(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009311
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】操作性を高めたホイールドーリー
(51)【国際特許分類】
B60B 29/00 20060101AFI20250110BHJP
B62B 3/10 20060101ALI20250110BHJP
B60B 30/10 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B60B29/00 K
B62B3/10 D
B60B30/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112227
(22)【出願日】2023-07-07
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】511094336
【氏名又は名称】株式会社テクネット
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】片井 修
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA36
3D050BB01
3D050BB26
3D050DD02
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050HH04
3D050JJ01
3D050KK11
(57)【要約】
【課題】大型車等の車輪を、ホイールドーリーを使って脱着する際、作業者が、ホイールドーリーの主たる作業位置から移動することなく、後方手許位置で車輪の保持作業が行えるようにした、操作性を高めた新規なホイールドーリーの開発を課題とする。
【解決手段】本発明の操作性を高めたホイールドーリーCは、移動自在の基台1と、昇降架台2と、車輪を支承するための左右一対のラックアーム25と、このラックアーム25上の車輪Wの側部にあてがわれるタイヤホルダ3とを具え、更にタイヤホルダ3は、各ラックアーム25に対し可動状態に支持されるホルダロッド31を具え、このホルダロッド31には前方にホールド片32が設けられ、且つ後方側にホルダ操作片33が設けられ、ホルダロッド31は、ラックアーム25に沿って前後方向に摺動自在、且つホルダロッド31の軸心回りに回動自在に支持されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能に構成された基台と、
この基台に昇降自在に支持される昇降架台とを具え、
当該昇降架台には、車輪支承用のラックアームが一対平行に設けられるとともに、
この一対のラックアームにより形成される支承空間に支承される車輪の側部にあてがうタイヤホルダを具えるものであり、
このタイヤホルダは、各ラックアームに対して可動状態に支持されるホルダロッドを具え、
このホルダロッドには前方部位にホールド片が設けられるとともに、後方手許側にホルダ操作片が設けられ、
前記ホルダロッドは、ラックアームに沿って前後方向に摺動自在、且つホルダロッドの軸心回りに回動自在に支持されていることを特徴とする、操作性を高めたホイールドーリー。
【請求項2】
前記一対のラックアームは、対向する内側に、車輪を転動支承する支承ローラを具えていることを特徴とする請求項1記載の、操作性を高めたホイールドーリー。
【請求項3】
前記各ラックアームに設けられるタイヤホルダは、ダブルタイヤ状態の車輪を支承する構成において、車輌の車幅方向外側に取り付けられている外車輪に作用する外車輪用タイヤホルダと、車輌の車幅方向内側に取り付けられている内車輪に作用する内車輪用タイヤホルダとを具えていることを特徴とする請求項1または2記載の、操作性を高めたホイールドーリー。
【請求項4】
前記内車輪用タイヤホルダのホルダロッドは、後方手許位置からラックアーム前端側まで伸びる全長寸法を有するものであり、
一方、外車輪用タイヤホルダのホルダロッドは、後方手許位置から前方に向かい、前記内車輪用のホルダロッドよりも短い長さ寸法を有し、
且つ内車輪用のホルダロッドは、外車輪用のホルダロッドに対し、入れ子状に内嵌めされていることを特徴とする請求項3記載の、操作性を高めたホイールドーリー。
【請求項5】
前記ラックアームの手許側には、ホイールドーリーを移動させる際の操向ポストが直立状態に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の、操作性を高めたホイールドーリー。
【請求項6】
前記操向ポストは、前記ホルダロッドを回動自在または摺動自在に支持する支持孔を下方に具える構成であることを特徴とする請求項5記載の、操作性を高めたホイールドーリー。
【請求項7】
前記操向ポストには、ホルダロッドを固定するクランプボルトが設けられていることを特徴とする請求項6記載の、操作性を高めたホイールドーリー。
【請求項8】
前記外車輪用のホルダロッドに対し、内車輪用のホルダロッドを入れ子状に内嵌めした構成において、
前記操向ポストには、外車輪用のホルダロッドを固定するクランプボルトが設けられるとともに、
前記外車輪用のホルダロッドには、内車輪用のホルダロッドを固定するクランプボルトが設けられることを特徴とする請求項4記載の、操作性を高めたホイールドーリー。
【請求項9】
前記ホルダロッドを回動または摺動させるためのホルダ操作片は、ホルダロッドから径方向外側に突出するように形成されたレバー状のものであって、ホルダ操作片とホールド片とは、ホルダロッドの回動軸から視て同じ方向に突出するように形成されることを特徴とする請求項1または2記載の、操作性を高めたホイールドーリー。
【請求項10】
前記ラックアームは、断面L字状の剛性部材で構成され、
左右一対のラックアームは、断面L字状の内側であるフトコロ部が、互いに内向き状に対向するように配置され、このフトコロ部に支承ローラが設けられるとともに、フトコロ部の外側にホルダロッドが設けられることを特徴とする請求項2記載の、操作性を高めたホイールドーリー。
【請求項11】
前記ホールド片を起立させて車輪の側部にあてがう際には、
当該ホールド片を支承空間に入り込むように回動させた後、更にこのホールド片を、前記ラックアームの断面L字の上端部に当接させて、ホールド片の起立位置を設定・維持する構成であることを特徴とする請求項10記載の、操作性を高めたホイールドーリー。
【請求項12】
前記支承ローラは、これに外嵌めされるとともに支承作用位置から手許側に退去できるように構成されたキャリーアップスリーブを具えていることを特徴とする請求項2記載の、操作性を高めたホイールドーリー。
【請求項13】
前記基台は、左右一対のラックアームの中央部位を昇降自在に支持するシングルポストタイプであり、
且つ前記昇降架台は、当該基台に対し平面視で回転自在に設けられることを特徴とする請求項1または2記載の、操作性を高めたホイールドーリー。
【請求項14】
前記基台は、左右一対のラックアームを、左右直立状態に配置したポストフレームに対し昇降自在とした、フォークリフト状のパラレルポストタイプであることを特徴とする請求項1または2記載の、操作性を高めたホイールドーリー。
【請求項15】
前記基台は、ストール床面に敷設されたレール上を、車輌の前後方向に移動する移動架台上に設けられ、且つ基台が移動架台上を車輌の幅方向に移動自在に構成されることを特徴とする請求項1または2記載の、操作性を高めたホイールドーリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型トラックをはじめとする自動車等を整備するにあたり、例えば車輪周りを点検する際に、取り外した車輪を支承するホイールドーリーに関するものであって、特に作業者の負担軽減のみならず、支承した車輪の保持を確実にした、新規な操作性と安全性を高めたホイールドーリーに係るものである。
【背景技術】
【0002】
トラックをはじめとして一般の乗用車等を含む車輌の整備にあたっては、作業者の負担を軽減したり、正確な作業ができるようにしたりするため、車輌の要整備個所が作業者の手許近く、あるいは目視しやすい位置にあることが好ましい。このため従来から車輪や車軸等の低位置にある部材を整備対象とするにあたっては、車輌をリフトアップし、点検や部品交換等を行い易くして作業が進められている。その際、例えば車輪等を取り外すにあたっては、それらを支承するためホイールドーリーが用意され、作業者の負担を軽減することが行われている。
【0003】
このような作業者の負担軽減や、より安全な作業環境の確保などを考慮して、本出願人は、ホイールドーリーについて多くの開発を行い、既に多くは下記先行技術文献に示すように特許取得に至っている(例えば特許文献1~5参照)。
これらの先行技術は、特に作業の安全性確保を前提として、多彩な使用方法を可能とすることを技術課題の一つとしている。
すなわち、作業の安全性確保の視点からは、ホイールドーリー上に車輪を支承するにあたって、車輪の転倒や落輪を確実に回避することが求められている。そのため、ホイールドーリー上に載せた車輪の立設状態を維持するタイヤホルダについて、多くの開発が進められ、好評裏に車輌の点検・整備サービス現場で受け入れられている。
【0004】
しかしながら、従来手法によれば、多くのタイヤホルダの設定作業は、ホイールドーリーの一般的な後部操作位置から、ホイールドーリーの左右側部に作業者が回り込んで、タイヤホルダの設定作業を行わねばならず、作業能率の視点からは、未だ改良の余地があった。具体的には、ホイールドーリーによる車輪の支承作業、すなわち移載作業は、
