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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025093809
(43)【公開日】2025-06-24
(54)【発明の名称】薬液供給装置、薬液希釈方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20250617BHJP
   A61M 60/113 20210101ALI20250617BHJP
   A61M 60/268 20210101ALI20250617BHJP
   A61M 60/37 20210101ALI20250617BHJP
   A61M 60/427 20210101ALI20250617BHJP
【FI】
A61M1/36 153
A61M60/113
A61M60/268
A61M60/37
A61M60/427
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023209695
(22)【出願日】2023-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原林 理
(72)【発明者】
【氏名】山村 優
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD02
4C077DD16
4C077EE02
4C077KK25
(57)【要約】
【課題】 ヘパリンなどの薬液の包材に制限されにくく、また、梱包単位の薬液で複数回の治療に用いることができる薬液供給装置を提供する。
【解決手段】 薬液供給装置は、血液を浄化する血液浄化装置が有する血液回路に薬液を供給する薬液供給装置であって、容器に収容された抗凝血剤が前記容器から導入可能であり、導入された抗凝血剤を少なくとも含む組成物を保持する組成物保持部と、前記組成物保持部を前記血液回路に連結し、前記組成物を前記組成物保持部から前記血液回路へ導出可能にする連結部と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を浄化する血液浄化装置が有する血液回路に薬液を供給する薬液供給装置であって、
容器に収容された抗凝血剤が前記容器から導入可能であり、導入された抗凝血剤を少なくとも含む組成物を保持する組成物保持部と、
前記組成物保持部を前記血液回路に連結し、前記組成物を前記組成物保持部から前記血液回路へ導出可能にする連結部と、
を備える、薬液供給装置。
【請求項2】
前記組成物保持部に保持されている前記組成物の液面を、液面検出装置を用いて検出する、請求項1に記載の薬液供給装置。
【請求項3】
前記組成物保持部において前記組成物が空となったことを、空検出装置を用いて検出する、請求項1に記載の薬液供給装置。
【請求項4】
前記組成物保持部に希釈剤が導入可能であり、
導入された希釈剤で希釈された前記組成物を前記組成物保持部に保持可能である、請求項1に記載の薬液供給装置。
【請求項5】
前記容器と前記組成物保持部とを連通する第1連通部であって、容器に収容された抗凝血剤を前記組成物保持部に導入可能にする第1連通部と、
前記組成物保持部と前記連結部とを連通する第2連通部であって、前記組成物保持部に保持された前記組成物を前記連結部に導出可能にする第2連通部とを、さらに備える請求項1に記載の薬液供給装置。
【請求項6】
前記第2連通部は、
希釈剤を前記組成物保持部に導入する希釈剤導入状態と、
前記組成物を前記連結部に導出する組成物導出状態と、
を有する、請求項5に記載の薬液供給装置。
【請求項7】
前記血液回路は、ダイアフラムの変形により、前記血液回路内の液体の流動を制御するダイアフラムポンプを更に備える、請求項1に記載の薬液供給装置。
【請求項8】
連続的に流下する前記組成物を、独立した滴状に分離して重力の作用によって滴下する滴下チャンバをさらに備え、
前記滴下チャンバから滴下された組成物を、滴下センサを用いて検出する、請求項1に記載の薬液供給装置。
【請求項9】
前記組成物保持部から離隔する延出部が、ダイアフラムの変形により、前記延出部内の空気の流動を制御するダイアフラムポンプを有する、請求項1に記載の薬液供給装置。
【請求項10】
前記第1連通部は、長尺な円筒形状を有する突出部を有し、
前記突出部は、前記容器が有する貫通孔に挿通可能な開口であって、前記組成物保持部から最も離隔した先端部に設けられた開口を有する、請求項5に記載の薬液供給装置。
【請求項11】
血液を浄化する血液浄化装置が有する血液回路に薬液を供給する薬液供給方法であって、
容器に収容された抗凝血剤を前記容器から組成物保持部に導入する抗凝血剤導入ステップと、
前記組成物保持部に導入された抗凝血剤を少なくとも含む組成物を前記組成物保持部で保持させる組成物保持ステップと、
前記組成物保持部を前記血液回路に連結する連結部を介して、前記組成物を前記組成物保持部から前記血液回路に導出する組成物導出ステップと、
を含む、薬液供給方法。
【請求項12】
前記組成物保持部に保持されている前記組成物の液面を検出する組成物液面検出ステップを、さらに含む、請求項11に記載の薬液供給方法。
【請求項13】
前記組成物保持部において前記組成物が空となったことを検出する空検出ステップを、さらに含む、請求項11に記載の薬液供給方法。
【請求項14】
前記組成物保持部に希釈剤を導入する希釈剤導入ステップと、
導入された希釈剤で希釈された前記組成物を前記組成物保持部に保持する希釈保持ステップを、さらに含む、請求項11に記載の薬液供給方法。
【請求項15】
前記容器と前記組成物保持部とを連通する第1連通部を介して、容器に収容された抗凝血剤を前記組成物保持部に導入する導入ステップと、
前記組成物保持部と前記連結部とを連通する第2連通部を介して、前記組成物保持部に保持された前記組成物を前記連結部に導出する導出ステップとを、さらに含む、請求項11に記載の薬液供給方法。
【請求項16】
前記第2連通部を介して、希釈剤を前記組成物保持部に導入する希釈剤導入ステップと、
前記第2連通部を介して、前記組成物を前記連結部に導出する組成物導出ステップと、をさらに含む請求項15に記載の薬液供給方法。
【請求項17】
ダイアフラムポンプが有するダイアフラムの変形により、前記血液回路内の液体の流動を制御する液体流動制御ステップをさらに含む、請求項11に記載の薬液供給方法。
【請求項18】
連続的に流下する前記組成物を、独立した滴状に分離して重力の作用によって滴下する滴下ステップと、
滴下された組成物を検出する滴下組成物検出ステップと、をさらに含む、請求項11に記載の薬液供給装置。
【請求項19】
前記組成物保持部から離隔するとともに空気が流動可能な延出部に設けられたダイアフラムポンプが有するダイアフラムの変形により、前記延出部内の空気の流動を制御する液体流動制御ステップをさらに含む、請求項11に記載の薬液供給方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液供給装置、薬液希釈方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透析装置などで血液の抗凝血剤としてヘパリンが用いられることがある。一般に、ヘパリンは、バイアルなどに収容されて納品される。バイアルに収容されたヘパリンを用いるシステムでは、バイアルを装置にセットすることで、バイアルから直ちにヘパリンを使用できる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-118944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシステムでは、バイアルを装置にセットするものであった。このため、システムに使用可能な一定の形状や大きさを有するバイアルのみを使用せざるを得なかった。このため、ヘパリンの包材がバイアルに制限されていた。さらに、梱包単位のヘパリンを使って治療できるのみで、複数回に亘って治療することが困難であった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものである。ヘパリンなどの薬液の包材に制限されにくく、また、梱包単位の薬液で複数回の治療に用いることができる薬液供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による薬液供給装置の特徴は、
血液を浄化する血液浄化装置が有する血液回路に薬液を供給する薬液供給装置であって、
容器に収容された抗凝血剤が前記容器から導入可能であり、導入された抗凝血剤を少なくとも含む組成物を保持する組成物保持部と、
前記組成物保持部を前記血液回路に連結し、前記組成物を前記組成物保持部から前記血液回路へ導出可能にする連結部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
ヘパリンなどの薬液の包材に制限されにくく、また、梱包単位の薬液で複数回の治療に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態による薬液供給装置の構成を示す模式図である。
図2】第1の実施の形態による薬液供給装置での充填工程を示す模式図である。
図3】第1の実施の形態による薬液供給装置での希釈工程を示す模式図である。
図4】第1の実施の形態による薬液供給装置での投与準備工程を示す模式図である。
図5】第2の実施の形態による薬液供給装置での希釈工程(a)と投与準備工程(b)とを示す模式図である。
図6】第3の実施の形態による薬液供給装置の構成を示す模式図である。
図7】第3の実施の形態による薬液供給装置での充填工程を示す模式図である。
図8】第3の実施の形態による薬液供給装置での希釈工程を示す模式図である。
図9】第3の実施の形態による薬液供給装置での投与準備工程を示す模式図である。
図10】制御装置66の機能を説明する機能ブロック図である。
図11】制御装置66の全体的な処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<<<<本実施の形態の概要>>>>>
従来、透析治療では、血液の抗凝血剤としてヘパリンが用いられる。ヘパリンは、バイアルに収容されたり、シリンジに充填されたりして納品される場合が多い。
【0010】
バイアルに収容されたヘパリンを用いる場合には、バイアルを装置に直接にセットしてヘパリンを投与する。しかしながら、その装置に対応したバイアル以外の包材を使用することは困難であった。また、一般のバイアルでは、1回の治療で、収容されているヘパリンの全てを使いきらねばならず、複数回の治療に亘ってヘパリンを使用することが困難であった。
【0011】
バイアルなどの包材は、包材の大きさや形状などで装置に依存する場合が多く、使用できる包材の選択肢が少なかった。
【0012】
このように、所望するヘパリンを使えるように包材の選択肢を増やすとともに、包材を複数回分けて使用できる装置やシステムが望まれていた。
【0013】
<<<<<本実施の形態の詳細>>>>>
以下に、実施の形態として第1~第3の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0014】
<<方向>>
<上方向、上側、上向き、上方など>
上方向は、後述する下方向と逆の方向であり、重力の方向と逆の方向である。
【0015】
<下方向、下側、下向き、下方など>
下方向は、重力の方向である。すなわち、下方向は、物体を吊り下げた糸の示す方向である。
【0016】
<上下方向>
上下方向は、上方向及び下方向に沿った方向である。向きは問わず、上方向及び下方向に沿っていればよい。
【0017】
<長手方向>
長尺な形状を有する部材などにおいて、長く延在する方向をいう。最も長い部分や領域が延在する方向をいう。
【0018】
<短手方向>
長尺な形状を有する部材などにおいて、短く延在する方向、例えば、長手方向に対して垂直な方向などをいう。最も短い部分や領域が延在する方向をいう。
【0019】
<<<<第1の実施の形態>>>>
<<<血液浄化装置70の構成>>>
図1は、第1の実施の形態による薬液供給装置10Aの構成を示す模式図である。第1の実施形態の薬液供給装置10Aは、血液浄化装置70に連結され、血液透析装置に適用される。
【0020】
血液浄化装置70は、主に、
血液浄化機能を有するダイアライザ20と、
動脈側血液回路30及び静脈側血液回路40が接続された血液回路と、
血液ポンプ50と、
透析液導入ライン62及び透析液排出ライン64が接続された透析装置本体60と、
制御装置66と、
薬液クランプ手段120と、
ダイアフラムポンプ130と、
液面調整ポンプ140と、
液面検出装置150と、
空検出装置160と、
を有する。
【0021】
<ダイアライザ20>
ダイアライザ20は、血液浄化膜(図示せず)を有する。血液浄化膜は、中空糸型の血液透析膜又は血液透析濾過膜でも、平膜型の血液透析膜でもよい。ダイアライザ20は、血液導入口22及び血液導出口24を有する。血液導入口22は、血液をダイアライザ20に導入する開口部である。血液導出口24は、ダイアライザ20に導入した血液を導出する開口部である。さらに、ダイアライザ20は、透析液導入口26及び透析液排出口28を有する。透析液導入口26は、透析液をダイアライザ20に導入する開口部である。透析液排出口28は、ダイアライザ20に導入した透析液を排出する開口部である。ダイアライザ20は、血液導入口22から導入した血液に、血液浄化膜を介して、透析液を接触させて血液を浄化する。
【0022】
<動脈側血液回路30>
