(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009307
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】電子機器筐体用部材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/04 20060101AFI20250110BHJP
B32B 5/00 20060101ALI20250110BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20250110BHJP
【FI】
B32B27/04 Z
B32B5/00 A
B32B7/027
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112220
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 航
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 侑記
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
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4F100JL04
4F100JL14
(57)【要約】
【課題】成形時の変形が少なく、電子機器筐体として使用した際に局所的な温度上昇を防止する電子機器筐体用部材を得る。
【解決手段】板状部品と、前記板状部品の周縁領域の少なくとも一部に一体化された熱可塑性樹脂部品とを有する電子機器筐体用部材であって、前記板状部品は、強化繊維と樹脂を含む強化繊維層を少なくとも1層以上含む繊維強化プラスチックと、面内方向の熱伝導率が10W/(m・K)以上3000W/(m・K)以下のグラファイトシートを有する複合材であり、前記板状部品に含まれるグラファイトシートが、前記板状部品の内層に配され表面に露出しない電子機器筐体用部材である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部品と、前記板状部品の周縁領域の少なくとも一部に一体化された熱可塑性樹脂部品とを有する電子機器筐体用部材であって、
前記板状部品は、
強化繊維と樹脂を含む強化繊維層を少なくとも1層以上含む繊維強化プラスチックと、
面内方向の熱伝導率が10W/(m・K)以上3000W/(m・K)以下のグラファイトシートを有する複合材であり、
前記板状部品に含まれるグラファイトシートが、前記板状部品の内層に配され表面に露出しない電子機器筐体用部材。
【請求項2】
前記板状部品に含まれる繊維強化プラスチックは、
一方向に配向された連続繊維からなる強化繊維を用いた強化繊維層を複数積層し一体化されたものであり、
ある1層の強化繊維層を構成する強化繊維の繊維配向と、他層の強化繊維層を構成する強化繊維の繊維配向とが異なる方向に配置されている請求項1に記載の電子機器筐体用部材。
【請求項3】
前記板状部品の厚み方向において、前記強化繊維層を構成する繊維配向が対称配置されている請求項2に記載の電子機器筐体用部材。
【請求項4】
前記板状部品の厚み方向において、前記グラファイトシートも対称配置されている請求項3に記載の電子機器筐体用部材。
【請求項5】
前記強化繊維が織物である強化繊維層を、前記板状部品の表面に配置又前記板状部品の内部に挿入する請求項1に記載の電子機器筐体用部材。
【請求項6】
前記板状部品の少なくとも一方の表面に熱可塑性樹脂層を更に配置する請求項1に記載の電子機器筐体用部材。
【請求項7】
前記繊維強化プラスチックの全周が前記グラファイトシートの全周より大きく、前記板状部品の外周面から前記グラファイトシートが露出していない請求項1に記載の電子機器筐体用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器筐体用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化プラスチック(FRP)は、軽量性や力学特性に優れることから、各種産業用途に幅広く利用されている。現在、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話、電話機、ファクシミリ、家電製品、玩具用品などの電気・電子機器の携帯化が進むにつれ、より小型化、軽量化が要求されている。電子機器の小型化が進む一方で、ICやCPUの高機能化が進む結果、単位体積あたりの発熱量が増加し、電子機器の発熱密度が急速に上昇している。例えば、従来パソコン等の筐体に使用されていた炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)の射出成形品の熱伝導率は5W/(m・K)以下、炭素繊維織物プリプレグの積層加熱加圧成形品の熱伝導率は50W/(m・K)以下と熱伝導率が低いため、電子機器の冷却が不十分となり内部が高温になってしまうことや、筐体の熱で低温やけどをする問題が発生している。このような電子機器の内部温度上昇ややけどを防止するためには、筐体そのものの熱伝導率が高いことに加え、筐体の面方向の熱伝導率が、筐体の厚み方向の熱伝導率より大幅に高く、発熱部品の熱を筐体の厚み方向ではなく面方向に瞬時に広げることにより、局所的な温度上昇を防止する必要がある。
一方で、電子機器筐体では、機器を構成する部品、特に筐体には、外部から荷重がかかった場合に筐体が大きく撓んで内部部品と接触、破壊を起こさないように、高強度・高剛性化を達成しつつ、かつ薄肉化が求められている。強化繊維と樹脂からなる繊維強化樹脂構造体と別の部材、例えばフレーム部材等と一体化接合成形させて小型軽量化した成形構造体において、反りのない更なるの薄肉化、接合強度の信頼性が要求されている。
