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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025093359
(43)【公開日】2025-06-24
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20250617BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208950
(22)【出願日】2023-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山龍平
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033AA30
2H033BA05
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA37
2H033BB04
2H033BB14
2H033BB29
2H033BB30
2H033BE00
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】反射部材の過度な温度上昇を抑制するとともに、稼働状態までの復帰時間の遅延を抑制する。
【解決手段】本発明の定着装置は、回転する定着部材と、定着部材の外周面に当接してニップ部を形成し、ニップ部を通過する記録材を加圧する加圧部材と、定着部材の内側に配置された熱源と、反射部材であって、熱源からの輻射熱を定着部材の内周面に向けて反射する反射部と、定着部材を介して加圧部材の加圧力を受ける加圧受け部とを有し、反射部と加圧受け部とが、一体に又は熱的に接続されている反射部材と、を備える。
また、反射部材の加圧受け部と定着部材の間に断熱部材を有し、断熱部材は、専ら記録材の通紙領域に存在し、両端の非通紙領域には存在しないか、又は切欠き状である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する定着部材と、
前記定着部材の外周面に当接してニップ部を形成し、当該ニップ部を通過する記録材を加圧する加圧部材と、
前記定着部材の内側に配置された熱源と、
反射部材であって、前記熱源からの輻射熱を前記定着部材の内周面に向けて反射する反射部と、前記定着部材を介して前記加圧部材の加圧力を受ける加圧受け部とを有し、前記反射部と前記加圧受け部とが、一体に又は熱的に接続されている反射部材と、
を備える定着装置において、
前記反射部材の前記加圧受け部と前記定着部材の間に断熱部材を有し、
前記断熱部材は、専ら前記記録材の通紙領域に存在し、両端の非通紙領域には存在しないか、又は切欠き状であることを特徴とする、定着装置。
【請求項2】
前記断熱部材は、シート状に形成された、シリカエアロゲルを含む部材であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記通紙領域は、最大紙幅範囲であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記両端の非通紙領域に、前記通紙領域における前記断熱部材と同じ厚みの金属部材を有することを特徴とする、請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
前記断熱部材と前記定着部材の間に、前記定着部材の内周面に対する摺動性が高い摺動部材を有することを特徴とする、請求項1に記載の定着装置。
【請求項6】
前記摺動部材は、前記断熱部材よりも熱伝導率の高い部材で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
【請求項7】
前記摺動部材は、前記断熱部材の長手方向両端に対応する位置に、当該摺動部材よりも熱伝導率の低い部材を有することを特徴とする、請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の定着装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタなどの電子写真式の画像形成装置は、用紙などの記録材にトナー像を定着させる定着装置を備える。この定着装置には、種々の方式が用いられているが、一般的な方式として摺動ベルト方式が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、回転する定着部材と、定着部材に当接してニップ部を形成する加圧部材と、熱源と、熱源からの輻射熱を定着部材に向かって反射する反射部及び加圧部材の加圧力を、定着部材を介して受ける加圧受け部とが一体、もしくは熱的に接続された反射部材を有し、加圧受け部は、摺動性が高い摺動部材を介して定着部材に当接する定着装置が開示されている。
