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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009367
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20250110BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 201C
H01G4/30 201L
H01G4/30 515
H01G4/30 512
H01G4/30 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112326
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河崎 淳一
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC03
5E001AE04
5E001AH04
5E001AJ02
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC19
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG28
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】積層セラミックコンデンサの耐湿性の低下を抑制する。
【解決手段】積層体110は、第1サイドマージン部S1および第2サイドマージン部S2の少なくとも一方から、第1端面および第2端面の少なくとも一方において内層部Cの一部のみを覆うように延伸している延伸誘電体部S1E,S2Eをさらに含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に沿って交互に積層された複数の誘電体層および複数の内部電極層を含み、前記積層方向において相対する第1主面および第2主面と、前記積層方向に直交する幅方向において相対する第1側面および第2側面と、前記積層方向および前記幅方向の両方に直交する長さ方向において相対する第1端面および第2端面とを含む積層体と、
前記第1端面に設けられた第1外部電極と、
前記第2端面に設けられた第2外部電極とを備え、
前記複数の内部電極層は、前記第1外部電極と接続された第1内部電極層、および、前記第2外部電極と接続された第2内部電極層を含み、
前記積層体は、前記第1内部電極層および前記第2内部電極層の互いに対向している対向部が前記積層方向に積層されて静電容量を有している内層部と、前記積層方向において前記内層部の第1主面側に位置する第1外層部と、前記積層方向において前記内層部の第2主面側に位置する第2外層部と、前記幅方向において前記内層部の第1側面側に位置する第1サイドマージン部と、前記幅方向において前記内層部の第2側面側に位置する第2サイドマージン部とを含み、
前記積層体は、前記第1サイドマージン部および前記第2サイドマージン部の少なくとも一方から、前記第1端面および前記第2端面の少なくとも一方において前記内層部の一部のみを覆うように延伸している延伸誘電体部をさらに含む、積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記複数の内部電極層における前記幅方向の最大ずれ量は、5μm以下である、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記長さ方向における端部において、前記積層方向の端部から中央部に向かうにしたがって、前記複数の内部電極層の幅が広くなっている、請求項1または請求項2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記延伸誘電体部は、前記積層方向の少なくとも中央部に位置している、請求項3に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記第1端面および前記第2端面の少なくとも一方において、前記複数の内部電極層における前記延伸誘電体部に覆われている部分に、SiおよびMgの少なくとも一方が偏析している、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサの構成を開示した先行文献として、特開2019-110158号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された積層セラミックコンデンサにおいては、容量形成部と、保護部とを具備する。容量形成部は、第1方向に積層され、第1方向と直交する第2方向の端部の位置が第2方向に0.5μmの範囲内に相互に揃っている複数の内部電極を有する。