(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025009449
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
H10B 51/20 20230101AFI20250110BHJP
H10D 30/68 20250101ALI20250110BHJP
【FI】
H10B51/20
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112458
(22)【出願日】2023-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 瑶子
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 究
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 都文
(72)【発明者】
【氏名】石田 秀郷
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F083EP01
5F083EP22
5F083EP33
5F083EP34
5F083EP42
5F083EP47
5F083EP48
5F083EP76
5F083ER03
5F083ER09
5F083ER14
5F083ER19
5F083FR06
5F083GA10
5F083JA03
5F083JA04
5F083JA05
5F083JA19
5F083JA32
5F083JA38
5F083JA39
5F083KA01
5F083KA05
5F083KA11
5F083LA12
5F083LA16
5F083LA20
5F083MA06
5F083MA16
5F083PR04
5F083PR05
5F083PR21
5F083PR22
5F101BA00
5F101BB04
5F101BC02
5F101BD16
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH01
5F101BH02
5F101BH15
(57)【要約】
【課題】好適に動作する半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】半導体記憶装置は、半導体層(120)と、半導体層に対向するゲート電極(110)と、半導体層及びゲート電極の間に設けられ、酸素(O)及びハフニウム(Hf)を含む第1絶縁膜(131)と、第1絶縁膜及びゲート電極の間に設けられた第2絶縁膜(133)と、を備える。第1絶縁膜は、第1添加物領域(134)と、第2添加物領域(135)と、メモリ領域(136)と、を備える。第1添加物領域及び第2添加物領域は、それぞれ、ルテニウム(Ru)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び、白金(Pt)からなる群から選ばれる少なくとも一つの添加元素を含む。メモリ領域は添加元素を含まず、又は、メモリ領域における添加元素の濃度は、第1添加物領域における第2の添加元素の濃度よりも低い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層と、
前記半導体層に対向するゲート電極と、
前記半導体層及び前記ゲート電極の間に設けられ、酸素(O)、ハフニウム(Hf)及び第1の添加元素を含み、結晶構造として直方晶を含む第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜及び前記ゲート電極の間に設けられた第2絶縁膜と
を備え、
前記第1絶縁膜は、
第1添加物領域と、
前記第1添加物領域及び前記ゲート電極の間に設けられた第2添加物領域と、
前記第1添加物領域及び前記第2添加物領域の間に設けられたメモリ領域と
を備え、
前記第1添加物領域は、ルテニウム(Ru)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び、白金(Pt)からなる群から選ばれる少なくとも一つの第2の添加元素を含み、
前記第2添加物領域は、ルテニウム(Ru)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び、白金(Pt)からなる群から選ばれる少なくとも一つの第3の添加元素を含み、
前記メモリ領域は前記第2の添加元素を含まず、又は、前記メモリ領域における前記第2の添加元素の濃度は、前記第1添加物領域における前記第2の添加元素の濃度よりも低く、
前記メモリ領域は前記第3の添加元素を含まず、又は、前記メモリ領域における前記第3の添加元素の濃度は、前記第2添加物領域における前記第3の添加元素の濃度よりも低い
半導体記憶装置。
【請求項2】
前記第1絶縁膜は、シリコン(Si)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、及び、バリウム(Ba)からなる群から選ばれる少なくとも一つの前記第1の添加元素を含む
請求項1記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第1添加物領域は、前記第1絶縁膜の前記半導体層側の面を含み、
前記第2添加物領域は、前記第1絶縁膜の前記ゲート電極側の面を含む
請求項1記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第1絶縁膜は、前記第2添加物領域及び前記ゲート電極の間に設けられた領域を備え、
前記第1添加物領域は、前記第1絶縁膜の前記半導体層側の面を含み、
前記領域は、前記第1絶縁膜の前記ゲート電極側の面を含む
請求項1記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記第1添加物領域における前記第2の添加元素の濃度は、6.2×1021個/cm3以下であり、
前記第2添加物領域における前記第3の添加元素の濃度は、6.2×1021個/cm3以下である
請求項1記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記第1添加物領域と前記第2添加物領域との間の距離は、8nm以上である
請求項1記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
積層方向に交互に積層された複数の導電層及び複数の絶縁層と、
前記積層方向に延伸し、前記複数の導電層と対向する半導体層と、
前記複数の導電層及び前記半導体層の間に設けられ、前記積層方向に延伸し、酸素(O)及びハフニウム(Hf)を含み、結晶構造として直方晶を含む絶縁膜と、
前記絶縁膜及び前記半導体層の間に設けられ、前記積層方向に延伸する界面層と
を備え、
前記界面層は、
前記積層方向において前記複数の導電層に対応する複数の位置に設けられた複数の第1部分と、
前記積層方向において前記複数の絶縁層に対応する複数の位置に設けられた複数の第2部分と
を備え、
前記複数の第2部分から前記半導体層までの距離は、前記複数の第1部分から前記半導体層までの距離よりも大きい
半導体記憶装置。
【請求項8】
前記複数の第2部分から前記半導体層までの距離と、前記複数の第1部分から前記半導体層までの距離と、の差は、2nm以上である
請求項7記載の半導体記憶装置。
【請求項9】
前記絶縁膜は、
前記積層方向において前記複数の導電層に対応する複数の位置に設けられた複数の第3部分と、
前記積層方向において前記複数の絶縁層に対応する複数の位置に設けられた複数の第4部分と
を備え、
前記複数の第4部分から前記半導体層までの距離は、前記複数の第3部分から前記半導体層までの距離よりも大きい
請求項7記載の半導体記憶装置。
【請求項10】
前記半導体層の前記複数の導電層側の面に沿って、且つ、前記複数の絶縁層に対応して前記積層方向に並ぶ複数の絶縁部材を備え、
前記界面層は、前記半導体層及び前記複数の絶縁部材の前記複数の導電層側の面に沿って前記積層方向に延伸し、
前記絶縁膜は、前記界面層の前記複数の導電層側の面に沿って前記積層方向に延伸する
請求項7記載の半導体記憶装置。
【請求項11】
前記絶縁膜は、添加物領域を備え、
前記添加物領域は、ルテニウム(Ru)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び、白金(Pt)からなる群から選ばれる少なくとも一つの添加元素を含む
請求項7記載の半導体記憶装置。
【請求項12】
前記添加物領域は、前記複数の導電層に対応する前記積層方向の範囲にわたって前記積層方向に延伸する
請求項11記載の半導体記憶装置。
【請求項13】
前記積層方向において前記複数の導電層に対応する複数の位置に設けられた複数の前記添加物領域を備える
請求項11記載の半導体記憶装置。
【請求項14】
前記絶縁膜は、
前記積層方向において前記複数の導電層に対応する複数の位置に設けられ、結晶構造として直方晶を含む複数の部分と、
前記積層方向において前記複数の絶縁層に対応する複数の位置に設けられ、結晶構造として直方晶でない構造を含む複数の他の部分と
を含む請求項7記載の半導体記憶装置。
【請求項15】
積層方向に交互に積層された複数の導電層及び複数の絶縁層と、
前記積層方向に延伸し、前記複数の導電層と対向する半導体層と、
前記複数の導電層及び前記半導体層の間に設けられ、前記積層方向に延伸し、酸素(O)及びハフニウム(Hf)を含み、結晶構造として直方晶を含む絶縁膜と
を備え、
前記絶縁膜は、
前記半導体層の前記複数の導電層側の面に沿って前記積層方向に延伸する第1領域と、
前記第1領域と前記複数の導電層との間に設けられ、前記積層方向に延伸する第2領域と
を備え、
前記積層方向の、前記複数の絶縁層に対応する複数の第1位置において、前記第1領域と前記第2領域とは離間し、
前記積層方向の、前記複数の導電層に対応する複数の第2位置において、前記第1領域と前記第2領域とが接続され、又は、前記第1領域と前記第2領域との間の距離が、前記複数の第1位置における前記第1領域と前記第2領域との間の距離よりも小さい
半導体記憶装置。
【請求項16】
前記第1領域の前記複数の導電層側の面に沿って、且つ、前記複数の絶縁層に対応して前記積層方向に並ぶ複数の絶縁部材を備え、
前記第2領域は、前記第1領域及び前記複数の絶縁部材の前記複数の導電層側の面に沿って前記積層方向に延伸する
請求項15記載の半導体記憶装置。
【請求項17】
前記複数の絶縁部材と、前記絶縁膜の前記半導体層側の面と、の間の第1距離は、5nm以下であり、
前記複数の絶縁部材と、前記絶縁膜の前記複数の導電層側の面と、の間の第2距離は、5nm以下である
請求項16記載の半導体記憶装置。
【請求項18】
前記第1距離及び前記第2距離の合計は、8nm以上である
請求項17記載の半導体記憶装置。
【請求項19】
前記複数の絶縁部材の前記半導体層側の面と、前記複数の絶縁部材の前記複数の導電層側の面と、の間の距離は、1nm以上である
請求項16記載の半導体記憶装置。
【請求項20】
前記絶縁膜は、前記第1領域及び前記第2領域の間において、前記複数の導電層に対応して前記積層方向に並ぶ複数の添加物領域を備え、
