(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009409
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 9/02 20060101AFI20250110BHJP
H01H 13/04 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
H01H9/02 B
H01H13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112402
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】桐原 靖彦
【テーマコード(参考)】
5G052
5G206
【Fターム(参考)】
5G052AA11
5G052AA15
5G052BB01
5G052HA02
5G052HA24
5G052HC01
5G206AS02N
5G206AS02Z
5G206FS32J
5G206FS32K
5G206FS32Z
5G206FU04
5G206GS27
5G206HW14
5G206HW33
5G206HW44
5G206HW54
5G206KS15
5G206KU31
5G206NS02
5G206PS02
5G206QS02
5G206RS04
5G206RS14
5G206RS24
5G206RS35
(57)【要約】
【課題】製造コストを低減する。
【解決手段】スイッチ装置10では、筒状のボディ30を有している。ボディ30の前端部には、ボビン部30Bが設けられており、アンテナ線60がボビン部30Bに巻き回されている。また、基板42がボディ30の内部に配置されている。基板42の後面には、コネクタターミナル46が設けられており、基板42の基板固定部42Aに形成されたランド42Cが、コネクタターミナル46と導通している。さらに、導電性を有する固定ネジ58が、ランド42Cに当接した状態で、基板42をボディ30に締結固定しており、アンテナ線60の一端部60A及び他端部60Bが固定ネジ58に巻き回されて半田付けされている。これにより、コネクタターミナルをインサート成形するボディと比べて、ボディを安価に製作しつつ、アンテナ線をコネクタターミナルに接続できる。したがって、スイッチ装置10の製造コストを低減できる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のボディと、
前記ボディの内部に配置され、コネクタ端子及び前記コネクタ端子に導通された導通接続部が設けられた基板と、
前記基板に対して前記ボディの軸方向の一方側に設けられたボビン部と、
前記ボビン部に巻き回されたアンテナ線と、
前記ボディの内部において前記軸方向にスライド可能に構成されたスライダと、
前記スライダにおける前記軸方向の他方側へのスライド時に前記スライダによって押圧されるスイッチ部と、
導電性を有すると共に、前記導通接続部に当接した状態で前記基板を前記ボディに固定すると共に、前記アンテナ線の端部が接続された固定部材と、
を備えたスイッチ装置。
【請求項2】
前記基板には、前記固定部材が挿通される固定孔が形成されており、
前記導通接続部は、固定孔の縁部に形成されたランドである請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記ボビン部が、前記ボディに一体に形成されている請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記ボディの側壁には、径方向に貫通する開口部が形成されており、前記固定部材が前記開口部から径方向外側へ露出している請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記ボビン部は、前記ボディの径方向外側へ開放された凹状に形成されており、
前記開口部の内部と前記ボビン部の内部とが連通している請求項4に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記基板における前記固定部材によって固定される部位が基板固定部とされ、
前記基板固定部は、前記基板の外周部から前記ボディの径方向外側へ突出すると共に、前記導通接続部が前記基板固定部に形成されており、
前記基板固定部及び前記固定部材が前記開口部の内部に配置されている請求項4に記載のスイッチ装置。
【請求項7】
前記開口部は、前記軸方向に延在する溝状に形成され、前記開口部の一端部が、前記ボディの一端部において前記軸方向の一方側へ開放している請求項6に記載のスイッチ装置。
【請求項8】
前記基板は、一対の前記固定部材によって前記ボディに固定され、一対の前記固定部材が、前記ボディの周方向において離間して配置されており、
前記ボディには、前記固定部材が配置される一対の前記開口部が形成されている請求項7に記載のスイッチ装置。