保護部は、容量形成部を第1および第2方向から覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-110158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、積層セラミックコンデンサの小型大容量化が進んでいる。そのため、積層セラミックコンデンサの外形が小さくなりつつ、当該外形に対する内部電極層の占有面積率が大きくなってきている。その結果、積層された複数の内部電極層を側方から挟む誘電体が薄くなるため、当該誘電体と外部電極との界面から浸入した水分が内部電極層に到達しやすくなり、積層セラミックコンデンサの耐湿性が低下する。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、耐湿性の低下が抑制された積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく積層セラミックコンデンサは、積層体と、第1外部電極と、第2外部電極とを備える。積層体は、積層方向に沿って交互に積層された複数の誘電体層および複数の内部電極層を含む。積層体は、上記積層方向において相対する第1主面および第2主面と、上記積層方向に直交する幅方向において相対する第1側面および第2側面と、上記積層方向および上記幅方向の両方に直交する長さ方向において相対する第1端面および第2端面とを含む。第1外部電極は、第1端面に設けられている。第2外部電極は、第2端面に設けられている。複数の内部電極層は、第1外部電極と接続された第1内部電極層、および、第2外部電極と接続された第2内部電極層を含む。積層体は、内層部と、第1外層部と、第2外層部と、第1サイドマージン部と、第2サイドマージン部とを含む。内層部においては、第1内部電極層および第2内部電極層の互いに対向している対向部が上記積層方向に積層されて静電容量を有している。第1外層部は、上記積層方向において内層部の第1主面側に位置する。第2外層部は、上記積層方向において内層部の第2主面側に位置する。第1サイドマージン部は、上記幅方向において内層部の第1側面側に位置する。第2サイドマージン部は、上記幅方向において内層部の第2側面側に位置する。積層体は、第1サイドマージン部および第2サイドマージン部の少なくとも一方から、第1端面および第2端面の少なくとも一方において内層部の一部のみを覆うように延伸している延伸誘電体部をさらに含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、積層セラミックコンデンサの耐湿性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの外観を示す斜視図である。
図2図1の積層セラミックコンデンサをII-II線矢印方向から見た断面図である。
図3図1の積層セラミックコンデンサをIII-III線矢印方向から見た断面図である。
図4図1の積層セラミックコンデンサをIV-IV線矢印方向から見た断面図である。
図5図2の積層セラミックコンデンサをV-V線矢印方向から見た断面図である。
図6図2の積層セラミックコンデンサをVI-VI線矢印方向から見た断面図である。
図7】複数の積層体チップの各々の第1側面にサイド用セラミックグリーンシートを一括して貼り付ける第1貼り付け工程を示す概略図である。
図8】複数の積層体チップをサイド用セラミックグリーンシートに一括して押し付けている状態を示す概略図である。
図9】第1貼り付け工程が実施された後の複数の積層体チップの状態を示す概略図である。
図10】複数の積層体チップの各々の第2側面にサイド用セラミックグリーンシートを一括して貼り付ける第2貼り付け工程が実施された後の複数の積層体チップの状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサについて図を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの外観を示す斜視図である。図2は、図1の積層セラミックコンデンサをII-II線矢印方向から見た断面図である。図3は、図1の積層セラミックコンデンサをIII-III線矢印方向から見た断面図である。図4は、図1の積層セラミックコンデンサをIV-IV線矢印方向から見た断面図である。図5は、図2の積層セラミックコンデンサをV-V線矢印方向から見た断面図である。図6は、図2の積層セラミックコンデンサをVI-VI線矢印方向から見た断面図である。図1図6には、後述する積層体の長さ方向L、積層体の幅方向W、積層体の積層方向Tを示している。
【0011】
図1図6に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、積層体110と第1外部電極120と第2外部電極130とを備える。積層体110は、積層方向Tに沿って交互に積層された複数の誘電体層140および複数の内部電極層150を含む。
【0012】
