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特開2025-9317撮像装置、表面検査装置および表面検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009317
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】撮像装置、表面検査装置および表面検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20250110BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112234
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】517038051
【氏名又は名称】株式会社HACARUS
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 光隆
(72)【発明者】
【氏名】大西 理王
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA01
2G051AB02
2G051AC19
2G051BA01
2G051BB07
2G051CA04
2G051CC11
2G051DA08
(57)【要約】
【課題】形状が複雑な被検査物の場合においてもより少ない回数の撮像で検査に必要な画像を生成することができる撮像装置、表面検査装置、および表面検査方法を提供することにある。
【解決手段】鏡面部を含む被検査物10の表面状態を検査する表面検査装置300に用いられる撮像装置100であって、被検査物10の周囲を囲むように配置され、被検査物10に縞画像を投射する複数の平面または凹面形状の照明20と、被検査物10に対して所定位置に配置され、縞画像が投射された被検査物を撮像する撮像部30と、を備える。また、表面検査装置300はさらに検査画像生成部200を備え、撮像装置100で撮像された画像を処理して検査画像を生成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡面部を含む被検査物の表面状態を検査する表面検査装置に用いられる撮像装置であって、
前記被検査物の周囲を囲むように配置され、前記被検査物に縞画像を投射する複数の平面または凹面形状の照明と、
前記被検査物に対して所定位置に配置され、縞画像が投射された前記被検査物を撮像する撮像部と、を備える、撮像装置。
【請求項2】
複数の前記照明によって前記被検査物に投射される縞画像は、前記照明ごとに異なり、
前記撮像部は、複数の前記照明によって投射された複数の縞画像の合成された画像を撮像する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
さらに前記照明の光を反射する1つまたは複数の平面または凹面形状の鏡を備え、
前記鏡で反射した縞画像が前記被検査物に投射され、
前記撮像部は、複数の前記照明および前記鏡によって投射された複数の縞画像の合成された画像を撮像する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記鏡のうちの1つが前記撮像部側に配置されている、請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記鏡は放物面鏡からなり、
前記撮像部は、前記鏡の中心に配置されている、請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記被検査物の前記撮像部に対向する面を前面とした場合、前記被検査物の前方向、後方向、右方向、左方向、上方向、下方向のすべての方向に前記照明または前記鏡が配置される、請求項3に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記撮像部は、アーム駆動部により保持され、前記アーム駆動部を制御することにより前記被検査物に対する撮像位置を変更して撮像することができる、請求項1から6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の撮像装置に加えて、前記撮像装置で撮像された画像を処理して検査画像を生成する検査画像生成部を備える表面検査装置。
【請求項9】
鏡面部を含む被検査物の表面状態を検査する表面検査方法であって、
前記被検査物の周囲を囲むように配置された複数の平面または凹面形状の照明、および、前記照明の光を反射する1つまたは複数の平面または凹面形状の鏡から前記被検査物に縞画像を投射する縞画像投射工程と、
前記被検査物に対して所定位置に配置された撮像部により、縞画像が投射された前記被検査物を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像された画像を処理して検査画像を生成する検査画像生成工程と、を備える、表面検査方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が鏡面反射の性質を有する被検査物を撮像する撮像装置、撮像装置を用いて被検査物の表面状態を検査する表面検査装置および表面検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面が鏡面反射の性質を有する被検査物に縞画像を投射して撮像し、撮像した縞画像を用いて被検査物の表面状態を検査することができる表面検査装置に関して、以下の特許が開示されている。