【請求項9】
前記ボディには、ケースが固定されており、
前記ケースは、前記ボディを径方向外側から覆う外筒と、前記ボディの径方向内側に配置された内筒と、を含んで構成され、前記スライダが前記内筒にスライド可能に連結されている請求項4~請求項8の何れか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項10】
前記ボビン部が、前記外筒と前記内筒との間に配置されている請求項9に記載のスイッチ装置。
【請求項11】
前記ボビン部が前記外筒に径方向内側から当接すると共に、前記外筒及び前記内筒によって、前記ボディの側壁の径方向の移動が制限されている請求項10に記載のスイッチ装置。
【請求項12】
前記内筒の外周部には、規制部が設けられており、
前記規制部が、前記開口部に嵌め込まれて、前記ボディの周方向において前記ボディと係合している請求項9に記載のスイッチ装置。
【請求項13】
前記内筒は、前記基板に対して前記軸方向の一方側に配置され、前記固定部材は、前記軸方向の一方側から前記基板を前記ボディに固定しており、
前記規制部が、前記固定部材に対して前記軸方向の一方側に配置されて、前記固定部材の前記軸方向の一方側への移動を規制している請求項12に記載のスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のスイッチ装置では、筒状のボディの一端部にアンテナコイルが巻き回されており、ボディには、コイルターミナルがインサートされている。コイルターミナルの一端部は、ボディから突出しており、アンテナコイルの端部が、コイルターミナルの一端部に巻き回されている。一方、コイルターミナルの他端部は、コネクタハウジングの内部において、ボディから突出して、コネクタ端子として構成されている。これにより、アンテナコイルによる通信動作を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記スイッチ装置では、上述のように、インサート成形によって、コイルターミナルをボディに一体に形成する必要があり、スイッチ装置の製造コストが高くなる可能性がある。このため、上記スイッチ装置では、製造コストを低減するという点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、製造コストを低減することができるスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、筒状のボディと、前記ボディの内部に配置され、コネクタ端子及び前記コネクタ端子に導通された導通接続部が設けられた基板と、前記基板に対して前記ボディの軸方向の一方側に設けられたボビン部と、前記ボビン部に巻き回されたアンテナ線と、前記ボディの内部において前記軸方向にスライド可能に構成されたスライダと、前記スライダにおける前記軸方向の他方側へのスライド時に前記スライダによって押圧されるスイッチ部と、導電性を有すると共に、前記導通接続部に当接した状態で前記基板を前記ボディに固定すると共に、前記アンテナ線の端部が接続された固定部材と、を備えたスイッチ装置である。
【発明の効果】
【0007】
上記構成のスイッチ装置によれば、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(A)は、本実施の形態に係るスイッチ装置を示す第1方向一方側から見た側面図であり、(B)は、(A)のスイッチ装置の前側から見た正面図である。
【
図2】
図1(B)に示されるスイッチ装置の第1方向一方側から見た縦断面図(
図1(B)の2-2線断面図)である。
【
図3】
図1(B)に示されるスイッチ装置の第2方向一方側から見た縦断面図(
図1(B)の3-3線断面図)である。
【
図4】
図1(A)に示されるボディの前側から見た正面図である。
【
図5】
図4に示されるボディに基板及びラバーコンタクトが収容され且つボビン部に巻き回されたアンテナ線が固定ネジに接続された状態を示す前側から見た正面図である。
【
図6】
図5に示される基板、ラバーコンタクト、固定ネジ、ボディの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて、本実施の形態に係るスイッチ装置10について説明する。本実施の形態のスイッチ装置10は、車両(自動車)のインストルメントパネル等に配置されて、車両のエンジン(パワーユニット)を始動又は停止させるための装置として構成されている。
図1(A)及び(B)に示されるように、スイッチ装置10は、全体として略円柱状に形成されている。以下の説明では、スイッチ装置10の軸方向一方側(
図1(A)の矢印A方向側)をスイッチ装置10の前側とし、スイッチ装置10の軸方向他方側(
図1(A)の矢印B方向側)をスイッチ装置10の後側としている。また、前側から見た正面視で、前後方向に対して直交する方向を第1方向(