【0003】
特許文献1では、面内方向の熱伝導率が高いグラファイトフィルムに樹脂を含浸させた、グラファイトのプリプレグを積層し、加熱加圧して成形した筐体とすることで発熱部品の熱を筐体の厚み方向ではなく面方向に瞬時に広げることにより、局所的な温度上昇を防止することが提案されている。
【0004】
特許文献2では、グラファイトフィルムの少なくとも片面に強化繊維層が形成され、軽量且つ機械的強度が優れており、さらに熱伝導率にも優れたグラファイト複合フィルムが提案されている。
【0005】
特許文献3では、熱硬化性樹脂を含む繊維強化プラスチックと熱伝導性の良い異種材料を熱可塑性樹脂層を介して接合することで、軽量性、力学特性だけでなく、熱伝導性、放熱性にも
優れた一体化成形品が提案されている。
【0006】
特許文献4では、繊維強化プラスチックと面内方向の熱伝導性に優れた異種材料を一体化することで、プラスチックスの成形の容易さ(生産性の高さ)を維持したまま熱伝導性を向上させ、発熱体と接した際に局部的に温度が上昇しにくい一体化成形品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-95935号公報
【特許文献2】特許5107191号
【特許文献3】特許第4904732号公報
【特許文献4】特開平11-179830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の方法で作成された電子機器筐体はグラファイトフィルムと樹脂のみからなることから、電子機器の筐体として機械的強度が十分でない場合があった。
【0009】
特許文献2で提案されているようなグラファイト複合フィルムは、グラファイトフィルムと繊維強化プラスチックの一体化時に生じる変形の抑制が不足し、内部に電子機器を有する電子機器筐体として使用するには、寸法精度が十分でないことや、切削加工を行った際にカケやワレ、グラファイトシートの脱落が生じる場合があった。
【0010】
特許文献3および特許文献4で提案されている繊維強化プラスチックと異種材料からなる一体化成形品も異種材料を一体化する時に生じる変形の抑制が不足し、内部に電子機器を有する電子機器筐体として使用するには、寸法精度が十分でないことや、切削加工を行った際にカケやワレ、グラファイトフィルムの脱落が生じる場合があった。
【0011】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、繊維強化プラスチックを有する板状部品と、前記板状部品の周縁領域の少なくとも一部に一体化された熱可塑性樹脂部品を有する電子機器筐体用部材において、成形時の変形が少なく、電子機器筐体として使用した際に局所的な温度上昇を防止する電子機器筐体用部材を取得することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]板状部品と、前記板状部品の周縁領域の少なくとも一部に一体化された熱可塑性樹脂部品とを有する電子機器筐体用部材であって、
前記板状部品は、
強化繊維と樹脂を含む強化繊維層を少なくとも1層以上含む繊維強化プラスチックと、
面内方向の熱伝導率が10W/(m・K)以上3000W/(m・K)以下のグラファイトシートを有する複合材であり、
前記板状部品に含まれるグラファイトシートが、前記板状部品の内層に配され表面に露出しない電子機器筐体用部材。
[2]前記板状部品に含まれる繊維強化プラスチックは、
一方向に配向された連続繊維からなる強化繊維を用いた強化繊維層を複数積層し一体化されたものであり、
ある1層の強化繊維層を構成する強化繊維の繊維配向と、他層の強化繊維層を構成する強化繊維の繊維配向とが異なる方向に配置されている[1]に記載の電子機器筐体用部材。
[3]前記板状部品の厚み方向において、前記強化繊維層を構成する繊維配向が対称配置されている[2]に記載の電子機器筐体用部材。
[4]前記板状部品の厚み方向において、前記グラファイトシートも対称配置されている[3]に記載の電子機器筐体用部材。
[5]前記強化繊維が織物である強化繊維層を、前記板状部品の表面に配置又前記板状部品の内部に挿入する[1]に記載の電子機器筐体用部材。
[6]前記板状部品の少なくとも一方の表面に熱可塑性樹脂層を更に配置する[1]に記載の電子機器筐体用部材。
[7]前記繊維強化プラスチックの全周が前記グラファイトシートの全周より大きく、前記板状部品の外周面から前記グラファイトシートが露出していない[1]に記載の電子機器筐体用部材。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、成形時の変形が少なく、電子機器筐体として使用した際に局所的な温度上昇を防止する電子機器筐体用部材を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の電子機器筐体用部材の一例についての概略図である。
【
図2】本発明の電子機器筐体用部材の一例の概略断面図である。
【
図3】サンドイッチ構造を持つ板状部品を用いた本発明の電子機器筐体用部材の一例の概略断面図である。
【
図4】熱可塑性樹脂部品がリブ形状を有する本発明の電子機器筐体用部材の一例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態および図面に何ら限定されるものではない。本発明は、その目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0016】
本発明の電子機器筐体用部材は、板状部品と、前記板状部品の周縁領域の少なくとも一部に一体化された熱可塑性樹脂部品とを有する電子機器筐体用部材であって、前記板状部品は、強化繊維と樹脂を含む強化繊維層を少なくとも1層以上含む繊維強化プラスチックと、面内方向の熱伝導率が10W/(m・K)以上3000W/(m・K)以下のグラファイトシートを有する複合材であり、前記板状部品に含まれるグラファイトシートが、前記板状部品の内層に配され表面に露出しない電子機器筐体用部材である。
