(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025093431
(43)【公開日】2025-06-24
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F01M 13/00 20060101AFI20250617BHJP
F01M 13/04 20060101ALI20250617BHJP
F01M 1/02 20060101ALI20250617BHJP
F01M 11/00 20060101ALI20250617BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
F01M13/00 F
F01M13/04 F
F01M13/00 H
F01M1/02
F01M11/00 R
F02F7/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023209059
(22)【出願日】2023-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】飛田 裕司
【テーマコード(参考)】
3G015
3G024
3G313
【Fターム(参考)】
3G015BB01
3G015BC02
3G015BD10
3G015BD24
3G015BE06
3G015BE14
3G015BF05
3G015BF08
3G015CA06
3G015DA02
3G015DA04
3G015EA12
3G024AA46
3G024AA47
3G024AA53
3G024BA21
3G024BA24
3G024FA07
3G024GA29
3G313BB04
3G313BB18
3G313BB23
(57)【要約】
【課題】流体の気液分離効果を高めることができるエンジンを提供する。
【解決手段】本開示のエンジンEは、ピストン3の往復運動を回転運動に変えるクランクシャフト2と、クランクシャフト2を支持するクランクケース4と、クランクケース4からピストン往復方向の一方側に突出するシリンダ6と、クランクケース4の下方に取り付けられて、クランクケース4内の被潤滑部位を潤滑したオイルを集める集液空間SPを形成するオイルパン14と、集液空間SP内からオイルを吸引してオイルタンク28に排出するスカベンジポンプ30とを備え、集液空間SPに上方から臨む位置にブリーザ取込口38aが形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンの往復運動を回転運動に変えるクランクシャフトと、
前記クランクシャフトを支持するクランクケースと、
前記クランクケースからピストン往復方向の一方側に突出するシリンダと、
前記クランクケースの下方に取り付けられて、クランクケース内の被潤滑部位を潤滑したオイルを集める集液空間を形成するオイルパンと、
前記集液空間内からオイルを吸引してオイルタンクに排出するスカベンジポンプと、
を備え、
前記集液空間に上方から臨む位置にブリーザ取込口が形成されているエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンにおいて、前記ブリーザ取込口は、前記スカベンジポンプの吸込口よりも高い位置に形成されているエンジン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエンジンにおいて、前記ブリーザ取込口は、前記クランクケースにおける前記オイルパンとの合面よりも上方の部位に形成されているエンジン。
【請求項4】
請求項1または2に記載のエンジンにおいて、前記ブリーザ取込口は、前記スカベンジポンプよりも、前記クランクシャフトの軸心方向の前記オイルパンの壁面寄りに配置されているエンジン。
【請求項5】
請求項1または2に記載のエンジンにおいて、前記オイルパンは、最深部を構成する底壁と、前記底壁から水平方向に遠ざかるにつれて上方に延びる傾斜壁とを有し、
前記ブリーザ取込口が前記傾斜壁に対向するように配置されているエンジン。
【請求項6】
請求項1または2に記載のエンジンにおいて、前記ブリーザ取込口にオイルが向かうのを阻止する立壁が設けられているエンジン。
【請求項7】
請求項6に記載のエンジンにおいて、前記立壁は、前記クランクシャフトの軸心方向に対して交差する方向に延びるエンジン。
【請求項8】
請求項6に記載のエンジンにおいて、前記立壁は、前記クランクシャフトが配置されるクランク室と連通する上下通路と、前記ブリーザ取込口との間に配置されているエンジン。
【請求項9】
請求項1または2に記載のエンジンにおいて、前記クランクシャフトの軸心方向と上下方向の両方に直交する直交方向の一方側に吸気ポートが配置され、他方側に排気ポートが配置され、
前記ブリーザ取込口から取り込まれた流体が供給されるブリーザ室が、前記クランクケースにおける前記直交方向の吸気ポート側に設けられ、
前記ブリーザ取込口は、前記直交方向に関して、吸気ポート側の壁面寄りに配置されているエンジン。
【請求項10】
請求項1または2に記載のエンジンにおいて、前記クランクケースは、前記シリンダが連結される第1ケース半体と、前記オイルパンが連結される第2ケース半体とを有し、
前記第2ケース半体に前記ブリーザ取込口が形成され、
前記第1ケース半体に、前記ブリーザ取込口から取り込まれた流体が供給されるブリーザ室が形成されているエンジン。
【請求項11】
