.I.ピグメントイエロー74が劣化する可能性を高めていると考えられることから、化学式(1)で表される化合物を除去することによる耐光性の向上が顕著になると推測される。
【0030】
【0031】
アゾ顔料中の有機不純物の有無の確認には、高速液体クロマトグラフィー質量分析計(HPLC/MS)を用いることができる。具体的には、アゾ顔料をジメチルスルホキシド(DMSO)溶液に加えてろ過し、得られた液体組成物をHPLC/MSで測定する。得られたクロマトグラムから顔料由来以外のピークが存在するか否かで有機不純物の有無の判定を行うことができる。
【0032】
(有機溶剤)
混練工程で用いる有機溶剤は、第一の役割として、顔料及び水溶性無機塩の混合物を湿潤させ、適度な固さのドウ(混練してできる塊)にするためのものである。これにより、混練物に強力な荷重がかかりやすいことで摩砕効果を増大させ、顔料の微細化を促進することができ、また、混練物に強力な荷重がかかることで、アゾ顔料の内部に存在する有機不純物を除去するための一翼を担う。
【0033】
有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類、エーテル類、及び非プロトン性極性溶媒などの有機溶剤が好ましい。具体的には、例えば、2-(メトキシメトキシ)エタノール、2-ブトキシエタノール、2-(イソペンチルオキシ)エタノール、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール、アニリン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノール、n-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、及びN-メチルピロリドンなどを挙げることができる。上記の水溶性有機溶剤のうちの1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて2種以上を混合して使用してもよい。
【0034】
有機溶剤の第二の役割は、アゾ顔料を適度に溶解させることである。このため、有機溶剤は、25℃において、アゾ顔料を0.005質量%以上溶解する有機溶剤であることが必要である。ただし、2種以上の有機溶剤を混合し、その混合された有機溶剤が、アゾ顔料を0.005質量%以上溶解すれば、必要に応じて2種以上を混合した有機溶剤を使用してもよい。有機溶剤として、アゾ顔料を0.005質量%以上溶解可能な有機溶剤を用いることで、混練工程において、アゾ顔料の溶解と結晶成長のサイクルを促し、アゾ顔料内部の有機不純物の除去を効率的に行うことが可能である。
【0035】
有機溶剤がアゾ顔料を0.005質量%以上溶解可能であることは、有機溶剤の質量に対する、有機溶剤に溶解するアゾ顔料の質量の割合(質量%)が0.005質量%以上であることを表す。例えば、有機溶剤100gにはアゾ顔料が0.005g以上溶解することを表す。アゾ顔料に対する有機溶剤の溶解性は、前述した手法により判断することが可能であり、その判断手法により、アゾ顔料をより溶解させる有機溶剤が好ましい。本発明者らの検討の結果、有機溶剤は、アゾ顔料を0.005質量%以上溶解させる必要があることがわかった。アゾ顔料に対する溶解性が0.005質量%より小さい場合、アゾ顔料の結晶構造内の有機不純物の除去能力が低く、耐光性が向上し難い。
【0036】
また、アゾ顔料を0.005質量%以上溶解可能な有機溶剤として、ジメチルスルホキシド及びN-メチルピロリドンのうちの少なくとも一方を用いることが、アゾ顔料内部の有機不純物の除去率が高いため、より好ましいことがわかった。この理由は、ジメチルスルホキシド及びN-メチルピロリドンは、アゾ顔料への溶解性が高いことが主要因であると推測される。また、非プロトン性極性溶剤であることでアゾ顔料内部のアゾ基との親和性が高く、さらに、高沸点溶媒であることでソルベントソルトミリング中でも有機溶剤が蒸発しづらく、安定してアゾ顔料近傍に入れることも一部の要因であると推測される。
【0037】
(水溶性無機塩)
混練工程で用いる水溶性無機塩は、硬度の高さを利用して混練工程にて顔料を破砕し、顔料の一次粒子の微細化に寄与する。水溶性無機塩としては、水に溶解する無機塩であれば、特に限定されない。具体的な水溶性無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化亜鉛、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウム、並びにそれらのうちの2種以上の混合物などを挙げることができる。それらのなかでも、価格面から、塩化ナトリウムを用いることが好ましい。
【0038】
水溶性無機塩の粒子径としては、体積基準の粒度分布における、累積50%粒子径(メディアン粒子径;D50)が1μm以上250μm以下、累積95%粒子径(D95)が500μm以下であることが好ましい。特に微細な顔料が所望の場合は、摩砕助剤として使用される水溶性無機塩も微細であることが好ましい。具体的には、体積基準の粒度分布における、累積50%粒子径(D50)が1μm以上10μm以下、累積95%粒子径(D95)が20μm以下の水溶性無機塩がさらに好ましい。
【0039】
水溶性無機塩のD50及びD95は、光学顕微鏡を用いて測定される値を採ることができる。具体的には、光学顕微鏡を用いて500個の水溶性無機塩の粒子径を測定し、体積基準の粒度分布からD50及びD95を算出する方法が挙げられる。後述する実施例で使用した水溶性無機塩についても上記測定方法によりD50及びD95を求めた。
