(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009370
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】真空断熱体並びにそれを用いた機器及び冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F16L 59/065 20060101AFI20250110BHJP
F25D 23/06 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
F16L59/065
F25D23/06 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112336
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】河井 良二
(72)【発明者】
【氏名】河野 竜治
(72)【発明者】
【氏名】田口 翔一
(72)【発明者】
【氏名】関谷 禎夫
(72)【発明者】
【氏名】井関 崇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓愛
(72)【発明者】
【氏名】塩家 洋一
(72)【発明者】
【氏名】新井 祐志
【テーマコード(参考)】
3H036
3L102
【Fターム(参考)】
3H036AA08
3H036AB18
3H036AB33
3H036AB44
3H036AC01
3L102JA01
3L102LB01
3L102MA02
3L102MA03
3L102MB23
3L102MB24
(57)【要約】
【課題】安定した高い断熱性能の発揮に貢献する真空断熱体並びにそれを備えた機器及び冷蔵庫を提供する。
【解決手段】第一端板と、第一端板と厚み方向で対向する第二端板と、第一端板と第二端板との間に配置された支持部材と、複数のフィルム材を含む積層体と、外包材と、を備えた真空断熱体であって、外包材は、第一端板、第二端板、支持部材及びフィルム材の周囲を覆い、外包材の内部は、減圧空間であり、支持部材は、前記フィルム材の厚み方向への移動よりも面方向への移動を規制する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端板と、
該第一端板と厚み方向で対向する第二端板と、
前記第一端板と前記第二端板との間に配置された支持部材と、
複数のフィルム材を含む積層体と、
外包材と、を備え、
前記外包材は、前記第一端板、前記第二端板、前記支持部材及び前記フィルム材の周囲を覆い、
前記外包材の内部は、減圧空間であり、
前記支持部材は、前記フィルム材の厚み方向への移動よりも面方向への移動を規制する、真空断熱体。
【請求項2】
前記支持部材は、面方向に複数が並んで配されており、
隣接する2つの前記支持部材の間において、前記第一端板及び前記第二端板の離間距離H2及び前記積層体の厚み寸法H1との間には、不等式H2>H1が成立する、請求項1に記載の真空断熱体。
【請求項3】
前記支持部材は、面方向に複数が並んで配されており、
隣接する2つの前記支持部材の間において、前記積層体は中央側が前記第一端板及び/又は前記第二端板に接触し、両端側が離間する、請求項1に記載の真空断熱体。
【請求項4】
当該真空断熱体の厚み方向における、前記支持部材の寸法H3と、前記積層体の寸法H1と、下記式(1)で表される前記減圧空間の圧力Pにおける平均自由行程Mとの間に、不等式H3-H1-M>0が成立する、請求項1に記載の真空断熱体。
【数1】
(式中、kはボルツマン定数(=1.381×10
-23[J/K])、Tは絶対温度[K]、dは分子直径[m]である。)
【請求項5】
前記積層体を形成する前記フィルム材のそれぞれは、前記支持部材が挿通される開口を有し、
前記開口のそれぞれは、前記支持部材に非接触であることができる形状である、請求項1に記載の真空断熱体。
【請求項6】
複数の離間部材を更に備え、
前記フィルム材としての金属箔又は金属蒸着層と前記離間部材とが交互に積層されている、請求項1に記載の真空断熱体。
【請求項7】
前記離間部材は、不織布で形成されている、請求項6に記載の真空断熱体。
【請求項8】
前記真空断熱体の厚さ方向の総投影面積から前記フィルム材の総投影面積と前記支持部材の総投影面積とを差し引いた面積は、前記真空断熱体の厚さ方向の前記総投影面積の10%以下である、請求項1に記載の真空断熱体。
【請求項9】
前記真空断熱体の厚さ方向の総投影面積から前記フィルム材の総投影面積と前記支持部材の総投影面積とを差し引いた面積は、前記真空断熱体の厚さ方向の前記総投影面積の0%超である、請求項8に記載の真空断熱体。
【請求項10】
