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特開2025-93780ジオポリマー製造用組成物、ジオポリマー硬化体、及び、断熱材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025093780
(43)【公開日】2025-06-24
(54)【発明の名称】ジオポリマー製造用組成物、ジオポリマー硬化体、及び、断熱材
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/28 20060101AFI20250617BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20250617BHJP
   C04B 12/04 20060101ALI20250617BHJP
   C04B 28/26 20060101ALI20250617BHJP
   C09K 21/14 20060101ALI20250617BHJP
   C09K 21/02 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
C04B28/28
C04B14/02 B
C04B12/04
C04B28/26
C09K21/14
C09K21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023209651
(22)【出願日】2023-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹澤 和也
【テーマコード(参考)】
4G112
4H028
【Fターム(参考)】
4G112PA02
4G112PD01
4H028AA05
4H028AA42
4H028BA03
(57)【要約】
【課題】より優れた断熱性を有するジオポリマー硬化体を得ることができるジオポリマー製造用組成物;より優れた断熱性を有するジオポリマー硬化体;及び、該塩ポリマー硬化体を備え、より優れた断熱性を有する断熱材;を提供する。
【解決手段】当該ジオポリマー製造用組成物は、アルミノケイ酸塩と、無機粒子と、活性化剤と、水と、を含み無機粒子が中空粒子である。当該ジオポリマー硬化体は、ジオポリマーと、無機粒子と、を含み、無機粒子が中空粒子である。当該断熱材は、当該ジオポリマー硬化体を備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノケイ酸塩と、無機粒子と、活性化剤と、水と、を含み、
前記無機粒子が中空粒子である、ジオポリマー製造用組成物。
【請求項2】
ジオポリマーと、無機粒子と、を含み、
前記無機粒子が中空粒子である、ジオポリマー硬化体。
【請求項3】
シート状である、請求項2に記載のジオポリマー硬化体。
【請求項4】
請求項2に記載のジオポリマー硬化体を備える、断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマー製造用組成物、ジオポリマー硬化体、及び、断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子部品、移動体(車両、航空機等)等に使用される断熱材としては、例えば、ポリウレタン系発泡体からなる断熱材(特許文献1)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-124677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子部品の小型化や高機能化、また、車両、航空機等の移動体の多機能化が進められている。これに対応すべく、特に、薄いシート状に形成した断熱シートの需要が高まっている。シート状に形成しても、より優れた断熱性を有する断熱材が求められている。
【0005】
しかしながら、従来の特許文献1等の断熱材は、上述した変化に対応できるほど十分な断熱性を有するものではなかった。本発明が解決しようとする課題は、より優れた断熱性を有する材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究を行い、断熱材の材料として新規なジオポリマー硬化体が有用であるとの知見を得て、前記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記の通りである。
【0007】
本発明のある態様は、ジオポリマー製造用組成物である。当該ジオポリマー製造用組成物は、アルミノケイ酸塩と、無機粒子と、活性化剤と、水と、を含み、前記無機粒子が中空粒子である。
【0008】
本発明の他の態様は、ジオポリマー硬化体である。当該ジオポリマー硬化体は、ジオポリマーと、無機粒子と、を含み、前記無機粒子が中空粒子である。
