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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009421
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】冷媒回路
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/053 20060101AFI20250110BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20250110BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20250110BHJP
   F04D 29/056 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
F25B1/053 J
F25B43/00 B
F25B1/00 304H
F04D29/056 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112419
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 友哉
(72)【発明者】
【氏名】榎島 史修
(72)【発明者】
【氏名】横井 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 徹
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA14
3H130AB27
3H130AB47
3H130AC01
3H130AC11
3H130BA24E
3H130BA56E
3H130DB05X
3H130DD01Z
(57)【要約】
【課題】圧縮機の回転軸を支持する軸受の損傷を抑制できる冷媒回路を提供する。
【解決手段】冷媒回路は、回転軸を回転可能に支持する気体動圧軸受を有し冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する膨張弁と、膨張弁で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、圧縮機に吸入される冷媒が流れる吸入配管と、冷媒の温度の低下に伴い吸入配管に供給される液冷媒の流量を増加させるように液冷媒の流量を調整する液冷媒流量調整部76と、を備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、前記回転軸を回転可能に支持する気体動圧軸受とを有し、冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する膨張弁と、
前記膨張弁で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記圧縮機に吸入される冷媒が流れる吸入配管と、
冷媒の温度の低下に伴い前記吸入配管に供給される液冷媒の流量を増加させるように前記液冷媒の流量を調整する液冷媒流量調整部と、を備える、冷媒回路。
【請求項2】
前記液冷媒とガス冷媒とを分離する気液分離器をさらに備え、
前記液冷媒流量調整部は、前記気液分離器からの前記液冷媒の流出量を調整する、請求項1に記載の冷媒回路。
【請求項3】
前記気液分離器は、前記蒸発器と前記圧縮機との間の冷媒の経路に設けられる、請求項2に記載の冷媒回路。
【請求項4】
前記液冷媒流量調整部は、前記液冷媒の温度変化に従って自律的に位置を変化する変位部材を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷媒回路。
【請求項5】
前記吸入配管を流れる冷媒の温度を検出するセンサをさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の冷媒回路。
【請求項6】
前記液冷媒流量調整部は、弁を含み、
前記センサの検出結果に従って前記弁の開度を制御するコントローラをさらに備える、請求項5に記載の冷媒回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004-44954号公報(特許文献1)には、インペラが直結され駆動源により駆動される圧縮機軸をガス軸受で支持する圧縮機を備え、圧縮機にて加圧されたガス冷媒の一部を圧縮機のガス軸受に導く、冷凍機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-44954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸受の潤滑をガス冷媒で行なう気体軸受を備える圧縮機において、吸入冷媒の温度が低いと、冷媒の密度および粘度が低いために気体軸受の負荷能力が小さくなり、軸を浮上させることができずに軸受が損傷する虞がある。
【0005】
本開示では、圧縮機の回転軸を支持する軸受の損傷を抑制できる、冷媒回路が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、回転軸と回転軸を回転可能に支持する気体動圧軸受とを有し冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する膨張弁と、膨張弁で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、圧縮機に吸入される冷媒が流れる吸入配管と、冷媒の温度の低下に伴い吸入配管に供給される液冷媒の流量を増加させるように液冷媒の流量を調整する液冷媒流量調整部と、を備える、冷媒回路が提案される。
【0007】