請求項1または2に記載のエンジンにおいて、前記クランクケースに、前記ブリーザ取込口から取り込まれた流体が供給されるブリーザ室が形成され、
前記ブリーザ室は、前記クランクケースに形成された凹部と、前記クランクケースに取り付けられたカバー部材とにより形成されているエンジン。
【請求項12】
請求項11に記載のエンジンにおいて、前記カバー部材に、前記ブリーザ室内の気体成分を外部に導出する気体出口が形成され、
前記カバー部材の内面に、前記気体出口の周方向の少なくとも一部を覆う邪魔板が形成されているエンジン。
【請求項13】
請求項11に記載のエンジンにおいて、前記カバー部材は、シール部材を介して前記クランクケースに取り付けられ、
前記ブリーザ室は、前記ブリーザ室を複数の部屋に区画する隔壁と、前記隔壁に形成された連通孔とを有し、
前記隔壁の少なくとも1つが、前記シール部材で構成されているエンジン。
【請求項14】
請求項1または2に記載のエンジンにおいて、前記クランクケースに、前記ブリーザ取込口から取り込まれた流体が供給されるブリーザ室が形成され、
前記ブリーザ室内の液体成分を前記オイルパン内部に戻すオイル戻し口が、前記ブリーザ取込口よりも前記スカベンジポンプの吸込口に近い位置に開口しているエンジン。
【請求項15】
ピストンの往復運動を回転運動に変えるクランクシャフトと、前記クランクシャフトを支持するクランクケースと、前記クランクケースからピストン往復方向の一方側に突出するシリンダと、前記クランクケースの下方に取り付けられてクランクケース内の被潤滑部位を潤滑したオイルを集める集液空間を形成するオイルパンと、前記集液空間内からオイルを吸引してオイルタンクに排出するスカベンジポンプとを有するエンジンを備え、
前記集液空間に上方から臨む位置にブリーザ取込口が形成されている移動体。
【請求項16】
請求項15に記載の移動体であって、オフロード車両である移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば、乗物の駆動源として用いられるエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車のような乗物の駆動源として、エンジンが用いられることがある(例えば、特許文献1)。このようなエンジンでは、クランクケース内部の圧力を外部へ解放するために、クランクケースブリーザが設けられている。クランクケースブリーザに取り込まれた流体は、気液分離されたのち、気体成分は吸気通路に送られ、液体成分はオイルパンに送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
気液分離効果を高める観点から、クランクケースブリーザに供給される流体は、その液体成分が少ない方がよい。そのため、流体を取り込むブリーザ取込口は、オイルの攪拌が少ない場所に設けるのが好ましく、例えば、カムシャフトが回転しているシリンダヘッドのカム室や、クランクシャフトが回転しているクランクケースのクランク室等は好ましくない。クランクケースの下方のオイルパンの内部は、オイルの攪拌は少ないが、オイルで満たされているので、ブリーザ取込口を設けるのは難しかった。
【0005】
本出願の開示は、流体の気液分離効果を高めることができるエンジンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のエンジンは、ピストンの往復運動を回転運動に変えるクランクシャフトと、前記クランクシャフトを支持するクランクケースと、前記クランクケースからピストン往復方向の一方側に突出するシリンダと、前記クランクケースの下方に取り付けられて、クランクケース内の被潤滑部位を潤滑したオイルを集める集液空間を形成するオイルパンと、前記集液空間内からオイルを吸引してオイルタンクに排出するスカベンジポンプとを備え、前記集液空間に上方から臨む位置にブリーザ取込口が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示のエンジンによれば、オイルパンに集められたオイルがスカベンジポンプで排出されるので、オイルパン内のオイルの液面は高くならない。したがって、オイルパン内のオイルの液体成分が、ブリーザ取込口からブリーザ室に向かうのを防ぐことができ、流体の気液分離効果が向上する。特に、オイルパンの集液空間に上方から臨む位置に、すなわち、オイルパンの内部における高い位置にブリーザ取込口を配置すれば、オイルの液面の影響を受け難い。その結果、ブリーザ取込口から液体成分が取り込まれ難くなって、流体の気液分離効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るエンジンを示す側面図である。
【
図5】同エンジンのブリーザ室を示す斜視図である。
【
図6】同ブリーザ室からカバー部材およびシール部材を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図7】同ブリーザ室からカバー部材を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図9】同エンジンのブリーザ構造の流体の流れを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の好ましい実施形態について