特許文献1(特開2018-059883号公報)には、被検査体の表面が鏡面であり、曲がり部を有する立体形状であっても、その曲がり部における表面状態を検査することのできる表面検査装置が開示されている。
特許文献1に記載の表面検査装置は、表面が鏡面であり、曲がり部を有する立体形状の被検査体の表面状態を検査する表面検査装置であって、曲がり部に縞状パターンの光を写り込ませる照明と、曲がり部に対して照明を複数の位置に移動する照明移動部と、曲がり部に対して所定位置に配置され、照明が複数の位置に移動される毎に、縞状パターンが写り込んだ曲がり部を撮像する撮像部と、撮像部に撮像された複数の画像をそれぞれ微分処理して、これら微分処理後の複数の画像を加算する演算部と、演算部による加算後の画像における縞状パターンに基づいて、当該縞状パターンの欠損を検査する検査部と、を備え、照明移動部は、照明を複数の位置に移動するとき、縞状パターンの微分画像の加算により、曲がり部に写り込んだ縞状パターンの欠損部以外の輝度が平均化されるように、照明をそれぞれ配置することを特徴とする。
【0003】
特許文献2(特開平08-086634号公報)には、1画面中で欠陥検出の出来る範囲が広く、かつ“ゆず肌”のような極めて薄い凹凸を欠陥と誤検出することなく、より精密な欠陥検出を行なえる表面欠陥検査装置が開示されている。
特許文献2に記載の表面欠陥検査装置は、被検査面に光を照射し、その被検査面からの反射光に基づいて受光画像を作成し、この受光画像に基づいて被検査面上の欠陥を検出する表面欠陥検査装置において、被検査面に所定の明暗パターンを映し出す照明手段と、上記被検査面を撮像して得られる受光画像を電気信号の画像データに変換する撮像手段と、上記画像データにおける周波数成分のうち低い周波数領域での明部と暗部の境界領域を識別する境界領域識別手段と、上記画像データにおける周波数成分のうち高い周波数領域で、かつレベルが所定値以上の領域のみを抽出する画像強調手段と、上記画像強調手段で抽出した領域のうち上記境界領域識別手段で識別した境界領域でない部分を欠陥として検出する欠陥検出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0004】
特許文献3(特開2021-056183号公報)には、小さな表面欠陥を高精度で安定して検出することができるワークの表面欠陥検出装置が開示されている。
特許文献3に記載の表面欠陥検出装置は、表面欠陥の検出対象であるワークに対し照明装置による明暗パターンを相対的に移動させた状態で、前記ワークの被測定部位についての複数の画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段により取得された各画像に対する、二値化処理と閾値の適用によって、またはコーナー検出関数の適用によって、画像の特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、前記特徴点抽出手段によって抽出された各特徴点に対し多次元の特徴量を求めることにより、仮欠陥候補を抽出する仮欠陥候補抽出手段と、前記仮欠陥候補抽出手段により仮欠陥候補が抽出された複数の画像のうち、仮欠陥候補が対応する画像が予め設定された閾値以上存在すれば、前記仮欠陥候補を欠陥候補として決定する欠陥候補決定手段と、前記欠陥候補決定手段により決定された欠陥候補が含まれている複数の画像を合成して合成画像を作成する画像合成手段と、前記画像合成手段により作成された合成画像に基づいて欠陥検出を行う検出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0005】
特許文献4(特開2011-179982号公報)には、自動車のボディやその部品などの光沢塗装が施されるなどして表面反射の強い計測対象物であっても、簡単な構造により低コストで高精度かつ高速に表面の疵、塗装の剥がれや凹みなどの表面欠陥を検査することが可能な表面検査装置が開示されている。
特許文献4に記載の表面検査装置は、半透明素材により形成された曲面状壁を有する計測空間を構成する計測環境構成装置と、計測空間内の計測対象物に対して、曲面状壁の外部に設けられた光源光であり、曲面状壁を透過して計測対象物に全照射される光源光を、均一に減光して全照射するための照明装置と、パターン光を計測対象物に直接当たらないように曲面状壁に投影して反射させ、この反射されたパターン光(以下、「反射パターン光」と称す。)を計測対象物に投影するためのパターン光投影装置と、計測対象物に対して相対的に静止した状態で計測対象物を撮像する撮像装置であり、照明装置により全照射された計測対象物の全照明画像の撮像および反射パターン光が投影された計測対象物の反射パターン画像の撮像を行う撮像装置と、全照明画像および反射パターン画像から計測対象物の表面欠陥を検出するデータ処理装置とを含む。
【0006】
特許文献5(特開2020-134491号公報)には、検査に熟練した者でなくても欠陥を精度よく検出可能な検査ユニットが開示されている。