この冷媒回路においては、冷媒の温度の低下に伴い、吸入配管に供給される液冷媒の流量を増加させて、圧縮機に吸入される冷媒の乾き度を小さくする。圧縮機に吸入される冷媒が湿って、冷媒の密度および粘度が大きくなるので、圧縮機の回転軸を支持する軸受の負荷能力が上がる。これによって回転軸が浮上しやすくなるので、軸受の損傷を抑制することができる。
【0008】
上記の冷媒回路は、液冷媒とガス冷媒とを分離する気液分離器をさらに備え、液冷媒流量調整部は、気液分離器からの液冷媒の流出量を調整してもよい。気液分離器は、蒸発器と圧縮機との間の冷媒の経路に設けられてもよい。
【0009】
上記の冷媒回路において、液冷媒流量調整部は、液冷媒の温度変化に従って自律的に位置を変化する変位部材を含んでもよい。
【0010】
上記の冷媒回路は、吸入配管を流れる冷媒の温度を検出するセンサをさらに備えてもよい。液冷媒流量調整部は、弁を含んでもよい。冷媒回路は、センサの検出結果に従って弁の開度を制御するコントローラをさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示に従った冷媒回路によると、圧縮機の回転軸を支持する軸受の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】冷媒回路を構成する圧縮機の側断面図である。
図2】冷媒回路の概略構成を示す模式図である。
図3】アキュムレータの内部構成を示す断面模式図である。
図4】液冷媒流量調整部の一例の概略構成を示す図である。
図5】伸縮部の高さが低くなった状態を示す図である。
図6】第2実施形態の液冷媒流量調整部の概略構成を示す図である。
図7】バイメタルの反り方向が変化した状態を示す図である。
図8】第3実施形態の冷媒回路の概略構成を示す模式図である。
図9】弁の開度を制御する処理の流れを示すフローチャートである。
図10】第4実施形態の弁の概略構成を示す図である。
図11】第5実施形態の弁の概略構成を示す図である。
図12】第5実施形態の弁が液戻し穴の開口面積を増大させた状態の図である。
図13】第6実施形態の弁の概略構成を示す図である。
図14】第6実施形態の弁が液戻し穴の開口面積を増大させた状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。実施形態から任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、冷媒回路を構成する圧縮機1の側断面図である。図1に示される圧縮機1が圧縮する被圧縮流体は、冷媒回路を循環する冷媒である。
【0015】
図1に示すように、圧縮機1は、筒状のハウジング10を備えている。ハウジング10は、金属材料製であり、例えば、アルミニウム製である。ハウジング10は、リアハウジング11、モータハウジング12、第1コンプレッサハウジング13、第2コンプレッサハウジング14、仕切壁15、第1中間ハウジング16、および第2中間ハウジング17を有している。
【0016】
モータハウジング12は、板状の端壁部12aと、端壁部12aの外周部から筒状に延びる周壁部12bと、を有する有底筒状である。第2中間ハウジング17は、モータハウジング12の開口を覆うようにモータハウジング12に連結されている。モータハウジング12の端壁部12a、周壁部12b、および第2中間ハウジング17によって、モータ室18が区画されている。モータハウジング12には、冷媒を吸入する図示しない吸入孔が形成されている。吸入孔は、モータ室18に連通している。したがって、モータ室18には、吸入孔を介して冷媒が吸入される。
【0017】
第2中間ハウジング17の中央部には、円孔状のシャフト挿通孔17aが形成されている。第2中間ハウジング17は、円筒状の第1軸受保持部19を内周面に有している。第1軸受保持部19の内側は、シャフト挿通孔17aに連通している。第1軸受保持部19には、第1ラジアル軸受20が保持されている。
【0018】
モータハウジング12の端壁部12aは、円筒状の第2軸受保持部21を有している。第2軸受保持部21は、端壁部12aの中央部に形成されている。第2軸受保持部21には、第2ラジアル軸受22が保持されている。
【0019】
第2中間ハウジング17におけるモータ室18とは反対側の外面には、第1室形成凹部17bが形成されている。第1室形成凹部17bは、シャフト挿通孔17aに連通している。第2中間ハウジング17は、連通孔23を複数有している。各連通孔23は、第2中間ハウジング17の外周寄りに位置している。
【0020】
第1中間ハウジング16は、第1室形成凹部17bの開口を覆うように第2中間ハウジング17に連結されている。第1中間ハウジング16と第2中間ハウジング17の第1室形成凹部17bとによって、スラスト軸受収容室25が区画されている。各連通孔23は、モータ室18とスラスト軸受収容室25とを連通している。第1中間ハウジング16の中央部には、円孔状のシャフト挿通孔16aが形成されている。
【0021】
第1中間ハウジング16は、連通孔16bを複数有している。各連通孔16bは、第1中間ハウジング16の外周寄りに位置している。第1中間ハウジング16におけるスラスト軸受収容室25とは反対側の外面には、第2室形成凹部16cが形成されている。第2室形成凹部16cは、シャフト挿通孔16aに連通している。各連通孔16bは、スラスト軸受収容室25と第2室形成凹部16cの内部空間とを連通している。
【0022】
第1コンプレッサハウジング13は、円孔状の第1吸入口24を中央部に有する筒状である。第1コンプレッサハウジング13は、第2室形成凹部16cの開口を覆うように第1中間ハウジング16に連結されている。第1吸入口24は、第2室形成凹部16cに連通している。
【0023】
仕切壁15は、第1コンプレッサハウジング13における第1中間ハウジング16とは反対側の端面に連結されている。仕切壁15は、板状である。仕切壁15の中央部には、仕切壁15を厚み方向に貫通する貫通孔が形成されている。この貫通孔の中心軸線は、第1吸入口24の中心軸線に一致している。