動脈側血液回路30は、主に、可撓性を有し長尺なチューブを有する。動脈側血液回路30は、第1の端部32と第2の端部34とを有する。動脈側血液回路30の第1の端部32が、ダイアライザ20の血液導入口22に接続される。患者の血管から採取した血液は、動脈側血液回路30の第1の端部32からダイアライザ20の血液導入口22を介してダイアライザ20の血液浄化膜内に導かれる。動脈側血液回路30の第2の端部34には、動脈側穿刺針(図示せず)を取り付けるためのコネクタ(図示せず)を設けることができる。
【0023】
<静脈側血液回路40>
静脈側血液回路40は、動脈側血液回路30と同様に、主に、可撓性を有し長尺なチューブを有する。静脈側血液回路40は、第1の端部42と第2の端部44とを有するとともに、途中にエアトラップチャンバ(図示せず)を有する。静脈側血液回路40の第1の端部42は、ダイアライザ20の血液導出口24に接続される。ダイアライザ20の血液導出口24から、血液浄化膜内を通過した血液が導出される。静脈側血液回路40の第2の端部44には、静脈側穿刺針(図示せず)を取り付けるためのコネクタ(図示せず)を設けることができる。
【0024】
<血液ポンプ50>
血液ポンプ50は、動脈側血液回路30の第1の端部32と第2の端部34との間に配設されている。血液ポンプ50は、チューブポンプによって構成される。チューブポンプは、回転可能なローラー(図示せず)を有する。回転するローラーによってチューブを押し潰すことで、動脈側血液回路30のチューブ内の血液やプライミング液を流動させる。
【0025】
<体外循環>
動脈側穿刺針で採取された患者の血液は、動脈側血液回路30を介してダイアライザ20に至り、血液浄化がなされた後に、静脈側血液回路40を流動し、静脈側穿刺針を介して患者の体内に戻る。これによって、体外循環がなされる。
【0026】
<動脈側及び静脈側>
血液を脱血(採血)する穿刺針の側を「動脈側」と称し、血液を返血する穿刺針の側を「静脈側」と称する。したがって、「動脈側」と称するか、「静脈側」と称するかは、穿刺の対象となる血管が、動脈であるか又は静脈であるかによって定まるものでない。
【0027】
<動脈クランプ手段36及び静脈クランプ手段46>
動脈側血液回路30の先端部には、動脈側血液回路30の流路を開閉可能な動脈クランプ手段36が配設されている。静脈側血液回路40の先端部には、静脈側血液回路40の流路を開閉可能な静脈クランプ手段46が配設されている。動脈クランプ手段36及び静脈クランプ手段46は、制御装置66から出力される制御信号によって、開状態又は閉状態に制御される。
【0028】
<透析液導入ライン62及び透析液排出ライン64>
ダイアライザ20の透析液導入口26には、透析液導入ライン62が接続されている。ダイアライザ20の透析液排出口28には、透析液排出ライン64が接続されている。透析液は、透析液導入ライン62を介してダイアライザ20に導入され、中空糸膜の外側を通過して透析液排出ライン64から排出され得る。ダイアライザ20が有する中空糸膜(浄化膜)の内側は、血液が流動し得る血液流路を形成するとともに、中空糸膜の外側は、透析液が流動し得る透析液流路を形成する。
【0029】
<透析装置本体60>
透析装置本体60は、透析液導入ライン62及び透析液排出ライン64が延設されている。透析装置本体60は、送液ポンプ、除水ポンプ(いずれも図示せず)を有する。送液ポンプは、所定の濃度に調製された透析液を、ダイアライザ20に導入させるとともに、ダイアライザ20から透析後の透析液を排出させる。除水ポンプは、ダイアライザ20中に流れる血液から水分を除去する。
【0030】
<制御装置66>
図10は、制御装置66を含む透析装置本体60の全体的な機能を説明する機能ブロック図である。透析装置本体60は、入力部と、制御装置66と、出力部とを含む。
【0031】
入力部は、タッチパネルやキーボードなど、透析装置本体60の操作者が、操作できる装置や部品である。操作者は、入力部からデータを入力したり、制御のための指示を入力したりすることができる。入力部は、操作者による入力操作を検出すると、入力操作に応じた検出信号を制御装置66に出力する。
【0032】
制御装置66は、主に、プロセッサ(CPU(中央処理装置)など)、ROM(リードオンリーメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、I/O(入出力インターフェース)、I/F(インターフェース装置)、補助記憶装置(HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)など)などを有する。ROMには、制御処理などの各種の処理を実行するためのプログラムや定数などが記憶される。RAMには、プログラムが実行されたときに用いる変数の値などが一時的に記憶される。
【0033】
出力部は、主に、血液ポンプ50と、液面調整ポンプ140と、薬液クランプ手段120と、動脈クランプ手段36と、ソレノイドバルブ370(後述する第3の実施の形態)とを有する。操作者が入力部を操作することによって、入力部は、入力操作に応じた検出信号を制御装置66に出力し、制御装置66は、制御信号を出力部に出力し、出力部を制御することができる。
【0034】
制御装置66は、I/Oを介して、各種の制御信号を出力したり、各種の検出信号を入力したりする。例えば、制御装置66は、後述する薬液クランプ手段120や、ダイアフラムポンプ130や液面調整ポンプ140などに制御信号を出力する。また、制御装置66は、液面検出装置150や空検出装置160などから検出信号を入力する。
【0035】
<<薬液クランプ手段120>>
薬液クランプ手段120は、薬液供給装置10Aの薬液ライン100(後述)に設けられている。薬液クランプ手段120は、開状態又は閉状態のいずれか一方の状態となる。薬液クランプ手段120が開状態のときには、薬液ライン100内で液体が流動することができる。薬液クランプ手段120が閉状態のときには、薬液ライン100内で液体は流動することができなくなる。
【0036】
薬液クランプ手段120は、ソレノイドやモータなどの駆動装置(図示せず)を有する。薬液クランプ手段120は、制御装置66から出力される制御信号によって駆動装置が駆動されて、開状態又は閉状態となる。
【0037】
<<ダイアフラムポンプ130>>
ダイアフラムポンプ130は、変形可能なダイアフラム131を有する。ダイアフラムポンプ130は、ダイアフラム131の変形により、液体の流動を制御する。ダイアフラムポンプ130のダイアフラム131は、液面調整ポンプ140によって駆動される。ダイアフラムポンプ130は、液面調整ポンプ140によって、ダイアフラム131を押圧又は吸引する。ダイアフラム131の押圧又は吸引によってダイアフラム131を変形させ、動脈側血液回路30内又は静脈側血液回路40内で陽圧、又は負圧を生じさせることで、動脈側血液回路30や静脈側血液回路40での液体の流動を制御する。ダイアフラムポンプ130は、液面調整ポンプ140によって、押圧と吸引とを繰り返すことができる。
【0038】
ダイアフラムポンプ130は、第1の実施の形態では、動脈側血液回路30及び静脈側血液回路40の双方に設けられている。第1の実施の形態では、主に、動脈側血液回路30に設けられたダイアフラムポンプ130を用いる。ダイアフラムポンプ130によって、液体を動脈側血液回路30内で流動させることができる。
【0039】
<<液面調整ポンプ140>>
液面調整ポンプ140は、ダイアフラムポンプ130のダイアフラム131を変形させる。液面調整ポンプ140は、ダイアフラムポンプ130のダイアフラム131を押圧又は吸引する。
【0040】
液面調整ポンプ140は、ソレノイドやモータなどの駆動装置(図示せず)を有する。液面調整ポンプ140は、制御装置66から出力される制御信号によって駆動装置が駆動されて、押圧又は吸引する。
【0041】
<<液面検出装置150>>
液面検出装置150は、ピペット110内に導入された希釈されていないヘパリンや希釈されたヘパリンの量を検出することができる。液面検出装置150は、液面を示す信号を制御装置66に出力する。
【0042】
<<空検出装置160>>
空検出装置160は、ピペット110内に、希釈されていないヘパリンや希釈されたヘパリンが存在するか否かを検出することができる。空検出装置160は、ヘパリンや希釈されたヘパリンが存在しないことを示す信号を出力する。空検出装置160を設けることにより、後述する投与準備工程において、ピペット110が空になるまで、希釈されたヘパリンを導出できるため、薬液の残留による無駄を低減できる。さらに、ピペット110が空になった時点で希釈されたヘパリンの導出を停止できるため、動脈側血液回路30内に空気が混入するリスクを低減できる。
【0043】
<<<薬剤等>>>
<ヘパリン(抗凝血剤)>
透析治療では、ヘパリンは、抗凝血剤として用いられる。通常、シリンジなどに封入された形態で納品される。
【0044】
<プライミング液(希釈液)>
透析治療では、生理食塩水、透析液などが、プライミング液として用いられる。透析治療では、ヘパリンは、プライミング液によって希釈される。
【0045】
<<<薬液供給装置10Aの構成>>>
薬液供給装置10Aは、血液回路の外側に設けることができ、従前の血液回路への変更を少なくして用いることができる。
【0046】
薬液供給装置10Aは、主に、図1に示すように、
薬液ライン100と、
ピペット110と、
を有する。
【0047】
<<薬液ライン100>>
薬液ライン100は、血液回路に接続される。液体が、薬液ライン100と血液回路との間で流動することができる。液体は、プライミング液や希釈されたヘパリンなどであるが、これらには限られない。例えば、薬液ライン100は、動脈側血液回路30に接続され連通する。薬液ライン100は、可撓性を有するチューブなどで構成されるのが好ましい。ピペット110を動脈側血液回路30から離隔した位置に配置することができる。
【0048】
薬液ライン100は、動脈側血液回路30と接続部180で接続される。薬液ライン100は、接続部180で着脱可能に接続されるのが好ましい。薬液ライン100は、使い捨て可能な器具として用いることができる。
【0049】
<<ピペット110>>
ピペット110には、ヘパリンやプライミング液が導入される。ピペット110内で、ヘパリンは、プライミング液によって希釈される。ピペットは、少量の液体を、収容したり一時的に貯留したりし、移動をさせるため器具である。ピペットは、計量用の目盛りを有してもよい。計量用の目盛りを用いることで、簡易かつ簡便に容量を計量することができる。ピペットは、使い捨て可能な器具として用いることができる。なお、ピペットに限られず、ヘパリンやプライミング液を一時的に収容でき、希釈されていないヘパリンや、希釈された希釈ヘパリンを導出できる容器であればよい。
【0050】
ピペット110は、全体的に長尺な形状を有する。ピペット110は、長手方向が上下方向に沿うよう配置される。ピペット110は、上下反転可能に設けられる。ピペット110は、正立状態又は倒立状態のいずれかの状態となる。正立状態は、ピペット110の上端開口部114(後述)が上側に向かって開口する状態であり、投与準備工程(図4参照)や希釈工程(図3参照)におけるピペット110の状態である。倒立状態は、ピペット110の上端開口部114が下側に向かって開口する状態であり、充填工程(図2参照)でのピペット110の状態である。
【0051】
ピペット110の上下反転の動作は、手動によるものでも、モータなどの駆動装置(図示せず)を用いるものでもよい。血液浄化装置70の制御装置66は、ピペット110を上下反転させるための制御信号をモータなどの駆動装置に出力する。血液浄化装置70の制御装置66が正立指令信号を出力すると、モータなどの駆動装置によって、ピペット110は、正立状態となる。制御装置66は、正立指令信号を出力することで、ピペット110の状態が正立状態であると判断することができる。血液浄化装置70の制御装置66が倒立指令信号を出力すると、モータなどの駆動装置によって、ピペット110は、倒立状態となる。制御装置66は、倒立指令信号を出力することで、ピペット110の状態が倒立状態であると判断することができる。
【0052】
また、ピペット110が、正立状態又は倒立状態のいずれかの状態であるかを検出するためのセンサ(図示せず)を設けてもよい。センサは、光学式でも機械式でも他の検出方法でも、ピペット110の正立状態又は倒立状態を検出して、検出結果を示す信号を出力するものであればよい。血液浄化装置70の制御装置66は、センサから発せられた検出結果を示す信号を受信することで、ピペット110の状態を取得することができる。モータなどの駆動装置に不具合が生じた場合であっても、ピペット110の状態を的確に取得することができる。
【0053】
さらに、操作者が、手動でピペット110を上下反転させる場合には、操作者は、上下反転の作業が完了した後に、タッチパネルを操作する。例えば、操作者が、ピペット110を正立状態にしたときには、操作者は、タッチパネルに正立状態にしたことを示す情報を入力する。この操作により、タッチパネルは、正立状態となったことを示す信号を制御装置に出力する。これにより、制御装置66は、ピペット110の状態が正立状態であると判断することができる。一方、操作者が、ピペット110を倒立状態にしたときには、操作者は、タッチパネルに倒立状態にしたことを示す情報を入力する。この操作により、タッチパネルは、倒立状態となったことを示す信号を制御装置に出力する。これにより、制御装置66は、ピペット110の状態が倒立状態であると判断することができる。
【0054】
ピペット110は、主に、収容部112と、延出部113と、上端開口部114と、下端開口部116とを有する。
【0055】
<収容部112>