前記添加物領域は、チタン(Ti)及びシリコン(Si)からなる群から選ばれる少なくとも一つの添加元素を含み、
前記第1領域及び前記第2領域は前記添加元素を含まず、又は、前記第1領域及び前記第2領域における前記添加元素の濃度は、前記添加物領域における前記添加元素の濃度よりも低い
請求項15記載の半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のメモリトランジスタを含む半導体記憶装置が知られている。これら複数のメモリトランジスタのゲート絶縁膜には、例えば、窒化シリコン(Si3N4)等の絶縁性の電荷蓄積層、フローティングゲート等の導電性の電荷蓄積層、強誘電体膜等の、データを記憶可能なメモリ部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-48214号広報
【特許文献2】特開2022-145049号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
好適に動作する半導体記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の実施形態に係る半導体記憶装置は、半導体層と、半導体層に対向するゲート電極と、半導体層及びゲート電極の間に設けられ、酸素(O)、ハフニウム(Hf)及び第1の添加元素を含み、結晶構造として直方晶を含む第1絶縁膜と、第1絶縁膜及びゲート電極の間に設けられた第2絶縁膜と、を備える。第1絶縁膜は、第1添加物領域と、第1添加物領域及びゲート電極の間に設けられた第2添加物領域と、第1添加物領域及び第2添加物領域の間に設けられたメモリ領域と、を備える。第1添加物領域は、ルテニウム(Ru)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び、白金(Pt)からなる群から選ばれる少なくとも一つの第2の添加元素を含む。第2添加物領域は、ルテニウム(Ru)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び、白金(Pt)からなる群から選ばれる少なくとも一つの第3の添加元素を含む。メモリ領域は第2の添加元素を含まず、又は、メモリ領域における第2の添加元素の濃度は、第1添加物領域における第2の添加元素の濃度よりも低い。メモリ領域は第3の添加元素を含まず、又は、メモリ領域における第3の添加元素の濃度は、第2添加物領域における第3の添加元素の濃度よりも低い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係るメモリダイMDの一部の構成を示す模式的な回路図である。
【
図3】メモリダイMDの一部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図4】
図3の一部を拡大して示す模式的な断面図である。
【
図5】メモリセルMCのしきい値電圧について説明するための模式的なヒストグラムである。
【
図6】メモリセルMCの分極率について説明するための模式的なグラフである。
【
図7】メモリセルMCの状態について説明するための模式的な断面図である。
【
図8】メモリセルMCの状態について説明するための模式的なエネルギーバンド図である。
【
図9】メモリセルMCの状態について説明するための模式的な断面図である。
【
図10】メモリセルMCの状態について説明するための模式的なエネルギーバンド図である。
【
図11】第1実施形態の効果について説明するための模式的なエネルギーバンド図である。
【
図12】第1実施形態の効果について説明するための模式的なエネルギーバンド図である。
【
図13】第1実施形態に係るメモリダイMDの製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図14】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図15】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図16】第2実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【
図17】同半導体記憶装置の製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図18】第3実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【
図19】第3実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図20】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図21】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図22】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図23】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図24】第4実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【
図25】第4実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図26】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図27】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図28】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図29】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図30】第5実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【
図31】第5実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図32】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図33】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図34】第6実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【
図35】第6実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図36】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図37】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図38】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図39】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図40】第7実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【
図41】第7実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図42】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【
図43】同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、実施形態に係る半導体記憶装置を、図面を参照して詳細に説明する。尚、以下の実施形態はあくまでも一例であり、本発明を限定する意図で示されるものではない。また、以下の図面は模式的なものであり、説明の都合上、一部の構成等が省略される場合がある。また、複数の実施形態について共通する部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0008】
また、本明細書において「半導体記憶装置」と言った場合には、メモリダイを意味する事もあるし、メモリチップ、メモリカード、SSD(Solid State Drive)等の、コントローラダイを含むメモリシステムを意味する事もある。更に、スマートホン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等の、ホストコンピュータを含む構成を意味する事もある。
【0009】
また、本明細書において「制御回路」と言った場合には、メモリダイに設けられたシーケンサ等の周辺回路を意味する事もあるし、メモリダイに接続されたコントローラダイ又はコントローラチップ等を意味する事もあるし、これらの双方を含む構成を意味する事もある。
【0010】
また、本明細書において、第1の構成が第2の構成に「電気的に接続されている」と言った場合、第1の構成は第2の構成に直接接続されていても良いし、第1の構成が第2の構成に配線、半導体部材又はトランジスタ等を介して接続されていても良い。例えば、3つのトランジスタを直列に接続した場合には、2つ目のトランジスタがOFF状態であったとしても、1つ目のトランジスタは3つ目のトランジスタに「電気的に接続」されている。
【0011】
また、本明細書において、第1の構成が第2の構成及び第3の構成の「間に接続されている」と言った場合、第1の構成、第2の構成及び第3の構成が直列に接続され、且つ、第2の構成が第1の構成を介して第3の構成に接続されていることを意味する場合がある。
【0012】
また、本明細書において、回路等が2つの配線等を「導通させる」と言った場合には、例えば、この回路等がトランジスタ等を含んでおり、このトランジスタ等が2つの配線の間の電流経路に設けられており、このトランジスタ等がON状態となることを意味する事がある。
【0013】
また、本明細書においては、基板の上面に対して平行な所定の方向をX方向、基板の上面に対して平行で、X方向と垂直な方向をY方向、基板の上面に対して垂直な方向をZ方向と呼ぶ。
【0014】
また、本明細書においては、基板の上面と交差する方向を積層方向と呼ぶ場合がある。積層方向はZ方向と一致していても良いし、一致していなくても良い。また、本明細書においては、積層方向と交差する所定の面に沿った方向を第1方向、この所定の面に沿って第1方向と交差する方向を第2方向と呼ぶことがある。これら第1方向及び第2方向は、X方向及びY方向のいずれかと対応していても良いし、対応していなくても良い。
【0015】
また、本明細書において、「上」や「下」等の表現は、基板を基準とする。例えば、上記Z方向に沿って基板から離れる向きを上と、Z方向に沿って基板に近付く向きを下と呼ぶ。また、ある構成について下面や下端と言う場合には、この構成の基板側の面や端部を意味する事とし、上面や上端と言う場合には、この構成の基板と反対側の面や端部を意味する事とする。また、X方向又はY方向と交差する面を側面等と呼ぶ。
【0016】