【0017】
本発明の電子機器筐体用部材の一例を
図1に示す。
図1において、電子機器筐体用部材は、板状部品1と熱可塑性樹脂部品2が一体化されている。
【0018】
板状部品における板状とは、概ね平坦な板のことであり、前記板状部品の長辺と厚みからなるアスペクト比が10以上であることを指す。板状部品は、一部に凹凸や孔加工を有していてもよく、アーチ形状や、斜面を有していてもよく、厚みが異なっていてもよい。
【0019】
前記繊維強化プラスチックに用いる強化繊維としては、例えば、アルミニウム、黄銅、ステンレスなどの金属繊維や、ポリアクリロニトリル(PAN)系、レーヨン系、リグニン系、ピッチ系の炭素繊維や、黒鉛繊維や、ガラスなどの絶縁性繊維や、アラミド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエステル、アクリル、ナイロン、ポリエチレンなどの有機繊維や、シリコンカーバイト、シリコンナイトライドなどの無機繊維などが挙げられる。
【0020】
前記繊維強化プラスチックに用いる強化繊維は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
前記繊維強化プラスチックに用いる強化繊維は、表面処理が施されているものであってもよい。表面処理としては、例えば、導電体として金属の被着処理のほかに、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、結束剤による処理、添加剤の付着処理などが挙げられる。
中でも、軽量化効果の観点から、比強度、比剛性に優れるPAN系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が好ましく、得られる成形品の軽量性と強度の観点ではPAN系炭素繊維が好ましく、剛性と熱伝導性の観点からはピッチ系の炭素繊維が好ましい。
【0022】
前記繊維強化プラスチックに用いる強化繊維の平均単糸径は、4.0~30μmであることが好ましく、4.2~25μmであることがより好ましく、4.5~20μmであることがさらに好ましい。平均単糸径が4.0μm以上であると所望の強化繊維含有量を得る手間が省け繊維強化プラスチックを作製しやすくなる。平均単糸径が30μm以下であると、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の含浸が容易になる。
【0023】
前記繊維強化プラスチックに用いる強化繊維は、高い強度を得る観点では、引張強度が3000MPa以上であることが好ましく、3200MPa以上であることがより好ましく、3400MPa以上であることがさらに好ましい。
【0024】
前記繊維強化プラスチックに用いる強化繊維は、高い弾性率を得る観点では、引張弾性率が200GPa以上であることが好ましく、225GPa以上であることがより好ましく、400GPa以上であることがさらに好ましい。
【0025】
記繊維強化プラスチックに用いる強化繊維は、高い熱伝導性を得る点から、繊維方向の熱伝導率が1W/(m・K)以上であることが好ましく、5W/(m・K)以上であることがより好ましく、8W/(m・K)以上であることがさらに好ましい。
【0026】
また、得られる成形品の導電性を高める観点からは、ニッケルや銅やイッテルビウムなどの金属を被覆した強化繊維を用いることもできる。
【0027】
繊維強化プラスチックに用いる樹脂は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂いずれでもでもよく、更には併用してもよい。
前記繊維強化プラスチックに用いる熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、またはこれらの共重合体、変性体、および、これらの少なくとも2種類をブレンドした樹脂などが挙げられる。中でも、力学特性、耐熱性および強化繊維との接着性に優れる点から、エポキシ樹脂が好ましい。
【0028】
前記繊維強化プラスチックに用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリアクリレート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂、セルロースアセテート・セルロースアセテートブチレート・エチルセルロース等のセルロース誘導体、液晶性樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニールアルコール樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フッ素系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、非晶ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアニルエーテエルニトリル樹脂、ポリベンゾイミダール樹脂などが挙げられる。中でも、射出成形品の各種機械特性が良好な点から、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂およびこれらの変性材あるいは2種以上のブレンド物などが挙げられる。
【0029】
前記繊維強化プラスチックに用いる樹脂は、要求される特性に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で他の充填材や添加剤を含有しても良い。例えば、無機充填材、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤などが挙げられる。
【0030】
本発明のグラファイトシートは熱伝導性に異方性を有し、その良好な熱伝導性を示す方向の熱伝導率が10W/(m・K)以上3000W/(m・K)以下であればよく、好ましくは100W/(m・K)以上3000W/(m・K)以下、さらに好ましくは500W/(m・K)以上3000W/(m・K)以下である。熱伝導率が10W/(m・K)以上であれば、強化繊維層と一体化させ板状部品としても、良好な熱伝導性を有し局所的な温度上昇を防ぐことができる。
本発明のグラファイトシートの密度は、1.0g/cm3以上2.7g/cm3未満であればよく、好ましくは1.2g/cm3以上2.5g/cm3以下、さらに好ましくは1.5g/cm3以上2.3g/cm3以下である。密度が、1.0g/cm3以上であれば、黒鉛内部に空気層を含まず高い熱伝導性が実現できる。密度が、2.7g/cm3未満であれば、アルミニウム(密度:2.70g/cm3)や銅(密度:8.96g/cm3)などに比べ小さいため、強化繊維プラスチックと一体化した際に軽量化することができるとともに、同じ大きさおよび重さのものにあっては、その熱放散性を向上させ、放熱性能を高めることができる。
【0031】
グラファイトシートの厚みは1μm以上1mm以下であればよく、好ましくは5μm以上500μm以下、さらに好ましくは10μm以上300μm以下である。厚みが1μm以上であれば、強化繊維層と一体化させ板状部品としても、良好な熱伝導性を有し局所的な温度上昇を防ぐことができる。厚みが1mm以下であれば強化繊維層と一体化させ板状部品としても十分な薄さを維持できる。
【0032】
本発明のグラファイトシートは目的の熱伝導性、密度があればよく、製造方法によらない。
またグラファイトは繊維強化プラスチックとの密着性向上のため、表面処理を行うことも好ましい。
【0033】
板状部品を製造する方法の一例として、未硬化の熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂、または熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物と強化繊維とを含むプリプレグとグラファイトシートを積層し、加熱加圧することや、加熱後に加圧しながら冷却することによって繊維強化樹脂の硬化物とする方法が挙げられる。
【0034】
未硬化の熱硬化性樹脂または、熱可塑性樹脂、または熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物と、強化繊維とを含むプリプレグは、例えば、公知の手法によって、強化繊維を一方向に配列された強化繊維束、または強化繊維の織物に対し、未硬化の熱硬化性樹脂または、熱可塑性樹脂、または熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物を含浸することで作製することができる。また、このようなプリプレグとして市販されているものを用いてもよい。
【0035】
板状部品を成形する場合の成形方法は、特に限定されないが、量産性の面から、未硬化の材料を積層した後、プレス機で加圧し板状部品を得るプレス成形が好ましい。
【0036】
また、本発明の電子機器筐体用部材は、板状部品の周縁領域の少なくとも一部に熱可塑性樹脂部品を一体化させたものである。ここで、熱可塑性樹脂部品は強化繊維を含むことが好ましい。
【0037】
強化繊維としては、前述した繊維強化プラスチックに用いる強化繊維を使用できる。なかでも、射出成形品の機械特性が良好である点から、ガラス繊維、炭素繊維が好ましい。強化繊維は目的に応じて、複数の強化繊維を含んでもよい。また、強化繊維を含む熱可塑性樹脂部品が板状部品と一体化成形後、細部充填性と耐衝撃強度の観点から、強化繊維の少なくとも一部が単糸まで分散せず、複数本の単糸で構成された収束部の形態で存在することも好ましい。
【0038】
収束部を形成させる方法は限定されないが、例えば、射出樹脂の融点より十分高い融点を有する熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂からなる繊維強化プラスチックを破砕した繊維強化プラスチック片、あるいはリサイクルとして破砕・分級・熱処理した繊維強化プラスチック片を熱可塑性樹脂の成形時に混合してもよい。埋め立て処理を行う廃棄物を削減する観点から、熱硬化性樹脂を用いた廃繊維強化プラスチックを破砕・分級・熱処理して得られたリサイクル繊維強化プラスチックであることが好ましい。強化繊維束の物性が良好な物性を有する点から、リサイクル繊維強化プラスチックが、炭素繊維を用いたCFRPであることも好ましい。リサイクル繊維強化プラスチックを得る方法は、限定されない。
【0039】
収束部を構成する単糸の本数は2本以上が好ましく、5本以上がより好ましく、10本以上がさらに好ましい。収束部Eを構成する単糸数の上限は、特に限定されないが、100,000本以下が好ましく、80,000本以下がより好ましく、60,000本以下がさらに好ましい。収束部Eを構成する単糸の本数が、2本以上であれば、得られる成形品が落下した際の耐衝撃性を向上させることができる。また、収束部を構成する単糸の本数が100,000本以下であれば、一体化成形時の流動性が向上し細部充填性が向上しやすくなる。
【0040】
収束部の長辺の長さは0.5~20mmが好ましく、0.8~15mmがより好ましく、1.0~10mmがさらに好ましい。収束部の長辺の長さが0.5mm以上であると、成形品の物性が向上しやすくなる。また、収束部の長辺の長さが20mm以下であると、一体化成形時の流動性が向上し、細部充填性が向上しやすくなる。
【0041】
収束部の長辺の長さは、収束部を構成する単糸のうち、最も長い単糸の長さを指す。収束部の中に0.5mmより短い単糸を含んでいてもよい。
【0042】
