(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009303
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】白金系抗癌薬の効果予測方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20250110BHJP
C12Q 1/6827 20180101ALI20250110BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20250110BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20250110BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20250110BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12Q1/6827 Z ZNA
C12Q1/6876 Z
C12N15/10 Z
C12Q1/6806 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112215
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】510192802
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立国際医療研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】長▲崎▼ 正朗
(72)【発明者】
【氏名】森 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】植野 和子
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR56
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】白金系抗癌薬の治療効果予測方法を提供する。
【解決手段】本開示は、対象における白金系抗癌薬の効果を予測するための方法であって、対象のrs12876842で特定される一塩基多型(SNP)の遺伝子型を調べることを含む方法;前記SNPに隣接するゲノム領域又は前記SNPを含むゲノム領域に結合することができるオリゴヌクレオチド;前記オリゴヌクレオチドを含む白金系抗癌薬の効果を予測するための組成物又はキットなどを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における白金系抗癌薬の効果を予測するための方法であって、対象のrs12876842で特定される一塩基多型(SNP)の遺伝子型を調べることを含む方法。
【請求項2】
遺伝子型がCTまたはTTである場合に白金系抗癌薬が有効であると予測される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
遺伝子型がTTである場合に白金系抗癌薬が有効であると予測される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
対象が、癌患者である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
白金系抗癌薬が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、又はネダプラチンである、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
rs12876842で特定されるSNPに隣接するゲノム領域又は前記SNPを含むゲノム領域に結合することができる、オリゴヌクレオチド。
【請求項7】
配列番号1の501番目に隣接する領域の配列またはこれに相補的な配列と90%以上の配列同一性を有する配列を含む、請求項6に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列と90%以上の配列同一性を有する配列を含む、請求項6に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドを少なくとも1つ含む、白金系抗癌薬の効果を予測するための組成物。
【請求項10】
請求項6~8のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドを少なくとも1つ含む、白金系抗癌薬の効果を予測するためのキット。
【請求項11】
核酸分子を製造する方法であって、対象のrs12876842で特定されるSNPを含むゲノム領域を複製及び/又は増幅することを含み、前記複製及び/又は増幅により得られる核酸分子が、前記SNPがCであるかTであるかを識別可能なように標識される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、白金系抗癌薬の効果予測方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
