(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009368
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】建物の空調ダクトユニット及び空調構造、並びに空調ダクトユニットの設置方法
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20250110BHJP
【FI】
F24F13/02 A
F24F13/02 B
F24F13/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112334
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悟史
(72)【発明者】
【氏名】戸泉 正行
(72)【発明者】
【氏名】村田 孝友
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080AA07
3L080AB01
3L080AB06
3L080AC03
3L080AD02
3L080AD04
(57)【要約】
【課題】建物の外壁のガラリチャンバーと梁との間の開口幅が狭隘であっても、ダクトとガラリチャンバーとを確実に接続可能な空調構造を提供する。
【解決手段】建物1の外壁2にガラリチャンバー10を設置する。ガラリチャンバー10と近接して架設された梁3と、ガラリチャンバー10の間に開口幅W
5e=600mm以下の狭隘空間5が画成されている。空調ダクトユニット20の第1接続管23をガラリチャンバー10の屋内壁部12aに設ける、空調ダクトユニット20のダクト21を梁3の貫通穴3cに通し、ダクト21の先端部の第2接続管24を第1接続管23と接続する。ダクト21における貫通穴3cより屋内側の部分21aに入力された接続のための押し込み力が、第2接続管24に伝達可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に近接して架設された梁との間に開口幅600mm以下の狭隘空間を画成するように前記外壁に設置されたガラリチャンバーと接続される空調ダクトユニットであって、
前記ガラリチャンバーの屋内壁部に設けられた第1接続管と、
前記梁の貫通穴に通されたダクトと、
前記ダクトの屋外側の先端部に設けられ、前記第1接続管と接続される第2接続管と、
を備え、前記ダクトにおける前記貫通穴より屋内側の部分に入力された前記接続のための押し込み力が、前記第2接続管に伝達可能であることを特徴とする空調ダクトユニット。
【請求項2】
前記ダクトの長さが、2000mm以下である請求項1に記載の空調ダクトユニット。
【請求項3】
前記ダクトが、不燃性管、硬質管、軟質管から選択される1の管によって構成されている請求項1に記載の空調ダクトユニット。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の空調ダクトユニットと、
前記梁との間の前記開口幅が500mm以下であるガラリチャンバーと、
を備えたことを特徴とする建物の空調構造。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載の空調ダクトユニットの設置方法であって、前記梁よりも屋内側にて前記ダクトを支持しながら、前記貫通穴から前記狭隘空間に前記ダクト及び前記第2接続管を挿し入れて、かつ前記ダクト及び前記第2接続管における前記挿し入れられた部分を直接支持することなく、前記梁よりも屋内側から前記ダクトを屋外側へ押し込んで、前記第2接続管を前記第1接続管と接続することを特徴とする空調ダクトユニットの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁のガラリチャンバーと接続される空調ダクトユニット及び空調構造、並びに空調ダクトユニットの設置方法に関し、特に、ガラリチャンバーと近接する梁を貫通してガラリチャンバーと接続される空調ダクトユニット等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、高層オフィスビル等の建物の外壁に設置されたガラリチャンバーと、建物の屋内に配管されたダクトを有する建物用空調構造が記載されている。ガラリチャンバーは、屋外に面するガラリ部と、屋内に面するチャンバー部を含む。チャンバー部は、外壁近くの屋内に架設された鉄骨梁と対面している。ダクトが、鉄骨梁の貫通孔に通されている。チャンバー部から突出された第1接続管に、ダクトの端部の第2接続管が嵌め込まれている。第1接続管には板バネ状の係止突起が設けられており、第2接続管の管壁には係止開口が形成されている。係止突起が係止開口に嵌ることによって、第2接続管が第1接続管に引き抜き不能に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3232481号公報(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、ガラリチャンバーと鉄骨梁との間には、作業者がダクトとガラリチャンバーとの接続作業を行なうのに十分な開口幅が確保されている。作業者は、ガラリチャンバーと梁との間に体を入れて、ダクトの端部を支えながら、接続作業を行なう。