特許文献5に記載の検査ユニットは、対象表面の欠陥を検出するための検査ユニットであって、検査ユニットは、投影装置と、撮影装置とを備えており、投影装置は、投影画像を、シフト方向に沿ってシフトするようにして対象表面に投影可能であり、撮影装置は、対象表面を撮影可能であり、投影画像は、1以上の明部と、明部よりも低い輝度を有する1以上の暗部とを含んでおり、投影画像をシフト方向に沿って1回以上シフトするようにして対象表面に投影することにより、対象表面における全ての位置に明部及び暗部を投影可能であり、検査ユニットは、検査処理と、検査準備処理とを実行可能であり、検査ユニットは、検査処理において、投影装置によって、投影画像をシフト方向に沿って1回以上シフトするようにして対象表面に投影し、撮影装置によって、対象表面を撮影し、これにより欠陥を検出し、検査ユニットは、検査準備処理において、投影装置によって、対象表面における少なくとも1つの所定位置に対して、明部及び暗部の夫々を1回以上投影し、撮影装置によって、2以上の画像を撮影する。
【0007】
特許文献6(特開2010-085165号公報)には、鏡面性を有する被検査体表面の凹凸欠点の検出に際し、光照射手段と撮像手段に対する被検査面の位置関係が経時的に変化し、撮像画像が逐次変化する際に、凹凸欠点を精度良く検出できないという問題点を解決する表面検査装置が開示されている。
特許文献6に記載の表面検査装置は、被検査体に明暗パターンの光を照射する光照射手段と、被検査体で反射した明暗パターンを撮像する撮像手段と、撮像手段が撮像した明暗パターンを含む撮像画像に基づいて被検査体の表面を検査するデータ処理手段とを備える表面検査装置において、データ処理手段は、撮像画像内における光照射手段から照射した明暗パターンが被検査体表面にて反射した領域から、明暗パターンの明領域と暗領域の境界点を検出する境界検出手段と、境界点から明暗パターンの境界線のマスターを作成する境界マスター作成手段と、撮像画像内の明暗パターンの境界線とマスターの明暗パターンの境界線を比較することにより被検査体の欠点を検出する欠点検出手段を備えることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-059883号公報
【特許文献2】特開平08-086634号公報
【特許文献3】特開2021-056183号公報
【特許文献4】特開2011-179982号公報
【特許文献5】特開2020-134491号公報
【特許文献6】特開2010-085165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、表面が鏡面部を含む被検査物に対しては、鏡面部に縞画像を投射して撮像して検査画像を生成するという方法が用いられていた。しかし、形状が複雑な場合、縞画像が投射される領域が狭く、同一の撮像位置での撮像によって合成できる部分が限られているために、より多くの箇所で個別に縞画像を投射、撮像することが必要になり、撮像回数が増え、結果的に検査により多くの時間がかかるという課題があった。
【0010】
特許文献1に記載の表面検査装置では、表面が鏡面の曲がり部に縞状パターンの光を写り込ませることによって曲がり部の欠陥を検査している。しかし、特許文献1の表面検査装置の場合、照明が単一の平面であることから縞状パターンの光の写り込む領域が狭いこと、さらに縞状パターンの光の写り込む領域を変更するためには照明を移動させなければならないことから、結果的に検査により多くの時間がかかるという課題があった。
【0011】
特許文献2に記載の表面欠陥検査装置では照明装置を複数備えることによって所定の明暗パターンの映し出される領域を広げている。しかし、特許文献2の照明装置は、図26にも記載されているように、複数の照明装置から被検査面に同一の明暗パターンを映し出すように構成されている。これは、特許文献2の表面欠陥検査装置は被検査物体が主として自動車ボディであって、明暗パターンの長手方向に沿った形状の湾曲が大きいためである。しかし、より複雑な形状、例えば、明暗パターンの長手方向にも長手方向に直交する方向にも湾曲している形状の鏡面の被検査物の場合には、長手方向に直交する方向の形状を正確に合成できないという課題がある。
【0012】
特許文献3に記載の表面欠陥検出装置は、主として合成画像の作成と作成した合成画像を用いた欠陥検出を特徴とする発明である。特許文献3においても、ワークの下面を除く周面を取り囲むように取り付けられた線状照明を有し、ワークの移動方向において交互に存在する照明と非照明とで構成される明暗縞パターンの照明光でワークを拡散照明するようになっている。したがって、ワークの移動方向(縞画像の移動方向)と直交する方向の不具合は不具合として見つかりにくい可能性がある。
【0013】
特許文献4に記載の表面検査装置は、「観測用カメラに正反射した部分ではハイライトが形成され、パターン光が非常に強く反射される。逆に、正反射以外の部分では反射光の強度がハイライトに比べて極端に弱く、三次元情報計測に必要な反射パターンを撮像することが困難である。」との課題に対応するために、光源光を均一に減光して照明するとともに、パターン光を計測対象物に直接当たらないように曲面状壁に投影して反射させ、この反射されたパターン光(反射パターン光)を計測対象物に投影している。この場合、正反射する部分と正反射以外の部分との強度の差は小さくなる。したがって、光源を例えば液晶ディスプレイのような光源にした場合にも正反射する部分と正反射以外の部分との強度の差は小さくなり、上記課題は解消できる。しかし、パターン光投影装置の光線をドーム状やトンネル状などの一部に曲面を有する形状の曲面状壁に反射させた場合でも、図1からもわかるように、パターン光の入射方向は限定されており、複数の曲がり部を有する立体形状の被検査物に対しては全ての必要な箇所へのパターン光の投影ができない。