【0040】
〔その他の工程〕
上述の混練工程によって、顔料、水溶性無機塩、及び有機溶剤などを含有する混練物を得ることができる。本実施形態の顔料組成物の製造方法では、上述の混練工程によって得られた混練物から、水溶性無機塩及び有機溶剤を除去する工程を行うことが好ましい。その方法としては、例えば、混練物に対して所定の割合の水に混練物を入れて顔料懸濁液(スラリー)を得た後、この顔料懸濁液を濾過及び洗浄することにより、混練物から水溶性無機塩及び有機溶剤を除去することができる。濾過の方法は特に限定されないが、上記の顔料懸濁液を限外濾過膜や透析膜に通過させて分離する方法や、高圧フィルタープレスで分離する方法などを採ることが好ましい。
【0041】
上述の濾過などを含む工程により、水溶性無機塩及び有機溶剤が分離された顔料組成物のウェットケーキが得られる。得られたウェットケーキは、菌の繁殖を考慮し、含水率を5質量%以下に乾燥させることが好ましい。乾燥方法としては、例えば、乾燥機に設置した加熱源による80℃以上120℃以下の加熱などにより、ウェットケーキの脱水及び/又は脱溶剤を行う回分式又は連続式の乾燥などを挙げることができる。乾燥機としては、例えば、箱型乾燥機、バンド乾燥機、及びスプレードライヤーなどを挙げることができる。
【0042】
<顔料分散液の製造方法>
上述した顔料組成物の製造方法によって得られた顔料組成物を用いて、顔料分散液を製造することが可能である。その顔料分散液の製造方法は、上述の顔料組成物の製造方法により得られた顔料組成物、分散剤、及び水を混合し、分散剤により、顔料組成物を水に分散させる分散工程を含む。顔料組成物としては、上述の顔料組成物の製造方法において得られた混練物から、水溶性無機塩及び有機溶剤を除去した後に得られた顔料組成物を用いることが好ましい。水としては、イオン交換水や純水などの脱イオン水を用いることが好ましい。
【0043】
〔分散工程〕
顔料を分散媒体である水中に分散させる分散方式としては、例えば、分散剤として樹脂を用いた樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面に親水性基が結合している自己分散顔料などを用いることができる。また、顔料の粒子表面に樹脂を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型顔料や、顔料の粒子表面を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを用いることができる。分散媒体である水に上述の顔料組成物を分散させるために、分散剤として、樹脂(樹脂分散剤)や界面活性剤を用いることが好ましい。なかでも、アニオン性基の作用によって、顔料を分散媒体に安定に分散させることが可能な樹脂(アニオン性基を有する樹脂)を用いることがより好ましい。
【0044】
樹脂としては、重合性の疎水性モノマー及び重合性の親水性モノマーを共重合させて得られる、疎水性モノマーに由来する構造単位、及びアニオン性基を有する親水性モノマーに由来する構造単位を有する樹脂が好ましい。疎水性モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、n-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどを挙げることができる。疎水性モノマーの1種又は2種以上を用いることができる。親水性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、及びフマール酸などのカルボキシ基を有する親水性モノマー;スチレンスルホン酸、スルホン酸-2-プロピルアクリルアミド、アクリル酸-2-スルホン酸エチル、メタクリル酸-2-スルホン酸エチル、及びブチルアクリルアミドスルホン酸などのスルホン酸基を有する親水性モノマー;メタクリル酸-2-ホスホン酸エチル、及びアクリル酸-2-ホスホン酸エチルなどのホスホン酸基を有する親水性モノマー;などを挙げることができる。親水性モノマーの1種又は2種以上を用いることができる。
【0045】
分散剤として用いる樹脂の重量平均分子量は、1,000以上30,000以下であることが好ましく、3,000以上20,000以下であることがさらに好ましい。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される標準ポリスチレン換算の値をとることができる。樹脂の酸価(mgKOH/g)は、40mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、100mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることがより好ましい。樹脂の酸価は、水酸化カリウム-メタノール滴定液を用いた電位差滴定装置により測定される値をとることができる。樹脂の使用量は、顔料の使用量に対して、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0046】
顔料組成物を分散媒体に分散させる際には、分散装置を用いることができる。分散装置としては、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル、ナノマイザー、アジテーターミル、及びプラネタリなどを挙げることができる。
【0047】