図1~9を参照しながら説明する。本実施形態のエンジンEは、レシプロエンジンであり、例えば、例えば、胴体の先端にプロペラが配置される飛行機に用いられる。この場合、胴体内にエンジンEが収容されて、エンジン動力がプロペラに伝達される。エンジンEの用途は、これに限定されず、例えば、船舶の駆動源としても適用可能であり、二輪車や四輪車などの車両の駆動源としても適用可能である。
【0010】
以下の説明において、「幅方向WD」とは、エンジンEのクランクシャフト2の延びる方向、すなわち、クランクシャフト2の軸心方向をいう。幅方向WDにおいて、幅方向中心に向かう方向を「幅方向内側」といい、幅方向中心から離れる方向を「幅方向外側」という。「往復方向VD」とは、エンジンEのピストンの往復動方向をいう。「幅方向WD」と「往復方向VD」の両方に直交する方向を「直交方向PD」という。
【0011】
本実施形態のエンジンEは、クランクシャフト2が延びる方向に6つの気筒が並んだ6気筒エンジンである。ただし、気筒の数はこれに限定されず、例えば、4気筒であってもよい。また、本実施形態のエンジンEは、ガソリンエンジンであるが、燃料はガソリンに限定されない。クランクシャフト2は、ピストン3の往復運動を回転運動に変える。
【0012】
エンジンEは、クランクシャフト2を支持するクランクケース4と、クランクケース4から往復方向VDの一方に突出するシリンダ6と、シリンダ6の突出端に連結されたシリンダヘッド8とを有している。クランクシャフト2は、クランクケース4内部のクランク室5に配置されている。以下の説明において、往復方向VDにおいて、クランクケース4からシリンダ6が突出する方向を「上方」といい、その反対側を「下方」という。
【0013】
クランクケース4は、上下2つ割であり、クランクケースロア4aと、クランクケースアッパ4bとを有している。本実施形態では、クランクケースアッパ4bとシリンダ6は、型成形により一体に形成されている。ただし、クランクケースアッパ4bとシリンダ6が別体であってもよい。以下の説明において、クランクケースアッパ4bとシリンダ6が一体となったものをシリンダブロック10という。
【0014】
エンジンEは、さらに、シリンダヘッド8の上端に連結されたヘッドカバー12を有している。シリンダヘッド8とシリンダヘッドカバー12とでカム室が形成されている。カム室には、クランクシャフト2の回転に連動して吸排気バルブを開閉する動弁機構が配置される。
【0015】
エンジンEは、さらに、クランクケース4の下端に連結されたオイルパン14を有している。オイルパン14には、エンジンEの被潤滑部位を潤滑するエンジンオイルが貯留される。換言すれば、オイルパン14には、エンジンEの被潤滑部位を潤滑したオイルを集める集液空間SPが形成されている。
【0016】
本実施形態では、クランクケースアッパ4bは、シリンダ6に連結される第1ケース半体を構成する。一方、クランクケースロア4aは、オイルパン14が連結される第2ケース半体を構成する。
【0017】
シリンダヘッド8における直交方向PDの一方側(
図1の右側)の面に吸気ポート16が開口し、直交方向PDの他側端(
図1の左側)の面に排気ポート18が開口している。以下の説明において、直交方向PDにおける吸気ポート側を単に「吸気側」といい、排気ポート側を単に「排気側」という。
【0018】
吸気ポート16および排気ポート18はシリンダヘッド8の内部に形成された通路である。吸気ポート16の上流端は、シリンダヘッド8における直交方向PDの一方側に開口し、下流端はシリンダ6内部の燃焼室20に開口している。排気ポート18の上流端はシリンダ6内部の燃焼室20に開口し、下流端はシリンダヘッド8における直交方向PDの他方側前方に開口している。吸気ポート16は気筒毎に形成されている。同様に、排気ポート18も気筒毎に形成されている。
【0019】
吸気ポート16から外部の空気が吸気として燃焼室20に供給されるとともに、インジェクタ22から燃焼室20に燃料が噴射され、燃料と空気の混合気が形成される。燃焼室20内の混合気は点火プラグ24で点火されて燃焼する。燃焼後の排気ガスは、排気ポート18からエンジン外部に導出される。
【0020】
図2は、エンジンEを直交方向PDの吸気側から見た正面図である。同図に示すように、エンジンEの幅方向WDの一方側(
図2の右側)に出力軸25および減速機構26が設けられている。クランクシャフト2の回転力が減速機構26で減速されて、出力軸25に伝達される。出力軸25には、直接または動力伝達部材を介して航空機のプロペラ、車両の車輪、タービンの動翼、圧縮機のインペラ等が連結される。
【0021】
本開示のエンジンEは、オイルパン14の集液空間SP内からオイルを吸引してオイルタンク28に排出するスカベンジポンプ30を有するドライサンプ潤滑方式のエンジンである。
【0022】
本実施形態では、オイルタンク28は、エンジンEの外部に、すなわちエンジンEから離間して設けられている。スカベンジポンプ30から排出されたオイルは、オイルタンク28に貯留された後、フィードポンプ32により加圧されて、エンジンEの被潤滑部位が潤滑される。被潤滑部位を潤滑後のオイルは、上下通路27(
図3)を介してオイルパン14に戻される。上下通路27は、クランク室5とオイルパン14と連通する通路である。
【0023】
本実施形態では、オイルパン14は、最深部を構成する底壁14aと、底壁14aから水平方向、本実施形態ではエンジン幅方向WDに遠ざかるにつれて上方に傾斜して延びる傾斜壁14bとを有している。
【0024】