【0004】
上記定着装置は、輻射熱を反射部にて反射するため、定着部材を効率的に加熱できる。また、反射部と加圧受け部が一体、もしくは熱的に接続されているため、反射部の熱を定着部材などに逃がし、反射部(反射部材)の過度な温度上昇を抑制できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、その反面、定着装置が冷えた状態から稼働状態に復帰する際は、反射部材よりも熱容量の小さい定着部材の方が早く温度上昇するため、定着部材の熱が反射部材に逃げてしまい、定着装置の復帰時間が遅くなるおそれがあった。
【0006】
そこで本発明は、反射部材の過度な温度上昇を抑制するとともに、稼働状態までの復帰時間の遅延を抑制できる定着装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、回転する定着部材と、前記定着部材の外周面に当接してニップ部を形成し、当該ニップ部を通過する記録材を加圧する加圧部材と、前記定着部材の内側に配置された熱源と、反射部材であって、前記熱源からの輻射熱を前記定着部材の内周面に向けて反射する反射部と、前記定着部材を介して前記加圧部材の加圧力を受ける加圧受け部とを有し、前記反射部と前記加圧受け部とが、一体に又は熱的に接続されている反射部材と、を備える定着装置において、前記反射部材の前記加圧受け部と前記定着部材の間に断熱部材を有し、前記断熱部材は、専ら前記記録材の通紙領域に存在し、両端の非通紙領域には存在しないか、又は切欠き状であることを特徴とする、定着装置によって解決される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反射部材の過度な温度上昇を抑制するとともに、稼働状態までの復帰時間の遅延を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る断熱部材の構成を示す斜視図である。
図4】断熱部材の両端(端部領域)に金属部材を設けた構成を示す模式図である。
図5】従来の定着装置の概略構成図である。
図6】反射部材から定着ベルトに至る熱の流れを示す模式図である。
図7】本発明の一実施形態に係る定着装置の作用及び効果を示すマトリクス図である。
図8】均熱部材に、両端部領域への熱の移動を抑制する部材を設けた構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。以下、本発明を、電子写真式の画像形成装置であるレーザープリンタ(以下、「プリンタ」という。)に適用した実施形態について説明する。
【0011】
この画像形成装置1は、記録材である用紙P上に画像を形成する画像形成部100を備える。画像形成部100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の色ごとの作像部10Y,10M,10C,10Kが中間転写体としての中間転写ベルト20の回転方向に沿って配列されたタンデム型の画像形成装置である。各作像部10Y,10M,10C,10Kは、それぞれ、潜像担持体としての感光体11Y,11M,11C,11Kを備える。
【0012】
また、各作像部10Y,10M,10C,10Kは、感光体11Y,11M,11C,11Kの周囲に、帯電手段としての帯電装置と、静電潜像形成手段としての光書込装置9と、現像手段としての現像装置とを備える。さらに、感光体11Y,11M,11C,11Kの周囲には、一次転写手段としての一次転写装置と、クリーニング手段としてのクリーニング装置も備える。
【0013】
帯電装置は、感光体表面を一様に所定電位に帯電するものであり、光書込装置9は、帯電装置によって一様に帯電された感光体表面上に画像情報に応じて露光して静電潜像を書き込むものである。現像装置は、感光体上の静電潜像にそれぞれの色(Y、M、C、K)のトナーを付着させる現像処理によりトナー像を作成するものである。一次転写装置は、感光体上のトナー像を中間転写ベルト20上に転写するものであり、クリーニング装置は、感光体上の転写残トナーを除去してクリーニングするものである。
【0014】
各感光体11Y,11M,11C,11K上に形成された各色トナー像は、一次転写装置によって、中間転写ベルト20上に互いに重なり合うように一次転写され、中間転写ベルト20上にカラートナー像が形成される。中間転写ベルト20上のカラートナー像は、中間転写ベルト20の回転に伴って二次転写装置30との対向領域(二次転写領域)へと搬送される。
【0015】
