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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025093077
(43)【公開日】2025-06-23
(54)【発明の名称】作業装置の制御装置、及び、制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/14 20060101AFI20250616BHJP
【FI】
B25J9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208582
(22)【出願日】2023-12-11
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義人
(72)【発明者】
【氏名】平野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】長井 隆浩
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS27
3C707BS09
3C707CY13
3C707HS13
3C707KS21
3C707KV15
3C707LU09
3C707LV22
(57)【要約】
【課題】長時間連続して使用した場合であっても制御精度を保つ。
【解決手段】制御装置100は、作業装置(ロボット900)の関節部901を駆動させるピストン902に液体を介して圧力を伝送する液圧伝送チューブ108と、液体に圧力を印加する圧力印加手段(ポンプ110)と、液体の圧力値を計測する圧力計104と、液体の流量値を計測する流量計103と、予め用意されたチューブ変形パラメタを用いて液体の圧力値に応じた液体の流量変動値を算出して液体の流量値を補正するチューブ変形補正部106と、補正後の流量値から関節角度を推定する関節角度推定部105と、圧力印加開始前の流量値の計測値と圧力印加終了後の流量値の計測値から現在のチューブ変形量を算出して、チューブ変形パラメタを校正するパラメタ校正部(チューブ変形パラメタ校正部120)と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置の関節部を駆動させるピストンに液体を介して圧力を伝送する液圧伝送チューブと、
前記液体に圧力を印加する圧力印加手段と、
前記液体の圧力値を計測する圧力計と、
前記液体の流量値を計測する流量計と、
予め用意されたチューブ変形パラメタを用いて前記液体の圧力値に応じた液体の流量変動値を算出して前記液体の流量値を補正するチューブ変形補正部と、
補正後の流量値から関節角度を推定する関節角度推定部と、
圧力印加開始前の前記流量値の計測値と圧力印加終了後の前記流量値の計測値から現在のチューブ変形量を算出して、前記チューブ変形パラメタを校正するパラメタ校正部と、を有する
ことを特徴とする作業装置の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業装置の制御装置において、
前記パラメタ校正部は、前記ピストンを動作させることで関節角度の上限角度パラメタと下限角度パラメタを取得して、前記上限角度パラメタと前記下限角度パラメタを用いて前記チューブ変形パラメタを校正する
ことを特徴とする作業装置の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の作業装置の制御装置において、
前記パラメタ校正部は、現在のクリープコンプライアンスと、前記液体に任意の時間圧力をかけ続けた場合に取得されるクリープコンプライアンスとを比較することで、前記チューブ変形パラメタを校正する
ことを特徴とする作業装置の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の作業装置の制御装置において、
前記パラメタ校正部は、前記液体に圧力をかける前と前記液体から圧力を抜いた後の流量値の差から計測される残留クリープと圧力の計測値から推定される推定歪み量とを比較することで、前記チューブ変形パラメタを校正する
ことを特徴とする作業装置の制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の作業装置の制御装置において、
チューブ変形パラメタを記憶するチューブ変形パラメタ記憶部と、
任意の情報を外部機器に出力する出力部と、を有し、
前記チューブ変形パラメタ記憶部は、前記チューブ変形パラメタのクリープコンプライアンスの各係数値と初期状態とを比較した結果を時系列で記憶しており、
前記出力部は、前記チューブ変形パラメタのクリープコンプライアンスの各係数値が閾値を超える場合の予想時間を外部機器に出力する
ことを特徴とする作業装置の制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の作業装置の制御装置において、
警告を外部機器に出力する警告部を有し、
前記警告部は、前記チューブ変形パラメタのクリープコンプライアンスの各係数値と初期状態とを比べて閾値を超えた時に、警告を外部機器に出力する
ことを特徴とする作業装置の制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の作業装置の制御装置において、
前記液圧伝送チューブの液温を計測する温度計を有し、
前記チューブ変形補正部は、前記温度計で計測された液温に応じた温度補正係数によるクリープコンプライアンスを校正する
ことを特徴とする作業装置の制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の作業装置の制御装置において、
前記液圧伝送チューブを覆う保温材を有し、
前記保温材は、前記液圧伝送チューブと外気とを隔離して、前記液圧伝送チューブ内の液体と前記外気との間で熱の移動が発生することを抑制する
ことを特徴とする作業装置の制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載の作業装置の制御装置において、
前記液圧伝送チューブの品質の劣化を判定する劣化判定部を有する
ことを特徴とする作業装置の制御装置。
【請求項10】