しかし、近年の高層オフィスビル等の建物においては、ガラリチャンバーと梁との間の開口幅が狭隘で、作業者がガラリチャンバーと梁との間に体を入れにくく、手を挿し入れることさえ出来ないケースも増えている。
本発明は、かかる事情に鑑み、ガラリチャンバーと梁との間の開口幅が狭隘であっても、ダクトとガラリチャンバーとを確実に接続できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、建物の外壁に近接して架設された梁との間に開口幅600mm以下の狭隘空間を画成するように前記外壁に設置されたガラリチャンバーと接続される空調ダクトユニットであって、
前記ガラリチャンバーの屋内壁部に設けられた第1接続管と、
前記梁の貫通穴に通されたダクトと、
前記ダクトの屋外側の先端部に設けられ、前記第1接続管と接続される第2接続管と、
を備え、前記ダクトにおける前記貫通穴より屋内側の部分に入力された前記接続のための押し込み力が、前記第2接続管に伝達可能であることを特徴とする。
【0006】
好ましくは、前記ダクトの長さが、2000mm以下である。
【0007】
好ましくは、前記ダクトが、不燃性管、硬質管、軟質管から選択される1の管によって構成されている。
【0008】
本発明に係る建物の空調構造は、前記空調ダクトユニットと、
前記梁との間の前記開口幅が500mm以下であるガラリチャンバーと、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明方法は、前記空調ダクトユニットの設置方法であって、前記梁よりも屋内側にて前記ダクトを支持しながら、前記貫通穴から前記狭隘空間に前記ダクト及び前記第2接続管を挿し入れて、かつ前記ダクト及び前記第2接続管における前記挿し入れられた部分を直接支持することなく、前記梁よりも屋内側から前記ダクトを屋外側へ押し込んで、前記第2接続管を前記第1接続管と接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、建物の空調構造において、ガラリチャンバーと梁との間の開口幅が狭隘であっても、ダクトとガラリチャンバーとを確実に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る空調構造が設置された建物の側面図である。
【
図2】
図2は、
図3(b)の空調ダクトユニット円部IIの拡大側面断面図である。
【
図3】
図3は、前記空調構造の設置工程を示し、同図(a)は、ダクトを梁に通す前の側面図である。同図(b)は、ダクトを梁に通す段階の側面図である。
【
図4】
図4は、前記空調構造の設置工程を示し、同図(a)は、第2接続管を第1接続管に嵌め込む途中の側面図である。同図(b)は、第2接続管を第1接続管に嵌め込んだ状態の側面図である。
【
図5】
図5は、前記第2接続管と第1接続管の係止突起とが互いに係止される様子を示し、
図5(a)は、第2接続管が係止突起に突き当たった状態の断面である。
図5(b)は、
図4(a)のVb-Vb線に沿う断面図である。
図5(c)は、
図4(b)のVc-Vc線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、高層オフィスビルなどの建物1における階間空間の外壁側部分を示したものである。建物1の外壁2は、例えばカーテンウォール構造になっている。屋内には、外壁2と近接して梁3が架設されている。梁3は、鉛直なウェブ3aと水平なフランジ3bを有する断面H形状の鉄骨梁である。
【0013】
図1に示すように、建物1の階間空間には、空調構造4が設けられている。空調構造4は、ガラリチャンバー10と、空調ダクトユニット20を備えている。外壁2にガラリチャンバー10が設置されている。ガラリチャンバー10は、ガラリ側部11と、立ち上がりチャンバー部12を含む。ガラリ側部11は、外壁2を貫通して、屋外と面している。立ち上がりチャンバー部12は、ガラリ側部11の屋内側端部から外壁2の屋内側面に沿って立ち上がる縦長断面のボックス状に形成されている。