積層体110は、積層方向Tにおいて相対する第1主面111および第2主面112と、積層方向Tに直交する幅方向Wにおいて相対する第1側面113および第2側面114と、積層方向Tおよび幅方向Wの両方に直交する長さ方向Lにおいて相対する第1端面115および第2端面116とを含む。第1外部電極120は、第1端面115に設けられている。第2外部電極130は、第2端面116に設けられている。
【0013】
複数の内部電極層150は、第1外部電極120に接続された複数の第1内部電極層151、および、第2外部電極130に接続された複数の第2内部電極層152を含む。なお、図2図4においては、第1内部電極層151および第2内部電極層152の各々が5枚ずつ設けられている例を示しているが、第1内部電極層151および第2内部電極層152の各々の枚数は5枚に限定されない。
【0014】
図5に示すように、第1内部電極層151は、第2内部電極層152と対向している対向部151C、および、第1端面115に引き出されている引出部151Xを含む。図6に示すように、第2内部電極層152は、第1内部電極層151と対向している対向部152C、および、第2端面116に引き出されている引出部152Xを含む。
【0015】
図2図6に示すように、積層体110は、内層部Cと第1外層部X1と第2外層部X2と第1サイドマージン部S1と第2サイドマージン部S2と第1エンドマージン部E1と第2エンドマージン部E2とに区画される。
【0016】
内層部Cは、第1内部電極層151の対向部151Cおよび第2内部電極層152の対向部152Cが積層方向Tに積層されていることにより静電容量を有している。第1外層部X1は、積層方向Tにおいて内層部Cの第1主面111側に位置する。第2外層部X2は、積層方向Tにおいて内層部Cの第2主面112側に位置する。
【0017】
第1サイドマージン部S1は、幅方向Wにおいて内層部Cの第1側面113側に位置する。第2サイドマージン部S2は、幅方向Wにおいて内層部Cの第2側面114側に位置する。第1エンドマージン部E1は、長さ方向Lにおいて内層部Cの第1端面115側に位置する。第2エンドマージン部E2は、長さ方向Lにおいて内層部Cの第2端面116側に位置する。
【0018】
積層体110は、角部および稜線部に丸みを帯びていることが好ましい。ここで、角部は、積層体110の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体110の2面が交わる部分である。
【0019】
内層部Cに位置する誘電体層140の厚みは、0.4μm以上0.8μm以下であることが好ましい。また、第1外層部X1の厚みおよび第2外層部X2の厚みの各々は、10μm以上30μm以下であることが好ましい。内層部Cに位置する誘電体層140の厚み、第1外層部X1の厚みおよび第2外層部X2の厚みの各々は、積層体110の幅方向Wの中央部の位置における寸法である。
【0020】
複数の誘電体層140の各々は、たとえば、BaTiO、CaTiO、SrTiOまたはCaZrOなどのペロブスカイト構造の誘電体粒子を主成分として含む。複数の誘電体層140の各々は、上述した主成分に、Si化合物、Mg化合物、Mn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Ni化合物およびCo化合物の少なくともいずれかの、主成分よりも含有量の少ない副成分が含まれていてもよい。
【0021】
第1サイドマージン部S1および第2サイドマージン部S2は、BaおよびTiを含有するペロブスカイト化合物を主成分とする誘電体セラミック材料によって構成されている。第1サイドマージン部S1はおよび第2サイドマージン部S2は、複数の誘電体層140と同じ誘電体セラミック材料によって構成されていてもよいし、複数の誘電体層140と異なる誘電体セラミック材料によって構成されていてもよい。
【0022】
第1サイドマージン部S1および第2サイドマージン部S2は、SiおよびMgの少なくとも一方を含んでいてもよい。また、第1サイドマージン部S1および第2サイドマージン部S2は、Mnを含んでいてもよい。
【0023】
第1内部電極層151および第2内部電極層152の各々は、Ni、Cu、Ag、PdおよびAuからなる群より選ばれる1種の金属、または当該金属を含む合金を含む。第1内部電極層151および第2内部電極層152の各々は、誘電体層140に含まれるセラミックと同一組成系の誘電体粒子をさらに含んでいてもよい。また、第1内部電極層151および第2内部電極層152の各々と誘電体層140との界面に、Snが存在していてもよい。
【0024】
第1内部電極層151および第2内部電極層152の各々の厚みは、0.4μm以上0.8μm以下であることが好ましい。また、第1内部電極層151および第2内部電極層152を含む内部電極層150の枚数は、90枚以上900枚以下であることが好ましい。
【0025】