一方、画像形成部100の下部には、保持する用紙Pを給送する給送部としての給紙カセット60が配置されている。給紙カセット60からピックアップローラ61により用紙Pが1枚ずつ給紙される。そして、搬送経路に沿って、レジストローラ対62により二次転写領域へと用紙Pが搬送される。
【0016】
中間転写ベルト20上のカラートナー像は、二次転写領域において、所定のタイミングでレジストローラ対62により搬送されてくる用紙P上に、二次転写装置30により二次転写される。カラートナー像が形成された用紙Pは、その後、定着手段としての定着装置40へと搬送され、熱と圧力の作用により、カラートナー像が用紙P上に定着される。定着後の用紙Pは、搬送経路に沿って搬送され、排紙ローラ63により排紙トレイ50へと排出される。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態に係る定着装置の概略構成図である。定着装置40は、回転する定着部材である定着ベルト42と、加圧部材である加圧ローラ41と、定着ベルト42の内側に配置された熱源43(図の例ではハロゲンヒータ)とを備え、加熱及び加圧によって定着を行う。
【0018】
また、定着ベルト42内には、ステー部材である定着ステー44によって保持されたニップ形成部材45が配置されている。ニップ形成部材45は、定着ベルト42を挟んで加圧ローラ41とニップ部を形成する。
【0019】
ニップ形成部材45は、ニップ面に配置される摺動部材であり熱移動部材である均熱部材45aと、これを支持する樹脂パッド45bとで構成されている。樹脂パッド45bの役割のひとつは、断熱であり、ニップ形成部材45を介した定着ステー44への定着ベルト42の熱吸収を抑制してウォームアップタイムやTEC値の増加を抑制する。
【0020】
均熱部材45aは定着ベルト42の幅方向に延在する例えばパット形状である。この均熱部材45aは定着ベルトの軸方向の温度を平均化するために配置される。すなわち、定着ベルト42の温度が高い箇所から熱を奪い、奪った熱を定着ベルト42の温度の低い箇所へ移動させて定着ベルト42の軸方向の温度を均一化する。
【0021】
図2の構成ではニップ部の形状は平坦であるが、凹形状やその他の形状であってもよい。凹形状のニップを形成することで、用紙先端の排出方向がより加圧ローラ41寄りになり、用紙の定着ベルト42に対する分離性が向上するのでジャムの発生が抑制される。
【0022】
均熱部材45aは、熱伝導率が50[W/m・K]以上の熱伝導性の高いアルミや銅などの金属部材であり、均熱部材45aの表面に摺動性能に優れたコーティングが施されている。コーティングの材料としては、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、又は飽和ポリエステル樹脂などの樹脂ベースのものが挙げられる。又は、このような樹脂ベースのコーティング材に、ガラス繊維、カーボン、グラファイト、フッ化グラファイト、炭素繊維、二硫化モリブデン、又はフッ素樹脂など混合してもよい。
【0023】
また、コーティングの材料として、金属ベースのものも用いることができる。金属ベースのコーティング材としては、二硫化モリブデン、ニッケル、ニッケルとフッ素樹脂の複合めっきなどが挙げられる。また、金属ベースのコーティング材としては、アルマイトもしくはアルマイトに樹脂や金属を含浸したものも挙げられる。また、コーティング材としてセラミックを用いることもできる。コーティング材として用いるセラミックとしては、炭化ケイ素セラミック、室化ケイ素セラミック、アルミナセラミック及びそれらと二硫化モリブデン、フッ素樹脂など混合したものを挙げることができる。
【0024】
また、アルミニウムもしくはアルミニウム合金にて形成された均熱部材45aの表層にアルマイト層を形成し、そのアルマイト層の微細孔に二次電解にて生成した二硫化モリブデンを微細孔の最深部から最表層に亘って充填したものなども有効である。
【0025】
本実施形態における高い熱伝導率を有する均熱部材45aは、アルミニウムの熱伝導率以上の熱伝導率を有する材料より作られ、上記のように処理される。こうして、高い熱伝導率を有する均熱部材45aが作られる。
【0026】
加圧ローラ41は、定着ベルト42の外周面に当接してニップ部を形成し、そのニップ部を通過する記録材を加圧する。加圧ローラ41は、金属ローラの外周にシリコーンゴム層が設けられており、離型性を得るためにシリコーンゴム層の表面に離型層(PFA又はPTFE層)が設けてある。また、加圧ローラ41はスプリングなどにより定着ベルト側に押し付けられており、ゴム層が押しつぶされて変形することにより、所定のニップ幅を有している。
【0027】
加圧ローラ41は画像形成装置1に設けられたモータなどの駆動源からギヤを介して駆動力が伝達され回転する。定着ベルト42は、ニップ部で加圧ローラ41から駆動力が伝達されることにより連れ回り回転する。