【0014】
特許文献5に記載の検査ユニットは、撮影装置が撮影した2以上の画像によって、輝度の最大値と輝度の最小値との差であるコントラストを取得し、処理装置は、投影準備処理において、暗部幅調整処理によって取得したコントラストに基づいて、検査処理における暗部幅を取得することを特徴とする。
しかし、この検査ユニットは投影装置が1台であり、1方向からしか投影できないため、より複雑な形状の対象物の対象表面の全てに明部および暗部を投影することはできない。
【0015】
特許文献6に記載の表面検査装置は、主として円筒形プラスチックフィルムロールなどの単純な形状の被検査物を対象としたものであり、光照射手段が1台であり、1方向からしか投影できないため、より複雑な形状の対象物の対象表面の全てに明部および暗部を投影することはできない。
【0016】
本発明の主な目的は、鏡面部を含む被検査物に対して、鏡面部に縞画像を投射して撮像して検査画像を生成する場合において、より幅広い方向から被検査物に縞画像を投射することによって、形状が複雑な被検査物の場合でもより少ない回数の撮像で検査に必要な画像を生成することができる撮像装置、および撮像装置を用いた表面検査装置および表面検査方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、被検査物の一部により細密な縞画像を投射することによって、必要な箇所に対してより高精度の検査画像を生成することのできる撮像装置、および撮像装置を用いた表面検査装置および表面検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1)
一局面に従う撮像装置は、鏡面部を含む被検査物の表面状態を検査する表面検査装置に用いられる撮像装置であって、被検査物の周囲を囲むように配置され、被検査物に縞画像を投射する複数の平面または凹面形状の照明と、被検査物に対して所定位置に配置され、縞画像が投射された被検査物を撮像する撮像部と、を備える。
【0018】
従来、表面が鏡面の被検査物の表面状態を検査する場合、縞画像を投射して撮像して検査画像を生成するという方法が用いられていた。しかし、形状が複雑な場合、縞画像が投射される領域が狭く、同一の撮像位置での撮像で検査画像を生成できる部分が限られているために、より多くの撮像位置で個別に縞画像を撮像することが必要になり、撮像回数が増え、結果的に検査により多くの時間がかかるという課題があった。
一局面に従う撮像装置では、複数の平面または凹面形状の照明を被検査物の周囲を囲むように配置し、それぞれの照明から縞画像を投射することによって、複数の曲がり部を有する形状が複雑な被検査物であっても、より広い範囲の被検査物の表面に縞画像を投射することができる。そして、そのことによって、同一の撮像位置での撮像によって生成できる検査画像の範囲を広げ、撮像回数を少なくし、検査時間を短縮することができる。
特に照明を凹面形状とすることによって、より幅広い角度から被検査物に縞画像を投射することができる。
【0019】
(2)
第2の発明にかかる撮像装置は、一局面にかかる撮像装置において、複数の照明によって被検査物に投射される縞画像は照明ごとに異なり、撮像部は複数の照明によって投射された複数の縞画像の合成された画像を撮像するようにしてもよい。
【0020】
複数の照明を用いて撮像することは、例えば特許文献2,3にも記載されているが、特許文献2,3に記載の発明では、同じ縞画像を複数の照明を用いて被検査物に照射している(特許文献2図26参照)。これは、特許文献2,3の被検査物が自動車ボディであり、主として図26の縞の方向に曲面が形成されているためである。しかし、より複雑な形状の被検査物の場合、一方向に曲面が形成されているとは限らない。あるいは、方向によって曲面の曲率半径が異なる場合もある。このような場合には、複数の照明のそれぞれから方向および/または縞の間隔の異なる縞模様を被検査物に照射し、複数の縞画像の合成された画像を撮像することによって、曲面の形成されている方向が複数の場合、または、方向によって曲面の曲率半径が異なる場合にも正確な検査画像を生成することができる。
【0021】
(3)
第3の発明にかかる撮像装置は、一局面にかかる撮像装置において、さらに照明の光を反射する1つまたは複数の平面または凹面形状の鏡を備え、鏡で反射した縞画像が被検査物に投射され、撮像部は、複数の照明および鏡によって投射された複数の縞画像の合成された画像を撮像するようにしてもよい。
【0022】
照明を被検査物の周囲を囲むように配置する場合において、撮像部の配置されている方向、あるいは被検査物を保持している保持部の方向などでは、照明を配置することが困難である。このような場合には、照明を配置することが困難な方向に平面または凹面形状の鏡を配置し、照明の縞画像を鏡で反射させて被検査物に投射することによって、より幅広い角度から縞画像を投射することができる。また、照明と鏡とから縞画像を投射することによって、異なる方向および間隔の複数の縞画像が被検査物に投射され、複数の縞画像の合成された画像を撮像することによって、より正確な検査画像を生成することができる。
特に照明を凹面形状の鏡で構成することによって、より幅広い角度から被検査物に縞画像を投射することができる。
【0023】
(4)
