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特開2025-9347金型温度判定方法、及び金型温度判定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009347
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】金型温度判定方法、及び金型温度判定システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/44 20060101AFI20250110BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20250110BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B29C39/44
H01F41/04 A
B29C39/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112288
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】石塚 照雄
(72)【発明者】
【氏名】宮本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尚紀
【テーマコード(参考)】
4F204
5E062
【Fターム(参考)】
4F204AC05
4F204AD03
4F204AD19
4F204AH34
4F204AQ01
4F204AR06
4F204AR20
4F204EA03
4F204EB01
4F204EB11
4F204EF27
4F204EK17
4F204EK26
5E062FF02
(57)【要約】
【課題】作業効率の向上を図ることができる金型温度判定方法を提供する。
【解決手段】金型温度判定方法は、注型炉内において樹脂が注入される注入部を有する金型の温度の異常を、注型炉内に金型を設置する前に判定するためのものである。金型温度判定方法は、熱画像撮像部を用いて注入部を撮像範囲に含むように金型を撮像し、熱画像を取得する熱画像取得工程と、熱画像取得工程で取得した熱画像から算出した注入部の温度が、所定の範囲から外れた場合に金型の温度が異常であると判定する異常判定工程と、を備える。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注型炉内において樹脂が注入される注入部を有する金型の温度の異常を、前記注型炉内に前記金型を設置する前に判定するための金型温度判定方法であって、
熱画像撮像部を用いて前記注入部を撮像範囲に含むように前記金型を撮像し、熱画像を取得する熱画像取得工程と、
前記熱画像取得工程で取得した前記熱画像から算出した前記注入部の温度が、所定の範囲から外れた場合に前記金型の温度が異常であると判定する異常判定工程と、を備える、
金型温度判定方法。
【請求項2】
前記金型の温度が異常であると判定された場合に、前記異常の発生とともに前記異常に応じた対応方法に関する情報を報知する報知工程を更に備える、
請求項1に記載の金型温度判定方法。
【請求項3】
前記熱画像取得工程の前に、
可視画像撮像部を用いて前記金型の外観を撮像し、可視画像を取得する可視画像取得工程と、
前記可視画像取得工程で取得した前記可視画像に基づいて、前記金型の機種を特定する機種特定工程と、
前記機種特定工程で特定された前記金型の機種に応じて、前記熱画像撮像部によって撮像する前記熱画像の撮像範囲を設定する設定工程と、を更に備える、
請求項2に記載の金型温度判定方法。
【請求項4】
前記金型ごとに、前記可視画像取得工程で取得した前記可視画像と、前記熱画像取得工程で取得した前記熱画像と、前記異常判定工程で算出した前記注入部の温度とを関連付けて記録する記録工程を更に備える、
請求項3に記載の金型温度判定方法。
【請求項5】
注型炉内において樹脂が注入される注入部を有する金型の温度の異常を、前記注型炉内に前記金型を設置する前に判定するための金型温度判定システムであって、
熱画像を撮像する熱画像撮像部と、
前記熱画像撮像部を用いて前記注入部を撮像範囲に含むように前記金型を撮像し、熱画像を取得する熱画像取得処理を実行可能な熱画像取得処理部と、
前記熱画像取得処理部で取得した前記熱画像から算出した前記注入部の温度が、所定の範囲から外れた場合に前記金型の温度が異常であると判定する異常判定処理を実行可能な異常判定処理部と、を備える、