収容部112は、長尺な略円筒状の形状を有する。収容部112には、ヘパリンやプライミング液が導入される。収容部112にプライミング液が導入される場合には、収容部112において、ヘパリンがプライミング液によって希釈される。また、収容部112にプライミング液が導入されない場合には、収容部112において、ヘパリンはプライミング液によって希釈されず、単にヘパリンが収容された状態となる。
【0056】
<延出部113>
延出部113は、長尺な略円筒状の形状を有する。延出部113は、収容部112の上部に収容部112から離隔する方向に延出する。延出部113は、収容部112よりも細い直径を有する。延出部113を収容部112よりも細くすることで、各種の容器の開口に延出部113を挿入させたり抜き出したりし易くできる。様々な形状や大きさを有する容器に対応可能にして、収容されているヘパリンをピペット110に導入することができる。特に、延出部113は、収容部112から離隔するに従って細くなるように(先細状に)形成されているのが好ましい。延出部113を各種の容器の開口に、さらに挿入させたり抜き出したりし易くできる。
【0057】
延出部113は、収容部112と同心状に配置される。すなわち、延出部113の中心軸が収容部112の中心軸と一致するように、延出部113は配置される。
【0058】
<上端開口部114>
延出部113は、上端部(収容部112から最も離隔した部分)に上端開口部114を有する。上端開口部114は、収容部112及び延出部113と連通する。上端開口部114は、バイアルと接続可能である(図2参照)。上端開口部114から延出部113を介して、バイアルに貯留されているヘパリンが収容部112に導入される。
【0059】
ピペット110を上下反転させない通常の正立状態では、上端開口部114は上方向に向かう。一方、ピペット110を上下反転させた倒立状態では、上端開口部114は下方向に向かう。なお、ヘパリンは、ピペット110を上下反転させた倒立状態にし、上端開口部114を下方向に向けて、上端開口部114を介して収容部112に導入される。
【0060】
<下端開口部116>
ピペット110は、下部に下端開口部116を有する。下端開口部116は、収容部112と連通する。ピペット110は、下端開口部116で薬液ライン100に連結される。薬液ライン100を介して、下端開口部116から、プライミング液が収容部112に導入される。また、プライミング液によって希釈されたヘパリンが、下端開口部116を介して収容部112から薬液ライン100に導出される。ピペット110を上下反転させない通常の正立状態では、下端開口部116は、下方向に向かう。なお、プライミング液や希釈されたヘパリンは、ピペット110を上下反転させない通常の正立状態で、すなわち、下端開口部116を下方向に向けた状態で、導入されたり導出されたりする。また、プライミング液によって希釈されないヘパリンも、ピペット110を上下反転させない通常の正立状態で、すなわち、下端開口部116を下方向に向けた状態で導出される。
【0061】
<<薬液供給装置10Aの他の構成>>
薬液供給装置10Aが、主に、
薬液ライン100と、
ピペット110と、
を有し、また、血液浄化装置70が、主に、
血液浄化機能を有するダイアライザ20と、
動脈側血液回路30及び静脈側血液回路40が接続された血液回路と、
血液ポンプ50と、
透析液導入ライン62及び透析液排出ライン64が接続された透析装置本体60と、
制御装置66と、
薬液クランプ手段120と、
ダイアフラムポンプ130と、
液面調整ポンプ140と、
液面検出装置150と、
空検出装置160と、
を有する例を示した。
【0062】
この構成に限られず、薬液クランプ手段120、ダイアフラムポンプ130、液面調整ポンプ140、液面検出装置150、空検出装置160のうちの少なくとも1つを、薬液供給装置10Aが有するようにしてもよい。例えば、薬液供給装置10Aに、プロセッサ(処理装置)などを有する制御装置(図示せず)を設け、制御装置から制御信号を出力したり、検出信号を制御装置に入力したりできるようにする。さらに、薬液供給装置10Aの制御装置を血液浄化装置70の制御装置66に互いに通信可能に接続する。薬液クランプ手段120、ダイアフラムポンプ130、液面調整ポンプ140、液面検出装置150、空検出装置160のうち、血液浄化装置70の制御装置66が制御するものと、薬液供給装置10Aの制御装置が制御するものとに適宜に分けて制御する。
【0063】
なお、薬液供給装置10Aの制御装置のみが、薬液クランプ手段120、ダイアフラムポンプ130、液面調整ポンプ140、液面検出装置150、空検出装置160の全てを制御するようにしてもよい。薬液供給装置10Aの制御装置から出力される制御信号によって、薬液クランプ手段120、ダイアフラムポンプ130、液面調整ポンプ140を制御し、液面検出装置150、空検出装置160から出力される検出信号が、薬液供給装置10Aの制御装置に入力される。
【0064】
<<薬液供給装置10Aによる処理>>
図2は、第1の実施の形態による薬液供給装置10Aでの充填工程を示す模式図である。図3は、第1の実施の形態による薬液供給装置10Aでの希釈工程を示す模式図である。図4は、第1の実施の形態による薬液供給装置10Aでの投与準備工程を示す模式図である。図2図4に示すように、薬液供給装置10Aによる処理は、充填工程と、希釈工程と、投与準備工程とを含む。
【0065】
図2図4において、白色で示したバルブは、開状態であることを示し、黒色で示したバルブは、閉状態であることを示す。また、図2図4において、ヘパリンの存在は、斜線で示し、プライミング液の存在は、水平線で示した。ダイアフラムポンプ130上の左向きの白矢印は、ダイアフラム131が押圧されたことを示し、ダイアフラムポンプ130上の右向きの白矢印は、ダイアフラム131が吸引されたことを示す。
【0066】
<<充填工程>>
充填工程は、図2に示すように、バイアルからピペット110にヘパリンを導入する工程である。充填工程によって、バイアルなどの容器(納品時の容器など)に収められているヘパリンをピペット110に導入することができる。納品時の容器の形状や容器の開口部などの容器の形態によることなく、ヘパリンを利用することができる。ヘパリンが収められる多種多様な容器に対応させることができる。なお、充填工程では、血液ポンプ50は、停止している。
【0067】
<充填工程1>
図2(a)は、充填工程の最初の工程を示す。この時点では、薬液クランプ手段120も動脈クランプ手段36も開状態(白色で示す)となっている。
【0068】
まず、ピペット110の下方にヘパリンが収められているバイアルを配置する。次に、ピペット110を上下反転させて上端開口部114を下側に位置づける(倒立状態)。ピペット110の上下反転は、手動でも、制御装置66の制御信号によるものでもよい。ピペット110にモータなど駆動装置を設けることで、制御信号でピペット110を上下反転させることができる。下側に位置づけた上端開口部114をバイアルに挿入させてバイアルと連通させる。
【0069】
<充填工程2>
図2(b)は、充填工程の第2の工程を示す。
【0070】
制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、薬液クランプ手段120を閉状態(黒色で示す)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、液面調整ポンプ140を駆動してダイアフラムポンプ130のダイアフラム131を押圧する。
【0071】
<充填工程3>
図2(c)は、充填工程の最後の工程を示す。
【0072】
制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、血液ポンプ50を停止させ、動脈クランプ手段36を閉状態(黒色)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、薬液クランプ手段120を開状態(白色)にする。
【0073】
制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、液面調整ポンプ140を駆動してダイアフラムポンプ130のダイアフラム131を吸引する。これにより、ピペット110内を負圧状態にすることができる。ピペット110内が負圧状態になったことで、バイアルに収容されているヘパリンが、バイアルから吸い出されてピペット110に導入される。
【0074】
ダイアフラムポンプ130のダイアフラム131の押圧による変形と吸引による変形の差に応じた量のヘパリンがピペット110に導入される。ダイアフラムポンプ130のダイアフラム131を少なくとも1回、変形動作させることで、所望する量のヘパリンをバイアルからピペット110に導入することができる。
【0075】
図2(a)~図2(c)に示す充填工程によって、ヘパリンが収められている容器の形状や開口部などの容器の形態によることなく、ヘパリンをピペット110に導入できる。
【0076】
充填工程が完了した後、ピペット110を上下反転させて(倒立状態から正立状態に戻して)、上端開口部114を上側に位置づける。充填工程と同様に、ピペット110の反転動作は、手動でも、制御装置66の制御信号によるものでもよい。予めピペット110を正立状態にしておくことで、後述する希釈工程へも投与準備工程へも、円滑に移行させることができる。
【0077】
<<希釈工程>>
希釈工程は、図3に示すように、ピペット110にプライミング液を導入することで、ピペット110に導入されているヘパリンを、ピペット110内でプライミング液で希釈する工程である。なお、ヘパリンを希釈する必要がない場合には、希釈工程を省き、後述する投与準備工程に移行すればよい。
【0078】
<希釈工程1>
図3(a)は、希釈工程の最初の工程を示す。
【0079】
制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、薬液クランプ手段120を閉状態(黒色)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、血液ポンプ50を駆動することで、血液ポンプ50のローター(図示せず)を正回転させて、動脈側血液回路30にプライミング液を導入する。なお、正回転は、動脈側血液回路30から静脈側血液回路40に液体を流動させる方向である。また、逆回転(反回転)は、静脈側血液回路40から動脈側血液回路30に液体を流動させる方向である。例えば、プライミング液が収容されたプライミング液収容袋が、動脈側血液回路30に接続されている(図示せず)。血液ポンプ50によって、プライミング液収容袋から動脈側血液回路30にプライミング液を案内することで、プライミング液を動脈側血液回路30に導出できる。所望する量のプライミング液を動脈側血液回路30に導出した後には、血液ポンプ50を停止させる。
【0080】
<希釈工程2>
図3(b)は、希釈工程の第2の工程を示す。
【0081】
制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、薬液クランプ手段120を閉状態(黒色)を維持する。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、液面調整ポンプ140を駆動してダイアフラムポンプ130のダイアフラム131を吸引する。なお、希釈工程2では、血液ポンプ50は、停止している。
【0082】
<希釈工程3>
図3(c)は、希釈工程の最後の工程を示す。
【0083】
血液ポンプ50が動作しているときには、制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、血液ポンプ50を停止し、動脈クランプ手段36を閉状態にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、薬液クランプ手段120を開状態(白色)にする。
【0084】
制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、液面調整ポンプ140を駆動してダイアフラムポンプ130のダイアフラム131を押圧する。これにより、動脈側血液回路30内を正圧状態にすることができる。動脈側血液回路30内が正圧状態になったことで、動脈側血液回路30内に導入されていたプライミング液は、ピペット110に向かって押し出され、薬液ライン100を介してピペット110に導入される。
【0085】
ダイアフラムポンプ130のダイアフラム131の押圧による変形と吸引による変形の差に応じた量のプライミング液がピペット110に導入される。ダイアフラムポンプ130のダイアフラム131を少なくとも1回、亘って動作させることで、所望する量のプライミング液を動脈側血液回路30からピペット110に導入できる。
【0086】
このようにすることで、ピペット110に収容されていたヘパリンを、ピペット110内でプライミング液によって希釈することができる。以下では、プライミング液で希釈されたヘパリンを希釈ヘパリンと称する。
【0087】
液面検出装置150は、ピペット110に貯留されている希釈ヘパリンの量を検出する。希釈ヘパリンの量を示す検出信号は、制御装置66のプロセッサに送信される。制御装置66のプロセッサは、所望する量の希釈ヘパリンがピペット110に貯留されたか否かを判断することができる。制御装置66のプロセッサは、希釈ヘパリンの濃度を算出することができる。
【0088】
<<投与準備工程>>
投与準備工程は、図4に示すように、ピペット110内の希釈されていないへパリンや希釈ヘパリンを患者に投与可能にする工程である。なお、投与準備工程では、血液ポンプ50は、停止している。ヘパリンを希釈する場合には、希釈工程から投与準備工程に移行する。ヘパリンを希釈する必要がない場合には、充填工程から投与準備工程に直ちに移行する。
【0089】
<投与準備工程1>
図4(a)は、投与準備工程の最初の工程を示す。
【0090】