ここで、誘電体層140、第1内部電極層151および第2内部電極層152の各々の厚みは、以下の方法により測定することができる。
【0026】
まず、積層体110の積層方向Tおよび幅方向Wにより規定される面、すなわち積層体110の長さ方向Lと直交する面を、研削によって露出させ、露出させた断面を走査型電子顕微鏡にて観察する。次に、露出させた断面の中心を通る積層方向Tに沿った中心線、および、この中心線から両側に等間隔に2本ずつ引いた線の合計5本の線上において、誘電体層140の厚みを測定する。この5つの測定値の平均値を、誘電体層140の厚みとする。
【0027】
第1内部電極層151および第2内部電極層152の各々の厚みについても、誘電体層140の厚みを測定する方法に準じる方法で、誘電体層140の厚みを測定した断面と同じ断面について、走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【0028】
第1外部電極120は、積層体110の第1端面115の全体に形成されているとともに、第1端面115から、第1主面111、第2主面112、第1側面113および第2側面114に回り込むように形成されている。第1外部電極120は、第1内部電極層151と電気的に接続されている。
【0029】
第2外部電極130は、積層体110の第2端面116の全体に形成されているとともに、第2端面116から、第1主面111、第2主面112、第1側面113および第2側面114に回り込むように形成されている。第2外部電極130は、第2内部電極層152と電気的に接続されている。
【0030】
第1外部電極120および第2外部電極130は、たとえば、下地電極層と、下地電極層上に配置されためっき層とを備える。下地電極層は、焼付け電極層、樹脂電極層および薄膜電極層などの層のうち、少なくとも1つの層を含む。
【0031】
焼付け電極層は、ガラスと金属とを含む層であり、1層であってもよいし、複数層であってもよい。焼付け電極層は、たとえば、Ni、Cu、Ag、PdおよびAuからなる群より選ばれる1種の金属、または、この金属を含む合金で構成されており、たとえばAgとPdとの合金などを含む。
【0032】
焼付け電極層は、ガラスおよび金属を含む導電ペーストを積層体110に塗布して焼き付けることによって形成される。焼き付けは、積層体110の焼成と同時に行なわれてもよいし、積層体110の焼成後に行なわれてもよい。
【0033】
樹脂電極層は、たとえば、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含む層として形成することができる。樹脂電極層を形成する場合には、焼付け電極層を形成せずに、積層体上に樹脂電極層を直接形成するようにしてもよい。樹脂電極層は、1層であってもよいし、複数層であってもよい。
【0034】
薄膜電極層は、たとえば、金属粒子が堆積した1μm以下の層であり、スパッタ法または蒸着法などの既知の薄膜形成法により形成することができる。
【0035】
下地電極層上に配置されるめっき層は、たとえば、Ni、Cu、Ag、PdおよびAuからなる群より選ばれる1種の金属、または、この金属を含む合金で構成されており、たとえばAgとPdとの合金などを含む。めっき層は、1層であってもよいし、複数層であってもよい。ただし、めっき層は、Niめっき層の上にSnめっき層が形成された2層構造であることが好ましい。Niめっき層は、下地電極層が積層セラミックコンデンサ100を実装する際のはんだによって侵食されるのを防止する機能を有する。Snめっき層は、積層セラミックコンデンサ100を実装する際のはんだの濡れ性を向上させる機能を有する。
【0036】
図3に示すように、長さ方向Lにおける中央部において、積層方向Tの端部から中央部に向かうにしたがって、複数の内部電極層150の幅が広くなっている。図4に示すように、長さ方向Lにおける端部においても、積層方向Tの端部から中央部に向かうにしたがって、複数の内部電極層150の幅が広くなっている。
【0037】
この内部電極層150の幅の変化は、第1外層部X1および第2外層部X2の各々と内層部Cとの焼成時の熱収縮率の差に起因するものである。具体的には、焼成時の熱収縮率が、第1外層部X1および第2外層部X2の各々より内層部Cの方が小さいことに起因して、積層方向Tの中央部に位置する内部電極層150の幅が、積層方向Tの端部に位置する内部電極層150の幅より広くなっている。
【0038】
図3に示すように、長さ方向Lにおける積層体110の中央部における、積層方向Tおよび幅方向Wに平行な積層体110の断面において、複数の内部電極層150における幅方向Wの最大ずれ量Dは、5μm以下である。具体的には、複数の内部電極層150のうち、最も第1側面113側に位置する内部電極層150と、最も第2側面114側に位置する内部電極層150との、幅方向Wの最大ずれ量Dは、5μm以下である。
【0039】