顔料分散液中の顔料の含有量(質量%)は、顔料分散液全質量を基準として、1.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上30.0質量%以下であることがより好ましい。
【0048】
顔料組成物、及びそれを含有する顔料分散液は、着色機能を必要とするような用途であればいずれにも好適に使用できる。そのような用途としては、例えば、塗料、印刷インキ、着色成形品、静電荷像現像用トナー、液晶表示装置のカラーフィルタ、及びインクジェット用のインクなどを挙げることができる。これらのなかでも、インクジェット用の水性インクが好ましい。
【0049】
<インクの製造方法>
上述した顔料分散液の製造方法によって得られた顔料分散液を用いて、水性インクを製造することが可能である。その水性インクの製造方法は、上述の顔料分散液の製造方法により得られた顔料分散液、及び水溶性有機溶剤を含む成分を混合する工程を含む。この工程でインクを調製する際には、上記成分として、前述の顔料分散液及び水溶性有機溶剤のほか、さらに水や、必要に応じて用いられるその他の添加剤などを配合してインクを調製することができる。
【0050】
(色材)
インクは、前述の顔料分散液の製造方法によって得られた顔料分散液を含有することから、色材として、前述の顔料組成物の製造方法によって得られた顔料組成物を含有する。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0051】
(水性媒体)
インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性インクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、40.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以上95.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0052】
水溶性有機溶剤としては、従来からインクジェット用のインクに一般的に用いられているものをいずれも用いることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、炭素数1乃至4のアルキルアルコール類、アミド類、ケトン類、ケトアルコール類、エーテル類、ポリアルキレングリコール類、グリコール類、アルキレン基の炭素数が2乃至6のアルキレングリコール類、多価アルコール類、アルキルエーテルアセテート類、多価アルコールのアルキルエーテル類、含窒素化合物類、及び含硫黄化合物類などを挙げることができる。これらの水溶性有機溶剤は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上40.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0053】
(その他の添加剤)
インクには、保湿性などの維持のために、上記した成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの保湿性を有する常温で固体の化合物を含有させてもよい。インク中のこのような化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。また、インクには、上記した成分以外にも必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
【0054】
<インクジェット記録方法>
上述のインクの製造方法によって得られたインクは、インクジェット記録方法に用いることが好ましい。そのインクジェット記録方法は、上述の水性インクの製造方法によって得られた水性インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与することによりインクを吐出する方式や、インクに熱エネルギーを付与することによりインクを吐出する方式などを挙げることができる。
【0055】
<インクカートリッジ>
上述のインクをインクジェット記録方法に用いる際には、インクカートリッジを用いることができる。そのインクカートリッジは、上述のインクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
【実施例0056】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
【0057】
<顔料の準備と有機不純物の解析>
顔料として、C.I.ピグメントイエロー74(顔料1及び2の2種)、C.I.ピグメントイエロー155(顔料3)、C.I.ピグメントイエロー180(顔料4)、及びC.I.ピグメントレッド150(顔料5)を用意した。各顔料について、顔料中の有機不純物の有無を確認したところ、いずれの顔料も有機不純物を含有することが確認された。顔料の有機不純物の測定は、過剰量の顔料をジメチルスルホキシド(DMSO)溶液に加え、ろ過し、得られた液体組成物を高速液体クロマトグラフィー質量分析による分析を行うことで判断した。具体的な測定方法を以下に示す。
【0058】
[HPLC分析条件]
カラム:シリカゲルカラム(商品名「SunFire C18 Column」、2.1mm×150mm、Waters製)
カラム温度:40℃
流速:0.2mL/min
検出器:ダイオードアレイ(PDA)検出器
検出範囲:200nm~700nm
分析時間:45分
移動相のグラジエント条件:下記表1
サンプル溶液注入量:2μL
【0059】
【0060】
[質量分析条件]