図1(B)の矢印C及び矢印Dを参照)とし、第1方向に対して直交する方向を第2方向(
図1(B)の矢印E及び矢印Fを参照)としている。さらに、
図1(B)の矢印C方向側を第1方向一方側とし、
図1(B)の矢印E方向側を第2方向一方側としている。
【0010】
図1~
図3に示されるように、スイッチ装置10は、ケース20と、ボディ30と、スイッチ機構40と、アンテナ線60と、を含んで構成されている。以下、スイッチ装置10の各構成について説明する。
【0011】
(ケース20について)
ケース20は、前後方向を軸方向とする2重の略円筒状に形成されている。すなわち、ケース20は、外筒20A及び内筒20Bを有しており、内筒20Bが外筒20Aの径方向内側に配置されている。そして、外筒20A及び内筒20Bの前端部における第2方向両端部同士が互いに連結されている。外筒20Aの外周部には、第1方向両側部分において、一対の固定片20Cが形成されている。固定片20Cは、第2方向から見て、ケース20の径方向外側へ向かうに従い前側へ傾斜している。そして、固定片20Cが、車両のインストルメントパネル等に係合されて、ケース20(すなわち、スイッチ装置10)が車両に固定されている。外筒20Aの後端部の内周部には、径方向外側へ一段下がった篏合凹部20Dが形成されている。内筒20Bは、前側へ開放された略有底円筒状に形成されており、内筒20Bの後壁が、外筒20Aの後端よりも前側に位置している。なお、内筒20Bの後壁には、後述するラバーコンタクト50の一部を露出させるための孔部やレンズ56を挿通させるための孔部が適宜形成されている。
【0012】
ケース20の前端部には、ベゼル22が組付けられている。具体的には、ケース20の前端部には、円筒状の篏合筒部20Eが設けられており、篏合筒部20Eは、外筒20Aの前端部から前側へ突出している。ベゼル22は、前後方向を軸方向とする略円筒状に形成されている。そして、ベゼル22が、篏合筒部20Eに外挿されて、爪嵌合によって外筒20Aに相対移動不能に組付けられている。
【0013】
(ボディ30について)
図2~
図6に示されるように、ボディ30は、前後方向を軸方向とし且つ前側へ開放された略有底円筒状に形成されている。ボディ30は、ケース20内に後側から挿入されて、爪篏合によってケース20に相対移動不能に組付けられている。ボディ30のケース20への組付状態では、内筒20Bがボディ30の内部に位置している。すなわち、ボディ30の前部が外筒20Aと内筒20Bとの間に配置されており、外筒20Aによってボディ30が径方向外側から覆われている。また、ボディ30の後面は、外筒20Aの後端面と面一となる位置に配置されている。ボディ30の後端部の外周部には、径方向外側へ一段上がった段差部30Aが形成されており、段差部30Aが、ケース20の篏合凹部20D内に嵌め込まれている。
【0014】
ボディ30の前端部は、ボビン部30Bとして構成されている。ボビン部30Bは、ボディ30の径方向外側へ開放され且つボビン部30Bの周方向に延在された凹状に形成されている。ボビン部30Bの内部は、アンテナ線収容部30B1とされており、後述するアンテナ線60がアンテナ線収容部30B1内においてボビン部30Bに巻き回されるようになっている。ボディ30のケース20への組付状態では、ボビン部30Bの後端部が外筒20Aの内周面に当接され、ボディ30が内筒20Bの径方向外側に所定の隙間を空けて配置されている。すなわち、外筒20A及び内筒20Bによって、ボディ30の径方向の移動を制限する構造になっている。
【0015】
ボディ30の側壁には、一対の開口部30Cが形成されており、開口部30Cは、ボディ30第2方向両側端部にそれぞれ形成されている。開口部30Cは、前後方向を長手方向とし且つ径方向(第2方向)に貫通する溝状に形成されており、開口部30Cの前端部が前側へ開放している(
図4~
図6参照)。すなわち、ボビン部30Bの第2方向両側部が、開口部30Cによって切り欠かれて、開口部30Cの内部とアンテナ線収容部30B1とが、連通している。開口部30Cは、ボビン部30Bから段差部30Aに亘って形成されている。すなわち、ボディ30の側壁を第1方向に分断するように、一対の開口部30Cが前後方向に延在されている。開口部30Cの後端部は、後述する基板42の基板固定部42Aを配置し且つ露出させるための開口露出部30C1として構成されており、開口露出部30C1の幅寸法が、開口部30Cの幅寸法よりも大きく設定されている。
【0016】
前述したケース20の内筒20Bの外周部には、第2方向両端部(開口部30Cに対応する位置)において、規制部20F(
図2及び
図5参照)がそれぞれ形成されている。規制部20Fは、前後方向に延在された柱状に形成されており、内筒20Bの前端部から後端部に亘って形成されている。規制部20Fの幅寸法は、開口部30Cの幅寸法よりも僅かに小さく設定されており、規制部20Fが、開口部30C内に嵌め込まれて、ボディ30の周方向においてボディ30と係合している。これにより、一対の開口部30Cによって第1方向に分断されたケース20の側壁における第1方向内側への変形を規制部20Fによって規制するようになっている。