本実施形態では、スカベンジポンプ30はオイルパン14の内部に配置されている。詳細には、スカベンジポンプ30はオイルパン14の最深部に配置されている。スカベンジポンプ30は、オイルパン14の集液空間SP内のオイルを吸引して集液空間SPの外部に排出する。したがって、オイルパン14ではオイルの液面が高くならず、集液空間SP内はオイルの気体成分が多く存在する。
【0025】
本実施形態では、スカベンジポンプ30は、クランクシャフト2の回転に連動して駆動する。詳細には、ドライブチェーンのような動力伝達部材34により、クランクシャフト2の回転力がスカベンジポンプ30に伝達されている。
【0026】
本実施形態では、フィードポンプ32もオイルパン14内に配置されている。詳細には、フィードポンプ32は、オイルパン14の最深部で、オイルパン14の内部におけるエンジンEの幅方向WDの他方側(
図2の左側)に配置されている。スカベンジポンプ30とフィードポンプ32は、エンジン幅方向WDに並んで配置されている。
【0027】
本実施形態では、フィードポンプ32もクランクシャフト2の回転に連動して駆動する。詳細には、ドライブチェーンのような動力伝達部材34により、クランクシャフト2の回転力がフィードポンプ32に伝達されている。
【0028】
本実施形態では、共通の動力伝達部材34により、クランクシャフト2の回転力がスカベンジポンプ30とフィードポンプ32の両方に伝達されている。詳細には、スカベンジポンプ30の回転軸30aとフィードポンプ32の回転軸32aが同軸に配置され、両回転軸30a,32aが連結されている。動力伝達部材34はフィードポンプ32の回転軸32aに掛け渡されており、クランクシャフト2の回転力が、動力伝達部材34を介してフィードポンプ32の回転軸32aと、これに連結されたスカベンジポンプ30の回転軸30aに伝達される。
【0029】
エンジンEが始動すると、クランクシャフト2の回転に連動して、スカベンジポンプ30およびフィードポンプ32が駆動される。フィードポンプ32は、オイルタンク28の貯留されたオイルをエンジンEの被潤滑部位に圧送する。被潤滑部位を潤滑後のオイルは上下通路27を介してオイルパン14に戻される。オイルパン14の集液空間SP内のオイルは、スカベンジポンプ30により回収され、オイルクーラ35で冷却された後、オイルランク28に供給される。
【0030】
つぎに、本実施形態のエンジンEのクランクケース4のブリーザ構造36を説明する。クランクケース4の内部は、ブローバイガスや、オイルの蒸気により外気よりも高圧となっている。クランクケース4のブリーザ構造36は、このような圧力、すなわちエンジン内部の流体を外部へ解放するために設けられる。
【0031】
ブリーザ構造36は、ブリーザ導入通路38と、ブリーザ室40と、ブリーザ導出通路42と、戻り通路44とを有している。クランクケース4の内部の流体Fが、ブリーザ導入通路38から取り込まれ、ブリーザ室40に流入する。流体Fは、ブリーザ室40で気体成分Fgと液体成分Flに分離される。気体成分Fgは、ブリーザ導出通路42を通ってエンジンEの吸気系統に送られ、吸気とともに燃焼室20(
図1)に供給される。液体成分Flは、戻り通路44を通ってクランクケース4の内部に戻される。以下に詳細に説明する。
【0032】
本実施形態のブリーザ導入通路38は、クランクケース4の内部に形成された内部通路である。詳細には、ブリーザ導入通路38は、クランクケース4における直交方向PDの吸気側の壁面寄りに形成されている。より詳細には、ブリーザ導入通路38は、クランクケース4の吸気側の壁面におけるエンジン幅方向WDの一方側(
図2の右側)に形成されている。
【0033】
ブリーザ導入通路38は、上下方向に延びており、下端のブリーザ取込口38aがオイルパン14の集液空間SPに開口し、上端のブリーザ出口38bがブリーザ室40に開口している。
【0034】
ブリーザ取込口38aは、オイルパン14の集液空間SPに上方から臨む位置に配置されている。上下方向に関して、ブリーザ取込口38aは、スカベンジポンプ30の吸込口30bよりも高い位置に配置されている。また、ブリーザ取込口38aは、クランクケース4におけるオイルパン14との合面45よりも上方の部位に形成されている。
【0035】
詳細には、ブリーザ取込口38aは、クランクケース4のクランクケースロワ4aに形成され、クランクケース4を下方から見た
図3に示すように、合面45の内側、すなわち、集液空間SP側に配置されている。
【0036】
図2に示すように、エンジン幅方向WDに関して、ブリーザ取込口38aは、オイルパン14の傾斜壁14bに対向するように配置されている。つまり、ブリーザ取込口38aは、オイルパン14の傾斜壁14bの上方に配置されている。また、ブリーザ取込口38aは、スカベンジポンプ30よりも、エンジン幅方向WDの一方側に配置されている。本実施形態では、ブリーザ取込口38aは、オイルパン14におけるエンジン幅方向WDの一方側の壁面寄りに配置されている。
【0037】
図4に示すように、クランクケース4の下端部におけるブリーザ取込口38aの周囲に、立壁46が設けられている。立壁46は、ブリーザ取込口38aにオイルが向かうのを阻止する。本実施形態では、立壁46は、型成形によりクランクケース4と一体に形成されている。立壁46は、クランクシャフト2の軸心方向、すなわちエンジン幅方向WDに交差する方向VDに延びている。
【0038】
立壁46は、上下通路45と、ブリーザ取込口38aとの間に配置されている。本実施形態では、ブリーザ取込口38aに対して、直交方向PDの吸気側およびエンジン幅方向WDの一方側(
