IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 睦月電機株式会社の特許一覧

特開2025-93831珪酸塩発泡樹脂ペレットおよびその製造方法
<>
  • 特開-珪酸塩発泡樹脂ペレットおよびその製造方法 図1
  • 特開-珪酸塩発泡樹脂ペレットおよびその製造方法 図2
  • 特開-珪酸塩発泡樹脂ペレットおよびその製造方法 図3
  • 特開-珪酸塩発泡樹脂ペレットおよびその製造方法 図4
  • 特開-珪酸塩発泡樹脂ペレットおよびその製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025093831
(43)【公開日】2025-06-24
(54)【発明の名称】珪酸塩発泡樹脂ペレットおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20250617BHJP
   B29B 9/06 20060101ALI20250617BHJP
   B29B 7/30 20060101ALI20250617BHJP
   B29B 7/42 20060101ALI20250617BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20250617BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20250617BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CER
C08J3/20 CEZ
B29B9/06
B29B7/30
B29B7/42
C08K3/34
C08L81/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023223612
(22)【出願日】2023-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】305011787
【氏名又は名称】睦月電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】満永 章
(72)【発明者】
【氏名】平岡 重道
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA58
4F070AC22
4F070AC75
4F070AD03
4F070AE12
4F070AE17
4F070AE30
4F070DA11
4F070DA55
4F070DC03
4F070DC07
4F070FA03
4F070FB06
4F070FB07
4F070FC06
4F201AA34
4F201AB17
4F201AG20
4F201AR12
4F201AR20
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC02
4F201BC13
4F201BK02
4F201BK13
4F201BL08
4F201BL36
4J002AE032
4J002BB032
4J002CN011
4J002DJ006
4J002FD016
4J002FD162
4J002FD326
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】本発明は、熱可塑性樹脂の成形体内に珪酸塩でできた複数個の気泡球が分散している珪酸塩発泡樹脂ペレットを提供する。
【解決手段】本発明の珪酸塩発泡樹脂ペレットは、直径が1~5mmで長さが1~10mmの成形体で、離型剤を含有したスーパーエンジニアリングプラスチックなどの熱可塑性樹脂の成形体内に珪酸塩でできた複数個の気泡球を分散させてできている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が1~5mmで長さが1~10mmの成形体の珪酸塩発泡樹脂ペレットであって、離型剤を含有した熱可塑性樹脂の成形体内に珪酸塩でできた複数個の気泡球を分散させてなることを特徴とする珪酸塩発泡樹脂ペレット。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂はスーパーエンジニアリングプラスチックであって、前記離型剤は低分子量のシリコンオイル・フッ素系離型剤もしくは低分子量ポリエチレン系離型剤で、珪酸塩は粒径が1~500μm、珪酸塩粒の含水分量は5~30%で、珪酸塩粒とスーパーエンジニアリングプラスチックとの混合比は10~50と50~90で、離型剤は珪酸塩粒とスーパーエンジニアリングプラスチックとを100として0.1~3%含有してできていることを特徴とする請求項1に記載の珪酸塩発泡樹脂ペレット。