【0014】
ガラリチャンバー10と梁3との間に、狭隘空間5が形成されている。狭隘空間5の下端部は、開口5eを介して屋内空間と連なっている。開口5eは、立ち上がりチャンバー部12の屋内壁部12aと下フランジ3bの屋外側縁3eとによって画成されている。開口5eの開口幅W5eすなわち壁部12aと側縁3eとの対向距離は、W5e=600mm以下であり、W5e=500mm以下でもよく、W5e=300mm以下でもよい。
【0015】
図2に示すように、空調構造4の空調ダクトユニット20は、第1接続管23と、ダクト21と、第2接続管24を備えている。第1接続管23は、立ち上がりチャンバー部12の屋内壁部12aに設けられている。第1接続管23は、鋼管からなる第1接続管本体23aと、その外周を覆う断熱材25と、取り付け板23bを含む。第1接続管本体23aの屋外側端部(
図2において左端部)に、取り付け板23bが設けられている。取り付け板23bが屋内壁部12aの屋内側を向く外面にビス止め等によって取り付けられている。これによって、第1接続管23の全体が屋内壁部12aから梁3側(屋内側、
図2において右側)へ突出されている。
【0016】
なお、取り付け板23bが屋内壁部12aの内面に貼り付けられることで、第1接続管23の少なくとも一部が屋内壁部12a内に埋め込まれていてもよい。
【0017】
第1接続管23には、周方向に間隔を置いて複数(例えば4つ、
図2においては2つだけ図示)の係止部材30が設けられている。係止部材30は、長方形の板状に形成され、その長手方向を第1接続管23の管軸方向(
図2において左右方向)へ向けて、接続管本体23aの外周面に溶接又はビス止め等によって固定されている。係止部材30における取り付け板23b側を向く先端部が、管径方向の内側(
図2において紙面奥側)へ、斜めに折り曲げられることによって、係止突起31を構成している。
なお、接続管本体23aを切り起こして係止突起31を形成してもよい。
【0018】
図2及び
図5(a)に示すように、係止突起31は、第1接続管23の管軸方向(
図5(a)において左右方向)に沿って屋外側(
図5(a)において左側)へ向かうにしたがって管径方向の内側(5(a)において下側)へ突出し、かつ管周方向の一側(
図2において上側)へ向かうにしたがって管径方向の内側へ突出する三角形の板バネ状に形成されている。接続管本体23aには、係止突起31を通すために穴部23cが形成されている。
なお、
図5においては、断熱材25の図示が省略されている。
係止突起31が、V字状に形成されていてもよい。
【0019】
ダクト21は、不燃性材料を主成分として含む不燃性管であってもよく、硬質材料を主成分として含む硬質管、軟質材料を主成分として含む軟質管であってもよい。不燃性管としては、鋼板等製のスパイラルダクト、ロール管等が挙げられる。硬質管としては、スパイラルダクト、ロール管等が挙げられる。軟質管としては、グラスウールフレキシブルダクト等が挙げられる。硬質材料又は軟質材料が不燃性を有していてもよく、ダクト21が、不燃性の硬質管又は不燃性の軟質管によって構成されていてもよい。軟質管の内周には保形用コイル芯材が設けられていてもよい。
【0020】
図1に示すように、ダクト21の長さL
21は、好ましくは狭隘空間5の幅W
5より大きくかつ2000mm以下である(W
5<L
21≦2000mm)。図示は省略するが、ダクト21の屋内側端部21fには、空調機器本体や延長ダクトやダンパーが接続される。
【0021】
ダクト21の中間部は、梁3に形成された貫通穴3cに通されている。ダクト21の屋外側の先端部21eは、狭隘空間5に配置されている。
先端部21eには、第2接続管24が設けられている。第2接続管24には、四角形の係止開口41が形成されている。係止開口41に係止突起31が係止されることによって、第2接続管24が第1接続管23と接続されている。ひいては、空調ダクトユニット20が、ガラリチャンバー10と接続されている。
【0022】
空調構造4は、建物1の外壁2及び梁3の構築後に、建物1に設置される。
空調ダクトユニット20の第1接続管23は、空調ダクトユニット20の製造工場からガラリチャンバー10の組み立て工場へ送られて、立ち上がりチャンバー部12に取り付けられる。第1接続管23付きのガラリチャンバー10が、建物1の施工現場に搬入されて、外壁2に設置される。なお、第1接続管23は、施工現場へ搬入された後、施工現場でガラリチャンバー10に取り付けられるようにしてもよい。
別途、空調ダクトユニット20のダクト21及び第2接続管24が、組み立てられて、建物1の施工現場に搬入される。