ここで、収束部がランダムに存在しているとは、収束部が特定の配向に揃っていないことを指す。収束部の長辺と、収束部と接触していない別の収束部の長辺とからなる角度の鋭角側が20°以上あることが好ましく、25°以上がより好ましく、30°以上がさらに好ましい。
【0043】
熱可塑性樹脂部品に含まれる強化繊維の平均繊維長は10μm~20mm以下が好ましく、12μm~15mmがより好ましく、15μm~10mmがさらに好ましい。強化繊維の平均繊維長が10μm以上であると、成形品の物性が向上しやすくなる。また、強化繊維の平均繊維長が20mm以下であると、一体化成形時の流動性が向上し、細部充填性が向上しやすくなる。
【0044】
熱可塑性樹脂部品100質量%における強化繊維の含有量が1~50質量%であることが好ましい。強化繊維の含有量は、1~45質量%であることがより好ましく、1~40質量%であることがさらに好ましい。強化繊維の含有量が1質量%以上であると、強化繊維によって得られる成形品の物性が向上しやすくなる。50質量%以下であると、成形時の流動性が向上し、細部充填性が向上しやすくなる。
【0045】
本発明の熱可塑性樹脂部品に用いられる熱可塑性樹脂は特に限定されず、前述した繊維強化プラスチックに用いる熱可塑性樹脂を使用できる。なかでも、射出成形品の各種機械特性が良好な点から、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂がより好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用しても良く、あるいは混合物でも、また共重合体であっても良い。混合物の場合には、相溶化剤が併用されていても良い。
【0046】
この熱可塑性樹脂には、難燃剤等の添加物を含有してもよく、適宜所望の目的に応じて用いることができる。
【0047】
熱可塑性樹脂部品は所望の物性、形状を得られればその方法は限定されず、市販の熱可塑性樹脂ペレットを使用してもよく、溶融混練やドライブレンドなどの方法により、成形材料混合物としてもよい。中でも、成形品中における強化繊維の含有量を容易に調整することができる点から、ドライブレンドすることが好ましい。ここで、ドライブレンドとは、溶融混練とは異なり、複数の材料を樹脂成分が溶融しない温度で撹拌・混合し、実質的に均一な状態とすることを指し、主に射出成形や押出成形など、ペレット形状の成形材料を用いる場合に好ましく用いられる。目的の繊維含有率となるよう、強化繊維を有さない熱可塑性樹脂ペレットを混合してもよいし、目的に応じ難燃剤等の添加物を添加してもよい。
【0048】
本発明の電子機器筐体用部材は、板状部品の周縁領域の少なくとも一部に一体化された熱可塑性樹脂部品を有する。ここで一体化とは、熱可塑性樹脂部品または板状部品、あるいは双方を溶融させた後冷却し接着させる事を指す。周縁領域は板状部品の外周部であるが、熱可塑性樹脂部品との接着力を高めるため、一部が板状部品に重なるように一体化することも好ましい。
【0049】
本発明の電子機器筐体用部材を作製する方法としては、特に限定されないが、例えば、(i)板状部品と熱可塑性樹脂部品を予め別々に成形しておき、両者を接合する方法、(ii)板状部品を予め成形しておき、熱可塑性樹脂部品を成形すると同時に両者を接合する方法、などが挙げられる。
【0050】
(i)の具体例としては、板状部品をプレス成形し、熱可塑性樹脂部品をプレス成形ないし射出成形にて作製する。作製したそれぞれの部材を、熱板溶着、振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着、抵抗溶着、誘導加熱溶着、などの公知の溶着手段により接合する方法などが挙げられる。
【0051】
一方、(ii)の具体例としては、プレス成形により得た板状部品を射出成形金型に配置し、熱可塑性樹脂部品を形成する材料を金型にインサート射出成形またはアウトサート射出成形し、射出成形による成形体である熱可塑性樹脂部品を板状部品に接合する方法などが挙げられる。
【0052】
一体化成形品の量産性の観点からは、好ましいのは(ii)の方法である。熱可塑性樹脂部品の射出成形では、一度の成形で目的の形状にしても良く、射出成形を複数に分けて行っても良いが、成形後の硬化収縮による変形量を低減するため、複数回に分けて実施するのが好ましい。
【0053】
以下では、一例として板状部品と熱可塑性樹脂部品を射出成形で一体化し、本発明の電子機器筐体用部材を作製する方法を示すが、本発明の範囲であれば、一体化の方法は目的にあったものを選定可能であり、限定されない。
【0054】
板状部品を射出成形型にセットし、型締めを行った後、上記で用意した成形材料混合物を、板状部品の周縁部に射出成形し、一体化された熱可塑性樹脂部品を有する電子機器筐体用部材を成形する。板状部品は射出成形型にセットするにあたり、所定の形状・サイズに加工してから使用してもよい。
【0055】
また、繊維強化プラスチックの全周がグラファイトシートの全周より大きく、板状部品の外周面から前記グラファイトシートが露出していないことが重要である。
【0056】
図4に示すように、板状部品を上方視した際、繊維強化プラスチックの表面積が、グラファイトシートの表面積より大きいことが好ましい。このように積層すると、グラファイトシートの全周が繊維強化プラスチックに被覆される。この際、繊維強化プラスチック端部にリブが形成させていると、繊維強化プラスチック同士が直接接合することになる。このため、グラファイトシートに蓄積された熱が板状部品の外周面から放熱されにくくなる。板状部品の周縁領域の少なくとも一部に一体化された熱可塑性樹脂部品に伝熱されにくくなる。
【0057】