液体を介して圧力がピストンに伝送されることで駆動する関節部を有する作業装置の制御方法であって、
圧力印加手段によって前記液体に印加された圧力を液圧伝送チューブを介して前記ピストンに伝送する圧力伝送工程と、
予め用意されたチューブ変形パラメタを用いて前記液体の圧力値に応じた液体の流量変動値を算出して前記液体の流量値を補正するチューブ変形補正工程と、
補正後の流量値から関節角度を推定する関節角度推定工程と、
圧力印加開始前の前記流量値の計測値と圧力印加終了後の前記流量値の計測値から現在のチューブ変形量を算出して、前記チューブ変形パラメタを校正するパラメタ校正工程と、を含む
ことを特徴とする作業装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置の制御装置、及び、制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間が直接作業することが困難な場所に対して、遠隔でロボット(作業装置)を操作して作業を行う遠隔制御システムが提供されている。人間が直接作業することが困難な場所での作業としては、例えば、高放射線量等の過酷環境下での作業があり、その一例として、原子力発電所での廃炉作業や宇宙空間での作業等がある。このような過酷環境下でロボットに作業を行わせようとすると、ロボットの駆動に用いるステップモータや制御に用いる半導体センサ等の精密なエレクトロニクス機器が放射線に弱いため、長時間使用することが困難である。そのため、モータやセンサ等のエレクトロニクス機器を極力使用しない遠隔制御システムの提供が望まれている。そこで、液圧システムによりピストンを駆動させて、ピストンに連動してロボットの関節部を動作させる遠隔制御システムが提案されている。この遠隔制御システムは、長いチューブを介して制御装置からピストンに液体を送り込み、送り込んだ液体の流量(液量)を制御装置が管理することで、ロボットの関節部の開閉角度(関節角度)を制御する。このような遠隔制御システムは、安全な環境である遠隔地に制御装置を設置することができる。また、モータやセンサ等のエレクトロニクス機器の点数を低減することができる。
【0003】
遠隔制御システムでは、作業空間でロボットを自由に動作させるために、柔軟な樹脂製のチューブが使用される。しかしながら、樹脂は、液体の圧力を受けることにより、弾性変形や粘性変形を起こしてしまう特性がある。弾性変形は、圧力が除荷されれば直ぐに回復して元の形状に戻る。しかしながら、粘性変形は、回復に時間がかかり、また可塑変形が残ることで元の形状に戻らなくなる可能性もある。制御装置は、ロボットの動作制御を精度よく行うために、このようなチューブの特性を考慮して、ピストンに送り込む液体の流量(液量)を補正する。
【0004】
この種の技術に関連して、例えば特許文献1に開示されたものがある。特許文献1は、予めアームのクリープ変形による撓み量を累積時間に対応付けて記憶し、実際に動作した累積時間を計測して、記憶した撓み量に基づいて、ロボットモデルを補正する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6989542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、例えば、想定外の圧力の印加が発生したり圧力の計測誤差が発生したりすると、予め記憶した撓み量と累積時間による撓み量との間に誤差が発生する。この場合に、時間とともに誤差が蓄積し、補正ずれが拡大していく。そのため、長時間連続してロボット(作業装置)を使用した場合に、制御精度を保つことが難しい。特に高放射線量等の過酷環境下では、誤差が蓄積し易く、補正ずれが拡大し易い。そのため、特に高放射線量等の過酷環境下では、制御精度を保つことが非常に難しい。
【0007】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、長時間連続して使用した場合であっても、制御精度を保つ作業装置の制御装置、及び、制御方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、作業装置の制御装置であって、作業装置の関節部を駆動させるピストンに液体を介して圧力を伝送する液圧伝送チューブと、前記液体に圧力を印加する圧力印加手段と、前記液体の圧力値を計測する圧力計と、前記液体の流量値を計測する流量計と、予め用意されたチューブ変形パラメタを用いて前記液体の圧力値から前記液体の流量値を補正するチューブ変形補正部と、補正後の流量値から関節角度を推定する関節角度推定部と、圧力印加開始前の前記流量値の計測値と圧力印加終了後の前記流量値の計測値から現在のチューブ変形量を算出して、前記チューブ変形パラメタを校正するパラメタ校正部と、を有する構成とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長時間連続して使用した場合であっても、制御精度を保つ作業装置の制御装置、及び、制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る制御装置を備える遠隔作業システムの概略構成図である。
図2】制御装置の動作の一例を表すフローチャートである。
図3】液圧伝送チューブの変形例の説明図である。
図4】制御装置の駆動機構の模式構成図である。
図5A】流量の変動履歴の一例を示す説明図である。
図5B】液圧伝送チューブの歪みによる流量値ドリフトの時間変化の説明図である。
図6】第2実施形態に係る制御装置を備える遠隔作業システムの概略構成図である。
図7】第3実施形態に係る制御装置を備える遠隔作業システムの概略構成図である。
図8】コンピュータのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0012】
[第1実施形態]
<制御装置の構成>
以下、図1を参照して、本第1実施形態に係る制御装置100を備える遠隔作業システム1000の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る制御装置100を備える遠隔作業システム1000の概略構成図である。制御装置100は、ロボット900の動作全体を制御する構成要素である。ロボット900は、様々な場所で作業を行う作業装置である。ここでは、ロボット900が高放射線量等の過酷環境下で作業を行う作業装置である場合を想定して説明する。