【0028】
加圧ローラ41は中実のローラであってもよいが、中空のほうが熱容量は少ないため好ましい。また、加圧ローラ41にハロゲンヒータなどの加熱源を有していてもよい。シリコーンゴム層はソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ内部にヒータが無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルトの熱が奪われにくくなるので、より望ましい。
【0029】
定着ベルト42は、ニッケルやSUSなどの金属ベルトやポリイミドなどの樹脂材料を基材とする無端ベルト(もしくはフィルム)である。定着ベルト42の表層はPFA又はPTFE層などの離型層を有し、トナーが付着しないように離型性をもたせている。
【0030】
定着ベルト42の基材と離型層の間にはシリコーンゴムの層などで形成する弾性層があってもよい。シリコーンゴム層がない場合は熱容量が小さくなり、定着性が向上するが、未定着画像を押しつぶして定着するときにベルト表面の微妙な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部にユズ肌状の跡が残るという不具合が生じる。これを改善するにはシリコーンゴム層を100μm以上設ける必要がある。シリコーンゴム層の変形により、微妙な凹凸が吸収されユズ肌画像が改善する。
【0031】
定着ステー44は、中空のパイプ状金属体であり、アルミ、又は鉄、ステンレスなどの金属からなる。本実施形態では、定着ステー44は、角型であるが、その他の断面形状であってもよい。加圧ローラ41により圧力を受けるニップ形成部材45の撓みを防止し、軸方向で均一なニップ幅が得られるようにしている。
【0032】
定着ベルト42を昇温させる熱源43は、定着ベルト42の内部に2つ設けられている。本実施形態では熱源43は、ハロゲンヒータであり、定着ベルト42は、内周側から熱源43の輻射熱で直接加熱される。ここで、熱源43は、定着ベルト42を加熱できればよく、IHコイルであっても良いし、抵抗発熱体、カーボンヒータなどであってもよい。
【0033】
また、定着ベルト42内には、熱源43からの輻射熱のロスをできるかぎり低減するために、定着ベルト側へ熱を反射させるリフレクタとしての反射部材48が配置されている。反射部材48には金属部材としての高純度のアルミ材をベースとし、高反射率、例えば反射率95%以上を得られるように表層に複数の増反射膜や保護膜を形成した高輝度アルミなどが用いられる。また構成によってはアルミ板の上に銀を蒸着させて、さらに反射率を向上させたものなどを用いてもよい。
【0034】
なお、本実施形態での反射率は分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製の紫外可視赤外分光光度計UH4150)を用い、入射角5°で測定したものである。
【0035】
本実施形態の反射部材48は、輻射熱を定着ベルト42の内周面に向けて反射させる反射部48aと、加圧ローラ41の加圧力を受ける加圧受け部48bとを有する。反射部48aは、熱源43と定着ステー44との間に配置されている。加圧受け部48bは、摺動部材である均熱部材45aと樹脂パッド45bとに挟まれる形で配設されている。
【0036】
さらに、加圧受け部48bと均熱部材45aの間には、両者間で熱伝導を減少させる断熱部材49が設けられている。この断熱部材49は、本発明の特徴的構成であり、その詳細について以下で説明する。
【0037】
図3は、本発明の一実施形態に係る断熱部材の構成を示す斜視図である。なお、図3では一方の端部しか示していないが、他方の端部も同様の構成となっている。また、均熱部材45aは省略している。
【0038】
図3に示すように、断熱部材49は、専ら記録材の通紙領域(加圧受け部48bの中央領域)にあり、非通紙領域(加圧受け部48bの端部領域)には存在しないか、切欠き状になっている。
【0039】
これにより、通紙領域における伝熱経路は、加圧受け部48b-断熱部材49-均熱部材45a-定着ベルト42となり、定着ベルト42と加圧受け部48bの間の熱伝導を遮断(又は減少)できる。
【0040】
一方、両端の非通紙領域における伝熱経路は、加圧受け部48b-均熱部材45a-定着ベルト42となり、定着ベルト42と加圧受け部48bの間の熱の移動を、通紙領域よりも大きくできる。
【0041】
断熱部材49は、専ら中央領域(通紙領域)に設け、両端部領域(非通紙領域)には設けないが(図3参照)、両端部領域に、断熱部材49と同じ厚みを有する金属部材52を設けてもよい(図4参照)。これにより、中央領域と端部領域における圧力分布を一様にでき、かつ、両端部領域では反射部材48(加圧受け部48b)の熱を効率的に均熱部材45aに移動できる。