【0009】
上記態様のジオポリマー硬化体において、シート状であることが好ましい。
【0010】
本発明の他の態様は、断熱材である。当該断熱材は、上記いずれかの態様のジオポリマー硬化体を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、より優れた断熱性を有するジオポリマー硬化体を得ることができるジオポリマー製造用組成物;より優れた断熱性を有するジオポリマー硬化体;及び、該ジオポリマー硬化体を備え、より優れた断熱性を有する断熱材;を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下であることを表す。
【0013】
本明細書において、複数の上限値と複数の下限値とが別々に記載されている場合、これらの上限値と下限値とを自由に組み合わせて設定可能な全ての数値範囲が本明細書に記載されているものとする。
【0014】
本明細書において、「粉粒体」は「粉」または「粒子」の集合体をいう。
【0015】
粉または粒子の平均粒子径{メディアン粒径D50(体積基準)}は、レーザ回折式粒度分布測定装置によって測定することができる。
【0016】
特に断らない限り、各種測定は、環境温度を室温(25℃)として実施する。
【0017】
1.ジオポリマー製造用組成物
本実施形態のジオポリマー製造用組成物は、アルミノケイ酸塩と、無機粒子と、活性化剤と、水と、を含む。ジオポリマー製造用組成物を硬化させることにより、後述するジオポリマー硬化体を得ることができる。すなわち、ジオポリマー製造用組成物は、ジオポリマー硬化体の前駆体である。
【0018】
ジオポリマーとは、アルミニウムやケイ素などを主成分とする材料の非晶質の重合体(ポリマー)をいい、後述するアルミノケイ酸塩及び活性化剤の反応によって得られる。
【0019】
1-1.アルミノケイ酸塩
アルミノケイ酸塩(xMO・yAl・zSiO・nHO、Mはアルカリ金属)は、ケイ酸塩中にあるケイ素原子の一部をアルミニウム原子に置き換えた構造を持つ化合物である。
【0020】
アルミノケイ酸塩としては、例えば、イライト、束沸石、カオリナイト、パイロフィライト、アンダルサイト、ベントナイト、カイヤナイト、ミラナイト、グロベナイト、アメサイト、コージェライト、長石、アロフェン等の天然アルミノケイ酸塩鉱物;イモゴライト、メタカオリン等の焼天然アルミノケイ酸塩鉱物;石炭の燃焼から得られるフライアッシュ;高炉内で鉄鉱石を鋳鉄に変換するときに得られる高炉スラグ;等から選択される1種または2種以上の混合物が挙げられる。中でも、焼天然アルミノケイ酸塩鉱物が好ましく、特にメタカオリンがより好ましい。
【0021】
これらの物質は市販のものを使用することができ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、アルミノケイ酸塩は、粉粒体で用いられ、適宜、粉砕分級して特定の画分を用いることにより、所望の粒径のアルミノケイ酸塩に調整することができる。
【0022】
アルミノケイ酸塩として特に好ましいメタカオリンは、化学式Al・2SiOで表される化合物である。アルミノケイ酸塩の全質量に対するメタカオリンの含有量が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。アルミノケイ酸塩全質量に対するメタカオリンの含有量が上記範囲であると、強度に優れたジオポリマー硬化体を安定して得ることができる。
【0023】
アルミノケイ酸塩の粉粒体は、平均粒子径が0.1~50μmであることが好ましく、0.3~30μmであることがより好ましく、0.5~10μmであることがさらに好ましい。当該粉粒体の平均粒子径がこの範囲であると、製造されたジオポリマー硬化体の断熱性をより向上させることができる。
【0024】
アルミノケイ酸塩の含有量は、ジオポリマー製造用組成物の全質量に対して、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上等であることが好ましく、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下等であることが好ましい。アルミノケイ酸塩の含有量を上記範囲とすることにより、ジオポリマー硬化体の強度を高めやすい。
【0025】
1-2.無機粒子
無機粒子(無機フィラー)としては、上述したアルミノケイ酸塩以外の無機粒子であり、例えば、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素(シリカ)、スピネル、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム等の酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物;炭化ケイ素、炭化ホウ素等の炭化物;窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物;炭酸ニッケル、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム等の硫酸塩;等が挙げられる。上述した無機粒子から選択される1種、または、2種以上を混合して使用してもよい。
