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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009403
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】水素発生装置及び水素発生方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20250110BHJP
   C01B 35/02 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
C01B3/04 Z
C01B35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112395
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】水越 和志
(72)【発明者】
【氏名】王 曄
(72)【発明者】
【氏名】マイヘムティジアング ダウティ
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、効率のよい水素発生装置を提供することである。
【解決手段】前記課題は、本発明の隔壁によって分けられた複数のセルを有する水素発生装置であって、それぞれのセルは導光ユニットを含み、導光ユニットは隔壁に光を照射できるように配置されており、光ファイバーにより導光ユニットに太陽光が供給され、隔壁はホウ化水素シートを有し、そしてそれぞれのセルは連通している、水素発生装置によって解決することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁によって分けられた複数のセルを有する水素発生装置であって、
それぞれのセルは導光ユニットを含み、導光ユニットは隔壁に光を照射できるように配置されており、光ファイバーにより導光ユニットに太陽光が供給され、隔壁はホウ化水素シートを有し、そしてそれぞれのセルは連通している、水素発生装置。
【請求項2】
前記導光ユニットが、導光棒及び/又は導光板である、請求項1に記載の水素発生装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水素発生装置を用いる水素発生方法であって、
(1)光ファイバーにより導光ユニットに供給される太陽光を、ホウ化水素シートを有する隔壁に照射し、ホウ化水素シートから水素を放出させる工程、
(2)ホウ化水素シートから放出された水素を、連通しているそれぞれのセルから回収して、水素取り出し口から取り出す水素回収工程、
を含む水素発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素発生装置及び水素発生方法に関する。本発明によれば、効率的に水素を発生させることができる。
【背景技術】
【0002】
水素は、利用時に二酸化炭素を排出せず、そして貯蔵及び輸送が可能な二次エネルギーである。一方で、水素は天然ガスと比べ、体積当たりのエネルギー密度が低い。従って、高圧タンクに圧縮した水素ガスとして貯蔵される。しかし、高圧にする場合、コストがかかる。更に、水素ステーションの建設及び維持のコストは、ガソリンスタンドの建設及び維持のコストよりも高い。従って、水素をエネルギーとして用いる水素自動車は、ガソリン車よりも普及が進んでいない。
常圧で多量の水素を貯蔵する方法として、ホウ化水素シートを用いる方法が開発されている(特許文献1~3、及び非特許文献1~2)。ホウ化水素シートに紫外光を照射することにより、水素を放出する技術が開発されている(特許文献2、及び非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2018/074518号
【特許文献2】特開2019-218251号公報
【特許文献3】特開2016-185899号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「ネイチャー・コムニュケーションズ(nature communications)」(英国)2019年、第10巻、p4880-
【非特許文献2】「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ-(Journal of the American Chemical Society)」(米国)2017年、第139巻、p13761-13769