また、本明細書において、構成、部材等について、所定方向の「幅」、「長さ」又は「厚み」等と言った場合には、SEM(Scanning electron microscopy)やTEM(Transmission electron microscopy)等によって観察された断面等における幅、長さ又は厚み等を意味することがある。
【0017】
[第1実施形態]
[メモリダイMDの回路構成]
図1は、第1実施形態に係るメモリダイMDの一部の構成を示す模式的な回路図である。
図1に示す様に、メモリダイMDは、データを記憶するメモリセルアレイMCAと、メモリセルアレイMCAに接続された周辺回路PCと、を備える。
【0018】
メモリセルアレイMCAは、
図1に示す様に、複数のメモリブロックBLKを備える。これら複数のメモリブロックBLKは、それぞれ、複数のストリングユニットSUを備える。これら複数のストリングユニットSUは、それぞれ、複数のメモリストリングMSを備える。これら複数のメモリストリングMSの一端は、それぞれ、電気的に独立な複数のビット線BLを介して周辺回路PCに接続される。また、これら複数のメモリストリングMSの他端は、それぞれ、電気的に共通な1のソース線SLを介して周辺回路PCに接続される。
【0019】
メモリストリングMSは、ビット線BL及びソース線SLの間に直列に接続されたドレイン側選択トランジスタSTD、複数のメモリセルMC(メモリトランジスタ)、及び、ソース側選択トランジスタSTSを備える。以下、ドレイン側選択トランジスタSTD、及び、ソース側選択トランジスタSTSを、単に選択トランジスタ(STD、STS)と呼ぶ事がある。
【0020】
メモリセルMCは、チャネル領域として機能する半導体層、メモリ部を含むゲート絶縁膜、及び、ゲート電極を備える電界効果型のトランジスタである。メモリセルMCのしきい値電圧は、メモリ部の状態に応じて変化する。メモリセルMCは、1ビット又は複数ビットのデータを記憶する。尚、1のメモリストリングMSに対応する複数のメモリセルMCのゲート電極には、それぞれ、ワード線WLが接続される。これらワード線WLは、それぞれ、1のメモリブロックBLK中の全てのメモリストリングMSに共通に接続される。
【0021】
選択トランジスタ(STD、STS)は、チャネル領域として機能する半導体層、ゲート絶縁膜及びゲート電極を備える電界効果型のトランジスタである。選択トランジスタ(STD、STS)のゲート電極には、それぞれ、選択ゲート線(SGD、SGS)が接続される。ドレイン側選択ゲート線SGDは、ストリングユニットSUに対応して設けられ、1のストリングユニットSU中の全てのメモリストリングMSに共通に接続される。ソース側選択ゲート線SGSは、メモリブロックBLK中の全てのメモリストリングMSに共通に接続される。
【0022】
周辺回路PCは、例えば、動作電圧を生成して電圧供給線に出力する電圧生成回路、所望の電圧供給線をビット線BL、ソース線SL、ワード線WL及び選択ゲート線(SGD、SGS)と導通させるデコード回路、ビット線BLの電流又は電圧を検知するセンスアンプ回路、これらの回路を制御するシーケンサ等を備える。
【0023】
[メモリダイMDの構造]
図2は、メモリダイMDの模式的な平面図である。
図2に示す様に、メモリダイMDは、半導体基板100を備える。図示の例において、半導体基板100にはX方向に並ぶ2つのメモリセルアレイ領域R
MCAが設けられている。また、メモリセルアレイ領域R
MCAには、Y方向に並ぶ複数のメモリブロックBLKが設けられている。また、半導体基板100のY方向の端部には、周辺回路領域R
PCが設けられている。
【0024】
図3は、メモリダイMDの一部の構成を示す模式的な斜視図である。
図4は、
図3の一部を拡大して示す模式的な断面図である。
【0025】
図3に示す様に、メモリブロックBLKは、半導体基板100の上方においてZ方向に並ぶ複数の導電層110と、これら複数の導電層110の下方(複数の導電層110と半導体基板100との間)に設けられた導電層111と、Z方向に延伸する複数の半導体層120と、を備える。また、
図4に示す様に、メモリブロックBLKは、複数の導電層110及び複数の半導体層120の間にそれぞれ設けられた複数のゲート絶縁膜130を備える。また、
図3に示す様に、メモリブロックBLKは、導電層111に接続された電極140を備える。これらの構成の上方には、
図1を参照して説明したビット線BLが設けられている。
【0026】
半導体基板100は、例えば、ホウ素(B)等のP型の不純物を含むP型のシリコン(Si)からなる。半導体基板100の表面には、例えば、リン(P)等のN型の不純物を含むN型ウェル領域と、ホウ素(B)等のP型の不純物を含むP型ウェル領域と、N型ウェル領域及びP型ウェル領域が設けられていない半導体基板領域と、が設けられている。N型ウェル領域、P型ウェル領域及び半導体基板領域は、それぞれ、周辺回路PCを構成する複数のトランジスタ、及び、複数のキャパシタ等の一部として機能する。
【0027】
導電層110は、X方向に延伸する略板状の導電層である。導電層110は、例えば
図4に例示する様に、窒化チタン(TiN)等のバリア導電膜112及びタングステン(W)等の金属膜113の積層膜等を含んでいても良い。また、導電層110は、例えば、リン(P)又はホウ素(B)等の不純物を含む多結晶シリコン等を含んでいても良い。Z方向に並ぶ複数の導電層110の間には、それぞれ、酸化シリコン(SiO
2)等の絶縁層101が設けられている。
【0028】
複数の導電層110は、
図1を参照して説明したワード線WL及びこれに接続された複数のメモリセルMCのゲート電極として機能する。以下の説明では、この様な導電層110を、導電層110(WL)と呼ぶ場合がある。これら複数の導電層110(WL)は、それぞれ、メモリブロックBLK毎に電気的に独立している。Y方向に隣り合う2つのメモリブロックBLKに着目した場合、これら2つのメモリブロックBLK中の、Z方向に並ぶ複数の導電層110(WL)及びこれらの上下面に設けられた複数の絶縁層101は、Y方向に分断されている。
【0029】
複数の導電層110(WL)よりも下方に位置する一又は複数の導電層110は、
図1を参照して説明したソース側選択ゲート線SGS及びこれに接続された複数のソース側選択トランジスタSTSのゲート電極として機能する。以下の説明では、この様な導電層110を、導電層110(SGS)と呼ぶ場合がある。Y方向に隣り合う2つのメモリブロックBLKに着目した場合、これら2つのメモリブロックBLK中の、一又は複数の導電層110(SGS)及びこれらの上下面に設けられた複数の絶縁層101は、Y方向に分断されている。
【0030】
複数の導電層110(WL)よりも上方に位置する一又は複数の導電層110は、それぞれ、
図1を参照して説明したドレイン側選択ゲート線SGD及びこれに接続された複数のドレイン側選択トランジスタSTDのゲート電極として機能する。以下の説明では、この様な導電層110を、導電層110(SGD)と呼ぶ場合がある。
【0031】
図3に示す様に、これら複数の導電層110(SGD)のY方向の幅は、導電層110(WL)のY方向の幅よりも小さい。
【0032】
複数の導電層110(SGD)は、それぞれ、ストリングユニットSU毎に電気的に独立している。各メモリブロックBLK中において、Y方向に隣り合う2つのストリングユニットSUに着目した場合、これら2つのストリングユニットSU中の、一又は複数の導電層110(SGD)は、ストリングユニット間絶縁部材SHEを介してY方向に分断されている。Y方向に隣り合う2つのメモリブロックBLKの、一方に含まれる複数のストリングユニットSUのうち他方に最も近いもの、及び、他方に含まれる複数のストリングユニットSUのうち一方に最も近いものに着目した場合、これら2つのストリングユニットSU中の、一又は複数の導電層110(SGD)は、Y方向に分断されている。
【0033】
導電層111は、例えば、リン(P)等のN型の不純物を含む多結晶シリコン等を含んでいても良い。また、導電層111の下面には、タングステン(W)等の金属、タングステンシリサイド等の導電部材又はその他の導電部材が設けられていても良い。導電層111は、
図1を参照して説明したソース線SLの一部として機能する。
【0034】
半導体層120は、X方向及びY方向に所定のパターンで並ぶ。半導体層120は、1つのメモリストリングMS(
図1)に含まれる複数のメモリセルMC及び選択トランジスタSTD,STSのチャネル領域として機能する。半導体層120は、例えば、多結晶シリコン(Si)等の半導体層である。半導体層120は、略円柱状の形状を有する。また、半導体層120の外周面は、それぞれ導電層110によって囲われており、導電層110と対向している。
【0035】
半導体層120の上端部には、リン(P)等のN型の不純物を含む図示しない不純物領域が設けられている。この不純物領域は、図示しないビアコンタクト電極を介してビット線BLに電気的に接続される。
【0036】
半導体層120の下端部には、リン(P)等のN型の不純物を含む図示しない不純物領域が設けられている。この不純物領域は、導電層111に接続されている。
【0037】
ゲート絶縁膜130(
図4)は、半導体層120の外周面に沿って、複数の導電層110に対応するZ方向の範囲にわたってZ方向に延伸する略円柱状の形状を有する。ゲート絶縁膜130は、半導体層120の外周面に沿って、複数の導電層110に対応するZ方向の範囲にわたってZ方向に延伸する略円筒状の強誘電体膜131と、強誘電体膜131の内周面に沿って、複数の導電層110に対応するZ方向の範囲にわたってZ方向に延伸する略円筒状の絶縁膜132(界面層)と、強誘電体膜131の外周面に沿って、複数の導電層110に対応するZ方向の範囲にわたってZ方向に延伸する略円筒状の絶縁膜133(界面層)と、を備える。
【0038】
強誘電体膜131は、例えば、直方晶の酸化ハフニウムを含む絶縁膜であっても良い。強誘電体膜131に含まれる酸化ハフニウムは直方晶を主とするものでも良い。より具体的には、強誘電体膜131に含まれる酸化ハフニウムは、第三直方晶(orthorhombicIII、空間群Pbc21、空間群番号29番)を主とするものでも良い。強誘電体膜131に含まれる酸化ハフニウムの結晶の中で、直方晶の結晶が占める割合が最も多くても良い。尚、直方晶は斜方晶とも称される。強誘電体膜131中の結晶構造は、例えば、ACOM-TEM(Automated Crystal Orientation Mapping Transmission Electron Microscopy)等の方法によって観察可能である。
【0039】
また、強誘電体膜131は、シリコン(Si)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)、ストロンチウム(Sr)、ランタン(La)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、及び、バリウム(Ba)からなる群から選ばれる少なくとも一つの添加元素を含むことが出来る。以下、この様な添加元素を、「第1の添加元素」と呼ぶ場合がある。尚、添加元素の存在及び濃度は、例えば、EDX( Energy Dispersive X-ray Spectroscopy )等の方法によって確認することが出来る。