また、本発明において、板状部品に含まれる繊維強化プラスチックは、一方向に配向された連続繊維からなる強化繊維を用いた強化繊維層を複数積層し一体化されたものであり、ある1層の強化繊維層を構成する強化繊維の繊維配向と、他層の強化繊維層を構成する強化繊維の繊維配向とが異なる方向に配置されていることが好ましい。
【0058】
連続した強化繊維を用いる場合、高い強度を得るため、強化繊維の配向方向が異なるよう複数積層することも好ましい。異なる方向とは多数本の強化繊維配列方向と別の層の多数本の強化繊維配列方向からなる角度が20°以上あることが好ましく、25°以上がより好ましく、30°以上がさらに好ましい。
【0059】
強化繊維層を複数積層する場合、成形時の変形量差に起因する反りを低減するため、厚み方方向に対称な積層とすることが好ましい。切削加工時に強化繊維に沿ったワレや強化繊維の飛び出しを防ぐ観点から、板状部品の外層は異なる配向方向をからなる強化繊維層が2層以上あることが好ましい。反りを抑制する観点から繊維配向が直交する積層することが好ましい。
また織物を有することも好ましい。
【0060】
ここで
図2は、最外層に強化繊維層3、その内層にも強化繊維層4、グラファイトシート5、強化繊維層4、強化繊維層3の順に積層されている。
【0061】
ここで、最外層に配置された強化繊維層の繊維配向と、その内層に配置された強化繊維層の繊維配向とは直交するように配置されている。この場合、板状部品全体で疑似等方性となり、異方性が発現されることなく、反りのない板状部品を得ることができる。
【0062】
また本発明において、板状部品の厚み方向において、前記グラファイトシートも対称配置されていることが好ましい。
【0063】
強化繊維層の繊維配向が疑似等方であると、前述のとおり反りが発生しにくく、等方的に強度を発現することができる。更に板状部品を構成する層間接着層やグラファイトシートも対称配置されていると、板状部品全体として疑似等方となり、より一層反りが発生しにくく、等方的に強度を発現することができる。
【0064】
また、本発明において、強化繊維が織物である強化繊維層を、板状部品の表面に配置又は板状部品の内部に挿入することが好ましい。
【0065】
一方向の強化繊維を用いた強化繊維層が対称配置であることとは別に、織物である強化繊維層が、板状部品の表面又は板状部品の内部にある一方向の強化繊維を用いた強化繊維層の層間に挿入されていることが好ましい。
【0066】
また、本発明において、板状部品の少なくとも一方の表面に熱可塑性樹脂層を更に配置することが好ましい。
【0067】
熱可塑性樹脂層を設けると、板状部品と熱可塑性部品との密着性向上が期待できる。熱可塑性樹脂層は板状部品として例示した熱可塑性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂を用いる場合は同じものであっても良く、別の熱可塑性樹脂でもよい。板状部品は、目的に応じ金属等の異種材料を含んでもよい。
【0068】
また、本発明において、繊維強化プラスチックの全周がグラファイトシートの全周より大きく、板状部品の外周面から前記グラファイトシートが露出していないことが好ましい。
【0069】
図4に示すように、板状部品の断面図において、グラファイトシートが板状部品の外周面にはみ出さないことが好ましい。換言すれば、板状部品を上方視した際、繊維強化プラスチックの表面積が、グラファイトシートの表面積より大きいことが好ましい。このように積層すると、グラファイトシートの全周が繊維強化プラスチックに被覆され、繊維強化プラスチック端部同士が直接接合することになる。このため、グラファイトシートに蓄積された熱が板状部品の外周面から放熱されにくくなる。板状部品の周縁領域の少なくとも一部に一体化された熱可塑性樹脂部品に伝熱されにくくなる。
【実施例0070】
次に、本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
まず、本実施例で用いる評価方法について説明する。
【0072】
(1)板状部品の厚み(以下、単に厚みと記載する場合がある)
板状部品の4隅と長辺の中央2か所と短辺の中央2か所と、中央の合計9か所を株式会社ミツトヨ製のマイクロメータMDC-25SXで測定し平均した値を板状部品の厚みとする。
【0073】
(2)放熱性測定
成形した板状部品を280mm×150mmの長方形に切り出し、背面中央に坂口電熱株式会社性セラミックヒーターMC2525を貼り付ける。ヒーターに3W負荷した状態で15分放置し板状部品のヒーターを貼り付けた面と反対側の表面温度と、加熱に用いたヒーター表面温度を接触温度計で測定する。測定した温度の内、最高温度をそれぞれ表面温度、ヒーター温度とする。放熱性が良い材料はそれぞれの温度が低くなることから得られた表面温度を以下の基準で評価した。A、Bが合格であり、Cが不合格である。
A:表面温度が40℃未満
B:表面温度が40℃以上50℃未満
C:表面温度が50℃以上
さらに、ヒーター表面温度を以下の基準で評価した。A、Bが合格であり、Cが不合格である。
A:ヒーター温度が85℃未満
B:ヒーター温度が85℃以上95℃未満
C:ヒーター温度が95℃以上
(3)反り測定
板状部品の各辺の反りは、以下の方法により測定した。成形した板状部品を280mm×150mmの長方形に切り出し、板状部品の意匠面を上面とし、板状部品を平坦な場所に接地させ、各辺中央部と接地させた平面との隙間について、隙間ゲージを使用して測定した。隙間に入ったゲージ厚みと、隙間に入らなかったゲージ厚みを0.05mm単位で測定し、隙間に入ったゲージ厚みの最大値を反りの値とした。
【0074】
例えば、0.2mmの隙間ゲージが隙間に入り、0.25mmの隙間ゲージが隙間に入
らなかった場合、隙間の反りは0.2mmとした。
【0075】
更に、反りを以下の基準で評価した。A、Bが合格であり、Cが不合格である。
A:0.2mm未満
B:0.2mm以上1.0mm未満
C:1.0mm以上
(4)切削加工端面の品質