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2では、LEDを光源として用いて水素を放出しているが、LEDは点光源のため、光が照射される部位と光が照射されない部位が発生し、ホウ化水素シートへの光照射の効率が悪かった。
従って、本発明の目的は、効率のよい水素発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、効率のよい水素発生装置について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、太陽光及び導光ユニットを用いることにより、効率的にホウ化水素シートから水素を取り出せることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]隔壁によって分けられた複数のセルを有する水素発生装置であって、それぞれのセルは導光ユニットを含み、導光ユニットは隔壁に光を照射できるように配置されており、光ファイバーにより導光ユニットに太陽光が供給され、隔壁はホウ化水素シートを有し、そしてそれぞれのセルは連通している、水素発生装置、
[2]前記導光ユニットが、導光棒及び/又は導光板である、[1]に記載の水素発生装置、及び
[3][1]又は[2]に記載の水素発生装置を用いる水素発生方法であって、(1)光ファイバーにより導光ユニットに供給される太陽光を、ホウ化水素シートを有する隔壁に照射し、ホウ化水素シートから水素を放出させる工程、(2)ホウ化水素シートから放出された水素を、連通しているそれぞれのセルから回収して、水素取り出し口から取り出す水素回収工程、を含む水素発生方法、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水素発生装置及び水素発生方法によれば、効率的にホウ化水素シートから水素を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の水素発生装置の直方体の実施態様の外観を示した図である。
図2】本発明の水素発生装置の直方体の実施態様の上面図(A)及び断面図(B)である。
図3】本発明の水素発生装置の直方体の実施態様の透視図である。
図4】本発明の水素発生装置の直方体の実施態様における太陽光集光レンズ、光ファイバー、導光棒、及び導光板の構造を示した図である。
図5】本発明の水素発生装置の円柱体の実施態様の外観を示した図である。
図6】本発明の水素発生装置の円柱体の実施態様の上面図(A)及び断面図(B)である。
図7】ホウ素及び水素からなるホウ化水素シート構造を3次元で示した図(A)、及びホウ素、水素、及び酸素を含むホウ化水素シートの構造を模式的に示した図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1]水素発生装置
本発明の水素発生装置は、隔壁によって分けられた複数のセルを有する水素発生装置であって、それぞれのセルは導光ユニットを含み、導光ユニットは隔壁に光を照射できるように配置されており、光ファイバーにより導光ユニットに太陽光が供給され、隔壁はホウ化水素シートを有し、そしてそれぞれのセルは連通している。
【0010】
《筐体》
本発明の水素発生装置は、複数のセルを含む筐体(容器)を有する。筐体の形状は複数のセルを含むことができる限りにおいて、特に限定されるものではないが、直方体、正方体、円柱体、又は角柱体などが挙げられる。
例えば、図1~4に示す直方体の場合、図2Bに示すように導光ユニット(例えば、導光棒及び導光板)及び隔壁を含む直方体状のセルを積層して含むことができる。また図5及び6に示す円柱体の場合、図6に示すように導光ユニット(例えば、導光棒)及び隔壁を含む六角柱状のセルを蜂の巣のような形状で整列して含むことができる。円柱体の筐体に、円柱状のセルを含んでもよく、角柱体の筐体に角柱状のセル、又は円柱状のセルを含んでもよい。更に、直方体の筐体に角柱状のセル、又は円柱状のセルを含んでもよい。
筐体(容器)には、持ち運びを容易にするため、取っ手を取り付けてもよい。更に、水蒸気による水素再貯蔵を行うため、水蒸気取り込み口を設けてもよい。取り込んだ水蒸気を各セルに分配する構造も設けてもよい。
【0011】
本発明の水素発生装置は、水素を回収することを目的とするが、酸素と水素が混在すると危険が伴うことがある。従って、容器(セルを含む筐体)には、不活性ガスを充填してもよい。不活性ガスとしては、窒素ガス、又はアルゴンガスが挙げられる。
【0012】
《セル》