白金系抗癌薬は、食道癌、胃癌、大腸癌など各種癌の治療における中心的薬剤である。白金系抗癌薬は、治療が有効な患者とそうでない患者があり、治療成績向上のためには効果が得られる患者を抽出して投与する(効果が得られない患者には別の治療法を選択する)ことが必要である。また、白金系抗癌薬は、末梢神経障害をはじめとする副作用が高頻度であることが報告されている。この副作用は長期に持続することが知られており、患者の著しいQOL(quality of life=生活の質)の低下を招く。このように、白金系抗癌薬の治療効果予測因子の発見が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、白金系抗癌薬の治療効果予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある態様において、本開示は、対象における白金系抗癌薬の効果を予測するための方法であって、対象のrs12876842で特定される一塩基多型(SNP)の遺伝子型を調べることを含む方法に関する。
【0005】
ある態様において、本開示は、rs12876842で特定されるSNPに隣接するゲノム領域又は前記SNPを含むゲノム領域に結合することができるオリゴヌクレオチドに関する。
【0006】
ある態様において、本開示は、前記オリゴヌクレオチドを含む白金系抗癌薬の効果を予測するための組成物に関する。
【0007】
ある態様において、本開示は、前記オリゴヌクレオチドを含む白金系抗癌薬の効果を予測するためのキットに関する。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、ゲノム情報に基づく白金系抗癌薬の治療効果予測が可能となる。本開示のSNPは白金系抗癌薬の治療効果と高い相関性を有し、その関係は複数の独立したコホートにおいて確認されている。本開示は、患者のQOL向上および医療費抑制に貢献する。また、本開示によれば、侵襲性の低く採取しやすい対象の試料を用いて治療効果を予測することが可能である。例えば、対象が癌患者であるとき、癌細胞を含む病変部位の組織を採取せずとも白金系抗癌薬の治療効果を予測することができ、対象たる患者に対する侵襲性を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、食道癌患者の白金系抗癌薬による1次治療後の再発の有無に関しての全ゲノム相関解析結果を示す。
【
図2】
図2は、白金系抗癌薬を含む1次治療が施行された食道癌患者118名における、rs12876842の遺伝子型による全生存期間(overall survival,OS)(左)と無増悪生存期間(progression-free survival,PFS)(右)のカプランマイヤー法による解析結果を示す。
【
図3】
図3は、バイオバンクジャパンでの臨床情報及びゲノム情報に基づき抽出した症例において、rs12876842の遺伝子型と治療効果のオッズ比を計算した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特に具体的な定めのない限り、本明細書で使用される用語は、有機化学、医学、薬学、分子生物学、微生物学等の分野における当業者に一般に理解されるとおりの意味を有する。以下にいくつかの本明細書で使用される用語についての定義を記載するが、これらの定義は、本明細書において、一般的な理解に優先する。
【0011】
一塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)とは、ゲノムDNAの1塩基が異なる状態又はその部位であって、一般に1%以上の頻度で出現するものをいう。本開示において、SNPは、米国国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information:NCBI)のデータベースであるdbSNP(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/snp/)のIDであるrs番号により特定される。
【0012】
本開示は、rs12876842で特定されるSNP(本明細書において、単に「rs12876842」と記載することもある)の遺伝子型の調べることを含む。rs12876842は、ヒトゲノムの第13染色体に存在する。配列番号1は、rs12876842を含むヒトゲノムの1001ヌクレオチド長の領域の配列を示し、501番目がrs12876842の位置に相当する。遺伝子型とは、対立遺伝子(アレル)の組み合わせを意味する。rs12876842のメジャーアレルはC、マイナーアレルはTであり、rs12876842の遺伝子型は、CC、CT、またはTTとなる。
ATTAATATATTCATCTTTATACCAACACCATCATAAAACACATTTTAAAAAATTTTTATGAAGGAAAAGGTCCACAAAGGCAAAAGTGCCAAGGCCCATCCCTGCTTAGAGGTGACCTGCTCCCCCCACTCCCAGAAGTTTCTGCTGCTCTGCCACCTGAGTCATTGCCAACTTTGCAAACAGCCACAGAAGAGCCATGATGTTATTATCTTGCATCAGAGAGCAACAGATGAACAGAAAGGCTAAGTATATTGGTCAGGGTCATCTTGAGAAACAGAACCAATGGAATATATATGCATATATATGTGAAGAGAATTATTGTGGCAATTGGCCAAGAAGTCCTACCTCTGCCATCTACACCCTGGACACCCAGGAAAGCCAGTTGCATAATTCAGTCCAAGTTCCGGAGCCCAAAGGTCCGAGAACCAAGAACCAATATCTAAAGGCAGGAGAAGAGGGAAGTCCCAGCTCAAGAAGAGAGAGGAAATTCCCCCTTCTTCNACCTTTTTTTTCTACTCGGGCCCTCAACGGATTGGATGATGCCCACCACATTGGTGAAGGGAGATCTTCTTTAGTCAGTCTACTAATCTTTTCAGGAAACACCCTCACAGACACACACAGAAATAACATTTTAGCCGGGCATGGTGTCTCACGCCTGTAATTCCAGCACTTTGGGAGGCCGAGGTGGGTGGATCACGAGGTCAGGAGTTCAAGACCAGCCTAGCCAAAATGGTGAAACCCCATCTCTACTAAATATACAAAAATTAGCCAGGTGTGGTGGTGGGTGCCTGCAATCCCAGCTACTCGGGAGGCTGAGGCAGGAGAATCGCTTGAACCCGGGAGGCAGAGGTTGCAGTGAGCCAATATTATGCCACTGCACTCCAGCCTGGGTGACAGAGTGAGATTCCATCTTAAAAAAAAAAAAAAGAAAAGAAATAACATTTTACCAGCTATCTGGGTGTCCCTTAGCTCAGCCACATTGACACATAAAATGAACCATC(配列番号1)
NはCまたはTである。
【0013】
ある実施形態において、対象のrs12876842の遺伝子型がCTまたはTTである場合、前記対象は白金系抗癌薬が有効であると予測される。さらなる実施形態において、対象のrs12876842の遺伝子型がTTである場合、前記対象は白金系抗癌薬が有効であると予測される。ある実施形態において、対象のrs12876842の遺伝子型がCCである場合、前記対象は白金系抗癌薬が有効でないと予測される。治療効果予測は、「有効である」又は「有効でない」との表現に限定されず、「奏効する」又は「奏効しない」など同様の肯定的及び否定的表現で提示することができ、これらは互換的に使用することができる。
【0014】
対象の遺伝子型は、対象から採取された、対象のゲノムDNAを含む試料を用いて調べることができる。試料は、rs12876842の遺伝子型を判別可能な状態で対象のゲノムDNAを含む限り、特に限定されない。試料としては、例えば、血液(例えば、末梢血)、リンパ液、骨髄液、及び組織(例えば、癌組織)が挙げられる。ある実施形態において、試料は、血液試料である。当業者は、SNPの検出のため必要な処理を対象から採取された試料を施すことができる。
【0015】
rs12876842の遺伝子型は、対象に生じた体細胞変異(somatic mutation)に由来するのではなく、対象が親から受け継いだ生殖細胞系列のバリアントに由来する。そのため、rs12876842の遺伝子型を調べるため対象から採取する試料は、対象に存在する癌化した細胞または組織に由来するゲノムDNAを含む必要はなく、対象の血液試料を好適に用いることができる。このように血液試料を用いることで、対象への侵襲性を抑えることができる。
【0016】
SNPの遺伝子型は、当業者がSNPの検出に用いうるいずれの方法で調べてもよい。SNPの遺伝子型は、例えば、rs12876842で特定されるSNPに隣接するゲノム領域又は前記SNPを含むゲノム領域に結合することができるオリゴヌクレオチドを用いて、調べることができる。そのような方法としては、例えば、PCR(polymerase chain reaction)を利用する、PCR-RFLP(restriction fragment length polymorphism)、PCR-SSCP(single-strand conformation polymorphism)、PCR-SSO(sequence specific oligonucleotide)、ARMS(amplification refracting mutation system)-PCR、TaqManTM PCR、及びASP(allele specific primer)-PCR、ダイレクトシークエンス法、ASO(allele specific oligonucleotide)ハイブリダイゼーション、SNaPshot(登録商標)法、並びにインベーダー法が挙げられる。
【0017】
ある実施形態において、オリゴヌクレオチドは、プライマー又はプローブである。プライマーは、所望のDNA領域の複製の起点となることができるオリゴヌクレオチドである。プローブは、所望のDNA領域への結合の有無により当該領域の配列を識別することができるオリゴヌクレオチドである。プライマー及びプローブの配列は、rs12876842の遺伝子型の判別に使用可能なものであればよく、SNPの検出方法に応じて当業者が適宜決定することができる。
【0018】
ある実施形態において、オリゴヌクレオチドは、rs12876842に隣接するゲノム領域に結合することができるプライマーである。rs12876842に隣接するゲノム領域は、rs12876842からの距離がSNPの検出方法に応じて適切な距離あればよく、例えば、前記SNPから500ヌクレオチド以内の領域でありうる。ある実施形態において、プライマーは、配列番号1の501番目に隣接する領域の配列またはこれに相補的な配列に結合することができる。配列番号1の501番目に隣接する領域は、例えば、10~50、10~40、10~35、15~35、15~30、又は20~30ヌクレオチド長の領域でありうる。rs12876842を含むゲノム領域を増幅できるよう、当該領域の両端の配列に基づき設計された2つのプライマー(フォワードプライマー及びリバースプライマーともいう)(プライマーペア)をSNPの検出に用いてもよい。