【0024】
仕切壁15と第1コンプレッサハウジング13との間には、第1吸入口24に連通し第1インペラ51を収容する第1インペラ室と、第1インペラ室の径方向外側で周方向に延びる第1吐出室29と、第1インペラ室と第1吐出室29とを連通する第1ディフューザ流路30と、が形成されている。
【0025】
第2コンプレッサハウジング14は、仕切壁15における第1コンプレッサハウジング13とは反対側の端面に連結されている。第1コンプレッサハウジング13、仕切壁15、第2コンプレッサハウジング14に亘って、中間圧室31が形成されている。中間圧室31は、図示しない通路を介して第1吐出室29に連通している。第2コンプレッサハウジング14には、中間圧室31に連通する円孔状の第2吸入口32が形成されている。第1吐出室29と第2吸入口32とは、中間圧室31を介して連通している。
【0026】
仕切壁15と第2コンプレッサハウジング14との間には、第2吸入口32に連通し第2インペラ52を収容する第2インペラ室と、第2インペラ室の径方向外側で周方向に延びる第2吐出室34と、第2インペラ室と第2吐出室34とを連通する第2ディフューザ流路35と、が形成されている。
【0027】
リアハウジング11は、第2コンプレッサハウジング14に連結されている。リアハウジング11は、中間圧室31を区画している。リアハウジング11は、板状である。
【0028】
圧縮機1は、回転軸40を備えている。回転軸40は、ハウジング10内に収容されている。回転軸40は、第2軸受保持部21の内側からモータ室18、第1軸受保持部19の内側、シャフト挿通孔17a、スラスト軸受収容室25、シャフト挿通孔16a、第1吸入口24、第1インペラ室、第2インペラ室、および第2吸入口32の順に通過しながら、ハウジング10の軸方向に延びている。回転軸40の一方の端部である第1端部40aは、第2コンプレッサハウジング14内に配置されている。回転軸40の他方の端部である第2端部40bは、モータハウジング12の端壁部12a内に配置されている。
【0029】
回転軸40の軸線Lは、第1軸受保持部19、第2軸受保持部21、シャフト挿通孔17a、シャフト挿通孔16a、第1吸入口24、および第2吸入口32それぞれの中心軸線に一致している。以下の説明では、回転軸40の軸線Lが延びる方向をスラスト方向と記載し、回転軸40の径方向をラジアル方向と記載することもある。
【0030】
第1ラジアル軸受20および第2ラジアル軸受22は、回転軸40をラジアル方向で回転可能に支持する。ラジアル軸受20,22は、回転軸40の回転に伴って発生する気体(ガス冷媒)の動圧によって回転軸40を支持する気体動圧軸受である。ラジアル軸受20,22は、回転軸40のラジアル荷重を非接触で支持する。
【0031】
圧縮機1は、回転軸40外周面から径方向外側へ突出する円板状の支持プレート65を備えている。支持プレート65は、回転軸40と一体的に回転する。支持プレート65は、スラスト軸受収容室25に配置されている。
【0032】
第1中間ハウジング16と支持プレート65との間、および第2中間ハウジング17と支持プレート65との間には、スラスト軸受66がそれぞれ配置されている。両スラスト軸受66は、回転軸40をスラスト方向で回転可能に支持する。両スラスト軸受66は、回転軸40の回転に伴って発生する気体(ガス冷媒)の動圧によって回転軸40を支持する気体動圧軸受である。両スラスト軸受66は、回転軸40のスラスト荷重を非接触で支持する。
【0033】
圧縮機1は、電動モータ41を備えている。電動モータ41は、モータ室18に収容されている。電動モータ41は、回転軸40を回転駆動する駆動源の一例である。電動モータ41は、ステータ42およびロータ43を備えている。
【0034】
ステータ42は、円筒状のステータコア44と、ステータコア44に巻回されるコイル45と、を有している。ステータコア44は、モータハウジング12の周壁部12bの内周面に固定されている。
【0035】
ロータ43は、ステータコア44の径方向内側に配置されている。ロータ43は、回転軸40に固定されたロータコア43aと、ロータコア43aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。図示しないインバータ装置によって制御された電力がコイル45に供給されることにより、電動モータ41のロータ43が回転する。回転軸40は、ロータ43と一体的に回転する。
【0036】
第1インペラ51および第2インペラ52は、回転軸40に連結されており、回転軸40と一体的に回転する。電動モータ41、第1インペラ51および第2インペラ52は、回転軸40の軸方向において、第2端部40bから第1端部40aへ向かって、この順で配置されている。第1インペラ51は、例えば、アルミニウム製である。第2インペラ52は、例えば、樹脂製である。
【0037】
第1インペラ51は、第1吸入口24側に位置する先端面から背面に向かうにつれて外周面が拡径する、略円錐台状の形状を有している。第1インペラ51の背面は、回転軸40の軸方向で仕切壁15に対向する。第1インペラ51は、外周面に複数の翼を有している。第2インペラ52は、第2吸入口32側に位置する先端面から背面に向かうにつれて外周面が拡径する、略円錐台状の形状を有している。第2インペラ52の背面は、回転軸40の軸方向で仕切壁15に対向する。第2インペラ52は、外周面に複数の翼を有している。
【0038】
電動モータ41は、回転軸40、第1インペラ51および第2インペラ52を含む回転体を回転駆動し、回転体を軸線Lまわりに一体的に回転させる。第1インペラ51は、回転することによって、冷媒を圧縮する。第2インペラ52は、回転することによって、第1インペラ51によって圧縮された後の冷媒を圧縮する。冷媒の流れ方向における上流側に第1インペラ51が配置され、下流側に第2インペラ52が配置されている。