前記積層体を形成する前記フィルム材のそれぞれは、前記支持部材が挿通される開口を有し、
前記支持部材のうちの一つの断面積は、前記開口のうちの一つの面積よりも小さい、請求項1に記載の真空断熱体。
【請求項11】
前記積層体を形成する前記フィルム材のそれぞれは、前記支持部材が挿通される開口を有し、
前記支持部材の断面形状は、前記開口の形状と異なる、請求項1に記載の真空断熱体。
【請求項12】
断熱壁で囲まれた室を有し、
前記断熱壁は、真空断熱体を含み、
前記真空断熱体は、
第一端板と、
該第一端板と厚み方向で対向する第二端板と、
前記第一端板と前記第二端板との間に配置された支持部材と、
複数のフィルム材を含む積層体と、
外包材と、を備え、
前記外包材は、前記第一端板、前記第二端板、前記支持部材及び前記フィルム材の周囲を覆い、
前記外包材の内部は、減圧空間であり、
前記支持部材は、前記フィルム材の厚み方向への移動よりも面方向への移動を規制する、機器。
【請求項13】
前記真空断熱体を複数備え、
前記断熱壁に配置された前記真空断熱体のうち、略垂直に設置されたものの面積は、略水平に設置されたものの面積より大きい、請求項12に記載の機器としての冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、真空断熱体並びにそれを用いた機器及び冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫等においては、断熱機能の向上のため、真空断熱体が用いられている。
【0003】
特許文献1には、第1シート32s1、第2シート32s2、及び第3シート32s3が、第1スペーサ366a、第2スペーサ366b、第3スペーサ366cにそれぞれ設けられた段差部366a3、366b3、及び結合部356cによって互いにY軸方向(厚み方向)で離隔される真空断熱体が開示されている(0113~0115、
図14~17)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の真空断熱体が、例えば常温の外気と冷凍又は冷蔵温度帯の低温空間の間に配された場合、スペーサ366の両端には例えば20~50℃程度の温度差が生じてスペーサ366に主要な熱流が生じる。すると、各シート32sに対して段差部366a3、366b3や結合部356cでの接触を通じて熱伝達してしまい、断熱性能に改善の余地があると考えられる。
【0006】
また、スペーサ366の外気側が熱膨張してシート32を撓ませて密着したり、スペーサ366の低温空間側が熱収縮して段差部366a3、366b3や結合部356cからシート32が脱落したりする虞がある。この虞は、真空断熱体に対して押圧のような外力が作用した場合も同様である。
【0007】
本開示の目的は、安定した高い断熱性能の発揮に貢献する真空断熱体並びにそれを備えた機器及び冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の真空断熱体は、第一端板と、第一端板と厚み方向で対向する第二端板と、第一端板と第二端板との間に配置された支持部材と、複数のフィルム材を含む積層体と、外包材と、を備え、外包材は、第一端板、第二端板、支持部材及びフィルム材の周囲を覆い、外包材の内部は、減圧空間であり、支持部材は、前記フィルム材の厚み方向への移動よりも面方向への移動を規制する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、安定した高い断熱性能の発揮に貢献する真空断熱体並びにそれを備えた機器及び冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】実施例1に係る真空断熱体の外観を示す正面図である。
【
図5】実施例1に係る真空断熱体を示す分解斜視図である。
【
図6】実施例1に係る真空断熱体を示す部分拡大縦断面図である。
【
図7】実施例1に係る真空断熱体を示す部分拡大横断面図である。
【
図8】実施例2に係る真空断熱体を示す縦断面図である。
【
図9】実施例2に係る真空断熱体を示す分解斜視図である。
【
図10】実施例2に係る真空断熱体を示す部分拡大横断面図である。
【
図11】実施例1の変形例に係る真空断熱体を示す部分拡大縦断面図である。
【
図12A】実施例1の変形例の真空断熱体を示す部分拡大横断面図である。
【
図12B】実施例1の変形例の真空断熱体を示す部分拡大横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る真空断熱体及びそれを備えた冷蔵庫について、図面を参照して説明する。
【実施例0012】
まず、実施例1に係る冷蔵庫の基本構成を
図1及び
図2を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本実施例に係る冷蔵庫を示す正面図である。