【請求項3】
前記珪酸塩は硼砂、硼酸などの硼素化合物を含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の珪酸塩発泡樹脂ペレット。
【請求項4】
離型剤を含有した熱可塑性樹脂の成形体内に珪酸塩でできた複数個の気泡球が分散している珪酸塩発泡樹脂ペレットの製造方法であって、珪酸塩粒と熱可塑性樹脂粒と離型剤とをもしくは硼砂、硼酸などの硼素化合物を含有した珪酸塩粒と熱可塑性樹脂粒と離型剤とを攪拌混合して攪拌混合物を得る攪拌混合工程と、前記攪拌混合物を押出機で柱状の成形体と成す押出成形工程と、前記柱状の成形体を直径が1~5mmで長さが1~10mmになるように切断する切断工程とからなることを特徴とする珪酸塩発泡樹脂ペレットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、珪酸塩発泡樹脂ペレットおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本願の発明者は珪酸塩の気泡球が熱可塑性樹脂材で被覆された発泡成形体として、特許文献1に記載された粒径が500μm以下の粒子状の珪酸塩もしくは硼砂、硼酸などの硼素化合物を含有した珪酸塩の発泡剤と熱可塑性樹脂材との混合物を熱可塑性樹脂材の融点以上の温度で加熱してその発泡剤を発泡させて多数個の気泡部を形成するとともに気泡部の外周に溶融した熱可塑性樹脂材の被膜を形成した発泡成形体の発明を創出し、更に、種々の成形装置に適用して種々の形状の珪酸塩発泡樹脂成形体を得ることを狙ってこの発明にもとづき成形した発泡成形体を粉砕加工して、直径が1~5mmで長さが1~10mmの成形体の珪酸塩発泡樹脂ペレットを製作して、その珪酸塩発泡樹脂ペレットを射出成形装置に適用してみた。しかし、この珪酸塩発泡樹脂ペレットを射出成形装置の成形金型に充填させる過程で、その成形金型に充填させる加熱シリンダー内のスクリューに珪酸塩発泡樹脂ペレットが溶着して生産性が悪く、望ましい気泡球が得られないことが判明した。そこで、離型剤を成形金型の表面に塗布する発明者の経験から、その離型剤を含有させて珪酸塩発泡樹脂ペレットを得る発明を創出するとともに、珪酸塩発泡樹脂ペレットを製作するには押出機により柱状に成形して、これを直径が1~5mmで長さが1~10mmの成形体に切断して製作することが有用であることを見出した。
【0003】
特許文献2には熱可塑性樹脂の発泡成形に用いる発泡剤組成物ペレットの製造方法として、バッチ式の混練機で混練した後、押出機とペレタイザーによりペレット形状に製造する方法が提案されており、発泡剤組成物ペレットを製造するための装置として、段落番号0036にバンバリーミキサー、ロッキングミキサー(愛知電機社製)、ハイスピードミキサー(深江パウテック社製)、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)、万能攪拌機(ダルトン社製)、ナウタミキサー(ホソカワミクロン社製)、CFグラニュレーター(フロイント産業社製)、バーチカル・グラニュレーター(パウレック社製)、フロージェットグラニュレーター(大川原製作所社製)、ロールプレスDP型(セイシン企業社製)、RCP型ローラコンパクタ(栗本鐵工所社製)、ブリケッタBGS-IV・II(新東工業社製)、ディスク・ペレッター(不二パウダル社製)、二軸押出造粒機(不二パウダル社製)等を用いることができることや段落番号0037には発泡剤組成物ペレットは、これらエンジニアリングプラスチック等、高温加工樹脂に使用することが効果的であることが記載されており、さらに段落番号0038において熱可塑性樹脂に離型安定剤を添加してもよいと記載されている。
【0004】