(1) ホイールドーリーを車輌側面に対向状態に配置するよう移動させる。移動のためのハ ンドルや把手は、ホイールドーリーの後方側に設けられており、ホイールドーリーの移 動は、作業者がハンドルをホールドしながら後方から押すように前進させて移動させる 。逆に言えば移動用のハンドルや把手が設けられている方を、ホイールドーリーの後方 位置(後方側)と称している。
(2) ホイールドーリーを車輌幅方向に沿って前進させて、ホイールドーリーのラックアー ムを車輪下方に差し込む。
(3) ラックアームを扛上(上昇)させてラックアームに車輪を支承させる。
(4) ホイールドーリーを車輌幅方向に沿って後退させ、車輌から車輪を取り外す。
このような作業手順を経るため、作業者の主たる操作位置は、ホイールドーリーの後方位置となっている(これを後方手許側または後方手許位置と称することがある)。
【0005】
そして、このような移載作業を安全に行うためには、ホイールドーリーに移載した車輪をラックアーム上に確実に保持しなければならない。特にシングルタイヤ(単輪)の場合は、外部的な支えがない状態で安定的に自立(直立)させることが困難であるため、ラックアーム上に立設されるタイヤガードに強固に保持することが望ましく、これにはラックアーム上に立設されるタイヤガードに車輪をもたれ掛けさせるように傾倒させて、ラックアーム上で車輪を保持するのが一般的となっている。
しかしながら、ラックアーム上で車輪を傾倒させておくだけでは、ホイールドーリーを移動させる際などに、車輪が落下する懸念があるため、安全ベルトや鎖(チェーン)などを使用し、タイヤガードに車輪を捕縛する掛け回し手法が提供されている。
【0006】
ただし、その作業は面倒なため、現実はほとんど実行されていなかった。すなわち、このような掛け回し作業は、本来、車輪を車軸やハブから取り外す前に行うことが望ましいが、車輪周辺にはフェンダーやタイヤハウスなどがあるため、これが邪魔になって、車輪を外す前に掛け回し作業を行うことは非常に面倒である。そのため実際には、車輪を車軸やハブから取り外し、ホイールドーリーを車輌から後方(車輌側方)に引き抜いてから、安全ベルトやチェーンを掛け回すしかなかった。
しかし、このようにしても、タイヤ自体が円形であるため、作業者が掛け回したと思っても、外れてしまうこともあり、このようなことから、現実には、ほとんど掛け回し作業は、実行されていなかった。
そのため、掛け回し手法を採らなくても、ラックアーム上で車輪を安全確実に保持できる手法が求められ、とりわけ作業者がホイールドーリーの後方手許側に居ながら、車輪を保持できる手法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5825872号公報
【特許文献2】特許第6108712号公報
【特許文献3】特許第608854号公報
【特許文献4】特許第6109386号公報
【特許文献5】特許第7106618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、整備・点検作業を行う作業者が、ホイールドーリーの主たる作業位置から移動することなく、言わば後方手許位置で車輪の保持作業が完結できるようにした新規な操作性を高めたホイールドーリーを開発することを技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
まず請求項1記載の、操作性を高めたホイールドーリーは、
移動可能に構成された基台と、
この基台に昇降自在に支持される昇降架台とを具え、
当該昇降架台には、車輪支承用のラックアームが一対平行に設けられるとともに、
この一対のラックアームにより形成される支承空間に支承される車輪の側部(サイドウォール部)にあてがうタイヤホルダを具えるものであり、
このタイヤホルダは、各ラックアームに対して可動状態に支持されるホルダロッドを具え、
このホルダロッドには前方部位にホールド片が設けられるとともに、後方手許側にホルダ操作片が設けられ、
前記ホルダロッドは、ラックアームに沿って前後方向に摺動自在、且つホルダロッドの軸心回りに回動自在に支持されていることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項2記載の、操作性を高めたホイールドーリーは、請求項1記載の要件に加え、
前記一対のラックアームは、対向する内側に、車輪を転動支承する支承ローラを具えていることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項3記載の、操作性を高めたホイールドーリーは、請求項1または2記載の要件に加え、
前記各ラックアームに設けられるタイヤホルダは、ダブルタイヤ状態の車輪を支承する構成において、車輌の車幅方向外側に取り付けられている外車輪に作用する外車輪用タイヤホルダと、車輌の車幅方向内側に取り付けられている内車輪に作用する内車輪用タイヤホルダとを具えていることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項4記載の、操作性を高めたホイールドーリーは、請求項3記載の要件に加え、
前記内車輪用タイヤホルダのホルダロッドは、後方手許位置からラックアーム前端側まで伸びる全長寸法を有するものであり、
一方、外車輪用タイヤホルダのホルダロッドは、後方手許位置から前方に向かい、前記内車輪用のホルダロッドよりも短い長さ寸法を有し、
且つ内車輪用のホルダロッドは、外車輪用のホルダロッドに対し、入れ子状に内嵌めされていることを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項5記載の、操作性を高めたホイールドーリーは、請求項1または2記載の要件に加え、
前記ラックアームの手許側には、ホイールドーリーを移動させる際の操向ポストが直立状態に設けられていることを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項6記載の、操作性を高めたホイールドーリーは、請求項5記載の要件に加え、
前記操向ポストは、前記ホルダロッドを回動自在または摺動自在に支持する支持孔を下方に具える構成であることを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項7記載の、操作性を高めたホイールドーリーは、請求項6記載の要件に加え、
前記操向ポストには、ホルダロッドを固定するクランプボルトが設けられていることを特徴として成るものである。
【0016】
また請求項8記載の、操作性を高めたホイールドーリーは、請求項4記載の要件に加え、
前記外車輪用のホルダロッドに対し、内車輪用のホルダロッドを入れ子状に内嵌めした構成において、
前記操向ポストには、外車輪用のホルダロッドを固定するクランプボルトが設けられるとともに、
前記外車輪用のホルダロッドには、内車輪用のホルダロッドを固定するクランプボルトが設けられることを特徴として成るものである。
【0017】
また請求項9記載の、操作性を高めたホイールドーリーは、請求項1または2記載の要件に加え、
前記ホルダロッドを回動または摺動させるためのホルダ操作片は、ホルダロッドから径方向外側に突出するように形成されたレバー状のものであって、ホルダ操作片とホールド片とは、ホルダロッドの回動軸から視て同じ方向に突出するように形成されることを特徴として成るものである。
【0018】
また請求項10記載の、操作性を高めたホイールドーリーは、請求項2記載の要件に加え、
前記ラックアームは、断面L字状の剛性部材で構成され、
左右一対のラックアームは、断面L字状の内側であるフトコロ部が、互いに内向き状に対向するように配置され、このフトコロ部に支承ローラが設けられるとともに、フトコロ部の外側にホルダロッドが設けられることを特徴として成るものである。
【0019】
また請求項11記載の、操作性を高めたホイールドーリーは、請求項10記載の要件に加え、
前記ホールド片を起立させて車輪の側部にあてがう際には、
当該ホールド片を支承空間に入り込むように回動させた後、更にこのホールド片を、前記ラックアームの断面L字の上端部に当接させて、ホールド片の起立位置を設定・維持する構成であることを特徴として成るものである。
【0020】
また請求項12記載の、操作性を高めたホイールドーリーは、請求項2記載の要件に加え、
前記支承ローラは、これに外嵌めされるとともに支承作用位置から手許側に退去できるように構成されたキャリーアップスリーブを具えていることを特徴として成るものである。
【0021】
また請求項13記載の、操作性を高めたホイールドーリーは、請求項1または2記載の要件に加え、
前記基台は、左右一対のラックアームの中央部位を昇降自在に支持するシングルポストタイプであり、
且つ前記昇降架台は、当該基台に対し平面視で回転自在に設けられることを特徴として成るものである。
【0022】
また請求項14記載の、操作性を高めたホイールドーリーは、請求項1または2記載の要件に加え、
前記基台は、左右一対のラックアームを、左右直立状態に配置したポストフレームに対し昇降自在とした、フォークリフト状のパラレルポストタイプであることを特徴として成るものである。
【0023】
また請求項15記載の、操作性を高めたホイールドーリーは、請求項1または2記載の要件に加え、
前記基台は、ストール床面に敷設されたレール上を、車輌の前後方向に移動する移動架台上に設けられ、且つ基台が移動架台上を車輌の幅方向に移動自在に構成されることを特徴として成るものである。
そして、これら各請求項記載の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0024】