図2は、
図1のA-A断面図である。
【0014】
図1に示すように、冷蔵庫1の冷蔵庫本体10は、上方から冷蔵室2、左右に並設された製氷室3と上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6の順に貯蔵室を備えている。以下では、製氷室3、上段冷凍室4及び下段冷凍室5は、まとめて冷凍室7と呼ぶ。
【0015】
冷蔵室2の前方の開口は、左右に分割された回転式の冷蔵室扉50a、50bにより開閉されるようになっている。製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6の前方の開口は、引き出し式の製氷室扉60、上段冷凍室扉70、下段冷凍室扉80、野菜室扉90によってそれぞれ開閉されるようになっている。冷蔵室2の上部及び下部には、扉ヒンジ(図示せず)が設けられている。上部の扉ヒンジは、扉ヒンジカバー16で覆われている。
【0016】
図2に示すように、冷蔵庫本体10は、外箱10aと、内箱10bと、外箱10aと内箱10bとの間に配置された真空断熱体25と、外箱10aと内箱10bとの間に充填された発泡断熱材21と、を含む。冷蔵庫1の庫外と庫内とは、これらの冷蔵庫本体10の構成要素により隔てられている。発砲断熱材としては、例えば発泡ウレタンが用いられている。真空断熱体25は、冷蔵庫本体10の天井面、背面、底面及び両側面並びに下段冷凍室扉80に配置されている。冷蔵庫本体10の天井面及び底面の真空断熱体25は、略水平に配置されている。また、冷蔵庫本体10の背面及び両側面並びに下段冷凍室扉80の真空断熱体25は、略垂直に配置されている。
【0017】
したがって、冷蔵庫1は、断熱壁で囲まれた貯蔵室を有し、断熱壁は、真空断熱体25を含む構成を有する。そして、冷蔵庫1は、真空断熱体25を複数備えている。断熱壁に配置された真空断熱体25のうち、略垂直に設置されたものの面積は、略水平に設置されたものの面積より大きいことが望ましい。
【0018】
冷蔵室2と、製氷室3及び上段冷凍室4とは、断熱仕切壁28によって隔てられている。下段冷凍室5と野菜室6とは、断熱仕切壁29によって隔てられている。また、製氷室3及び上段冷凍室4と、下段冷凍室5との間の前面側には、断熱仕切壁30が配置されている。断熱仕切壁30は、製氷室扉60及び上段冷凍室扉70の下面と、下段冷凍室扉80の上面との間に生じる隙間を塞ぎ、庫内外の空気の流通を防ぐためのものである。製氷室扉60と上段冷凍室扉70との間には、断熱仕切壁31(
図1参照)が配置されている。断熱仕切壁31は、製氷室扉60と上段冷凍室扉70との間に生じる隙間を塞ぎ、庫内外の空気の流通を防ぐためのものである。また、冷蔵室扉50aの冷蔵室扉50b側の庫内側(
図1において右端庫内側)には、断熱仕切壁36が回動可能に取り付けられている。断熱仕切壁36は、冷蔵室扉50a、50bを閉じた状態において冷蔵室扉50a、50bの間に生じる隙間を塞ぎ、庫内外の空気の流通を防ぐためのものである。
【0019】
冷蔵室2の略背部の庫内側には、冷蔵用蒸発器14a及び冷蔵用ファン9aが配置され、これらにより冷蔵室2に冷却空気が供給されるようになっている。
【0020】
冷凍室7の略背部の庫内側には、冷凍用蒸発器14b及び冷凍用ファン9bが配置され、これらにより冷凍室7に冷却空気が供給されるようになっている。
【0021】
冷蔵庫1の下部の庫外側には、圧縮機24が配置されている。
【0022】
次に、本実施例に係る冷蔵庫に配置された真空断熱体について説明する。
【0023】
図3は、本実施例の真空断熱体の外観を示す正面図である。
【0024】
図3に示す真空断熱体25は、
図2に示す冷蔵庫1の底面に用いられているものであり、幅300mm、長さ300mm、厚さ20mmの板状である。外表面を外包材251で覆うことで、内部の減圧状態が維持さている。外包材251は、ラミネートフィルムであり、少なくとも一層のガスバリア層(金属箔層または金属蒸着層等)を有している。具体的な構成の一例としては、外包材251を四層ラミネートフィルムとする。外包材251において、最も外側の第一層はポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムを用いた表面保護層、第二層はアルミニウム蒸着付きのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた第一ガスバリア層、第三層はアルミニウム蒸着付きのエチレンビニルアルコール共重合体樹脂フィルム、アルミニウム蒸着付きの二軸延伸ポリビニルアルコール樹脂フィルム、又はアルミニウム箔を用いた第二ガスバリア層とし、最も内側の第四層は未延伸タイプのポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂フィルムを用いた熱溶着層とすることができる。