【0039】
第1インペラ51および第2インペラ52は、仕切壁15を介して、第1インペラ51の背面と第2インペラ52の背面とが互いに向かい合うように、回転軸40に設けられている。第1インペラ51と第2インペラ52との間に、中空円筒状のスペーサ54が配置されている。スペーサ54は、第1インペラ51の背面に対向する第1端と、第2インペラ52の背面に対向する第2端とを有している。
【0040】
回転軸40の第1端部40aにおける回転軸40の外周面に、中空筒状の嵌合部材55が取り付けられている。嵌合部材55は、たとえばネジ作用で回転軸40に取り付けられている。嵌合部材55は、第2インペラ52の先端面に当接している。嵌合部材55は、第2インペラ52を回転軸40の軸方向に支持している。
【0041】
図2は、冷媒回路の概略構成を示す模式図である。本開示の冷媒回路は、たとえば、電池の温度調整のために用いられる。冷媒回路内には、冷媒が充填されている。冷媒は、冷媒回路内を循環する。冷媒回路は、図1を参照して説明した圧縮機1と、凝縮器2と、膨張弁3と、蒸発器4と、アキュムレータ7と、これら各機器を接続する冷媒配管とを備えている。吸入配管5は、圧縮機1に吸入される冷媒が流れる配管であり、上記の冷媒配管の一部を構成している。
【0042】
圧縮機1は、低温低圧のガス冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒を吐出する。凝縮器2は、圧縮機1で圧縮されたガス冷媒を凝縮する。膨張弁3は、凝縮器2で凝縮されて液化した高温高圧の液冷媒を減圧して低温低圧の気液二相冷媒にする。蒸発器4には、気液二相冷媒が流れる。したがって、蒸発器4には、減圧された液冷媒が流れる。蒸発器4は、膨張弁3で減圧された液冷媒を蒸発させる。
【0043】
アキュムレータ7は、蒸発器4と圧縮機1との間の冷媒の経路に設けられている。アキュムレータ7は、蒸発器4の出口側(冷媒の流れ方向における下流側)に設けられ、圧縮機1の吸入側(冷媒の流れ方向における上流側)に設けられている。アキュムレータ7は、アキュムレータ7に供給された冷媒のうち、蒸発器4で蒸発しなかった液冷媒と、ガス冷媒とを分離する。アキュムレータ7は、「気液分離器」としての機能を有している。アキュムレータ7は、液冷媒を内部に貯留する。アキュムレータ7は、圧縮機1への液冷媒の流入を阻止して、液圧縮を防止して圧縮機1を保護する役割を有している。
【0044】
図3は、アキュムレータ7の内部構成を示す断面模式図である。アキュムレータ7は、本体を構成するケース71を有している。ケース71の内部空間の下部に、液冷媒LRが貯留されている。ケース71の内部空間の上部に、ガス冷媒GRが収容されている。
【0045】
流入管72を経由して、冷媒がアキュムレータ7のケース71内へ流入する。流入管72は、ケース71の天井面を貫通して、ケース71に接続されている。ケース71内における流入管72の開口端は、ケース71の上部であってガス冷媒GRがある位置に配置されている。
【0046】
流出管73は、ケース71の天井面を貫通して、ケース71に接続されている。ケース71内における流出管73の開口端は、ケース71の上部であってガス冷媒GRがある位置に配置されている。流出管73の開口端は、図3に示されるように流入管72の開口端よりも下方に配置されていてもよく、流入管72の開口端と同じ高さ位置またはより上方に配置されていてもよい。流出管73は、図2に示される吸入配管5に連通している。流出管73を経由して、ガス冷媒GRがアキュムレータ7のケース71から流出する。ケース71から流出したガス冷媒GRは、吸入配管5を経由して、圧縮機1に吸入される。
【0047】
ケース71の上部であってガス冷媒GRがある位置に、バッフル部材74が配置されている。バッフル部材74は、流入管72の開口端と流出管73の開口端との間に介在していてもよい。バッフル部材74は、流入管72からケース71内へ流入する冷媒の、液冷媒LRとガス冷媒GRとへの分離を促進している。バッフル部材74は、流出管73の開口端から液冷媒が流出管73内に流れ込むことを抑制している。バッフル部材74は、ケース71に取り付けられていてもよく、この場合、バッフル部材74は流出管73を支持する機能を有していてもよい。
【0048】
流出管73は、ケース71内において、U字管形状を有している。U字の曲がり部は、流出管73の最下部を形成しており、ケース71の下部の液冷媒LR中に配置されている。流出管73には、曲がり部に、液戻し穴75が形成されている。液戻し穴75は、液冷媒LRに常時浸かる位置に配置されている。液戻し穴75は、流出管73の曲がり部の側面に形成されてもよい。液戻し穴75は、流出管73の外面から流出管73内の管路に連通するまで延びている。アキュムレータ7内の液冷媒LRは、液戻し穴75を通って流出管73内に入り、流出管73の開口端から流出管73内に流入するガス冷媒GRとともに、圧縮機1へ向かって流れる。
【0049】
冷媒回路は、液冷媒流量調整部76を備えている。図4は、液冷媒流量調整部76の一例の概略構成を示す図である。液冷媒流量調整部76は、アキュムレータ7の内部に配置されている。液冷媒流量調整部76は、アキュムレータ7のケース71内の下部に貯留されている液冷媒LRがアキュムレータ7から流出する流量を調整可能である。液冷媒流量調整部76は、液冷媒LRが流出管73へ流入する流量を調整可能である。液冷媒流量調整部76は、流出管73を経由して吸入配管5に供給される液冷媒LRの流量を調整可能である。
【0050】