上記の条件で行ったHPLC分析において得られたピークについて、下記の条件でマススペクトルを測定した。最も強く検出されたm/zをposi(ES+)及びnega(ES-)のそれぞれに対して測定した。
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化法(ESI法)
キャピラリ電圧:3.5kV
脱溶媒ガス:350℃
イオン源温度:120℃
検出器:40V、200~1500amu/0.9sec(posi(ES+)の場合)
40V、200~1500amu/0.9sec(nega(ES-)の場合)。
【0061】
上記の条件で行ったHPLC分析において、検出器254nmでのクロマトグラム上で得られる有機化合物成分のピークを確認した。メインのピーク(最も強度が高い)におけるMSクロマトグラムを確認したところ、各顔料の分子量と同等であった。一方、各顔料は、検出器254nmでのクロマトグラム上で、メインのピーク以外にもピークが検出されている。このことから、顔料由来以外の化合物が存在していると判断した。また、顔料2においては、検出器254nmでのクロマトグラム上で、測定時間26分付近のみにピークが検出されており、このピークにおけるMSクロマトグラムを確認したところ、化学式(1)の分子量であった。このことから、顔料2は、化学式(1)のみの不純物を含んでいることが示された。結果の一覧を表2に示す。
【0062】
【0063】
<顔料に対する有機溶剤の溶解性の確認>
有機溶剤として、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、トルエン、アセトン、及びジエチレングリコールを用意した。これらの有機溶剤について、以下に示す通り、上述の顔料の種類に対する溶解性を確認した。
【0064】
(1)C.I.ピグメントイエロー74に対する有機溶剤の溶解性
(試験例1-1:ジメチルスルホキシド)
25℃のジメチルスルホキシド100000部に対して、C.I.ピグメントイエロー74を4部添加し、30分撹拌した後、ろ過により顔料と有機溶剤を分離し、得られた溶液(ろ液)の吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)を確認した。続いて、25℃のジメチルスルホキシド100000部に対して、C.I.ピグメントイエロー74を5部添加し、30分撹拌した後、ろ過により顔料と有機溶剤を分離し、得られた溶液(ろ液)の吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)を確認した。C.I.ピグメントイエロー74の量が5部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)は、C.I.ピグメントイエロー74の量が4部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)と比較して、変化がなかった。以上の結果より、ジメチルスルホキシドはC.I.ピグメントイエロー74を0.005%以上溶解させることができると判断した。
【0065】
(試験例1-2:N-メチルピロリドン)
試験例1-1で使用したジメチルスルホキシドをN-メチルピロリドンに変更したこと以外は、試験例1-1と同様の手順により試験を行った。その結果、C.I.ピグメントイエロー74の量が5部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)は、C.I.ピグメントイエロー74の量が4部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)と比較して、変化がなかった。以上の結果より、N-メチルピロリドンはC.I.ピグメントイエロー74を0.005%以上溶解させることができると判断した。
【0066】
(試験例1-3:トルエン)
試験例1-1で使用したジメチルスルホキシドをトルエンに変更したこと以外は、試験例1-1と同様の手順により試験を行った。その結果、C.I.ピグメントイエロー74の量が5部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)は、C.I.ピグメントイエロー74の量が4部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)と比較して、変化がなかった。以上の結果より、トルエンはC.I.ピグメントイエロー74を0.005%以上溶解させることができると判断した。
【0067】
(試験例1-4:アセトン)
試験例1-1で使用したジメチルスルホキシドをアセトンに変更したこと以外は、試験例1-1と同様の手順により試験を行った。その結果、C.I.ピグメントイエロー74の量が5部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)は、C.I.ピグメントイエロー74の量が4部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)と比較して、減少した。以上の結果より、アセトンはC.I.ピグメントイエロー74を0.005%以上溶解させることができないと判断した。
【0068】
(試験例1-5:ジエチレングリコール)