【0025】
外包材251は、予め矩形状に切断され、熱溶着層を対向させて3辺を熱溶着することで袋状に形成される。これに後述する内蔵物を収容し、真空排気後に残りの1辺を熱溶着して封止される。したがって、真空断熱体25の外周部には、封止部である外包材端部251aが残っている。外包材端部251aは、真空断熱体25の上面側または下面側に折り曲げて、テープ等により固定した状態で冷蔵庫1の所定の位置に配置される(
図2参照)。
【0026】
【0027】
図4に示すように、真空断熱体25の内部には、第一端板252と、第二端板253と、支持部材である複数の支柱254と、が配置されている。第一端板252と第二端板253は何れもステンレス鋼製であるが、これに限らず、鉄、アルミニウム等の合金で形成されたものを用いてもよい。支柱254は、第一端板252と第二端板253との間に配置され、第一端板252と第二端板253との間の減圧空間(真空空間)の体積を保っている。支柱254は、フェノール樹脂製であるが、これに限らず、他の樹脂材で形成されたものを用いてもよい。
【0028】
また、減圧空間内には、フィルム材256及び離間部材257が交互に積層されて積層体を形成している。フィルム材256は、少なくとも一層にアルミニウム蒸着層を有するフィルムを採用する。本実施例においては、両面にアルミ蒸着層を備えた厚さが0.025mmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いている。アルミ蒸着層を備えた面の放射率は、0.1以下の低放射率であり、具体的には0.03である。離間部材257は、直径0.1mm以下の繊維を集積することで形成される不織布である。本実施例では、不織布は、直径が0.05mmのポリエチレンテレフタレート繊維を集積した厚さ2.5mmのものを用いている。フィルム材256と離間部材257はそれぞれ、互いに自由であり、特に接着などされていない。
【0029】
なお、真空断熱体25においては、フィルム材256を5枚以上積層した構成が望ましく、10枚以上が更に望ましく、15枚以上が特に望ましい。減圧空間における熱移動は、輻射伝熱の割合が大きいからである。また、離間部材257の枚数は、フィルム材256の枚数に応じて決定する。通常は、離間部材257の枚数は、フィルム材256の枚数と同数、またはフィルム材256の枚数±1枚として、フィルム材256と離間部材257とが1枚ずつ交互に積層されていることが望ましい。
【0030】
第一端板252の外周部には、第一端板252の主平面(
図4における水平面)に対して略直角に曲げられた曲げ部252aが設けられている。また、減圧空間内には、図示しない吸着材を備えている。真空排気後に外包材251を透過して減圧空間内に流入するガスや、第一端板252、第二端板253、支柱254、フィルム材256及び離間部材257から発生するガスを吸着材により吸着するようにしている。吸着材としては、一例として、生石灰や結晶性ゼオライトなどを用いることができる。
【0031】
したがって、外包材251の内部には、第一端板252、第二端板253、支柱254、フィルム材256、離間部材257及び吸着材が内蔵物として収容されている。なお、外包材端部251aの熱溶着部255は、内蔵物の端部から距離L(本実施例におけるLは10mm)だけ離れた位置に形成する。熱溶着部255と内蔵物との距離を確保せずゼロとした場合は、真空断熱体25の外周面に大気圧がかかることによって内側に引き込まれるように変形し、熱溶着部255を引き剥がすように引っ張り応力が作用し、熱溶着部255が破断する場合がある。熱溶着部255を内蔵物の端部から距離Lだけ離すように設けることで、破断を防止することができ、信頼性の高い真空断熱体が得られる。
【0032】
また、第一端板252に曲げ部252aを設けることで、真空排気後に外包材251を熱溶着して減圧空間を封止した際に、熱溶着部255が減圧空間内に過度に引き込まれることを防止でき、熱溶着部255が破断しにくくすることができる。
【0033】
また、第一端板252に設けられた曲げ部252aは、第二端板253から離れた状態となるように、支柱254よりも寸法を短くしている。これにより、第一端板252と第二端板253との間の熱移動を低減することができる。
【0034】
図5は、
図4の真空断熱体25の外包材251を除いた部分を示す分解斜視図である。
【0035】