第4の発明にかかる撮像装置は、第3の発明にかかる撮像装置において、鏡のうちの1つが撮像部側に配置されていてもよい。
【0024】
この場合、撮像部側に鏡を配置することによって、被検査物の画像のうちの撮像部に対向する部分に確実に縞画像を投射することができ、この部分に対する正確な検査画像を生成することができる。
【0025】
(5)
第5の発明にかかる撮像装置は、第4の発明にかかる撮像装置において、鏡は、放物面鏡からなり、撮像部は、鏡の中心に配置されていてもよい。
【0026】
放物面鏡は、平行光線が入射すると入射した平行光線が放物面鏡の焦点に集光するという性質がある。したがって、放物面鏡の焦点付近に被検査物を配置し、放物面鏡に対向する側から平行光線に近い縞画像を投射した場合、被検査物に間隔の狭い縞画像を投射することができる。そして、この、間隔の狭い縞画像が投射された被検査物を撮像することにより、より高精度の検査画像を生成することができる。
また、撮像部を鏡の中心に配置することによって、放物面鏡の上下左右から対称に縞画像を投射することができ、被検査物にひずみの少ない縞画像を生成することができる。
【0027】
(6)
第6の発明にかかる撮像装置は、第3の発明にかかる撮像装置において、被検査物の撮像部に対向する面を前面とした場合、被検査物の前方向、後方向、右方向、左方向、上方向、下方向のすべての方向に照明または鏡が配置されてもよい。
【0028】
この場合、すべての方向から縞画像が投射されるため、撮像部で撮像された被検査物の画像のすべての部分に縞画像が写り込んでおり、したがって、より少ない回数の撮像で検査に必要な画像を生成することができる。
【0029】
(7)
第7の発明にかかる撮像装置は、一局面から第6の発明にかかる撮像装置において、撮像部は、アーム駆動部により保持され、アーム駆動部を制御することにより被検査物に対する撮像位置を変更して撮像することができるようにしてもよい。
【0030】
6軸式協働ロボットなどで構成されたアーム駆動部に撮像部を保持することにより、1つの撮像部を用いて被検査物を任意の角度および距離から撮像することができる。
【0031】
(8)
他の局面に従う表面検査装置は、一局面から第7の発明に係る撮像装置に加えて、撮像装置で撮像された画像を処理して検査画像を生成する検査画像生成部を備える。
【0032】
他の局面に従う表面検査装置では、複数の照明により複数の曲がり部を有する形状が複雑な被検査物であっても、より広い範囲の被検査物の表面に縞画像を投射することによって、同一の撮像位置での撮像によって生成できる検査画像の範囲を広げ、撮像回数を少なくし、検査時間を短縮することができる。
【0033】
(9)
さらに他の局面に従う表面検査方法は、鏡面部を含む被検査物の表面状態を検査する表面検査方法であって、被検査物の周囲を囲むように配置された複数の平面または凹面形状の照明、および、照明の光を反射する1つまたは複数の平面または凹面形状の鏡から被検査物に縞画像を投射する縞画像投射工程と、被検査物に対して所定位置に配置された撮像部により、縞画像が投射された被検査物を撮像する撮像工程と、撮像工程で撮像された画像を処理して検査画像を生成する検査画像生成工程と、を備える。
【0034】
さらに他の局面に従う表面検査方法では、複数の平面または凹面形状の照明および1つまたは複数の平面または凹面形状の鏡を被検査物の周囲を囲むように配置し、それぞれの照明および鏡から縞画像を投射することによって、複数の曲がり部を有する形状が複雑な被検査物であっても、より広い範囲の被検査物の表面に縞画像を投射することができる。
そして、そのことによって、同一の撮像位置での撮像によって生成できる検査画像の範囲を広げ、撮像回数を少なくし、検査時間を短縮することができる。
【0035】
撮像装置で撮像された画像を処理して検査画像を生成する検査画像生成方法としては、特に限定されないが、例えば、特許文献2に記載のように、撮像部で撮像した被検査物の画像から、低い周波数領域での明部と暗部の境界領域を求めるとともに、高い周波数領域でかつレベルが所定値以上の領域を検出し、高い周波数領域でレベルが高い領域のうちの、明部と暗部の境界領域でない部分のみを抽出した画像を、欠陥部分を検出する、検査画像とすることができる。
また、異なる縞画像が投射された複数枚の被検査物10の画像を用いて検査画像を生成する方法も使用可能である。例えば、特許文献1に記載の、異なる縞画像が投射された被検査物の画像のそれぞれに1階微分処理を行い、複数の画像の微分値を加算して検査画像を生成する方法を用いることができる。
【0036】
(A)
第Aの発明にかかる撮像装置は、第3の発明にかかる撮像装置において、照明は凹面ディスプレイであって、凹面ディスプレイの縁部は、鏡面加工が施されていてもよい。
【0037】
照明を液晶などの凹面ディスプレイで構成することによって、被検査物に投射する縞画像を自由に変更することができる。
ただし、照明を凹面ディスプレイで構成した場合、ディスプレイの縁部は発光しない。このため、ディスプレイの縁部が写り込む被検査物の部分には縞画像が投射されない。これに対して、第7の発明にかかる撮像装置ではディスプレイの縁部に鏡面加工することによって対向する照明または鏡からの縞画像を反射させ、その結果、ディスプレイの縁部が写り込む被検査物の部分にも縞画像を投射することができる。
なお縁部の鏡面加工の方法としては、例えば鏡面シートを貼付してもよい。
【0038】
(B)