まず請求項1記載の発明によれば、タイヤに作用するホールド片を、ホルダロッドを介して前後にスライドさせたり回動させたりする場合、ホールド片の操作片(ホルダ操作片)が、ホイールドーリーの後方側(作業者の手許側)に臨むように取り付けられているから、ホールド片の前後スライド操作及び回動操作は、作業者が立ち位置を変えずに行うことができる。具体的には、例えば作業者が手許近くに位置するホルダ操作片を外回り状に回動させれば、ホルダロッドを介して一体化されたホールド片も外回り状に回動させて起立状態にすることができる。またホールド片を最大限回動起立させた状態で、ホルダ操作片を手前に引けば、ホルダロッドを介してホールド片をタイヤ側部(サイドウォール部)に当てることができ、ホールド片を確実にタイヤにあてがうようにすることができる。
【0025】
また請求項2記載の発明によれば、ラックアーム上に載せた車輪を、転動させる支承ローラを具えるため、一本約100kgになるタイヤでもラックアーム上において容易に且つ確実に回転させることができる。このため例えば車輪を車軸側に取り付ける場合、車輪側のボルト孔位置が、車軸側のボルト位置に対し幾らかずれていても、車輪を支承ローラ上で回転させることで、これらの位置合わせが容易に行え、スムーズに作業が行える。
【0026】
また請求項3記載の発明によれば、タイヤホルダは、内車輪用と外車輪用とが設けられ、内車輪用はラックアームの先端寄りの位置に設けられ、外車輪用はラックアームにおいて中間部位に設けられる。このため例えばダブルタイヤ状態の車輪を一輪ずつ取り外す作業、すなわち最初に外車輪を取り外し、その後、内車輪を取り外す作業を行う際、双方のタイヤホルダを別々に作用させることにより、容易に各車輪を取り外すことができ、取り外した車輪をラックアーム上に安全確実に保持することができる。またホイール付きの外車輪を一輪だけラックアームに移載する場合には、外車輪が前方側に傾き易いが、外車輪用のタイヤホルダを作用させることにより、外車輪の直立状態(自立状態)を維持しながら移載することができる。因みに、前方側(内車輪用)のタイヤホルダは、内車輪の取り外しの際に作用させるだけでなく、ハブ付きダブルタイヤを車軸から取り外す際に、ラックアームからのタイヤのズレ止めやズレ落ちを防止するストッパとしても機能させることができる。
【0027】
また請求項4記載の発明によれば、タイヤホルダは、内車輪用のホルダロッドと、外車輪用のホルダロッドとが入れ子状に組み合わせて構成されるため、タイヤホルダ(ホルダロッド)をコンパクトに構成することができる。
【0028】
また請求項5記載の発明によれば、ラックアームの手許側に直立状態の操向ポストが設けられるから、例えばラックアームに載せた車輪を操向ポストに傾倒させて支持することができ、操向ポストをタイヤガードとしても機能させることができる。また、操向ポストを具えるため、例えばラックアーム上に車輪を載せる際、タイヤホルダと操向ポストとの間で車輪を圧着状態に挟み込むような支持も行える。
【0029】
また請求項6記載の発明によれば、操向ポストにホルダロッドの支持孔が設けられるため、操向ポストをホルダロッドの支持部材としても機能させることができる。
【0030】
また請求項7記載の発明によれば、操向ポストに、ホルダロッドを固定するクランプボルトが設けられるため、ホルダロッドを固定するロック構造がシンプルな機構の下に具体的に構成される。
【0031】
また請求項8記載の発明によれば、外車輪用の大径筒状のホルダロッドに対し、内車輪用の小径筒状のホルダロッドを入れ子状に内嵌めした構成において、操向ポストには、外車輪用のホルダロッドを固定するクランプボルトを設けるとともに、外車輪用のホルダロッドには、ここに内嵌めされた内車輪用のホルダロッドを固定するクランプボルトを設けるため、外車輪用のホルダロッドと、内車輪用のホルダロッドとを独立して且つ強固に固定することができる。
【0032】
また請求項9記載の発明によれば、ホルダロッドの両端に設けられるホールド片と、ホルダ操作片との取付位相、すなわちホルダロッドに対する取付角度が、同じ向きに設定されるため、作業者はホールド片が見えなくても、タイヤのホールドまたは解除を確実に認識することができる。具体的にはホルダロッドの手許側端部に設けられたホルダ操作片を回動及びスライドさせて、上記ホルダロッドのもう一端部に設けられたホールド片をタイヤの奥側の側部にあてがう際、たとえラックアーム上に移載した車輪に隠れてホールド片の位置(位相角)が目視できなくても、ホールド片の位相は、ホルダ操作片と同じであるため、手許のホルダ操作片の位相角によってホールド片の位相角を認識することができ、タイヤのホールド作業や解除作業が、作業者の立ち位置から確実に行うことができる。
【0033】
また請求項10記載の発明によれば、ラックアームの具体的構成の他、当該ラックアーム、支承ローラ、タイヤホルダ(ホルダロッド)の配置などを具体的なものとする。
【0034】
また請求項11記載の発明によれば、ホールド片を支承空間に入り込むように最大限回動させて起立状態(車輪の側部にあてがった状態)とする際、ホールド片を、ラックアームの断面L字の上端部に当接させて、この起立状態を維持するものである。このため本来、車輪を保持するためのラックアームを、ホールド片の回動ストッパとしても機能させることができる。
なお、ラックアームの断面L字の上端は、前後方向において均一な位置になるため、前後方向のどの位置においても、ホールド片を最大限回動起立させた角度は、ホールド片がほぼ同じ傾倒姿勢となり、ほぼ同じ静止姿勢を保持することができる。また、ラックアームに車輪を載せた状態では、作業者からホールド片が目視できないことが多いが、ホールド片をラックアーム(断面L字の上端部)に当接させて起立状態を維持する上記構成では、ホールド片をラックアームに当接させた音によって(ホルダ操作片の位相角に加え)、ホールド片が最大限回動起立したことを、認識することができる。
【0035】
また請求項12記載の発明によれば、手許側(後方側)の支承ローラには、キャリーアップスリーブが外嵌め状態に設けられるため、例えばダブルタイヤ状態の外車輪を一輪だけ取り外す場合、外車輪だけを、このキャリーアップスリーブで支承することにより、内車輪はキャリーアップスリーブの肉厚寸法分、支承ローラから間隙を設けて離開させることができ、外車輪のみを確実に取り外すことができる。
【0036】
また請求項13記載の発明によれば、シングルポストタイプの基台に対し、昇降架台が水平回転自在に設けられるため、作業者は立ち姿勢のままタイヤの脱着作業やタイヤの水平回転作業が行え、当該脱着作業中に立ったり、しゃがんだりする動作を行わずに済み、作業者の負担を軽減することができる。
【0037】
また請求項14記載の発明によれば、基台がフォークリフト状のパラポストタイプであるから、支承する車輪を床面近くまで降下させることができ、車輌を少しだけリフトアップした状態(タイヤが床面から少しだけ離れた状態)で車輪の脱着作業が行えるホイールドーリーを得ることができる。
【0038】
また請求項15記載の発明によれば、ホイールドーリーは、ストール床面に敷設されたレール上を移動する構造であるから、例えば搭載する車輪が重くても軽い力でスムーズに移動させることができるとともに、車輪(車軸)に対するホイールドーリーの対面角度の平行性が確保されるため、位置合わせが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明のホイールドーリー(操作性を高めたホイールドーリー)を示す斜視図、並びにこのホイールドーリーの使用状態の一例を示す斜視図である。
【
図2】ホイールドーリーを示す斜視図(a)、並びに別の方向から視た斜視図(b)である。
【
図3】ホイールドーリーを示す平面図(a)、並びに側面図(b)である。
【
図4】ホイールドーリーを後方側(作業者の手許側)から視た投影図(背面図)である。
【
図5】ホイールドーリーを前方側から視た投影図(正面図)である。
【
図6】ホイールドーリーを後方側(作業者の手許側)から視た拡大投影図(背面図)(a)、並びに支承ローラ周辺を拡大して示す斜視図(b)である。
【
図7】車輪に作用するホールド片が下方を向いた状態のタイヤホルダ周辺を示す平面図(a)、並びに側面図(b)、並びに拡大斜視図(c)である。
【
図8】昇降架台の水平回転をロックする様子と解除する様子とを示す斜視図である。
【
図9】3軸車及び4軸車の大型トラックにおけるタイヤの設置状況と、本発明のホイールドーリーを適用して、これらのタイヤを分離脱着搭載する場合のホイールドーリーの必要数とを併せ示す説明図(a)・(b)である。
【
図10】タイヤを一輪のみ支承するタイプのホイールドーリー(前輪用ホイールドーリー)を示す側面図である。
【
図11】パラポストタイプのホイールドーリーを示す斜視図である。
【
図12】ストール内の移動をレール式としたホイールドーリーを示す平面図(a)、並びに側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明を実施するための形態は、以下に述べる実施例をその好適な一例とするものであり、更にこの技術思想に基づき改変される種々の形態をも含むものである。
【実施例0041】
以下、本発明たる操作性を高めたホイールドーリーC(以下、単にホイールドーリーCとする)について、図示の実施例に基づいて具体的に説明する。
まずホイールドーリーCの使用状態の概要を説明する。
ホイールドーリーCは、例えば
図1に示すように、車輌整備工場に入庫した車輌Vの車輪周りの整備を行う際に用いられるものであり、整備にあたって脱着される車輪Wを支承し、更には車軸周りやブレーキ周辺あるいはハブ周りを整備する際に、取り外した車輪Wが作業の支障にならないようにこれを移動させるものである。