【0040】
酸化ハフニウムに強誘電性を発現させる観点から、上記第1の添加元素の濃度は0.1原子%以上80%以下であることが好ましい。酸化ハフニウムに強誘電性を発現させるための上記第1の添加元素の濃度の適切な範囲は、第1の添加元素の種類によって異なる。例えば、第1の添加元素がシリコン(Si)の場合、強誘電性を発現させるための第1の添加元素の濃度の適切な範囲は、3原子%以上7原子%以下である。例えば、第1の添加元素がバリウム(Ba)の場合、強誘電性を発現させるための第1の添加元素の濃度の適切な範囲は、0.1原子%以上3原子%以下である。例えば、第1の添加元素がジルコニウム(Zr)の場合、強誘電性を発現させるための第1の添加元素の濃度の適切な範囲は、10原子%以上80原子%以下である。
【0041】
また、強誘電体膜131は、強誘電体膜131の内周面(半導体層120側の面)を含む添加物領域134と、強誘電体膜131の外周面(導電層110側の面)を含む添加物領域135と、添加物領域134及び添加物領域135の間に設けられたメモリ領域136と、を備える。
【0042】
添加物領域134は、上述した第1の添加元素に加え、ルテニウム(Ru)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び、白金(Pt)からなる群から選ばれる少なくとも一つの添加元素を含む。以下、この様な添加元素を、「第2の添加元素」と呼ぶ場合がある。添加物領域134における第2の添加元素の濃度は、例えば、6.2×1021/cm3以下であっても良い。
【0043】
添加物領域135は、上述した第1の添加元素に加え、ルテニウム(Ru)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、及び、白金(Pt)からなる群から選ばれる少なくとも一つの添加元素を含む。以下、この様な添加元素を、「第3の添加元素」と呼ぶ場合がある。添加物領域135における第3の添加元素の濃度は、例えば、6.2×1021/cm3以下であっても良い。尚、添加物領域135における第3の添加元素の種類及び濃度は、添加物領域134における第2の添加元素の種類及び濃度と同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0044】
メモリ領域136は、上述した第1の添加元素に加え、第2の添加元素を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。メモリ領域136が第2の添加元素を含む場合、メモリ領域136における第2の添加元素の濃度は、添加物領域134における第2の添加元素の濃度よりも低い。メモリ領域136が第2の添加元素を含む場合、メモリ領域136と添加物領域134との境界は、例えば、第2の添加元素の濃度が、ピーク値の半分となる位置であっても良い。メモリ領域136が第2の添加元素を含まない場合、メモリ領域136と添加物領域134との境界は、例えば、第2の添加元素を含む領域と、第2の添加元素を含まない領域と、の境界としても良いし、第2の添加元素を検出可能な領域と、第2の添加元素が検出出来ない領域と、の境界としても良い。
【0045】
また、メモリ領域136は、上述した第1の添加元素に加え、第3の添加元素を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。メモリ領域136が第3の添加元素を含む場合、メモリ領域136における第3の添加元素の濃度は、添加物領域135における第3の添加元素の濃度よりも低い。メモリ領域136が第3の添加元素を含む場合、メモリ領域136と添加物領域135との境界は、例えば、第3の添加元素の濃度が、ピーク値の半分となる位置であっても良い。メモリ領域136が第3の添加元素を含まない場合、メモリ領域136と添加物領域135との境界は、例えば、第3の添加元素を含む領域と、第3の添加元素を含まない領域と、の境界としても良いし、第3の添加元素を検出可能な領域と、第3の添加元素が検出出来ない領域と、の境界としても良い。
【0046】
メモリ領域136の厚み(径方向の長さ)は、添加物領域134の厚み(径方向の長さ)及び添加物領域135の厚み(径方向の長さ)より大きい。メモリ領域136の厚みは、例えば、8nm以上であっても良い。ここで、メモリ領域136の厚みが8nm以上である場合、メモリ領域136は、強誘電性を示しやすく、厚みが8nm未満であると強誘電性を示しにくい傾向がある。特に、メモリ領域136の厚みが5nm以下である場合、メモリ領域136は、強誘電性を示しにくい傾向がある。
【0047】
メモリ領域136の厚み(径方向の長さ)は、種々の方法によって規定することが可能である。例えば、本実施形態では、添加物領域134と、添加物領域135と、の距離をメモリ領域136の厚みとしても良い。
【0048】
絶縁膜132は、強誘電体膜131と、Z方向に延伸する半導体層120と、の間に設けられている。図示の例において、絶縁膜132は、強誘電体膜131及び半導体層120と接している。絶縁膜132は、例えば、酸窒化シリコン(SiON)等を含む。
【0049】
絶縁膜133は、強誘電体膜131と、Z方向に並ぶ複数の導電層110と、の間に設けられている。図示の例において、絶縁膜133は、強誘電体膜131及びZ方向に並ぶ複数の導電層110と接している。絶縁膜133は、例えば、酸化シリコン(SiO2)、酸窒化シリコン(SiON)等を含む。
【0050】
電極140は、例えば
図3に示す様に、X方向及びZ方向に延伸する。電極140のY方向の両側面には、酸化シリコン(SiO
2)等の絶縁膜141が設けられている。電極140は、絶縁膜141を介して、Z方向に並ぶ複数の導電層110及びこれらの間に設けられた複数の絶縁層101からY方向に離間する。電極140及び絶縁膜141の下端は、導電層111に接続されている。電極140は、例えば、窒化チタン(TiN)等のバリア導電膜及びタングステン(W)等の金属膜の積層膜等を含む導電部材であっても良い。また、電極140は、例えば、リン(P)又はホウ素(B)等の不純物を含む多結晶シリコン等の半導体部材であっても良い。電極140は、
図1を参照して説明したソース線SLの一部として機能する。
【0051】
[メモリセルMCのしきい値電圧]
次に、
図5を参照して、メモリセルMCのしきい値電圧について説明する。
図5は、メモリセルMCのしきい値電圧について説明するための模式的なヒストグラムである。横軸はワード線WLの電圧を示しており、縦軸はメモリセルMCの数を示している。尚、ここで言うしきい値電圧とは、メモリセルMCをNMOSトランジスタとして動作させる場合のしきい値電圧である。
【0052】
図5の例では、メモリセルMCのしきい値電圧が、2通りのステートに制御されている。例えば、下位ステートに制御されたメモリセルMCのしきい値電圧は負極性であり、このしきい値電圧の絶対値は、
図5の負極性の電圧V
1の絶対値よりも大きい。また、上位ステートに制御されたメモリセルMCのしきい値電圧は正極性であり、このしきい値電圧の絶対値は、
図5の正極性の電圧V
2の絶対値よりも大きい。
【0053】
読出動作では、例えば、選択ワード線WLに、負極性の電圧V
1と正極性の電圧V
2との間の読出電圧V
CGRを供給する。
図5の例において、読出電圧V
CGRは、接地電圧V
SS程度の大きさを有する。これにより、下位ステートに制御された選択メモリセルMCのチャネル領域には電子のチャネルが形成され、上位ステートに制御された選択メモリセルMCのチャネル領域にはチャネルが形成されない。
【0054】
また、読出動作では、例えば、非選択ワード線WLに、上位ステートに制御されたメモリセルMCのしきい値電圧より大きい読出パス電圧V
READを供給する。これにより、非選択メモリセルMCが、記録するデータに拘わらずON状態となる。これにより、選択メモリセルMCがビット線BL(
図1)及びソース線SL(
図1)と導通する。従って、この状態でビット線BLとソース線SLとの間に電圧を供給し、ビット線BLに電流が流れるか否かを検出することにより、選択メモリセルMCに記録されたデータを読み出すことが出来る。
【0055】
次に、
図6~
図10を参照して、メモリセルMCのしきい値電圧の制御方法について説明する。
図6は、メモリセルMCの分極率について説明するための模式的なグラフである。
図6に示すグラフの横軸はワード線WLの電圧を示している。
図6に示すグラフの縦軸は強誘電体膜131の分極率Pを示している。
図7は、メモリセルMCの状態について説明するための模式的な断面図である。
図8は、メモリセルMCの状態について説明するための模式的なエネルギーバンド図である。
図9は、メモリセルMCの状態について説明するための模式的な断面図である。
図10は、メモリセルMCの状態について説明するための模式的なエネルギーバンド図である。尚、
図8及び
図10は、それぞれ、
図7及び
図9に示す構成の伝導帯における電子のポテンシャルエネルギーを図示している。
【0056】
図4を参照して説明した様に、本実施形態に係るメモリセルMCのゲート絶縁膜130は、強誘電体膜131を含んでいる。この様なメモリセルMCに接続されたワード線WLに所定以上の大きさの正極性の電圧及び負極性の電圧を交互に供給すると、
図6に示す様なヒステリシス曲線が観察される。
図6では、このヒステリシス曲線上に、状態S
1,S
2を示している。
【0057】
状態S
1は、上位ステートに制御されたメモリセルMCの状態である。状態S
1は、分極率Pが負の分極率P
1であり、ワード線WLの電圧が接地電圧V
SSの状態である。この状態では、
図7及び
図8に示す様に、強誘電体膜131の半導体層120側の面に負電荷が誘起され、この面の近傍における電子のポテンシャルエネルギーが高い状態となっている。この状態では、半導体層120の強誘電体膜131側の面に正電荷が誘起され、この面の近傍における電子のポテンシャルエネルギーは高い状態となるため、半導体層120に電子のチャネルが形成されづらい。従って、メモリセルMCのしきい値電圧は、正の値となる。
【0058】
状態S1のメモリセルMCのゲート電極に読出パス電圧程度の大きさの電圧を供給した場合、強誘電体膜131における分極の状態は変化しない。この状態でゲート電極への電圧の供給を中断すると、メモリセルMCは状態S1に戻る。
【0059】
状態S
1のメモリセルMCのゲート電極に所定以上の大きさの正極性の電圧を供給した場合、導電層110-半導体層120間の電界によって強誘電体膜131における分極の方向が反転し、
図6に示す様に、強誘電体膜131における分極率Pが増大する。ゲート電極の電圧が書込電圧V
PGMに到達すると、メモリセルMCの分極率Pは一定の大きさまで変化して飽和する。この状態でゲート電極への電圧の供給を中断すると、メモリセルMCは状態S
2に遷移する。
【0060】
状態S
2は、下位ステートに制御されたメモリセルMCの状態である。状態S
2は、分極率Pが正の分極率P
2であり、ワード線WLの電圧が接地電圧V
SSの状態である。この状態では、
図9及び