【0019】
ある実施形態において、プライマーは、配列番号1の501番目に隣接する領域の配列またはこれに相補的な配列と80、85、90、95、96、97、98、または99%以上の配列同一性を有する配列を含む、又はからなる。ある実施形態において、プライマーは、配列番号1の501番目に隣接する領域の配列またはこれに相補的な配列、又は配列番号1の501番目に隣接する領域の配列またはこれに相補的な配列において1~10個、1~5個、1~3個、1又は2個のヌクレオチドが改変された配列を含む、又はからなる。さらなる実施形態において、プライマーは、配列番号1の501番目に隣接する領域の配列またはこれに相補的な配列を含む、又はからなる。
【0020】
ある実施形態において、オリゴヌクレオチドは、rs12876842で特定されるSNPを含むゲノム領域に結合することができるプローブである。プローブは、rs12876842がT(マイナーアレル)である場合にrs12876842を含むゲノム領域に結合できるものであっても、rs12876842がC(メジャーアレル)である場合に前記領域に結合できるものであってもよい。ある実施形態において、プローブは、rs12876842がT(マイナーアレル)である場合にrs12876842を含むゲノム領域に結合することができる。ある実施形態において、プローブは、配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列に結合することができる。配列番号1の501番目を含む領域は、例えば、10~50、10~40、10~35、15~35、15~30、又は20~30ヌクレオチド長の領域でありうる。ある実施形態において、プローブは、配列番号1の501番目がTである場合に、配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列に結合することができる。
【0021】
ある実施形態において、プローブは、配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列と80、85、90、95、96、97、98、または99%以上の配列同一性を有する配列を含む、又はからなる。ある実施形態において、プローブは、配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列、又は配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列において1~10個、1~5個、1~3個、1又は2個のヌクレオチドが改変された配列を含む、又はからなる。さらなる実施形態において、プローブは、配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列を含む、又はからなる。
【0022】
ある実施形態において、プローブは、配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列と80、85、90、95、96、97、98、または99%以上の配列同一性を有する配列を含み、又はからなり、ここで、配列番号1の501番目はTである。ある実施形態において、プローブは、配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列、又は配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列において1~10個、1~5個、1~3個、1又は2個のヌクレオチドが改変された配列を含み、又はからなり、ここで、配列番号1の501番目はTである。さらなる実施形態において、プローブは、配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列を含み、又はからなり、ここで、配列番号1の501番目はTである。
【0023】
本開示のオリゴヌクレオチドは、通常、100ヌクレオチド長以下である。ある実施形態において、オリゴヌクレオチドは10~50、10~40、10~35、15~35、15~30、又は20~30ヌクレオチド長である。ある実施形態において、オリゴヌクレオチドは15~35ヌクレオチド長である。
【0024】
本明細書において、オリゴヌクレオチドが所定の配列に結合することができるという場合、当該オリゴヌクレオチドはSNPの検出方法に応じて適切なストリンジェンシー条件下でその所定の配列と二本鎖を形成できればよく、その所定の配列と完全に相補的な配列を有する必要はない。相補的な塩基対としては、アデニン(A)とチミン(T)、アデニン(A)とウラシル(U)、シトシン(C)とグアニン(G)が挙げられる。
【0025】
本開示において、ヌクレオチドの改変には、ヌクレオチドの欠失、置換、挿入、及び付加が含まれる。2以上のヌクレオチドが改変される場合、各ヌクレオチドの改変は、欠失、置換、挿入、及び付加から独立に選択される。
【0026】