ここで本明細書に記載する車輪Wとは、一般的には中央部に設けられたハブとブレーキドラムと、ハブに取り付けられたホイールと、ホイールの外周側に設けられるゴム製のタイヤ部との組み合わせを指す。ただしダブルタイヤ・シングルタイヤ・後輪タイヤ等の名称は、日常的に使用されている用語であるため、そのままこの名称を用いる。
【0042】
次に、車輪Wについての整備に関して、最近の傾向を併せて概説する。中・大型トラックの場合、後輪はほぼ全てがダブルタイヤであり、このダブルタイヤの脱着は、そのときの修理や点検整備要件によってセンターハブにホイールボルトで外車輪W1と内車輪W2の二輪が結合固定された状態で車軸から脱着する場合と、ハブとブレーキドラムを車軸に取り付けたまま、ハブからホイール付きタイヤの状態で外車輪W1と内車輪W2とを分離して一輪ずつ脱着する場合がある。特に大型トラックについては、12ヶ月点検整備(一般的には車検整備という)の際には、法制上も一旦ハブからホイール付きタイヤを分離して内車輪W2とハブの当り面や、外車輪W1と内車輪W2のホイールの当り面などの点検作業をすることが定められている。
このようなことからホイールドーリーCについても大型車用の単輪で約100kgとなる極めて重い車輪Wを、単輪別に(外車輪W1と内車輪W2ごとに)安定的に支承できるものが要請されてきている。ここでダブルタイヤの車輪Wを単輪ごとに区別する場合には、車幅方向外側に設けられているものを外車輪W1とし、車幅方向内側に設けられているものを内車輪W2とする。
【0043】
以下、ホイールドーリーCについて説明する。このものは一例として
図1~
図5に示すように、基台1に対し、昇降自在の昇降架台2を設けて成り、この昇降架台2を回転操作部材4によって、基台1に対して平面視で回転自在に設けるとともに、基台1との固定関係を図るように構成されている。
以下、基台1について説明する。
基台1は、一例としてシングルポストタイプの支持態様を採るものであって、例えば下方において放射状に伸びた車輪支持フレーム11を具え、更にこの車輪支持フレーム11のほぼ中心に、一例として円筒状のシリンダ外筒を利用したポストフレーム12が設けられる。具体的には車輪支持フレーム11とこのポストフレーム12の取り付け関係は、シリンダ外筒であるポストフレーム12のベースブロック12aに対し、車輪支持フレーム11の基部をボルト締めする等して取り付けられている。また車輪支持フレーム11は、ポストフレーム12をできるだけ下方で支持できるように、その先端で支持する自在キャスタを一例として転動輪13の支持位置を上方に引き上げたような形態を採っている。この車輪支持フレーム11に支持される転動輪13は一例として四輪すべてに自在キャスタが適用され、基台1を移動自在に構成している。この自在キャスタを適用した転動輪13は、その一部またはすべてをブレーキ付きとすることも好ましい。また転動輪13は、四輪のうち一輪だけを固定キャスタとしても差し支えないし、二輪を固定キャスタとしても、もとより差し支えない。
【0044】
またシリンダ外筒を利用した前記ポストフレーム12は、作動油のポンピングのためのフットペダル14を具えるとともに、その側傍に油圧回路を開放するリリースペダル15を具える。なお、このような足動操作を円滑に行うために後述する作業用トレー29について工夫がされている。
【0045】
また、フットペダル14とリリースペダル15との機構自体は、油圧シリンダにおいて通常適用される構成であるので、更に詳細な説明は省略する。
一方、このシリンダ外筒を適用したポストフレーム12の上端近くにはフランジ状のロック片16が固定されるものであり、このロック片16には一例として前方と左右方向との計三カ所に90°ずつ隔ててロック凹部16aを具える。すなわち本実施例では、手前側の後方部分のみロック凹部16aが形成されない構成となっている。なお、前方や左右の方向については、後で詳細に説明する。
【0046】
次に、このような基台1に対して昇降自在に支持される昇降架台2について説明する。昇降架台2は、ポストフレーム12に支持された昇降ロッド21の上端にベース板22を設けて、このベース板22に対しテーブル基板23を支持させた構成を採る(
図8参照)。
昇降ロッド21は、先に述べたようにポストフレーム12自体がシリンダ外筒を適用していることから、実質的にはシリンダ装置の摺動ロッドが利用される。すなわち昇降架台2を昇降自在に支持するための部材として、シリンダ装置が適用される。このようなシリンダ装置を用いるときは、昇降ロッド21自体が、昇降方向へ移動するほか、ポストフレーム12すなわちシリンダ外筒に対して、平面視で回転自在の構成となっている。そして前記ベース板22は、この昇降ロッド21の上端に固定された一例として矩形状の強度部材であり、これに対し周枠板24が設けられることにより全体としてトレー形状となったテーブル基板23が構成されている。
ここで図中符号24aは、ホイールドーリーCの後方位置に立つ作業者Mから視て左右に立設される側部周枠板を指す。また図中符号24bは、上記作業者Mから視て奥側(前方側)に立設される前部周枠板を指す。更に図中符号24cは、上記作業者Mから視て手前側に立設される後部周枠板を指す。
【0047】
更に、この周枠板24を利用してラックアーム25が左右一対、フォーク状に設けられる。なお、ここで本装置の説明上、前後方向や幅方向あるいは左右方向について整理しておく。本装置にあっては、基台1に対し、平面視で昇降架台2が回転するものであるから、少なくとも共通した前後方向は、観念し難いので、各部材ごとに定義する。まず基台1については、頻繁に操作する前記フットペダル14やリリースペダル15の近傍に作業者Mが対向的に立つものであり、この立ち姿勢となった作業者Mの正背面方向を前後方向とし、フットペダル14やリリースペダル15の反対側を前方、作業者側を後方または手前側とする。
一方、昇降架台2については、ラックアーム25の長手方向を前後方向と言い、一対のラックアーム25が対向して配される方向を左右方向または幅方向(昇降架台2の幅方向)とする。なお、昇降架台2は、後述する操向ポスト27が設けられる側を後方または手前側とし、その反対側を前方とする。
そして、これら一対のラックアーム25により構成される面を、
図4に示すように車輪Wの支承作用面S1とする。しかしながら、搭載対象が円形の車輪Wであることを考慮すると、支承作用面S1より下方の空間にも車輪Wの下部が潜り込み状態に支持されるものであり、この空間を含んで実質的に車輪Wを搭載する空間を支承空間S2とする。
【0048】
またラックアーム25は、一例として断面がL字状を成す、いわゆるアングル材によって形成されるものであり、一方の翼板25aを水平向きに配置するとともに、他方の翼板25bを上方に向けて配置する(
図6(b)参照)。結果的にアングル材で構成された左右のラックアーム25は、翼板25a・25bで囲まれた狭い方、いわゆるフトコロ部25cが対向内向き状に配置される構成となっている。
このような各ラックアーム25は、内側のフトコロ部25cに、車輪Wを直接支承するための支承ローラ26を設けるものであり、この支承ローラ26は、一例として前後に二本、独立且つ縦列した状態で設けられている。結果的に、支承ローラ26は、前後・左右一対の計四本が、それぞれ独立して回転するように構成され、ラックアーム25上に移載された二本の車輪Wを個別に回転自在に支持する。
また手許側すなわち後方の外車輪W1を受ける支承ローラ26には、キャリーアップスリーブ26sが前後方向に摺動及び回転自在に設けられており、キャリーアップスリーブ26sの半径方向の厚み寸法は、例えば10mm程度に設定される。なお、キャリーアップスリーブ26sの作用については後述する。
【0049】
更に、昇降架台2と一体のラックアーム25の後端近くには、ホイールドーリーCの押し引き作業など適宜の方向に移動させるための操向ポスト27が立設される。この操向ポスト27は、例えばスチール製の角パイプ材で形成され、昇降架台2の後方(手前側)において左右一対で立ち上げ形成されるものであって、操向ポスト27の後方には作業者Mが保持するための把手たる操向グリップ27aが設けられる。なお、立設される操向ポスト27は、支承空間S2に突出できるよう設定されたタイヤホルダ3のホールド片32とともに、支承ローラ26上に載置した車輪Wを前後方向から挟み込むように保持する作用を担い(挟支)、操向ポスト27自体は、手許側つまり作業者M側へのタイヤの転倒を確実に防止することができる。また操向ポスト27は、支承ローラ26の上に載置された車輪Wを、手前側に傾倒させて支持する作用も担うものである。
【0050】
更に昇降架台2には、車輪Wの整備に伴い取り外されることがあるドライブシャフトDを収めておくための筒状のドライブシャフト収め部28が設けられる。このドライブシャフト収め部28は、上述した前部周枠板24bと後部周枠板24cとを貫通するように、一方の側部周枠板24a寄りに溶接固定され、手前側に向かって下る緩傾斜状に形成される。因みに、筒状のドライブシャフト収め部28をこのような緩傾斜状態とするのは、
ドライブシャフトDが、車輌取付時にはオイルバス状のハウジング内に設けられるためである。すなわち車輌Vから抜き取ったドライブシャフトDには、オイルが付着することは免れないから、抜き取ったドライブシャフトDをドライブシャフト収め部28に収めて、ドライブシャフトDに付着していたオイルを、手前側に流下させて、回収するものである。そのためドライブシャフト収め部28の手前側には、流下したオイルを回収し、一時的に貯留しておくためのオイル容器28aが設けられる。そして、このような構成により、ドライブシャフトDに付着していたオイルが整備工場の床面等に落下してしまうことを防止することができる。なお、オイル容器28aは、昇降架台2に対して例えばマグネットを利用して脱着自在とすることが好ましい。