図5に示すように、第一端板252の曲げ部252aは、第一端板252の外周部に所定の間隔を空けて離散的に設けられている。これにより、第一端板252と第二端板253との間の熱移動をより低く抑えるようにしている。第一端板252と第二端板253との間には、フィルム材256と離間部材257とが交互に配されている。これにより、フィルム材256が互いに接触することを回避している。また、第二端板253には、支柱254が固定して設けられている。本実施例では、支柱254は接着により固定されているが、支柱254の固定方法はこれに限らない。例えば、支柱254と第二端板253とをネジにより締結して固定してもよい。
【0036】
フィルム材256と離間部材257は、それぞれ、支柱254を挿通するための開口256a、257a(開口部)を備えている。第二端板253に固定された支柱254は、開口256a、257aに挿通され、フィルム材256及び離間部材257が横ずれしないようになっている。フィルム材256及び離間部材257は、積層された状態で第二端板253と第一端板252との間に配置され、
図4に示すように外包材251内に収容される。
【0037】
図6は、本実施例の真空断熱体の減圧状態を示す部分拡大断面図である。真空断熱体25は、厚み方向が重力加速度と平行になるように載置されている状態で説明する。
【0038】
本実施例においては、真空断熱体25の内部は、1Paに減圧されている。真空断熱体25の内部は、10Pa以下とすることが望ましい。
【0039】
本図に示すように、第一端板252及び第二端板253の外面側には大気圧が作用するため、第一端板252と第二端板253には、支柱254で支持されていない部分にたわみが生じ、第一端板252と第二端板253との間隔が小さくなる。本実施例では、真空断熱体25を減圧させたことで生じる、第一端板252と第二端板253との最小間隔H2は17mmである。一方、積層されたフィルム材256及び離間部材257(積層体)の総厚さH1は13.5mmであり、H2>H1を満足するようにしている。H2は、減圧状態における第一端板252と第二端板253との最小間隔とすることができる。H2は簡便に、任意の隣接する2つの支柱254の間において、第一端板252及び第二端板253が真空断熱体25の内部方向へ最も凹んでいる部分の厚み方向の距離(外寸)を計測して、その値から第一端板252及び第二端板253と外包材251の厚さを差し引くことで間接的に求めてもよい。H2>H1とすることで、減圧状態において第一端板252及び第二端板253が撓んだ状態となっても、第一端板252及び第二端板253にかかる面圧(略大気圧)によって積層体(フィルム材256及び離間部材257)が圧縮されて断熱性が低下することを回避できる。なお、H2>H1の関係を得るための構成は本実施例の構成に限らず、第一端板252と第二端板253の剛性、積層体の総厚さH1、支柱254の配置をH2>H1の関係が得られる範囲で適宜選択すればよい。
【0040】
また、
図6に例示するように厚み方向が重力加速度方向に平行になるように載置した場合は、真空断熱体25を減圧させたことで、第一端板252と第二端板253それぞれに撓みが生じ、積層されたフィルム材256及び離間部材257は、隣接する2つの支柱254の間において、中央側が第二端板253によって支持され、両端側は支持されず離間する。一方、厚み方向が重力加速度方向に垂直になるように載置した場合は、積層されたフィルム材256及び離間部材257は、隣接する2つの支柱254の間において、中央側が第一端板252及び/又は第二端板253が真空断熱体25の内部方向に最も凹んでいる部分の近傍に略接触して、両端側は接触せずに離間する。すなわち、第一端板252及び第二端板253の撓みよりもフィルム材256及び離間部材257の撓みが小さい。上記説明したように、フィルム材256及び離間部材257は、少なくとも自然状態において、好ましくは重力加速度が大きく加わる向きで載置された場合であっても、第一端板252及び第二端板253の撓みよりも小さくなるように製造されていることが好ましい。これにより第一端板252及び/又は第二端板253と積層体の間の接触面積が小さくなり伝熱が抑制されるので、断熱性能を高めることができる。
【0041】
また、支柱254の高さ(厚み方向寸法)H3は18mmであり、フィルム材256及び離間部材257(積層体)の総厚さH1との差(H3-H1=4.5mm)が、真空断熱体の内部圧力(本実施例では1Pa)における平均自由行程M(本実施例では6.6mm)より小さくなるようにしている。すなわち、H3-H1-M>0としている。H3をH2に代えたH2-H1-M>0が成立するとさらに好ましい。内部圧力P[Pa]における平均自由行程M[m]は、下記式(1)で与えられる。
【0042】
【0043】
ここで、kはボルツマン定数(=1.381×10-23[J/K])、Tは絶対温度[K]、dは分子直径[m]である。空気の場合、分子直径d=0.376×10-9[m]として平均自由行程を求めることができる。
【0044】
【0045】