オリゴヌクレオチドは、ヌクレオシド間結合により互いに結合した複数のヌクレオシドを含む化合物である。本開示のオリゴヌクレオチドは、天然のヌクレオシドで構成されていても、非天然のヌクレオシドで構成されていても、その両者を含んでもよい。また、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間結合は、天然のヌクレオシド間結合であっても、非天然のヌクレオシド間結合であっても、その両者を含んでもよい。非天然のヌクレオシドとしては、LNA(Locked Nucleic Acid/2'-O,4'-C-Methylene-bridged Nucleic Acid)、AmNA(Amido-Bridged Nucleic Acid)、ENA(Ethylene-bridged Nucleic Acid)、ペプチド核酸、モルフォリノ核酸;5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、6-メチルアデニン、6-メチルグアニン、4-チオウラシル、5-フルオロウラシルなどの非天然塩基を含むヌクレオシド;2’-F、2’-O(CH2)2OCH3(MOE)などの糖修飾を含むヌクレオシドが挙げられる。非天然のヌクレオシド間結合にとしては、例えば、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、アルキルホスホネート結合が挙げられる。オリゴヌクレオチドは、2種類以上のヌクレオシド及び/またはヌクレオシド間結合を含んでもよい。オリゴヌクレオチドは、ホスホロアミダイト法など、当業者に知られるオリゴヌクレオチドの合成法により製造することができる。
【0027】
オリゴヌクレオチドは、SNPの検出方法に応じて適切な物質で標識されていてもよい。標識物質としては、例えば、蛍光物質(例えば、Cy3、Cy5)、クエンチャー、発光物質(ルシフェリンなど)、酵素(ペルオキシダーゼなど)、放射性同位元素(3H、14C、32Pなど)、ビオチンが挙げられる。また、オリゴヌクレオチドは固相に固定されていてもよい。
【0028】
本開示のオリゴヌクレオチドは、白金系抗癌薬の効果を予測するための組成物又はキットとして提供されていてもよい。組成物は、本開示のオリゴヌクレオチドに加え、緩衝剤、安定化剤、防腐剤などの添加剤を含んでもよい。組成物は、例えば、液体または凍結乾燥形態でありうる。キットは、本開示のオリゴヌクレオチドに加え、対象から採取された試料の処理やSNPの検出などのため必要な試薬及び/又は容器や、説明書を含んでもよい。本開示の組成物及びキットは、本開示のオリゴヌクレオチドを少なくとも1つ含み、2つ以上含んでもよい。例えば、本開示の組成物及びキットは、2つのプライマー(例えば1つのプライマーペア)又は1つのプローブと2つのプライマー(例えば1つのプライマーペア)を含みうる。
【0029】
白金系抗癌薬は、白金錯体を含む化合物であり、細胞内のDNAに結合してその複製を阻害することで抗癌効果を発揮する。ある実施形態において、白金系抗癌薬は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、又はネダプラチンである。
【0030】
ある実施形態において、対象は、癌患者である。さらなる実施形態において、対象は、白金系抗癌薬による治療前又は治療中の癌患者である。さらなる実施形態において、対象は、白金系抗癌薬による治療前の癌患者である。
【0031】
ある実施形態において、癌は、食道癌、胃癌、大腸癌、膵癌、卵巣癌、胆道癌、又は乳癌である。さらなる実施形態において、癌は、食道癌又は胃癌である。さらなる実施形態において、癌は、食道癌である。
【0032】
本開示の予測方法は、さらに、別の治療効果予測因子を調べることを含んでもよい。例えば、本開示の予測方法は、対象の別のSNP、例えばrs3815544で特定されるSNPの遺伝子型を調べることを含んでもよい。
【0033】
本開示の予測方法により対象に白金系抗癌薬が有効であると予測された場合、その対象を白金系抗癌薬により治療することができる。反対に、本開示の予測方法により白金系抗癌薬が有効でないと予測された場合、その対象を白金系抗癌薬により治療しないと決定すること(及び/又は別の治療法を選択すること)ができる。
【0034】
本開示は、対象における癌を治療する方法であって、本開示の予測方法により対象における白金系抗癌薬の効果を予測すること、及び白金系抗癌薬が有効と予測された対象に白金系抗癌薬を投与することを含む方法を含む。ある実施形態において、白金系抗癌薬は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、又はネダプラチンである。ある実施形態において、癌は、食道癌、胃癌、大腸癌、膵癌、卵巣癌、胆道癌、又は乳癌である。さらなる実施形態において、癌は、食道癌又は胃癌である。さらなる実施形態において、癌は、食道癌である。
【0035】