【0026】
本実施形態の無機粒子は、特に、二酸化ケイ素(シリカ)を含有することが好ましく、無機粒子の全質量に対して、二酸化ケイ素(シリカ)の含有量が60質量%以上、70質量%以上、75質量%以上等であることが好ましく、99質量%以下、95質量%以下、90質量%以下等であることが好ましい。シリカは、主に、液体中で合成される湿式シリカと、高温で加水分解させて合成される乾式シリカとに大きく分けられる。本実施形態では、無機粒子として湿式シリカ及び乾式シリカのいずれを使用してもよい。無機粒子としてシリカを含有させることにより、ジオポリマー硬化体の強度を向上させることができる。
【0027】
本実施形態の無機粒子は、球状の中空粒子である。中空粒子とは、外殻に包囲された空洞を内部に有する構造の粒子である。内部の空洞は、密閉されていてもよく、その一部が外部と連通していてもよい。無機粒子を球状とすることで、配合後のジオポリマー製造用組成物の流動性を高めることができる。また、無機粒子を中空粒子とすることで、ジオポリマー硬化体の内部に空気が保持されやすくなるので、ジオポリマー硬化体の断熱性をより向上させることができる。さらに、無機粒子を中実としたときよりも、ジオポリマー硬化体を軽量化することができる。
【0028】
無機粒子の浮水率は、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上等であることが好ましい。無機粒子の浮水率を上記範囲とすることで、ジオポリマー硬化体をより軽量化することができる。浮水率の測定方法は、下記の通りである。
【0029】
(浮水率の測定方法)
15gの試料(無機粒子)を入れた1000mlビーカーに水を入れ、十分に攪拌した後に静置し、水の濁りがなくなるまで置き、浮いた試料を採取し、乾燥させる。その後、乾燥物の重量(W)を測定し、W/15×100の式から浮水率を算出する。
【0030】
本実施形態では、無機粒子の平均粒子径は、0.1~100μmの範囲が好ましく、1~90μmの範囲がより好ましく、5~80μmの範囲がさらに好ましい。無機粒子の嵩密度は、0.01~1.00g/cmの範囲が好ましく、0.05~0.80g/cmの範囲がより好ましく、0.10~0.50g/cmの範囲がさらに好ましい。嵩密度の測定方法は、下記の通りである。
【0031】
(嵩密度の測定方法)
嵩密度は、JIS R1628-1997(ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法)に基づいて測定する。
【0032】
無機粒子の真比重は、0.01~1.50g/cmの範囲が好ましく、0.05~1.00g/cmの範囲がより好ましい。真比重の測定方法は、下記の通りである。
【0033】
(真比重の測定方法)
真比重は、例えばピクノメーター法自動粉粒体真比重測定器を用いて測定することができる。
【0034】
無機粒子の含有量は特に限定されず、ジオポリマー製造用組成物の全質量に対して、5質量%以上、10質量%以上、25質量%以上、30質量%以上等が好ましく、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下等が好ましい。無機粒子の含有量を上記範囲内とすると、ジオポリマー硬化体の断熱性をより向上させることができる。
【0035】
1-3.活性化剤
実施形態の活性化剤は、ジオポリマー製造用組成物を硬化させる際に、架橋剤として作用する。本実施形態の活性化剤は、特に限定されず、アルカリ活性化剤または酸性活性化剤等を使用することができる。アルカリ活性化剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物を含む物質が挙げられる。酸性活性化剤としては、リン酸系活性化剤、硝酸系活性化剤、硫酸系活性化剤等が挙げられる。本実施形態では、これらの活性化剤の中でも、酸性活性化剤が好ましく、特に、リン酸系活性化剤がより好ましい。以下、活性化剤の一例として、リン酸系活性化剤を用いる場合について説明する。
【0036】
なお、活性化剤として、リン酸系活性化剤以外の酸性活性化剤、アルカリ活性化剤等を用いた場合においても、それらの含有量(添加量)や濃度等の記載は、以下に説明するリン酸系活性化剤を用いた場合を参照して活性化剤による架橋が十分に進行するように、適宜調整可能である。例えば、ジオポリマー製造用組成物の全質量に対する、活性化剤の含有量は、1質量%以上、5質量%以上、8質量%以上等が好ましく、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下等が好ましい。