本実施形態の液冷媒流量調整部76は、伸縮部77と、弁体78とを有している。伸縮部77は、液冷媒LR中に配置されている。伸縮部77は、液冷媒LRに常時浸かる位置に配置されている。伸縮部77は、ケース71の内面に取り付けられている。伸縮部77はたとえば、ケース71の側壁面または床面に取り付けられてもよい。図4に示される高さH1は、伸縮部77がケース71から突出する高さである。伸縮部77は、ケース71に取り付けられている基端と、基端とは反対側の端部である先端とを有している。高さH1は、ケース71の内面から伸縮部77の先端までの長さである。伸縮部77は、他の部材を介在させてケース71の内面に取り付けられていてもよく、ケース71以外の部材に取り付けられていてもよい。
【0051】
弁体78は、円錐状の形状を有している。弁体78は、伸縮部77の先端に取り付けられている。図4に示される弁体78は、底面が伸縮部77の先端に取り付けられており、先端部分が液戻し穴75の内部に挿通されている。図4に示される状態で、弁体78は、液戻し穴75の開口面積を減少させている。そのため、液戻し穴75から流出管73内に入る液冷媒LRの流量が小さくなっている。
【0052】
伸縮部77は、液冷媒LRの温度変化に従って伸縮して、図4,5中の上下方向における長さを変化させる。伸縮部77は、たとえば、熱膨張率の高い材料で形成されている中実体であってもよく、この場合伸縮部77は、表面積を増加させるフィンなどの、液冷媒LRと伸縮部77との熱伝達を促進する伝熱部を外周面に有してもよい。伸縮部77は、液冷媒LRの温度をピストンの移動量に変換するサーモエレメントであってもよい。サーモエレメントは、内蔵したワックスの熱膨張によって高さを変化させてもよい。伸縮部77は、蛇腹構造を有する薄肉中空筒形状を有し内部が真空の、内部真空ベローズであってもよい。
【0053】
図5は、伸縮部77の高さが低くなった状態を示す図である。図5においては、図4と比較して液冷媒LRの温度が低くなっている。伸縮部77は、液冷媒LRの温度の低下に伴って縮んでいる。図5に示される伸縮部77は、高さH2を有している。伸縮部77の高さH2は、図4に示される高さH1よりも小さい。伸縮部77の高さが減少しているので、伸縮部77の先端に取り付けられている弁体78の位置が変化している。弁体78は、液冷媒LRの温度変化に従って自律的に位置を変化する「変位部材」の一例に対応する。
【0054】
図5においては弁体78は、ケース71の内面に接近するように移動している。弁体78は、その全体が液戻し穴75の外部に配置されている。図4と比較して、液戻し穴75の開口面積が増大している。液冷媒LRの流れが弁体78によって妨げられることがなくなり、液戻し穴75から流出管73内に入る液冷媒LRの流量が増加している。アキュムレータ7から流出する液冷媒LRの流量が増加している。
【0055】
より多くの液冷媒LRが流出管73内に流入することにより、吸入配管5に供給される液冷媒LRの流量が増加する。そのため、圧縮機1に吸入される冷媒の乾き度が小さくなる。圧縮機1に吸入される冷媒が湿って、冷媒の密度および粘度が大きくなる。
【0056】
図1を参照して説明した圧縮機1のラジアル軸受20,22およびスラスト軸受66は、ハウジング10内に吸入される冷媒の動圧で回転軸40を支持する、気体動圧軸受である。冷媒の密度および粘度が大きくなることで、ラジアル軸受20,22およびスラスト軸受66の負荷能力が上がる。これによって回転軸40が浮上しやすくなるので、ラジアル軸受20,22およびスラスト軸受66の損傷を抑制することができる。
【0057】
液冷媒流量調整部76が、電気部品を含まず温度自律式に液冷媒LRの流量を調整する構成であるので、電気部品の故障によって液冷媒LRの流量調整機能が損なわれることがなく、信頼性を向上することができる。
【0058】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態の液冷媒流量調整部76の概略構成を示す図である。第2実施形態の液冷媒流量調整部76は、第1実施形態で説明した伸縮部77に替えて、バイメタル79を有している。バイメタル79は、熱膨張率の異なる2種類の金属板を接合した金属接合板であり、温度変化に従って反り変形する。弁体78は、円錐状の形状を有しており、バイメタル79に取り付けられている。バイメタル79は、液冷媒LR中に配置されている。
【0059】
図6に示されるバイメタル79は、上向きに凸に反っている。このとき、弁体78の先端部分が液戻し穴75の内部に挿通されており、弁体78が液戻し穴75の開口面積を減少させているので、液戻し穴75から流出管73内に入る液冷媒LRの流量が小さくなっている。
【0060】
図7は、バイメタル79の反り方向が変化した状態を示す図である。図7においては、図6と比較して液冷媒LRの温度が低くなっている。バイメタル79は、液冷媒LRの温度の低下に伴って、反り量を変化させている。図7に示されるバイメタル79は、反り方向を変化させており、下向きに凸に反っている。
【0061】
バイメタル79の変形によって、弁体78の位置が変化している。弁体78は、液冷媒LRの温度変化に伴って自律的に位置を変化している。弁体78は、その全体が液戻し穴75の外部に配置されている。図6と比較して、液戻し穴75の開口面積が増大している。これにより、液戻し穴75から流出管73内に入る液冷媒LRの流量が増加している。
【0062】
より多くの液冷媒LRが流出管73内に流入し、吸入配管5に供給される液冷媒LRの流量が増加するため、圧縮機1に吸入される冷媒の乾き度が小さくなる。圧縮機1に吸入される冷媒が湿って、冷媒の密度および粘度が大きくなる。冷媒の密度および粘度が大きくなることで、圧縮機1のラジアル軸受20,22およびスラスト軸受66の負荷能力が上がる。これによって圧縮機1の回転軸40が浮上しやすくなるので、ラジアル軸受20,22およびスラスト軸受66の損傷を抑制することができる。
【0063】
[第3実施形態]
図8は、第3実施形態の冷媒回路の概略構成を示す模式図である。第3実施形態の冷媒回路は、コントローラ80と、液戻し配管81と、温度センサ82と、弁83とをさらに備えている。