図4図6に示すように、積層体110は、第1サイドマージン部S1および第2サイドマージン部S2の少なくとも一方から、第1端面115および第2端面116の少なくとも一方において内層部Cの一部のみを覆うように延伸している延伸誘電体部をさらに含む。
【0040】
具体的には、第1サイドマージン部S1から第1端面115および第2端面116の少なくとも一方において内層部Cの一部のみを覆うように延伸誘電体部S1Eが延伸している。第2サイドマージン部S2から第1端面115および第2端面116の少なくとも一方において内層部Cの一部のみを覆うように延伸誘電体部S2Eが延伸している。
【0041】
本実施形態においては、第1サイドマージン部S1から第1端面115および第2端面116の両方において内層部Cの一部のみを覆うように延伸誘電体部S1Eが延伸している。第2サイドマージン部S2から第1端面115および第2端面116の両方において内層部Cの一部のみを覆うように延伸誘電体部S2Eが延伸している。なお、延伸誘電体部S1Eと延伸誘電体部S2Eとの形状は、互いに対称な形状でなくてもよい。
【0042】
延伸誘電体部S1E,S2Eは、積層方向Tの少なくとも中央部に位置している。これにより、積層方向Tの中央部に位置する内部電極層150の幅方向Wの端部は、延伸誘電体部S1E,S2Eによって覆われている。本実施形態においては、内層部Cにおいて積層方向Tの中央寄りの30%以上70%以下の範囲に位置する内部電極層150の幅方向Wの端部が、延伸誘電体部S1E,S2Eによって覆われている。延伸誘電体部S1E,S2Eは、積層体110の長さ方向Lおよび幅方向Wにより規定される面、すなわち積層体110の積層方向Tと直交する面を、研削によって露出させ、露出させた断面を観察することで確認できる。もしくは、外部電極側から長さ方向Lに向かって積層セラミックコンデンサ100を研削することにより、延伸誘電体部S1E,S2Eを確認することができる。
【0043】
図4に示すように、延伸誘電体部S1E,S2Eは、最も第1主面111側に配置された内部電極層150の幅方向Wの端部と、最も第2主面112側に配置された内部電極層150の幅方向Wの端部とを、それぞれ繋いだ線LVを超えない範囲で内層部C内に延伸している。これにより、第1内部電極層151と第1外部電極120との接続、および、第2内部電極層152と第2外部電極130との接続の、各々が不十分になることを抑制することができる。
【0044】
第1端面115および第2端面116の少なくとも一方において、複数の内部電極層150における延伸誘電体部S1E,S2Eに覆われている部分に、SiおよびMgの少なくとも一方が偏析している。本実施形態においては、複数の内部電極層150の各々の幅方向Wの両端部にも、SiおよびMgの少なくとも一方が偏析している。SiおよびMgの偏析は、たとえば、SEM/EDXによって断面を観察することで確認できる。
【0045】
SiおよびMgの少なくとも一方が偏析している部分は、絶縁性が向上するため、仮に、積層方向Tに隣り合う内部電極層150の幅方向Wの端部同士が互いに近接している場合に、短絡が生ずることを抑制できる。この結果、積層セラミックコンデンサ100の信頼性を向上させることができる。
【0046】
積層セラミックコンデンサ100の長さ方向Lの寸法は、たとえば、0.1mm以上1.0mm以下である。積層セラミックコンデンサ100の積層方向Tの寸法は、0.05mm以上0.5mm以下である。積層セラミックコンデンサ100の幅方向Wの寸法は、たとえば、0.05mm以上0.5mm以下である。上記寸法は、公差を含む。
【0047】
以下、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。
【0048】
積層セラミックコンデンサ100の製造方法においては、まず、セラミックス粉末、バインダおよび溶剤を含むセラミックスラリーが準備される。このセラミックスラリーがキャリアフィルム上において、ダイコータ、グラビアコータまたはマイクログラビアコータなどを用いてシート状に成形されることで、後述する、内層用セラミックグリーンシート、外層用セラミックグリーンシートおよびサイド用セラミックグリーンシートが製作される。
【0049】
外層用セラミックグリーンシートおよびサイド用セラミックグリーンシートの各々は、内層用セラミックグリーンシートの材料と同様の材料で形成されていてもよいし、内層用セラミックグリーンシートの材料とは異なる成分を含む材料で形成されていてもよい。本実施形態においては、サイド用セラミックグリーンシートを作製する際に、SiおよびMgの少なくとも一方を添加する。
【0050】
次に、内層用セラミックグリーンシートに導電ペーストが帯状のパターンを有するようにスクリーン印刷、インクジェット印刷またはグラビア印刷などによって印刷されることにより、導電パターンが形成される。導電ペーストは、Ni粉、有機溶剤およびバインダなどを含む。