【0037】
本実施形態の活性化剤として使用するリン酸系活性化剤は、特に限定されない。リン酸系活性化剤としては、例えば、リン酸(HPO)を含む水溶液等の混合物、リン酸イオン(PO 3-)から形成される塩(リン酸塩)等が挙げられる。リン酸塩は、水と反応してリン酸イオン(PO 3-)等を遊離する塩であればよい。例えば、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)、リン酸水素アンモニウム((NHHPO)、リン酸水素ナトリウム(NaHPO)等が挙げられる。
【0038】
リン酸系活性化剤の好適な一例として、高濃度リン酸水溶液が挙げられる。高濃度リン酸水溶液のリン酸濃度は、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上等が好ましく、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下等が好ましい。上記リン酸濃度の高濃度リン酸水溶液を使用することで、効率的に架橋及び混錬を行うことができる。
【0039】
ジオポリマー製造用組成物を作製する際における、ジオポリマー製造用組成物の全質量に対する、高濃度リン酸水溶液の添加量の割合は、1質量%以上、5質量%以上、8質量%以上等が好ましく、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下等が好ましい。
【0040】
ジオポリマー製造用組成物の全質量に対するリン酸濃度は、例えば、0.4~57.0質量%が好ましく、4.0~29.0質量%がより好ましく、7.0~22.0質量%がさらに好ましい。
【0041】
ジオポリマー製造用組成物の全質量に対するリン酸濃度が上述した範囲内であれば、活性化剤として、高濃度リン酸水溶液を使用しても、リン酸塩を使用してもよい。また、ジオポリマー製造用組成物を調製する際の、各成分の混合する順序についても特に限定されない。
【0042】
具体的には、活性化剤として高濃度リン酸水溶液を使用する場合、固体成分に、後述する水を混合させた混合物を攪拌しながら、高濃度リン酸水溶液に加えることで、ジオポリマー製造用組成物を調製してもよい。また、活性化剤としてリン酸塩を使用する場合、リン酸塩を固体成分と混合させた混合物に、後述する水を加えて、ジオポリマー製造用組成物を調製してもよい。
【0043】
1-4.水
本実施形態の水は、脱イオン水、蒸留水、または、0.1質量%までの不純物を含む水、例えば、通常の水道水が挙げられる。
【0044】
水の含有量は、ジオポリマー製造用組成物の全質量に対するリン酸濃度が上述した範囲内となれば、特に限定されず、ジオポリマー製造用組成物の全質量に対して、5~50質量%の範囲が好ましい。
【0045】
1-5.その他の成分
ジオポリマー製造用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、pH調整剤、流動化剤、収縮低減剤、防錆剤、防水材、凝結遅延剤、消泡剤、粉塵低減剤、顔料等が挙げられる。また、強化材としてガラス繊維等を含有してもよい。
【0046】
その他の成分の含有量は特に限定されず、ジオポリマー製造用組成物の全質量に対して、1~10質量%の範囲が好ましい。
【0047】
2.ジオポリマー硬化体
本実施形態のジオポリマー硬化体は、上述したジオポリマー製造用組成物の各成分を混合(混錬)し、乾燥・硬化させることで、製造することができる。すなわち、ジオポリマー硬化体は、ジオポリマーと、無機粒子と含む。
【0048】
ジオポリマー製造用組成物の各成分の混合の条件は、ジオポリマー硬化体が得られる限り特に制限はない。混合方法は、モルタルミキサー、または、コンクリートミキサー等を用いて混錬してもよい。混錬後は常温において、または、加熱しながら養生を行うことが好ましい。養生時間は温度により変化し、温度が低いほど長期の養生時間が必要になる。例えば、養生時間は、室温では7日以上、60℃では3~4日とすることが好ましい。
【0049】
本実施形態のジオポリマー硬化体はシート状であることが好ましい。シート状のジオポリマー硬化体を備える断熱材は、後述する様々な用途(電子部品、移動体等)に用いることができる。
【0050】
本実施形態のジオポリマー硬化体は、圧縮試験(詳細は後述する実施例を参照)で測定される圧縮強度が0.2MPa超、2MPa以上、5MPa以上、10MPa以上、20MPa以上、30MPa以上、40MPa以上、50MPa以上等であることが好ましい。圧縮強度が上記範囲であれば、ジオポリマー硬化体をシート状に形成しても、十分な強度を得ることができる。