制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、薬液クランプ手段120を閉状態(黒色)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、液面調整ポンプ140を駆動してダイアフラムポンプ130のダイアフラム131を押圧する。
【0091】
<投与準備工程2>
図4(b)は、投与準備工程の最後の工程を示す。
【0092】
血液ポンプが動作しているときには、制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、血液ポンプを停止し、動脈クランプ手段36を閉状態(黒色)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、薬液クランプ手段120を開状態(白色)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、液面調整ポンプ140を駆動してダイアフラムポンプ130のダイアフラム131を吸引する。これにより、ピペット110及び動脈側血液回路30内を負圧状態にすることができる。ピペット110及び動脈側血液回路30内が負圧状態になったことで、ピペット110に収容されている希釈ヘパリンが、ピペット110から吸い出されて薬液ライン100を介して動脈側血液回路30に導入される。
【0093】
ダイアフラムポンプ130のダイアフラム131の押圧による変形と吸引による変形の差に応じた量の希釈ヘパリンが、薬液ライン100を流動して、動脈側血液回路30に導出される。ダイアフラムポンプ130のダイアフラム131を少なくとも1回、動作させることで、所望する量の希釈ヘパリンを動脈側血液回路30に導出することができる。
【0094】
このように、前述した充填工程、希釈工程、投与準備工程により、ピペット110内でプライミング液によってヘパリンを希釈し、所望する量の希釈ヘパリンを患者に投与可能にすることができる。なお、プライミング液によってヘパリンを希釈しない場合には、前述した充填工程、投与準備工程により、希釈されていない所望する量のヘパリンを患者に投与可能にすることができる。
【0095】
<<第1の実施の形態による薬液供給装置10A、充填工程、希釈工程、投与準備工程>>
第1の実施の形態による薬液供給装置10Aによれば、血液回路に設けられたダイアフラムポンプ130及び液面調整ポンプ140を用いて、ヘパリンをピペット110に導入したり、プライミング液をピペット110に導入したり、希釈ヘパリンを動脈側血液回路30に導出したりできる。充填工程、希釈工程、投与準備工程において、ダイアフラムポンプ130及び液面調整ポンプ140を有効に活用することができる。
【0096】
ダイアフラムポンプ130及び液面調整ポンプ140などは、透析装置本体60の制御装置66によって制御できるので、ヘパリンの希釈作業や投与準備作業を自動化することができ、プライミング液による希釈濃度などの再現性を高くでき、安定的に実行できる。また、自動化により、作業を簡便にするとともに、使用者の負担を軽くすることができる。さらに、充填工程、希釈工程、投与準備工程や、充填工程、投与準備工程を連続的に実行することができる。
【0097】
また、ピペット110は、収容部112よりも細い延出部113を有している。このため、ヘパリンが収容されているバイアルなどの容器の開口部などに、延出部113を挿入させたり抜き出したりし易くできる。このようにして、容器や開口部の形状や大きさなどの影響を受けにくくして、ヘパリンをピペット110に導入することができる。使用者が所望するヘパリンを利用することができる。容器に収容されているヘパリンを複数回の治療に亘って利用することができる。シリンジを用いてヘパリンを投与する必要もないので、治療コストを低減することができる。
【0098】
ピペット110は、ヘパリンの導入及び貯留のみならず、プライミング液の導入及び貯留やヘパリンの希釈にも利用でき、ピペット110を有効に利用するとともに、部材を減らすことができる。また、ピペット110にプライミング液を導入することで、同時に、ピペット110内のヘパリンを希釈することができ、希釈工程を簡素化することができる。
【0099】
可撓性を有する薬液ライン100を用いることで、ピペット110などを血液回路から離隔した位置に配置できる。ピペット110などの配置の自由度を高めることができる。ピペット110などを他の装置などと干渉しないように配置でき、使用者の作業性を高めることができる。
【0100】
薬液ライン100は、プライミング液を動脈側血液回路30からピペット110に導入する希釈工程と、希釈ヘパリンをピペット110から動脈側血液回路30に導出する投与準備工程との双方の工程で共用するので、部材の数を低減化できるとともに、構成を簡素化することができる。
【0101】
<<<<第2の実施の形態>>>>
図5は、第2の実施の形態による薬液供給装置10Bでの充填工程を示す模式図である。第2の実施の形態でも、薬液供給装置10Bは、血液浄化装置70に連結され、血液透析装置に適用される。なお、第2の実施の形態では、血液浄化装置70は、ダイアフラムポンプ130及び液面調整ポンプ140を有しない点を除いて、第1の実施の形態と同様の構成を有する。第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同様の構成については、同じ符号を付した。図5では、透析装置本体60及び制御装置66を省略して示した。
【0102】
<<<血液浄化装置70の構成>>>
第2の実施の形態の血液浄化装置70は、主に、
血液浄化機能を有するダイアライザ20と、
動脈側血液回路30及び静脈側血液回路40が接続された血液回路と、
血液ポンプ50と、
透析液導入ライン62及び透析液排出ライン64が接続された透析装置本体60(図示せず)と、
制御装置66(図示せず)と、
薬液クランプ手段120と、
液面検出装置150と、
点滴センサ220と、
を有する。第2の実施の形態の血液浄化装置70は、点滴センサ220を有し、ダイアフラムポンプ130と液面調整ポンプ140とは有しない点で、第1の実施の形態の血液浄化装置70とは異なる。
【0103】
<<<薬液供給装置10Bの構成>>>
薬液供給装置10Bは、血液回路の外側に設けることができ、従前の血液回路への変更を少なくして用いることができる。
【0104】
薬液供給装置10Bは、主に、図5に示すように、
薬液ライン200と、
ピペット110と、
滴下チャンバ210と、
を有する。ピペット110は、第1の実施の形態と同様の構成を有し、同様に機能する。
【0105】
<<薬液ライン200>>
薬液ライン200は、血液回路に接続される。液体が、薬液ライン200と血液回路との間で流動することができる。液体は、プライミング液や希釈されたヘパリンなどであるが、これらには限られない。例えば、薬液ライン200は、動脈側血液回路30に接続され連通する。薬液ライン200は、可撓性を有するチューブなどで構成されるのが好ましい。ピペット110を動脈側血液回路30から離隔した位置に配置することができる。
【0106】
薬液ライン200は、動脈側血液回路30と接続部280で接続される。薬液ライン200は、接続部280で着脱可能に接続されるのが好ましい。薬液ライン200は、薬液ライン100と同様に、使い捨て可能な器具として用いることができる。
【0107】
<滴下チャンバ210>
滴下チャンバ210は、連続的に流下する液体を、独立した滴状に分離して重力の作用によって滴下する。滴下チャンバ210は、いわゆる点滴で用いられる部材である。具体的には、滴下チャンバ210は、希釈されていないヘパリンや希釈された希釈ヘパリンを滴状にして滴下する。詳細は、後述する。
【0108】
<点滴センサ220>
点滴センサ220は、滴下チャンバ210で滴下した滴状の数(以下、滴下数と称する)を検出し、滴下数を示す検出信号を透析装置に出力する。透析装置本体60の制御装置66は、滴下数に基づいた処理を実行することができる。なお、透析装置本体60の制御装置66は、第1の実施の形態と同様の構成を有し、同様に機能する。制御装置66は、各種の制御装置を制御するための制御信号を出力するとともに、各種の検出装置が検出した結果を示す検出信号が制御装置66に入力される。
【0109】
なお、第2の実施の形態では、点滴センサ220は、滴下チャンバ210に着脱可能に設けられるが、これに限られない。点滴センサ220は、滴下チャンバ210と一体になった構成でもよい。点滴センサ220は、滴下チャンバ210での滴下数を検出して検出信号を出力できるものであればよい。
【0110】
<<薬液供給装置10Bの他の構成>>
第2の実施の形態の血液浄化装置70が、主に、
血液浄化機能を有するダイアライザ20と、
動脈側血液回路30及び静脈側血液回路40が接続された血液回路と、
血液ポンプ50と、
透析液導入ライン62及び透析液排出ライン64が接続された透析装置本体60と、
制御装置66と、
薬液クランプ手段120と、
液面検出装置150と、
点滴センサ220と、
を有し、薬液供給装置10Bは、主に、
薬液ライン200と、
ピペット110と、
滴下チャンバ210と、
を有する例を示した。
【0111】
この構成に限られず、薬液クランプ手段120、液面検出装置150、点滴センサ220のうちの少なくとも1つを、薬液供給装置10Bが有するようにしてもよい。例えば、薬液供給装置10Bに、プロセッサ(処理装置)などを有する制御装置(図示せず)を設け、制御装置から制御信号を出力したり、検出信号を制御装置に入力したりできるようにする。さらに、薬液供給装置10Bの制御装置を血液浄化装置70の制御装置66に互いに通信可能に接続する。薬液クランプ手段120、液面検出装置150、点滴センサ220のうち、血液浄化装置70の制御装置66が制御するものと、薬液供給装置10Bの制御装置が制御するものとに適宜に分けて制御する。
【0112】
なお、薬液供給装置10Bの制御装置のみが、薬液クランプ手段120、液面検出装置150、点滴センサ220の全てを制御するようにしてもよい。薬液供給装置10Bの制御装置から出力される制御信号によって、薬液クランプ手段120を制御し、液面検出装置150、点滴センサ220から出力される検出信号が、薬液供給装置10Bの制御装置に入力される。
【0113】
<<薬液供給装置10Bによる処理>>
薬液供給装置10Bによる処理も、プライミング液でヘパリンを希釈する場合には、充填工程と、希釈工程と、投与準備工程とを含む。プライミング液でヘパリンを希釈しない場合には、薬液供給装置10Bによる処理は、充填工程と、投与準備工程とを含む。なお、図5は、希釈工程(a)と投与準備工程(b)とを示す。
【0114】
図5において、白色で示したバルブは、開状態であることを示し、黒色で示したバルブは、閉状態であることを示す。また、図5において、ヘパリンの存在は、斜線で示し、プライミング液の存在は、水平線で示した。
【0115】
<<充填工程>>
第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは異なり、操作者による作業(手動)により、ピペット110にヘパリンを導入する(図2参照)。
【0116】
<<希釈工程>>
希釈工程は、図5(a)に示すように、ピペット110にプライミング液を導入することで、ピペット110に導入されているヘパリンを、ピペット110内でプライミング液によって希釈する工程である。なお、ヘパリンを希釈する必要がない場合には、希釈工程を省き、後述する投与準備工程に直ちに移行すればよい。
【0117】
第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは異なり、血液ポンプ50を逆回転させることで、動脈側血液回路30からピペット110にプライミング液を導入する。制御装置66からの制御信号によって、血液ポンプ50を逆回転させることができる。液面検出装置150によって、ピペット110内のプライミング液が必要量に達したかどうかを判断することができる。
【0118】
滴下チャンバ210を上下反転させて配置する。滴下チャンバ210の上下反転は、手動でも、制御装置66の制御信号によるものでもよい。滴下チャンバ210にモータなど駆動装置(図示せず)を設けることで、制御装置66から出力される制御信号によってピペット110を上下反転させることができる。
【0119】
滴下チャンバ210の上下反転の動作は、手動によるものでも、モータなどの駆動装置(図示せず)を用いるものでもよい。血液浄化装置70の制御装置66は、滴下チャンバ210を上下反転させるための制御信号をモータなどの駆動装置に出力する。血液浄化装置70の制御装置66が正立指令信号を出力すると、モータなどの駆動装置によって、滴下チャンバ210は、正立状態となる。制御装置66は、正立指令信号を出力することで、滴下チャンバ210の状態が正立状態であると判断することができる。血液浄化装置70の制御装置66が倒立指令信号を出力すると、モータなどの駆動装置によって、滴下チャンバ210は、倒立状態となる。制御装置66は、倒立指令信号を出力することで、滴下チャンバ210の状態が倒立状態であると判断することができる。
【0120】
また、滴下チャンバ210が、正立状態又は倒立状態のいずれかの状態であるかを検出するためのセンサ(図示せず)を設けてもよい。センサは、光学式でも機械式でも他の検出方法でも、滴下チャンバ210の正立状態又は倒立状態を検出して、検出結果を示す信号を出力するものであればよい。血液浄化装置70の制御装置66は、センサから発せられた検出結果を示す信号を受信することで、滴下チャンバ210の状態を取得することができる。モータなどの駆動装置に不具合が生じた場合であっても、滴下チャンバ210の状態を的確に取得することができる。
【0121】