【0051】
内層部Cに位置する誘電体層140となる内層用セラミックグリーンシートの表面に内部電極層150となる導電パターンが印刷された素材シートが準備される。
【0052】
複数の素材シートおよび外層用セラミックグリーンシートが積層される。具体的には、内層用セラミックグリーンシート上に形成された帯状の導電パターンが同一の方向を向いた状態となるとともに、その帯状の導電パターンが隣り合う素材シート間において幅方向において半ピッチずつずれた状態となるように、複数の素材シートが積み重ねられる。積み重ねられた複数の素材シートの積層方向の両側に、複数の外層用セラミックグリーンシートが積層される。
【0053】
積層された外層用セラミックグリーンシートおよび素材シートが熱圧着されることにより、マザーブロックが製作される。マザーブロックは、押切刃などによって複数の積層体チップに個片化される。
【0054】
図7は、複数の積層体チップの各々の第1側面にサイド用セラミックグリーンシートを一括して貼り付ける第1貼り付け工程を示す概略図である。
【0055】
図7に示すように、複数の積層体チップ10の各々は、第1主面11、第2主面12、第1側面13、第2側面14、第1端面15および第2端面16を有している。第1主面11は、積層体110の第1主面111に対応する部分であり、第2主面12は、積層体110の第2主面112に対応する部分である。第1側面13は、積層体110の第1側面113に対応する部分であり、第2側面14は、積層体110の第2側面114に対応する部分である。第1端面15は、積層体110の第1端面115に対応する部分であり、第2端面16は、積層体110の第2端面116に対応する部分である。
【0056】
複数の積層体チップ10の各々の第1側面13にサイド用セラミックグリーンシートが一括して貼り付けられる第1貼り付け工程においては、複数の積層体チップ10の各々の第1側面13に第1サイドマージン部S1となるサイド用セラミックグリーンシート20が貼り付けられる。
【0057】
具体的には、図7に示すように、エキスパンドシート31によって粘着保持された複数の積層体チップ10の第1側面13が下方を向くように支持板32が配置されるとともに、当該複数の積層体チップ10の下方にサイド用セラミックグリーンシート20が複数の積層体チップ10と向き合うように配置される。
【0058】
ここで、サイド用セラミックグリーンシート20は、弾性体41上に展開した状態で配置され、弾性体41は、ステージ42上に載置される。続いて、図7中において示す矢印E方向に向けて支持板32が下降させられる。
【0059】
図8は、複数の積層体チップをサイド用セラミックグリーンシートに一括して押し付けている状態を示す概略図である。図8に示すように、複数の積層体チップ10がサイド用セラミックグリーンシート20に向けて一括して押し付けられる。その際、複数の積層体チップ10の各々は、当該複数の積層体チップ10にサイド用セラミックグリーンシート20を介して接触する部分の弾性体41がそれぞれその近傍において弾性変形する程度の押し付け力をもってサイド用セラミックグリーンシート20に向けて押し付けられる。
【0060】
これにより、複数の積層体チップ10と弾性体41とによって挟み込まれた部分のサイド用セラミックグリーンシート20が複数の積層体チップ10の第1側面13にそれぞれ圧着されることになるとともに、複数の積層体チップ10の第1側面13の縁部において剪断力がサイド用セラミックグリーンシート20に作用することでサイド用セラミックグリーンシート20が打ち抜かれる。
【0061】
この際に生じる第1側面13の角部による剪断力が第1側面13の稜線部による剪断力より強くなるように、サイド用セラミックグリーンシート20の物性が調整されている。たとえば、サイド用セラミックグリーンシート20の粘性が増加する添加剤が添加されていることにより、剪断力が角部より弱い稜線部によって剪断された部分にばりが生じるようにされている。その結果、第1側面13の稜線部によって剪断された部分のサイド用セラミックグリーンシート20には、延伸誘電体部となるばり部分23が生ずる。
【0062】
すなわち、サイド用セラミックグリーンシート20は、複数の積層体チップ10の各々によって打ち抜かれてサイドマージン部となる打ち抜き部分21と、打ち抜き部分21の縁の中央部分から延出したばり部分23と、打ち抜き後の残余部分22とに分かれる。その後、支持板32が上昇させられる。
【0063】
図9は、第1貼り付け工程が実施された後の複数の積層体チップの状態を示す概略図である。図9に示すように、エキスパンドシート31によって粘着保持された複数の積層体チップ10の各々の第1側面13が、当該打ち抜き部分21によって覆われた状態となる。さらに、第1端面15および第2端面16の各々の第1側面13寄りの部分が、ばり部分23によって覆われた状態となる。