【0042】
続いて、本実施形態の定着装置40について、その作用及び効果を説明する。
【0043】
(反射部材の温度上昇の抑制)
従来の定着装置は、例えば図5に示すように、反射部材148は、加圧受け部48bを有していない構成であった。反射部材148の反射率は約95~98%であり、反射部材自身も熱源143からの輻射熱を吸収するため、次第に温度上昇する。特に、大量の連続通紙(定着)を行った場合などには、反射部材148が300℃~400℃程度まで温度上昇することになる。
【0044】
一般に反射部材は、ある一定以上の熱負荷が加えられると、アルミ又は銀層が変色する。そうなると、反射率が低下して本来の性能を発揮できないだけでなく、最悪の場合は安全性問題にまで至るおそれがあった。そのため、従来の構成では、そのような温度に達することのない稼働率に制限する必要があり、生産性向上に対するボトルネックとなっていた。
【0045】
これに対し、本実施形態の反射部材48は、均熱部材45a(断熱部材49)と樹脂パッド45bとの間に、加圧ローラ41からの加圧力を受ける領域に延在する加圧受け部48bを有している(図2、3参照)。
【0046】
反射部材48は、上記したように熱伝導性の良い金属部材としてのアルミで構成されているため、反射部48aで吸収された熱は、すばやく部品全体(加圧受け部48b)に移動する。加圧受け部48bに移動した熱は、直接又は断熱部材49を介して均熱部材45aに移動する。均熱部材45aは熱伝導性の高い部材で形成されているため、加圧受け部48bからの熱を効率的に伝熱できる。
【0047】
均熱部材45aに伝わった熱は定着ベルト42に伝わり、トナー溶融に利用される。図6に主要な熱の流れを矢印で示す。これにより、反射部材48の過度の温度上昇を抑制することができる。また、反射部材48が吸収した熱をトナー溶融に用いることができるため、消費電力を低減できる。
【0048】
(復帰時間の遅延の抑制)
上記したように、本実施形態の定着装置40は、反射部48a(反射部材48)の過度な温度上昇を抑制できる。しかし、その反面、起動時又は停止状態からの復帰時など、定着装置が冷えた状態から稼働状態に復帰する際は、反射部材48の加圧受け部48bが定着ベルト42の熱を奪うことで、復帰時間に遅延が生じることが懸念される。これは、定着ベルト42の方が加圧受け部48bよりも低熱容量であり、定着ベルト42の方が先に温度上昇するためである。
【0049】
本実施形態の定着装置40(特に、専ら記録材の通紙領域に存在し、非通紙領域には存在しないか、切欠き状になっている断熱部材49)は、この復帰時間の遅延の抑制にも効果を有する。
【0050】
図7は、本発明の一実施形態に係る定着装置の作用及び効果を示すマトリクス図である。図7は、断熱部材が存在する中央領域又は存在しない端部領域と、定着装置の蓄熱状態(冷間又は熱間)とのマトリクスで、作用及び効果を示している。
【0051】
(A)端部領域×冷間
端部領域(非通紙領域)における定着ベルト42の熱は、均熱部材45aを介して反射部材48に奪われる(移動する)。しかし、非通紙領域であるため、復帰時間への影響は軽微である(問題なし)。
【0052】
(B)中央領域×冷間
中央領域(通紙領域)における定着ベルト42の熱は、断熱部材49により反射部材48に奪われにくい(移動しにくい)。したがって、定着ベルト42の昇温速度は遅くならず、復帰時間の遅延を抑制できる。
【0053】
(C)端部領域×熱間
端部領域(非通紙領域)における反射部材48の熱は、均熱部材45aを介して定着ベルト42に移動する。したがって、反射部材48の過度な温度上昇を抑制できる。
【0054】
(D)中央領域×熱間
中央領域(通紙領域)における反射部材48の熱は、断熱部材49により定着ベルト42に移動しにくい。しかし、その熱は、端部領域を経由して定着ベルト42に移動できるため((C)参照)、反射部材48の過度な温度上昇を抑制できる。
【0055】
以上より、本実施形態の定着装置は、反射部材の過度な温度上昇を抑制するとともに、稼働状態までの復帰時間の遅延を抑制できる。
【0056】
続いて、有利な構成について説明する。
【0057】
断熱部材49は、シート状に形成された、シリカエアロゲルを含む部材であることが望ましい。シリカエアロゲルはきわめて空隙率が高く、低密度(一般に、0.10~0.20g/cm程度)であるシリカゲルの総称であり、構成により空気と同程度の高い断熱性を有することができる。この素材を断熱部材49として用いることで、断熱部材49が存在する通紙領域において反射部材48の加圧受け部48bと均熱部材45aとの間の熱伝導を遮断(又は大幅に低減)できる。
【0058】