【0013】
図1に示すように、ロボット900は、関節部901を有している。関節部901は、複数設けられている。関節部901は、液圧伝送チューブ108を介して制御装置100から送り込まれる液体の圧力(液圧)でピストン902が作動することにより駆動する。ここでは、液体が水であり、液圧が水圧である場合を想定して説明する。ただし、液体は、水に限らず、油等の様々な液状のものを利用することができる。
【0014】
なお、液圧伝送チューブ108は、圧力が印加された液体(水)を伝送する部材である。液圧伝送チューブ108は、長尺な中空円筒状の形状を呈している。液圧伝送チューブ108は、柔軟な樹脂によって構成される。そのため、液圧伝送チューブ108は、弾性変形だけでなく、粘性変形する特性がある。弾性変形と粘性変形については、後記する。
【0015】
制御装置100は、ポンプ110と流量計103とを接続する箇所に液圧伝送チューブ108bを有している。また、制御装置100は、流量計103とピストンシリンダ102とを接続する箇所に液圧伝送チューブ108aを有している。
【0016】
制御装置100は、制御装置100の各部の動作を制御する制御部101を備えている。制御部101は、出力部101aと、警告部101bとを有している。制御部101は、記憶手段に格納されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)が実行することにより、これらの各機能(制御部100(出力部101a、警告部101b)の他、関節角度推定部105、チューブ変形補正部106等)を実現する。
【0017】
出力部101aは、任意の情報を、表示部(入出力装置)や外部のコンピュータ等の外部機器に出力する構成要素である。出力部101aは、例えば、チューブ変形パラメタのクリープコンプライアンスの各係数値が事前に定められた閾値を超える場合の予想時間を外部機器に出力する。ここで、「チューブ変形パラメタのクリープコンプライアンスの各係数値が閾値を超える場合の予想時間」とは、液圧伝送チューブ108が劣化したとみなされる予測時間を意味する。このような制御装置100は、液圧伝送チューブ108が劣化したとみなされる予測時間を外部機器に出力することができる。
【0018】
警告部101bは、警告を外部機器に出力する構成要素である。警告部101bは、例えば、チューブ変形パラメタのクリープコンプライアンスの各係数値と初期状態とを比べて閾値を超えた時に、警告を外部機器に出力する。ここで、「チューブ変形パラメタのクリープコンプライアンスの各係数値が閾値を超える時」とは、液圧伝送チューブ108が劣化したとみなされる時を意味する。このような制御装置100は、液圧伝送チューブ108が劣化した場合に警告を外部機器に出力することができる。
【0019】
また、制御装置100は、ピストンシリンダ102と、流量計103と、圧力計104と、関節角度推定部105と、チューブ変形補正部106と、チューブ変形パラメタ記憶部107と、ポンプ110と、チューブ変形パラメタ校正部120と、を有している。制御装置100は、記憶手段に格納されたプログラムをCPUが実行することにより、関節角度推定部105、チューブ変形補正部106、チューブ変形パラメタ記憶部107、チューブ変形パラメタ校正部120等の各機能を実現する。
【0020】
ピストンシリンダ102は、制御装置100からロボット900に送り出す液量を調節する構成要素である。ピストンシリンダ102は、シリンダとシリンダ内に摺動可能に配置されたピストン302(図4)を有する。ピストンシリンダ102は、液圧伝送チューブ108を介して内部に圧力を受けた液体が流入すると、ピストン302(図4)がシリンダ内を移動する。ピストンシリンダ102は、ピストン302(図4)の移動に応じて液圧を機械的な力に変換して外部に伝達する。ロボット900の関節部901は、ピストンシリンダ102と機械的に接続されている。ロボット900は、ピストンシリンダ102と関節部901とが組み合わされることで動作する。つまり、ロボット900のアームやその他のリンクは、ピストンシリンダ102と関節部901とが組み合わされることで動作する。
【0021】
流量計103は、液体の流量値を計測する構成要素である。流量計103は、液圧伝送チューブ108内を流れる液量、又は、液量に換算可能な値をアナログ信号又はデジタル信号として出力する。
【0022】
圧力計104は、液体の圧力値を計測する構成要素である。圧力計104は、液圧伝送チューブ108の内部を流れる液圧を計測して、デジタル信号又はアナログ信号として出力する。
【0023】
関節角度推定部105は、液体の流量値から関節角度を推定する構成要素である。関節角度推定部105は、流量計103で計測された液量に対し、ピストンシリンダ102及び関節部901の構造に応じた演算を行う。これにより、関節角度推定部105は、関節部901の角度(関節確度)を推定する。ここでは、関節角度で説明するが、推定する物理量は角度に限定されない。例えば、関節角度推定部105は、推定する物理量として、直線往復移動量等の、関節構造に関する物理量を推定することができる。
【0024】
チューブ変形補正部106は、液圧伝送チューブ108に関する様々な値を補正する構成要素である。チューブ変形補正部106は、例えば、圧力計104で計測される圧力値を用いて、液圧伝送チューブ108aの歪み量を推定する。そして、チューブ変形補正部106は、チューブ変形パラメタ記憶部107を用いて、液圧伝送チューブ108aの歪み量を補正する。
【0025】
チューブ変形パラメタ記憶部107は、チューブ変形パラメタを記憶する構成要素である。チューブ変形パラメタ記憶部107は、チューブ変形パラメタのクリープコンプライアンスの各係数値と初期状態とを比較した結果を時系列で記憶する。チューブ変形パラメタ記憶部107は、少なくとも、クリープコンプライアンス、チューブ長、チューブ内径等のパラメータを含んでいる。
【0026】
ポンプ110は、液体に圧力を印加する(かける)加圧手段構成要素である。