板状部品に幅1mm×長さ10mmの長方形貫通孔を1mmの間隔で10個を2列にわたり加工し計20個の貫通孔加工を行った後、加工された端面を外観検査し、板状部品のワレ、強化繊維の飛び出し、各層間の剥離箇所を不良個所とした。
得られた表面温度を以下の基準で評価した。A、Bが合格であり、Cが不合格である。
A:不良個数が1個以下、かつ1か所あたり10mmを超える不良がない。
B:不良個数が5個未満
C:不良個数が5個以上
(5)材料コスト
東レ(株)製の炭素繊維一方向プリプレグ(”TORAYCA”(登録商標)プリプレグ)P3052S-10(炭素繊維:T700SC、プリプレグ全体100質量%中にエポキシ樹脂33質量%含有、平均単糸径:7.0μm)を2層積層した後、GuangDong Suqun New Material社製のグラファイトシートSQ-H1070を積層し、再度厚み方向に対称な積層になるよう、P3052S-10を2層積層した。なお繊維強化プラスチック成形品の長手方向を0°としたとき、炭素繊維の配向方向を()内に示した積層構成は、最表層から順にプリプレグ(0°)/プリプレグ(90°)/グラファイトシート/プリプレグ(90°)/プリプレグ(0°)となるように積層させた。この積層体のサイズを280mm×150mmとした際の材料価格を比較対象として、同じサイズで比較した際の材料価格の増加率で評価した。評価結果は、以下の基準で評価した。A、Bが合格であり、Cが不合格である。
A:増加率が5%未満
B:増加率が5%以上10%未満
C:増加率が10%以上
(実施例1)
(板状部品の成形方法)
東レ(株)製の炭素繊維一方向プリプレグ(”TORAYCA”(登録商標)プリプレグ)P3052S-10(炭素繊維:T700SC、プリプレグ全体100質量%中にエポキシ樹脂33質量%含有、平均単糸径:7.0μm)を2層積層した後、GuangDong Suqun New Material社製のグラファイトシートSQ-H1070(面内方向熱伝導率1200W/(m・K))を積層し、再度厚み方向に対称な積層になるよう、P3052S-10を2層積層した。なお繊維強化プラスチック成形品の長手方向を0°としたとき、炭素繊維の配向方向を()内に示した積層構成は、最表層から順にプリプレグ(0°)/プリプレグ(90°)/グラファイトシート/プリプレグ(90°)/プリプレグ(0°)となるように積層させた。この積層体を離型フィルムで挟んだものを、プレス成形(金型温度150℃、圧力1.5MPa、硬化時間30分、プレス後の狙い厚み0.4mm)し、板状部品2枚を得た。このとき、グラファイトシートは、板状部品の表面から露出していなかった。
【0076】
得られた板状部品の内1枚は280mm×150mmの長方形に切り出し放熱性を測定した。
別の板状部品は、厚みおよび反り量を測定した後、Roland社製切削加工機MDX-540を用いて幅1mm×長さ10mmの長方形貫通孔を1mmの間隔で10個を2列にわたり加工し計20個の貫通孔加工を行った。切削加工した端面を観察すると、層間の剥離や端面を起点としたワレや繊維の飛び出しがなく良好であった。
【0077】
(熱可塑性樹脂部品との一体化成形)
成形した前記の板状部品を318mm×211mmのサイズに加工し、射出成形金型内にセットし、型締めを行った後、熱可塑性樹脂部材として、ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、“パンライト”(登録商標)GXV-3540UI ガラス繊維含有率40重量%、ポリカーボネート樹脂))を板状部品の周縁部に射出成形した複合成形品を製造した。
【0078】
積層構成、厚み、放熱性、反り量、切削加工端面の測定結果を表1に示す。板状部品の特性をまとめて表1に示す。
【0079】
(実施例2)
板状部品のグラファイトシートをGuangDong Suqun New Material社製のグラファイトシートSQ-H1017(面内熱伝導率2000W/(m・K))に変更し、さらに2層として積層構成を、最表層から順にプリプレグ(0°)/プリプレグ(90°)/グラファイトシート/プリプレグ(90°)/グラファイトシート/プリプレグ(90°)/プリプレグ(0°)となるように積層させた以外は実施例1と同様の方法により、板状部品を成形し、厚み、反り量および放熱性を測定後、切削加工により貫通孔加工を行った。その後周縁部に熱可塑性樹脂部材を射出成形した複合成形品を製造した。板状部品の特性をまとめて表1に示す。
【0080】
(実施例3)
前記板状部品の厚み方向中央に発泡ポリプロピレン(古川電気工業株式会社製、RC2008W)から構成される発泡コア層を配し、グラファイトシートとプリプレグとコア層からなる積層構成を、最表層から順にプリプレグ(0°)/プリプレグ(90°)/グラファイトシート/プリプレグ(90°)/発泡コア層/プリプレグ(90°)/グラファイトシート/プリプレグ(90°)/プリプレグ(0°)となるように積層させた後、この積層体を離型フィルムで挟み、プレス成形下金型に載置した。プレス成形下金型には、外周部に1.3mmのスペーサを挿入した。プレス成形上金型をセットした後、盤面温度150℃の盤面の上に配置し、盤面を閉じて面圧1.5MPaで加熱プレスした。加圧から30分間経過した後、盤面を開き、室温で冷却した。冷却後、厚み1.6mmの板状部品2枚を得た。実施例1と同様の方法により、放熱性の測定と、厚みおよび反り量を測定後、切削加工により貫通孔加工を行った。その後周縁部に熱可塑性樹脂部材を射出成形した複合成形品を製造した。板状部品の特性をまとめて表1に示す。
【0081】
(実施例4)
多孔質基材として、不連続繊維(東レ株式会社製、T700S、炭素繊維の数平均繊維長5mm)と熱可塑性樹脂(ポリプロピレン)、不連続繊維の重量含有量30重量%からなる不連続繊維コア層を準備した。
【0082】