本図においては、支柱254の外径D1は5mmであり、支柱254の間隔P1、P2はともに50mmである。フィルム材256と離間部材257には、支柱254と同数の例えば略円形の開口256a、257aが支柱254の位置と一致するように設けられている。開口256a、257aの直径D2は6mmであり、支柱254の外形D1より大きく、D1<D2を満足するようにしている。このように、開口256a、257aそれぞれの形状は、同一の支柱254に非接触であることができる形状である。
【0046】
また、フィルム材256は、縦(前後方向)の長さが298mm、横(左右方向)の長さが298mmの矩形であり、25個の開口256a(
図5参照)を除いた面積(厚さ方向の投影面積)Afは88097mm
2である。真空断熱体25の厚さ方向の投影面積Avは90000mm
2であり、25本の支柱254(
図5参照)の厚さ方向(軸方向)の総投影面積Apは491mm
2である。真空断熱体25の厚さ方向の投影面積Avから、フィルム材256の面積Afと、支柱254の投影面積Apとを差し引くと、真空断熱体25の厚さ方向で、フィルム材256や支柱254で遮られることがない非遮断部の面積Au(=Av-Af-Ap)が求まり、Auは1412mm
2となる。本実施例では、真空断熱体25の厚さ方向の投影面積Avに対する非遮断部の面積Auは、1.6%である。Au/Avは、10%以下が望ましく、5%以下が更に望ましい。一方、フィルム材256と支柱254との密着の回避の観点から、非遮断部の面積Auは、0%超、例えば0.5%以上とすることができる。なお、支柱254が面方向に突出する段差部を備える場合、段差部の厚さ方向(軸方向)の投影面積もまた、Apの一部に含まれるものとすることができる。
【0047】
このような構成としたことで、支柱254は、フィルム材256や離間部材257の厚さ方向(軸方向)への移動は特に規制せず、面方向(フィルム材256や離間部材257の延在方向)への移動を規制する。すなわちフィルム材256や離間部材257は、第一端板252と第二端板253との間において、厚さ方向(軸方向)には自由に動くことができる。例えば、積層体が自由に動ける厚み方向寸法と面方向寸法の関係として、不等式H3-H1>D2-D1や、不等式H2-H1>D2-D1が成立する。厚さ方向(軸方向)の隙間寸法となるH3-H1やH2-H1は輻射による伝熱量に影響しない。一方、面方向隙間寸法となるD2-D1が大きいと真空断熱体25の厚さ方向で、フィルム材256や支柱254で遮られることがない非遮断部が大きくなって輻射による伝熱量が増加する。すなわち厚さ方向(軸方向)に動ける寸法を大きくしても輻射による断熱性能低下は伴わないが、面方向に動ける寸法を大きくすると輻射による断熱性能低下を伴う。したがって、不等式H3-H1>D2-D1や、不等式H2-H1>D2-D1とすることで、輻射による断熱性能の低下を抑えて、フィルム材256や離間部材257が自由に動くことができるようにしている。
【0048】
以上で、本実施例の真空断熱体及び冷蔵庫の構成を説明したが、次に、本実施例の真空断熱体と機器の一例としての冷蔵庫の奏する効果について説明する。
【0049】
本実施例の真空断熱体25は、減圧空間の一端側に設けられた第一端板252と、減圧空間の他端側に設けられた第二端板253と、第一端板252と第二端板253との間に備えられた支持部材である支柱254と、第一端板252の主平面の法線方向に積層されたフィルム材256と、を備えている。そして、フィルム材256は、面方向への移動を支持部材である支柱254で制限され、軸方向への移動は第一端板252及び第二端板253の間で自由に動くことができる。言い換えると、フィルム材256は、面方向の移動に関して、若干の余裕を持たせ、軸方向に移動可能な構成となっている。これにより、安定した高い断熱性能を発揮する真空断熱体とすることができる。理由を以下で説明する。
【0050】
本実施例の真空断熱体25においては、フィルム材256が支柱254と離間した状態、または、支柱254と小さい面積で接触した状態となる。このため、支柱254とフィルム材256との間には十分大きな熱抵抗が確保される。したがって、支柱254からフィルム材256に熱が移動し、真空断熱体25の断熱性能が低下することを抑制できる。また、支柱254の外気側が熱膨張したり、低温空間側が熱収縮した場合や、押圧のような外力が作用した場合においても、フィルム材256が軸方向に移動可能となっているため、フィルム材256が支柱254と離間した状態、または、支柱254と小さい面積で接触した状態が維持されることから、安定した断熱性能を発揮することができる。
【0051】
本実施例の真空断熱体25においては、減圧空間の内部に積層されたフィルム材256に金属箔または金属蒸着層を設けている。これにより、フィルム材256の少なくとも一方の面を低放射率面としている。このため、複数の低放射率面により輻射による伝熱量を低減でき、真空断熱体25の断熱性能を高めることができる。