【0064】
コントローラ80は、CPU(Central Processing Unit)などを含んで構成されており、冷媒回路を制御するコンピュータプログラムを実行する。
【0065】
液戻し配管81は、アキュムレータ7に連結されている一端と、吸入配管5に連結されている他端とを有している。液戻し配管81の一端は、たとえばアキュムレータ7の底面に連結されている。アキュムレータ7のケース71内の下部に貯留されている液冷媒LRが、液戻し配管81を経由して、吸入配管5に供給される構成とされている。
【0066】
温度センサ82は、吸入配管5に設けられており、吸入配管5を流れる冷媒の温度を検出する。温度センサ82は、吸入配管5に液戻し配管81が合流する合流部よりも冷媒の流れ方向の下流側に配置されている。温度センサ82は、吸入配管5と液戻し配管81との合流部よりも圧縮機1寄りの位置に配置されている。温度センサ82は、流出管73に流入してアキュムレータ7から流出する冷媒と、液戻し配管81を流れる液冷媒LRと、が合流した後の冷媒の温度を検出する。温度センサ82は、圧縮機1に吸入される冷媒の温度を検出する。
【0067】
温度センサ82は、冷媒の温度の検出結果を示す検出信号SN1を出力する。検出信号SN1は、コントローラ80に入力される。
【0068】
弁83は、液戻し配管81に設けられている。コントローラ80は、弁83に制御信号SN2を送信する。コントローラ80は、温度センサ82の検出結果に従って弁83の開度を制御する。弁83の開度が調整されることにより、液戻し配管81を流れる液冷媒LRの流量が調整される。弁83は、液戻し配管81を経由して吸入配管5に供給される液冷媒LRの流量を調整可能である。弁83は、液冷媒流量調整部76としての機能を有している。第3実施形態の液冷媒流量調整部76は、外部制御によって、吸入配管5に供給される液冷媒LRの流量を調節可能である。
【0069】
弁83は、弁開度を全開と全閉との二段階に切り換え可能なON/OFF弁であってもよい。弁83はたとえば、電磁弁であってもよい。この場合、図3に示されるように、アキュムレータ7の流出管73には、液冷媒LRに常時浸かる位置に液戻し穴75が形成されて、液戻し穴75から一定量の液冷媒LRが流出管73に流入する構成としてもよい。弁83を全閉にすることにより、液戻し穴75を経由する液冷媒LRの流れのみが形成される状態となる。弁83を全開にすることにより、液戻し穴75を経由する液冷媒LRの流れと液戻し配管81を経由する液冷媒LRの流れとの2つの液冷媒LRの流れが形成される状態となる。弁83の開閉によって、吸入配管5に供給される液冷媒LRの流量を二段階に調整可能である。
【0070】
弁83は、弁開度を連続的に変化させることが可能な制御弁であってもよい。弁83は、電気式、空気式、油圧式などのアクチュエータと、アクチュエータで駆動される弁体とを有してもよい。弁83の開度を調整することにより、液戻し配管81を経由して吸入配管5に供給される液冷媒LRの流量を調整可能である。この場合、アキュムレータ7の流出管73には、液戻し穴75が形成されていてもよく、液戻し穴75が形成されていなくてもよい。
【0071】
図9は、弁83の開度を制御する処理の流れを示すフローチャートである。図9に示されるように、ステップS1において、温度センサ82が、吸入配管5を流れる冷媒の温度を検出する。温度センサ82からコントローラ80へ、冷媒の温度の検出結果を示す検出信号SN1が入力される。
【0072】
ステップS2において、コントローラ80は、冷媒の温度が低温かどうかを判断する。コントローラ80は、記憶装置に記憶されている温度の閾値を読み出す。コントローラ80は、ステップS1で検出された冷媒の温度と、閾値とを比較する。コントローラ80は、検出された冷媒の温度が、閾値よりも低いか否かを判断する。
【0073】
冷媒の温度が低温である(ステップS2の判断においてYES)と判断されると、ステップS3において、コントローラ80は、弁83に対して、弁83の開度を低温用開度に設定することを指令する制御信号SN2を送信する。制御信号SN2を受信した弁83が、液冷媒LRの温度の低下に伴って開度を増大させることにより、アキュムレータ7内の液冷媒LRが液戻し配管81に流入する量が増加する。液戻し配管81を経由して、吸入配管5に供給される液冷媒LRの流量が増加する。そのため、圧縮機1に吸入される冷媒の乾き度が小さくなる。
【0074】
圧縮機1に吸入される冷媒が湿って、冷媒の密度および粘度が大きくなる。冷媒の密度および粘度が大きくなることで、圧縮機1のラジアル軸受20,22およびスラスト軸受66の負荷能力が上がる。これによって圧縮機1の回転軸40が浮上しやすくなるので、ラジアル軸受20,22およびスラスト軸受66の損傷を抑制することができる。
【0075】
液戻し配管81が、圧縮機1ではなく吸入配管5に連結されており、液戻し配管81を経由して流れる液冷媒LRは、圧縮機1ではなく吸入配管5に戻される。これにより、圧縮機1の構造を簡素化でき、圧縮機1を小型化することができる。
【0076】
吸入配管5を流れる冷媒の温度が低温でない(ステップS2の判断においてNO)と判断されると、ステップS4に進み、コントローラ80は、冷媒の温度が高温かどうかを判断する。コントローラ80は、記憶装置に記憶されている温度の閾値を読み出す。コントローラ80は、ステップS1で検出された冷媒の温度と、閾値とを比較する。コントローラ80は、検出された冷媒の温度が、閾値よりも高いか否かを判断する。ステップS4の判断に用いられる温度の閾値は、ステップS2の判断に用いられる温度の閾値よりも、高い温度であってもよい。
【0077】