図10に示す様に、強誘電体膜131の半導体層120側の面に正電荷が誘起され、この面の近傍における電子のポテンシャルエネルギーが低い状態となっている。この状態では、半導体層120の強誘電体膜131側の面に負電荷が誘起され、この面の近傍における電子のポテンシャルエネルギーは低い状態となるため、半導体層120に電子のチャネルが形成される。従って、メモリセルMCのしきい値電圧は、負の値となる。
【0061】
状態S
2のメモリセルMCのゲート電極に所定以上の大きさの負極性の電圧を供給した場合、導電層110-半導体層120間の電界によって強誘電体膜131における分極の方向が反転し、
図6に示す様に、強誘電体膜131における分極率Pが減少する。ゲート電極の電圧が消去電圧V
eraに到達すると、メモリセルMCの分極率Pは一定の大きさまで変化して飽和する。この状態でゲート電極への電圧の供給を中断すると、メモリセルMCは状態S
1に遷移する。
【0062】
[効果]
図11及び
図12は、第1実施形態の効果について説明するための模式的なエネルギーバンド図である。
【0063】
図4を参照して説明した様に、本実施形態に係る強誘電体膜131は、強誘電体膜131の内周面を含み、チタン(Ti)等の第2の添加元素を含む添加物領域134を備える。この様な構成によれば、強誘電体膜131の結晶構造を直方晶に制御して、強誘電体性を好適に発現させることが可能である。
【0064】
ここで、添加物領域134には、チタン(Ti)等の第2の添加元素に起因するトラップ準位が形成される。
図11には、添加物領域134中のトラップ準位に電子が蓄積される前の状態を実線で、電子が蓄積された後の状態を二点鎖線で示している。添加物領域134に電子がトラップされると、
図7及び
図8を参照して説明した状態S
1において、
図11に示す様に、強誘電体膜131中のエネルギー勾配が急峻になってしまう。この様な場合、状態S
1から状態S
2への遷移が、低い電圧で生じる様になってしまう。例えば、
図5を参照して説明した読出パス電圧V
READにおいて状態S
1から状態S
2への遷移が生じてしまう場合、読出動作の実行に伴って、誤書込が生じてしまう。
【0065】
そこで、本実施形態に係る強誘電体膜131は、強誘電体膜131の外周面を含み、チタン(Ti)等の第3の添加元素を含む添加物領域135を備える。
【0066】
図12には、添加物領域134,135中のトラップ準位に電子が蓄積される前の状態を実線で、電子が蓄積された後の状態を二点鎖線で示している。本実施形態では、強誘電体膜131の内周面だけでなく、外周面にも電子がトラップされる。その結果、例えば
図12に示す様に、強誘電体膜131中のエネルギー勾配をなだらかにすることが可能である。これにより、読出動作の実行に伴う誤書込の発生を抑制可能である。
【0067】
[製造方法]
次に、
図13~
図15を参照して、メモリダイMDの製造方法について説明する。
図13~
図15は、同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【0068】
本実施形態に係るメモリダイMDの製造に際しては、例えば
図13に示す様に、
図3を参照して説明した半導体基板100の上方に、複数の犠牲層110A及び複数の絶縁層101を形成する。犠牲層110Aは、例えば、多結晶シリコン(Si)、窒化シリコン(Si
3N
4)等を含む。この工程は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)等の方法によって行う。
【0069】
次に、例えば
図14に示す様に、半導体層120に対応する位置に、メモリホールMHを形成する。メモリホールMHは、Z方向に延伸し、絶縁層101及び犠牲層110Aを貫通する貫通孔である。この工程は、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)等の方法によって行う。
【0070】
次に、例えば
図15に示す様に、メモリホールMHの内周面に、絶縁膜133、強誘電体膜131、絶縁膜132、及び、半導体層120を形成する。この工程は、例えば、CVD、ALD(Atomic Layer Deposition)等の方法によって行う。
【0071】
その後、
図3を参照して説明した電極140に対応する位置にRIE等によって溝を形成し、この溝を介したウェットエッチング等によって犠牲層110Aを除去し、CVD等の手段によって導電層110を形成することによって、
図4を参照して説明した様な構造が製造される。また、絶縁膜141、電極140、ビット線BL等を形成することによって、
図3を参照して説明した様な構造が製造される。
【0072】
[第2実施形態]
上述の通り、第1実施形態に係る強誘電体膜131は、強誘電体膜131の外周面を含む添加物領域135を備えており、これによって強誘電体膜131中のエネルギー勾配をなだらかにしている。しかしながら、この様な構成はあくまでも例示であり、具体的な構成は適宜調整可能である。例えば、添加物領域135は、強誘電体膜131の外周面の近傍に設けられていればよく、外周面を含む必要はない。以下、第2実施形態に係る半導体記憶装置として、この様な構成を例示する。
【0073】
[構成]
図16は、第2実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【0074】
第2実施形態に係る半導体記憶装置は、基本的には、第1実施形態に係る半導体記憶装置と同様に構成されている。ただし、第2実施形態に係る半導体記憶装置は、ゲート絶縁膜130のかわりに、ゲート絶縁膜230を備える。ゲート絶縁膜230は、基本的には、ゲート絶縁膜130と同様に構成されている。ただし、ゲート絶縁膜230は、強誘電体膜131のかわりに、強誘電体膜231を備える。
【0075】
強誘電体膜231は、基本的には、強誘電体膜131と同様に構成されている。ただし、強誘電体膜231は、強誘電体膜231の内周面を含む添加物領域134と、強誘電体膜231の外周面を含む領域235と、添加物領域134及び領域235の間に設けられた添加物領域236と、添加物領域134及び添加物領域236の間に設けられたメモリ領域237と、を備える。
【0076】
添加物領域236は、
図4を参照して説明した添加物領域135と同様に構成されている。
【0077】
領域235は、上述した第1の添加元素に加え、第3の添加元素を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。領域235が第3の添加元素を含む場合、領域235における第3の添加元素の濃度は、添加物領域236における第3の添加元素の濃度よりも低い。領域235が第3の添加元素を含む場合、領域235と添加物領域236との境界は、例えば、第3の添加元素の濃度が、ピーク値の半分となる位置であっても良い。領域235が第3の添加元素を含まない場合、領域235と添加物領域236との境界は、例えば、第3の添加元素を含む領域と、第3の添加元素を含まない領域と、の境界としても良いし、第3の添加元素を検出可能な領域と、第3の添加元素が検出出来ない領域と、の境界としても良い。
【0078】
メモリ領域237は、
図4を参照して説明したメモリ領域136と同様に構成されている。
【0079】
[製造方法]
次に、
図17を参照して、第2実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法について説明する。
図17は、同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【0080】
第2実施形態に係る半導体記憶装置は、基本的には、第1実施形態に係る半導体記憶装置と同様に製造される。ただし、第2実施形態に係る半導体記憶装置の製造に際しては、
図15を参照して説明した工程において、
図17に示す様に、ゲート絶縁膜130のかわりに、ゲート絶縁膜230が形成される。
【0081】
[第3実施形態]
[構成]
次に、
図18を参照して、第3実施形態に係る半導体記憶装置について説明する。
図18は、第3実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【0082】
第3実施形態に係る半導体記憶装置は、基本的には、第1実施形態に係る半導体記憶装置と同様に構成されている。ただし、第3実施形態に係る半導体記憶装置は、ゲート絶縁膜130のかわりに、ゲート絶縁膜330を備える。
【0083】
ゲート絶縁膜330は、基本的には、ゲート絶縁膜130と同様に構成されている。
【0084】
ただし、ゲート絶縁膜330の、絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分の内径及び外径は、それぞれ、導電層110に対応する高さ位置に設けられた部分の内径及び外径よりも大きい。
【0085】
また、ゲート絶縁膜330は、複数の絶縁層101に対応してZ方向に並ぶ複数の絶縁部材331と、これら複数の絶縁部材331及び半導体層120の外周面に沿って、複数の導電層110に対応するZ方向の範囲にわたってZ方向に延伸する強誘電体膜332と、強誘電体膜332の内周面に沿って、複数の導電層110に対応するZ方向の範囲にわたってZ方向に延伸する絶縁膜333(界面層)と、強誘電体膜332の外周面に沿って、複数の導電層110に対応するZ方向の範囲にわたってZ方向に延伸する絶縁膜334(界面層)と、を備える。
【0086】
絶縁部材331は、例えば、酸化シリコン(SiO2)等を含む。絶縁部材331は、略環状の形状を備える。絶縁部材331の内周面は、半導体層120の外周面に接続されている。
【0087】
強誘電体膜332は、基本的には、強誘電体膜131と同様に構成されている。ただし、強誘電体膜332の、絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分332bの内径及び外径は、それぞれ、導電層110に対応する高さ位置に設けられた部分332aの内径及び外径よりも大きい。
【0088】
即ち、強誘電体膜332は、複数の導電層110に対応する複数の高さ位置に設けられた複数の部分332aと、複数の絶縁層101に対応する複数の高さ位置に設けられた複数の部分332bと、を備える。複数の部分332bの内径は、複数の部分332aの内径よりも大きい。即ち、複数の部分332bの内周面(半導体層120側の面)から半導体層120までの距離D2は、複数の部分332aの内周面(半導体層120側の面)から半導体層120までの距離D1よりも大きい。距離D2と距離D1との差は、例えば、2nm以上であっても良い。また、複数の部分332bの外径は、複数の部分332aの外径よりも大きい。
【0089】
また、強誘電体膜332は、強誘電体膜332の内周面を含む添加物領域335と、添加物領域335と導電層110との間に設けられたメモリ領域336と、を備える。添加物領域335及びメモリ領域336は、それぞれ、添加物領域134及びメモリ領域136とほぼ同様に形成されている。ただし、添加物領域335の、絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分の内径及び外径は、それぞれ、導電層110に対応する高さ位置に設けられた部分の内径及び外径よりも大きい。また、メモリ領域336の、絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分の内径及び外径は、それぞれ、導電層110に対応する高さ位置に設けられた部分の内径及び外径よりも大きい。
