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  • 特開-自動車シート用冷却装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009428
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】自動車シート用冷却装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20250110BHJP
   B60H 1/34 20060101ALI20250110BHJP
【FI】
B60H1/32 621F
B60H1/34 651A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112430
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523259961
【氏名又は名称】ソルコールド リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】000177162
【氏名又は名称】三洋貿易株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】村尾 浩二
(72)【発明者】
【氏名】中村 康平
(72)【発明者】
【氏名】ヤロン シャンハフ
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211DA53
3L211DA61
3L211DA99
(57)【要約】
【課題】簡潔な構造で冷風を供給できる自動車シート用冷却装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、自動車用のシートの内部に設けられたダクトと、ダクトに空気を送るように構成されたファンと、ダクト内に配置されたアンチストークス発光体と、アンチストークス発光体をアンチストークス発光させる光を、アンチストークス発光体に照射するように構成された光源と、を備える自動車シート用冷却装置である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用のシートの内部に設けられたダクトと、
前記ダクトに空気を送るように構成されたファンと、
前記ダクト内に配置されたアンチストークス発光体と、
前記アンチストークス発光体をアンチストークス発光させる光を、前記アンチストークス発光体に照射するように構成された光源と、
を備える、自動車シート用冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車シート用冷却装置であって、
前記アンチストークス発光体は、
電磁波の吸収によってアンチストークス発光するように構成された基材層と、
前記基材層に重ねられると共に、電磁波をフィルタリングして一部の波長帯域の電磁波を前記基材層に伝達するように構成された上層と、
を有する、自動車シート用冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の自動車シート用冷却装置であって、
前記光源は、発光ダイオードである、自動車シート用冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車シート用冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルチェ素子を用いて冷却した空気を供給するシート用冷却装置が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-277020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ペルチェ素子は、電流の供給によって冷却面の温度が低下する一方で、冷却面と反対側の発熱面の温度が上昇する。そのため、シート用冷却装置において、冷風を供給する送風路に加えて、発熱面に対する排熱を行うための排熱路も必要となる。
【0005】
本開示の一局面は、簡潔な構造で冷風を供給できる自動車シート用冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、自動車用のシート(100)の内部に設けられたダクト(2)と、ダクト(2)に空気を送るように構成されたファン(3)と、ダクト(2)内に配置されたアンチストークス発光体(4)と、アンチストークス発光体(4)をアンチストークス発光させる光を、アンチストークス発光体(4)に照射するように構成された光源(5)と、を備える自動車シート用冷却装置(1)である。
【0007】
このような構成によれば、アンチストークス発光体(4)のアンチストークス発光によって、ダクト(2)内の空気が冷却される。そのため、排熱路を設けることなく、簡潔な構造で冷風を着席者に供給できる。
【0008】
本開示の一態様では、アンチストークス発光体(4)は、電磁波の吸収によってアンチストークス発光するように構成された基材層(41)と、基材層(41)に重ねられると共に、電磁波をフィルタリングして一部の波長帯域の電磁波を基材層(41)に伝達するように構成された上層(42)と、を有してもよい。このような構成によれば、アンチストークス発光体(4)に照射される光の波長帯域を広くできるため、光源(5)が出射する光の選択又は調整が容易になる。
【0009】
本開示の一態様では、光源(5)は、発光ダイオードであってもよい。このような構成によれば、アンチストークス発光体(4)が発光しやすい波長の光を安定して供給することができる。
【0010】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態におけるシートの模式図である。
図2図2は、実施形態における自動車シート用冷却装置の模式図である。
図3図3は、図2の自動車シート用冷却装置におけるアンチストークス発光体の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す自動車シート用冷却装置1(以下、単に「冷却装置1」ともいう。)は、乗用車に設定されたシート100に取り付けられる。
【0013】
冷却装置1は、シート100の着席者に冷風を供給するように構成されている。冷却装置1は、シート100のシートクッション101及びシートバック102に1つずつ配置されている。
【0014】
図2に示すように、冷却装置1は、ダクト2と、ファン3と、アンチストークス発光体4と、光源5とを備える。
【0015】
<ダクト>
ダクト2は、シート100のシートクッション101又はシートバック102の内部に設けられている。ダクト2は、排出口21と、給気口22とを有する。
【0016】