本開示は、核酸分子を製造する方法であって、対象のrs12876842で特定されるSNPを含むゲノム領域を複製及び/又は増幅することを含み、前記複製及び/又は増幅により得られる核酸分子が、前記SNPがCであるかTであるかを識別可能なように標識される方法を含む。例えば、前記SNPがCである場合とTである場合との間で異なる標識物質を用いることを上げることができる。このように異なる標識物質を用いることで、前記SNPがCであるかTであるかを識別可能なように核酸分子を標識することができる。例えば、前記ゲノム領域を複製する際、前記SNPがCである場合はGが組み込まれ、Tである場合はAが組み込まれることから、それぞれ異なる標識物質で標識されたデオキシグアノシン三リン酸(dGTP)およびデオキシアデノシン三リン酸(dATP)を用いることにより、前記SNPがCであるかTであるかを識別可能なように核酸分子を標識することができる。あるいは、前記SNPがCである場合に前記SNPを含むゲノム領域に結合することができるオリゴヌクレオチドと、前記SNPがTである場合に前記SNPを含むゲノム領域に結合することができるオリゴヌクレオチドとをそれぞれ異なる標識物質で標識し、これらのオリゴヌクレオチドをプライマーまたは鋳型として前記ゲノム領域の複製及び/又は増幅に用いることにより、前記SNPがCであるかTであるかを識別可能なように核酸分子を標識することができる。標識物質としては本明細書に記載のものを用いることができる。ある実施形態において、本製造方法は、本開示のオリゴヌクレオチドを少なくとも1つ用いてゲノム領域を複製及び/又は増幅する。核酸分子は、例えば、50~1000、100~900、200~800、300~700、400~600、400~500ヌクレオチド長でありうる。
【0036】
本開示の例示的な実施形態を以下に記載する。
【0037】
[1]
対象における白金系抗癌薬の効果を予測するための方法であって、対象のrs12876842で特定される一塩基多型(SNP)の遺伝子型を調べることを含む方法。
[2]
遺伝子型がCTまたはTTである場合に白金系抗癌薬が有効であると予測される、項1に記載の方法。
[3]
遺伝子型がTTである場合に白金系抗癌薬が有効であると予測される、項2に記載の方法。
[4]
対象が、癌患者である、項1~3のいずれかに記載の方法。
[5]
癌が、食道癌、胃癌、大腸癌、膵癌、卵巣癌、胆道癌、又は乳癌である、項4に記載の方法。
[6]
癌が、食道癌又は胃癌である、項5に記載の方法。
[7]
癌が、食道癌である、項6に記載の方法。
[8]
白金系抗癌薬が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、又はネダプラチンである、項1~7のいずれかに記載の方法。
[9]
対象から採取された血液試料を用いて遺伝子型を調べる、項1~8のいずれかに記載の方法。
【0038】
[10]
rs12876842で特定されるSNPに隣接するゲノム領域又は前記SNPを含むゲノム領域に結合することができる、オリゴヌクレオチド。
[11]
プライマー又はプローブである、項10に記載のオリゴヌクレオチド。
[12]
rs12876842で特定されるSNPに隣接するゲノム領域に結合することができるプライマーである、項10又は11に記載のオリゴヌクレオチド。
[13]
配列番号1の501番目に隣接する領域の配列またはこれに相補的な配列に結合することができる、項12に記載のオリゴヌクレオチド。
[14]
配列番号1の501番目に隣接する領域の配列またはこれに相補的な配列と80、85、90、95、96、97、98、または99%以上の配列同一性を有する配列を含む、項12又は13に記載のオリゴヌクレオチド。
[15]
配列番号1の501番目に隣接する領域の配列またはこれに相補的な配列、又は配列番号1の501番目に隣接する領域の配列またはこれに相補的な配列において1~10個、1~5個、1~3個、1又は2個のヌクレオチドが改変された配列を含む、項12又は13に記載のオリゴヌクレオチド。
[16]
配列番号1の501番目に隣接する領域の配列またはこれに相補的な配列を含む、項12~15のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
[17]
配列番号1の501番目に隣接する領域が10~50ヌクレオチド長の領域である、項13~16のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
[18]
rs12876842で特定されるSNPを含むゲノム領域に結合することができるプローブである、項10又は11に記載のオリゴヌクレオチド。
[19]
配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列に結合することができる、項18に記載のオリゴヌクレオチド。
[20]
配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列と80、85、90、95、96、97、98、または99%以上の配列同一性を有する配列を含む、項18又は19に記載のオリゴヌクレオチド。
[21]
配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列、または配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列において1~10個、1~5個、1~3個、1又は2個のヌクレオチドが改変された配列を含む、項18又は19に記載のオリゴヌクレオチド。
[22]
配列番号1の501番目を含む領域の配列またはこれに相補的な配列を含む、項18~21のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
[23]
配列番号1の501番目を含む領域が10~50ヌクレオチド長の領域である、項19~22のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