チューブ変形パラメタ校正部120は、チューブ変形パラメタを校正する構成要素である。チューブ変形パラメタ校正部120は、液体に圧力をかける前と液体から圧力を抜いた後の流量値の差から液圧伝送チューブ108の変形量を算出し、液圧伝送チューブ108の変形量に応じて、チューブ変形パラメタを校正する。その際に、チューブ変形パラメタ校正部120は、圧力計104で計測される圧力値と、流量計103で計測される流量値と、チューブ変形パラメタ記憶部107を用いて、現在の(実際の)液圧伝送チューブ108の変形状態を評価する。
【0027】
<制御装置の動作>
以下、図2を参照して、制御装置100の動作について説明する。図2は、制御装置100の動作の一例を表すフローチャートである。
【0028】
図2に示すように、制御装置100は、ロボット900(作業装置)の駆動時に、制御部101により、ポンプ110を駆動して液体(水)に圧力を印加する(かける)。そして、制御装置100は、液体を介してピストン902に圧力を伝送する(ステップS1)。これにより、制御装置100は、ロボット900の関節部901を駆動する。制御装置100は、送り込んだ液体の流量(液量)を管理することで、ロボット900の関節部901の駆動を制御する。
【0029】
ステップS1の後、制御装置100は、チューブ変形補正部106により、チューブ変形補正を行う(ステップS2)。このとき、チューブ変形補正部106は、チューブ変形パラメタ記憶部107に予め記憶されたチューブ変形パラメタを用いて、液体の圧力値に応じた液体の流量変動値を算出して液体の流量値を補正する。
【0030】
ステップS2の後、制御装置100は、関節角度推定部105により、補正後の流量値からロボット900の関節部901における関節角度を推定する(ステップS3)。
【0031】
ステップS3の後、制御装置100は、チューブ変形パラメタ校正部120により、圧力印加開始前の流量値の計測値と圧力印加終了後の流量値の計測値から現在のチューブ変形量を算出して、チューブ変形パラメタを校正する(ステップS4)。
【0032】
<液圧伝送チューブの変形例>
以下、図3を参照して、液圧伝送チューブ108の変形例について説明する。図3は、液圧伝送チューブ108の変形例の説明図である。
【0033】
図3に示すように、液圧伝送チューブ108は、加圧された液体の圧力を受けることにより、弾性変形や粘性変形を起こす。図3は、左から右に向けて、無変形状態、弾性膨張状態、クリープ膨張状態、クリープ伸展状態、残留クリープ状態の5つの状態における液圧伝送チューブ108の形状を示している。
【0034】
(1)左から1番目の無変形状態の例では、液圧伝送チューブ108の内部に、弾性変形が発生していない。
(2)左から2番目の弾性膨張状態の例では、液圧伝送チューブ108の内部に、弾性変形が発生している(液圧伝送チューブ108の直径は増大しているが肉厚は減少している)。弾性変形は圧力が除荷されれば直ぐに回復する。そのため、液圧伝送チューブ108は元の形状(左から1番目の形状)に戻る。
(3)左から3番目のクリープ膨張状態の例では、液圧伝送チューブ108の内部に、軽度の粘性変形が発生している。粘性変形は圧力が除荷されるとゆっくりと回復する。そのため、液圧伝送チューブ108はゆっくりと元の形状(左から1番目の形状)に戻る。
(4)左から4番目のクリープ伸展状態の例では、液圧伝送チューブ108の内部に、中程度の粘性変形が発生している。この状態の粘性変形は圧力が除荷されるとさらにゆっくりと回復する。そのため、液圧伝送チューブ108はさらにゆっくりと元の形状(左から1番目の形状)に戻る。
(5)左から5番目の残留クリープ状態の例では、液圧伝送チューブ108の内部に、重度の粘性変形が発生している。この状態の粘性変形は圧力が除荷されても可塑変形が残る。そのため、液圧伝送チューブ108は元の形状(左から1番目の形状)に戻らない。
【0035】
<制御装置の駆動機構>
以下、図4を参照して、制御装置100の駆動機構について説明する。図4は、制御装置100の駆動機構の模式構成図である。
【0036】
図4に示すように、制御装置100は、ポンプ110とピストンシリンダ102との間に、ロボット900の関節部901を駆動する駆動系統として、1つの関節部901につき2系統の液圧駆動機構を有する。ここでは、流量計103a(流量計A)が設けられている側の系統を「A系統」と称し、流量計103b(流量計B)が設けられている側の系統を「B系統」と称するものとする(以下、同様)。なお、図1は、A系統とB系統のうち、片側の系統(例えばA系統)の構成のみを抽出して示している。そのため、制御装置100は、ポンプ110とピストンシリンダ102との間に、A系統と同様の構成をB系統側に有している。
【0037】
図4に示す例では、制御装置100は、ポンプ110とピストンシリンダ102との間に、弁310cを有する。弁310cは、A系統側とB系統側とに流路を切り替える構成要素である。
【0038】
制御装置100は、弁310cから分岐して、A系統の構成要素として、弁310aと、流量計103aと、ポテンションメータ320aと、圧力計104aと、を有している。弁310aは、流量計103a側と大気側とに流路を切り替える構成要素である。また、制御装置100は、弁310cから分岐して、B系統の構成要素として、弁310bと、流量計103bと、ポテンションメータ320bと、圧力計104bと、を有している。弁310bは、流量計103b側と大気側とに流路を切り替える構成要素である。
【0039】
流量計103aとピストンシリンダ102とは、樹脂チューブである液圧伝送チューブ108aにより接続され、流量計103a内のピストン303aとピストンシリンダ102内のピストン302は連動して動作する。同様に、流量計103bとピストンシリンダ102とは、樹脂チューブである液圧伝送チューブ108bにより接続され、流量計103b内のピストン303bとピストンシリンダ102内のピストン302は連動して動作する。
【0040】
制御装置100は、ロボット900の駆動時に、制御部101により、弁310a~310cを連動して開閉させる。これにより、制御装置100は、A系統の流路とB系統の流路の開閉動作及び開閉量を制御する。その結果、ポンプ110で加圧された液体がA系統の流路又はB系統の流路に流入する。
【0041】