【0017】
ボディ30の後壁には、後述する基板42を設置するための一対の基板設置部30D(
図2及び
図4参照)が形成されている。基板設置部30Dは、ブロック状に形成されて、ボディ30の後壁から前側へ突出している。基板設置部30Dは、正面視で開口部30Cの第2方向内側にそれぞれ配置されると共に、ボディ30における開口露出部30C1よりも後側の側壁から第2方向内側へ突出している。基板設置部30Dの前面は、開口露出部30C1の後端面と面一に配置されている。基板設置部30Dには、ネジ孔部30D1が形成されており、ネジ孔部30D1は、前側へ開放された凹状に形成されると共に、正面視で円形状に形成されている。
【0018】
ボディ30の後壁の略中央部には、コネクタ部30Eが設けられている。コネクタ部30Eは、前後方向を軸方向とする略矩形筒状に形成されて、ボディ30の後壁から後側へ突出している。
【0019】
(スイッチ機構40について)
図2及び
図3に示されるように、スイッチ機構40は、ボディ30の内部に収容されている。スイッチ機構40は、基板42と、ラバーコンタクト50と、スライダ52と、レンズ56と、を含んで構成されている。
【0020】
(基板42について)
図5及び
図6にも示されるように、基板42は、前後方向を板厚方向とする略円板状に形成されている。基板42は、ボディ30の後端側部分内に収容されており、基板設置部30Dの前側に隣接配置されている。
【0021】
基板42の前面における第1方向両側端部には、固定接点43がそれぞれ設けられている。基板42の前面の略中央部には、照明用LED44が設けられており、基板42の前面の第2方向一方側端部には、インジケータ用LED45が設けられている。照明用LED44及びインジケータ用LED45は、発光された光を前側へ照射する構成になっている。
【0022】
基板42の後面には、前後方向に延在された複数(本実施の形態では、8本)のコネクタ端子としてのコネクタターミナル46が設けられている。4本のコネクタターミナル46が第1方向に並んで配置されており、第1方向に並ぶコネクタターミナル46を1組として、2組のコネクタターミナル46が、第2方向に並んで配置されている。コネクタターミナル46の前端部は、第2方向外側へ屈曲されて、基板42の後面に接続されている。コネクタターミナル46の後端部は、ボディ30の後壁から後側へ突出して、コネクタ部30E内に配置されている。なお、ボディ30の後壁には、コネクタターミナル46が挿通する挿通孔が貫通形成されている。また、コネクタ部30Eに挿入された外部コネクタが、コネクタターミナル46に接続されて、基板42が車両の制御部に電気的に接続されている。
【0023】
基板42の第2方向両側端部には、基板固定部42Aがそれぞれ設けられている。基板固定部42Aは、基板42の外周部から径方向外側(第2方向外側)へ突出して、ボディ30の開口露出部30C1内に配置されると共に、開口露出部30C1の後端面及び基板設置部30Dの前側に隣接配置されている。
【0024】
基板固定部42Aには、基板設置部30Dのネジ孔部30D1に対応する位置において、固定孔42Bが形成されており、固定孔42Bはスルーホールである。すなわち、固定孔42Bの内周面には、メッキ処理が施されている。また、固定孔42Bの前後の周縁部(基板固定部42Aの前後面)には、ランド42Cが形成されており、前後のランド42Cが、スルーホールである固定孔42Bによって導通している。そして、ランド42Cが、本発明の導通接続部に対応する。また、後側のランド42Cは、基板42に形成されたパターンによって、コネクタターミナル46に接続されている。
【0025】
そして、基板42が、固定部材としての固定ネジ58によって、ボディ30に締結固定されている。固定ネジ58は、導電性を有する材料(本実施形態では、金属材)で構成されている。固定ネジ58は、前後方向を軸方向とする略円柱状の頭部58Aと、頭部58Aから後側へ延出されたネジ部58Bと、を有しており、頭部58Aの後端部には、径方向外側へ突出したフランジ58Cが形成されている。そして、固定ネジ58のネジ部58Bが、基板42の固定孔42Bに前側から挿入され、基板設置部30Dのネジ孔部30D1に螺合されて、固定ネジ58によって基板42がボディ30に締結固定されている。すなわち、ボディ30の周方向に180度離間した一対の固定ネジ58によって、基板42がボディ30に締結固定されている。固定ネジ58による基板42の固定状態では、フランジ58Cがランド42Cに当接している。これにより、固定ネジ58とコネクタターミナル46とが導通している。
【0026】