図4の右側)には、クランクケース4の壁が設けられている。立壁46は、ブリーザ取込口38aに対して、直交方向PDの排気側およびエンジン幅方向WDの他方側(
図4の左側)に設けられている。つまり、ブリーザ取込口38aは、クランクケース4の壁と立壁46によりほぼ全周が囲まれている。
【0039】
図2に示すように、クランクケース4のクランクケースアッパ4bに、ブリーザ室40が形成されている。詳細には、ブリーザ室40は、クランクケース4における直交方向PDの吸気ポート側に設けられている。ブリーザ室40には、ブリーザ取込口38aから取り込まれた流体が供給される。ブリーザ室40は、複数の部屋を有し、流体が部屋への流入および流出を繰り返すことで気液分離される。
【0040】
本実施形態では、ブリーザ室40は、クランクケース4に形成された凹部48と、クランクケース4に取り付けられたカバー部材50とにより形成されている。詳細には、
図5に示すように、カバー部材50は、複数のボルト54によりシール部材52(
図7)を介してクランクケース4に着脱自在に取り付けられている。シール部材52は、例えば、グラファイト製のガスケットである。ただし、シール部材52は、これに限定されない。
【0041】
本実施形態のブリーザ室40は、
図9に示すように、複数の隔壁56により区画された4つの部屋61,62,63,64を有している。
図6~9を用いて、本実施形態のブリーザ室40の各部屋61,62,63,64の構造を説明する。
図6はカバー部材50とシール部材52が取り外された状態を示し、
図7はカバー部材50のみが取り外された状態を示し、
図8はカバー部材50の裏面を示す。
図9は、ブリーザ室40内の流体Fの流れを簡略的に示す斜視図である。
【0042】
図6に示すように、ブリーザ室40には、凹部48の内部空間48aを区画する第1隔壁56aが形成されている。第1隔壁56aは、ブリーザ室40の凹部48を上端から下端まで上下方向VDに延びる壁で、凹部48の内部空間48aをエンジン幅方向WDに分割している。以下の説明において、凹部48の内部空間48aにおける第1隔壁56aで区画された部分のうち、エンジン幅方向WDの一方側部分を第1の部分48a1とし、他方側部分を第2の部分48a2とする。
【0043】
また、ブリーザ室40の凹部48に、第1の部分48a1を上下に区画する第2隔壁56bが形成されている。第2隔壁56bは、第1隔壁56aから凹部48の外壁までをエンジン幅方向WDに延びる壁で、第1の部分48a1を上下方向VDに分割している。以下の説明において、第1の部分48a1における第2隔壁56bで区画された部分のうち、上側部分を第3の部分48a3とし、下側部分を第4の部分48a4とする。
【0044】
図7に示すように、ブリーザ室40の凹部48の外周壁の端面、第1隔壁56aの端面および第2隔壁56bの端面には、シール部材の一種であるガスケット52が介在されている。本実施形態では、シール部材52が、凹部48の内部空間48aの第3の部分48a3を外側、すなわち、直交方向PDの吸気側から閉塞している。つまり、シール部材52における第3の部分48a3を外側から閉塞する部分が、第3隔壁56cを構成している。このように、本実施形態では、隔壁56の1つが、シール部材52で構成されている。
【0045】
図8に示すように、カバー部材50の裏面における第1隔壁56aに対応する部分に第4隔壁56dが形成され、第2隔壁56bに対応する部分に第5隔壁56eが形成されている。
【0046】
第4隔壁56dにより、カバー部材50の内部空間50aは、エンジン幅方向WD一方側(
図8の左側)の第1の部分50a1と、他方側(
図8の右側)の第2の部分50a2に区画されている。第5隔壁56eにより、カバー部材50の内部空間50aの第1の部分50a1が、上側の第3の部分50a3と、下側の第4の部分50a4に区画されている。
【0047】
カバー部材50に、ブリーザ室54内の気体成分を外部に導出する気体出口58が形成されている。本実施形態では、気体出口58は、カバー部材50の上下方向中間部よりもやや下方に設けられている。気体出口58にブリーザ導出通路42(
図2)が接続される。
【0048】
また、カバー部材50の内面、すなわち、裏面に邪魔板60が形成されている。邪魔板60は、カバー部材50の内面からブリーザ室40の内側に突出し、気体出口58の周方向の少なくとも一部を覆っている。本実施形態では、邪魔板60は、円弧形状であり、気体出口58の上方を覆っている。
【0049】
図9に示すように、クランクケース4にカバー部材50が取り付けられた状態で、凹部48の内部空間48aの第2の部分48a2と、カバー部材50の内部空間50aの第2の部分50a2が連通している。
【0050】
同様に、クランクケース4にカバー部材50が取り付けられた状態で、凹部48の内部空間48aの第3の部分48a3と、カバー部材50の内部空間50aの第3の部分50a3が連通している。ただし、凹部48の内部空間48aの第3の部分48a3と、カバー部材50の内部空間50aの第3の部分50a3は、シール部材52の第3隔壁56cにより区画されている。
【0051】
さらに、クランクケース4にカバー部材50が取り付けられた状態で、凹部48の内部空間48aの第4の部分48a4と、カバー部材50の内部空間50aの第4の部分50a4が連通している。
【0052】