加圧された液体をA系統側に流す場合に、弁310aをA系統の流量計103a側に開放するとともに、弁310bを大気側に開放する。これにより、A系統側の流路の圧力が大気圧となり、破線矢印に沿って液体が流れる。また、加圧された液体をB系統側に流す場合に、弁310aを大気側に開放するとともに、弁310bをB系統の流量計103b側に開放する。これにより、B系統側の流路の圧力が大気圧となり、実線矢印に沿って液体が流れる。
【0042】
各流量計103a,103bには、ピストン303a,303bの位置に連動するポテンションメータ320a,320bが接続されている。ポテンションメータ320a,320bは、流量計103a,103bのピストン303a,303bの移動量を計測する。
【0043】
制御装置100は、流量計103a,103bのシリンダの有効断面積とピストン303a,303bの移動量の積により液体の流量を算出することができる。流量計103a,103bによって測定された液体の流量の測定値は、ピストンシリンダ102に流れ込む液体の流量に関連する。ピストンシリンダ102のピストン302は、関節部901に機械的に接続され、その移動量に比例して関節部901を動作させる。そのため、制御装置100は、関節角度推定部105により、流量計103a,103bで計測された流量値から、ロボット900の関節部901の関節角度を推定することができる。
【0044】
ただし、液圧伝送チューブ108a,108bは、柔軟な樹脂で構成された樹脂チューブである。そのため、液圧伝送チューブ108a,108bは、加圧された液体の圧力を受けることにより、弾性変形や粘性変形を起こす。液圧伝送チューブ108a,108bの弾性変形分は、圧力が除荷されれば、直ぐに元に戻る。しかしながら、加圧が長期化して粘性変形が発生し、残留クリープが発生すると、液圧伝送チューブ108a,108bのクリープによる可塑変形分は、圧力が除荷されても、元に戻らない。そのため、液圧伝送チューブ108a,108bにクリープによる可塑変形が発生した場合に、液体の流量が変動する。
【0045】
以下に、この点について、図5A及び図5Bを用いて説明する。ここでは、A系統側の構成要素を例にして説明する。ここでは、制御装置100はA系統側とB系統側とに液圧駆動動作を交互に繰り返し行っているものとして説明する。
【0046】
図5Aは、流量の変動履歴の一例を示す説明図である。図5Aは、一例として、A系統側のポテンションメータ320aによる計測値の変化を示している。ポテンションメータ320aの計測値は、流量計103aのピストン303aの動きに連動している。
【0047】
図5Aに示す例では、ポテンションメータ320aの計測値の波形は、上部の平坦なエリア(上部平坦エリア401)と下部の平坦なエリア(下部平坦エリア402)とが交互に出現する内容になっている。上部平坦エリア401は、流量計103aのピストン303aがピストンシリンダ102に最も接近したタイミングを示している。下部平坦エリア402は、流量計103aのピストン303aがピストンシリンダ102から最も離間したタイミングを示している。
【0048】
図5Aに示す例において、○印に注目したとき、上部平坦エリア401が0mm付近に存在する。また、×印に注目したとき、下部平坦エリア402が-11mm付近に存在する。○印は、上部平坦エリア401における最大値の位置を表している。また、×印は、下部平坦エリア402における最小値の位置を表している。○印及び×印は、いずれもロボット900の関節部901の関節角度の可動域の端点を示しており、圧力をかけても関節部901がそれ以上動作できない状態になっている。ポンプ圧は一定(例えば約3.5MPa)になっている。上部平坦エリア401及び下部平坦エリア402では、ロボット900の関節部901を駆動させるピストン902に一定の圧力が印加され続ける。
【0049】
ポテンションメータ320aの計測値の波形は、ロボット900の関節部901の動きに関連する。ここでは、ポテンションメータ320aの計測値が上部平坦エリア401の値になっている場合にロボット900の関節部901が開き、計測値が下部平坦エリア402の値になっている場合にロボット900の関節部901が閉じるものとして説明する。ただし、ロボット900の関節部901の動きは逆向きに変更することができる。つまり、ポテンションメータ320aの計測値が上部平坦エリア401の値になっている場合にロボット900の関節部901が閉じ、計測値が下部平坦エリア402の値になっている場合にロボット900の関節部901が開くようにすることができる。
【0050】
図5Bは、液圧伝送チューブ108aの歪みによる流量値ドリフトの時間変化を示している。図5Bに示す例において、〇印及び×印は、各上部平坦エリア401内の最大値及び各下部平坦エリア402の最小値を抽出し、縦軸スケールを拡大してプロットしたものである。図5Bにおいて、下段のプロットに示すように、A系統側とB系統側とに液圧駆動動作を交互に繰り返し行う度に、徐々に流量計103aの値はシフトする(ずれる)。これにより、例えば、最大値と最小値とが、ともに約0.5mm程シフトする。最初の位置と最後の位置をつないだ破線の直線に対し、初期のシフト量(ずれ量)は、一旦大きくずれるが、その差は徐々に小さくなる。
【0051】
<チューブ変形パラメタの校正>
樹脂チューブのような固体高分子は複雑な粘弾性的挙動を示す。粘弾性挙動の典型的なタイプとして、一定歪み下で応力が時間とともに緩和する応力緩和現象と、一定応力下で時間とともに歪みが進展するクリープ現象がある。これらの現象を表す特性値として、緩和時間分布関数、遅延時間分布関数が用いられる。緩和現象は、一定の歪みに対して時間とともに応力が変化する。そのため、弾性率が時間とともに変化するものとすると、緩和時間関数H(τ)により、応力変化を一定歪みで除算した緩和弾性率Er(t)は、以下の式(1)で表される。
【数1】


【0052】
ここで、τは、時定数を表し、さまざまな時定数による指数関数的減衰の線形和となる。同様に、応力一定の条件で歪みの時間変化を、一定応力で除した値をクリープコンプライアンスJc(t)と定義すると、遅延時間分布関数L(τ)により、クリープコンプライアンスJc(t)は、以下の式(2)で表される。
【数2】


【0053】
液圧伝送チューブ108の内径をR1、r1=(R1/2)とし、半径方向歪みをγとすると、液圧伝送チューブ108の原型からの体積変化ΔVtは、以下の式(3)で表される。