【0064】
なお、サイド用セラミックグリーンシート20を複数の積層体チップ10に貼り付けるに際しては、必要に応じて、複数の積層体チップ10の第1側面13およびサイド用セラミックグリーンシートの主表面の少なくとも一方に、図示しない接着剤が予め塗布されていてもよい。ここで、使用可能な接着剤としては、各種の樹脂成分を主成分とするもの、または当該樹脂成分を溶剤中に溶解させたもの、あるいはその中にセラミックス粒子を分散させたペースト等が挙げられる。また、接着剤の塗布方法も特に制限されるものではなく、各種の方法が利用できる。
【0065】
続いて、複数の積層体チップ10の各々の第2側面14にサイド用セラミックグリーンシート20が一括して貼り付けられる第2貼り付け工程が実施される。図10は、複数の積層体チップの各々の第2側面にサイド用セラミックグリーンシートを一括して貼り付ける第2貼り付け工程が実施された後の複数の積層体チップの状態を示す概略図である。
【0066】
複数の積層体チップ10の各々の第2側面14にサイド用セラミックグリーンシート20が一括して貼り付けられる第2貼り付け工程も、上述した複数の積層体チップ10の各々の第1側面13にサイド用セラミックグリーンシート20が一括して貼り付けられる第1貼り付け工程に準じて、第1側面13にサイド用セラミックグリーンシート20が貼り付けられた後の複数の積層体チップ10の各々の第2側面14に、第2サイドマージン部S2となるサイド用セラミックグリーンシート20を一括して貼り付けるものであるため、ここでは、その説明は省略する。
【0067】
図10に示すように、エキスパンドシート31によって複数の積層体チップ10を粘着保持させた状態のまま、複数の積層体チップ10の第2側面14の各々にサイド用セラミックグリーンシート20(より厳密には、サイド用セラミックグリーンシート20の打ち抜き部分21)が貼り付けられることになる。さらに、第1端面15および第2端面16の各々の第2側面14寄りの部分が、ばり部分23によって覆われた状態となる。
【0068】
サイド用セラミックグリーンシート20を貼り付けられた積層体チップ10が、加熱されてセラミックス材料の焼結処理を施された後、バレル研磨されることにより、積層体110が形成される。
【0069】
積層体110の第1端面115および第2端面116の各々に導電性ペーストが塗布されることで金属層が形成され、形成された金属層に焼き付け処理が施され、さらにその後に、焼き付けられた金属層上にNiめっき、Snめっきを順に施すことで、第1外部電極120および第2外部電極130が形成される。
【0070】
以上において説明した一連の工程を経ることにより、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100を製造することができる。
【0071】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100においては、積層体110は、第1サイドマージン部S1および第2サイドマージン部S2の少なくとも一方から、第1端面115および第2端面116の少なくとも一方において内層部Cの一部のみを覆うように延伸している延伸誘電体部S1E,S2Eをさらに含む。これにより、複数の内部電極層150を側方から挟む誘電体である第1サイドマージン部S1および第2サイドマージン部S2と第1外部電極120および第2外部電極130との界面から浸入した水分が、内部電極層150に到達するまでの最短経路を長くすることができるため、積層セラミックコンデンサ100の耐湿性の低下を抑制することができる。
【0072】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100においては、複数の内部電極層150における幅方向Wの最大ずれ量は、5μm以下である。これにより、第1内部電極層151の対向部151Cと第2内部電極層152の対向部152Cとを広く確保して、静電容量を大きくすることができる。
【0073】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100においては、長さ方向Lにおける端部において、積層方向Tの端部から中央部に向かうにしたがって、複数の内部電極層150の幅が広くなっている。これにより、第1サイドマージン部S1および第2サイドマージン部S2と第1外部電極120および第2外部電極130との界面から浸入した水分が、積層方向Tの端部に位置する内部電極層150に到達するまでの最短経路を長くすることができるため、積層セラミックコンデンサ100の耐湿性の低下を抑制することができる。