【0090】
絶縁膜333は、基本的には、絶縁膜132とほぼ同様に構成されている。ただし、絶縁膜333の、絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分333bの内径及び外径は、それぞれ、導電層110に対応する高さ位置に設けられた部分333aの内径及び外径よりも大きい。
【0091】
即ち、絶縁膜333は、複数の導電層110に対応する複数の高さ位置に設けられた複数の部分333aと、複数の絶縁層101に対応する複数の高さ位置に設けられた複数の部分333bと、を備える。複数の部分333bの内径は、複数の部分333aの内径よりも大きい。複数の部分333bの外径は、複数の部分333aの外径よりも大きい。
【0092】
尚、複数の部分333bの内周面(半導体層120側の面)から半導体層120までの距離D3は、複数の部分333aの内周面(半導体層120側の面)から半導体層120までの距離よりも大きい。例えば、図示の例では、複数の部分333aが、それぞれ、半導体層120の外周面に接続されており、複数の部分333aの内周面から半導体層120までの距離はゼロである。一方、複数の部分333bは、それぞれ、絶縁部材331を介して半導体層120から離間しているため、距離D3はゼロではない。
【0093】
絶縁膜334は、基本的には、絶縁膜133とほぼ同様に構成されている。ただし、絶縁膜334の、絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分の内径及び外径は、それぞれ、導電層110に対応する高さ位置に設けられた部分の内径及び外径よりも大きい。
【0094】
[効果]
図4を参照して説明した様に、第1実施形態では、強誘電体膜131の添加物領域134が、略円筒状に形成されている。ここで、上述の通り、添加物領域134には、電子のトラップ準位が形成される。また、絶縁膜132が酸窒化シリコン(SiON)を含む場合、絶縁膜132にも電子のトラップ準位が形成される。この様な構成では、書込動作及び消去動作を繰り返す度にトンネル電流が発生し、添加物領域134及び絶縁膜132の絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分に電子が蓄積されてしまう。これにより、メモリセルMCのしきい値電圧を好適に制御出来なくなってしまう場合がある。また、半導体層120に流れる電流が減少してしまう。
【0095】
そこで、第3実施形態では、添加物領域335の絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分、及び、絶縁膜333の部分333bを半導体層120から離間させている。これにより、半導体層120からの電子のトンネルを抑制し、書込・消去回数の増大に伴うしきい値電圧の特性劣化を抑制可能である。また、半導体層120に流れる電流の減少を抑制可能である。
【0096】
[製造方法]
次に、
図19~
図23を参照して、第3実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法について説明する。
図19~
図23は、同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【0097】
第3実施形態に係る半導体記憶装置の製造に際しては、例えば、第1実施形態に係る半導体記憶装置の製造工程のうち、
図14を参照して説明した工程までを実行する。
【0098】
次に、例えば
図19に示す様に、メモリホールMHを介して、絶縁層101の一部を除去する。この工程は、例えば、ウェットエッチング等の方法によって行う。
【0099】
次に、例えば
図20に示す様に、メモリホールMHの内周面に、絶縁膜334、強誘電体膜332、及び、絶縁膜333を形成する。この工程は、例えば、CVD、ALD等の方法によって行う。
【0100】
次に、例えば
図21に示す様に、メモリホールMHを、絶縁部材331Aによって埋め込む。この工程は、例えば、CVD等の方法によって行う。
【0101】
次に、例えば
図22に示す様に、絶縁部材331Aの一部を除去する。この工程では、絶縁膜333の部分333aが、メモリホールMHの内部に露出する。また、絶縁部材331Aが、Z方向に並ぶ複数の絶縁部材331に分断される。この工程は、例えば、RIE等の方法によって行う。
【0102】
次に、例えば
図23に示す様に、メモリホールMHの内部に、半導体層120を形成する。この工程は、例えば、CVD等の方法によって行う。
【0103】
その後、
図3を参照して説明した電極140に対応する位置にRIE等によって溝を形成し、この溝を介したウェットエッチング等によって犠牲層110Aを除去し、CVD等の手段によって導電層110を形成することによって、
図18を参照して説明した様な構造が製造される。
【0104】
[第4実施形態]
[構成]
次に、
図24を参照して、第4実施形態に係る半導体記憶装置について説明する。
図24は、第4実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【0105】
第4実施形態に係る半導体記憶装置は、基本的には、第3実施形態に係る半導体記憶装置と同様に構成されている。ただし、第4実施形態に係る半導体記憶装置は、ゲート絶縁膜330のかわりに、ゲート絶縁膜430を備える。ゲート絶縁膜430は、基本的には、ゲート絶縁膜130と同様に構成されている。ただし、ゲート絶縁膜430は、強誘電体膜332のかわりに、強誘電体膜432を備える。
【0106】
強誘電体膜432は、基本的には、強誘電体膜332と同様に構成されている。ただし、強誘電体膜432は、導電層110に対応する高さ位置に設けられ、強誘電体膜432の内周面を含む複数の添加物領域435と、これら複数の添加物領域435と導電層110との間に設けられたメモリ領域436と、を備える。
【0107】
複数の添加物領域435は、基本的には、添加物領域335と同様に構成されている。ただし、複数の添加物領域435は、Z方向においてお互いに離間しており、導電層110に対応してZ方向に並ぶ。添加物領域435は、それぞれ、略環状の形状を備える。
【0108】
メモリ領域436は、基本的には、メモリ領域336と同様に構成されている。ただし、メモリ領域436の、絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分436bの内径及び外径は、それぞれ、導電層110に対応する高さ位置に設けられた部分436aの内径及び外径よりも大きい。
【0109】
即ち、メモリ領域436は、複数の導電層110に対応する複数の高さ位置に設けられた複数の部分436aと、複数の絶縁層101に対応する複数の高さ位置に設けられた複数の部分436bと、を備える。複数の部分436bの内径は、複数の部分436aの内径よりも大きい。複数の部分436bの外径は、複数の部分436aの外径よりも大きい。
【0110】
ここで、部分436aは添加物領域435に接する。従って、部分436a中の結晶構造は添加物領域435によって制御され、主として直方晶を含むこととなる。これにより、部分436aは、強誘電体性を発現する。一方、部分436bは、添加物領域435に接しない。従って、部分436b中の結晶構造は、主として直方晶以外の結晶構造を含むこととなる。従って、部分436bは、強誘電体性を発現しない。
【0111】
[効果]
第4実施形態に係る半導体記憶装置によれば、第3実施形態に係る半導体記憶装置と同様の効果を奏することが可能である。
【0112】
また、この様な構成によれば、強誘電性を示す領域をメモリセルMC毎にZ方向に分断することが可能である。これにより、強誘電体膜432の絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分の分極反転を抑制可能である。
【0113】
[製造方法]
次に、
図25~
図29を参照して、第4実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法について説明する。
図25~
図29は、同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【0114】
第4実施形態に係る半導体記憶装置の製造に際しては、例えば、第3実施形態に係る半導体記憶装置の製造工程のうち、
図19を参照して説明した工程までを実行する。
【0115】
次に、例えば
図25に示す様に、メモリホールMHの内周面に、絶縁膜334、強誘電体膜432A、及び、絶縁膜333を形成する。この工程は、例えば、CVD、ALD等の方法によって行う。
【0116】
次に、例えば
図26に示す様に、メモリホールMHを、絶縁部材331Aによって埋め込む。この工程は、例えば、CVD等の方法によって行う。
【0117】
次に、例えば
図27に示す様に、絶縁部材331Aの一部を除去する。この工程では、絶縁膜333の部分333aが、メモリホールMHの内部に露出する。また、絶縁部材331Aが、Z方向に並ぶ複数の絶縁部材331に分断される。
【0118】
次に、例えば
図28に示す様に、絶縁膜333を介して、強誘電体膜432Aに第2の添加元素を添加する。これにより、複数の添加物領域435が形成される。
【0119】
図28の例において、メモリホールMHの内部には、酸化シリコン(SiO
2)を含む絶縁部材331と、酸窒化シリコン(SiON)を含む絶縁膜333が露出している。ここで、チタン(Ti)等の第2の添加元素は、酸化シリコン(SiO
2)には付着しづらく、酸窒化シリコン(SiON)には付着しやすい。このため、強誘電体膜432Aの、絶縁部材331によって覆われていない部分(犠牲層110Aに対応する高さ位置に設けられた部分)には添加物領域435が形成される。一方、強誘電体膜432Aの、絶縁部材331によって覆われた部分(絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分)には添加物領域が形成されない。
【0120】
次に、例えば
図29に示す様に、メモリホールMHの内部に、半導体層120を形成する。この工程は、例えば、CVD等の方法によって行う。
【0121】
その後、
図3を参照して説明した電極140に対応する位置にRIE等によって溝を形成し、この溝を介したウェットエッチング等によって犠牲層110Aを除去し、CVD等の手段によって導電層110を形成することによって、
図24を参照して説明した様な構造が製造される。
【0122】
[第5実施形態]
[構成]
次に、
図30を参照して、第5実施形態に係る半導体記憶装置について説明する。
図30は、第5実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【0123】