本発明の水素発生装置は、容器(筐体4)中に、隔壁によって分けられた複数のセル12を含む。セルは、導光ユニット及び隔壁を含む限りにおいて特に限定されるものではない。セルの形状(断面形状)も特に限定されるものではないが、直方体、正方体、円柱上、角柱状(例えば、三角柱、四角柱、五角柱、六角柱、七角柱、八角柱、九角柱、十角柱)が挙げられる。
図2Bに示す直方体状のセル12は断面が長方形である。直方体状のセル断面の中央の縦及び横方向に長方形の導光板6を配置し、導光板6の両側に隔壁7を配置することができる。この場合、限定されるものではないが、導光板6の上辺に導光棒5を配置するとよい。導光棒から導光板に太陽光を導入することができる。導光棒はその一端を光ファイバーと直接接続可能である。
図5A及びBに示す六角柱状のセル12は、断面が六角形である。六角柱状のセル断面の中心に導光棒5を配置し、導光棒5の周りに隔壁7を配置することができる。導光棒は、その一端を光ファイバーと直接接続可能である。
【0013】
本発明の水素発生装置のセルの数は、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されるものではない。すなわち、導光ユニットと、それが照射される隔壁が組み合わされたセルは、物理的に設置できる上限まで水素発生装置に含ませることができる。しかしながら、例えば上限は100以下であり、好ましくは50以下であり、より好ましくは40以下であり、更に好ましくは30以下である。下限も限定されるものではないが、1以上であり、好ましくは3以上であり、更に好ましくは5以上であり、更に好ましくは10以上である。前記上限と下限は、適宜組み合わせることができる。
【0014】
《導光ユニット》
前記導光ユニットは隔壁に光を照射できるように配置される限りにおいて、特に限定されるものではない。具体的な導光ユニットとしては、導光棒又は導光板が挙げられるが、例えば導光棒のみ、導光板のみ、又は導光棒及び導光板の組み合わせが挙げられる。
これらの導光ユニットを用いて、ホウ化水素シートに太陽光を照射することにより、ホウ化水素シートから水素を回収することができる。導光ユニットが、導光棒及び導光板の組み合わせの場合、限定されるものではないが、図4に示したような構成とすることができる。筐体の窓8の下に導光棒5を配置し、導光棒5を導光板6の上辺に配置し、導光板の上辺から導光板6に、光ファイバーを用いて太陽光を導入することができる。
導光ユニットが導光棒のみの場合、限定されるものではないが、図5及び6に示したように、上部から円柱状又は角柱状のセルの中心に導光棒5を配置し、導光棒に光ファイバーから太陽光を導入することができる。
【0015】
(導光棒)
導光棒は太陽光を導入できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、ホウ化水素シートから水素を回収するためには、紫外線が必要であり、紫外線を透過する性能を有する。導光棒の素材としては、石英ガラス、光学ガラス、又は樹脂が挙げられる。樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、又はポリスチレン樹脂が挙げられる。
図5及び6に示したように、上部から円柱状又は角柱状のセルの中心に導光棒5を配置する場合、導光棒の周りのすべての方向に太陽光を照射するため、導光棒の全面から太陽光が放出される構造が好ましい。一方、図4に示したように、導光棒から導光板に太陽光を導入する場合、導光棒の下方から導光板の上辺に太陽光を導入する構造でもよい。すなわち、発光方向を制御した導光棒を用いてもよい。
【0016】
導光棒の長さは、セルの大きさに応じて、適宜決定することができる。例えば、図4に示したように、導光棒から導光板に太陽光を導入する場合、導光板の上辺の長さに応じて、導光棒の長さを決定することができる。また、図5及び6に示したように、上部から円柱状又は角柱状のセルの中心に導光棒5を配置する場合、セルの長さ(深さ)に応じて、導光棒の長さを決定することができる。
導光棒の直径は、特に限定されるものではないが、上限は10mm以下であり、好ましくは、8mm以下であり、より好ましくは5mm以下である。下限も本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されないが、0.1mm以上であり、好ましくは、0.5mm以上であり、より好ましくは1mm以上である。前記上限と下限とは、適宜組み合わせることができる。
【0017】