冷媒の温度が高温である(ステップS4の判断においてYES)と判断されると、ステップS5において、コントローラ80は、弁83に対して、弁83の開度を高温用開度に設定することを指令する制御信号SN2を送信する。制御信号SN2を受信した弁83が、液冷媒LRの温度の上昇に伴って開度を減少させることにより、アキュムレータ7内の液冷媒LRが液戻し配管81に流入する量が減少する。液戻し配管81を経由して、吸入配管5に供給される液冷媒LRの流量が減少する。
【0078】
冷媒の温度が高い状態であると、圧縮機1のラジアル軸受20,22およびスラスト軸受66は十分な負荷能力を有しているので、冷媒の密度および粘度を上げる処理は必要でない。このとき、吸入配管5に供給される液冷媒LRを減少させることで、冷媒回路の効率を向上させることができる。
【0079】
ステップS4の判断においてNOと判断され、冷媒の温度がステップS2の判断における閾値とステップS4の判断における閾値との間にある場合には、弁83の開度を変更する処理は行なわれず、そのまま処理を終了する(図9の「終了」)。
【0080】
[第4実施形態]
図10は、第4実施形態の弁83の概略構成を示す図である。第3実施形態では、液戻し配管81を流れる液冷媒LRの流量を増減させる例について説明した。外部制御によって吸入配管5に供給される液冷媒LRの流量を調節するためには、必ずしも液戻し配管81が設けられなくてもよい。
【0081】
図10に示される流出管73には、液戻し穴75が形成されている。弁83は、弁体84と、アクチュエータ85とを有している。弁体84は、アキュムレータ7のケース71内に配置されている。弁体84は、ケース71の下部の液冷媒LR中に配置されている。弁体84は、液冷媒LRに常時浸かる位置に配置されている。図10に示されるように、弁体84は、ニードル状の形状を有してもよい。
【0082】
アクチュエータ85は、弁体84を駆動する駆動力を発生する。アクチュエータ85は、アキュムレータ7のケース71内に配置されてもよく、ケース71外に配置されてもよい。アクチュエータ85の発生する駆動力を弁体84に伝達する動力伝達部材が、ケース71を貫通して配置されてもよい。
【0083】
コントローラ80は、温度センサ82によって検出された、吸入配管5を流れる冷媒の温度に従って、弁83の開度を制御する。アクチュエータ85は、コントローラ80から送信された弁83の開度を制御する制御信号SN2に従って、弁体84を駆動する。弁体84が図10中の上方向に移動することにより、液戻し穴75の開口面積が減少して、液戻し穴75を通過して流出管73に入る液冷媒LRの流量が減少する。弁体84が図10中の下方向に移動することにより、液戻し穴75の開口面積が増大して、液戻し穴75を通過して流出管73に入る液冷媒LRの流量が増加する。
【0084】
図9を参照して説明した処理と同様に、コントローラ80は、温度センサ82により検出された吸入配管5を流れる冷媒の温度の低下に伴って、弁83の開度を増大させる。具体的には、コントローラ80は、アクチュエータ85を駆動させて、弁体84が液戻し穴75の外部に向かうように、弁体84を移動させる。弁83が開度を増大させることにより、液戻し穴75から流出管73に入る液冷媒LRの流量が増加する。
【0085】
より多くの液冷媒LRが流出管73内に流入することにより、吸入配管5に供給される液冷媒LRの流量が増加する。そのため、圧縮機1に吸入される冷媒の乾き度が小さくなる。圧縮機1に吸入される冷媒が湿って、冷媒の密度および粘度が大きくなる。冷媒の密度および粘度が大きくなることで、圧縮機1のラジアル軸受20,22およびスラスト軸受66の負荷能力が上がる。これによって圧縮機1の回転軸40が浮上しやすくなるので、ラジアル軸受20,22およびスラスト軸受66の損傷を抑制することができる。
【0086】
[第5実施形態]
図11は、第5実施形態の弁83の概略構成を示す図である。第4実施形態と同様に、弁83は、弁体84と、アクチュエータ85とを有している。弁体84の形状は、第4実施形態で説明したニードル状に限られない。図11に示されるように、弁体84は、平板状の形状を有し、シャッタ状に液戻し穴75を開閉してもよい。
【0087】
図12は、第5実施形態の弁83が液戻し穴75の開口面積を増大させた状態の図である。アクチュエータ85は、弁体84を、図11,12中の左右方向に移動させる。図11においては、弁体84の一部が、液戻し穴75の一部を下方から覆っている。弁体84は、液戻し穴75の開口面積を減少させている。そのため、液戻し穴75から流出管73内に入る液冷媒LRの流量が小さくなっている。
【0088】
図12においては、弁体84は、図中の左方向に移動している。弁体84は、液戻し穴75を覆わない位置に配置されている。図11と比較して、液戻し穴75の開口面積が増大している。これにより、液戻し穴75から流出管73内に入る液冷媒LRの流量が増加している。アキュムレータ7から流出する液冷媒LRの流量が増加している。
【0089】
図9を参照して説明した処理と同様に、コントローラ80は、温度センサ82により検出された吸入配管5を流れる冷媒の温度の低下に伴って、弁83の開度を増大させる。具体的には、コントローラ80は、アクチュエータ85を駆動させて、弁体84が液戻し穴75を覆わない図12に示される位置に、弁体84を移動させる。弁83が開度を増大させることにより、液戻し穴75から流出管73に入る液冷媒LRの流量が増加する。
【0090】
より多くの液冷媒LRが流出管73内に流入することにより、吸入配管5に供給される液冷媒LRの流量が増加する。そのため、圧縮機1に吸入される冷媒の乾き度が小さくなる。圧縮機1に吸入される冷媒が湿って、冷媒の密度および粘度が大きくなる。冷媒の密度および粘度が大きくなることで、圧縮機1のラジアル軸受20,22およびスラスト軸受66の負荷能力が上がる。これによって圧縮機1の回転軸40が浮上しやすくなるので、ラジアル軸受20,22およびスラスト軸受66の損傷を抑制することができる。