【0023】
図3(a)に示すように、建物1の施工現場においては、作業者Aは、梁3よりも屋内側の空間6で、ダクト21を梁3の高さまで持ち上げる。続いて、
図3(b)に示すように、屋内側の空間6においてダクト21を支持した状態で、第2接続管24を貫通穴3cから狭隘空間5に挿し入れる。さらに、
図4(a)に示すように、ダクト21における貫通穴3cより屋内側の部分21aを支持した状態で、ダクト21を屋外側へ押し込んで、第2接続管24を第1接続管23に嵌める。好ましくは、予め、第2接続管24のガイドマーク24gを、第1接続管23のガイドマーク23gと角度合わせしたうえで、ダクト21を真っ直ぐ押し込んで、第2接続管24を第1接続管23に嵌める。
【0024】
このとき、ダクト21及び第2接続管24における、狭隘空間5に挿し入れられた部分を直接支持することは不要である。したがって、作業者Aが、開口5eから狭隘空間5内に体を入れる必要がなく、手を挿し入れる必要もない。したがって、開口幅W5eが体を入れにくいほど狭くても、更には開口幅W5eが手を挿し入れられないほど狭くても、或いは開口5eから接続管23,24どうしの接続部まで手が届かなくても、作業に支障が生じることが無い。
【0025】
図5(a)に示すように、第2接続管24を第1接続管23に嵌め込むことによって、第2接続管24が第1接続管23の係止突起31に突き当たる。
図5(b)に示すように、更にダクト21を押し込むと、係止突起31が、第2接続管24によって押されて、管径方向の外側(
図5(b)において上側)へ引っ込む。
【0026】
つまり、
図4(a)に示すように、ダクト21の屋内側部分21aに入力された押し込み力Fが、第2接続管24に伝達可能であり、これによって、係止突起31を引っ込ませることができるよう、ダクト21の剛性や材質、管径、厚み、長さその他の寸法等が設定されている。ダクト21が軟質管からなる場合であっても、軟質材料の選択、寸法設定、保形用コイル芯材の装着等によって、力伝達機能を確保できる。
【0027】
更にダクト21を押し込んでいくと、
図5(c)に示すように、係止開口41が係止突起31と一致することによって、係止突起31が弾性復帰して係止開口41に嵌って係止され、ダクト21の引き抜きが阻止される。これによって、
図4(b)に示すように、第2接続管24が第1接続管23と接続される。ひいては、空調ダクトユニット20が、ガラリチャンバー10と接続される。
このようにして、空調構造4によれば、ガラリチャンバー10と梁3との間の開口幅5eが狭隘であっても、ダクト21とガラリチャンバー10を確実に接続することができる。
【0028】
最後に、第2接続管24の下側部に付されたセットサイン24sが第1接続管23によって完全に隠れたか否かを、開口5eを通して目視確認することで、正しく接続できたかどうかを判断する。もしくは、ダクト21の内部を屋内側(
図4(b)において右側)から覗き、係止突起31が第2接続管24の内面に出ているか目視確認する。
【0029】
空調ダクトユニット20をガラリチャンバー10と分離するときは。第2接続管24を一方向へ回すことで、係止突起31を係止開口41の縁に沿って摺擦させながら径方向外側へ変形させる。これによって、係止突起31が係止開口41から抜け出て、第2接続管24を第1接続管23から引き抜くことができる。
【0030】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、第2接続管24が第1接続管23の外周側に嵌め込まれるようになっていてもよい。第2接続管24に係止突起31が設けられていてもよく、第1接続管23に係止開口41が形成されていてもよい。
ガラリチャンバー10のガラリ側部11と第1接続管23とがほぼ同じ高さに配置されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、例えばオフィスビルの空調設備に適用できる。
に適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 建物
2 外壁
3 梁
3c 貫通穴
4 空調構造
5 狭隘空間
5e 開口
W5e 開口幅
6 屋内側空間
10 ガラリチャンバー
11 ガラリ側部
12 立ち上がりチャンバー部
12a 屋内壁部
20 空調ダクトユニット
21 ダクト
21a 屋内側部分
23 第1接続管
23a 第1接続管本体
23b 取り付け板
23g ガイドマーク
24 第2接続管
24g ガイドマーク
24s セットサイン
25 断熱材
31 係止突起
41 係止開口