導光棒の形状も、本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されないが、例えば円柱状又は角柱状(例えば、三角柱、四角柱、五角柱、六角柱、七角柱、八角柱、九角柱、十角柱)の導光棒を用いることができる。市販の導光棒として、光ガイディングバー(フクミ化学工業)を用いることができる。
【0018】
(導光板)
導光板は太陽光を導入できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、ホウ化水素シートから水素を回収するためには、紫外線が必要であり、紫外線を透過する性能を有する。導光板の素材としては、石英ガラス、光学ガラス、又は樹脂が挙げられる。樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、又はポリスチレン樹脂、アクリル系樹脂及びスチレン系樹脂とを混合した樹脂が挙げられる。
導光板とは、加工されたガラス製、又は樹脂製の板の端面から光を入射し発光させるものである。導光板は、片面発光でもよく、両面発光でもよいが、好ましくは両面発光である。また、導光板はエンボス加工されたエンボスパネルでもよく、どっと加工されたドットパネルでもよい。市販の導光板としては、トレイテラスパネル(株式会社トライテラス)を用いることができる。
【0019】
図4に示したように、導光棒から導光板に太陽光を導入する場合、導光棒の下方から導光板6の上辺に太陽光を導入し、導光板6の両面から光を放射することができる。導光板6から放射された太陽光は、図2Bに示したようにセルを構成する隔壁のホウ化水素シートに放射され、水素を放出させることができる。
導光板のサイズは、セルの大きさに応じて、適宜決定することができる。例えば、図3又は図4に示したように、直方体のセルの縦横の大きさに合わせて、導光板の縦横の長さを決定することができる。
導光板の厚さは、特に限定されるものではないが、上限は10mm以下であり、好ましくは、8mm以下であり、より好ましくは5mm以下である。下限も本発明の効果が得られる限りにおいて、特に限定されないが、0.1mm以上であり、好ましくは、0.5mm以上であり、より好ましくは1mm以上である。前記上限と下限とは、適宜組み合わせることができる。
【0020】
(光ファイバー)
光ファイバーにより導光ユニットに太陽光が供給される。光ファイバーは離れた場所に光を伝える伝送路である。光ファイバーは、一般的にコア、その外側のクラッド、そしてそれらを覆う被覆の3重構造である。クラッドよりもコアの屈折率を高くすることによって、全反射や屈折により、光を中心部のコアに伝播させる構造を有する。コア及びクラッドは、光に対して透過率が非常に高い石英ガラス又はプラスチックで作成される。被覆がないコアとクラッドのみの状態を単に「光ファイバー」と呼び、光ファイバーの表面をシリコーン樹脂で被覆したものを「光ファイバー素線」、光ファイバー素線をナイロン繊維で被覆したものを「光ファイバー心線」、光ファイバー心線を高抗張力繊維と外皮で被覆したものを「光ファイバーコード」と称することがある。
【0021】
本発明において、光ファイバーの形状、大きさ(直径)、材質、構造は、特に限定されないが、光ファイバーの大きさ(直径)としては、15μm以上1,000μm以下が好ましく、20μm以上800μm以下がより好ましい。
前記光ファイバーの材質の透過波長範囲としては、特に制限は無く、適宜選択することができるが、200nm以上2,100nm以下が好ましく、250nm以上800nm以下がより好ましい。
【0022】
(太陽光収集レンズ)
本発明の水素発生装置においては、限定されるものではないが、太陽光収集レンズ10によって太陽光を収集することができる。図4に示すように、太陽光収集レンズ10によって収集した太陽光を、光ファイバー11で伝送し、導光ユニットに導入することができる。
【0023】
本発明の水素発生装置においては、複数の集光レンズ、及び複数の光ファイバーを用いて太陽光を導入することができる。また、複数の集光レンズからの光を、バンドル構造をもつ単一の光ファイバーで伝送することもできる。更に、バンドル構造をもつ単一の光ファイバーを束ねて、複数の光ファイバーで伝送することもできる。
【0024】
光ファイバー11は、図1の光ファイバー接続口2、又は図5の光ファイバー接続口2から水素発生装置に導入される。水素発生装置に導入された光ファイバーは、導光ユニットに太陽光を供給する。
【0025】
《隔壁》
前記セルは、隔壁により、複数のセルに分割されている。隔壁の形状は、セルの形状に合わせて、適宜決定できる。例えば、図3に示されるように、直方体状のセルの場合は、導光板の形状に合わせて、長方形の隔壁とすることができる。図6に示されるように六角柱状のセルの場合、導光棒を囲むように、六角柱状の隔壁とすることができる。