さらに、操作者が、手動で滴下チャンバ210を上下反転させる場合には、操作者は、上下反転の作業が完了した後に、タッチパネルを操作する。例えば、操作者が、滴下チャンバ210を正立状態にしたときには、操作者は、タッチパネルをから正立状態にしたことを示す情報を入力する。この操作により、タッチパネルは、正立状態となったことを示す信号を制御装置に出力する。これにより、制御装置66は、滴下チャンバ210の状態が正立状態であると判断することができる。一方、操作者が、滴下チャンバ210を倒立状態にしたときには、操作者は、タッチパネルをから倒立状態にしたことを示す情報を入力する。この操作により、タッチパネルは、倒立状態となったことを示す信号を制御装置に出力する。これにより、制御装置66は、滴下チャンバ210の状態が倒立状態であると判断することができる。
【0122】
なお、ピペット110は、滴下チャンバ210が上下反転した正立状態でも倒立状態でもいずれの場合でも、滴下チャンバ210よりも常に上方に位置するように配置すればよい。
【0123】
血液ポンプ50が動作しているときには、制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、血液ポンプ50を停止し、動脈クランプ手段36を閉状態(黒色)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、薬液クランプ手段120を開状態(白色)にする。
【0124】
制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、血液ポンプ50を駆動する。血液ポンプ50の駆動により、動脈側血液回路30に導入されていたプライミング液が押し出されて、薬液ライン200を流動し、薬液クランプ手段120及び滴下チャンバ210を介してピペット110に導入される。このようにして、プライミング液をピペット110に導入することができる。
【0125】
血液ポンプ50を駆動する量に応じた量のプライミング液がピペット110に導入される。このようにすることで、ピペット110に導入されていたヘパリンを、ピペット110内でプライミング液で希釈することができる。第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、プライミング液で希釈されたヘパリンを希釈ヘパリンと称する。
【0126】
液面検出装置150は、ピペット110に貯留されている希釈ヘパリンの量を検出する。希釈ヘパリンの量を示す検出信号は、制御装置66のプロセッサに送信される。制御装置66のプロセッサは、所望する量の希釈されていないヘパリンや希釈ヘパリンがピペット110に貯留されたか否かを判断することができる。制御装置66のプロセッサは、希釈ヘパリンの濃度を算出することができる。
【0127】
<<投与準備工程>>
投与準備工程は、図5(b)に示すように、ピペット110内の希釈されていないヘパリンや希釈ヘパリンを患者に投与可能にする工程である。
【0128】
滴下チャンバ210を上下反転させて元の状態に戻す。滴下チャンバ210の上下反転は、手動でも、制御装置66の制御信号によるものでもよい。
【0129】
制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、血液ポンプ50を駆動する。血液ポンプ50のローター(図示せず)を正回転させることで、血液ポンプ50を駆動した量に応じた希釈ヘパリンが、薬液ライン200を流動して、動脈側血液回路30に導出される。
【0130】
点滴センサ220は、滴下チャンバ210で希釈されていないヘパリンや希釈ヘパリンが滴下されるたびに、滴状のヘパリンを検出する。点滴センサ220は、滴下されたことを示す検出信号を制御装置66に出力する。制御装置66は、検出信号を受信することで、希釈されていないヘパリンや希釈ヘパリンの滴下数を計数し、投与された希釈されていないヘパリンや希釈ヘパリンの総量を算出できる。制御装置66は、希釈されていないヘパリンや希釈ヘパリンの総量に基づいた処理を実行する。なお、滴状の希釈されていないヘパリンや希釈ヘパリンの1個分の体積は、予め測定されて、制御装置66のRAMなどに記憶されている。
【0131】
<<第2の実施の形態による薬液供給装置10B、充填工程、希釈工程、投与準備工程>>
第2の実施の形態による薬液供給装置10Bによれば、血液回路に設けられた血液ポンプ50を用いて、プライミング液をピペット110に導入したり、希釈ヘパリンを動脈側血液回路30に導出したりできる。希釈工程、投与準備工程において、血液ポンプ50を有効に活用することができる。
【0132】
第2の実施の形態による薬液供給装置10Bによれば、第1の実施の形態のダイアフラムポンプ130や液面調整ポンプ140を用いることなく、簡便な構成で、ピペット110内でヘパリンを希釈できるとともに、希釈されていないヘパリンや希釈ヘパリンを投与することができる。血液回路の構成に制限されることなく、希釈工程及び投与準備工程を実行することができる。
【0133】
第2の実施の形態による薬液供給装置10Bによれば、滴下チャンバ210及び点滴センサ220を用いて、投与準備工程において希釈されていないヘパリンや希釈ヘパリンを計量できる。透析装置本体60と連携可能であれば、透析治療の現場で用いられる部材を活用して構成することができる。すなわち、透析治療の現場では、血液浄化装置70の制御装置66が、点滴センサ220から出力された検出信号を受信し、滴下数に基づいて血液ポンプ50を制御する機器や部品や部材などが用いられる。これらの機器や部品や部材などを有効に活用して、第2の実施の形態による薬液供給装置10Bを構成することができる。
【0134】
ピペット110は、ヘパリンの導入及び貯留のみならず、プライミング液の導入及び貯留やヘパリンの希釈にも利用でき、ピペット110を有効に利用するとともに、部材を減らすことができる。また、ピペット110にプライミング液を導入することで、同時に、ピペット110内のヘパリンを希釈することができ、希釈工程を簡素化することができる。
【0135】
可撓性を有する薬液ライン200を用いることで、ピペット110などを血液回路から離隔した位置に配置できる。ピペット110などの配置の自由度を高めることができる。ピペット110などを他の装置などと干渉しないように配置でき、使用者の作業性を高めることができる。
【0136】
薬液ライン200は、プライミング液を動脈側血液回路30からピペット110に導入する希釈工程と、希釈ヘパリンをピペット110から動脈側血液回路30に導出する投与準備工程との双方の工程で共用するので、部材の数を低減化できるとともに、構成を簡素化することができる。
【0137】
<<<<第3の実施の形態>>>>
図6は、第3の実施の形態による薬液供給装置10Cの構成を示す模式図である。第3の実施形態の薬液供給装置10Cは、第1の実施形態の薬液供給装置10Aと同様に、血液浄化装置70に連結され、血液透析装置に適用される。第3の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の構成については、同じ符号を付した。
【0138】
第3の実施の形態では、血液浄化装置70は、主に、
血液浄化機能を有するダイアライザ20と、
動脈側血液回路30及び静脈側血液回路40が接続された血液回路と、
血液ポンプ50と、
透析液導入ライン62及び透析液排出ライン64が接続された透析装置本体60(図示せず)と、
制御装置66(図示せず)と、
ダイアフラムポンプ330と、
液面調整ポンプ340と、
ソレノイドバルブ370と、
延出部313と、
液面検出装置150と、
薬液クランプ手段320と、
を有する。なお、図6では、透析装置本体60及び制御装置66を省略して示した。なお、透析装置本体60の制御装置66は、第1の実施の形態や第2の実施の形態と同様の構成を有し、同様に機能する。制御装置66は、各種の制御装置を制御するための制御信号を出力するとともに、各種の検出装置が検出した結果を示す検出信号が制御装置66に入力される。
【0139】
<ダイアフラムポンプ330>
ダイアフラムポンプ330は、変形可能なダイアフラム331を有する。ダイアフラムポンプ330は、ダイアフラム331の変形により、液体の流動を制御する。ダイアフラムポンプ330のダイアフラム331は、液面調整ポンプ340によって駆動される。ダイアフラムポンプ330は、液面調整ポンプ340によって、ダイアフラム331を押圧又は吸引する。ダイアフラム331の押圧又は吸引によってダイアフラム331を変形させ、動脈側血液回路30内又は静脈側血液回路40内で負圧を生じさせることで、動脈側血液回路30や静脈側血液回路40での液体の流動を制御する。ダイアフラムポンプ330は、液面調整ポンプ340によって、押圧と吸引とを繰り返すことができる。
【0140】
なお、ダイアフラムポンプ330は、血液と接触することがないので、血液浄化装置70の構成部品とし複数回に亘って再利用することができる。
【0141】
<液面調整ポンプ340>
液面調整ポンプ340は、ダイアフラムポンプ330のダイアフラム331を変形させる。液面調整ポンプ340は、ダイアフラムポンプ330のダイアフラム331を押圧又は吸引する。
【0142】
液面調整ポンプ340は、ソレノイドやモータなどの駆動装置(図示せず)を有する。液面調整ポンプ340は、制御装置66から出力される制御信号によって駆動装置が駆動されて、押圧又は吸引する。
【0143】
<ソレノイドバルブ370>
ソレノイドバルブ370は、ソレノイド(図示せず)によって作動する。制御装置66は、ソレノイドを制御するための制御信号を出力する。制御装置66から出力された制御信号によって、ソレノイドが制御されて、ソレノイドバルブ370が開状態又は閉状態となる。ソレノイドバルブ370が開状態(白色で示す)になると、ピペット310は外部と連通し、ダイアフラムポンプ330の駆動に応じて、ピペット310内の空気を外部に排出することができる。ソレノイドバルブ370が閉状態(黒色で示す)になると、ピペット310は外部と連通しなくなり、ダイアフラムポンプ330が駆動されても、ピペット310と外部との間で空気を流動させることができなくなる。
【0144】
<延出部313>
延出部313は、長尺な略円筒状の形状を有する。延出部313は、収容部312の上部に収容部312から離隔する方向に延出する。延出部313は、収容部312よりも細い直径を有する。延出部313は、収容部312と同心状に配置される。すなわち、延出部313の中心軸が収容部312の中心軸と一致するように、延出部313は配置される。延出部313は、外部と連通する。
【0145】
ダイアフラムポンプ330及びソレノイドバルブ370が、延出部313に接続される。ダイアフラムポンプ330及びソレノイドバルブ370を制御することで、収容部312内の空気を外部に排出して、ヘパリンやプライミング液をピペット310内に導入できる。詳細は、後述する。
【0146】
<<<薬液供給装置10Cの構成>>>
薬液供給装置10Cは、血液回路の外側に設けることができ、従前の血液回路への変更を少なくして用いることができる。
【0147】
薬液供給装置10Cは、主に、図6に示すように、
薬液ライン300と、
ピペット310と、
を有する。
【0148】
<<薬液ライン300>>
薬液ライン300は、血液回路に接続される。液体が、薬液ライン300と血液回路との間で流動することができる。液体は、プライミング液や希釈されたヘパリンなどであるが、これらには限られない。例えば、薬液ライン300は、動脈側血液回路30に接続され連通する。薬液ライン300は、可撓性を有するチューブなどで構成されるのが好ましい。ピペット310を動脈側血液回路30から離隔した位置に配置することができる。
【0149】
薬液ライン300は、動脈側血液回路30と接続部380で接続される。薬液ライン300は、接続部380で着脱可能に接続されるのが好ましい。薬液ライン300は、薬液ライン100及び200と同様に、使い捨て可能な器具として用いることができる。
【0150】
<<ピペット310>>
ピペット310には、第1の実施の形態や第2の実施の形態と同様に、ヘパリンやプライミング液が導入される。第3の実施の形態においても、ピペット310内で、ヘパリンは、プライミング液によって希釈される。
【0151】
ピペット310は、全体的に長尺な形状を有する。ピペット310は、長手方向が上下方向に沿うよう配置される。第1の実施の形態と異なり、ピペット310は、上下に反転させる必要はない。
【0152】
ピペット310は、主に、収容部312と、上端開口部314と、第1下端開口部316及び第2下端開口部318とを有する。
【0153】
<収容部312>
収容部312は、長尺な略円筒状の形状を有する。収容部312には、ヘパリンやプライミング液が導入される。収容部312において、ヘパリンがプライミング液によって希釈される。また、収容部312にプライミング液が導入されない場合には、収容部312において、ヘパリンはプライミング液によって希釈されず、単にヘパリンが収容された状態となる。
【0154】
<上端開口部314>
ピペット310は、上部に上端開口部314を有する。上端開口部314は、延出部313に接続されている。延出部313は、外部と連通しており、上端開口部314及び延出部313を介して、収容部312から外部に空気を排出できる。
【0155】
<延出部315>
延出部315は、長尺な略円筒状の形状を有する。延出部315は、収容部312の下部に収容部312から離隔する方向(下方向)に延出する。延出部315は、収容部312よりも細い直径を有する。延出部315を収容部312よりも細くすることで、各種の容器の開口に延出部315を挿入させたり抜き出したりし。様々な形状や大きさを有する容器に収容されているヘパリンを収容部312に導入することができる。特に、延出部315は、収容部312から離隔するに従って細くなるように(先細状に)形成されているのが好ましい。延出部315を各種の容器の開口に、さらに挿入させたり抜き出したりし易くできる。