【0051】
更に左右一対の操向ポスト27の下部を利用して、これら両ポストの間に作業用トレー29を設ける。この作業用トレー29は、平面視矩形状であり、その周囲は上方に向かって立ち上げ形成された縁板ガイド29aが設けられ、作業用トレー29上に一時的に収容した手工具や、取り外したボルト・ナット等の部品が不用意に落下しないようにしている。また、縁板ガイド29aのうち作業者Mに対向する手前側のものは、外開き状に傾斜するように形成され、その中央部が切り欠き状に形成され(これを回避切り欠き29bとする)、この回避切り欠き29bの存在によって、作業者Mがフットペダル14を足動操作する際に、膝が作業用トレー29に当たることを回避するようにしている。また、回避切り欠き29bの前方には、センターハンドル29cを立設するものであり、このセンターハンドル29cは、作業者Mが片手操作でもホイールドーリーCの直進後退移動ができるように意図したものである。
【0052】
次に、左右一対のラックアーム25に支承される車輪Wを、タイヤ側部から挟み込むように保持するタイヤホルダ3について説明する。すなわちタイヤホルダ3は、ラックアーム25、より詳細には支承ローラ26上に支承した車輪Wが転倒、落輪しないよう、直立状態に確実に保持するための部材である。ここでタイヤ(車輪W)の「側部」とは、タイヤのサイドウォール部を指すものであり、接地面(トレッド部)を指すものではない。なお、本明細書においてタイヤや車輪Wの側部と言った場合には、上記のようにサイドウォール部を指すものである。
タイヤホルダ3は、一例として
図7に示すように、各ラックアーム25に対し可動状態に支持されるホルダロッド31を具えるものであり、このホルダロッド31には前方側にタイヤ側部にあてがうように作用させるホールド片32が設けられるとともに、後方手許側に当該ホールド片32を摺動または回動させるためのホルダ操作片33が設けられる。そしてホルダロッド31の可動状態は、具体的にはラックアーム25に沿って前後方向に摺動自在に、且つホルダロッド31の軸心回りに回動自在に支持される状態である(これを遊持と称することがある)。
このような構成からホルダ操作片33とホールド片32とは、ともにホルダロッド31の回動軸(軸心)から外方に突出するレバー状に形成されるものであり、ホルダロッド31の回動軸から視て両者が同じ方向(軸方向に視て同位相)に突出形成されることが好ましい。
【0053】
更にタイヤホルダ3は、とりわけダブルタイヤを支承対象とする際には、外車輪W1に作用するものと、内車輪W2に作用するものとに区別することができ、これらを外車輪用タイヤホルダ3A・内車輪用タイヤホルダ3Bとして区別する。ここで本明細書では上記タイヤホルダ3に限らず、他の部材においても外車輪W1または内車輪W2に作用するものに分けて区別したい場合には、符号の末尾に「A(外車輪用)」、「B(内車輪用)」を付して区別するものである。
なお、本明細書では、例えば外車輪用ホルダロッド3Aについては、内車輪W2に作用する内車輪用タイヤホルダ3Bとの区別を明確にする意味で「外車輪用」と称しているが、例えば同じホイールドーリーCによって前輪シングルタイヤや単輪も支承することができ、この場合には、上記外車輪用ホルダロッド3Aは、外車輪W1以外のこれらのタイヤに作用するものである。すなわち本明細書では、例えば「外車輪用(タイヤホルダ3A)」と称していても、これは外車輪用限定という意味ではない。
【0054】
ここで本実施例では、内車輪用タイヤホルダ3Bのホルダロッド31Bは、後方手許位置からラックアーム25の前端側まで伸びる全長寸法を有する。一方、外車輪用タイヤホルダ3Aのホルダロッド31Aは、後方手許位置から前方に向かい、ホルダロッド31Bよりも短い長さ寸法を有する。そして、これら両ホルダロッド31A・31Bは、内車輪用のホルダロッド31Bが細い筒状に形成され、且つ外車輪用のホルダロッド31Aが太い筒状に形成され、小径のホルダロッド31Bが、大径のホルダロッド31Aに対し入れ子状に内嵌めされた構成を採る。
また、このように入れ子状に組み合わされた両ホルダロッド31A・31Bを可動状態に支持する部材(部位)は、手許側と、その前方(ホルダロッド31Bのほぼ中間位置)との二カ所に設けられる。このうち手許側の支持部材は、操向ポスト27の下部であり、当該操向ポスト27を前後方向に貫通するように設けられた支持孔27bが支持部位となる(
図5(a)・
図7(a)参照)。一方、前方側の支持部材は、前記ラックアーム25の前後方向中間位置より幾分か前方寄り位置で、翼板25bの外側に設けられた軸受状のブラケット25dである。
【0055】
これら各支持部材(支持部位)は、ホルダロッド31を支持するための有効径が異なるものであって、前記手許側の支持孔27bは、大径の外車輪用のホルダロッド31Aを回動自在且つ摺動自在に支持できる径寸法(大径寸法)に形成され、一方の前記ブラケット25dにおける支持有効径は、小径の内車輪用のホルダロッド31Bを回動自在且つ摺動自在に支持できる径寸法(小径寸法)に形成される。つまり、ブラケット25dの支持有効径は、操向ポスト27における支持孔27bよりも小さい径寸法に形成されている。
そして、このような構成により、入れ子状に組み合わされた状態で、両ホルダロッド31A・31Bは、前方においてはブラケット25dにより小径の内車輪用のホルダロッド31Bが支持され、手許側においては操向ポスト27の支持孔27bにより大径の外車輪用のホルダロッド31Aが支持され、言わば両ホルダロッド31A・31Bが、前後方向で相互依存する状態で支持される。もちろん、大径の外車輪用のホルダロッド31Aの内側に、小径の内車輪用のホルダロッド31Bが入れ子状に収容された場合には、上記支持孔27bは直接的には外車輪用のホルダロッド31Aを支持するものの、間接的には内車輪用のホルダロッド31Bをも支持している。
【0056】
このように構成された両ホルダロッド31A・31Bは、手許側のホルダ操作片33A・33Bの操作によって、回動及び前後方向への移動(摺動)が操作される。まず回動操作については、ホールド片32及びホルダ操作片33が、ホルダロッド31の軸方向から視て同じ位相位置に設定されているから、自然な待機状態では両者が自重によって下方に垂下した状態を呈する。
この待機状態は左右のタイヤホルダ3A・3Bで共通しており、この状態はあたかも人が両腕(両手)を下方に降ろした「気を付け」の姿勢と類似する。そして、この待機状態からホールド片32を起立状態にするには、例えば
図5に示すように、ホルダ操作片33を「外から内に」回すように回動させるものであり、これを本明細書では「外回り状の回動」と称している。因みに「外から内に」という表現は、上記のように人が「気を付け」の姿勢をした状態から、腕を体の外側に向かわせる回動動作(体の外側を通って上方に向かわせる回動動作)を指すことに基づいた表現である。
【0057】
このようにしてホルダ操作片33を回動させると、ホルダロッド31によって一体化したホールド片32も共に外回り状に回動して、前記ラックアーム25の垂直な翼板25bの上端に当接するようになり、実質的にホールド片32が車輪Wの支承空間S2内に入り込む状態となる。もちろん、翼板25bへの当接によってホールド片32の回動がストップした状態では、同位相回動であるため手許側のホルダ操作片33もそれ以上回動できない状態となる。このように本実施例では、車輪Wを載せるラックアーム25の上端部を、ホールド片32の回動ストッパとしても利用している。
因みに、ホールド片32が翼板25bの上端部に当接して回動停止となった状態、つまり支承空間S2内に入り込み、車輪Wをホールドする作用位置は、一例として上記
図5(b)に示すように、ホールド片32の中心が鉛直線から約18度の傾斜角度を呈する角度である。また本実施例では、ホルダロッド31のスライドと回動とをロックするために後述するクランプボルト35A・35Bを設けているが、ホールド片32が上記のような傾斜姿勢となった状態では、クランプボルト35A・35Bによるロックを施さなくても、ホールド片32の回動停止状態を維持できることが本出願人によって確認されている。
なお、ホールド片32A及び32Bの回動軸芯から先端までの長さは、両者ともタイヤを確実に保持しつつ、ディスクホイールやリムに接触しない(傷を付けない)長さに設定されている。
【0058】
また整備対象の車輪Wのタイヤ幅寸法に応じて、ホールド片32の前後位置を適宜設定する必要があり、そのための前後方向の移動ストロークが一定寸法確保される。すなわち外車輪用ホールド片32Aについて言えば、その最前端位置はホールド片32Aと一体であるホルダロッド31Aの前端がブラケット25dの根本近傍に設けられたストッパST1に当接した位置であり、一方、後端位置はホルダロッド31Aの後端が内車輪用のホルダロッド31Bの後端近くに固定されたストッパST2に当接した後、ホルダロッド31Aとホルダロッド31Bが連動して後方に摺動し、内車輪用ホールド片32Bの根本部がブラケット25dの前面に当接した位置となる。
【0059】
また内車輪用ホールド片32Bについて言えば、その最前端位置はホールド片32Bと一体であるホルダロッド31Bの後端近くに固定されたストッパST2が、外車輪用のホルダロッド31Aの後端に当接した後、ホルダロッド31Bとホルダロッド31Aが連動して前方に摺動し、ホルダロッド31Aの前端がストッパST1に当接した位置となる。このときホールド片32Bは、ラックアーム25の前端以内に位置して(ラックアーム25の前端よりも飛び出ることはなく)、ホールド片32Bを回動起立した際にラックアーム25の翼板25bに当接するように、ホルダロッド31Bの長さを規定している。