【数3】


【0054】
ここでγには弾性変形とクリープ変形の両者が含まれる。ピストンシリンダ102の有効断面積をSrとし、総ストローク量をLrとし、関節部901の可動範囲をθwとし、関節角度変位をθとすれば、ロボット900の関節部901の角度変位に応じた液量Vrは、以下の式(4)で表される。
【数4】


【0055】
流量計シリンダの有効断面積をSfとし、流量計ポテンションメータの変位をxとすれば、液量Vは、以下の式(5)で表される。
【数5】


【0056】
ここで、液量Vは、それぞれの系でピストンシリンダ102に流入した液量Vrに、液圧伝送チューブ108が応力変形により膨張した分の体積変化ΔVtの和であるため、液量Vは、以下の式(6)で表される。
【数6】


【0057】
ここで、体積変化ΔVtについて式(6)を変形すると、体積変化ΔVtは、以下の式(7)で表される。
【数7】


【0058】
式(3)と式(7)より、ロボット900の関節部901を介した液圧伝送チューブ108の歪みγは、以下の式(8)で表される。
【数8】


【0059】
クリープコンプライアンスJc(t)は、一定応力時の応力Sで歪みを除したもので定義される。実際には連続的に分布した時定数を持つが、有限個の時定数による指数関数の和で近似することを考慮すると、クリープコンプライアンスJc(t)は、以下の式(9)で表される。
【数9】

【0060】
ここで、応力が時間変化する関数σ(t)として与えられたとき、歪みγ(t)は、Boltzmannの重ね合わせの原理により、以下の式(10)で表される。なお、「ボルツマンの重ね合わせ原理」とは、材料の変形は小さな変形のステップに分けることができため、各ステップは独立した応答を示すと仮定すると、材料の変形量は材料の力学的性質の時間・温度変化を各ステップの応答関数に単純に重ね合わせたものになる、というものである。
【数10】


【0061】
変形状態の評価について、例えば、関節部901が機械的にこれ以上動作できないときに、関節角度が一意に決まる。そのため、制御装置100は、ピストンシリンダ102内に存在する液量が確定したときに、変形状態の評価を行う。そして、チューブ変形パラメタのずれが大きければ、チューブ変形パラメタを校正(修正)する。
【0062】
その際に、例えば、チューブ変形パラメタ校正部120は、ピストンを動作させることで関節角度の上限角度パラメタと下限角度パラメタを取得して、上限角度パラメタと下限角度パラメタを用いてチューブ変形パラメタを校正する。このような制御装置100は、ロボット900の姿勢によって流量が変わる値、又は、流量が安定する値を得ることができる。
【0063】
チューブ変形パラメタ校正部120は、クリープコンプライアンスに基づいて、チューブ変形パラメタを校正することができる。例えば、チューブ変形パラメタ校正部120は、現在のクリープコンプライアンスと、液体に任意の時間圧力をかけ続けた場合のクリープコンプライアンス(圧力付与後のクリープコンプライアンス)を取得する。そして、チューブ変形パラメタ校正部120は、現在のクリープコンプライアンスと圧力付与後のクリープコンプライアンスとを比較して変化量を算出する。チューブ変形パラメタ校正部120は、クリープコンプライアンスの変化量に応じて、チューブ変形パラメタを校正する。
【0064】
あるいは、チューブ変形パラメタ校正部120は、液体に圧力をかける前と液体から圧力を抜いた後の流量値の差から残留クリープを計測するようにしてもよい。そして、流量値の差から計測される残留クリープと、圧力の計測値から推定される推定歪み量とを比較する。これにより、チューブ変形パラメタ校正部120は、残留クリープと推定歪み量とに応じて、チューブ変形パラメタを校正する。具体的には、チューブ変形パラメタ校正部120は、液体に圧力をかける前と液体から圧力を抜いた後の流量値の差から計測される残留クリープと圧力の計測値から推定される推定歪み量とを比較する。これにより、チューブ変形パラメタ校正部120は、チューブ変形パラメタの校正を行う。
【0065】
<制御装置の主な特徴>
本実施形態に係る制御装置100は、以下のような特徴を有する構成にすることができる。
【0066】
(1)図1に示すように、本実施形態に係る制御装置100は、液圧伝送チューブ108と、ポンプ110(圧力印加手段)と、圧力計104と、流量計103と、を有する。また、制御装置100は、チューブ変形補正部106と、関節角度推定部105と、チューブ変形パラメタ校正部120と、を有する。液圧伝送チューブ108は、作業装置であるロボット900の関節部901を駆動させるピストン902に液体(水)を介して圧力を伝送する構成要素である。ポンプ110は、液体に圧力を印加する構成要素である。圧力計104は、液体の圧力値を計測する構成要素である。流量計103は、液体の流量値を計測する構成要素である。チューブ変形補正部106は、予め用意されたチューブ変形パラメタを用いて液体の圧力値に応じた液体の流量変動値を算出して液体の流量値を補正する構成要素である。関節角度推定部105は、液体の流量値から関節角度を推定する構成要素である。チューブ変形パラメタ校正部120は、圧力印加開始前の流量値の計測値と圧力印加終了後の流量値の計測値から現在のチューブ変形量を算出して、チューブ変形パラメタを校正する構成要素である。
【0067】
このような本実施形態に係る制御装置100は、チューブ変形パラメタを校正することができる。また、制御装置100は、関節角度を計測するセンサが放射能の影響を受け易いので、そのセンサを不要にすることができる。また、制御装置100は、中空な樹脂チューブである液圧伝送チューブ108の変形によるズレを補正することができる。また、制御装置100は、関節部の動作精度を向上させることができる。
【0068】
(2)本実施形態に係る制御装置100において、チューブ変形パラメタ校正部120は、ピストン902を動作させることで関節角度の上限角度パラメタと下限角度パラメタを取得するようにしてもよい。そして、チューブ変形パラメタ校正部120は、上限角度パラメタと下限角度パラメタを用いてチューブ変形パラメタを校正するようにしてもよい。
【0069】
このような本実施形態に係る制御装置100は、ロボット900の姿勢によって流量が変わる値、又は、流量が安定する値を得ることができる。