また、基板42の固定状態では、固定ネジ58の頭部58A及び基板固定部42Aが開口露出部30C1内に配置されており、ケース20のボディ30への組付前では、開口露出部30C1によって固定ネジ58及び基板固定部42Aがボディ30から径方向外側へ露出している。一方、ケース20のボディ30への組付後では、ケース20の外筒20Aによって固定ネジ58及び基板固定部42Aが径方向外側から覆われている(
図2参照)。また、基板固定部42Aの幅寸法が開口部30Cの幅寸法よりも僅かに小さく設定されており、前側から見て、基板固定部42Aが開口部30C内に配置されるように、基板固定部42A及び開口部30Cの幅寸法が設定されている(
図5参照)。
【0027】
さらに、前述したケース20の規制部20Fが、固定ネジ58の頭部58Aの前側に近接して配置されて、規制部20Fによって、固定ネジ58の前側への移動を規制する構成になっている(
図2参照)。換言すると、固定ネジ58のボディ30からの外れを規制部20Fによって抑制する構成になっている。
【0028】
(ラバーコンタクト50について)
図2、
図3、
図5、及び
図6に示されるように、ラバーコンタクト50は、ベース部50Aを有しており、ベース部50Aは、前後方向を板厚方向とする板状に形成されて、基板42の前側に隣接配置されている。ベース部50Aには、基板42の固定接点43に対応する位置おいて、一対のスイッチ部50Bが形成されている。スイッチ部50Bは、ラバーコンタクト50から前側へ隆起した略ドーム形状に形成されており、スイッチ部50Bの内部には、可動接点(図示省略)が設けられている。そして、スイッチ部50Bが後側(固定接点43側)へ押圧されることで、スイッチ部50Bが作動する構成になっている。具体的には、可動接点が固定接点43に接触して、スイッチ部50BがONするように構成されている。
【0029】
ベース部50Aには、照明用LED44に対応する位置において、照明用筒部50Cが形成されている。照明用筒部50Cは、略矩形筒状に形成されて、ラバーコンタクト50から前側へ突出しており、照明用筒部50Cの内部が前後方向に貫通している。ベース部50Aには、インジケータ用LED45に対応する位置において、インジケータ用筒部50Dが形成されている。インジケータ用筒部50Dは、略矩形筒状に形成されて、ラバーコンタクト50から前側へ突出している。
【0030】
(スライダ52について)
図2及び
図3に示されるように、スライダ52は、前後方向を軸方向とする略矩形筒状に形成されている。スライダ52は、ケース20の内筒20B内に挿入され、内筒20Bに前後方向にスライド可能に連結されている。すなわち、スライダ52が前後方向にスライド可能にボディ30内に収容されている。スライダ52のボディ30への収容状態では、スライダ52の前端部が、ボディ30及びケース20よりも前側へ突出している。
【0031】
スライダ52の側壁には、ラバーコンタクト50のスイッチ部50Bに対応する位置において、スイッチ押圧部52Aが形成されている。スイッチ押圧部52Aは、前後方向に延在された略十字形柱状に形成されると共に、スイッチ部50Bの前側に隣接して配置されている。また、スライダ52の第2方向一方側の部分には、後述するレンズ56を収容するためのレンズ収容部52Bが形成されている。レンズ収容部52Bは、前後方向を軸方向とする略矩形筒状に形成されると共に、正面視で、インジケータ用LED45と重なる位置に配置されている。
【0032】
スライダ52の前端部には、ノブ部52Cが一体に設けられている。ノブ部52Cは、前後方向を板厚方向とする略円板状に形成され、ボディ30及び内筒20Bを前側から覆うようにスライダ52の外周部から張り出されている。ノブ部52Cの第2方向一方側部分には、略矩形状のレンズ孔52Dが貫通形成されている。また、ノブ部52Cの略中央部には、照明孔52Eが貫通形成されている。照明孔52Eは、略矩形状に形成されて、正面視で、照明用LED44と重なる位置に配置されている。
【0033】
ノブ部52Cの前側には、意匠パネル54が設けられており、意匠パネル54は、光を透過可能な樹脂材によって構成されている。意匠パネル54は、正面視でノブ部52Cに対応した円形状に形成されると共に、後側へ開放された凹状に形成されている。そして、意匠パネル54は、2色成形によってノブ部52Cに一体的に固定されている。意匠パネル54は、ベゼル22の径方向内側に配置されて、車両のキャビン側へ操作可能に露出されている。これにより、操作者が、意匠パネル54を後側へ押圧操作することで、スライダ52が後側へスライドして、スイッチ機構40のスイッチ部50Bが作動する構成になっている。
【0034】