一方、内車輪用ホールド片32Bの後端位置は、これと一体であるホルダロッド31Bが後方に摺動してホールド片32Bの根本部分がブラケット25dの前面に当接した位置となる。
【0060】
従って、ホールド片32Aとホールド片32Bの前後方向の移動ストロークは、ストッパST1・ストッパST2・ブラケット25d前面の各ストッパ機能で規制された範囲内となる。具体的には、内車輪用のホールド片32Bの可動範囲は、一例として
図7(b)に示すように、操向ポスト27の前端面から655.7mm~485.7mmで、ストロークは170mmとなる。
一方、外車輪用のホールド片32Aの可動範囲は、一例として操向ポスト27の前端面から320mm~150mmで、同じくストロークは170mmとなる。
因みに、大型トラックのタイヤ幅は280mm~304mm程度であるため、ホールド片32の一輪あたりのタイヤ最大挟支幅は一例として320mm程度に設定している。
【0061】
そして、更にこのような内外車輪用のタイヤホルダ3A・3Bにおける車輪Wの保持作用状態を確実に維持するために両ホルダロッド31A・31Bは、それぞれロック機構を具える。
まず、外車輪用のホルダロッド31Aを固定するために、操向ポスト27の支持孔27bを貫通しているホルダロッド31Aに対し、操向ポスト27の外側面に螺合させたクランプボルト35Aを支持孔27bの中心に向けて締め込み、ホルダロッド31Aを側面から押し込み固定する。つまりクランプボルト35Aの締め込みにより、ホルダロッド31Aは、回動も摺動も行えないロック状態となる。
一方、内車輪用のホルダロッド31Bを固定するロック機構としては、外車輪用のホルダロッド31Aにクランプボルト35Bを螺合させ、この内部に内スリーブ状に組み込まれている内車輪用のホルダロッド31Bを締め込み固定するものである。なお、このような構成上、内車輪用のホルダロッド31Bを動かないように固定する際には、外車輪用のホルダロッド31Aの固定(ロック)を図ってから、つまりクランプボルト35Aを締め込んでから、クランプボルト35Bを締め込んで内車輪用のホルダロッド31Bの固定(ロック)を行うものである。因みに、クランプボルト35Bは、タイヤホルダ3B(ホールド片32B)が起立状態(ストッパ作用を担う翼板25bに当接した状態)のときにほぼ真横(水平)となるように設定されている。
【0062】
次に、昇降架台2を平面視で回転させるとともに、基台1との間で相対的な位置決め、すなわち非回転状態に設定するための回転操作部材4について説明する。このものは一例として
図8に示すように、昇降架台2の下面に設けられたピボットブラケット40におけるピボット軸41に、角パイプ状の操作ロッド42の一端部を回動自在に接続した構成を採る。この回転操作部材4たる操作ロッド42は、ピボット軸41において自由状態に垂下しているものであり、その状態では操作ロッド42の下部、つまり上記ロック片16に当接する部位がロック凹部16aに嵌まり込むように係合した状態を出現させ、昇降架台2を非回転状態に設定している。この構成において、操作ロッド42は充分に長い棹状を呈しているから、たとえ昇降架台2が上死点近くにあったとしても、操作ロッド42は相対的に間隔が隔たったロック片16の位置に操作ロッド42の一部(この場合は自由端側)が必ず当接係合し、非回転状態を維持することができる。
【0063】
ここで本実施例では、ピボット軸41の手許側端部において、昇降架台2から突出する位置に補助操作杆42Aを設ける。この補助操作杆42Aは、操作ロッド42がロック作用状態の姿勢をとっている状態においてやや先上がり状態に設けられている。
そして昇降架台2を基台1に対し相対的に回転させる場合には、例えば補助操作杆42Aを時計周り(作業者Mから視て時計周り)に回動させることで、垂下状態の操作ロッド42を上方に持ち上げるように回動させる。これにより操作ロッド42とロック片16との噛み合いが外れ、この外れた状態で操作ロッド42を旋回させれば昇降架台2を適宜回転させることができる。
なお、垂下状態からほぼ水平状態に上げられた操作ロッド42、すなわちロック片16との噛み合いが外れた操作ロッド42は、テーブル基板23の下部に設けられたマグネット43に吸着・保持させることができ、これにより水平状態を呈した操作ロッド42が維持され、昇降架台2の回転が円滑に且つ確実に行える。
【0064】
このようにして昇降架台2を適宜の角度、回転させたら、すなわち昇降架台2を例えば平面視で左右に90度回転させたら、昇降架台2を再度、固定状態とする。この操作は、上記と逆であり、補助操作杆42Aを逆方向(反時計周り)に回動させることで、マグネット43による吸着・保持を解除するとともに、操作ロッド42を略水平状態から垂下状態にして、最終的に操作ロッド42の下部をロック凹部16aに嵌め込むようにすることでロック完了となる。
【0065】
また本実施例では、上述した構成のほか、作業性を向上させる補器として、作業者Mから視て右側の操向ポスト27にインパクトレンチホルダIHが設けられ、対向する左側の操向ポスト27にサイドトレーSTが設けられている。
【0066】
本発明のホイールドーリーCは、以上のような基本構造を有するものであり、以下、このホイールドーリーCを用いて、車輌Vから車輪Wを取り外す態様と、取り外した車輪Wを車輌Vに取り付ける態様、とりわけISO方式についての一例を説明する。
なお、以下の説明にあたっては大型トラック後輪のダブルタイヤをハブから単輪ずつ取り外す態様について主に説明する。もちろん、このような作業においては、当然ながらダブルタイヤの外車輪W1を取り外してから、内車輪W2を取り外す態様となる。
因みに、車輪Wの取り外し作業としては、ハブやドラム付きで車輪W(ホイール)を車輌V(車体)から取り外すこともあれば、ハブやドラムを車輌側に取り付けたまま、ホイール付きの車輪Wのみを取り外すこともあり、以下の説明では後者について説明する。また車検整備時、特に大型トラックの場合には、前輪も後輪のダブルタイヤも単輪ずつハブから取り外して整備・点検する作業が法制上、義務づけられている。
またダブルタイヤを単輪ずつ取り外すにあたっては、まず外車輪W1をラックアーム25の手許側に載置し、次いで空いているラックアーム25の前方側に内車輪W2を載置するものである。
また、対象となる車輌Vの車軸は、例えば
図1に示すように、水平状態でリフトアップされるため、必然的に取り外す車輪Wの側部は、ほぼ垂直となる。そして、車輪Wの中心部に位置するハブナットやハブベアリングを取り外して車軸から車輪Wを脱着したり、ハブを車軸に残したまま複数のホイールナットを取り外してタイヤ付きホイールをハブから脱着したりする作業のためにホイールドーリーCを使用する。そのためホイールドーリーCは、ラックアーム25上で車輪Wを垂直に近い直立状態で保持する方が、例えば車輪Wを操向ポスト27に傾倒させる傾斜状態よりも、車輪Wの脱着作業は容易となる。そのため、以下の説明においても、車輪Wはラックアーム25上で直立状態に保持する形態を基本的に説明する。
【0067】
(1)車輌の状態
車輪Wが取り外される車輌Vは、一例として
図1に示すように、事前にリフトLで適宜の高さにリフトアップされる。なお、この高さは、作業者Mが立ち姿勢で作業が行える高さに設定される。
【0068】
(2)ホイールドーリーの始発状態
一方、ホイールドーリーCは、通常、昇降架台2(ラックアーム25)を、車輌Vのリフトアップ状態を考慮して、車輪Wを下支えできる低い高さに設定される。これはホイールドーリーCを車輪Wの真下にスムーズに差し込むことができるようにするためである。この際、ラックアーム25上で直接、車輪Wを支承する支承ローラ26にあっては、外車輪用の支承ローラ26Aに回転自在に外嵌めされているキャリーアップスリーブ26sを手許側端部の退去位置(側面から視て操向ポスト27の前面より後部の位置)から外車輪W1の支承位置まで前進移動させておく。これは先載せの外車輪W1に続いて、ラックアーム25上に移載される内車輪W2の受け取りに備えるためである。なお、詳細は後述する。
【0069】
(3)外車輪の取り外し
(i) タイヤホルダの設定
またタイヤホルダ3については、ホイールドーリーCを車輪Wの真下にスムーズに差し込みんで、ラックアーム25上に車輪Wを載せ易いようにすべく、ホールド片32が支承空間S2内に突出しない退去位置、すなわちホルダロッド31から下方に垂下した状態としておく(待機状態)。
【0070】
(ii)ホイールドーリーの車輪下方への移動(差し込み移動)
その後、作業者Mが操向ポスト27の操向グリップ27a を把持して、ホイールドーリーCを左右のラックアーム25の中央が車輪Wの中心のほぼ真下の位置になるように移動させる。そして左右の操向ポスト27がタイヤの側部正面に近接、または軽く当接するまでホイールドーリーCを車軸方向に押し込み、その位置で作業者Mがフットペダル14を煽るように足動操作する。これにより、昇降架台2(ラックアーム25)が上昇し、左右の支承ローラー26Aに外嵌めされているキャリーアップスリーブ26sが外車輪W1の下方に近接または軽く当接した時点で、足動操作を止める。このような操作により、手許側の支承ローラー26Aの直上部には、外車輪W1が位置し、先端側の支承ローラー26Bの直上部には、内車輪W2が位置する。
【0071】
(iii) 外車輪用のホールド片の起立(外回り状の回動)