排出口21は、シートクッション101の上面又はシートバック102の前面に設けられた開口と連通している。給気口22は、シートクッション101の底面又はシートバック102の背面に設けられた開口と連通している。
【0017】
<ファン>
ファン3は、ダクト2に空気を送るように構成されている。ファン3は、ダクト2内の給気口22の近傍に配置されている。ファン3は、給気口22から空気を吸い込んで、排出口21から空気を排出する。ファン3は、例えばモータによって回転する。
【0018】
<アンチストークス発光体>
アンチストークス発光体4は、ダクト2内に配置されている。具体的には、アンチストークス発光体4は、ダクト2の内周面に固定されたシート状の部材である。なお、アンチストークス発光体4は、空気の流れ方向と交差するように張られた網状の部材であってもよい。
【0019】
アンチストークス発光体4としては、例えば、米国特許出願公開第2019/0154316号明細書に記載されたものが使用できる。具体的には、図3に示すように、アンチストークス発光体4は、基材層41と、上層42とを有する。なお、アンチストークス発光体4は、基材層41と上層42との間に配置された、接着層、空気層等の他の層を有してもよい。
【0020】
基材層41は、電磁波(つまり光)の吸収によってアンチストークス発光(つまりアンチストークス蛍光)するように構成された冷却層である。基材層41は、上層42よりも光源5から遠い側に配置されている。
【0021】
基材層41に進入した電磁波は、基材層41に含まれる活性成分と相互作用し、進入時よりも大きなエネルギーを有した状態で散乱される。電磁波には、活性成分のフォノンによってエネルギーが供給される。このように熱が光に変換されることで、基材層41の温度が低下する。その結果、ダクト2内の空気が冷却される。
【0022】
基材層41の材質としては、例えば、硫化カドミウム、ヒ化ガリウム(GaAs)量子井戸、イッテルビウム添加フッ化リチウムイットリウム(Yb:YLF)結晶、イッテルビウム添加タングステン酸塩(Yb:KGW)結晶、1質量%Yb3+添加フルオロジルコニウム酸塩ガラス(ZBLANP)、Be、セシウム、CdSe/ZnS等が挙げられる。
【0023】
上層42は、基材層41の光源5と対向する面に重ねられている。上層42は、電磁波をフィルタリングして一部の波長帯域の電磁波を基材層41に伝達するように構成されたフィルタ層である。
【0024】
上層42が基材層41に伝達する電磁波の波長帯域は、基材層41に含まれる基底準位の電子を励起準位まで励起させるのに適した推奨波長帯域である。上層42は、推奨波長帯域の電磁波のみを通過させ、推奨波長帯域外の電磁波は通過させない。
【0025】
上層42の材質としては、例えば、アクリル酸ポリマー、オレフィンポリマー(特に、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、超低分子量ポリエチレン(ULMWPE又はPE-WAX)、高分子量ポリエチレン(HMWPE)、高密度架橋ポリエチレン(HDXLPE)、架橋ポリエチレン(PEX又はXLPE)、塩素化ポリエチレン(CPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂等)、ポリエステルポリマー(PSR)(特に、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、スチレンポリマー(特に、ポリスチレン(PS)、スチレンブタジエンポリマー、ポリウレタン(PUR)、ポリウレタンフォーム等)、フッ素樹脂(特に、テフロン(登録商標)、ナイロン6.6、ナイロン6)、ポリマー樹脂、アクリル樹脂、これらの組み合わせ等の高分子化合物が使用される。
【0026】
これらの高分子化合物を用いた上層42は、基材層41の活性成分を担持するマトリックスを構成してもよい。高分子化合物には、レアアースイオン、結晶、又は半導体の晶子が埋め込まれてもよい。
【0027】
また、上層42の材質は高分子化合物に限定されず、例えば、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、石英、クロロタロニル、ポリシロキサン、霞石閃長岩、シラン、メチルトリ(エチルメチルケトキシム)、オクタメチルシクロテトラシロキサン、アモルファスシリカ、有機顔料、無機顔料、セラミック顔料、酸化鉄、酸化物、セラミック微粒子、炭酸カルシウム、炭化水素、シクロアルカン等が使用されてもよい。
【0028】
上層42は、例えば、塗装、蒸着等によって基材層41の表面に形成することができる。基材層41及び上層42は、例えばシリコン等で形成されたウエハ上に設けられてもよい。
【0029】
<光源>
図2に示す光源5は、アンチストークス発光体4をアンチストークス発光させる光を、アンチストークス発光体4に照射するように構成されている。
【0030】
具体的には、光源5は、アンチストークス発光体4の基材層41をアンチストークス発光させる波長を含む光を、上層42の表面に向けて照射する。光源5が発する光の波長は、基材層41の材質によって適宜選択され、概ね300nmから1100nmの範囲である。
【0031】
光源5としては、発光ダイオード(LED)が好ましい。光源5として発光ダイオードを用いることで、アンチストークス発光体4が発光しやすい波長の光を安定して供給することができる。
【0032】
なお、図2では、光源5はアンチストークス発光体4の上流に配置されているが、光源5は、アンチストークス発光体4の下流に配置されてもよい。また、光源5のダクト2の径方向における位置は特に限定されない。
【0033】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)アンチストークス発光体4のアンチストークス発光によって、ダクト2内の空気が冷却される。そのため、排熱路を設けることなく、簡潔な構造で冷風を着席者に供給できる。
【0034】
(1b)アンチストークス発光体4が上層42を有することで、アンチストークス発光体4に照射される光の波長帯域を広くできるため、光源5が出射する光の選択又は調整が容易になる。
【0035】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0036】
(2a)上記実施形態の自動車シート用冷却装置において、アンチストークス発光体は、必ずしも上層を有しなくてもよい。
【0037】
(2b)上記実施形態の自動車シート用冷却装置は、乗用車以外の自動車に用いられるシートにも適用することができる。
【0038】
(2c)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0039】
1…自動車シート用冷却装置、2…ダクト、3…ファン、
4…アンチストークス発光体、5…光源、21…排出口、22…給気口、
41…基材層、42…上層、
100…シート、101…シートクッション、102…シートバック。
図1
図2
図3