【0156】
<第1下端開口部316>
延出部315は、下端部(収容部312から最も離隔した部分)に第1下端開口部316を有する。第1下端開口部316は、収容部312及び延出部315と連通する。第1下端開口部316は、バイアルと接続可能である(図7参照)。第1下端開口部316から延出部315を介して、バイアルに貯留されているヘパリンが収容部312に導入される。
【0157】
<第2下端開口部318>
ピペット310は、下部に第2下端開口部318を有する。第2下端開口部318は、収容部312と連通する。ピペット310は、第2下端開口部318で薬液ライン300に連結される。薬液ライン300を介して、第2下端開口部318から、プライミング液が収容部312に導入される。また、プライミング液によって希釈されたヘパリンが、第2下端開口部318を介して、収容部312から薬液ライン300に導出される。また、プライミング液でヘパリンを希釈しない場合には、プライミング液は、収容部312に導入されず、希釈されていないヘパリンが、第2下端開口部318を介して、収容部312から薬液ライン300に導出される。
【0158】
<薬液クランプ手段320>
薬液クランプ手段320は、薬液ライン300に設けられている。薬液クランプ手段320は、開状態又は閉状態のいずれか一方の状態となる。薬液クランプ手段320が開状態のときには、薬液ライン300内で液体が流動することができる。薬液クランプ手段320が閉状態のときには、薬液ライン300内で液体は流動することができなくなる。
【0159】
薬液クランプ手段320は、ソレノイドやモータなどの駆動装置(図示せず)を有する。薬液クランプ手段320は、制御装置66から出力される制御信号によって駆動装置が駆動されて、開状態又は閉状態となる。
【0160】
<<薬液供給装置10Cの他の構成>>
第3の実施の形態では、血液浄化装置70が、主に、
血液浄化機能を有するダイアライザ20と、
動脈側血液回路30及び静脈側血液回路40が接続された血液回路と、
血液ポンプ50と、
透析液導入ライン62及び透析液排出ライン64が接続された透析装置本体60と、
制御装置66と、
ダイアフラムポンプ330と、
液面調整ポンプ340と、
ソレノイドバルブ370と、
延出部313と、
液面検出装置150と、
と、
を有し、薬液供給装置10Cが、主に、
薬液ライン300と、
ピペット310と、
を有する例を示した。
【0161】
この構成に限られず、ダイアフラムポンプ330、液面調整ポンプ340、ソレノイドバルブ370、延出部313、液面検出装置150、薬液クランプ手段320のうちの少なくとも1つを、薬液供給装置10Cが有するようにしてもよい。例えば、薬液供給装置10Cに、プロセッサ(処理装置)などを有する制御装置(図示せず)を設け、制御装置から制御信号を出力したり、検出信薬液クランプ手段320号を制御装置に入力したりできるようにする。さらに、薬液供給装置10Cの制御装置を血液浄化装置70の制御装置66に互いに通信可能に接続する。ダイアフラムポンプ330、液面調整ポンプ340、ソレノイドバルブ370、薬液クランプ手段320のうち、血液浄化装置70の制御装置66が制御するものと、薬液供給装置10Cの制御装置が制御するものとに適宜に分けて制御する。
【0162】
なお、薬液供給装置10Cの制御装置のみが、ダイアフラムポンプ330、液面調整ポンプ340、ソレノイドバルブ370、薬液クランプ手段320の全てを制御するようにしてもよい。薬液供給装置10Cの制御装置から出力される制御信号によって、ダイアフラムポンプ330、液面調整ポンプ340、ソレノイドバルブ370、薬液クランプ手段320を制御し、液面検出装置150から出力される検出信号が、薬液供給装置10Cの制御装置に入力される。
【0163】
<<薬液供給装置10Cによる処理>>
図7は、第3の実施の形態による薬液供給装置10Cでの充填工程を示す模式図である。図8は、第3の実施の形態による薬液供給装置10Cでの希釈工程を示す模式図である。図9は、第3の実施の形態による薬液供給装置10Cでの投与準備工程を示す模式図である。図7図9に示すように、薬液供給装置10Cによる処理は、プライミング液によってヘパリンを希釈する場合には、充填工程と、希釈工程と、投与準備工程とを含む。また、プライミング液によってヘパリンを希釈しない場合には、薬液供給装置10Cによる処理は、充填工程と、投与準備工程とを含む。
【0164】
図7図9においても、白色で示したバルブは、開状態であることを示し、黒色で示したバルブは、閉状態であることを示す。また、図7図9において、ヘパリンの存在は、斜線で示し、プライミング液の存在は、水平線で示した。ダイアフラムポンプ330上の左向きの白矢印は、ダイアフラム331が押圧されたことを示し、ダイアフラムポンプ330上の右向きの白矢印は、ダイアフラム331が吸引されたことを示す。
【0165】
<<充填工程>>
充填工程は、図7に示すように、バイアルからピペット310にヘパリンを導入する工程である。充填工程によって、バイアルなどの容器(納品時の容器など)に収められているヘパリンをピペット310に導入することができる。納品時の容器の形状や容器の開口部などの容器の形態によることなく、ヘパリンを利用することができる。ヘパリンが収められる多種多様な容器に対応させることができる。なお、充填工程では、血液ポンプ50は、停止している。
【0166】
<充填工程1>
図7(a)は、充填工程の最初の工程を示す。この時点では、薬液クランプ手段320もソレノイドバルブ370も動脈クランプ手段36も開状態(白色)となっている。なお、薬液供給装置10Cでは、動脈クランプ手段36は、充填工程だけでなく、希釈工程、投与準備工程においても開状態(白色)となっている。薬液供給装置10Cは、動脈クランプ手段36を有しなくてもよい。薬液供給装置10Cが、動脈クランプ手段36を有しない場合には、動脈クランプ手段36に対する制御を省くことができる。また、図7図9に示すように、薬液供給装置10Cが、動脈クランプ手段36を有するシステムを用いる場合には、動脈クランプ手段36を常に開状態にする制御をすればよい。
【0167】
まず、ピペット310の下方にヘパリンが収められているバイアルを配置する。次に、ピペット310の第1下端開口部316をバイアルに挿入させてバイアルと連通させる。
【0168】
<充填工程2>
図7(b)は、充填工程の第2の工程を示す。
【0169】
制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、薬液クランプ手段320を閉状態(黒色)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、ソレノイドバルブ370を開状態(白色)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力し、液面調整ポンプ140を駆動して、ダイアフラムポンプ330のダイアフラム331を押圧する。
【0170】
<充填工程3>
図7(c)は、充填工程の最後の工程を示す。
【0171】
制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、薬液クランプ手段320を閉状態(黒色)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、ソレノイドバルブ370を閉状態(黒色)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力し、液面調整ポンプ140を駆動して、ダイアフラムポンプ330のダイアフラム331を吸引する。これにより、ピペット310内を負圧状態にすることができる。ピペット310内が負圧状態になったことで、バイアルに収容されているヘパリンが、バイアルから吸い出されてピペット310に導入される。
【0172】
ダイアフラムポンプ330のダイアフラム331の押圧による変形と吸引による変形の差に応じた量のヘパリンがピペット310に導入される。ダイアフラムポンプ330のダイアフラム331を少なくとも1回、変形動作させることで、所望する量のヘパリンをバイアルからピペット310に導入することができる。
【0173】
図7(a)~図7(c)に示す充填工程によって、ヘパリンが収められている容器の形状や開口部などの容器の形態によることなく、ヘパリンをピペット110に導入できる。
【0174】
<<希釈工程>>
希釈工程は、図8に示すように、ピペット310にプライミング液を導入することで、ピペット310に導入されているヘパリンを、ピペット310内でプライミング液によって希釈する工程である。なお、希釈工程では、血液ポンプ50は、停止している。ヘパリンを希釈する必要がない場合には、希釈工程を省き、後述する投与準備工程に移行すればよい。
【0175】
<希釈工程1>
図8(a)は、希釈工程の最初の工程を示す。
【0176】
制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、薬液クランプ手段320を閉状態(黒色)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、血液ポンプ50を正回転することで、動脈側血液回路30にプライミング液を導入する。例えば、プライミング液が収容されたプライミング液収容袋が、動脈側血液回路30に接続されている(図示せず)。血液ポンプ50によって、プライミング液収容袋から動脈側血液回路30にプライミング液を案内することで、プライミング液を動脈側血液回路30に導入できる。
【0177】
ピペット310をバイアルから抜き、ピペット310の第1下端開口部316をクランプ319により封止する。封止することで、ピペット310に導入されたヘパリンが、第1下端開口部316から漏れ出すことを防止できる。
【0178】
なお、ピペット310にモータなどの駆動装置を設けて、制御装置66から発せられた制御信号によって、ピペット310をバイアルから抜いて、ピペット310の第1下端開口部316をクランプするように制御してもよい。
【0179】
<希釈工程2>
図8(b)は、希釈工程の第2の工程を示す。
【0180】
制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、薬液クランプ手段320を閉状態(黒色)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、ソレノイドバルブ370を開状態(白色)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、液面調整ポンプ140を駆動してダイアフラムポンプ330のダイアフラム331を押圧する。
【0181】
<希釈工程3>
図8(c)は、希釈工程の最後の工程を示す。
【0182】
制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、薬液クランプ手段320を開状態にする(白色)。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、ソレノイドバルブ370を閉状態にする(黒色)。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、液面調整ポンプ140を駆動してダイアフラムポンプ330のダイアフラム331を吸引する。これにより、ピペット310内を負圧状態にすることができる。ピペット310内が負圧状態になったことで、動脈側血液回路30に導入されたプライミング液が、吸い出されて薬液ライン300を介してピペット310に導入される。
【0183】
ダイアフラムポンプ330のダイアフラム331の押圧による変形と吸引による変形の差に応じた量のプライミング液がピペット310に導入される。ダイアフラムポンプ330のダイアフラム331を少なくとも1回、変形動作させることで、所望する量のプライミング液を動脈側血液回路30からピペット310に導入することができる。プライミング液をピペット310に導入することで、ピペット310に収容されていたヘパリンを、ピペット310内でプライミング液で希釈することができる。
【0184】
第3の実施の形態においても、プライミング液で希釈されたヘパリンを希釈ヘパリンと称する。第1の実施の形態と同様に、液面検出装置150をピペット310に設けることによって、制御装置66のプロセッサは、所望する量の希釈されていないヘパリンや希釈ヘパリンがピペット310に貯留されたか否かを判断することができる。制御装置66のプロセッサは、ヘパリンの濃度を算出することができる。
【0185】
<<投与準備工程>>
投与準備工程は、図9に示すように、ピペット310内の希釈していないヘパリンや希釈ヘパリンを患者に投与可能にする工程である。ヘパリンを希釈する場合には、希釈工程から投与準備工程に移行する。ヘパリンを希釈する必要がない場合には、充填工程から投与準備工程に直ちに移行する。
【0186】
<投与準備工程1>
図9(a)は、投与準備工程の最初の工程を示す。なお、投与準備工程1では、血液ポンプ50は、停止している。
【0187】
制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、薬液クランプ手段320を閉状態(黒色)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、ソレノイドバルブ370を開状態(白色)にする。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、液面調整ポンプ340を駆動してダイアフラムポンプ330のダイアフラム331を吸引する。