前記板状部品の厚み方向中央に前記不連続繊維コア層を配し、グラファイトシートとプリプレグとコア層からなる積層構成は、最表層から順にプリプレグ(0°)/プリプレグ(90°)/グラファイトシート/プリプレグ(90°)/不連続繊維コア層/プリプレグ(90°)/グラファイトシート/プリプレグ(90°)/プリプレグ(0°)となるように積層させた後、実施例4と同様、この積層体を離型フィルムで挟み、プレス成形下金型に載置した。プレス成形下金型には、外周部に1.4mmのスペーサを挿入した。プレス成形上金型をセットした後、盤面温度150℃の盤面の上に配置し、盤面を閉じて面圧1.5MPaで加熱プレスした。加圧から30分間経過した後、盤面を開き、室温で冷却した。冷却後、厚み1.4mmの板状部品2枚を得た。実施例1と同様の方法により、放熱性の測定と、厚みおよび反り量を測定後、切削加工により貫通孔加工を行った。その後周縁部に熱可塑性樹脂部材を射出成形した複合成形品を製造した。板状部品の特性をまとめて表1に示す。
【0083】
(実施例5)
プリプレグのサイズを300×170mm、グラファイトシートのサイズを260mm×130mmとし、さらに貫通孔加工を行う予定の場所にグラファイトシートを配置しないように積層した後、実施例1と同様の成形方法により板状部品2枚を得た。
【0084】
得られた板状部品の内1枚はグラファイトシートの各辺が最外層のプリプレグの各辺から凡そ10mm内側になるよう280mm×150mmの長方形に切り出し、切削端面にグラファイトシートが露出しない板状部品として放熱性を測定した。
別の板状部品は、厚みおよび反り量を測定した後、実施例1と同様の方法により、厚み、反り量および放熱性を測定後、切削加工により貫通孔加工を行った。その後周縁部に熱可塑性樹脂部材を射出成形した複合成形品を製造した。板状部品の特性をまとめて表1に示す。
【0085】
(比較例1)
グラファイトシートを用いず、積層構成を最表層から順にプリプレグ(0°)/プリプレグ(90°)/プリプレグ(90°)/プリプレグ(0°)となるように積層させた以外は実施例1と同様の方法により、板状部品を成形し、厚み、反り量および放熱性を測定後、切削加工により貫通孔加工を行った。その後周縁部に熱可塑性樹脂部材を射出成形した複合成形品を製造した。板状部品の特性をまとめて表1に示す。
【0086】
(比較例2)
グラファイトシートを最表層に配し、積層構成を最表層から順にグラファイトシート/プリプレグ(0°)/プリプレグ(90°)/プリプレグ(90°)/プリプレグ(0°)となるように積層させた以外は実施例1と同様の方法により、板状部品を成形し、厚み、反り量および放熱性を測定後、切削加工により貫通孔加工を行った。その後周縁部に熱可塑性樹脂部材を射出成形した複合成形品を製造した。板状部品の特性をまとめて表1に示す。
【0087】
(比較例3)
グラファイトシートを積層せず、積層構成を、最表層から順にプリプレグ(0°)/プリプレグ(90°)/プリプレグ(90°)/発泡コア/プリプレグ(90°)/プリプレグ(90°)/プリプレグ(0°)
となるように積層させた後、実施例4と同様、この積層体を離型フィルムで挟み、プレス成形下金型に載置した。プレス成形下金型には、外周部に1.3mmのスペーサを挿入した。プレス成形上金型をセットした後、盤面温度150℃の盤面の上に配置し、盤面を閉じて面圧1.5MPaで加熱プレスした。加圧から30分間経過した後、盤面を開き、室温で冷却した。冷却後、厚み1.3mmの板状部品2枚を得た。実施例1と同様の方法により、放熱性の測定と、厚みおよび反り量を測定後、切削加工により貫通孔加工を行った。その後周縁部に熱可塑性樹脂部材を射出成形した複合成形品を製造した。板状部品の特性をまとめて表1に示す。
【0088】
(比較例4)
グラファイトシートを積層せず、積層構成を、最表層から順にプリプレグ(0°)/プリプレグ(90°)/プリプレグ(90°)/不連続繊維コア層/プリプレグ(90°)/プリプレグ(90°)/プリプレグ(0°)となるように積層させた後、実施例4と同様、この積層体を離型フィルムで挟み、プレス成形下金型に載置した。プレス成形下金型には、外周部に1.4mmのスペーサを挿入した。プレス成形上金型をセットした後、盤面温度150℃の盤面の上に配置し、盤面を閉じて面圧1.5MPaで加熱プレスした。加圧から30分間経過した後、盤面を開き、室温で冷却した。冷却後、厚み1.4mmの板状部品2枚を得た。実施例1と同様の方法により、放熱性の測定と、厚みおよび反り量を測定後、切削加工により貫通孔加工を行った。その後周縁部に熱可塑性樹脂部材を射出成形した複合成形品を製造した。板状部品の特性をまとめて表1に示す。
【0089】
(参考例1)
ポリエステル樹脂(東レ・デュポン(株)社製“ハイトレル”(登録商標)4057)を二軸押出機のホッパーから投入し、押出機にて溶融混練した後、T字ダイから押出した。その後、60℃のチルロールで引き取ることによって冷却固化させ、厚み0.05mmのポリエステル樹脂フィルムを得た。これを層間接着層とした。
【0090】
グラファイトシートと強化繊維層の間に前記層間接着層を配し、積層構成を、最表層から順にプリプレグ(0°)/プリプレグ(90°)/層間接着層/グラファイトシート/層間接着層/プリプレグ(90°)/プリプレグ(0°)となるように積層させた以外は実施例1と同様の方法により、板状部品を成形し、厚み、反り量および放熱性を測定後、切削加工により貫通孔加工を行った。その後周縁部に熱可塑性樹脂部材を射出成形した複合成形品を製造した。板状部品の特性をまとめて表1に示す。
【0091】
本発明により、電子機器筐体として良好な放熱性と寸法精度を有する電子機器筐体用部材を得ることができ、パソコン、OA機器、AV機器、家電製品などの電気・電子機器の部品や筐体に広く利用することができるが、その応用範囲は、これらに限られるものではない。