意匠パネル54には、ノブ部52Cのレンズ孔52Dに対応する位置において、インジケータ孔54Aが貫通形成されている。また、意匠パネル54には、文字や記号等によって構成された表示マーク54Bが形成されており、表示マーク54Bは、ノブ部52Cの照明孔52Eの前側に位置している。この表示マーク54Bは、例えば、意匠パネル54の前面に黒色塗装を行い、表示マーク54Bに対応するシンボルをレーザー加工等によって抜くことによって形成される。これにより、照明用LED44によって発光された光が、スライダ52及び照明孔52Eを通過して、表示マーク54Bが照明されるように構成されている。
【0035】
(レンズ56について)
レンズ56は、光を透過可能な透明の樹脂材によって構成されている。レンズ56は、第2方向を板厚方向とし且つ前後方向を長手方向とする略長尺板状に形成されている。そして、レンズ56が、スライダ52のレンズ収容部52Bに後側から挿入されて、爪嵌合によってスライダ52に組付けられている。レンズ56の前端部には、インジケータ部56Aが設けられている。インジケータ部56Aは、ノブ部52Cのレンズ孔52D及び意匠パネル54のインジケータ孔54Aに後側から挿入されて、意匠パネル54から前側へ露出している。レンズ56は、インジケータ用LED45の前側に位置しており、インジケータ用LED45によって発光された光が、レンズ56によって前側へ導かれて、インジケータ部56Aが点灯するようになっている。
【0036】
(アンテナ線60について)
図2、
図4、及び
図5に示されるように、アンテナ線60は、ボディ30のボビン部30Bに周方向に沿って巻き回されて、アンテナ線収容部30B1内に配置されている。すなわち、アンテナ線60が、ケース20の外筒20A及び内筒20Bの間において、ボビン部30Bに巻き回されている。アンテナ線60の端部としての一端部60Aは、アンテナ線収容部30B1から後側へ延出されて、第2方向一方側の開口部30C内に配策されている。一端部60Aは、基板42における第2方向一方側の固定ネジ58の頭部58Aに、巻き回され且つ半田付されている。アンテナ線60の端部としての他端部60Bは、アンテナ線収容部30B1から後側へ延出されて、第2方向他方側の開口部30C内に配策されている。アンテナ線60の他端部60Bは、基板42における第2方向他方側の固定ネジ58の頭部58Aに、巻き回され且つ半田付されている。すなわち、アンテナ線60が固定ネジ58に直接接続されて、アンテナ線60とコネクタターミナル46とが固定ネジ58を介して電気的に接続されている。
【0037】
(作用効果)
次に、本実施の形態のスイッチ装置10の作用及び効果について説明する。
【0038】
上記のように構成されたスイッチ装置10の非操作状態では、スライダ52が初期位置(
図2及び
図3に示される位置)に配置されている。そして、スライダ52の意匠パネル54が押圧操作されると、スライダ52が後側へスライドする。これにより、スライダ52のスイッチ押圧部52Aが、ラバーコンタクト50の一対のスイッチ部50Bを押圧する。よって、一対のスイッチ部50Bの可動接点が基板42の固定接点43に接触して、一対のスイッチ部50Bがオンとなり、オン信号が車両の制御部に出力される。一方、スライダ52に対する操作を解除すると、ラバーコンタクト50のスイッチ部50Bの復元力によって、スライダ52が前側へスライドする。これにより、ノブ部52Cが初期位置に復帰する。
【0039】
そして、車両の制御部は、操作者の所有する携帯機と通信により接続し、当該携帯機との認証が完了した状態で、スイッチ装置10が操作されることで、車両のエンジン(パワーユニット)を始動又は停止させる。また、スイッチ装置10は、アンテナ線60を有している。このため、操作者の所有する携帯機の電池が消耗して、携帯機との通信が不能になるときには、トランスポンダ通信を行うことで、携帯機との通信をすることができる。詳しくは、携帯機をスイッチ装置10の意匠パネル54にかざすと、スイッチ装置10のコイル状のアンテナ線60から送信される起動電波を携帯機が受信し、携帯機のトランスポンダ内のコイル部によって起電力が発生し、その電力によって携帯機が車両の認証装置に向けてID信号を送信することによって車両の認証装置と携帯機との通信を行うことができる。
【0040】
ここで、スイッチ装置10では、筒状のボディ30を有している。ボディ30の前端部には、ボビン部30Bが設けられており、アンテナ線60がボビン部30Bに巻き回されている。また、基板42がボディ30の内部に配置されている。基板42の後面には、コネクタターミナル46が設けられており、基板42の基板固定部42Aに形成されたランド42Cが、コネクタターミナル46と導通している。さらに、導電性を有する固定ネジ58が、ランド42Cに当接した状態で、基板42をボディ30に締結固定しており、アンテナ線60の一端部60A及び他端部60Bが固定ネジ58に巻き回されて半田付けされている。これにより、従来技術のような、コネクタターミナルをインサート成形するボディと比べて、ボディ30を安価に製作しつつ、アンテナ線60をコネクタターミナル46に接続できる。換言すると、基板42を固定するための固定ネジ58を活用して、アンテナ線60をコネクタターミナル46に接続できる。したがって、スイッチ装置10の製造コストを低減することができる。