【0074】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100においては、延伸誘電体部S1E,S2Eは、積層方向Tの少なくとも中央部に位置している。これにより、第1サイドマージン部S1および第2サイドマージン部S2と第1外部電極120および第2外部電極130との界面から浸入した水分が、積層方向Tの中央部に位置して幅が広い内部電極層150に到達するまでの最短経路を長くすることができるため、積層セラミックコンデンサ100の耐湿性の低下を抑制することができる。
【0075】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100においては、第1端面115および第2端面116の少なくとも一方において、複数の内部電極層150における延伸誘電体部S1E,S2Eに覆われている部分に、SiおよびMgの少なくとも一方が偏析している。これにより、仮に、積層方向Tに隣り合う内部電極層150の幅方向Wの端部同士において延伸誘電体部S1E,S2Eに覆われている部分が互いに近接している場合、SiおよびMgの少なくとも一方が偏析している部分は絶縁性が向上するため、当該端部同士の接触による短絡が生ずることを抑制できる。この結果、積層セラミックコンデンサ100の信頼性を向上させることができる。
【0076】
(付記)
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0077】
<1>
積層方向に沿って交互に積層された複数の誘電体層および複数の内部電極層を含み、前記積層方向において相対する第1主面および第2主面と、前記積層方向に直交する幅方向において相対する第1側面および第2側面と、前記積層方向および前記幅方向の両方に直交する長さ方向において相対する第1端面および第2端面とを含む積層体と、
前記第1端面に設けられた第1外部電極と、
前記第2端面に設けられた第2外部電極とを備え、
前記複数の内部電極層は、前記第1外部電極と接続された第1内部電極層、および、前記第2外部電極と接続された第2内部電極層を含み、
前記積層体は、前記第1内部電極層および前記第2内部電極層の互いに対向している対向部が前記積層方向に積層されて静電容量を有している内層部と、前記積層方向において前記内層部の第1主面側に位置する第1外層部と、前記積層方向において前記内層部の第2主面側に位置する第2外層部と、前記幅方向において前記内層部の第1側面側に位置する第1サイドマージン部と、前記幅方向において前記内層部の第2側面側に位置する第2サイドマージン部とを含み、
前記積層体は、第1サイドマージン部および第2サイドマージン部の少なくとも一方から、前記第1端面および前記第2端面の少なくとも一方において前記内層部の一部のみを覆うように延伸している延伸誘電体部をさらに含む、積層セラミックコンデンサ。
【0078】
<2>
前記複数の内部電極層における前記幅方向の最大ずれ量は、5μm以下である、<1>に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0079】
<3>
前記長さ方向における端部において、前記積層方向の端部から中央部に向かうにしたがって、前記複数の内部電極層の幅が広くなっている、<1>または<2>に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0080】
<4>
前記延伸誘電体部は、前記積層方向の少なくとも中央部に位置している、<3>に記載の積層セラミックコンデンサ。
【0081】
<5>
前記第1端面および前記第2端面の少なくとも一方において、前記複数の内部電極層における前記延伸誘電体部に覆われている部分に、SiおよびMgの少なくとも一方が偏析している、<1>から<4>のいずれか1つに記載の積層セラミックコンデンサ。
【0082】
上述した実施形態の説明において、組み合わせ可能な構成を相互に組み合わせてもよい。
【0083】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
10 積層体チップ、11,111 第1主面、12,112 第2主面、13,113 第1側面、14,114 第2側面、15,115 第1端面、16,116 第2端面、20 サイド用セラミックグリーンシート、21 打ち抜き部分、22 残余部分、23 ばり部分、31 エキスパンドシート、32 支持板、41 弾性体、42 ステージ、100 積層セラミックコンデンサ、110 積層体、120 第1外部電極、130 第2外部電極、140 誘電体層、150 内部電極層、151 第1内部電極層、151C,152C 対向部、151X,152X 引出部、152 第2内部電極層、C 内層部、D 最大ずれ量、E1 第1エンドマージン部、E2 第2エンドマージン部、L 長さ方向、S1 第1サイドマージン部、S1E,S2E 延伸誘電体部、S2 第2サイドマージン部、T 積層方向、W 幅方向、X1 第1外層部、X2 第2外層部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10