このように、凹部48の内部空間48aの第4の部分48a4と、カバー部材50の内部空間50aの第4の部分50a4とにより、ブリーザ室40の第1の部屋61が形成されている。また、カバー部材50の内部空間50aの第3の部分50a3により、ブリーザ室40の第2の部屋62が形成され、凹部48の内部空間48aの第3の部分48a3により、ブリーザ室40の第3の部屋63が形成されている。さらに、凹部48の内部空間48aの第2の部分48a2と、カバー部材50の内部空間50aの第2の部分50a2とにより、ブリーザ室40の第4の部屋64が形成されている。
【0053】
第1の部屋61、第2の部屋62、第3の部屋63および第4の部屋64の順に、流体が流れる。流れ方向に隣接する部屋は、隔壁56に形成された連通孔70で連通している。第1の部屋61の底壁における直交方向PDの排気側部分に、ブリーザ導入通路38のブリーザ出口38bが開口している。
図8に示すように、カバー部材50の第5隔壁56eに第1連通孔71が形成されている。
図9の第1の部屋61と第2の部屋62は、第1連通孔71を介して連通している。
【0054】
図7に示すように、シール部材52の第3隔壁56cに第2連通孔72が形成されている。
図9の第2の部屋62と第3の部屋63は、第2連通孔72を介して連通している。
図6に示すように、第1隔壁56aにおける第3の部屋63を構成する部分に、第3連通孔73が形成されている。
図9の第3の部屋63と第4の部屋64は、第3連通孔73を介して連通している。
【0055】
つぎに、本実施形態のブリーザ室40の流体Fの流れを説明する。ブリーザ導入通路38のブリーザ出口38bから第1の部屋61に流入した流体Fは、第1の部屋61内を直交方向PDの吸気側に向かって流れた後、上方に向きを変えて流れ、第1連通孔71を通って第2の部屋62に流入する。
【0056】
第2の部屋62に流入した流体Fは、第2の部屋62内を直交方向PDの排気側に向かって流れ、第2連通孔72を通って第3の部屋63に流入する。第3の部屋63に流入した流体Fは、第3の部屋62内を直交方向PDの排気側に向かって流れた後、幅方向WDに向きを変えて流れ、第3連通孔73を通って第4の部屋64に流入する。第4の部屋64に流入した流体Fは、幅方向WDから下方に向きを変えて流れる。
【0057】
このように、流れる方向を変えながら、各部屋61,62,63,64への流入および流出を繰り返すことで、流体Fは、隔壁56への衝突や、膨張・収縮が行われ、気液分離が促進される。第4の部屋64において、分離された流体Fの気体成分Fgは、気体出口58からブリーザ導出通路42を通ってエンジンEの吸気系統に送られる。一方、分離された流体Fの液体成分Flは戻り通路44からオイルパン14に戻される。このとき、気体出口58の上方の邪魔板60により液体成分Flが気体出口58に流入するのを防いでいる。
【0058】
第4の部屋64の底壁におけるエンジン幅方向WDの他方側部分に、戻り通路44の入口44aが開口している。戻り通路44は、ブリーザ室40から下方に延びて、
図2に示すように、出口であるオイル戻し口44bがオイルパン14に開口している。流体Fの液体成分Flは、戻り通路44を通ってオイルパン14に戻される。
【0059】
本実施形態の戻り通路44は、ブリーザ導入通路38と同様に、クランクケース4の内部に形成された内部通路である。戻り通路44は、上下方向に延びており、下端のオイル戻し口44bがオイルパン14の集液空間SPに開口している。
【0060】
オイル戻し口44bは、集液空間SPにおけるブリーザ取込口38aよりもスカベンジポンプ30の吸込口30bに近い位置に開口している。本実施形態では、戻り通路44は、その一部(下端部)が、オイルパン14の壁に形成されており、スカベンジポンプ30の吸込口30b付近まで下方に延びている。本実施形態では、オイル戻し口44bは、スカベンジポンプ30の吸込口30bに向かって開口している。
【0061】
上記構成によれば、オイルパン14に集められたオイルがスカベンジポンプ30で排出されるので、オイルパン14内のオイルの液面は高くならない。したがって、オイルパン14内のオイルの液体成分が、ブリーザ取込口38aからブリーザ室40に向かうのを防ぐことができ、流体Fの気液分離効果が向上する。特に、オイルパン14の集液空間SPに上方から臨む位置、すなわち、オイルパン14の内部における高い位置にブリーザ取込口38aが配置されているので、オイルの液面の影響を受け難い。その結果、ブリーザ取込口38aから液体成分が取り込まれ難くなって、流体Fの気液分離効果が向上する。
【0062】
本実施形態において、ブリーザ取込口38aは、スカベンジポンプ30の吸込口30bよりも高い位置に形成されている。この構成によれば、スカベンジポンプ30による吸引によって、ブリーザ取込口38aをオイルの液面から上方に離して配置しやすい。したがって、オイルがブリーザ取込口38aからブリーザ室40に向かうのを防ぐことができる。その結果、流体Fの気液分離効果が向上する。
【0063】
本実施形態において、ブリーザ取込口38aは、クランクケース4におけるオイルパン14との合面45よりも上方の部位に形成されている。この構成によれば、ブリーザ取込口38aをオイルの液面から上方に離して配置しやすい。これによって、エンジンの姿勢が変化しても、オイルがブリーザ取込口38aからブリーザ室40に向かうのを防ぐことができる。その結果、流体Fの気液分離効果が向上する。
【0064】