試験例1-1で使用したジメチルスルホキシドをジエチレングリコールに変更したこと以外は、試験例1-1と同様の手順により試験を行った。その結果、C.I.ピグメントイエロー74の量が5部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)は、C.I.ピグメントイエロー74の量が4部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)と比較して、減少した。以上の結果より、ジエチレングリコールはC.I.ピグメントイエロー74を0.005%以上溶解させることができないと判断した。
【0069】
(2)C.I.ピグメントイエロー155に対する有機溶剤の溶解性
(試験例2-1:ジメチルスルホキシド)
25℃のジメチルスルホキシド100000部に対して、C.I.ピグメントイエロー155を4部添加し、30分撹拌した後、ろ過により顔料と有機溶剤を分離し、得られた溶液(ろ液)の吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)を確認した。続いて、25℃のジメチルスルホキシド100000部に対して、C.I.ピグメントイエロー155を5部添加し、30分撹拌した後、ろ過により顔料と有機溶剤を分離し、得られた溶液(ろ液)の吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)を確認した。C.I.ピグメントイエロー155の量が5部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)は、C.I.ピグメントイエロー155の量が4部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)と比較して、変化がなかった。以上の結果より、ジメチルスルホキシドはC.I.ピグメントイエロー155を0.005%以上溶解させることができると判断した。
【0070】
(試験例2-2:N-メチルピロリドン)
試験例2-1で使用したジメチルスルホキシドをN-メチルピロリドンに変更したこと以外は、試験例2-1と同様の手順により試験を行った。その結果、C.I.ピグメントイエロー155の量が5部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)は、C.I.ピグメントイエロー155の量が4部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)と比較して、変化がなかった。以上の結果より、N-メチルピロリドンはC.I.ピグメントイエロー155を0.005%以上溶解させることができると判断した。
【0071】
(試験例2-3:ジエチレングリコール)
試験例2-1で使用したジメチルスルホキシドをジエチレングリコールに変更したこと以外は、試験例2-1と同様の手順により試験を行った。その結果、C.I.ピグメントイエロー155の量が5部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)は、C.I.ピグメントイエロー155の量が4部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)と比較して、減少した。以上の結果より、ジエチレングリコールはC.I.ピグメントイエロー155を0.005%以上溶解させることができないと判断した。
【0072】
(3)C.I.ピグメントイエロー180に対する有機溶剤の溶解性
(試験例3-1:ジメチルスルホキシド)
25℃のジメチルスルホキシド100000部に対して、C.I.ピグメントイエロー180を4部添加し、30分撹拌した後、ろ過により顔料と有機溶剤を分離し、得られた溶液(ろ液)の吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)を確認した。続いて、25℃のジメチルスルホキシド100000部に対して、C.I.ピグメントイエロー180を5部添加し、30分撹拌した後、ろ過により顔料と有機溶剤を分離し、得られた溶液(ろ液)の吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)を確認した。C.I.ピグメントイエロー180の量が5部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)は、C.I.ピグメントイエロー180の量が4部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)と比較して、変化がなかった。以上の結果より、ジメチルスルホキシドはC.I.ピグメントイエロー180を0.005%以上溶解させることができると判断した。
【0073】
(試験例3-2:N-メチルピロリドン)
試験例3-1で使用したジメチルスルホキシドをN-メチルピロリドンに変更したこと以外は、試験例3-1と同様の手順により試験を行った。その結果、C.I.ピグメントイエロー180の量が5部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)は、C.I.ピグメントイエロー180の量が4部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)と比較して、変化がなかった。以上の結果より、N-メチルピロリドンはC.I.ピグメントイエロー180を0.005%以上溶解させることができると判断した。
【0074】
(試験例3-3:ジエチレングリコール)