金型温度判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、金型温度判定方法、及び金型温度判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モールド変圧器やモールド変成器等のモールドコイルの成形において、金型内にコイルを収容した状態で、金型内にモールド樹脂を注入し、金型の外部から加熱してモールド樹脂を硬化させることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-003824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モールド樹脂を注入する前の金型の温度が適正でない場合、例えば硬化したモールド樹脂の表面に気泡が生じる等の不具合を招くおそれがある。そのため、金型にモールド樹脂を注入するための注型炉内に金型を設置する前に、作業者が例えば接触式の温度計を用いて金型の温度測定及び異常温度の判定を行っている。作業者による金型の温度測定及及び異常温度の判定は、作業負担となっているため、作業効率の改善が課題となっていた。
【0005】
そこで、本発明の実施形態は、作業効率の向上を図ることができる金型温度判定方法、及び金型温度判定システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の金型温度判定方法は、注型炉内において樹脂が注入される注入部を有する金型の温度の異常を、前記注型炉内に前記金型を設置する前に判定するためのものである。金型温度判定方法は、熱画像撮像部を用いて前記注入部を撮像範囲に含むように前記金型を撮像し、熱画像を取得する熱画像取得工程と、前記熱画像取得工程で取得した前記熱画像から算出した前記注入部の温度が、所定の範囲から外れた場合に前記金型の温度が異常であると判定する異常判定工程と、を備える。
【0007】
実施形態の金型温度判定システムは、熱画像を撮像する熱画像撮像部と、前記熱画像撮像部を用いて前記注入部を撮像範囲に含むように前記金型を撮像し、熱画像を取得する熱画像取得処理を実行可能な熱画像取得処理部と、前記熱画像取得処理部で取得した前記熱画像から算出した前記注入部の温度が、所定の範囲から外れた場合に前記金型の温度が異常であると判定する異常判定処理を実行可能な異常判定処理部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による金型温度判定システムの一例を概略的に示す図
図2】一実施形態による金型温度判定システムについて、判定装置の電気的構成の一例を示すブロック図
図3】一実施形態による金型温度判定システムについて、熱画像取得処理部によって実行される熱画像撮像部の位置を変更させる場合の一例を示す図
図4】一実施形態による金型温度判定システムについて、報知部に表示される報知画面の一例を示す図(その1)
図5】一実施形態による金型温度判定システムについて、報知部に表示される報知画面の一例を示す図(その2)
図6】一実施形態による金型温度判定方法の工程の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示す金型温度判定システム1、金型温度判定システム1に適用する金型温度判定方法は、例えばモールド変圧器の製造に用いられる金型2の温度異常を、モールド変圧器の製造工程における注型工程の前に判定するためのものである。以下の説明では、金型温度判定システム1を単にシステム1と称する場合がある。
【0010】
注型工程は、注型炉90内において、図示しないコイルが収容された金型2内に液状の例えばエポキシ樹脂等の樹脂を注入する工程である。金型2は、注入部2aを有している。注入部2aは、コイルを収容可能な空間を有しており、注型炉90内において樹脂が注入される。注入部2aの向きや位置は、金型2の機種に応じて異なるように設計されている。金型2は、注型工程の前に例えばキュア炉内で予め所定の温度に加温されている。注型炉90とキュア炉とは、例えば同一施設内に設けられている。
【0011】
システム1は、無人搬送車10、管理装置20、撮像機構30、及び判定装置40を備えている。無人搬送車10は、予め決められた走行経路に沿って自動的に地上を走行する。本実施形態では、無人搬送車10は、図示しないキュア炉内の金型2を荷積みして注型炉90に金型2を搬送する。無人搬送車10は、無人搬送車10の上面に配置されたパレット11上に複数の金型2を配置可能に構成されている。無人搬送車10は、管理装置20によって運行制御される。なお、図1において、図面を見やすくするために、複数の金型2のうち一部のみを図示している。
【0012】
管理装置20は、パーソナルコンピュータ又はサーバ等のコンピュータで構成されており、無人搬送車10の運行を制御するためのプログラムが記憶されている。管理装置20は、当該プログラムを実行することにより無人搬送車10の運行に関する処理例えば走行の開始及び停止等を実行する。管理装置20には、無人搬送車10の走行経路や走行速度等の運行を管理するための各種情報が記憶されている。管理装置20は、判定装置40と有線又は無線で通信可能に構成されており、例えば無人搬送車10の走行又は停止の信号が判定装置40へ送信される。
【0013】