第Bの発明にかかる撮像装置は、一局面から第6の発明にかかる撮像装置において、被検査物を鉛直軸に沿って、回転可能に保持する保持部をさらに備えてもよい。
【0039】
複雑な形状の被検査物を撮像する場合、被検査物を水平方向のいろいろな角度から撮像する必要がある。
第Bの発明にかかる撮像装置では、保持部によって被検査物を鉛直方向に沿って回転し、撮像することによって、1つの撮像部を用いて被検査物を水平方向のいろいろな角度から撮像することができる。
【0040】
(C)
第Cの発明にかかる撮像装置は、第Bの発明にかかる撮像装置において、保持部は、被検査物を保持しつつ、鉛直方向に上下移動可能であるようにしてもよい。
【0041】
複雑な形状の被検査物を撮像する場合、被検査物を上下方向のいろいろな角度から撮像する必要がある。
第Cの発明にかかる撮像装置では、保持部によって被検査物を鉛直方向に上下移動させて撮像することによって、1つの撮像部を用いて被検査物を上下方向のいろいろな角度から撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本実施の形態にかかる撮像装置および表面検査装置の構成の一例を示す模式的ブロック図である。
図2】撮像装置内部の配置の一例を示す模式的斜視図である。
図3】各照明の縞画像の一例を示す模式図である。
図4】撮像部およびアーム駆動部の構成の一例を示す模式的側面図である。
図5】撮像部およびアーム駆動部の構成の他の例を示す模式的側面図である。
図6】保持部の構成の一例を示す模式的側面図である。
図7】被検査物撮像および表面検査のフローの一例を示すフローチャートである。
図8】縞画像が投射された被検査物の撮像結果の一例を示す画像である。
図9】縞画像が投射された被検査物の撮像結果の他の例を示す画像である。
図10】縞画像が投射された被検査物の撮像結果のさらに他の例を示す画像である。
図11】検査画像生成部により生成された被検査物の検査画像の一例を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0044】
(撮像装置100)
図1は、本実施の形態にかかる撮像装置100および表面検査装置300の構成の一例を示す模式的ブロック図である。
図2は、撮像装置100内部の配置の一例を示す模式的斜視図であり、図3は、各照明の縞画像の一例を示す模式図であり、図4は、撮像部30およびアーム駆動部60の構成の一例を示す模式的側面図であり、図5は、撮像部30およびアーム駆動部60の構成の他の例を示す模式的側面図であり、図6は、保持部50の構成の一例を示す模式的側面図である。
【0045】
図1および図2において、被検査物10は、保持部50に固定され、アーム駆動部60に固定された撮像部30に対向している。被検査物10は、鏡面部を含んだ部材である。
また、被検査物10は、天井側の照明20a、奥側の照明20b、および手前側の照明20cと、撮像部30側の鏡40a、被検査物10の下側の鏡40b、および被検査物10から見て撮像部30と逆側の鏡40cに取り囲まれている。照明20a、20b、20cは凹面形状のディスプレイで構成されている。照明20を凹面形状とすることによって、より幅広い角度から被検査物10に縞画像を投射することができる。
【0046】
撮像装置100は、照明20a、20b、20c、および鏡40a、40b、40cを備えることによって、被検査物10の撮像部30に対向する面を前面とした場合、被検査物10の前方向、後方向、右方向、左方向、上方向、下方向のすべての方向に照明20または鏡40が配置される。
撮像装置100は筐体80の中に配置され、筐体80は通常、入口側に開閉できるドア(図示せず)を備えている。
【0047】
なお、本実施の形態においては、照明20a、20b、20c、および鏡40a、40b、40cを備えることとしているが、六方のうち照明20を4方向に配置し、残りの2方を鏡としてもよく、照明20を5方向に配置し、残りの1方を鏡としてもよく、照明20を2方向に配置し、残りの4方を鏡としてもよい。
【0048】
(照明20)
本実施形態では、照明20を凹面ディスプレイ、具体的には凹面形状の液晶ディスプレイで構成している。照明20を液晶などのディスプレイで構成することによって、被検査物10に投射する縞画像を自由に変更することができる。ただし、照明20をディスプレイで構成した場合、ディスプレイの縁部は発光せず、したがって、ディスプレイの縁部が写り込む被検査物10の部分には縞画像が投射されない。このため、本実施形態の撮像装置100ではディスプレイの縁部に鏡面加工することによって対向する照明20または鏡40からの縞画像を反射させ、その結果、ディスプレイの縁部が写り込む被検査物10の部分にも縞画像を投射することができるようにしている。なお縁部の鏡面加工の方法としては、例えば鏡面シートを貼付してもよい。
また、被検査物10が複雑な形状をしている場合、特に曲面の方向が一方向でない場合には、例えば、図2の天井側の照明20aと奥側の照明20bと手前側の照明20cとの縞画像の方向を照明20ごとに異ならせてもよい。
図3(a)には、天井側の照明20aの縞画像の一例を、図3(b)には奥側の照明20bの縞画像の一例を、図3(c)には手前側の照明20cの縞画像の一例を示した。図3において、(前)は被検査物10から見て撮像部30の方向であり、矢印は縞画像を順次設定する場合の縞画像の移動方向を示す。