【0041】
また、基板42の基板固定部42Aには、固定ネジ58が挿通される固定孔42Bが形成されており、ランド42Cが、固定孔42Bの周縁部に形成され、コネクタターミナル46と導通している。そして、固定ネジ58による基板42の固定状態において、固定ネジ58のフランジ58Cが、ランド42Cに当接している。これにより、簡易な構成で、固定ネジ58とコネクタターミナル46とを導通させることができる。
【0042】
また、ボディ30では、ボビン部30Bがボディ30に一体に形成されている。これにより、ボビン部30Bとボディ30とを別体に構成する場合と比べて、部品点数及び組付工数を低減することができる。したがって、スイッチ装置10の製造コストを一層低減することができる。
【0043】
また、ボディ30の側壁には、径方向に貫通する開口部30Cが形成されており、開口部30Cによって固定ネジ58がボディ30の径方向外側へ露出している。よって、アンテナ線60の一端部60A及び他端部60Bを、開口部30Cから露出した固定ネジ58に、巻き回して半田付けすることができる。これにより、スイッチ装置10の組付時の作業性を向上することができる。したがって、スイッチ装置10の製造コストを一層低減することができる。
【0044】
また、ボビン部30Bは、ボディ30の径方向外側へ開放された凹状に形成されており、ボビン部30Bの内部がアンテナ線収容部30B1とされている。そして、アンテナ線収容部30B1と開口部30Cとが連通している。これにより、ボビン部30Bに巻き回されたアンテナ線60の一端部60A及び他端部60Bを、アンテナ線収容部30B1から後側へ引出し開口部30C内に配策させて、開口部30Cから露出する固定ネジ58に接続することできる。また、一端部60A及び他端部60Bにおける、ボビン部30Bに巻き回されたアンテナ線60からの引出箇所を、開口部30Cによって明確に把握することができる。これにより、スイッチ装置10の組付時の作業性を一層向上することができる。よって、スイッチ装置10の製造コストをより一層低減することができる。
【0045】
また、基板42の基板固定部42Aが、基板42の外周部から径方向外側へ突出しており、固定孔42B及びランド42Cが基板固定部42Aに形成されている。そして、基板固定部42A及び固定ネジ58が、開口部30Cにおける開口露出部30C1の内部に配置されている。これにより、基板固定部42Aを、ボディ30の内周面よりも径方向外側に配置させた状態で、固定ネジ58による基板42への締結固定作業を行うことができる。よって、基板42のボディ30への組付時における作業性を向上することができる。
【0046】
しかも、ボディ30では、開口露出部30C1の幅寸法が開口部30Cの幅寸法よりも広くなっており、基板固定部42Aが開口露出部30C1に配置されている。これにより、ボディ30の剛性を確保しつつ、固定ネジ58の締付作業時における作業エリアを確保することができる。
【0047】
また、開口部30Cは、前後方向に延在する溝状に形成され、開口部30Cの前端部が、ボディ30の前端部において前側へ開放している。これにより、基板42及びアンテナ線60のボディ30への組付手順として、始めに、基板42をボディ30の前側に配置し、この状態から基板固定部42Aを開口部30C内に前側から挿入しつつ基板42をボディ30内に収容することができる(
図6参照)。すなわち、基板固定部42Aのボディ30への干渉を開口部30Cによって抑制しつつ、基板42をボディ30に収容することができる。そして、基板42のボディ30への収容後に、固定ネジ58によって基板42をボディ30に締結固定する。基板42のボディ30への締結固定後に、アンテナ線60をボビン部30Bに巻き回し、その後に、アンテナ線60の一端部60A及び他端部60Bを、開口露出部30C1内に配置された固定ネジ58に巻き回して半田付けすることできる(
図5参照)。これにより、スイッチ装置10の組付時の作業性を効果的に向上することができる。よって、スイッチ装置10の製造コストを効果的に低減することができる。
【0048】
また、基板42は、一対の固定ネジ58によってボディ30に固定され、一対の固定ネジ58が、ボディ30の周方向において180度離間して配置されている。そして、固定ネジ58が、ボディ30に形成された一対の開口部30Cにそれぞれ配置されている。これにより、固定ネジ58によって、基板42をバランスよく締結固定しつつ、アンテナ線60とコネクタターミナル46とを接続することができる。
【0049】
また、ボディ30は、ケース20に固定されている。ケース20は、ボディ30を径方向外側から覆う外筒20Aと、ボディ30の内部に配置された内筒20Bと、を含んで構成されており、スライダ52が内筒20Bに前後方向にスライド可能に連結されている。これにより、スライダ52をスライド可能に連結する構造をボディ30に設ける必要がなくなる。したがって、ボディ30を簡易な構造にすることができる。換言すると、ボディ30の形状が複雑化することを抑制できる。これにより、ボディ30のコストダウンに一層寄与することができる。