本実施形態において、ブリーザ取込口38aは、スカベンジポンプ30よりも、クランクシャフト2の軸心方向、すなわち、エンジン幅方向WDのオイルパン14の壁面寄りに配置されている。この構成によれば、スカベンジポンプ30をブリーザ取込口38aから離しやすく、吸引時に生じるオイルの飛沫がブリーザ取込口38aに浸入するのを防ぐことができる。その結果、流体Fの気液分離効果が向上する。
【0065】
本実施形態において、オイルパン14は、最深部を構成する底壁14aと、底壁14aから水平方向に遠ざかるにつれて上方に延びる傾斜壁14bとを有し、ブリーザ取込口38aが傾斜壁14bの上方に配置されている。この構成によれば、傾斜壁14bにはオイルは溜まり難いので、オイルがブリーザ取込口38aからブリーザ室40に向かうのを防ぐことができる。その結果、流体Fの気液分離効果が向上する。
【0066】
本実施形態において、
図3に示すように、ブリーザ取込口38aにオイルが向かうのを阻止する立壁46が設けられている。この構成によれば、オイルがブリーザ取込口38aからブリーザ室40に向かうのを防ぐことができる。その結果、流体Fの気液分離効果が向上する。
【0067】
本実施形態において、立壁46は、クランクシャフト2の軸心方向、すなわち、エンジン幅方向WDに対して交差する方向に延びる。この構成によれば、姿勢変化によって、オイルパン14内のオイルがクランクシャフト2の軸心方向に移動した場合でも、立壁46によって、ブリーザ取込口38aにオイルが浸入することを阻止できる。その結果、流体Fの気液分離効果が向上する。
【0068】
本実施形態において、立壁46は、クランク室5と連通する上下通路27と、ブリーザ取込口38aとの間に配置されている。この構成によれば、立壁46によって、上下通路27を下方に向かうオイルがブリーザ取込口38aに浸入するのを阻止できる。その結果、流体Fの気液分離効果が向上する。
【0069】
本実施形態において、ブリーザ室40がクランクケース2における直交方向PDの吸気ポート側に設けられ、ブリーザ取込口38aは、直交方向PDに関して、吸気ポート側の壁面寄りに配置されている。この構成によれば、ブリーザ取込口38aからブリーザ室40を比較的低温となる吸気側に配置しつつ、ブリーザ取込口38aからブリーザ室40までの通路を短くすることができる。
【0070】
本実施形態において、下方のクランクケースロワ4aにブリーザ取込口38aが形成され、上方のクランクケースアッパ4bにブリーザ室40が形成されている。この構成によれば、クランクケースロワ4aからクランクケースアッパ4bに向かうブリーザ導入通路38を長く形成され、ブリーザ導入通路38内でも、流体が気液分離される。その結果、気液分離効果が向上する。また、ブリーザ室40がオイルパン14から離れるので、エンジンEの姿勢が変化して液面が傾いた場合にも対応できる。
【0071】
本実施形態において、ブリーザ室40は、クランクケース4に形成された凹部48と、クランクケース4に取り付けられたカバー部材50とにより形成されている。この構成によれば、カバー部材50の形状を変えることで、ブリーザ室40の容積を調整できる。
【0072】
本実施形態において、カバー部材50に、ブリーザ室40内の気体成分Fgを外部に導出する気体出口58が形成され、
図8に示す気体出口58の周方向の少なくとも一部を覆う邪魔板60がカバー部材50の内面に形成されている。この構成によれば、ブリーザ室40で気液分離された流体Fの液体成分Flが気体出口58に向かうのを防ぐことができる。
【0073】
本実施形態において、
図5に示すカバー部材50はシール部材52を介してクランクケース4に取り付けられ、ブリーザ室40は、ブリーザ室40を複数の部屋61~64に区画する隔壁56と、隔壁56に形成された連通孔70とを有し、隔壁56の少なくとも1つがシール部材52で構成されている。この構成によれば、シール部材52を隔壁56に利用できるので、クランクケース4に設ける隔壁56を減らすことができ、構造が簡単になる。
【0074】
本実施形態において、ブリーザ室40内の液体成分Flをオイルパン14の内部に戻すオイル戻し口44bが、ブリーザ取込口38aよりもスカベンジポンプ30の吸込口30bに近い位置に開口している。この構成によれば、オイル戻し口44bが導出された液体成分Flがスカベンジポンプ30の吸込口30bから吸い込まれるので、オイルパン14内の液体を効率的に排出できる。
【0075】
本開示のエンジンは、航空機、車両等の移動体に好適に搭載される。また、本開示のエンジンは、例えば、四輪バギー(全地形型車両)、ユーティリティ・ビークル、レクリエーショナル・ビークル等のオフロード車両に好適に搭載される。
【0076】
本実施形態では、ブリーザ導入通路38は内部通路であったが、ブリーザ取込口38aが集液空間SPに上方から臨む位置に形成されていれば、外部通路、すなわち、別体の配管であってもよい。外部通路の場合、集液空間SPに上方から臨む位置に配管の一端を配置し、エンジンの外側を通って他端がブリーザ室40に連通する。
【0077】
本開示のエンジンは、以下の態様1~16を含む。
[態様1]
ピストンの往復運動を回転運動に変えるクランクシャフトと、
前記クランクシャフトを支持するクランクケースと、
前記クランクケースからピストン往復方向の一方側に突出するシリンダと、
前記クランクケースの下方に取り付けられて、クランクケース内の被潤滑部位を潤滑したオイルを集める集液空間を形成するオイルパンと、