しかし、特許文献2は発泡剤組成物ペレットの製造方法であっても、熱可塑性樹脂の成形体内に珪酸塩でできた複数個の気泡球が分散している珪酸塩発泡樹脂ペレットを製造することについては記載されていない。また、この特許文献2には熱可塑性樹脂に離型安定剤を添加してもよいと記載されているが、珪酸塩発泡樹脂ペレットを種々の成形装置に適用させて珪酸塩発泡樹脂ペレットとするには離型剤の存在が必須であることについても記載されていない。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-6622号公報
【特許文献2】特許第6113017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、熱可塑性樹脂の成形体内に珪酸塩でできた複数個の気泡球が分散している珪酸塩発泡樹脂ペレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の珪酸塩発泡樹脂ペレットは、直径が1~5mmで長さが1~10mmの成形体の珪酸塩発泡樹脂ペレットであって、離型剤を含有した熱可塑性樹脂の成形体内に珪酸塩でできた複数個の気泡球を分散させてなることを特徴とする。また、請求項2に記載の珪酸塩発泡樹脂ペレットは、請求項1に記載の珪酸塩発泡樹脂ペレットにおいて、前記熱可塑性樹脂はスーパーエンジニアリングプラスチックであって、前記離型剤は低分子量のシリコンオイル・フッ素系離型剤もしくは低分子量ポリエチレン系離型剤で、珪酸塩は粒径が1~500μm、珪酸塩粒の含水分量は5~30%で、珪酸塩粒とスーパーエンジニアリングプラスチックとの混合比は10~50と50~90で、離型剤は珪酸塩粒とスーパーエンジニアリングプラスチックとを100として0.1~3%含有してできていることを特徴とする。また、請求項3に記載の珪酸塩発泡樹脂ペレットは、請求項1または2に記載の珪酸塩発泡樹脂ペレットにおいて、前記珪酸塩は硼砂、硼酸などの硼素化合物を含有していることを特徴とする。本発明の請求項4に記載の珪酸塩発泡樹脂ペレットの製造方法は、離型剤を含有した熱可塑性樹脂の成形体内に珪酸塩でできた複数個の気泡球が分散している珪酸塩発泡樹脂ペレットの製造方法であって、珪酸塩粒と熱可塑性樹脂粒と離型剤とをもしくは硼砂、硼酸などの硼素化合物を含有した珪酸塩粒と熱可塑性樹脂粒と離型剤とを攪拌混合して攪拌混合物を得る攪拌混合工程と、前記攪拌混合物を出機で柱状の成形体と成す押出成形工程と、前記柱状の成形体を直径が1~5mmで長さが1~10mmになるように切断する切断工程とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の珪酸塩発泡樹脂ペレットは、熱可塑性樹脂の成形体内に珪酸塩でできた複数個の気泡球を分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図2のA-A断面図である。
図2】本発明の珪酸塩発泡樹脂ペレットの実施形態を示す。
図3】本発明の珪酸塩発泡樹脂ペレットの製造プロセスを示す。
図4】珪酸塩発泡樹脂ペレットの断面写真を示す。
図5】射出成形品の断面写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(珪酸塩発泡樹脂ペレット)
図1、2は本発明の珪酸塩発泡樹脂ペレットの実施形態を示し、珪酸塩発泡樹脂ペレット1は、直径が1~5mm好ましくは2~3mmで、長さが1~10mm好ましくは2~4mmの成形体で、離型剤を含有した熱可塑性樹脂の成形体2内に珪酸塩でできた複数個の気泡球3が分散している。この珪酸塩はモル比が2~3.2の珪酸ナトリウム水溶液を用い5~30重量%の含水分量となるように処理して粒径が1~500μmの粒子状に形成されており、成形体2の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびフッ素樹脂さらにはポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑ポリイミド(LARC-PAI)、ポリアミドイミド、ポリアリールアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルホン(PPSU)、ポリメタクリルイミド(PMI)などのスーパーエンジニアリングプラスチックが例示できる。熱可塑性樹脂の成形体2内に含有させる離型剤は低分子量のシリコンオイル・フッ素系離型剤もしくは低分子量ポリエチレン系離型剤が例示でき、必要に応じて防錆剤を用いてもよい。このような構成の珪酸塩粒と熱可塑性樹脂と離型剤で、熱可塑性樹脂をスーパーエンジニアリングプラスチックとした珪酸塩発泡樹脂ペレット1においては、粒径が1~500μmで含水分量は5~30%の珪酸塩粒とスーパーエンジニアリングプラスチックとの混合比は10~50と50~90で、離型剤は珪酸塩粒とスーパーエンジニアリングプラスチックとを100として0.1~3%含有してできている。