撮像機構30は、無人搬送車10によって注型炉90に搬送された金型2の可視画像及び熱画像を撮像する機能を有する。この場合、撮像機構30は、無人搬送車10上の金型2の可視画像及び熱画像を撮像する。撮像機構30は、図2に示すように、可視画像撮像部31、熱画像撮像部32、及び駆動部33を有している。可視画像撮像部31は、例えばデジタル画像等の可視画像を撮像可能な可視光カメラで構成されている。熱画像撮像部32は、撮像対象物から放射される赤外線を検出し、その赤外線の分布を色分布で示す熱画像を撮像可能な熱画像カメラで構成されている。本実施形態では、可視画像撮像部31と熱画像撮像部32とは、一体に構成されており、可視画像と熱画像とを同時又は個別に撮像できる。また、可視画像撮像部31と熱画像撮像部32とは、互いの撮像範囲が重なるように設けられている。可視画像撮像部31及び熱画像撮像部32は、撮像した各画像を判定装置40に出力する。
【0014】
駆動部33は、可視画像撮像部31及び熱画像撮像部32の撮像範囲を変更するためのものである。駆動部33は、可視画像撮像部31及び熱画像撮像部32の位置や向きあるいは姿勢を所定の範囲内で変更する図示しない駆動機構を有している。なお、可視画像撮像部31と熱画像撮像部32とが別体に構成されている場合、駆動部33は、可視画像撮像部31及び熱画像撮像部32の撮像範囲を個別に変更する構成にしても良い。撮像機構30は、駆動部33を備える代わりに、それぞれ異なる撮像範囲を撮像可能な位置に設けられた複数の可視画像撮像部31及び熱画像撮像部32を備える構成として、撮像に用いる可視画像撮像部31及び熱画像撮像部32を切り替えることで、撮像範囲を変更する構成としても良い。
【0015】
判定装置40は、パーソナルコンピュータ又はサーバ等のコンピュータで構成されている。判定装置40は、図2に示すように、制御部41、入力部42、報知部43、計時部44、及び記憶部45を有している。制御部41は、判定装置40全体の制御を司っている。制御部41は、例えば図示しないCPUや、ROM、RAM、及び書き換え可能なフラッシュメモリ等の記憶領域を有するマイクロコンピュータを主体に構成されている。判定装置40は、記憶領域に記憶されたプログラムを実行することによりシステム1を制御する。撮像機構30、入力部42、報知部43、計時部44、及び記憶部45は、それぞれ制御部41に電気的に接続されている。
【0016】
入力部42は、例えば操作ボタンやタッチパネルで構成されており、作業者からの入力操作を受け付ける。報知部43は、例えばディスプレイやスピーカ等で構成されており、作業者に対して必要な情報を例えば表示や音によって報知する。入力部42と報知部43とは、例えばタッチパネルディスプレイによって一体に構成できる。計時部44は、例えば基準となるある時点からの経過時間を測定する機能を有している。時間とは、ある一点の時刻からある一点の時刻までの時の長さを意味する。
【0017】
記憶部45は、例えば例えばROM、HDD、半導体メモリ、及び磁気ディスク等の周知の記憶媒体で構成できる。記憶部45は、金型2の機種を特定するための特定情報を記憶している。特定情報は、例えば金型の形状や色等の外観に関する外観情報が含まれる。
【0018】
制御部41には、可視画像取得処理部51、機種特定処理部52、設定処理部53、熱画像取得処理部54、異常判定処理部55、報知処理部56、及び記録処理部57等の各種の機能部が設けられている。本実施形態では、各機能部は、制御部41でプログラムを実行することによってソフトウェアで実現されているが、ハードウェアで実現することもできる。なお、可視画像取得処理部51、機種特定処理部52、設定処理部53、熱画像取得処理部54、異常判定処理部55、報知処理部56、及び記録処理部57の一部又は全部を、管理装置20に設けても良い。
【0019】
可視画像取得処理部51は、可視画像取得処理を実行可能である。可視画像取得処理は、無人搬送車10が注型炉90の前に到着した旨の信号を受け付けると、可視画像撮像部31を用いて金型2の外観を撮像し、可視画像を取得する処理を含む。この場合、可視画像取得処理は、駆動部33を駆動して、金型2に対する所定の位置例えば垂直上方に可視画像撮像部31を移動させて、可視画像撮像部31によって金型2を撮像する処理を含んでいる。可視画像を撮像する際の金型2に対する可視画像撮像部31の位置は、例えば施設内のレイアウト等に応じて任意に設定できる。
【0020】
機種特定処理部52は、機種特定処理を実行可能である。機種特定処理は、可視画像撮像部31で撮像された金型2の可視画像に基づいて、金型2の機種を特定する処理を含む。機種特定処理は、例えば可視画像撮像部31で撮像された金型2の可視画像の画像処理によって抽出された金型2の外観情報と記憶部45に記憶された特定情報に含まれる外観情報とを照合することで、金型2の機種を特定する処理を含む。
【0021】