被検査物10の不具合が縞画像の移動方向と直交する場合、不具合として見つかりにくい可能性がある。これに対して、図3のように各照明20a,20b,20cの縞画像およびその移動方向を異ならせておくことにより、不具合の方向によらず不具合を確実に見つけることができる。
また、各照明20a,20b,20cの縞画像およびその移動方向は同一で、図3(a)の縞画像およびその移動方向と図3(b)の縞画像およびその移動方向とを交互に切り替えるようにしてもよい。
あるいは、曲面が2方向に形成されていてそれぞれの曲面の曲率半径が異なる場合には、縞の方向ごとに縞画像の縞の間隔を異ならせてもよい。
【0049】
(鏡40)
本実施形態では、鏡40aと鏡40bとは凹面鏡である。鏡40aと鏡40bとを凹面鏡にするのは、比較的面積の小さい鏡40を用いて、より幅広い角度から被検査物10に縞画像を投射することができるからである。特に、鏡40aと鏡40bとを放物面鏡にした場合には、放物面鏡の焦点付近に被検査物10を配置し、放物面鏡に対向する側から平行光線に近い縞画像を投射した場合、被検査物10に間隔の狭い縞画像を投射することができる。そして、この、間隔の狭い縞画像が投射された被検査物10を撮像することにより、より高精度の検査画像を生成することができる。
鏡40cの位置にドアがある場合には、鏡40cをドアの裏側に配置してもよい。
【0050】
(表面検査装置300)
図1に戻ると、表面検査装置300は、撮像装置100に加えて、制御部110、表示 操作部120、検査画像生成部200を備えている。制御部110は保持部50を制御して被検査物10の水平面上の角度および高さを調整し、アーム駆動部60を制御して撮像部30の被検査物10に対する撮像角度および距離を調整する。また、制御部110は各照明20a、20b、20cの投射する縞画像を設定するとともに撮像部30を制御して撮像を行う。
表示 操作部120は撮像部30で撮像した画像および検査画像生成部200で生成した検査画像などを表示するとともに、必要な入力操作を行う。
制御部110、表示 操作部120、検査画像生成部200は撮像装置100にネットワークで接続されたパーソナルコンピュータ等で構成してもよい。また、検査画像生成部200はその少なくとも一部の機能をネットワークで接続された別のコンピュータ、またはクラウド上のサーバー等で実行するようにしてもよい。
【0051】
(撮像部30およびアーム駆動部60)
図4および図5は、撮像部30およびアーム駆動部60の構成の一例を示す模式的側面図である。図4ではアーム駆動部60の先端に凹面鏡40aが備えられ、凹面鏡40aの中心に撮像部30が備えられている。一方、図5はアーム駆動部60の先端に凹面鏡40aが備えられている点では図4と同一であるが、撮像部30はアーム駆動部60の先端の上部に傾斜をつけて配置され、被検査物10を斜め上方向から撮像できるようになっている。したがって、凹面鏡40aで投射された縞画像を正面から撮像する場合は図4の構成が望ましく、凹面鏡40aで投射された縞画像を斜め上方向から撮像する場合は図5の構成が望ましい。
アーム駆動部60としては、6軸式協働ロボットを用いることが望ましい。この場合、図4および図5に示す軸回転および平行移動によって、被検査物10に対して自由に撮像角度および撮像距離を設定することができる。
なお、撮像部30の所定位置とは、被検査物10を正面から撮像する図4の位置、または被検査物10を斜め上方向から撮像する図5の位置のことである。
【0052】
(保持部50)
図6は、保持部50、保持部50の先端に配置された凹面鏡40b、および保持部50に固定された被検査物10の一例を示す模式的側面図である。保持部50は保持された被検査物10を鉛直軸に沿って回転させることと、鉛直方向に上下移動させることが可能である。したがって、撮像装置100は、保持部50と撮像部30を備えたアーム駆動部60とを協働させることによって、被検査物10を水平方向および鉛直方向のどの角度からでも撮像することができるように構成されている。
被検査物10の下方向には凹面鏡40bが配置されており、照明20aなどの縞画像が凹面鏡40bで反射して被検査物10に投射される。したがって、被検査物10を斜め下方向から撮像する場合でも確実に縞画像を被検査物10の撮像部位に投射することができる。
【0053】
(撮像および表面検査のフロー)
図7に、撮像装置100および表面検査装置300を用いた撮像、および表面検査のフローチャートを示す。以下、図7のフローチャートに沿って説明する。
(ステップS01)被検査物10に対する撮像部30の撮像位置を設定する。具体的には、保持部50で被検査物10を撮像方向に合わせて回転、および上下方向に移動した後、アーム駆動部60で撮像角度および撮像距離に合わせて撮像部30の方向および位置を設定する。
(ステップS02)照明20a、20b、20cに表示する縞画像を設定する。通常、最初の撮像前に縞画像の方向、間隔、位相(黒い縞の位置)を設定し、2回目以降の撮像では位相を少しずつ変更して撮像する。
(ステップS03)撮像部30で被検査物10を撮像する。
(ステップS04)撮影した縞画像の投射された被検査物10の画像を用いて検査に必要な検査画像を生成する。検査画像生成方法の詳細については後述する。
(ステップS05)生成された検査画像に基づき、欠陥の有無など、必要な検査を行う。検査は、検査画像を作業者が見て判断してもよいし、検査画像から欠陥の大きさ深さ等を測定し、測定値が閾値を超えているかどうかで判断してもよいし、AIなどを用いて判断させるようにしてもよい。