隔壁の素材は、特に限定されるものではないが、例えば金属(鉄など)、合金(ステンレスなど)、セラミックス、ガラス、プラスチック(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、繊維強化プラスチックなど)、又は多孔質材料が挙げられる。隔壁は、ホウ化水素シートが塗布される基材であってもよい。
【0026】
隔壁(基材)はホウ化水素シートを有している。例えば、ホウ化水素シートは、限定されるものではないが、隔壁に塗布することができる。隔壁に塗布する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば以下のように塗布することができる。
ホウ化水素シートの粉末を溶媒に溶かした液体を隔壁に塗布し乾燥させる。ホウ化水素シートの粉末を溶媒に溶かした液体に隔壁を含浸し、隔壁を引き上げて乾燥させる。
【0027】
隔壁と導光ユニットの距離は、水素が放出される限りにおいて、特に限定されるものではない。しかしながら水素の放出効率、セルの容積を大きくしないように、適当な距離にすることが好ましい。例えば、上限は10mm以下であり、好ましくは、8mm以下であり、より好ましくは5mm以下である。下限も、特に限定されないが、0.1mm以上であり、好ましくは、0.5mm以上であり、より好ましくは1mm以上である。前記上限と下限とは、適宜組み合わせることができる。
【0028】
ホウ化水素シートは、光照射部位に存在する限り場所及び形態に限定されない。前記ホウ化水素シートを隔壁に塗布する方法に加えて、別の方法として、ホウ化水素シートを透明な多孔質状の担体に担持し、これをセルの隙間に詰めてもよい。例えば、担体としては、発砲アルミナ、アルミナナノ粒子、又は石英(石英ウール、石英ガラス多孔体)が挙げられる。
更に別の方法として、各セルに溶媒に分散させたホウ化水素シートを充填することも可能である。例えば、溶媒としては、水または有機溶媒である。有機溶媒は特に限定されないが、例えば、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、ニトリル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、アミド類、炭酸エステル類、炭化水素、ニトロメタンなどの溶媒が挙げられる。ニトリル系溶剤としてはアセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピロニトリルが、アルコール系溶剤としてはメタノール、エタノール、プロパノール等が例示できる。溶媒は一種単独または二種以上を併用して用いられる。
【0029】
《ホウ化水素シート》
本発明に用いられるホウ化水素シートは、ホウ素及び水素を含む限りにおいて特に限定されるものではない、本分野において用いられるホウ化水素シートを限定することなく用いることができる。
例えば、ホウ素及び水素のみからなる理想的なホウ化水素シートは、図7(A)に示す3次元の構造を有する。また、ホウ化水素シートは、酸素を含むものもある。すなわち、ホウ素、水素、及び酸素を含み、図7(B)に示すB-H-B結合、B-H結合、及びB-OH結合を有し、BH及びBOHの組み合わされた(BH)n(BOH)mの構造を有するホウ化水素シートを用いることができる。すなわち、図7(A)における水素(H)の一部が水酸基(OH)に置換された構造となっており、BHn(OH)m(n+m=1)の構造を有する。
【0030】
前記ホウ化水素シートの厚さは、特に限定されるものではないが、0.23nm~0.50nmである。ホウ化水素シートにおいて、少なくとも一方向の長さ(例えば、図7AにおいてX方向またはY方向の長さ)が100nm以上であることが好ましい。本発明の構造体において、少なくとも一方向の長さが100nm以上であれば、ホウ化水素シートは、水素の貯蔵材料として有効に利用することができる。
ホウ化水素シートの大きさ(面積)は、特に限定されない。ホウ化水素シートの大きさは、ホウ化水素シートの製造方法によって、任意の大きさに形成することができる。
【0031】
ホウ化水素シートは、結晶構造を有する物質である。また、ホウ化水素シートでは、六角形の環を形成するホウ素原子(B)間、および、ホウ素原子(B)と水素原子(H)の間の結合力が強い。そのため、本発明の構造体は、製造時に複数積層されてなる結晶(凝集体)を形成したとしても、グラファイトと同様に結晶面に沿って容易に劈開し、単層の二次元シートとして分離(回収)することができる。