この状態で、まず外車輪用のタイヤホルダ3Aを操作して、このもののホールド片32Aを起立するように回動させ、外車輪W1の前方側部(奥側側部)にあてがうようにする(支承空間S2に入り込んだ状態)。すなわち、この操作は、作業者Mが操向グリップ27aを操作した手許側位置から移動することなく行えるものであり、手許にある外車輪用のホルダ操作片33Aを操作し、ホルダロッド31Aを前後にずらし、ホールド片32Aの位置を外車輪W1が保持できる位置に合わせる。
換言すれば、上記操作によってホールド片32Aは外車輪W1と内車輪W2との間の支承空間S2に入り込み、外車輪W1は操向ポスト27とホールド片32Aとによって挟まれた状態となる。
なお、回動させたホールド片32Aは、上述したようにラックアーム25の翼板25bの上端部に当接し起立状態を維持する(
図5(b)参照)。このようにしてホールド片32Aを、外車輪W1の保持作用位置に設定した後は、左右の操向ポスト27に突出退去自在に螺合されているクランプボルト35Aを締め込み、ホルダロッド31Aの摺動と回動を阻止するとともにホールド片32Aの位置固定を図る。
もちろん、このようなタイヤホルダ3Aの設定は、左右のラックアーム25において対称的に対となって行われる。その結果、外車輪W1はキャリーアップスリーブ26sに支持されて、支承空間S2に直立状態で確実に収容された状態となる。
【0072】
(iv)ラックアームによる車輪の支持(ホイールナットの取り外し)
その後、作業者Mは、まず外車輪W1をハブに締め付けている複数のホイールナットを取り外し、外したホイールナットは作業用トレー29に置く。
そして、作業者Mがフットペダル14を煽るように足動操作して、昇降架台2(ラックアーム25)をわずかに上昇させ、ホイールボルトにかかっている外車輪W1の重量を無負荷状態にする。
ここで上記外車輪W1の支承にあたっては、手許側の支承ローラ26Aが外車輪W1を支承するものであり、この際、支承ローラ26Aには、キャリーアップスリーブ26sが設けられているから、ローラ外周よりもスリーブの肉厚寸法分だけ実質的に高い位置で外車輪W1は支承される。つまりラックアーム前方側の支承ローラ26Bと、内車輪W2とは、キャリーアップスリーブ26sの肉厚寸法分だけ間隙(キャリーアップ間隙G)が維持されており、内車輪W2は支承ローラ26Bに対し非接触状態が保たれる。
【0073】
(v) ホイールドーリーの引き抜き移動
その後、作業者MがホイールドーリーC全体を車輌Vの下から車輌側方に引き抜くように移動させる。これによりホイールを伴った外車輪W1をラックアーム25(キャリーアップスリーブ26s)上に載置した状態で、車輌Vから取り外すことができる。
この際、外車輪W1が内車輪W2と強固に固着している場合には、作業者Mが単にホイールドーリーCを引っ張っても、外車輪W1が内車輪W2から容易に分離しないこともあり得るが、このような場合でも支承空間S2に突出したホールド片32Aが、外車輪W1のタイヤ幅裏面(車幅方向における奥側の面)に係止状態で当接するため、ホイールドーリーCの引き抜き動作を数回、繰り返すことにより、外車輪W1を内車輪W2から引き離して、このものを車輌Vから取り外すことができる。
また、上述したように内車輪W2は、支承ローラ26Bに接触していないため、上記引き抜き作業によって外車輪W1のみの取り外し作業が確実に行えるものである。
【0074】
(vi)内車輪用のホールド片の起立(外回り状の回動)
外車輪W1の取り外し作業が終わったら、今度は内車輪W2を受け取る位置に、ホイールドーリーCを再度合わせ、内車輪用のホールド片32Bの設定を行う。この作業も実質的には外車輪W1の場合と同様であり、内車輪W2の奥側の側部にホールド片32Bをあてがうようにする。具体的には、まずホルダ操作片33Bを前後方向に移動させて、ホールド片32Bを適切な前後位置に設定した後、再度、ホルダ操作片33Bを操作してホルダロッド31Bを外回り状に回動させ、ホールド片32Bを内車輪W2の奥側の側部にあてがうような起立姿勢とする。なお、ホールド片32Bを起立姿勢とした状態では、内車輪W2は手前側(後方側)で起立姿勢をとるホールド片32Aと、奥側(前方側)で起立姿勢をとるホールド片32Bとの間に挟み込まれたような状態となる。
そして、上記のような操作を行った後、内車輪用のホールド片32Bの固定を図る。これにはホルダロッド31Aに設けられているクランプボルト35Bを締め込み、既に固定状態に設定されているホルダロッド31Aに依存して、ホルダロッド31Bの固定を図り(摺動も回動も行えないようにし)、ホールド片32Bを内車輪W2の保持作用位置に固定するものである。
【0075】
(4)内車輪の取り外し
以上のようにしてタイヤホルダ3Bを設定した状態で、ラックアーム25、より詳細には支承ローラ26Bと内車輪W2との関係を見ると、上述したように外車輪W1については支承ローラ26Aにキャリーアップスリーブ26sが外嵌めされているから、支承ローラ26Bの支承面とは、わずかなキャリーアップ間隙Gが生じ(
図5・
図6参照)、この間隙分、上方において支承している。換言すれば、内車輪W2は、支承ローラ26Bとはキャリーアップ間隙Gを保って支承ローラ26Bの直上部に位置している。このため作業者Mは、フットペダル14を足動操作して昇降架台2をわずかに上昇させれば、支承ローラ26Bを内車輪W2に下方から接触させて、支承することができる。
その後、前記外車輪W1と同様に、ホイールドーリーCを車輌Vから引き離すように手前側(車幅方向の外側)に移動させて、内車輪W2をハブから取り外す。
なお、現状、大型トラックにあっては、ダブルタイヤの車輪取付構造においてJISタイプとISOタイプがあり、JISタイプのものにあっては内車輪W2を取り外す場合、インナーナット(フクロナット)を取り外す作業を要する。
また、外車輪W1と内車輪W2とを分離して取り外すことができることによって、車検整備作業時に法制上規定されている外車輪W1と内車輪W2のホイールの接合面の点検整備作業が容易になる。
【0076】
(5)点検
以上のようにして外車輪W1と内車輪W2とを取り外した後、ホイールボルト、ハブとホイールとの当り面、外車輪W1と内車輪W2のホイールの接合面などの点検が作業者Mによって行われる。
この際、特に車輌側の点検を行うにあたっては、外車輪W1と内車輪W2とを載せたホイールドーリーCを、車輌Vから幾らか離れるように側方に移動させ、車輌Vとの間に作業者Mが入り込むスペースを確保することによって、そこでの整備・点検作業を行い易くする。
このようにして作業者Mは、車輪W全体、ホイール、タイヤ、車輪締め付け用のホイールナット・ホイールボルト等の整備・点検を実施する。また外車輪W1と内車輪W2との接合面を点検した結果、サビなどがあれば極力除去するものである。
【0077】
(6)ブレーキ周りの点検
次に、ダブルタイヤを組み付けたままの状態でドライブシャフトDを取り外すことにより、ブレーキドラムをも一体に取り外し、ブレーキシュー等のブレーキ周りの状況を点検する作業を言う。
具体的には、車輪Wの取り外しと逆の手順で、内車輪W2と外車輪W1とを各々、車輌Vに取り付け、その後ドライブシャフトDを引き抜き、アスクルハウジングAH側と、ダブルタイヤとの組み付けを解除する。なお、取り外したドライブシャフトDは、ドライブシャフト収め部28に差し込んで収容しておく。
この際、ホイールドーリーCのラックアーム25により、再びダブルタイヤ状の車輪Wを支承し、車輌Vの側方にホイールドーリーCを引き出すと、ハブとブレーキドラムを伴って、車輪Wが車体から取り外される。なお、ダブルタイヤ状態で車輪Wを取り外す際には、外車輪W1用に用意されているキャリーアップスリーブ26sは、手許側端部の退去位置、すなわち側面から視て操向ポスト27の前面より後部の位置に移動させておき、支承に寄与しないようにしておく。
【0078】
また、ダブルタイヤ状態の車輪Wを支承したホイールドーリーCを車輌Vの側方に引き出す際には、幾分か抵抗があるが、タイヤホルダ3における内車輪用のホールド片32Bを内車輪W2の奥側の側部にあてがうように起立させておくため、ホイールドーリーCを、ある程度、衝撃的に引き出すことにより、ホールド片32Bが内車輪W2(奥側の側部)に当接し、ダブルタイヤ状の車輪Wを載せたホイールドーリーCを引き出すことができる。
なお、ダブルタイヤ状の車輪Wを取り外す際には、上述したように内車輪用のホールド片32Bを起立状態に回動させれば充分であるが、外車輪用のホールド片32Aも起立状態に回動させることも可能である。因みに、内車輪用のホールド片32Bのみを起立状態に回動させた場合には、ダブルタイヤ状態の車輪Wは、操向ポスト27とホールド片32Bとによって前後方向から挟み込まれた状態となり、内車輪用のホールド片32Bと外車輪用のホールド片32Aとの双方を起立状態に回動させた場合には、外車輪W1が操向ポスト27とホールド片32Aとによって前後方向から挟み込まれ、内車輪W2が二基のホールド片32A・ホールド片32Bによって前後方向から挟み込まれた状態となる。
【0079】
ブレーキ周りの点検にあたっては、既に述べた車輪Wの点検時に取り外された車輪Wを、そのまま外した状態として、ブレーキドラムを外してブレーキ周りの点検を行うことも不可能ではない。しかしながら、実際にはブレーキドラムの重量も数十kgの重さに達するため、これを単独で取り外すには、支承ドーリー等を別途、用意しなければならず、実作業として合理的でない。
このため一旦、ダブルタイヤ状の車輪Wをブレーキドラム一体のハブアッシーに取り付けた上で、改めてこれを車体から取り外し、アスクルハウジングAH、ハブグリス交換、ブレーキドラム、ブレーキシュー等の、従来から行われていた手順での整備が行われる。