【0070】
(3)本実施形態に係る制御装置100において、チューブ変形パラメタ校正部120は、クリープコンプライアンスの変化量に応じて、チューブ変形パラメタを校正するようにしてもよい。この構成では、チューブ変形パラメタ校正部120は、現在のクリープコンプライアンスと、液体に任意の時間圧力をかけ続けた場合に取得されるクリープコンプライアンスとを比較して変化量を算出する。そして、チューブ変形パラメタ校正部120は、クリープコンプライアンスの変化量に応じて、チューブ変形パラメタを校正する。
【0071】
このような本実施形態に係る制御装置100は、クリープコンプライアンスの変化量に応じて、チューブ変形パラメタを校正することができる。
【0072】
(4)本実施形態に係る制御装置100において、チューブ変形パラメタ校正部120は、残留クリープと推定歪み量とに応じて、チューブ変形パラメタを校正するようにしてもよい。この構成では、チューブ変形パラメタ校正部120は、液体に圧力をかける前と液体から圧力を抜いた後の流量値の差から計測される残留クリープと、圧力の計測値から推定される推定歪み量とを比較する。そして、チューブ変形パラメタ校正部120は、残留クリープと推定歪み量とに応じて、チューブ変形パラメタを校正する。
【0073】
このような本実施形態に係る制御装置100は、残留クリープと推定歪み量とに応じて、チューブ変形パラメタを校正することができる。
【0074】
(5)図1に示すように、本実施形態に係る制御装置100は、チューブ変形パラメタを記憶するチューブ変形パラメタ記憶部107と、任意の情報を外部機器に出力する出力部101aと、を有する。チューブ変形パラメタ記憶部107は、チューブ変形パラメタのクリープコンプライアンスの各係数値と初期状態とを比較した結果を時系列で記憶している。出力部101aは、チューブ変形パラメタのクリープコンプライアンスの各係数値が閾値を超える場合の予想時間を外部機器に出力する。
【0075】
このような本実施形態に係る制御装置100は、液圧伝送チューブ108が劣化したとみなされる予測時間を外部に出力することができる。
【0076】
(6)図1に示すように、本実施形態に係る制御装置100は、警告を外部機器に出力する警告部を有する。警告部は、チューブ変形パラメタのクリープコンプライアンスの各係数値と初期状態とを比べて閾値を超えた時に、警告を出力する。
【0077】
このような本実施形態に係る制御装置100は、液圧伝送チューブ108が劣化した場合に警告を外部機器に出力することができる。
【0078】
また、図2に示すように、本実施形態では、液体を介して圧力がピストン902に伝送されることで駆動する関節部901を有するロボット900(作業装置)の制御方法を提供することができる。この制御方法は、圧力伝送工程と、チューブ変形補正工程と、関節角度推定工程と、パラメタ校正工程と、を含む内容になっている。圧力伝送工程は、ポンプ110(圧力印加手段)によって液体に印加された圧力を液圧伝送チューブ108を介してピストン902に伝送する工程である。チューブ変形補正工程は、予め用意されたチューブ変形パラメタを用いて液体の圧力値に応じた液体の流量変動値を算出して液体の流量値を補正する工程である。関節角度推定工程は、補正後の流量値から関節角度を推定する工程である。パラメタ校正工程は、圧力印加開始前の流量値の計測値と圧力印加終了後の流量値の計測値から現在のチューブ変形量を算出して、チューブ変形パラメタを校正する工程である。
【0079】
このような本実施形態に係る制御方法は、チューブ変形パラメタを校正することができる。また、制御方法は、関節角度を計測するセンサが放射能の影響を受け易いので、そのセンサを不要にすることができる。また、制御方法は、中空な樹脂チューブである液圧伝送チューブ108の変形によるズレを補正することができる。また、制御方法は、関節部の動作精度を向上させることができる。
【0080】
以上の通り、本第1実施形態に係る制御装置100によれば、長時間連続して使用した場合であっても、制御精度を保つことができる。また、樹脂チューブのクリープ歪みによる補正を行い、関節角度を推定することができる。
【0081】
[第2実施形態]
以下、図6を参照して、第2実施形態に係る制御装置100Aを備える遠隔作業システム1000Aの構成について説明する。図6は、第2実施形態に係る制御装置100Aを備える遠隔作業システム1000Aの概略構成図である。
【0082】
第2実施形態に係る遠隔作業システム1000Aは、第1実施形態に係る遠隔作業システム1000(図1)と比較すると、制御装置100Aに、温度計201及び保温材202のいずれか一方又は双方を有する点で相違する。
【0083】
温度計201は、液圧伝送チューブ108a内の液度(水温)を計測する構成要素である。本実施形態では、液体が水であるので、温度計201は水温を計測する水温計で構成される。
【0084】
チューブ変形補正部106は、例えば、予め用意されたチューブ変形パラメタを用いて液体の圧力値に応じた液体の流量変動値を算出して液体の流量値を補正する。また、チューブ変形補正部106は、例えば、温度計201で計測された液温を用いて、クリープコンプライアンスの温度シフト補正を行うことができる。つまり、チューブ変形補正部106は、温度計で計測された液温に応じた温度補正係数を用いてクリープコンプライアンスを校正することができる。このような制御装置100Aは、液圧伝送チューブ内の液温を計測して、温度補正を行うことができる。また、制御装置100Aは、温度変化による誤差を補正したり抑制したりすることができる。
【0085】
保温材202は、液圧伝送チューブ108を覆う構成要素である。保温材202は、液圧伝送チューブ108と外気とを隔離して、液圧伝送チューブ108内の液体と外気との間で熱の移動が発生することを抑制する。これにより、制御装置100Aは、液圧伝送チューブ108内の液温を比較的長く安定させることができる。
【0086】
また、制御装置100Aは、保温材202を液圧伝送チューブ108に巻いて(覆って)いる。これにより、制御装置100Aは、液圧伝送チューブ108が長くて温度変化のある個所を経由したとしても、温度計201で計測される液圧伝送チューブ108内の液温と、実際の液圧伝送チューブ108内の温度分布との差を小さくすることができる。