【0051】
本実施形態のジオポリマー硬化体は、見かけ密度(詳細は後述する実施例を参照)が100kg/m以上、200kg/m以上、300kg/m以上等であることが好ましく、1060kg/m以下、800kg/m以下、600kg/m以下、100kg/m以下等であることが好ましい。見かけ密度が上記範囲であれば、ジオポリマー硬化体を軽量化することができる。また、ジオポリマー硬化体の内部に空気を取り込みやすくなるので、断熱性をより向上させることができる。
【0052】
本実施形態のジオポリマー硬化体は、断熱試験(詳細は後述する実施例を参照)で測定される表面温度が360℃以下、330℃以下、310℃以下等であることが好ましい。断熱試験により、本実施形態のジオポリマー硬化体の断熱性を評価することができる。
【0053】
3.断熱材の用途
本実施形態の断熱材は、上述したジオポリマー硬化体を備えることが好ましい。本実施形態の断熱材は、シート状にしても、優れた断熱性を有するので、電子部品の断熱材、住宅、車両、産業用等を含む種々の用途に用いられる蓄熱装置の断熱材、自動車のエンジンルーム内に用いる断熱材、自動車の乗車ルームを保温するために用いる断熱材、自動車の燃料電池を被覆する断熱材等として好適に用いることができる。
【実施例0054】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。しかし、本発明は以下の実施例の態
様には限定されない。
【0055】
≪実施例及び比較例≫
<ジオポリマー製造用組成物の作製>
ジオポリマー製造用組成物の各成分を下記の通り準備した。
・下表1、2に示される無機粒子A~D
・アルミノケイ酸塩としてメタカオリン
{NNカオリンクレー・竹原化学工業(株)製を800℃で10時間加熱し非晶質化させたもの}
・活性剤として濃リン酸水溶液(85%)・関東化学(株)製
・蒸留水
・強化材としてガラス繊維{チョップストランド・CS6J-888日東紡績(株)製}
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
下表3に示される配合量で、上述した各固体成分を混合した。得られた混合物を下記の攪拌条件で攪拌しながら、濃リン酸水溶液に加え、ジオポリマー製造用組成物を作製した。
(攪拌条件)
ミキサー(スリーワンモータBL600 新東科学株式会社製) 回転速度:790rpm 攪拌時間:20分間
【0059】
<ジオポリマー硬化体の製造>
得られたジオポリマー製造用組成物を、下記の条件下で硬化させた。具体的には、ジオポリマー製造用組成物をシリコーン型枠内に流し込み、3mmのスペーサーでプレスしながら、加熱を行い、成形した。脱型後、恒温恒湿槽内で養生を行い、下各実施例及び比較例のジオポリマー硬化体を作製した。
(加熱条件)
温度:120℃ 時間:15分間
(養生条件)
温度:23℃ 湿度:55% 時間:24時間
【0060】
各実施例及び比較例のジオポリマー硬化体について、断熱試験、圧縮試験、及び、見かけ密度(kg/m)の測定、を行った。評価結果を下表3に示す。
【0061】
(断熱試験)
各実施例及び比較例のジオポリマー硬化体の試験サンプル(厚さ3mm、100φ)を500℃のホットプレート(C-MAG HP4、IKA社製)で5分間加熱した後、高さ200mmからサーマルイメージ放射温度計(FLIR TG167、FLIR社製)を用いて各試験サンプルの中央の表面温度を測定した。
【0062】
(断熱性の評価基準)
A:表面温度が330℃以下
B:表面温度が330℃超360℃未満
C:表面温度が360℃以上
【0063】
(圧縮試験)
各実施例及び比較例のジオポリマー硬化体の試験サンプル(厚さ3mm、10φ)を、オートグラフ(AG-X 10kN、島津製作所社製)を用いて、圧縮速度1mm/minで全面圧縮し、材料破壊に至る圧縮強度を測定した。
【0064】
(圧縮強度の評価基準)
A:圧縮強度が0.2MPa超
B:圧縮強度が0.2MPa以下
【0065】
(見かけ密度の測定)
各実施例及び比較例のジオポリマー硬化体の見かけ密度は、JIS K7222にて測定した。
【0066】
(見かけ密度の評価基準)
A:800kg/m以下
B:800kg/m超1060kg/m以下
C:1060kg/m
【0067】
【表3】
※表3中の配合量は、質量%を示す。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のジオポリマー硬化体及び断熱材は、より優れた断熱性を有するので、電子部品の断熱材、住宅、車両、産業用等を含む種々の用途に用いられる蓄熱装置の断熱材、自動車のエンジンルーム内に用いる断熱材、自動車の乗車ルームを保温するために用いる断熱材、自動車の燃料電池を被覆する断熱材等に用いることができる。