【0052】
本実施例の真空断熱体25においては、フィルム材256の間に離間部材257を配置している。これにより、フィルム材256が互いに接触することを回避し、フィルム材256同士が直接接触することによる熱伝達を抑制することができ、真空断熱体25の断熱性能を高めることができる。
【0053】
本実施例の真空断熱体25は、離間部材257として不織布を用いている。不織布は、多数の繊維を集積することで形成されるため、フィルム材256との間の接触状態が点接触又は線接触となる。これにより、フィルム材256や離間部材257の厚さ方向の熱伝達を抑制することができ、真空断熱体25の断熱性能を高めることができる。
【0054】
本実施例の真空断熱体25においては、離間部材257の厚さよりフィルム材256の厚さを小さくしている。フィルム材256は、金属箔または金属蒸着層を含むために、これらを含まない離間部材257より熱伝導率が高くなる。したがって、フィルム材256の厚さを離間部材257より小さくすることで、真空断熱体25の厚さ方向の総括熱伝達率を低くすることができる。
【0055】
本実施例の真空断熱体25においては、柱状部材である支柱254を用い、フィルム材256に開口256aを設け、支柱254を開口256aに挿通している。このため、支柱254とフィルム材256とにずれが生じることなく、容易に両者を一体化することができる。
【0056】
本実施例の真空断熱体25においては、フィルム材256と離間部材257との総厚さH1が、支柱254の高さH3より低くなるようにしている。これにより、第一端板252を支柱254の一端に設置する際にフィルム材256や離間部材257の位置がずれることを防止でき、真空断熱体25の歩留まりを高めることができる。
【0057】
本実施例の真空断熱体25においては、フィルム材256と離間部材257との総厚さH1より、減圧空間を減圧した後の第一端板252と第二端板253との最小間隔H2の方が大きくなるようにしている。これにより、真空排気後に大気圧により端板にたわみが生じても、フィルム材256及び離間部材257に面圧が作用して、フィルム材256及び離間部材257を介した熱流が増加して真空断熱体の性能が低くなることを回避できる。
【0058】
本実施例の真空断熱体25においては、投影面積Avに対する非遮断部の面積AuであるAu/Avは、10%以下である。このように非遮断部の面積Auを小さく抑えることで、輻射による伝熱性能の低下を抑制した断熱性能が高い真空断熱体を得ることができる。
【0059】
本実施例の冷蔵庫1は、真空断熱体25を用いているため、熱の侵入量を低減でき、省エネルギー性能を高くすることができる。
【0060】
本実施例の冷蔵庫1においては、断熱壁内に略垂直な状態で設置した真空断熱体25の総面積(背面、両側面及び下段冷凍室扉に設置した真空断熱体25の総面積)が2717000mm2であり、冷蔵庫の略水平な状態で設置した真空断熱体25の総面積340000mm2より大きくなるようにしている。
【0061】
真空断熱体25を水平に設置した場合、減圧空間内に配されたフィルム材256及び離間部材257は、自重によって下部のフィルム材256及び離間部材257を圧縮する。一方で、真空断熱体25を垂直に設置した場合、フィルム材256及び離間部材257は、自重による圧縮作用は受けない。フィルム材256と離間部材257とは微小な面積で互いに接触するが、水平に設置した場合の方が、圧縮作用によりフィルム材256と離間部材257との接触面積がわずかに大きくなる。このため、フィルム材256及び離間部材257の厚さ方向の熱抵抗が小さくなり、断熱性能が低くなる。したがって、断熱性能が高い状態となる略垂直に設置する真空断熱体25の総面積を、略水平に設置する真空断熱体25の総面積より大きくすることで、部品のコストに対する効果が高い冷蔵庫1を得ることができる。
本図においては、真空断熱体25は、第一端板252と第二端板253の間に、支持部材である支持枠259を備えている。これにより、第一端板252と第二端板253との間の減圧空間(真空空間)が保持されるようにしている。支持枠259は、フェノール樹脂製であるが、これに限らず、他の樹脂で形成されたものを用いてもよい。
本図に示すように、第二端板253には、支持枠259が固定して設けられている。本実施例では、支持枠259は接着により固定されているが、支持枠259の固定方法はこれに限らない。例えば、支持枠259と第二端板253とをネジにより締結して固定してもよい。第一端板252と第二端板253との間には、フィルム材256と離間部材257とが交互に配されており、フィルム材256が互いに接触することを回避している。フィルム材256と離間部材257は、支持枠259により区画された9つの領域に積層された状態で収納されている。