【0188】
<投与準備工程2>
図9(b)は、投与準備工程の最後の工程を示す。
【0189】
血液ポンプが動作しているときには、制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、血液ポンプを停止し、薬液クランプ手段320を開状態にする(白色)。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、ソレノイドバルブ370を閉状態にする(黒色)。制御装置66のプロセッサは、制御信号を出力して、液面調整ポンプ340を駆動してダイアフラムポンプ330のダイアフラム331を押圧する。
【0190】
ダイアフラムポンプ330のダイアフラム331の変形に応じた量の希釈していないヘパリンや希釈ヘパリンが動脈側血液回路30に導入される。ダイアフラムポンプ330のダイアフラム331を少なくとも1回、動作させることで、所望する量の希釈していないヘパリンや希釈ヘパリンを動脈側血液回路30に導入できる。これにより、ピペット310内を正圧状態にすることができる。ピペット310内が正圧状態になったことで、ピペット310内に導入されていた希釈していないヘパリンや希釈ヘパリンは、薬液ライン300を介して動脈側血液回路30に導入される。
【0191】
このように、ピペット310内でヘパリンをプライミング液で希釈し、希釈していないヘパリンや希釈ヘパリンを患者に投与することができる。
【0192】
<<第3の実施の形態による薬液供給装置10C、充填工程、希釈工程、投与準備工程>>
第3の実施の形態による薬液供給装置10Cによれば、ダイアフラムポンプ330及び液面調整ポンプ340によって、ヘパリンをピペット310に導入したり、プライミング液をピペット310に導入したり、希釈ヘパリンを動脈側血液回路30に導出したりできる。ダイアフラムポンプ330及び液面調整ポンプ340は、血液回路の構成とは別に、設けられている。このため、血液回路の構成に制限されることなく、充填工程、希釈工程、投与準備工程を実行することができる。
【0193】
ダイアフラムポンプ330及び液面調整ポンプ340などは、透析装置本体60の制御装置66によって制御できるので、ヘパリンの希釈作業や投与作業を自動化することができ、プライミング液による希釈濃度などの再現性を高くでき、安定的に実行できる。また、自動化により、作業を簡便にするとともに、使用者の負担を軽くすることができる。さらに、充填工程、希釈工程、投与準備工程を連続的に実行することができる。
【0194】
また、ピペット310は、収容部312から離隔する方向に延出する延出部315を有する。このため、ピペット310を上下に反転させることなく、バイアルと接続することができ、ヘパリンを収容部312に導入することができる。このように、ピペット310の上下の反転をさせないので、構成を簡素にすることができる。
【0195】
また、ピペット310は、収容部312よりも細い延出部315を有している。このため、ヘパリンが収容されているバイアルなどの容器の開口部などに、延出部315を挿入させたり抜き出したりし易くできる。このようにして、容器や開口部の形状や大きさなどの影響を受けにくくして、ヘパリンをピペット310に導入することができる。使用者が所望するヘパリンを利用することができる。容器に収容されているヘパリンを複数回の治療に亘って利用することができる。シリンジを用いてヘパリンを投与する必要もないので、治療コストを低減することができる。
【0196】
ピペット310は、ヘパリンの導入及び貯留のみならず、プライミング液の導入及び貯留やヘパリンの希釈にも利用でき、ピペット310を有効に利用するとともに、部材を減らすことができる。また、ピペット310にプライミング液を導入することで、同時に、ピペット310内のヘパリンを希釈することができ、希釈工程を簡素化することができる。
【0197】
可撓性を有する薬液ライン300を用いることで、ピペット310などを血液回路から離隔した位置に配置できる。ピペット310などの配置の自由度を高めることができる。ピペット310などを他の装置などと干渉しないように配置でき、使用者の作業性を高めることができる。
【0198】
薬液ライン300は、プライミング液を動脈側血液回路30からピペット310に導入する希釈工程と、希釈ヘパリンをピペット310から動脈側血液回路30に導出する投与準備工程との双方の工程で共用するので、部材の数を低減化できるとともに、構成を簡素化することができる。
【0199】
<<<変形例>>>
前述した第3の実施の形態では、血液浄化装置70が、ダイアフラムポンプ330と、液面調整ポンプ340と、ソレノイドバルブ370と、延出部313とを有する例を示したが、薬液供給装置10Cが、ダイアフラムポンプ330と、延出部313とを有する構成としてもよい。ダイアフラムポンプ330と、液面調整ポンプ340は、血液浄化装置70の制御装置66ではなく、薬液供給装置10Cの制御装置(図示せず)によって、制御されるようにすることができる。
【0200】
薬液供給装置10Cの制御装置は、主に、プロセッサ(CPU(中央処理装置)など)、ROM(リードオンリーメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、I/O(入出力インターフェース)、I/F(インターフェース装置)、補助記憶装置(HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)など)、入力操作装置(タッチパネルやキーボードなど)などを有する。ROMには、制御処理などの各種の処理を実行するためのプログラムや定数などが記憶される。RAMには、プログラムが実行されたときに用いる変数の値などが一時的に記憶される。
【0201】
薬液供給装置10Cの制御装置は、I/Oを介して、各種の制御信号を出力したり、各種の検出信号を入力したりする。例えば、制御装置は、液面調整ポンプ340や、ソレノイドバルブ370などに制御信号を出力する。
【0202】
<<<制御装置66の全体的な処理>>>
図11は、制御装置66の全体的な処理を示すフローチャートである。前述したように、薬液供給装置10A~10Cでは、制御装置66の制御により、充填工程、希釈工程、投与準備工程を順次に実行する。特に、ヘパリンを希釈する必要がない場合には、操作者は、入力部(図10)を操作することにより、希釈工程を省いて、充填工程から投与準備工程に移行させることができる。
【0203】
制御装置66のプロセッサは、充填工程を実行する(ステップS111)。
【0204】
ステップS113でヘパリンを希釈する場合には(YES)、制御装置66のプロセッサは、希釈工程を実行する(ステップS115)。
【0205】
ステップS113でヘパリンを希釈しない場合(NO)や、希釈工程を実行した後には、制御装置66のプロセッサは、投与準備工程を実行する(ステップS117)。
【0206】
<<<<実施の形態の範囲>>>>
ここまで、第1~第3の実施の形態を記載した。しかし、この開示の一部をなす記載及び図面は、限定するものと理解すべきでない。ここで記載していない様々な実施の形態等が含まれる。
【0207】
第1~第3の実施の形態に記載した例では、抗凝血剤の一例として、ヘパリン(未分画ヘパリン)を用いる場合を示したが、未分画ヘパリンに限られず、低分子ヘパリン、アルガトロバン、ナファモスタットメシル酸塩などを用いることができる。作用の過程や半減期や副作用などの特徴に応じて適宜に選択して用いることができる。
【0208】
<<<<発明の実施態様>>>>
<<第1の態様>>
薬液供給装置の第1の態様によれば、
血液を浄化する血液浄化装置(例えば、透析装置本体60など)が有する血液回路(例えば、動脈側血液回路30や静脈側血液回路40など)に薬液を供給する薬液供給装置であって、
容器に収容された抗凝血剤(例えば、ヘパリンなど)が前記容器から導入可能であり、導入された抗凝血剤を少なくとも含む組成物を保持する組成物保持部(例えば、ピペット110やピペット310など)と、
前記組成物保持部を前記血液回路に連結し、前記組成物を前記組成物保持部から前記血液回路へ導出可能にする連結部(例えば、薬液ライン100、200、300など)と、
を備える、薬液供給装置。
【0209】
薬液供給装置は、血液回路に薬液を供給する装置である。血液を浄化する血液浄化装置が血液回路を有する。薬液供給装置は、組成物保持部と連結部とを備える。
【0210】
組成物保持部には、抗凝血剤が導入可能である。すなわち、組成物保持部に抗凝血剤を導入することができる。抗凝血剤は、容器に収容されている。容器は、抗凝血剤を収容するために、一般に利用されているものである。容器は、抗凝血剤を収容するために、一般に流通しているものである。容器は、抗凝血剤を収容するための形状や大きさなどを有する。
【0211】
導入可能とは、抗凝血剤が組成物保持部に導入されている状態だけでなく、抗凝血剤が組成物保持部に導入されていない状態であっても、導入するための予備的な状況や潜在的な状況も第1の態様による薬液供給装置に含まれることを意味する。
【0212】
例えば、容器内の抗凝血剤と組成物保持部が離れた状態であっても、組成物保持部が容器内の抗凝血剤に必然的に触れ得る状況などが該当する。また、容器内の抗凝血剤が組成物保持部が触れている状態であっても、ポンプなどの駆動部が駆動されなければ、抗凝血剤は組成物保持部に導入されない。しかし、駆動部が駆動されれば、抗凝血剤は組成物保持部に直ちに導入される。このような状況なども該当する。
【0213】
このように、導入可能とは、抗凝血剤が容器から組成物保持部に導入されるための予備的、潜在的な状況も含むことを意味する。
【0214】
組成物保持部は、組成物を保持する。組成物は、組成物保持部に導入された抗凝血剤を少なくとも含む。組成物は、抗凝血剤のみでも、他の成分のものが含まれてもよい。
【0215】
組成物保持部は、抗凝血剤が導入されることができるともに、導入された抗凝血剤を少なくとも含む組成物を保持することができる。
【0216】
連結部は、組成物保持部を血液回路に連結する。組成物保持部は、連結部によって血液回路に連結される。連結部は、組成物を組成物保持部から血液回路へ導出させることができる。すなわち、組成物保持部に保持されている組成物は、連結部を介して、組成物保持部から血液回路へ導出されることができる。
【0217】
導出可能とは、組成物が血液回路に導出されている状態だけでなく、組成物が血液回路に導出されていない状態であっても、導出するための予備的な状況や潜在的な状況も第1の態様による薬液供給装置に含まれることを意味する。
【0218】
例えば、組成物保持部が血液回路と切り離された状態であっても、必然的に組成物保持部が血液回路に接続され得る状況などが該当する。また、組成物保持部が血液回路に接続された状態であっても、ポンプやバルブなどの部材が導出状態となれなければ、組成物は血液回路に導出されない。しかし、部材が導出状態となれば、組成物は血液回路に直ちに導出される。このよう状況などが該当する。
【0219】
このように、導出可能とは、組成物が血液回路に導出されるための予備的、潜在的な状況も含むことを意味する。
【0220】
一般的に使用されてたり流通したりしている容器に収容された抗凝血剤を、組成物保持部に導入することができるので、別の容器に入れ替えたり、抗凝血剤を廃棄したりすることを防止できる。作業が煩雑になったり抗凝血剤を無駄にしたりすることを未然に防ぐことができる。
【0221】
<<第2の態様>>
第2の態様は、第1の態様において、
前記組成物保持部に保持されている前記組成物の液面を、液面検出装置(例えば、液面検出装置150など)を用いて検出する、
さらに備える。
【0222】
液面検出装置によって組成物の液面を検出するので、抗凝血剤が組成物保持部に導入された量や、組成物保持部に組成物が残っている量を取得することができ、薬液供給装置を適切に制御することができる。血液浄化装置が液面検出装置を有しても、薬液供給装置や他の装置が、液面検出装置を有してもよい。血液浄化装置又は薬液供給装置などが、液面検出装置によって検出した組成物の液面に基づいて制御できればよい。
【0223】
<<第3の態様>>
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様において、
前記組成物保持部において前記組成物が空となったことを、空検出装置(例えば、空検出装置160など)を用いて検出する。
さらに備える。
【0224】
空検出装置によって、組成物が空であることを検出できるので、抗凝血剤を組成物保持部に導入してもよいか否かや、組成物の導出を停止すべきか否かなどを適切に判断することができる。血液浄化装置が空検出装置を有しても、薬液供給装置や他の装置が、空検出装置を有してもよい。血液浄化装置又は薬液供給装置などが、空検出装置によって検出した検出結果に基づいて制御できればよい。
【0225】
<<第4の態様>>
第4の態様は、第1の態様ないし第3の態様のいずれかにおいて、
前記組成物保持部に希釈剤(例えば、プライミング液など)が導入可能であり、
導入された希釈剤で希釈された前記組成物を前記組成物保持部に保持可能である。
【0226】
組成物保持部には、抗凝血剤だけでなく希釈剤をも導入することができる。組成物保持部に導入されている抗凝血剤に希釈剤を導入することで、組成物保持部において抗凝血剤を希釈することができ、希釈された抗凝血剤を組成物として組成物保持部に保持されることができる。
【0227】
導入可能とは、希釈剤が組成物保持部に導入されている状態だけでなく、希釈剤が組成物保持部に導入されていない状態であっても、導入するための予備的な状況や潜在的な状況も第4の態様による薬液供給装置に含まれることを意味する。
【0228】