設定処理部53は、設定処理を実行可能である。ここで、注型工程前に行う金型2の温度管理では、樹脂が注入される金型2の注入部2aの表面温度を確認することが重要である。また、金型2における注入部2aの位置や形状等は、金型2の機種によって異なる。そこで、設定処理は、機種特定処理で特定された金型2の機種に応じて、熱画像撮像部32によって撮像する熱画像の撮像範囲を設定する処理を含む。そして、熱画像撮像部32の撮像範囲には、少なくとも金型2の注入部2aが含まれるように設定される。これにより、注型工程に影響を及ぼす注入部2aを含む金型2の温度分布を、熱画像撮像部32によって適切に撮像できる。熱画像の撮像範囲は、金型2の機種と関連付けて予め記憶部45に記憶させておくことができる。
【0022】
熱画像取得処理部54は、熱画像取得処理を実行可能である。熱画像取得処理は、熱画像撮像部32を用いて金型2の注入部2aを撮像範囲に含むように金型2を撮像し、熱画像を取得する処理を含む。この場合、熱画像取得処理は、駆動部33を駆動して、設定処理で設定された熱画像の撮像範囲を撮像できるように熱画像撮像部32を移動させて、熱画像撮像部32によって金型2を撮像する処理を含んでいる。
【0023】
例えば、図3(a)に示すように、例えば無人搬送車10上の金型2の注入部2aが垂直方向を向いている場合、熱画像取得処理部54は、駆動部33を駆動して、垂直方向を向いた注入部2aが撮像可能な位置に熱画像撮像部32の姿勢や位置等を変更させる。一方、図3(b)に示すように、例えば無人搬送車10上の金型2の注入部2aが水平方向を向いている場合、熱画像取得処理部54は、駆動部33を駆動して、水平方向を向いた注入部2aが撮像可能な位置に熱画像撮像部32の姿勢や位置等を変更させる。
【0024】
異常判定処理部55は、異常判定処理を実行可能である。異常判定処理は、熱画像取得処理によって取得した熱画像から算出した注入部2aの表面温度が、所定の範囲例えば70℃~100℃の範囲から外れた場合に金型2の温度が異常であると判定する処理を含む。この場合、異常判定処理は、熱画像取得処理によって取得した熱画像を用いて、注入部2aの表面温度を算出する処理を含んでいる。
【0025】
また、熱画像に複数の金型2の注入部2aが含まれている場合、各金型2の注入部2aの表面温度が所定の範囲から外れているか否かによって個別に金型2の温度異常を判定しても良い。また、複数の金型2の注入部2aの表面温度のうち最も高い温度又は最も低い温度を、異常判定処理に用いる金型2の温度として採用しても良いし、複数の金型2の注入部2aの表面温度の平均値を異常判定処理に用いる金型2の温度として採用しても良い。なお、注入部2aの温度の算出は、異常判定処理で実行する構成に限らず、熱画像取得処理で実行する構成としても良い。
【0026】
報知処理部56は、報知処理を実行可能である。報知処理は、異常判定処理によって金型2の温度が異常であると判定された場合に、異常の発生とともに異常に応じた対応方法に関する情報を報知する処理を含む。報知処理部56は、報知部43を用いて、例えば表示や音によって異常の発生及び対応方法に関する情報を作業者に報知する。対応方法に関する情報とは、金型2の温度の異常を解消するための対応方法を含んでいる。
【0027】
報知処理部56は、金型2の温度が所定の範囲を下回っていた場合、図4に示すように、報知部43に、「温度が管理値を下回っています。金型を再加温してください。」との文字列を表示した報知画面431を報知部43に表示できる。報知画面431には、確認キー431aを表示できる。確認キー431aは、例えば「OK」との文字列が表示され、報知を終了するための操作を受け付ける。報知処理部56は、確認キー431aに対する操作を受け付けると、報知を終了させる。
【0028】
一方、報知処理部56は、金型2の温度が所定の範囲を上回っていた場合、図5に示すように、報知部43に、「温度が管理値を上回っています。金型に送風をしてください。」との文字列を表示した報知画面432を報知部43に表示できる。報知画面432には、確認キー432aを表示できる。確認キー432aは、確認キー431aと同様の機能を有する。なお、報知処理部56は、例えば金型2の温度が所定の範囲を上回っていた場合、報知を終了してから所定時間例えば10分経過すると、再度熱画像取得処理及び異常判定処理の実行を受け付けるための操作画面を報知部43に表示させる構成としても良い。
【0029】
記録処理部57は、記録処理を実行可能である。記録処理は、金型2ごとに、可視画像取得処理で取得した可視画像と、熱画像取得処理で取得した熱画像と、異常判定処理で算出した注入部2aの表面温度とを関連付けて記憶部45に記録する処理を含む。
【0030】
次に、図6を参照して金型温度判定システム1の制御内容の一例を説明する。なお、以下の説明において、各処理部51~57で行われる処理は全て制御部41が主体となって行うものとする。図6に示すように、処理が開始されると(スタート)、可視画像取得工程(ステップS11~S12)、機種特定工程(ステップS13)、設定工程(ステップS14)、熱画像取得工程(ステップS15~S16)、異常判定工程(ステップS17~S18)、報知工程(ステップS19)、及び記録工程(ステップS20)の順に処理が行われる。