なお、車体から取り外されてホイールドーリーCに搭載された車輪Wのハブに対して行うハブグリス交換などの作業は、車軸線方向からハブに向き合って行う作業であり、ホイールドーリーCを車輌Vの側方(車輌Vの幅方向)に真っ直ぐ後退させた位置であっても、作業ストール幅が狭い整備工場の場合には、車輌Vと車輪Wの間に作業者Mが立って、車輪Wのハブに対面して作業するには、余裕のある作業スペースが確保できない。
そこで、昇降架台2(ラックアーム25)を基台1に対して左右いずれかに90度水平回転してロックすることが望ましく、このようにすることでホイールドーリーCに搭載された車輪Wの車軸線が作業ストールの長手方向を向くことになり、作業者Mが車輪Wのハブに向き合っても充分な作業スペースを確保することができる。
そして、上記整備・点検作業後は、もちろん昇降架台2(ラックアーム25)を水平方向に90°戻して、ダブルタイヤ状の車輪Wを車輌Vに取り付けるものである。
【0080】
(7)その他の取り外し態様(取り付け態様)
ダブルタイヤをハブ付きで取り外す態様(取り付ける態様)は、以上述べた通りであり、以下、他の取り外し態様について概説する。
例えば中型トラックでは、後輪のダブルタイヤを、この連接状態のまま取り外すことがある。これは上述したように、車検時にホイールをハブから一旦取り外して点検することが法的に義務づけられているのは、大型トラックのみであるからである。
また例えば小型トラックでは、後輪のダブルタイヤと前輪のシングルタイヤとを同一のホイールドーリーC上に載置して取り外すこともあり、ラックアーム25上には、計三本の車輪Wが載置されることになる。因みに、この場合には、前輪シングルタイヤを操向ポスト27とホールド片32Aとで挟むように保持した後、後輪ダブルタイヤをハブ付き状態で載置することができる。なお、後輪ダブルタイヤは、ラックアーム25上で自立できるため、載置にあたっては、必ずしもタイヤホルダ3におけるホールド片32Bを起立させる必要、つまり作用位置にする必要はない。もちろんホールド片32Bを作用位置として、ダブルタイヤを保持することは何ら構わない。
更に、他の取り外し態様としては、例えば中小型トラックや乗用車の場合、片側の全輪をホイールドーリーC(ラックアーム25)上に載置することも可能である。
【0081】
そして、このような種々の載置形態が採り得ることから、本発明ではホイールドーリーCの必要数を大幅に削減することができたものである。
すなわち大型トラックは、トレーラを牽引するトラクター以外、一例として
図9に示すように、いわゆる3軸車(ハブドラム付き6輪)と4軸車(ハブドラム付き8輪)とが主流であり、4軸車の市場保有台数は約30%以上にもなる。
ここで一般的な3軸車は、例えば
図9(a)に示すように、前軸が1軸でシングルタイヤ(左右で2本)、後軸が2軸でそれぞれダブルタイヤ(左右で8本)であり、合計10本のホイール付きシングルタイヤを装備している(ただし3軸車でも前輪二軸がシングルタイヤ、後輪一軸がダブルタイヤという車種も一部ある)。このため従来のホイールドーリーC′で、ホイール付きシングルタイヤ(車輪W)を1本ずつ安全に分離脱着搭載しようとすると、計10基のホイールドーリーC′が必要となる。
しかしながら、一般的な3軸車であれば、本発明のホイールドーリーCを使えば、計6基で済む。
以下、この削減効果について詳細に説明する。
まずホイールドーリーCは、整備・点検作業時、車輌V(車軸)の左右に配置して使用するものであり、左側と右側を混用することはない。これは左右混用すると、却って作業が不効率となるためである。このため例えば前軸輪のシングルタイヤは、1基のホイールドーリーCで1本のホイール(車輪W)を脱着搭載するとしても、後軸ダブルタイヤから分離する左右の8本のシングルタイヤ(車輪W)は、4基のホイールドーリーCで着脱搭載することができるため、計6基のホイールドーリーCで済むことになる。
【0082】
また4軸車は、
図9(b)に示すように、前輪二軸がシングルタイヤで、後輪二軸がダブルタイヤであるため、ホイール付きシングルタイヤが合計12本装着されている。ここで後輪二軸の8本のシングルタイヤについては、前述の3軸車の後輪二軸と同じ対応を採ることができる。また前輪二軸のシングルタイヤ4本(左右各2本)については、1基のホイールドーリーCを前輪の二軸間で移動させる必要はあるものの、車輌片側のシングルタイヤ2本を1基のホイールドーリーC(左右で計2基)によって、分離脱着搭載することができる(ハブドラム付きでも)。従って4軸車の場合も、本発明では6基のホイールドーリーCで済むことになる。この点、合計12本装着されているホイール付きシングルタイヤを、1基のホイールドーリーC′に1本ずつ安全に分離脱着搭載しようとすると、計12基のホイールドーリーC′を必要とすることになるが、本発明によってホイールドーリーCの必要数を大幅に削減できる。
このため整備工場としては、どの様な車種(軸数)の大型トラックが入庫しても、本発明のホイールドーリーCを1ストールに6基、配備しておけば効率的な車検整備作業が行えるものである。従って自動車整備業者にとっては、高い作業効率を維持したまま車検整備ストール内で使用するホイールドーリーCが大幅に削減でき、結果として作業スペースにも余裕ができ、整備・点検作業が確実に行え、且つ設備コストも低減できるという効果を奏する。
なお、以上述べたホイールドーリーCは、上記のような種々の効果を奏するが、最も強調されるべき特徴・効果は、ブレーキ点検、ハブ周りの点検等の保守点検を除いて、車輪Wの脱着作業に関しては、作業者MはホイールドーリーCの後方において、全ての操作を安全確実に実施できることである。
【0083】
〔前輪用ホイールドーリー〕
上述した実施例は、ダブルタイヤ状態の車輪Wを支承できるようにしたものであり、ラックアーム25についてもこれを可能とする充分長い構造のものであった。
しかしながら、例えば
図10に示すように、専らシングルタイヤ状の前車輪の整備のために一輪のみ支承可能なホイールドーリーC1としてもよい。
この場合、当然ながらラックアーム25及び支承ローラ26の長さが短くなり、例えば基本の実施例における前方側の支承ローラ26Bのみで構成される。なお、ラックアーム25(支承ローラ26)が短い長さで形成される上記ホイールドーリーC1は、特に作業スペースが限られた狭いストール内での取り回しが容易に行えるものとなる。またタイヤホルダ3については、左右それぞれ(片側)において単基の構成となる。具体的には、例えば上記基本の実施例におけるホルダロッド31は、前方側に設けられた(内車輪用の)ホルダロッド31Bのみの一基で構成され、ホールド片32も前方側に設けられた(内車輪用の)ホールド片32Bのみの一基で構成される。もちろん一輪のみ支承用のホイールドーリーC1にあっては、ホルダロッド31の入れ子構造もないものである。従って、クランプボルト35(35B)は、直接ホルダロッド31Bの外側面を押し付け、摺動と回動を固定する。加えて、上記ホイールドーリーC1にあっては、上記キャリーアップスリーブ26sやドライブシャフト収め部28も設けられないものである。
【0084】
〔パラポストタイプのホイールドーリー〕
更に既に述べた実施例は、ラックアーム25については一本の昇降ロッド21により昇降シフトが成されるものであったが、例えば
図11に示すように、いわゆるフォークリフト状のパラポストタイプの昇降機構(ホイールドーリーC2)を採用することもできる。
すなわち、基台101の構成部材の一つであるポストフレーム112に対し、昇降自在にラックアーム25を支持させ、このラックアーム25に、既述のタイヤホルダ3と同機構の各種部材を設けるものである。この場合、ラックアーム25を昇降させる機構については、種々の構成が採り得るが、上記
図11の構成例では当該機構については図示を省略している。
なお、このパラポストタイプのホイールドーリーC2にあっては、支承する車輪Wを床面近くまで降下させることができ、車輌Vを少しだけリフトアップした状態(タイヤが床面から少しだけ離れた状態)で車輪Wの脱着作業が行えるものである。
もちろん、このパラポストタイプのホイールドーリーC2であっても、シングルタイヤ用、ダブルタイヤ用、それぞれの用途に応じた形態が採り得る。
【0085】
〔レール式のホイールドーリー〕
更に上述した基本の実施例では、ホイールドーリーCは、基台1に具えた転動輪13を利用して作業者Mが整備工場内を自在に移動させ得る構造であった。しかしながら、ホイールドーリーCの移動は、必ずしも転動輪13に限定されるものではなく、レール式も採用することができる。
すなわちレール式のホイールドーリーC3は、一例として
図12に示すように、整備工場の床面に整備対象車輌の側面に平行して前後方向に敷設される縦レールR1と、それを軌道にして前後走行する横レールR2とを設ける。
横レールR2は、横行台車18を縦レールR1に対して直角方向(車輌に対して近接と離反)に走行させるためのレールであり、特許請求の範囲に記載する移動架台に相当する。
横行台車18には、ポストフレーム12やラックアーム25などホイールドーリーCと全く同じ機能が具備され、ホイールドーリーC3を構成している。
横レールR2の横断面形状は、例えば一般鋼材でいうC形チャンネル材とし、その溝中を横行台車18の車輪(4個)が転動する構造としているため、脱輪やホイールドーリC3の転倒を完璧に防止するとともに、全高を低くすることにも配慮している。
また、
図12に示す構成例では、縦レールR1を整備工場の床面とほぼ同じ高さに設け、床面に凹凸がほぼ形成されないようにしており、これにより作業者Mは、縦レールR1を気にすることなく、車輪Wの脱着作業や整備作業に専念することができる。