例えば、組成物保持部が血液回路と切り離された状態であっても、組成物保持部が血液回路に必然的に接続され得る状況などが該当する。また、血液回路に組成物保持部が接続された状態であっても、ポンプやバルブなどの部材が導入状態とならなければ、希釈剤は組成物保持部に導入されない。しかし、部材が導入状態となれば、希釈剤は組成物保持部に直ちに導入される。このような状況などが該当する。
【0229】
このように、導入可能とは、希釈剤が血液回路から組成物保持部に導入されるための予備的、潜在的な状況も含むことを意味する。
【0230】
希釈剤は、例えば、連結部を介して血液回路から組成物保持部に導入することができる。希釈剤の導入の経路は、これに限られず、組成物保持部に希釈剤を導入できる経路であればよい。
【0231】
<<第5の態様>>
第5の態様は、第1の態様ないし第4の態様のいずれかにおいて、
前記容器と前記組成物保持部とを連通する第1連通部であって、容器に収容された抗凝血剤を前記組成物保持部に導入可能にする第1連通部(例えば、延出部113や第1下端開口部316など)と、
前記組成物保持部と前記連結部とを連通する第2連通部であって、前記組成物保持部に保持された前記組成物を前記連結部に導出可能にする第2連通部(例えば、下端開口部116や第2下端開口部318など)とを、さらに備える。
【0232】
第5の態様による薬液供給装置は、第1連通部と第2連通部とを備える。
【0233】
第1連通部は、容器と組成物保持部とを連通する。第1連通部は、容器に収容された抗凝血剤を組成物保持部に導入可能にする。容器に収容された抗凝血剤は、第1連通部を介して組成物保持部に導入されることができる。
【0234】
なお、第5の態様における導入可能の意味も、第1の態様における導入可能と同様である。
【0235】
第2連通部は、組成物保持部と連結部とを連通する。第2連通部は、組成物保持部に保持された組成物を連結部に導出可能にする。組成物保持部に保持された組成物は、第2連通部を介して連結部に導出されることができる。
【0236】
なお、第5の態様における導出可能の意味も、第1の態様における導出可能と同様である。
【0237】
組成物保持部を間に挟んで、抗凝血剤が流動する経路と組成物や希釈剤が流動する経路とを別個に設けることによって、容器に収容されている抗凝血剤の濃度や清浄性などの状態を一定に保つことができる。
【0238】
<<第6の態様>>
第6の態様は、第1の態様ないし第5の態様のいずれかにおいて、
前記第2連通部は、
希釈剤を前記組成物保持部に導入する希釈剤導入状態と、
前記組成物を前記連結部に導出する組成物導出状態と、
を有する。
【0239】
第2連通部は、希釈剤導入状態と組成物導出状態との双方に共用することができる。希釈剤導入状態は、連結部を介して希釈剤を組成物保持部に導入する状態である。組成物導出状態は、連結部を介して組成物を連結部に導出する状態である。第2連通部を共用することによって構成を簡素にできる。
【0240】
<<第7の態様>>
第7の態様は、第1の態様ないし第6の態様のいずれかにおいて、
前記血液回路は、ダイアフラムの変形により、前記血液回路内の液体の流動を制御するダイアフラムポンプ(例えば、ダイアフラムポンプ130など)を更に備える。
【0241】
血液回路が有するダイアフラムポンプを用いて、血液回路内の液体の流動を制御するので、液体の流動を制御するための駆動装置を別途に設けることなく、希釈剤を組成物保持部に導入したり、組成物を連結部に導出したりすることができる。ダイアフラムポンプを共用することで、薬液供給装置の構成を簡素にできる。
【0242】
<<第8の態様>>
第8の態様は、第1の態様ないし第7の態様のいずれかにおいて、
連続的に流下する前記組成物を、独立した滴状に分離して重力の作用によって滴下する滴下チャンバ(例えば、滴下チャンバ210など)をさらに備え、
前記滴下チャンバから滴下された組成物を、滴下センサ(例えば、点滴センサ220など)を用いて検出する。
【0243】
透析施設などで常備されたり常用されたりする部材を用いて、組成物を組成物保持部から血液回路に導出することができるので、容易にかつ簡便に薬液供給装置を構成することができる。血液浄化装置が滴下センサを有しても、薬液供給装置や他の装置が、滴下センサを有してもよい。血液浄化装置又は薬液供給装置などが、滴下センサによって検出した検出結果に基づいて制御できればよい。
【0244】
<<第9の態様>>
第9の態様は、第1の態様ないし第8の態様のいずれかにおいて、
前記組成物保持部から離隔する延出部(例えば、延出部313など)が、ダイアフラムの変形により、前記延出部内の空気の流動を制御するダイアフラムポンプ(例えば、ダイアフラムポンプ330など)を有する。
【0245】
流動可能とは、空気が流動している状態だけでなく、空気が流動していない状態であっても、流動するための予備的な状況や潜在的な状況も第9の態様による薬液供給装置に含まれることを意味する。
【0246】
例えば、ポンプやバルブなどの部材が流動可能とならなければ、空気は延出部内を流動しない。しかし、部材が流動可能となれば、空気は延出部内を直ちに流動する。このよう状況などが該当する。
【0247】
このように、流動可能とは、空気が延出部内を流動するための予備的、潜在的な状況も含むことを意味する。
【0248】
血液回路にダイアフラムポンプなどの駆動装置を有しない場合であっても、血液回路にダイアフラムポンプを別途に追加することで、抗凝血剤の導入や、希釈剤の導入や、組成物の導出をできるように構成できる。
【0249】
延出部は、薬液供給装置に含まれても含まれていなくてもよい。
【0250】
<<第10の態様>>
第10の態様は、第1の態様ないし第9の態様のいずれかにおいて、
前記第1連通部は、長尺な円筒形状を有する突出部(例えば、延出部113など)を有し、
前記突出部は、前記容器が有する貫通孔に挿通可能な開口であって、前記組成物保持部から最も離隔した先端部に設けられた開口(例えば、上端開口部114など)を有する。
【0251】
第1連通部は、組成物保持部から突出する突出部を有する。突出部は開口を有する。開口は、容器が有する貫通孔に挿通可能である。開口は、組成物保持部から最も離隔した先端部に設けられている。
【0252】
挿通可能とは、開口が貫通孔に挿通されている状態だけでなく、開口が貫通孔に挿通されていない状態であっても、挿通するための予備的な状況や潜在的な状況も第10の態様による薬液供給装置に含まれることを意味する。
【0253】
例えば、開口が貫通孔と離れた状態であっても、必然的に開口が貫通孔に挿通され得る状況が該当する。
【0254】
このように、挿通可能とは、開口が貫通孔に挿通されるための予備的、潜在的な状況も含むことを意味する。
【0255】
貫通孔を介して突出部を容器の内部に位置づけることで、開口を介して容器に収容された抗凝血剤を組成物保持部に直ちに導入することができ、容器を加工したり別の容器に抗凝血剤を移し替えたりすることなく、抗凝血剤を利用することができ、作業を簡便にできる。
【0256】
なお、突出部は、組成物保持部から離れるに従って外径が細くなるものが好ましい。容器の様々の貫通孔の大きさに対応させることができ、第1連通部が使用できる容器の種類を増やすことができる。
【0257】
<<第11の態様>>
第11の態様は、第1の態様ないし第10の態様のいずれかにおいて、
血液を浄化する血液浄化装置(例えば、透析装置本体60など)が有する血液回路(例えば、動脈側血液回路30や静脈側血液回路40など)に薬液を供給する薬液供給方法であって、
容器に収容された抗凝血剤(例えば、ヘパリンなど)を前記容器から組成物保持部(例えば、ピペット110やピペット310など)に導入する抗凝血剤導入ステップと、
前記組成物保持部に導入された抗凝血剤を少なくとも含む組成物を前記組成物保持部で保持させる組成物保持ステップと、
前記組成物保持部を前記血液回路に連結する連結部(例えば、薬液ライン100、200、300など)を介して、前記組成物を前記組成物保持部から前記血液回路に導出する組成物導出ステップと、
を含む、薬液供給方法。
【0258】
一般的に使用されてたり流通したりしている容器に収容された抗凝血剤を、組成物保持部に導入することができるので、別の容器に入れ替えたり、抗凝血剤を廃棄したりすることを防止できる。作業が煩雑になったり抗凝血剤を無駄にしたりすることを未然に防ぐことができる。
【0259】
<<第12の態様>>
第12の態様は、第1の態様ないし第11の態様のいずれかにおいて、
前記組成物保持部に保持されている前記組成物の液面を検出する組成物液面検出ステップを、さらに含む。
【0260】
液面検出装置によって組成物の液面を検出するので、抗凝血剤が組成物保持部に導入された量や、組成物保持部に組成物が残っている量を取得することができ、薬液供給装置を適切に制御することができる。
【0261】
<<第13の態様>>
第13の態様は、第1の態様ないし第12の態様のいずれかにおいて、
前記組成物保持部において前記組成物が空となったことを検出する空検出ステップを、さらに含む。
【0262】
空検出装置によって、組成物が空であることを検出できるので、抗凝血剤を組成物保持部に導入してもよいか否かや、組成物の導出を停止すべきか否かなどを適切に判断することができる。
【0263】
<<第14の態様>>
第14の態様は、第1の態様ないし第13の態様のいずれかにおいて、
前記組成物保持部に希釈剤(例えば、プライミング液など)を導入する希釈剤導入ステップと、
導入された希釈剤で希釈された前記組成物を前記組成物保持部に保持する希釈保持ステップを、さらに含む。
【0264】
組成物保持部には、抗凝血剤だけでなく希釈剤をも導入することができる。組成物保持部に導入されている抗凝血剤に希釈剤を導入することで、組成物保持部において抗凝血剤を希釈することができ、希釈された抗凝血剤を組成物として組成物保持部に保持されることができる。
【0265】
<<第15の態様>>
第15の態様は、第1の態様ないし第14の態様のいずれかにおいて、
前記容器と前記組成物保持部とを連通する第1連通部(例えば、延出部113や第1下端開口部316など)を介して、容器に収容された抗凝血剤を前記組成物保持部に導入する導入ステップと、
前記組成物保持部と前記連結部とを連通する第2連通部(例えば、下端開口部116や第2下端開口部318など)を介して、前記組成物保持部に保持された前記組成物を前記連結部に導出する導出ステップとを、さらに含む。
【0266】
組成物保持部を間に挟んで、抗凝血剤が流動する経路と組成物や希釈剤が流動する経路とを別個に設けることによって、容器に収容されている抗凝血剤の濃度や清浄性などの状態を一定に保つことができる。
【0267】
<<第16の態様>>
第16の態様は、第1の態様ないし第15の態様のいずれかにおいて、
前記第2連通部を介して、希釈剤を前記組成物保持部に導入する希釈剤導入ステップと、
前記第2連通部を介して、前記組成物を前記連結部に導出する組成物導出ステップと、をさらに含む。
【0268】
第2連通部は、希釈剤導入ステップと組成物導出ステップとの双方に共用することができる。希釈剤導入ステップは、連結部を介して希釈剤を組成物保持部に導入するステップである。組成物導出ステップは、連結部を介して組成物を連結部に導出するステップである。第2連通部を共用することによって構成を簡素にできる。
【0269】
<<第17の態様>>
第17の態様は、第1の態様ないし第16の態様のいずれかにおいて、
ダイアフラムポンプ(例えば、ダイアフラムポンプ130など)が有するダイアフラムの変形により、前記血液回路内の液体の流動を制御する液体流動制御ステップをさらに含む。
【0270】
血液回路が有するダイアフラムポンプを用いて、血液回路内の液体の流動を制御するので、液体の流動を制御するための駆動装置を別途に設けることなく、希釈剤を組成物保持部に導入したり、組成物を連結部に導出したりすることができる。ダイアフラムポンプを共用することで、薬液供給装置の構成を簡素にできる。
【0271】
<<第18の態様>>
第18の態様は、第1の態様ないし第17の態様のいずれかにおいて、
連続的に流下する前記組成物を、独立した滴状に分離して重力の作用によって滴下する滴下ステップと、
滴下された組成物を検出する滴下組成物検出ステップと、をさらに含む。
【0272】
透析施設などで常備されたり常用されたりする部材を用いて、組成物を組成物保持部から血液回路に導出することができるので、容易にかつ簡便に薬液供給装置を構成することができる。
【0273】
<<第19の態様>>
第19の態様は、第1の態様ないし第18の態様のいずれかにおいて、
前記組成物保持部から離隔するとともに空気が流動可能な延出部に設けられたダイアフラムポンプ(例えば、ダイアフラムポンプ330など)が有するダイアフラムの変形により、前記延出部内の液体の流動を制御する液体流動制御ステップをさらに含む。
【0274】
血液回路にダイアフラムポンプなどの駆動装置を有しない場合であっても、血液回路にダイアフラムポンプを別途に追加することで、抗凝血剤の導入や、希釈剤の導入や、組成物の導出をできるように構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0275】
ヘパリンなどの薬液の包材に制限されず、梱包単位の薬液で複数回の治療に用いることができる薬液供給装置を提供する。
【符号の説明】
【0276】
10A、10B、10C 薬液供給装置
20 ダイアライザ
60 透析装置本体
70 血液浄化装置
110 ピペット
130 ダイアフラムポンプ
140 液面調整ポンプ

図1
図2
図3
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図5
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