(ステップS06)必要な枚数の縞画像の撮像が完了するまでは縞画像の位相を少しずつ変更して撮像を繰り返す。必要な縞画像の枚数は、被検査物10および必要な解像度等によっても異なるが、例えば8枚程度である。
(ステップS07)現在の撮像位置での必要な枚数の縞画像の撮像、検査画像生成処理、および検査が終わったら、撮像位置を変更して再度縞画像の撮像を行う。必要な撮像位置での縞画像の撮像、検査画像生成処理、および検査がすべて終わったら、検査を終了する。
なお、検査が必要な撮像位置としては、被検査物10にもよるが、10乃至60程度である。したがって、全体の撮像枚数は80枚から480枚程度である。
また、複数の画像を用いて検査画像を生成する場合は、図7のフローチャートにおいて、ステップS6の必要縞画像枚数の撮影を完了した後に、検査画像生成処理(ステップS4)と検査(ステップS5)とを行う必要がある。
【0054】
(検査画像生成方法)
縞画像が投射された被検査物10の画像を処理して検査画像を生成する方法に関しては特に限定されないが、例えば、以下の方法を用いることができる。
特許文献2に記載のように、撮像部30で撮像した被検査物10の画像から、低い周波数領域での明部と暗部の境界領域を求めるとともに、高い周波数領域でかつレベルが所定値以上の領域を検出し、高い周波数領域でレベルが高い領域のうちの、明部と暗部の境界領域でない部分のみを抽出した画像を、欠陥部分を検出する、検査画像とすることができる。
また、特許文献6に記載のように、撮像部30で撮像した被検査物10の画像から、明暗パターンの明領域と暗領域の境界点を検出し、この境界点から明暗パターンの境界線のマスターを作成し、撮像画像内の明暗パターンの境界線とマスターの境界線とを比較することにより、撮像画像内の明暗パターンの形状が変化した部分のみを抽出した画像を、欠陥部分を検出するための検査画像とすることができる。
【0055】
以上は、縞画像が投射された被検査物10の1枚の画像を用いて検査画像を生成する方法であるが、異なる縞画像が投射された複数枚の被検査物10の画像を用いて検査画像を生成する方法も使用可能である。
ただし、複数の画像を用いて検査画像を生成する場合は、図7のフローチャートにおいて、ステップS6の必要縞画像枚数の撮影を完了した後に、検査画像生成処理(ステップS4)と検査(ステップS5)とを行う必要がある。
例えば、特許文献1に記載のように、異なる縞画像が投射された被検査物10の画像に1階微分処理を行い、複数の画像の微分値を加算して検査画像を生成する方法を用いることが可能である。
この場合、撮像された画像の(x、y)点における明るさをI(x.y)とし、そのx方向での微分値をIx(x,y)、y方向での微分値をIy(x、y)としたとき、それぞれの撮像された画像の(x、y)点での微分値の大きさIxyを
【数1】
で計算して、撮像された複数の画像の各(x、y)点における微分値の大きさIxyを加算することによって検査画像を生成することができる。この検査画像においては、縞画像の端部の微分値は複数の画像を加算することによって平均化されるが、表面の傷部分は平均化されないためはっきり区別されて浮かび上がる。
【0056】
また、特許文献5に記載のように、異なる縞画像の投射された複数の画像のそれぞれの画素における輝度の最大値と最小値との差を画素ごとに計算し、各画素の輝度の最大値と最小値との差を輝度とした検査画像を作成することも可能である。
この場合、欠陥の形成されていない部分は、白い縞が投射された場合は高輝度になり、黒い縞が投射された場合は低輝度になるため、輝度の最大値と最小値との差が大きくなり、検査画像の輝度は高くなる。一方、ブツ及びヘコミのような凹凸がある欠陥部分が形成された部位では、白い縞が投射された場合と黒い縞が投射された場合との輝度の差が小さくなるため、検査画像の輝度が低くなる。したがって、検査画像の中の輝度が所定値より低い部位を検出することで、欠陥を検出することができる。
【0057】
図8乃至図10に、縞の位相を変更して撮像した被検査物10の縞画像の一例を示す。また、図11には、図8乃至図10を含む8枚の被検査物10の縞画像を合成して生成した検査画像を示す。被検査物10は表面が鏡面であるため、普通に撮像した場合、鏡面反射により照明20や周りの物体が写り込んで被検査物10の傷の有無がよくわからないが、図11では被検査物10の傷(枠で囲った部分)がはっきりと見えており、表面状態の検査画像として好適である。
【0058】
本発明において、被検査物10が『被検査物』に相当し、表面検査装置300が『表面検査装置』に相当し、撮像装置100が『撮像装置』に相当し、照明20、20a,20b,20cが『照明』に相当し、撮像部30が『撮像部』に相当し、鏡40、40a,40b、40cが『鏡』に相当し、アーム駆動部60が『アーム駆動部』に相当し、検査画像生成部200が『検査画像生成部』に相当する。
【0059】
本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0060】
10 被検査物
20、20a,20b,20c 照明
30 撮像部
40,40a,40b,40c 鏡
60 アーム駆動部
80 筐体
100 撮像装置
200 検査画像生成部
300 表面検査装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11