第5実施形態に係る半導体記憶装置は、基本的には、第4実施形態に係る半導体記憶装置と同様に構成されている。ただし、第5実施形態に係る半導体記憶装置は、ゲート絶縁膜430のかわりに、ゲート絶縁膜530を備える。ゲート絶縁膜530は、基本的には、ゲート絶縁膜430と同様に構成されている。ただし、ゲート絶縁膜530は、絶縁膜333のかわりに、絶縁膜533を備える。
【0124】
絶縁膜533は、基本的には、絶縁膜333と同様に構成されている。ただし、絶縁膜533は、複数の部分333a及び複数の部分333bのかわりに、複数の部分533a及び複数の部分533bを備える。複数の部分533a及び複数の部分533bは、基本的には、それぞれ、複数の部分333a及び複数の部分333bと同様に構成されている。ただし、部分533aは、例えば、酸窒化シリコン(SiON)等を含む。また、部分533bは、例えば、窒化シリコン(SiN)等を含む。
【0125】
[効果]
第5実施形態に係る半導体記憶装置によれば、第4実施形態に係る半導体記憶装置と同様の効果を奏することが可能である。
【0126】
[製造方法]
次に、
図31~
図33を参照して、第5実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法について説明する。
図31~
図33は、同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【0127】
第5実施形態に係る半導体記憶装置の製造に際しては、例えば、第4実施形態に係る半導体記憶装置の製造工程のうち、
図19を参照して説明した工程までを実行する。
【0128】
次に、例えば
図31に示す様に、メモリホールMHの内周面に、絶縁膜334、強誘電体膜432A、及び、絶縁膜533Aを形成する。絶縁膜533Aは、例えば、窒化シリコン(SiN)等を含む。この工程は、例えば、CVD等の方法によって行う。
【0129】
次に、例えば、第4実施形態に係る半導体記憶装置の製造工程のうち、
図21及び
図22を参照して説明した工程を実行する。これにより、
図32に示す様な構造が形成される。
【0130】
次に、例えば
図33に示す様に、絶縁膜533を形成する。この工程では、例えば、熱酸化等の方法によって、絶縁膜533Aの、メモリホールMHへの露出面を酸化し、これによって複数の部分533aを形成する。これにより、絶縁膜533が形成される。
【0131】
その後、例えば、第4実施形態に係る半導体記憶装置の製造工程のうち、
図28を参照して説明した工程以降の工程を実行することによって、
図30を参照して説明した様な構造が製造される。
【0132】
[第6実施形態]
[構成]
次に、
図34を参照して、第6実施形態に係る半導体記憶装置について説明する。
図34は、第6実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【0133】
第6実施形態に係る半導体記憶装置は、基本的には、第1実施形態に係る半導体記憶装置と同様に構成されている。ただし、第6実施形態に係る半導体記憶装置は、ゲート絶縁膜130のかわりに、ゲート絶縁膜630を備える。
【0134】
ゲート絶縁膜630は、基本的には、ゲート絶縁膜130と同様に構成されている。
【0135】
ただし、ゲート絶縁膜630の、絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分の外径は、導電層110に対応する高さ位置に設けられた部分の外径よりも大きい。
【0136】
また、ゲート絶縁膜630は、複数の絶縁層101に対応してZ方向に並ぶ複数の絶縁部材631と、これら複数の絶縁部材631及び半導体層120に沿って、複数の導電層110に対応するZ方向の範囲にわたってZ方向に延伸する強誘電体膜632と、強誘電体膜632の内周面に沿って、複数の導電層110に対応するZ方向の範囲にわたってZ方向に延伸する略円筒状の絶縁膜132と、強誘電体膜632の外周面に沿って、複数の導電層110に対応するZ方向の範囲にわたってZ方向に延伸する絶縁膜334と、を備える。
【0137】
絶縁部材631は、例えば、酸化シリコン(SiO2)等の、強誘電体膜632よりもEOT(Equivalent Oxide Thickness)が大きく、強誘電体膜632よりも誘電率の低い材料を含む。絶縁部材631は、略環状の形状を備える。尚、絶縁部材631の膜厚(径方向の長さ)は、例えば、1nm以上であっても良い。絶縁部材631の膜厚は、例えば、絶縁部材631の半導体層120側の面と、絶縁部材631の導電層110側の面と、の距離として規定しても良い。
【0138】
強誘電体膜632は、基本的には、強誘電体膜131と同様に構成されている。ただし、強誘電体膜632の、絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分632bの外径は、導電層110に対応する高さ位置に設けられた部分632aの外径よりも大きい。
【0139】
即ち、強誘電体膜632は、複数の導電層110に対応する複数の高さ位置に設けられた複数の部分632aと、複数の絶縁層101に対応する複数の高さ位置に設けられた複数の部分632bと、を備える。複数の部分632bの内径は、複数の部分632aの内径と略一致する。複数の部分632bの外径は、複数の部分632aの外径よりも大きい。
【0140】
部分632aは、主として直方晶を含み、強誘電体性を発現する。一方、部分632bは、主として直方晶以外の結晶構造を含み、強誘電体性を発現しない。尚、複数の部分632bは、それぞれ、絶縁部材631によって、径方向に並ぶ2つの部分に分断されている。
【0141】
また、強誘電体膜632は、強誘電体膜632の内周面側に設けられた領域633と、強誘電体膜632の外周面側に設けられた領域634と、を備える。領域634は、強誘電体膜632のうち、
図35を参照して後述する工程で形成される領域である。領域633は、強誘電体膜632のうち、
図39を参照して後述する工程で形成される領域である。
【0142】
領域633は、半導体層120の外周面に沿って、複数の導電層110に対応するZ方向の範囲にわたってZ方向に延伸する略円筒状の形状を備える。
【0143】
領域634は、領域633及び絶縁部材631の外周面に沿って、複数の導電層110に対応するZ方向の範囲にわたってZ方向に延伸する。また、領域634の、絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分の内径及び外径は、それぞれ、導電層110に対応する高さ位置に設けられた部分の内径及び外径よりも大きい。
【0144】
尚、領域634の、複数の絶縁層101に対応する複数の部分の内周面(半導体層120側の面)から領域633までの距離は、複数の導電層110に対応する複数の部分の内周面(半導体層120側の面)から領域633までの距離よりも大きい。例えば、図示の例では、複数の導電層110に対応する複数の部分が、それぞれ、領域633の外周面に接続されており、複数の導電層110に対応する複数の部分の内周面から領域633までの距離はゼロである。一方、複数の絶縁層101に対応する複数の部分は、それぞれ、領域633から離間しているため、距離はゼロではない。
【0145】
また、領域633及び領域634の厚み(径方向の長さ)は、それぞれ、8nm未満であっても良い。また、領域633及び領域634の厚みの合計は、8nm以上であっても良い。この様な場合、強誘電体膜632の部分632aの厚みは8nm以上となる。一方、強誘電体膜632の部分632bは、8nm未満の厚みを有する2つの部分に分断される。
【0146】
領域633及び領域634の厚み(径方向の長さ)は、種々の方法によって規定することが可能である。例えば、本実施形態では、絶縁部材631と、強誘電体膜632の半導体層120側の面と、の距離を領域633の厚みとしても良い。また、絶縁部材631と、強誘電体膜632の導電層110側の面と、の距離を領域634の厚みとしても良い。
【0147】
[効果]
図4を参照して説明した様に、第1実施形態では、強誘電体膜131が、略円筒状に形成されている。この様な構成では、例えば、書込動作又は消去動作に際し、導電層110のフリンジ電界に起因して、強誘電体膜131の、絶縁層101や、隣接ワード線WL(選択ワード線WLとZ方向に隣り合うワード線WL)に対応する高さ位置に設けられた部分において、分極反転が生じてしまうおそれがある。
【0148】
そこで、第6実施形態では、ゲート絶縁膜630の絶縁層101に対応する高さ位置に、強誘電体膜632よりもEOTが大きい絶縁部材631を設けている。この様な構成によれば、導電層110からの電気力線が絶縁層101を避けて半導体層120に達するため、強誘電体膜632の、絶縁層101や隣接ワード線WLに対応する高さ位置に設けられた部分の分極反転を抑制可能である。
【0149】
また、第6実施形態では、強誘電体膜632の導電層110に対応する高さ位置に設けられた部分の厚みは8nm以上としても良い。また、強誘電体膜632の絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分を、8nm未満(例えば、5nm以下)の厚みを有する2つの部分に分断しても良い。ここで、上述の通り、強誘電体膜は、厚みが8nm以上であると強誘電性を示しやすく、厚みが8nm未満であると強誘電性を示しにくい傾向がある。特に、強誘電体膜の厚みが5nm以下である場合、強誘電体膜は、強誘電性を示しにくい傾向がある。従って、この様な構成によれば、強誘電性を示す領域をメモリセルMC毎にZ方向に分断することが可能である。これにより、強誘電体膜632の絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分の分極反転を抑制可能である。
【0150】
[製造方法]
次に、
図35~
図39を参照して、第6実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法について説明する。
図35~
図39は、同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【0151】
第6実施形態に係る半導体記憶装置の製造に際しては、例えば、第3実施形態に係る半導体記憶装置の製造工程のうち、
図19を参照して説明した工程までを実行する。
【0152】
次に、例えば
図35に示す様に、メモリホールMHの内周面に、絶縁膜334、及び、強誘電体膜632の領域634を形成する。この工程は、例えば、CVD、ALD等の方法によって行う。
【0153】
次に、例えば
図36に示す様に、メモリホールMHの内周面に、絶縁部材632Aを形成する。この工程は、例えば、CVD等の方法によって行う。
【0154】
次に、例えば
図37に示す様に、絶縁部材631Aの一部を除去する。この工程では、領域634の、犠牲層110Aに対応する高さ位置に設けられた部分が、メモリホールMHの内部に露出する。また、絶縁部材631Aが、Z方向に並ぶ複数の絶縁部材631に分断される。この工程は、例えば、ウェットエッチング等の方法によって行う。
【0155】
次に、例えば
図38に示す様に、メモリホールMHの内部に、強誘電体膜632の領域633を形成する。この工程は、例えば、CVD等の方法によって行う。