本変形例では、支柱254は面方向に延在する外径がD3の円板状の突起254aを備えている。第一端板252と突起254aの間と、突起254aと第二端板253の間に、積層されたフィルム材256及び離間部材257からなる積層体を備えている。すなわち、突起254aによって積層体が突起254aを超えて厚み方向へ移動することを規制して、積層体を2つに分けている。積層体の分割数は2つに限らず、支柱254の突起254aを厚み方向にn個(nは2以上の整数)設けて、積層体をn+1個に分けてもよい。また、突起254aの形状は円板状に限らず、積層体が厚み方向へ移動することを規制できれば他の形状であってもよい。
このように積層体を2つ以上に分けた場合は、最も第一端板252に近い積層体について、積層厚み寸法をH1、支柱254の突起254aから積層体が在る側の第一端板252までの厚み寸法をH3、第一端板252のたわみを考慮した突起254aからの最小厚み寸法をH2、最も第二端板253に近い積層体について、積層厚み寸法をH1’、支柱254の突起から積層体が在る側の第二端板253までの厚み寸法をH3’、第二端板253のたわみを考慮した突起からの最小厚み寸法をH2’として、これらがH2>H1、H3-H1-M>0、H3-H1>D2-D1、H2-H1>D2-D1、H2’>H1’、H3’-H1’-M>0、H3’-H1’>D2-D1、H2’-H1’>D2-D1の各不等式を満足するようにすればよい。ここで、Mは上記式(1)により求まる平均自由行程、D1は支柱254の外径、D2はフィルム材256と離間部材257の開口の直径である。なお、突起254aの外径D3と、フィルム材256と離間部材257の開口の直径D2の関係は、D3>D2として確実に積層体が厚み方向へ移動することを規制できるようにすることが望ましい。以上のように、積層体を2つ以上に分けることで、安定した高い断熱性能を発揮する真空断熱体とすることができる。
本図においては、支柱254の断面を正方形状とし、フィルム材256の開口256a及び離間部材257の開口257aを円形状としている。この構成により、支柱254が開口256a、257aに接触したとしても、点で接触するようになるため、支柱254とフィルム材256との間及び支柱254と離間部材257との間における熱移動を抑制することができる。
本図においては、支柱254の断面を円形状とし、フィルム材256の開口256a及び離間部材257の開口257aを正方形状としている。この構成により、支柱254が開口256a、257aに接触したとしても、点で接触するようになるため、支柱254とフィルム材256との間及び支柱254と離間部材257との間における熱移動を抑制することができる。
なお、支柱254の断面形状と開口256a、257aの形状との組み合わせは、上記の例に限定されるものではなく、接触したとしても点で接触するような構成であればよい。例えば、多角形、くの字型、星形等と、円形、楕円形等との組み合わせ、頂点の数が異なる多角形同士の組み合わせ、くの字型、星形等と多角形との組み合わせ等でもよい。
まとめると、フィルム材256と支柱254との間及び離間部材257と支柱254との間における熱移動を抑制する観点から、真空断熱体の横断面における支柱254の断面積は、開口256a、257aの面積よりも小さいことが望ましい。このことは、フィルム材256の開口256a及び支柱254の横断面がともに円形状である場合並びに離間部材257の開口257a及び支柱254の横断面がともに円形状である場合も同様である。
以上が具体的な実施例及び変形例であるが、本開示は、前述した実施例に限定されるものではなく、上記以外にも様々な変形例が含まれる。例えば、実施例では冷蔵庫の底面に用いられる真空断熱体の構成を詳細に説明しているが、他の面に用いられる真空断熱体においても同様の構成を採用することで、断熱性能を十分高めた真空断熱体を得ることができる。また、実施例では、離間部材とフィルム材とを一層ずつ交互に積層する方式を示しているが、フィルム材の間に離間部材を複数挿入する方式を採用してもよい。
さらに、支持部材の例として、円形断面の支柱(実施例1)と、減圧空間を矩形に区画する支持枠(実施例2)とを示したが、支柱は円形断面に限らず他の断面形状であってもよく、支持枠も矩形状に限らず他の形状に区画する構成としてもよい。すなわち、実施例は、本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
なお、本明細書においては、真空断熱体を冷蔵庫に適用する場合について説明しているが、本開示の真空断熱体は、冷蔵庫以外の機器にも、大容量の貯湯タンクを有するヒートポンプ式の給湯器等にも適用することができる。