【0012】
本発明の珪酸塩発泡樹脂ペレット1における珪酸塩粒について、珪酸塩粒のみでなく、硼砂、硼酸などの硼素化合物を含有した珪酸塩粒においても、5~30重量%の含水分量となるように処理して粒径が1~500μmの粒子に形成した珪酸塩粒とすることにより、強度や断熱性や誘電率を向上させた珪酸塩発泡樹脂ペレット1を得ることができる。このように、強度や断熱性や誘電率を向上させる珪酸塩発泡樹脂ペレット1が必要な場合には、硼砂、硼酸などの硼素化合物を含有した珪酸塩粒を採用すればよいので、珪酸塩粒もしくは硼砂、硼酸などの硼素化合物を含有した珪酸塩粒と記載している。
【0013】
(珪酸塩発泡樹脂ペレットの製造方法)
図3は本発明の珪酸塩発泡樹脂ペレットの製造プロセスを示し、熱可塑性樹脂の成形体2内に珪酸塩でできた複数個の気泡球3が分散している珪酸塩発泡樹脂ペレット1を得る製造方法であって、攪拌混合物を得る攪拌混合工程101と、柱状の成形体と成す押出成形工程102と、直径が1~5mmで長さが1~10mmになるように切断する切断工程103とからなる。先ず、攪拌混合工程101においては、珪酸塩粒と熱可塑性樹脂粒と離型剤とを攪拌混合して攪拌混合物を得るもしくは硼砂、硼酸などの硼素化合物を含有した珪酸塩粒と熱可塑性樹脂粒と離型剤とを攪拌混合して攪拌混合物を得る。この場合、珪酸塩粒もしくは硼砂、硼酸などの硼素化合物を含有した珪酸塩粒と熱可塑性樹脂粒と離型剤とを一度に攪拌混合してもよいが、珪酸塩粒もしくは硼砂、硼酸などの硼素化合物を含有した珪酸塩粒と熱可塑性樹脂粒とを攪拌混合して後、離型剤を加えて攪拌混合するように2段階の攪拌混合により、攪拌混合物を得てもよい。次に、押出成形工程102においては、この攪拌混合物を押出機で押出成形して溶融状態となった柱状の溶状物を冷却して内部に複数個の気泡球3が分散している柱状の成形体が得られる。この場合、押出機としては二軸押出機が好ましい。次に、切断工程103においては、この柱状の成形体を直径が1~5mmで長さが1~10mmになるように切断して、熱可塑性樹脂の成形体2内に珪酸塩でできた複数個の気泡球3が分散している珪酸塩発泡樹脂ペレット1が得られる。
【実施例0014】
本発明の珪酸塩発泡樹脂ペレット1における成形体2の熱可塑性樹脂がスーパーエンジニアリングプラスチックであって、その代表例としてポリフェニレンサルファイド(PPS)を選択して、DIC社のMB―600Gと粒径が20~45μmで含水分量が18%の珪酸塩粒とを90と10の割合として攪拌混合して後、その混合物に離型剤「ポリエチレンワックスPE―190」と防錆剤「AZO」とをそれぞれ0.5%を添加して引き続き攪拌混合して、その混合物を二軸押出機に投入して、減圧させずに大気圧で二軸押出機により成形して直径が2.0mmで長さが2.6mmの成形体の珪酸塩発泡樹脂ペレット1を得て、その珪酸塩発泡樹脂ペレット1の断面を観察した結果、図4に示すように複数個の気泡球3が存在することが確認できた。なお、この実施例においては減圧させずに大気圧で二軸押出機により成形していることにより、これらの気泡球3以外に大きな穴の発生を確認できた。
【0015】
(成形装置として射出成形装置に適用した成形品の説明)
本発明の珪酸塩発泡樹脂ペレットを射出成形装置に適用して、珪酸塩発泡樹脂ペレット1をソディックTR10EH2の成形機により、加熱シリンダー内のスクリュー温度が310℃で、成形金型温度が50℃、射出速度が70mm/sec、射出圧が50mPaで、その保圧を30mPaとして得た射出成形品の断面を観察した結果、図5に示すように直径が50~100μmの複数個の大小の気泡球の存在を確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の珪酸塩発泡樹脂ペレットは、射出成形装置や押出成形装置に適用して種々の形状の成形品を得ることに有用である。
【符号の説明】
【0017】
1 珪酸塩発泡樹脂ペレット
2 成形体
3 気泡球
101 攪拌混合工程
102 押出成形工程
103 切断工程
図1
図2
図3
図4
図5