【0087】
クリープコンプライアンスは、液圧伝送チューブ108に用いるナイロン等の素材は、温度変化により、時定数が一律に変化する特徴を持つ。制御装置100Aは、チューブ変形パラメタとして、クリープコンプライアンスの温度変化係数を予め取得しておき、温度変化に応じてクリープコンプライアンスを調整することができる。
【0088】
図6に示すように、本第2実施形態に係る制御装置100Aは、液圧伝送チューブ108内の液温を計測する温度計201を有する。チューブ変形補正部106は、温度計201で計測された液温に応じた温度補正係数を用いてクリープコンプライアンスを校正する。つまり、チューブ変形補正部106は、温度計201で計測された液温を用いて、クリープコンプライアンスの温度シフト補正を行う。
【0089】
このような本実施形態に係る制御装置100Aは、液圧伝送チューブ108内の液温を計測して、温度補正を行うことができる。また、制御装置100Aは、温度変化による誤差を補正したり抑制したりすることができる。
【0090】
また、図6に示すように、本第2実施形態に係る制御装置100Aは、液圧伝送チューブ108を覆う保温材を有する。保温材は、液圧伝送チューブ108と外気とを隔離して、液圧伝送チューブ108内の液体と外気との間で熱の移動が発生することを抑制する。
【0091】
このような本実施形態に係る制御装置100Aは、液圧伝送チューブ108内の液温を比較的長く安定させることができる。
【0092】
以上の通り、本第2実施形態に係る制御装置100Aによれば、第1実施形態に係る制御装置100と同様に、長時間連続して使用した場合であっても、制御精度を保つことができる。しかも、第1実施形態に係る制御装置100と異なり、液温(水温)が変動した場合であっても、樹脂チューブのクリープ歪みによる補正を行い、関節角度を推定することができる。
【0093】
[第3実施形態]
以下、図7を参照して、第3実施形態に係る制御装置100Bを備える遠隔作業システム1000Bの構成について説明する。図7は、第3実施形態に係る制御装置100Bを備える遠隔作業システム1000Bの概略構成図である。
【0094】
第3実施形態に係る遠隔作業システム1000Bは、第1実施形態に係る遠隔作業システム1000(図1)と比較すると、制御装置100Bに、劣化判定部501と表示部502を有する点で相違する。劣化判定部501は、液圧伝送チューブ108の品質の劣化を判定する構成要素である。
【0095】
チューブ変形パラメタ記憶部107は、液圧伝送チューブ108(樹脂チューブ)の品質の劣化を判定するための劣化チューブ変形パラメタを予め記憶しておく。劣化チューブ変形パラメタは、チューブ変形パラメタの初期値と、予め取得しておいた樹脂チューブの品質状態(例えば、良好、要点検、要交換、使用不可等)に紐づく閾値(関連付けされた閾値)を含む内容になっている。
【0096】
劣化判定部501は、校正されたチューブ変形パラメタと初期値とを比較し、劣化チューブ変形パラメタに基づいて、液圧伝送チューブ108の品質を判定する。校正されたチューブ変形パラメタと初期値との差が前記した樹脂チューブの品質状態に紐づく閾値を超えた場合に、劣化判定部501は、液圧伝送チューブ108に劣化が発生したと判定する。この場合に、劣化判定部501は、液圧伝送チューブ108の品質状態を表示部502に表示する。
【0097】
以上の通り、本第3実施形態に係る制御装置100Bによれば、他の実施形態に係る制御装置100,100Aと同様に、長時間連続して使用した場合であっても、制御精度を保つことができる。また、樹脂チューブのクリープ歪みによる補正を行い、関節角度を推定することができる。さらに、他の実施形態に係る制御装置100,100Aと異なり、液圧伝送チューブ108(樹脂チューブ)の品質の劣化状態を判定して、警告を表示することができる。
【0098】
図8は、コンピュータ980のブロック図である。
図1図6等に示した制御装置100やロボット900は、図8に示すコンピュータ980を、1台または複数台備えている。
図8において、コンピュータ980は、CPU981と、記憶部982と、通信I/F(インタフェース)983と、入出力I/F984と、メディアI/F985と、を備える。ここで、記憶部982は、RAM982aと、ROM982bと、HDD982cと、を備える。通信I/F983は、通信回路986に接続される。入出力I/F984は、入出力装置987に接続される。入出力装置987は、キーボード、マウス等を備えている。メディアI/F985は、記録媒体988からデータを読み書きする。
【0099】
ROM982bには、CPUによって実行されるIPL(Initial Program Loader)等が格納されている。HDD982cには、制御プログラムや各種データ等が記憶されている。CPU981は、HDD982cからRAM982aに読み込んだ制御プログラム等を実行することにより、各種機能を実現する。
【0100】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成を加えることも可能である。また、各構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0101】
100 制御装置
101 制御部
101a 出力部
101b 警告部
102 ピストンシリンダ
103,103a,103b 流量計
104,104a,104b 圧力計
105 関節角度推定部
106 チューブ変形補正部
107 チューブ変形パラメタ記憶部
108a,108b 液圧伝送チューブ(圧力伝送チューブ)
110 ポンプ(圧力印加手段)
120 チューブ変形パラメタ校正部(パラメタ校正部)
201 温度計(水温計)
202 保温材
302 ピストン
303a,303b ピストン
310a,310b,310c 弁
320a,320b ポテンションメータ
401 上部平坦エリア
402 下部平坦エリア
501 劣化判定部
502 表示部
900 ロボット(作業装置)
901 関節部
902 ピストン
1000 遠隔作業システム
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8