【0091】
[第6実施形態]
図13は、第6実施形態の弁83の概略構成を示す図である。流出管73に形成される液戻し穴75は、1個に限られず、複数個であってもよい。弁83は、液戻し穴75の個数と同数の、弁体84とアクチュエータ85との組を有してもよい。図13には、3個の液戻し穴75が流出管73に形成されて、3組の弁体84とアクチュエータ85とが設けられる例が示されている。図13および後述する図14に示される弁83は、弁体84が回転軸を中心として回転することにより、液戻し穴75を蓋のように開閉する構成とされている。
【0092】
図13では、図中の右側の液戻し穴75が開状態であり、図中の左側2つの液戻し穴75が閉状態である。図中の右側の液戻し穴75を通過して、アキュムレータ7のケース71内の液冷媒LRが流出管73に入る。図中の左側2つの液戻し穴75からは、液冷媒LRは流出管73に流入しない。
【0093】
図14は、第6実施形態の弁83が液戻し穴75の開口面積を増大させた状態の図である。図14では、図示される3つの液戻し穴75が全て開状態であり、3つの液戻し穴75を通過して、アキュムレータ7のケース71内の液冷媒LRが流出管73に入る。液戻し穴75の開口面積が増大しているので、液戻し穴75から流出管73に入る液冷媒LRの流量が増加している。アキュムレータ7から流出する液冷媒LRの流量が増加している。
【0094】
図9を参照して説明した処理と同様に、コントローラ80は、温度センサ82により検出された吸入配管5を流れる冷媒の温度の低下に伴って、弁83の開度を増大させる。具体的には、コントローラ80は、アクチュエータ85を駆動させて、弁体84が液戻し穴75を覆わない図14に示される位置に、弁体84を移動させる。弁83が開度を増大させることにより、液戻し穴75から流出管73に入る液冷媒LRの流量が増加する。
【0095】
より多くの液冷媒LRが流出管73内に流入することにより、吸入配管5に供給される液冷媒LRの流量が増加する。そのため、圧縮機1に吸入される冷媒の乾き度が小さくなる。圧縮機1に吸入される冷媒が湿って、冷媒の密度および粘度が大きくなる。冷媒の密度および粘度が大きくなることで、圧縮機1のラジアル軸受20,22およびスラスト軸受66の負荷能力が上がる。これによって圧縮機1の回転軸40が浮上しやすくなるので、ラジアル軸受20,22およびスラスト軸受66の損傷を抑制することができる。
【0096】
流出管73に液戻し穴75が複数形成される場合に、液戻し穴75の開口面積を調整するために、第4実施形態で説明したニードル状の弁体84または第5実施形態で説明したシャッタ状に開閉する弁体84を用いてもよく、ニードル状の弁体84とシャッタ状に開閉する弁体84と蓋のように開閉する弁体84とを適宜組み合わせてもよいことは勿論である。
【0097】
これまでの実施形態の説明では、アキュムレータ7のケース71内に貯留される液冷媒LRを吸入配管5に供給する例について説明した。液冷媒LRの取り出し元は、アキュムレータ7に限られない。たとえば、蒸発器4の液溜まり部から液冷媒LRを抜き出して吸入配管5に供給してもよい。凝縮器2で凝縮された後の冷媒の過冷却液を、吸入配管5に供給してもよい。膨張弁3で膨張した後の冷媒の湿り蒸気を気液分離して、液冷媒LRを吸入配管5に供給してもよい。
【0098】
[付記]
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
【0099】
(付記1)
回転軸と、前記回転軸を回転可能に支持する気体動圧軸受とを有し、冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮された冷媒を減圧する膨張弁と、
前記膨張弁で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記圧縮機に吸入される冷媒が流れる吸入配管と、
冷媒の温度の低下に伴い前記吸入配管に供給される液冷媒の流量を増加させるように前記液冷媒の流量を調整する液冷媒流量調整部と、を備える、冷媒回路。
【0100】
(付記2)
前記液冷媒とガス冷媒とを分離する気液分離器をさらに備え、
前記液冷媒流量調整部は、前記気液分離器からの前記液冷媒の流出量を調整する、付記1に記載の冷媒回路。
【0101】
(付記3)
前記気液分離器は、前記蒸発器と前記圧縮機との間の冷媒の経路に設けられる、付記2に記載の冷媒回路。
【0102】
(付記4)
前記液冷媒流量調整部は、前記液冷媒の温度変化に従って自律的に位置を変化する変位部材を含む、付記1から付記3のいずれか1つに記載の冷媒回路。
【0103】
(付記5)
前記吸入配管を流れる冷媒の温度を検出するセンサをさらに備える、付記1から付記4のいずれか1つに記載の冷媒回路。
【0104】
(付記6)
前記液冷媒流量調整部は、弁を含み、
前記センサの検出結果に従って前記弁の開度を制御するコントローラをさらに備える、付記5に記載の冷媒回路。
【0105】
以上のように実施形態について説明を行なったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0106】
1 圧縮機、2 凝縮器、3 膨張弁、4 蒸発器、5 吸入配管、7 アキュムレータ、20 第1ラジアル軸受、22 第2ラジアル軸受、40 回転軸、41 電動モータ、51,52 インペラ、65 支持プレート、66 スラスト軸受、71 ケース、72 流入管、73 流出管、75 液戻し穴、76 液冷媒流量調整部、77 伸縮部、78,84 弁体、79 バイメタル、80 コントローラ、81 液戻し配管、82 温度センサ、83 弁、85 アクチュエータ、GR ガス冷媒、H1,H2 高さ、LR 液冷媒、SN1 検出信号、SN2 制御信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14