試験例3-1で使用したジメチルスルホキシドをジエチレングリコールに変更したこと以外は、試験例3-1と同様の手順により試験を行った。その結果、C.I.ピグメントイエロー180の量が5部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)は、C.I.ピグメントイエロー180の量が4部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)と比較して、減少した。以上の結果より、ジエチレングリコールはC.I.ピグメントイエロー180を0.005%以上溶解させることができないと判断した。
【0075】
(4)C.I.ピグメントレッド150に対する有機溶剤の溶解性
(試験例4-1:ジメチルスルホキシド)
25℃のジメチルスルホキシド100000部に対して、C.I.ピグメントレッド150を4部添加し、30分撹拌した後、ろ過により顔料と有機溶剤を分離し、得られた溶液(ろ液)の吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)を確認した。続いて、25℃のジメチルスルホキシド100000部に対して、C.I.ピグメントレッド150を5部添加し、30分撹拌した後、ろ過により顔料と有機溶剤を分離し、得られた溶液(ろ液)の吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)を確認した。C.I.ピグメントレッド150の量が5部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)は、C.I.ピグメントレッド150の量が4部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)と比較して、変化がなかった。以上の結果より、ジメチルスルホキシドはC.I.ピグメントレッド150を0.005%以上溶解させることができると判断した。
【0076】
(試験例4-2:N-メチルピロリドン)
試験例4-1で使用したジメチルスルホキシドをN-メチルピロリドンに変更したこと以外は、試験例4-1と同様の手順により試験を行った。その結果、C.I.ピグメントレッド150の量が5部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)は、C.I.ピグメントレッド150の量が4部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)と比較して、変化がなかった。以上の結果より、N-メチルピロリドンはC.I.ピグメントレッド150を0.005%以上溶解させることができると判断した。
【0077】
(試験例4-3:ジエチレングリコール)
試験例4-1で使用したジメチルスルホキシドをジエチレングリコールに変更したこと以外は、試験例4-1と同様の手順により試験を行った。その結果、C.I.ピグメントレッド150の量が5部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)は、C.I.ピグメントレッド150の量が4部の場合に得られた吸光係数(吸光度÷添加した顔料質量)と比較して、減少した。以上の結果より、ジエチレングリコールはC.I.ピグメントレッド150を0.005%以上溶解させることができないと判断した。
【0078】
<顔料組成物の製造>
(顔料組成物1~3、5~13、15~20、22~27、及び29~34)
表3(表3-1~表3-5)の上段に示す顔料を用い、表3の中段に示す各成分(単位:部)を混合し、混合物を得た。塩化ナトリウムとしては、D50が250μm、D95が425μmのものを用いた。上記の混合物を、プラネタリーミキサー(商品名「トリミックス」、井上製作所製;表3の下段の「混練装置No.」にて「1」と示す。)を使用して、表3の下段に示す混練条件にて8時間混練した。このようにして、ソルベントソルトミリング法による混練物である顔料組成物1~3、5~13、15~20、22~27、及び29~34を得た。
【0079】
(顔料組成物4)
顔料1を1部、塩化ナトリウム10部、及びジメチルスルホキシド2部をニーダー(商品名「PBV-03」、入江商会製;表3の下段の「混練装置No.」にて「2」と示す。)に入れ、温度60℃、ずり速度20s-1で8時間混練した。このようにして、ソルベントソルトミリング法による混練物である顔料組成物4を得た。
【0080】
(顔料組成物14、21、28、及び35)
エタノール100部を入れた容器に、表3-2~表3-5の上段に示す顔料1部を添加し、1時間撹拌後、ろ過及び水洗を繰り返し、顔料組成物14、21、28、及び35を得た。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
<顔料分散液の調製>
得られた顔料組成物1~35のそれぞれを用いて、顔料組成物の番号に対応する番号の顔料分散液1~35を調製した。具体的には、得られた顔料組成物1~35を十分に洗浄、ろ過、及び乾燥させた後、得られた顔料に対し、樹脂水溶液を加え、高圧ホモジナイザー(商品名「スターバースト」、スギノマシン製)を使用して処理圧力200MPaで分散処理を行った。樹脂水溶液の樹脂には、重量平均分子量が16,500で、酸価が240mgKOH/gのスチレン-アクリル酸共重合体(商品名「ジョンクリル690」、BASF製)を用いた。この樹脂(スチレン-アクリル酸共重合体)に対し、樹脂の酸価に対して0.9当量の水酸化カリウムを添加し、樹脂の含有量が20.0%の樹脂水溶液を用いた。分散処理の後、適量のイオン交換水を添加して、顔料の含有量が15.0%である顔料分散液1~35を得た。
【0087】
<インクの調製>