前記集液空間内からオイルを吸引してオイルタンクに排出するスカベンジポンプと、
を備え、
前記集液空間に上方から臨む位置にブリーザ取込口が形成されているエンジン。
[態様2]
態様1に記載のエンジンにおいて、前記ブリーザ取込口は、前記スカベンジポンプの吸込口よりも高い位置に形成されているエンジン。
[態様3]
態様1または2に記載のエンジンにおいて、前記ブリーザ取込口は、前記クランクケースにおける前記オイルパンとの合面よりも上方の部位に形成されているエンジン。
[態様4]
態様1から3のいずれか一態様に記載のエンジンにおいて、前記ブリーザ取込口は、前記スカベンジポンプよりも、前記クランクシャフトの軸心方向の前記オイルパンの壁面よりに配置されているエンジン。
[態様5]
態様1から4のいずれか一態様に記載のエンジンにおいて、前記オイルパンは、最深部を構成する底壁と、前記底壁から水平方向に遠ざかるにつれて上方に延びる傾斜壁とを有し、
前記ブリーザ取込口が前記傾斜壁に対向するように配置されているエンジン。
[態様6]
態様1から5のいずれか一態様に記載のエンジンにおいて、前記ブリーザ取込口にオイルが向かうのを阻止する立壁が設けられているエンジン。
[態様7]
態様6に記載のエンジンにおいて、前記立壁は、前記クランクシャフトの軸心方向に対して交差する方向に延びるエンジン。
[態様8]
態様6または7に記載のエンジンにおいて、前記立壁は、前記クランクシャフトが配置されるクランク室と連通する上下通路と、前記ブリーザ取込口との間に配置されているエンジン。
[態様9]
態様1から8のいずれか一態様に記載のエンジンにおいて、前記クランクシャフトの軸心方向と上下方向の両方に直交する直交方向の一方側に吸気ポートが配置され、他方側に排気ポートが配置され、
前記ブリーザ取込口から取り込まれた流体が供給されるブリーザ室が、前記クランクケースにおける前記直交方向の吸気ポート側に設けられ、
前記ブリーザ取込口は、前記直交方向に関して、吸気ポート側の壁面寄りに配置されているエンジン。
[態様10]
態様1から9のいずれか一態様に記載のエンジンにおいて、前記クランクケースは、前記シリンダが連結される第1ケース半体と、前記オイルパンが連結される第2ケース半体とを有し、
前記第2ケース半体に前記ブリーザ取込口が形成され、
前記第1ケース半体に、前記ブリーザ取込口から取り込まれた流体が供給されるブリーザ室が形成されているエンジン。
[態様11]
態様1から10のいずれか一態様に記載のエンジンにおいて、前記クランクケースに、前記ブリーザ取込口から取り込まれた流体が供給されるブリーザ室が形成され、
前記ブリーザ室は、前記クランクケースに形成された凹部と、前記クランクケースに取り付けられたカバー部材とにより形成されているエンジン。
[態様12]
態様11に記載のエンジンにおいて、前記カバー部材に、前記ブリーザ室内の気体成分を外部に導出する気体出口が形成され、
前記カバー部材の内面に、前記気体出口の周方向の少なくとも一部を覆う邪魔板が形成されているエンジン。
[態様13]
請求項11または12に記載のエンジンにおいて、前記カバー部材は、シール部材を介して前記クランクケースに取り付けられ、
前記ブリーザ室は、前記ブリーザ室を複数の部屋に区画する隔壁と、前記隔壁に形成された連通孔とを有し、
前記隔壁の少なくとも1つが、前記シール部材で構成されているエンジン。
[態様14]
態様1から13のいずれか一態様に記載のエンジンにおいて、前記クランクケースに、前記ブリーザ取込口から取り込まれた流体が供給されるブリーザ室が形成され、
前記ブリーザ室内の液体成分を前記オイルパン内部に戻すオイル戻し口が、前記ブリーザ取込口よりも前記スカベンジポンプの吸込口に近い位置に開口しているエンジン。
[態様15]
態様1から14のいずれか一態様に記載のエンジンを備えた移動体。
[態様16]
態様1から14のいずれか一態様に記載のエンジンを備えたオフロード車両。
【0078】
本開示は、以上の形態に限定されるものでなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記実施形態のエンジンEは、自動二輪車、三輪車、四輪バギー(全地形型車両)等の鞍乗型車両にも適用できる。エンジンEは、船外機に用いられてもよいし、航空機の推進源として用いられてもよい。そのほか、エンジンEは、四輪車両や小型滑走艇の推進源として用いられてもよい。気筒数は、6気筒に限定されず、6気筒未満でも、7気筒以上でもよい。エンジンEには、ターボチャージャまたはスーパーチャージャなどの過給機が付与されてもよい。したがって、そのようなものも本開示の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
2 クランクシャフト
3 ピストン
4 クランクケース
4a 第2ケース半体(クランクケースロワ)
4b 第1ケース半体(クランクケースアッパ)
5 クランク室
6 シリンダ
14 オイルパン
14a 底壁(最深部)
14b 傾斜壁
16 吸気ポート
18 排気ポート
27 上下通路
28 オイルタンク
30 スカベンジポンプ
30b スカベンジポンプの吸込口
38a ブリーザ取込口
40 ブリーザ室
45 クランクケースとオイルパンとの合面
46 立壁
48 凹部
50 カバー部材
52 シール部材
56 隔壁
58 気体出口
60 邪魔板
61~64 部屋
70 連通孔
E エンジン
SP 集液空間