また、断熱部材49が設けられる記録材の通紙領域は、最大紙幅範囲であることが好ましい。反射部材48の過度な温度上昇の抑制と、稼働状態までの復帰時間の遅延の抑制とを、高い次元で両立することができる。
【0059】
均熱部材45aは金属部品であり熱伝導率が高いため、長手方向への熱移動量も多い。図8(a)に示すように、中央領域(通紙領域)における定着ベルト42の熱を、断熱部材49により反射部材48に移動しにくくしても、均熱部材45aの熱が中央領域から端部領域へ移動し、そこから反射部材48に移動し得る。
【0060】
そこで、図8(b)に示すように、均熱部材45aは断熱部材49の長手方向両端に対応する位置に、均熱部材45aよりも熱伝導率の低い部材54を挟み込む構成とする。これにより、均熱部材45aの熱が中央領域から端部領域へ移動することを抑制し、その結果、反射部材48に逃げることを抑制できる。
【0061】
均熱部材45aは、上記したように摺動性能に優れたコーティングを施して、定着ベルト42の内周面に対する摩擦係数を低くする。特に、加圧受け部48b表面の定着ベルト42の内周面に対する摩擦係数よりも低くすることが好ましい。
【0062】
これにより、反射部材48の加圧受け部48bを定着ベルト42の内周面に接触させる場合に比べて、定着ベルト42の摺動抵抗を低減できる。したがって、定着ベルト42を回転させるためのトルクを小さくでき、かつ、定着ベルト42の内周面の摩耗を抑制できる。
【0063】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明した。この実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して使用できる。例えば、実施形態と変形例をそれぞれ組み合わせてもよい。
【0064】
また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されない。
【0065】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
(態様1)
回転する定着部材と、
前記定着部材の外周面に当接してニップ部を形成し、当該ニップ部を通過する記録材を加圧する加圧部材と、
前記定着部材の内側に配置された熱源と、
反射部材であって、前記熱源からの輻射熱を前記定着部材の内周面に向けて反射する反射部と、前記定着部材を介して前記加圧部材の加圧力を受ける加圧受け部とを有し、前記反射部と前記加圧受け部とが、一体に又は熱的に接続されている反射部材と、
を備える定着装置において、
前記反射部材の前記加圧受け部と前記定着部材の間に断熱部材を有し、
前記断熱部材は、専ら前記記録材の通紙領域に存在し、両端の非通紙領域には存在しないか、又は切欠き状であることを特徴とする、定着装置。
(態様2)
前記断熱部材は、シート状に形成された、シリカエアロゲルを含む部材であることを特徴とする態様1に記載の定着装置。
(態様3)
前記通紙領域は、最大紙幅範囲であることを特徴とする態様1又は2に記載の定着装置。
(態様4)
前記両端の非通紙領域に、前記通紙領域における前記断熱部材と同じ厚みの金属部材を有することを特徴とする、態様1乃至3のいずれか一項に記載の定着装置。
(態様5)
前記断熱部材と前記定着部材の間に、前記定着部材の内周面に対する摺動性が高い摺動部材を有することを特徴とする、態様1乃至4のいずれか一項に記載の定着装置。
(態様6)
前記摺動部材は、前記断熱部材よりも熱伝導率の高い部材で形成されていることを特徴とする態様5に記載の定着装置。
(態様7)
前記摺動部材は、前記断熱部材の長手方向両端に対応する位置に、当該摺動部材よりも熱伝導率の低い部材を有することを特徴とする、態様5又は6に記載の定着装置。
(態様8)
態様1乃至7のいずれか一項に記載の定着装置を備える画像形成装置。
【符号の説明】
【0066】
1 画像形成装置
9 光書込装置
10C、10K、10M、10Y 作像部
11C、11K、11M、11Y 感光体
20 中間転写ベルト
30 二次転写装置
40 定着装置
41 加圧ローラ
42 定着ベルト
43、143 熱源
44 定着ステー
45 ニップ形成部材
45a 均熱部材
45b 樹脂パッド
48、148 反射部材
48a 反射部
48b 加圧受け部
49 断熱部材
50 排紙トレイ
52 金属部材
54 (熱伝導率の低い)部材
60 給紙カセット
61 ピックアップローラ
62 レジストローラ対
63 排紙ローラ
100 画像形成部
P 用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特開2023-106335号公報
図1
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図8