得られた顔料分散液1~35のそれぞれを用い、顔料分散液の番号に対応する番号のインク1~35を調製した。具体的には、後記表4に示す種類(番号)の顔料分散液を用いて、その顔料分散液を含む下記の成分を混合し、十分に撹拌して分散した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、インク1~35を調製した。以下に示すアセチレノールE100は川研ファインケミカル製の界面活性剤の商品名である。
(インクの成分)
顔料分散液(1~35のいずれか) 33.0部
グリセリン 10.0部
トリエチレングリコール 7.0部
アセチレノールE100 0.1部
イオン交換水 49.9部
【0088】
<評価>
インク1~35を、それぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーによりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS PRO-10」、キヤノン製)にセットした。このインクジェット記録装置の解像度は、2400dpi×1200dpiである。そして、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、30.4ngのインク滴を1滴付与する条件で記録した画像を記録デューティが100%であると定義する。上記インクジェット記録装置を用いて、記録媒体(商品名「キヤノン写真用紙・光沢ゴールドGL-101」、キヤノン製)に、記録デューティが140%までのベタ画像を記録した。各インクとそれに対応する実施例及び比較例を表4に示す。
【0089】
得られたベタ画像において、耐候性試験機(商品名「キセノンウェザーメーター X75SC」、スガ試験機製)を使用し、照度0.39W/m、ブラックパネル温度60℃、相対湿度70%の条件で耐光性試験を行った。各画像の初期(試験前)の光学濃度(O.D.値)が「0.5」において、耐光性試験300時間(100年相当)後のO.D.値を測定し、初期のO.D.値に対する300時間後のO.D.値(残存O.D.値)の割合を算出し、耐光性の評価指標とした。O.D.値の測定には、分光光度計(商品名「Spectrolino」、Gretag Macbeth製)を用いた。主顔料ごとに設定した以下に示す評価基準にしたがって耐光性を評価した。本実施例においては、以下の評価基準で「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表4に示す。
(実施例1~10及び比較例1~4での評価基準)
A:残存O.D.値が75%以上であった。
B:残存O.D.値が50%以上75%未満であった。
C:残存O.D.値が50%未満であった。
(実施例11~15、比較例5及び6での評価基準)
A:残存O.D.値が85%以上であった。
B:残存O.D.値が75%以上85%未満であった。
C:残存O.D.値が75%未満であった。
(実施例16~20、比較例7及び8での評価基準)
A:残存O.D.値が75%以上であった。
B:残存O.D.値が50%以上75%未満であった。
C:残存O.D.値が50%未満であった。
(実施例21~25、比較例9及び10での評価基準)
A:残存O.D.値が75%以上であった。
B:残存O.D.値が50%以上75%未満であった。
C:残存O.D.値が50%未満であった。
【0090】
【0091】
なお、本実施形態の開示は、以下の方法を含む。
(方法1)顔料、水溶性無機塩、及び有機溶剤を含む混合物をソルベントソルトミリング法により混練して混練物を得る混練工程を含む顔料組成物の製造方法であって、
前記顔料が、有機不純物を含有するアゾ顔料であり、
前記有機溶剤が、前記アゾ顔料を0.005質量%以上溶解可能な有機溶剤であることを特徴とする顔料組成物の製造方法。
(方法2)前記有機溶剤が、ジメチルスルホキシド及びN-メチルピロリドンのうちの少なくとも一方を含む方法1に記載の顔料組成物の製造方法。
(方法3)前記混練工程における混練時の温度が、45℃以上90℃以下である方法1又は2に記載の顔料組成物の製造方法。
(方法4)前記混練工程における混練時のずり速度が、15s-1以上である方法1乃至3のいずれか1項に記載の顔料組成物の製造方法。
(方法5)前記アゾ顔料が、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、及びC.I.ピグメントレッド150からなる群より選ばれる少なくとも1種である方法1乃至4のいずれか1項に記載の顔料組成物の製造方法。
(方法6)前記アゾ顔料が、C.I.ピグメントイエロー74である方法1乃至5のいずれか1項に記載の顔料組成物の製造方法。
(方法7)前記有機不純物が、下記化学式(1)で表される化合物を含む方法1乃至6のいずれか1項に記載の顔料組成物の製造方法。
【0092】
【0093】
(方法8)方法1乃至7のいずれか1項に記載の顔料組成物の製造方法により得られた顔料組成物、分散剤、及び水を混合し、前記分散剤により、前記顔料組成物を前記水に分散させる分散工程を含むことを特徴とする顔料分散液の製造方法。
(方法9)方法8に記載の顔料分散液の製造方法により得られた顔料分散液、及び水溶性有機溶剤を含む成分を混合する工程を含むことを特徴とする水性インクの製造方法。
(方法10)インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、方法9に記載の水性インクの製造方法により得られた水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。