[24]
配列番号1の501番目がTである、項19~23のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
[25]
10~50ヌクレオチド長である、項10~24のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド。
【0039】
[26]
項10~25のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドを少なくとも1つ含む、白金系抗癌薬の効果を予測するための組成物。
[27]
項10~25のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドを少なくとも1つ含む、白金系抗癌薬の効果を予測するためのキット。
【0040】
[28]
対象における癌を治療する方法であって、
項1~9のいずれかに記載の方法により、対象における白金系抗癌薬の効果を予測すること、及び
白金系抗癌薬が有効と予測された対象に、白金系抗癌薬を投与すること
を含む、方法。
[29]
癌が、食道癌、胃癌、大腸癌、膵癌、卵巣癌、胆道癌、又は乳癌である、項28に記載の方法。
[30]
癌が、食道癌又は胃癌の患者である、項29に記載の方法。
[31]
癌が、食道癌である、項30に記載の方法。
[32]
白金系抗癌薬が、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、又はネダプラチンである、項28~31のいずれかに記載の方法。
【0041】
[33]
核酸分子を製造する方法であって、対象のrs12876842で特定されるSNPを含むゲノム領域を複製及び/又は増幅することを含み、前記複製及び/又は増幅により得られる核酸分子が、前記SNPがCであるかTであるかを識別可能なように標識される方法。
[34]
項10~25のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドを少なくとも1つ用いてゲノム領域を複製及び/又は増幅する、項33に記載の方法。
【0042】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、本発明は如何なる意味においても本実施例により限定されない。
【実施例0043】
白金系抗癌薬の治療効果予測因子の確立の目的で、探索コホートとして、白金系抗癌薬が治療法の中心となる食道癌に対して白金系抗癌薬を使用した化学放射線療法の治療効果(再発の有無)について全ゲノム相関解析(GWAS)を行い、いくつかの候補SNPを検出した。発明者らは先の論文(Mori T. et al., Ther Adv Med Oncol 2022, 14:1-21)において、ある候補SNP(rs3815544)が下流にあるMSX1遺伝子又はそのプロモーター領域のメチル化に関係し、遺伝子の発現量と相関するために治療効果に影響する可能性について報告した。また、最近、白金系抗癌薬が使用される大腸癌において、PDX1、EN2、およびMSX1のゲノムメチル化による発現レベルの変動と予後の相関の報告があった(Lee Y. et al., Experimental & Molecular Medicine 2022, 54:156-168)。そこで、PDX1周辺のSNPについて前記先の論文の食道癌のGWASデータを再検討した。
【0044】
第1次コホート及び第2次コホートは前記先の論文に記載のとおりであり、それぞれ、1次治療として白金系抗癌薬(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、又はネダプラチン)を使用した化学放射線療法を施された94例及び24例の食道癌患者であった。解析は前記先の論文に記載のとおり行った。これにより、最も予後(再発の有無)と相関するP値が低い2つのSNP(rs12876842及びrs9581943)を候補として選出した(
図1、第1次コホート94例でのGWASの結果)。
【0045】
図1において、X軸は染色体上の位置(第13染色体;表記はGRCh37に従う)、Y軸は相関に関してのp値(マイナスlog表示;4であればp=10
-4を意味する)を示す。X軸の黒矢印はPDX1遺伝子の位置と転写方向を示している。rs12876842は、再発に関してのオッズ比(odds ratio,OR)が0.22、すなわちマイナーアレルで再発のリスクが0.22倍となり、その統計学的有意性はp=0.00015と計算された。一方、rs9581943はマイナーアレルで再発のリスクが2.55倍となり、統計学的有意性はp=0.0098であった。
【0046】
最初の解析であるGWASは食道癌の再発の有無と遺伝子型との相関解析であるため、治療効果の評価として最も重要な生存期間が検討されていない。そこで、rs12876842について、食道癌患者の全生存期間(overall survival,OS)及び無増悪生存期間(progression-free survival,PFS)を解析した。白金系抗癌薬を含む1次治療が施行された食道癌の118名(第1次コホート94例と第2次コホート24例の合計)のコホートでSNPの遺伝子型とOS又はPFSとをカプランマイヤー法により解析した(
図2)。
【0047】