【0156】
次に、例えば
図39に示す様に、メモリホールMHの内部に、絶縁膜132及び半導体層120を形成する。この工程は、例えば、CVD等の方法によって行う。
【0157】
その後、
図3を参照して説明した電極140に対応する位置にRIE等によって溝を形成し、この溝を介したウェットエッチング等によって犠牲層110Aを除去し、CVD等の手段によって導電層110を形成することによって、
図34を参照して説明した様な構造が製造される。
【0158】
[第7実施形態]
図34を参照して説明した様に、第6実施形態においては、強誘電体膜632中の領域633,634が、複数の導電層110に対応する複数の高さ位置において、お互いに接続されている。しかしながら、この様な構成はあくまでも例示であり、具体的な構成は適宜調整可能である。例えば、領域633,634は、お互いに離間していても良い。以下、第7実施形態に係る半導体記憶装置として、この様な構成を例示する。
【0159】
[構成]
図40は、第7実施形態に係る半導体記憶装置の一部の構成を示す模式的な断面図である。
【0160】
第7実施形態に係る半導体記憶装置は、基本的には、第6実施形態に係る半導体記憶装置と同様に構成されている。ただし、第7実施形態に係る半導体記憶装置は、ゲート絶縁膜630のかわりに、ゲート絶縁膜730を備える。ゲート絶縁膜730は、基本的には、ゲート絶縁膜630と同様に構成されている。ただし、ゲート絶縁膜630は、強誘電体膜632のかわりに、強誘電体膜732を備える。
【0161】
強誘電体膜732は、基本的には、強誘電体膜632と同様に構成されている。ただし、強誘電体膜732の、絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分732bの外径は、それぞれ、導電層110に対応する高さ位置に設けられた部分732aの外径よりも大きい。
【0162】
即ち、強誘電体膜732は、複数の導電層110に対応する複数の高さ位置に設けられた複数の部分732aと、複数の絶縁層101に対応する複数の高さ位置に設けられた複数の部分732bと、を備える。複数の部分732bの内径は、複数の部分732aの内径と略一致する。複数の部分732bの外径は、複数の部分732aの外径よりも大きい。
【0163】
部分732aは、主として直方晶を含み、強誘電体性を発現する。一方、部分732bは、主として直方晶以外の結晶構造を含み、強誘電体性を発現しない。
【0164】
また、強誘電体膜732は、複数の導電層110に対応してZ方向に並び、領域633,634の間に設けられた複数の添加物領域731を備える。
【0165】
添加物領域731は、上述した第1の添加元素に加え、チタン(Ti)及びシリコン(Si)からなる群から選ばれる少なくとも一つの添加元素を含む。以下、この様な添加元素を、「第4の添加元素」と呼ぶ場合がある。
【0166】
本実施形態において、領域633,634は、上述した第1の添加元素に加え、第4の添加元素を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。領域633,634が第4の添加元素を含む場合、領域633,634における第4の添加元素の濃度は、添加物領域731における第4の添加元素の濃度よりも低い。領域633,634が第4の添加元素を含む場合、領域633,634と添加物領域731との境界は、例えば、第4の添加元素の濃度が、ピーク値の半分となる位置であっても良い。領域633,634が第4の添加元素を含まない場合、領域633,634と添加物領域731との境界は、例えば、第4の添加元素を含む領域と、第4の添加元素を含まない領域と、の境界としても良いし、第4の添加元素を検出可能な領域と、第4の添加元素が検出出来ない領域と、の境界としても良い。
【0167】
第7実施形態においても、領域634の複数の絶縁層101に対応する複数の部分の内周面(半導体層120側の面)から領域633までの距離が、複数の導電層110に対応する複数の部分の内周面(半導体層120側の面)から領域633までの距離よりも大きい。ただし、複数の導電層110に対応する複数の部分は、添加物領域731を介して、領域633から離間している。従って、複数の導電層110に対応する複数の部分の内周面から領域633までの距離は、ゼロではない。
【0168】
[ウェイクアップ動作]
第7実施形態においては、強誘電体膜732の領域633及び領域634が、添加物領域731を介して、半導体層120の径方向に分断されている。ここで、例えば、領域633,634の厚みが8nm未満である場合、強誘電体膜732は、強誘電体性を示しにくい傾向がある。この様な場合には、例えば、半導体記憶装置の出荷前にウェイクアップ動作を実行することが考えられる。
【0169】
ウェイクアップ動作は、半導体層120-導電層110間に、正極性の電圧及び負極性の電圧を交互に複数回供給し、これによって強誘電体膜732に強誘電性を発現させる動作である。この際、半導体層120-導電層110間に供給される正極性の電圧及び負極性の電圧の絶対値は、それぞれ、
図6を参照して説明した書込電圧V
PGM及び消去電圧V
eraの絶対値よりも大きい。
【0170】
ウェイクアップ動作を実行すると、強誘電体膜732の部分732aに電界がかかり、部分732aの特性が変化する。ウェイクアップ動作の実行後、強誘電体膜732の部分732aは、主として直方晶を含み、強誘電体性を発現する。例えば、ウェイクアップ動作の実行後、部分732aでは、分極軸の方向と電界方向(半導体層120の径方向)との角度差が45°以下となる領域が、全体の75%以上を占めることとなる。
【0171】
ここで、第7実施形態に係るゲート絶縁膜730は、第6実施形態に係るゲート絶縁膜630と同様に、Z方向に並ぶ複数の絶縁部材631を備える。従って、ウェイクアップ動作に際しても、導電層110からの電気力線は、絶縁層101を避けて半導体層120に達することとなる。このため、強誘電体膜732の部分732bには電界がかからず、部分732bの特性は変化しない。従って、ウェイクアップ動作の実行後においても、部分732bは、主として直方晶以外の結晶構造を含み、強誘電体性を発現しない。
【0172】
[効果]
第7実施形態に係る半導体記憶装置においても、第6実施形態に係る半導体記憶装置と同様に、強誘電体膜732の、絶縁層101や隣接ワード線WLに対応する高さ位置に設けられた部分の分極反転を抑制可能である。
【0173】
また、第7実施形態に係る半導体記憶装置においては、強誘電体膜732の部分732aの結晶構造をウェイクアップ動作によって改質し、これによって強誘電性を発現させている。この様な方法によって形成された構造は、書込動作及び消去動作を繰り返し実行しても特性が劣化しづらい。従って、第7実施形態に係る半導体記憶装置によれば、半導体記憶装置の長寿命化を図ることが可能である。
【0174】
[製造方法]
次に、
図41~
図43を参照して、第7実施形態に係る半導体記憶装置の製造方法について説明する。
図41~
図43は、同製造方法について説明するための模式的な断面図である。
【0175】
第7実施形態に係る半導体記憶装置の製造に際しては、例えば、第6実施形態に係る半導体記憶装置の製造工程のうち、
図37を参照して説明した工程までを実行する。
【0176】
次に、例えば
図41に示す様に、メモリホールMHを介して、強誘電体膜732の領域634に第4の添加元素を添加する。これにより、強誘電体膜732の添加物領域731が形成される。
【0177】
次に、例えば
図42に示す様に、メモリホールMHの内部に、強誘電体膜732の領域633を形成する。この工程は、例えば、CVD、ALD等の方法によって行う。
【0178】
次に、例えば
図43に示す様に、メモリホールMHの内部に、絶縁膜132及び半導体層120を形成する。この工程は、例えば、CVD等の方法によって行う。
【0179】
その後、
図3を参照して説明した電極140に対応する位置にRIE等によって溝を形成し、この溝を介したウェットエッチング等によって犠牲層110Aを除去し、CVD等の手段によって導電層110を形成することによって、
図40を参照して説明した様な構造が製造される。
【0180】
[その他の実施形態]
以上、第1実施形態~第7実施形態に係る半導体記憶装置について説明した。しかしながら、以上の説明はあくまでも例示に過ぎず、具体的な構成等は適宜調整可能である。
【0181】
例えば、第1実施形態~第7実施形態では、半導体層120を、略円柱状の構成として説明した。しかしながら、半導体層120は、例えば、略円筒状の構成であっても良い。また、半導体層120の中心部分には、酸化シリコン(SiO2)等の絶縁膜が埋め込まれていても良い。
【0182】
また、例えば、強誘電体膜332(
図18)、強誘電体膜432(
図24)、強誘電体膜632(
図34)、及び、強誘電体膜732(
図40)の外周面又はその近傍には、第1実施形態と同様に、第2の添加元素を含む添加物領域(
図4の添加物領域135に対応する領域)が設けられていても良いし、第2実施形態と同様に、第2の添加元素を含まない領域(
図16の領域235に対応する領域)と、その内周側に設けられた第2の添加元素を含む添加物領域(
図16の添加物領域236に対応する領域)と、が設けられていても良い。
【0183】
この様な構成によれば、第1実施形態に係る半導体記憶装置及び第2実施形態に係る半導体記憶装置と同様に、読出動作の実行に伴う誤書込の発生を抑制可能である。
【0184】
また、ゲート絶縁膜630(
図34)及びゲート絶縁膜730(
図40)は、絶縁膜132のかわりに、複数の絶縁部材331及び絶縁膜333を備えていても良い。
【0185】
この様な構成によれば、第3実施形態に係る半導体記憶装置及び第4実施形態に係る半導体記憶装置と同様に、書込・消去回数の増大に伴うしきい値電圧の特性劣化を抑制可能である。また、半導体層120に流れる電流の減少を抑制可能である。
【0186】
また、上述の通り、強誘電体膜632(
図34)の絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分は、絶縁部材631を介して、比較的小さい厚みを有する2つの部分に分断される。ここで、強誘電体膜632(
図34)の絶縁層101に対応する高さ位置に設けられた部分は、3つ以上の部分に分断されていても良い。
【0187】
この様な構成を製造するためには、例えば、
図37を参照して説明した工程において、絶縁部材631Aを多めに除去して、絶縁部材631と強誘電体膜632の一部(領域634)との間に段差を形成する。また、
図38を参照して説明した工程において、強誘電体膜632の一部を、上記段差が維持される程度に薄く形成する。次に、メモリホールMHの内部に、再度、絶縁部材631A(
図36)を形成する。以下、同様の工程を繰り返し実行する。
【0188】
[その他]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0189】
101…絶縁層、110…導電層、120…半導体層、130…ゲート絶縁膜、131…強誘電体膜、132,133…絶縁膜(界面層),134,135…添加物領域、136…メモリ領域。