【0032】
また、ホウ化水素シートは紫外光のみを吸収するため、太陽光エネルギーを効率的に利用するため、ホウ化水素シートに可視光を吸収する物質を添加してもよい。可視光を吸収する物質としては、適例として、シス-ジ(チオシアナト)-ビス(2,2’-ビピリジル-4,4’-ジカルボン酸)ルテニウム(II)(以下、「N3」ともいう)、シス-ジ(チオシアナト)-ビス(2,2’-ビピリジル-4,4’-ジカルボン酸)ルテニウム(II)のビス-TBA塩(以下、「N719」ともいう)、シス-ジ(チオシアナト)-ビス(2,2’-ビピリジル-4,4’-ジカルボン酸)ルテニウム(II)のテトラ-TBA塩(以下、「N712」ともいう)、トリ(チオシアナト)-(4,4’,4’’-トリカルボキシ-2,2’:6’,2’’-ターピリジン)ルテニウムのトリス-テトラブチルアンモニウム塩(以下、「N749」ともいう)、シス-ジ(チオシアナト)-(2,2’-ビピリジル-4,4’-ジカルボン酸)(4,4’-ビス(5’-ヘクチルチオ-5-(2,2’-ビチエニル))ビピリジル)ルテニウム(II)のモノ-テトラブチルアンモニウム塩(以下、「ブラックダイ」ともいう)、C106等のルテニウム系増感色素;トリス(2-ピリジルフェニル)イリジウム(III)等のイリジウム系増感色素が例示できる。更に、クマリン系、ポリエン系、シアニン系、ヘミシアニン系、チオフェン系、インドリン系、キサンテン系、カルバゾール系、ペリレン系、ポルフィリン系、フタロシアニン系、メロシアニン系、カテコール系、アゾ系、アジン系、及びスクアリリウム系等の各種有機増感色素も好適である。また、これらの増感色素を組み合わせたドナー-アクセプター複合増感色素等を用いてもよい。色素は、一種単独または二種以上を併用できる。色素は、N3、N719、N712、C106の少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0033】
[2]水素発生方法
本発明の水素発生方法は、本発明の水素発生装置を用いる水素発生方法である。本発明の水素発生方法は、(1)光ファイバーにより導光ユニットに供給される太陽光を、ホウ化水素シートを有する隔壁に照射し、ホウ化水素シートから水素を放出させる工程、(2)ホウ化水素シートから放出された水素を、連通しているそれぞれのセルから回収して、水素取り出し口から取り出す水素回収工程、を含む。
【0034】
《水素放出工程(1)》
水素放出工程(1)においては、光ファイバーにより導光ユニットに供給される太陽光を、ホウ化水素シートを有する隔壁に照射し、ホウ化水素シートから水素を放出させる。光ファイバーには、限定されるものではないが、例えば太陽光収集レンズによって収集した太陽光を導入し、転送させる。転送された太陽光は、光ファイバー接続口かホウ化水素シートから水素を放出させ、水素発生装置に入り、導入ユニットに導入される。
例えば、図1~4に記載の筐体が直方体の場合、図2B及び図3に示されるように、導光板から太陽光を、隔壁に含まれるホウ化水素シートに放射し、ホウ化水素シートから水素を放出させることができる。図5~6に記載の筐体が円柱体の場合、導入棒から太陽光を隔壁に含まれるホウ化水素シートに放射し、ホウ化水素シートから水素を放出させることができる。
【0035】
《水素回収工程(2)》
水素回収工程(2)においては、ホウ化水素シートから放出された水素を、連通しているそれぞれのセルから回収して、水素取り出し口から取り出す。筐体が直方体の場合、図2B及び図3に示されるようにホウ化水素シートから放出された水素は、連通口13を通って、水素の流れ9に沿って、水素取り出し口3から取り出すことができる。筐体が円柱体の場合、図6Bに示すように、ホウ化水素シートから放出された水素は、連通口13を通って、水素の流れ9に沿って、水素取り出し口3から取り出すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の水素発生装置は、水素の運搬、又は貯蔵に用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1・・・水素発生装置;
2・・・光ファイバー接続口;
3・・・水素取り出し口;
4・・・筐体;
5・・・導光棒;
6・・・導光板;
7・・・隔壁;
8・・・窓;
9・・・水素の流れ;
10・・・太陽光集光レンズ;
11・・・光ファイバー;
12・・・セル;
13・・・連通口;
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7