【0031】
まず、制御部41は、ステップS11において、無人搬送車10が注型炉90の前に到着したか否かを判断する。無人搬送車10が注型炉90の前に到着した場合(ステップS11でYES)、制御部41はステップS12に処理を移行して、可視画像撮像部31を駆動して、金型2の可視画像を撮像する。次に、制御部41は、ステップS13において、金型2の可視画像の画像処理によって抽出された金型2の外観情報と記憶部45に記憶された特定情報に含まれる外観情報とを照合することで、金型2の機種を特定する。
【0032】
制御部41は、ステップS14において、特定された金型2の機種に応じて、熱画像撮像部32によって撮像する熱画像の撮像範囲を設定する。次に、制御部41は、ステップS15において、駆動部33を駆動して、設定された熱画像の撮像範囲を撮像できるように熱画像撮像部32を設定位置に移動させる。その後、制御部41は、ステップS16において、熱画像撮像部32を駆動して、熱画像を取得する。
【0033】
次に、制御部41は、ステップS17において、取得した熱画像を用いて、注入部2aの表面温度を算出する。制御部41は、ステップS18において、算出した注入部2aの表面温度が所定の範囲を外れているか否かを判断する。算出した注入部2aの表面温度が所定の範囲を外れている場合(ステップS18でYES)、制御部41は、ステップS19に処理を移行し、温度異常の発生及び異常に応じた対応方法を報知する。その後、制御部41は、ステップS20において、算出した注入部2aの表面温度、可視画像、及び熱画像を記憶部45に記録して、一連の処理を終了する(エンド)。一方、算出した注入部2aの表面温度が所定の範囲を外れていない場合(ステップS18でNO)、制御部41は、ステップS20に処理を移行し、算出した注入部2aの表面温度、可視画像、及び熱画像を記憶部45に記録して、一連の処理を終了する(エンド)。
【0034】
以上説明した実施形態によれば、金型温度判定方法は、注型炉90内において樹脂が注入される注入部2aを有する金型2の温度の異常を、注型炉90内に金型2を設置する前に判定するためのものである。金型温度判定方法は、熱画像取得工程と、異常判定工程と、を備える。熱画像取得工程は、熱画像撮像部32を用いて注入部2aを撮像範囲に含むように金型2を撮像し、熱画像を取得する。異常判定工程は、熱画像取得工程で取得した熱画像から算出した注入部2aの温度が、所定の範囲から外れた場合に金型2の温度が異常であると判定する。
【0035】
これによれば、金型2に樹脂を注入する注型工程の前に、金型2の温度の異常の有無を自動で判定できる。これにより、作業者による金型2の温度の測定作業が不要となるため、省人化による作業効率の向上を図ることができる。また、作業者による人為的ミスを回避した正確な温度異常の判定を自動で行うことができるため、品質リスクの低減を図ることができる。
【0036】
また、金型温度判定方法は、報知工程を更に備える。報知工程は、金型2の温度が異常であると判定された場合に、異常の発生とともに異常に応じた対応方法に関する情報を報知する。これによれば、金型2の温度が異常であること及び当該異常に対する適切な対応方法を作業者に対して的確に知らせることができる。これにより、作業者は異常に対して迅速に対応できるため生産性が向上される。
【0037】
更に、金型温度判定方法は、熱画像取得工程の前に行われる、可視画像取得工程と、機種特定工程と、設定工程と、を更に備える。可視画像取得工程は、可視画像撮像部31を用いて金型2の外観を撮像し、可視画像を取得する。機種特定工程は、可視画像取得工程で取得した可視画像に基づいて、金型2の機種を特定する。設定工程は、機種特定工程で特定された金型2の機種に応じて、熱画像撮像部32によって撮像する熱画像の撮像範囲を設定する。これによれば、多様な金型2の機種に応じて熱画像を取得できるため、効率的に金型2の温度異常の判定を行うことができる。
【0038】
金型温度判定方法は、記録工程を更に備える。記録工程は、金型2ごとに、可視画像取得工程で取得した可視画像と、熱画像取得工程で取得した熱画像と、異常判定工程で算出した注入部2aの温度とを関連付けて記録する。これによれば、金型2の温度に関するトレーサビリティを向上できるともに、信頼性を向上できる。
【0039】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
図面中、1は金型温度判定システム、2は金型、2aは注入部、32は熱画像撮像部、54は熱画像取得処理部、55は異常判定処理部、90は注型炉を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6