OSの中央値は、遺伝子型TTでは中央値に到達せず、TCで108.1ヶ月(95%信頼区間、以下95%CI;67.6-148.6ヶ月)、CCでは30.5ヶ月(95%CI;23.7-37.3ヶ月)であり、Log RankテストではCCとTT間(p=0.0089)、CCとTC間(p=0.0014)で有意差があった。PFSの中央値は、遺伝子型TTでは中央値に到達せず、TCで112.0ヶ月(95%CI;67.0-157.0ヶ月)、CCでは8.37ヶ月(95%CI;2.9-13.9ヶ月)であり、Log RankテストではCCとTT間(p=0.0062)、CCとTC間(p=0.0010)で有意差があった。このように、rs12876842はCT及びTTのいずれについてもLog Rankテストで生存期間での有意差が得られた。
【0048】
さらに、OS又はPFSに関して、rs12876842と年齢及び進行度を含むCox比例ハザードモデルによる多変量解析を行った。表1は、白金系抗癌薬を含む1次治療が施行された前記食道癌患者118名における、rs12876842遺伝子型(CC=0, CT=1, TT=2)、治療前の進行度(UICC 8版、Stage0=0, stage1A/1B=1, stage2A/2B/2C=2, stage3A/3B/3C=3, stage4A/4B=4)、及び治療次の年齢によるOSとPFSに関するCox比例ハザードモデルによる多変量解析結果を示す。
【表1】
【0049】
年齢及び腫瘍進行度を計算に入れても、rs12876842のTアレルはCアレルに比してOSの死亡のリスク(ハザード)を0.46倍に、PFSの死亡または増悪のリスク(ハザード)を0.47倍に減らした。すなわち、rs12876842の遺伝子型は、OS及びPFSのいずれにおいても、年齢や進行度とは独立した有意なリスク因子であることが示された。
【0050】
次に、外部コホートで上記の結果が再現されるかを検討した。バイオバンクジャパン(BBJ)(日本医療研究開発機構補助金事業、https://biobankjp.org)に登録されている約26万人の日本人の臨床ゲノム情報から、食道癌、胃癌、大腸癌、膵癌、卵巣癌、胆道癌、及び乳癌で、1次治療として白金系抗癌薬による治療が行われ、治療後のコンピュータ断層撮影(CT)による画像検査での治療効果判定のデータがある症例を抽出し、新たなコホートを作成した。そして、それらのコホートでrs12876842の遺伝子型と治療効果(奏効率や腫瘍制御率)のオッズ比を計算した
【0051】
胃癌において、同様のオッズ比(OR=0.35)(マイナーアレルでの腫瘍制御効果が高い)が、p=0.006の有意差を持って再現された。また、有意差は得られなかったが(症例数による限界と思われる。
図3参照)、同様にマイナーアレルで腫瘍制御又は奏効の可能性があるとのオッズ比が、大腸癌(OR=0.66)並びに、膵癌、卵巣癌、胆道癌、及び乳癌(OR=0.68)のコホートで得られた。BBJは日本全国各地から参加同意した病院より登録・集積された症例で構成されており、参加に関して症例の偏りを生じるような特定の登録条件は課せられていない、いわゆるリアルワールドデータに近い集団と考えられる。また、治療効果判定も各病院でのCTなどによる客観的な判定によるものであり、本発明者らとは独立した第三者評価と言える。
【0052】
アジア系人種(Asian)でSNP(rs12876842:C→T)が父方または母方に由来する1つの染色体上で存在する(すなわち、rs12876842の遺伝子型がCTの)頻度は約44%である。ヨーロッパ系人種(European)は約22%、アフリカ系人種(African)は約8%、ラテンアメリカ系人種(Latin American)は約13-18%、グローバルで約20%である。また、アジア系人種でSNP(rs12876842:C→T)がホモの(すなわち、rs12876842の遺伝子型がTTの)頻度は約11%である。上記から、胃癌については、rs12876842の遺伝子型がCTのヒト(アジア系人種の約44%)が白金系抗癌薬に対して治療効果を奏しないリスクは、rs12876842の遺伝子型がCCのヒトと比較して0.35倍となる。また、rs12876842の遺伝子型がTTのヒト(アジア系人種の約11%)が白金系抗癌薬に対して治療効果を奏しないリスクは、rs12876842の遺伝子型がCCのヒトと比較して0.123倍(0.35×0.35=0.1225)となる。
【0053】
マサチューセッツ工科大学とハーバード大学によって運営されている遺伝子型と各臓器組織での遺伝子発現の関係を構築したプロジェクトであるGTEXによれば、rs12876842の遺伝子型は食道胃接合部粘膜でのPOLR1D遺伝子の発現レベルと有意に相関していた(p=0.00001139)(https://gtexportal.org/home/snp/rs12876842)。また、カロリンスカ研究所やアプサラ大学(いずれもスウェーデン)などが運営する遺伝子の発現レベルの各癌種の生命予後のデータベースであるThe Human Protein Atlasによれば、POLR1D遺伝子発現レベルと卵巣癌、大腸癌、又は頭頸部癌の予後とは有意に相関していた(いずれもp<0.05)(https://www.proteinatlas.org/ENSG00000186184-POLR1D/pathology)。
【0054】
以上の結果は、rs12876842が、癌、例えば、食道癌、胃癌、大腸癌、膵癌、卵巣癌、胆道癌、及び乳癌に対して白金系抗癌薬を使用する際の効果予測因子として使用できることを示す。