【0050】
また、ボビン部30Bがケース20の外筒20Aと内筒20Bとの間に配置されている。すなわち、アンテナ線60が、外筒20Aと内筒20Bとの間に配置されて、外筒20Aによって径方向外側から覆われている。これにより、例えば、アンテナ線60に対する防水性及び防塵性を向上することができる。したがって、スイッチ装置10に信頼性を向上することができる。
【0051】
また、ボディ30のケース20への組付後では、ケース20の外筒20Aによって固定ネジ58及び基板固定部42Aが径方向外側から覆われている。これにより、開口部30Cによって固定ネジ58をボディ30から露出可能に構成しても、基板42の防水性及び防塵性をケース20によって確保することができる。
【0052】
また、ボディ30のケース20への組付状態では、ボビン部30Bの後端部が外筒20Aの内周面に当接され、ボディ30が内筒20Bの径方向外側に所定の隙間を掛けて配置されて、外筒20A及び内筒20Bによって、ボディ30の径方向の移動が制限されている。これにより、開口部30Cによってボディ30の側壁の一部が切り欠かれても、当該側壁の径方向の変形をケース20により抑制することができる。特に、一対の開口部30Cによって、第1方向に分断されたボディ30の側壁における径方向の変形を効果的に抑制することができる。
【0053】
また、ケース20の内筒20Bの外周部には、第2方向両端部において、規制部20Fがそれぞれ形成されており、規制部20Fが、開口部30C内に嵌め込まれて、ボディ30の周方向においてボディ30と係合している。これにより、開口部30Cによってボディ30の側壁の一部が切り欠かれても、当該側壁の周方向の変形を規制部20Fにより抑制することができる。特に、一対の開口部30Cによって、第1方向に分断されたボディ30の側壁における第1方向内側への変形を効果的に抑制することができる。また、規制部20Fを内筒20Bの外周部に形成することで、ボビン部30Bに巻き回されたアンテナ線60と規制部20Fとの干渉を抑制しつつ、規制部20Fを開口部30C内に嵌め込ませることができる。また、上述のように、ボビン部30Bの後端部が外筒20Aの内周面に当接しているため、第1方向に分断されたボディ30の側壁が、外筒20Aと規制部20Fとによって、第1方向に挟まれるようになる。このため、ケース20をボディ30に組付けることで、一対の開口部30Cが形成されたボディ30の剛性をケース20によって確保することができる。
【0054】
また、ボディ30のケース20への組付状態では、規制部20Fが固定ネジ58の頭部58Aの前側に配置されて、固定ネジ58の前側への移動を規制している。これにより、固定ネジ58の外れを規制部20Fによって抑制できる。したがって、ボディ30の変形を規制する規制部20Fを活用して、基板42の固定状態を良好に維持することができる。
【0055】
なお、本実施形態においては、アンテナ線60の一端部60A及び他端部60Bを固定ネジ58の頭部58Aに固定する手段として「半田付け」を採用しているが、アンテナ線60と固定ネジ58の頭部58Aとを固定する方法はこれに限られない。例えば、「溶接」などの手法によってアンテナ線60と固定ネジ58の頭部58Aとを固定するようにしてもよい。
【0056】
また、本実施形態においては、アンテナ線60の一端部60A及び他端部60Bを固定ネジ58の頭部58Aに巻き回した後、半田付けによって固定するようにしているが、アンテナ線60を固定ネジ58の頭部58Aに接続する方法はこれに限られない。例えば、固定ネジ58の頭部58Aに径方向に貫通する貫通孔を形成し、該貫通孔にアンテナ線60の一端部60A又は他端部60Bを挿通した後、半田付けによって固定するようにしてもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、固定ネジ58がボディ30に螺合されることで、基板42がボディ30に固定されるが、基板42のボディ30への固定方法はこれに限らない。例えば、ボディ30に圧入されるフランジを有する導電性のピンによって基板42をボディ30に固定し、アンテナ線60の一端部60A及び他端部60Bを当該ピンに半田付けしてもよい。この場合には、当該ピンが、本発明の固定部材に対応する。
【符号の説明】
【0058】
10 スイッチ装置
20 ケース
20A 外筒
20B 内筒
20F 規制部
30 ボディ
30B ボビン部
30C 開口部
42 基板
42C ランド(導通接続部)
46 コネクタターミナル(コネクタ端子)
50B スイッチ部
52 スライダ
58 固定ネジ(固定部材)
60 アンテナ線
60A 一端部(端部)
60B 他端部(端部)